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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ハードコート積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220517BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220517BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220517BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20220517BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220517BHJP
   C09D 181/00 20060101ALI20220517BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220517BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
B32B27/20 Z
C08J7/046 A CEY
C08J7/04 CFD
C09D181/00
C09D7/63
C09D5/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018072808
(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2018187924
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017093521
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】橋本岳人
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113414(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147424(WO,A1)
【文献】特開2016-172422(JP,A)
【文献】特開2014-152281(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047620(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146778(WO,A1)
【文献】特開2013-204011(JP,A)
【文献】特開2011-213989(JP,A)
【文献】特開2018-047686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04-7/06
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体 100質量部;及び、
(B)撥水剤 0.01~7質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
下記特性(ル)を満たすハードコート積層フィルム
(ル)試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で測定した、上記第1ハードコート面の鉛筆硬度が3H~9Hである。
【請求項2】
表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体;及び、
(B)撥水剤;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
下記特性(イ)及び(ル)を満たすハードコート積層フィルム
(イ)ハードコート積層フィルムを、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められない
(ル)試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で測定した、上記第1ハードコート面の鉛筆硬度が3H~9Hである。
【請求項3】
表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体100質量部;及び
(B)撥水剤0.01~7質量部
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料から形成されており、
ここで上記成分(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体が、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体からなり;
下記特性(ル)を満たすハードコート積層フィルム
(ル)試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で測定した、上記第1ハードコート面の鉛筆硬度が3H~9Hである。
【請求項4】
表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体;及び
(B)撥水剤
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料から形成されており;
ここで上記成分(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体が、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体からなり;
下記特性(イ)及び(ル)を満たすハードコート積層フィルム:
(イ)ハードコート積層フィルムを、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められない
(ル)試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で測定した、上記第1ハードコート面の鉛筆硬度が3H~9Hである。
【請求項5】
表面側から順に第1ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体 100質量部;及び、
(B)撥水剤 0.01~7質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなるハードコート積層フィルム。
【請求項6】
表面側から順に第1ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体;及び、
(B)撥水剤;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
下記特性(イ)を満たすハードコート積層フィルム:
(イ)ハードコート積層フィルムを、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められない。
【請求項7】
表面側から順に第1ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有し、
上記第1ハードコートは、
(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体100質量部;及び
(B)撥水剤0.01~7質量部
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料から形成されており、
ここで上記成分(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体が、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体からなる
ハードコート積層フィルム。
【請求項8】
表面側から順に第1ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有し、
上記第1ハードコートは、
(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体;及び
(B)撥水剤
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料から形成されており;
ここで上記成分(α)活性エネルギー線により硬化してハードコートを形成する働きをする共重合体が、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体からなり;
下記特性(イ)を満たすハードコート積層フィルム:
(イ)ハードコート積層フィルムを、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められない。
【請求項9】
下記特性(ル)を満たす請求項5~8の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム:
(ル)試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で測定した、上記第1ハードコート面の鉛筆硬度が3H~9Hである。
【請求項10】
上記第2ハードコートが上記(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物との共重合体 100質量部、及び(C)レベリング剤 0.01~10質量部を含む塗料からなる請求項5~9の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項11】
表面側から順に上記第1ハードコート、第3ハードコート、及び上記透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第3ハードコートは無機粒子を含む塗料からなる、
請求項1~10の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項12】
上記第3ハードコートが
(F)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部;及び、
(D)無機粒子 30~300質量部;
を含む塗料から形成されており、
ここで上記成分(F)活性エネルギー線硬化性樹脂が多官能(メタ)アクリレートと多官能チオールとの共重合体を含む、
請求項11に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項13】
上記第1ハードコートの厚みが8~60μmである請求項1~12の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項14】
上記(A)共重合体の硫黄含有量が0.1~12質量%である請求項1~13の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項15】
上記(A)共重合体のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した微分分子量分布曲線のポリスチレン換算質量平均分子量が5千~20万である請求項1~14の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項16】
上記(B)撥水剤が(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤を含む請求項1~15の何れか1項に記載のハードコート積層フィルム。
【請求項17】
請求項1~16の何れか1項に記載のハードコート積層フィルムを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート積層フィルムに関する。更に詳しくは、耐擦傷性(少なくとも耐スチールウール性)に優れたハードコート積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイ等の画像表示装置上に設置され、表示を見ながら指やペン等でタッチすることにより入力を行うことのできるタッチパネルが普及している。
【0003】
従来、タッチパネルのディスプレイ面板には、耐熱性、寸法安定性、高透明性、高表面硬度、及び高剛性などの要求特性に合致することから、ガラスを基材とする物品が使用されてきた。一方、ガラスには、耐衝撃性が低く割れ易い;加工性が低い;ハンドリングが難しい;比重が高く重い;ディスプレイの曲面化やフレキシブル化の要求に応えることが難しい;などの問題がある。そこでガラスに替わる材料が盛んに研究されており、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、及びノルボルネン系重合体などの透明樹脂フィルム基材の表面に耐擦傷性に優れるハードコートを形成したハードコート積層フィルムが多数提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、その耐擦傷性はまだ不十分であり、スチールウールなどで繰返し擦られたとしても傷の付かないハードコート積層フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-208896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐擦傷性(少なくとも耐スチールウール性)に優れたハードコート積層フィルムを提供することにある。本発明の更なる課題は、耐擦傷性、耐クラック性、表面外観、透明性、色調、表面硬度、及び耐曲げ性に優れたハードコート積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の構成のハードコート積層フィルムにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体 100質量部;及び、
(B)撥水剤 0.01~7質量部;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる;
ハードコート積層フィルムである。
【0008】
第2の発明は、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、
上記第1ハードコートは、
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体;及び、
(B)撥水剤;
を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなり;
下記特性(イ)を満たすハードコート積層フィルムである。
(イ)ハードコート積層フィルムを、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められない。
【0009】
第3の発明は、表面側から順に第1ハードコート、第3ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有し、上記第3ハードコートは無機粒子を含む塗料からなる、第1の発明又は第2の発明に記載のハードコート積層フィルムである。
【0010】
第4の発明は、上記(A)共重合体の硫黄含有量が0.1~12質量%である第1~3の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0011】
第5の発明は、上記(A)共重合体のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した微分分子量分布曲線のポリスチレン換算質量平均分子量が5千~20万である第1~4の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0012】
第6の発明は、上記(B)撥水剤が(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤を含む第1~5の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムである。
【0013】
第7の発明は、第1~6の発明の何れか1に記載のハードコート積層フィルムを含む物品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハードコート積層フィルムは、耐擦傷性(少なくとも耐スチールウール性)に優れる。本発明の好ましいハードコート積層フィルムは、耐擦傷性、耐クラック性、表面外観、透明性、色調、表面硬度、及び耐曲げ性に優れる。そのため物品又は物品の部材、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置(タッチパネル機能を有する画像表示装置及びタッチパネル機能を有しない画像表示装置を含む。);これらのディスプレイ面板、透明導電性基板、及び筐体などの部材;特にタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0016】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。更に数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。
【0017】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0018】
本発明のハードコート積層フィルムは、表面側から順に第1ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有する。
【0019】
第1ハードコート:
上記第1ハードコートは、通常、本発明のハードコート積層フィルムの表面を形成する。上記第1ハードコートは、本発明のハードコート積層フィルムがタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として用いられる場合には、タッチ面を形成する。上記第1ハードコートは、良好な耐擦傷性を発現し、スチールウールなどで繰返し擦られたとしても傷が付かないようにする働きをする。
【0020】
上記第1ハードコートは、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物(多官能チオール)との共重合体、及び(B)撥水剤を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる。上記第1ハードコートは、好ましくは(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物との共重合体 100質量部、及び(B)撥水剤 0.01~7質量部を含み、かつ無機粒子を含まない塗料からなる;
【0021】
無機粒子(例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子;など。)は、ハードコートの硬度を高めるのに効果が大きい。一方、上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで本発明においては、第1ハードコートには無機粒子を含まないようにしたものである。
【0022】
ここで無機粒子を「含まない」とは、有意な量の無機粒子を含んではいないという意味である。ハードコート形成用塗料の分野において、無機粒子の有意な量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常1質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含まない」とは、上記成分(A)100質量部に対して、無機粒子の量が通常1質量部未満、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
【0023】
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体:
上記成分(A)は、(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体である。上記成分(a1)と上記成分(a2)は何れも多官能モノマーであるため、上記成分(A)は、通常、高度に枝分かれした構造、所謂デンドリマー構造を有する共重合体である。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。上記成分(A)は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
【0024】
(a1)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分(a1)多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。上記成分(a1)の1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点から、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上であってよい。一方、耐クラック性の観点から、通常20個以下、好ましくは12個以下であってよい。
【0025】
上記成分(a1)としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;トリペンタエリスリトールオクタアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分(a1)としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどのプレポリマー又はオリゴマーであって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものあげることができる。上記成分(a1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0026】
(a2)多官能チオール:
上記成分(a2)多官能チオールは、1分子中に2個以上チオール基を有する化合物である。上記成分(a2)の1分子中のチオール基の数は、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点から、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上であってよい。一方、耐クラック性の観点から、通常20個以下、好ましくは12個以下であってよい。上記成分(a2)の有するチオール基は、反応性と取扱性のバランスの観点から、好ましくは2級チオール基であってよい。
【0027】
上記成分(a2)は、1分子中に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、及びイソシアネート基などのチオール基以外の重合性官能基を有するものであってもよい。本明細書において、1分子中に2個以上のチオール基を有し、かつ2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、上記成分(a2)である。
【0028】
上記成分(a2)としては、例えば、1,2‐エタンジチオール、エチレングリコールビス(3‐メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3‐メルカプトプロピオネート)、1,4‐ビス(3‐メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及びテトラエチレングリコールビス(3‐メルカプトプロピオネート)等の1分子中に2個のチオール基を有する化合物;1,3,5‐トリス(3‐メルカプトブチリルオキシエチル)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、トリメチロールプロパントリス(3‐メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3‐メルカプトブチレート)、及びトリス[(3‐メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート等の1分子中に3個のチオール基を有する化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)等の1分子中に4個のチオール基を有する化合物;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3‐メルカプトプロピオネート)等の1分子中に6個のチオール基を有する化合物;及び、これらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分(a2)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0029】
上記成分(A)は、本発明の目的に反しない限度において、上記成分(a1)と上記成分(a2)以外に、これらと共重合可能なモノマーに由来する構成単位を含むものであってよい。該共重合可能なモノマーは、通常、炭素・炭素二重結合を有する化合物であり、典型的にはエチレン性二重結合を有する化合物である。
【0030】
上記成分(A)中の上記成分(a1)に由来する構成単位の含有量(以下、(a1)含有量と略すことがある。)、は、重合性モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点、及び耐擦傷性の観点から、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であってよい。一方、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点、及び耐クラック性やハンドリング性の観点から、通常99モル%以下、好ましくは97モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは93モル%以下であってよい。
【0031】
上記成分(A)中の上記成分(a2)に由来する構成単位の含有量(以下、(a2)含有量と略すことがある。)は、重合性モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点、及び耐クラック性やハンドリング性の観点から、通常1モル%以上、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上であってよい。一方、上記成分(A)の構造を所謂デンドリマー構造を有するものにする観点、及び耐擦傷性の観点から、通常50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下であってよい。
【0032】
ここで上記(a1)含有量と上記(a2)含有量との和は、重合性モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは99モル%以上、100モル%以下であってよい。なお「重合性モノマー」とは、上記成分(a1)、上記成分(a2)、及びこれらと共重合可能なモノマーを意味する。該共重合可能なモノマーは、通常、炭素・炭素二重結合を有する化合物であり、典型的にはエチレン性二重結合を有する化合物である。
【0033】
上記成分(A)中の硫黄含有量は、上記(a2)含有量を上述の好ましい範囲にする観点から、通常0.1~12質量%、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~7質量%、更に好ましくは1.5~5質量%であってよい。
【0034】
ここで硫黄含有量は、マイクロウェーブ装置を使用し、硝酸と塩酸の混合酸(体積比8:2)を用いて、試料の灰化(湿式分解)を行った後、塩酸水溶液を加えて濾過し、濾過液を精製水で定容して得た測定サンプルを、原子吸光分析法で測定した値である。このとき内部標準としてイットリウムを用いた。また硫黄は鉄等と結合して沈殿し易いので、これを防止すべきことに留意する。具体的には以下の手順で行った。
【0035】
(1)試料の前処理:
易剥離処理された厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの上に、アプリケータを使用し、乾燥後の厚みが2μmとなるように上記成分(A)を塗布し、温度100℃で1時間乾燥して塗膜を得た。該塗膜から採取した試料0.2gを、CEM社の温度と圧力を測定できるタイプのポリテトラフルオロエチレン製灰化容器「XP-1500plusコントロール(商品名)」に入れ、関東化学株式会社の精密分析用試薬(UGR)用硝酸1.42と関東化学株式会社の原子吸光分析用塩酸との体積比8:2の混合酸5mLを加え、混合し、常温で12時間静置した後、CEM社のマイクロウェーブ装置「MARS5(商品名)」にセットし、1回目の加熱処理を行った。処理終了後、ポリテトラフルオロエチレン製灰化容器の内部の温度が常温になるまで放置した後、1回目のガス抜きを行った。再び、ポリテトラフルオロエチレン製灰化容器をマイクロウェーブ装置にセットし、2回目の加熱処理を行った。処理終了後、ポリテトラフルオロエチレン製灰化容器の内部の温度が常温になるまで放置した後、2回目のガス抜きを行った。なお上記1回目の加熱処理は、出力400Wで圧力40PSI、温度130℃まで10分かけて昇圧昇温し、3分間保持した後、出力400Wで圧力60PSI、温度150℃まで10分かけて昇圧昇温し、5分間保持した後、出力400Wで圧力100PSI、温度160℃まで10分かけて昇圧昇温し、5分間保持した後、出力400Wで圧力250PSI、温度180℃まで10分かけて昇圧昇温し、3分間保持した後、出力400Wで圧力550PSI、温度200℃まで10分かけて昇圧昇温し、7分間保持する条件で行った。上記2回目の加熱処理は、出力400Wで圧力600PSI、温度230℃まで20分かけて昇圧昇温し、10分間保持する条件で行った。続いて、関東化学株式会社の原子吸光分析用塩酸と精製水との体積比1:1の塩酸水溶液10mLを加え、混合し、常温で6時間静置した後、アドバンテック東洋株式会社の濾紙「定量濾紙No.5A(商品名)」を使用して濾過し、濾過液を精製水で50mLに定容し、処理済サンプルを得た。このとき内部標準として、和光純薬工業株式会社の原子吸光分析用イットリウム標準液を、処理済サンプル中のイットリウム濃度が0.02ppmとなるように加えた。
【0036】
(2)原子吸光分析:
上記(1)で得た前処理済サンプルを精製水で100倍に希釈した測定サンプルを用い、SPECTRO社のICP‐OES装置「ARCOS(商品名)」を使用し、プラズマ出力1400W、プラズマガス流量13.0リットル/分、補助ガス流量1.0リットル/分、ネブライザーガス流量0.8リットル/分、トーチ位置3.0mm、及び測定波長180.731nmの条件で測定した。検量線は下記(3)の方法で作成した。解析プログラムは、SPCTRO社の「Smart Analyzer Vision Software(商品名)」を使用した。なお上記(1)で得た前処理済サンプルの精製水による希釈倍率は、測定サンプルの測定値が検量線のプロットに内挿されるように適宜調節すべきことに留意する。
【0037】
(3)検量線の作成:
(3-1)検量線用サンプルの作成:
所定量(1、2、5、10、又は20mL)の関東化学株式会社のICP発光分光分析用硫黄標準液(硫黄濃度1000mg/リットル)に、関東化学株式会社の原子吸光分析用塩酸と精製水との体積比1:1の塩酸水溶液10mLを加え、精製水で50mLに定容し、検量線用サンプルを得た。このとき内部標準として、和光純薬工業株式会社の原子吸光分析用イットリウム標準液を、検量線用サンプル中のイットリウム濃度が0.02ppmとなるように加えた。
【0038】
(3-2)原子吸光分析:
上記(3-1)で得た検量線用サンプルを用い、上記(2)と同様にして測定した。
【0039】
(3-3)検量線の作成:
検量線用サンプル中の硫黄濃度とその原子吸光度との関係から、最小二乗法により、検量線を作成した。
【0040】
上記成分(A)のゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略すことがある。)により測定した微分分子量分布曲線(以下、GPC曲線と略すことがある。)から求めたポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、耐擦傷性と耐クラック性のバランスの観点から、好ましくは5千以上、より好ましくは8千以上、更に好ましくは1万以上であってよい。一方、上記成分(A)を含む塗料の塗工性の観点から、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下であってよい。
【0041】
上記成分(A)のGPC曲線から求めたポリスチレン換算のZ平均分子量(Mz)は、耐擦傷性と耐クラック性のバランスの観点から、好ましくは5千以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上であってよい。一方、上記成分(A)を含む塗料の塗工性の観点から、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下、更に好ましくは12万以下であってよい。
【0042】
GPCの測定は、システムとして東ソー株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC-8320(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;GPCカラムとしShodex社のGPCカラム「KF-806L(商品名)」を2本、「KF-802(商品名)」及び「KF-801(商品名)」を各1本の合計4本を、上流側からKF-806L、KF-806L、KF-802、及びKF-801の順に連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、東ソー株式会社の「TOSOH HLC-8320GPC EcoSEC(商品名)」を使用することができる。なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」などの参考書を参照することができる。
【0043】
図1に実施例で用いた下記成分(A-1)の微分分子量分布曲線を示す。相対的に低分子量の領域に3本の明確なピークが認められ、そのピークトップ位置のポリスチレン換算分子量は、低分子量側から順に、340、570、及び970である。またこれらの3本のピークよりも高分子量側に、重なりあいブロードになった複数のピークが認められ、最も高分子量側の成分のポリスチレン換算分子量は20万程度と認められる。そして全体の質量平均分子量は1万2千、数平均分子量は940、Z平均分子量は7万3千である。
【0044】
(B)撥水剤:
上記成分(B)は、耐擦傷性、指すべり性、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める働きをする。
【0045】
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、及びアクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、フルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができる。
【0046】
これらの中で、上記成分(B)としては、耐擦傷性、及び撥水性能の観点から、含弗素系撥水剤が好ましい。上記成分(B)としては、耐擦傷性、撥水性能、及び上記成分(B)を上記成分(A)と化学結合ないしは強く相互作用させ、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、含弗素系撥水剤であって(メタ)アクリロイル基を含有する撥水剤(以下、「(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤」と略すことがある。)がより好ましい。ここで(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子内に1個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上の弗素・炭素結合(典型的には炭化水素基などの有機官能基の1個又は2個以上の水素原子が弗素原子に置換された構造)を有する化合物である。
【0047】
上記(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基含有フルオロエーテル系撥水剤、(メタ)アクリロイル基含有フルオロアルキル系撥水剤、(メタ)アクリロイル基含有フロオロアルケニル系撥水剤、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリアルキル系撥水剤、及び(メタ)アクリロイル基含有フロオロポリアルケニル系撥水剤などをあげることができる。
【0048】
上記成分(B)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)が更に好ましい。上記成分(B)としては、上記成分(B)と上記成分(A)との化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な耐擦傷性、撥水性、及びブリードアウト防止性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物が最も好ましい。
【0049】
上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0050】
上記(メタ)アクリロイル基含有弗素系撥水剤は、分子内に1個以上の弗素・炭素結合を有する点で、上記成分(a1)とは明確に区別される。本明細書において、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有し、かつ分子内に1個以上の弗素・炭素結合を有する化合物は、上記成分(B)である。
【0051】
上記(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤は、分子内にフルオロポリエーテル基を含有する点で、上記成分(a1)とは明確に区別される。本明細書において、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有し、かつフルオロポリエーテル基を含有する化合物は、上記成分(B)である。
【0052】
上記成分(B)の配合量は、十分な耐擦傷性、特に上記特性(イ)を良好なものにする観点から適宜決定することができる。上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下であってよい。一方、上記成分(B)の使用効果を得るという観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であってよい。
【0053】
上記第1ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0054】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0055】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4、4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4-ジエチルチオキサントン、2、4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0056】
上記光重合開始剤として、アセトフェノン系光重合開始剤を2種以上、例えば、1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニルケトンと2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オンとを併用することは好ましい。ハードコートの着色を抑制しつつ、十分に硬化させることができる。
【0057】
上記第1ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、有機粒子、及び有機着色剤などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0058】
上記第1ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、上記成分(B)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0059】
上記第1ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0060】
上記第1ハードコート形成用塗料を用いて上記第1ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0061】
上記第1ハードコートの厚みは、耐擦傷性、特に上記特性(イ)を満足させる観点、及び表面硬度の観点から、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましく10μm以上、更に好ましくは12μm以上であってよい。一方、本発明のハードコート積層フィルムの耐曲げ性を良好に保ち、フィルムロールとして容易に取り扱えるようにする観点から、通常60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下であってよい。
【0062】
第2ハードコート:
本発明のハードコート積層フィルムは、好ましくは、表面側から順に第1ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有する。上記第2ハードコートを形成することにより、ハードコート積層フィルムを一方へカールさせようとする力(以下、カール力と略すことがある。)と他方へカールさせようとする力とが両方働くことになる。そしてこの2つのカール力が相殺されてゼロになるようにすることにより、カールの発生を抑制することができる。
【0063】
また近年、画像表示装置の軽量化を目的に、ディスプレイ面板の裏側にタッチ・センサが直接形成された2層構造のタッチパネル(所謂ワン・ガラス・ソリューション)が提案されている。また更なる軽量化のため、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションも提案されている。本発明のハードコート積層フィルムを、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションに用いる場合には、上記第2ハードコートを形成することにより、印刷面として好適な特性を付与することが容易になる。
【0064】
上記第2ハードコートは、特に制限されず、任意の塗料を用い、任意の方法で形成することができる。
【0065】
上記第2ハードコートは、耐カール性の観点から、好ましくは、(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物との共重合体を含む塗料からなる。上記第2ハードコートは、より好ましくは(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物との共重合体、及び(C)レベリング剤を含む塗料からなる。上記第2ハードコートは、更に好ましくは(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)1分子中に2個以上のチオール基を有する化合物との共重合体 100質量部、及び(C)レベリング剤 0.01~10質量部を含む塗料からなる。
【0066】
上記成分(A)については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記成分(A)としては、耐カール性の観点から、上記第1ハードコート形成用塗料に用いるものと同じものが更に好ましい。
【0067】
(C)レベリング剤:
上記第2ハードコート形成用塗料には、上記第2ハードコートの表面を平滑なものにする観点から、レベリング剤を含ませることが好ましい。
【0068】
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコン系レベリング剤、弗素系レベリング剤、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤、弗素変性アクリル系レベリング剤、弗素変性シリコン系レベリング剤、及びこれらに官能基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など。)を導入したレベリング剤などをあげることができる。これらの中で、上記成分(C)としては、印刷適性の観点から、アクリル系レベリング剤、及びシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0069】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記第2ハードコートの表面を平滑なものにする観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であってよい。一方、上記成分(C)がブリードアウトするなどトラブルを防止する観点から、通常10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下であってよい。
【0070】
上記第2ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0071】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0072】
上記光重合開始剤については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0073】
上記第2ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、無機粒子、及び有機粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0074】
上記第2ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(A)、上記成分(C)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0075】
上記第2ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0076】
上記第2ハードコート形成用塗料を用いて上記第2ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0077】
上記第2ハードコートの厚みは、特に制限されないが、耐曲げ性の観点から、通常60μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下であってよい。一方、カール力を抑制する観点から、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましく10μm以上、更に好ましくは12μm以上であってよい。また上記第2ハードコートの厚みは、耐カール性の観点から、上記第1ハードコートと同一の厚みであってよい。
【0078】
ここで「同一の厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で完全に同一の厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同一の厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同一の厚みであれば、耐カール性を良好にすることができるからである。ハードコートの厚み(硬化後)は、通常-0.5~+0.5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、例えば設定厚みが10.5μmであるとき、厚み10μmと厚み11μmとは同一と解釈されるべきである。
【0079】
第3ハードコート:
本発明のハードコート積層フィルムは、好ましくは、表面側から順に第1ハードコート、第3ハードコート、及び透明樹脂フィルムの層を有するものであってよい。本発明のハードコート積層フィルムは、より好ましくは、表面側から順に第1ハードコート、第3ハードコート、透明樹脂フィルムの層、及び第2ハードコートを有するものであってよい。上記第3ハードコートを形成することにより、第1ハードコートの表面硬度を高めることができる。
【0080】
上記第3ハードコートは、特に制限されず、任意の塗料を用い、任意の方法で形成することができる。上記第3ハードコート形成用塗料としては、第1ハードコートの表面硬度を高める観点から、(D)無機粒子を含む塗料が好ましい。(F)活性エネルギー線硬化性樹脂と(D)無機粒子を含む塗料がより好ましい。
【0081】
ここで無機粒子を「含む」とは、ハードコートの硬度を高めるのに有意な量の無機粒子を含んでいるという意味である。ハードコート形成用塗料の分野において、ハードコートの硬度を高めるのに有意な量は、塗料の樹脂成分100質量部に対して、通常5質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含む」とは、塗料の樹脂成分100質量部に対して、無機粒子の量が通常5質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、更により好ましくは100質量部以上、最も好ましくは120質量部以上と言い換えることもできる。なお無機粒子の量の上限は、特に限定されないが、例えば、塗料の樹脂成分100質量部に対して、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下であってよい。
【0082】
(F)活性エネルギー線硬化性樹脂:
上記成分(F)活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合、硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
【0083】
上記成分(F)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート、多官能チオール、これらと共重合可能なモノマー、及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(プレポリマー又はオリゴマー)をあげることができる。該重合体としては、例えば、多官能(メタ)アクリレートと多官能チオールとの共重合体をあげることができる。
【0084】
上記多官能(メタ)アクリレートについては、第1ハードコート形成用塗料の説明において成分(a1)として上述した。上記多官能チオールについては、第1ハードコート形成用塗料の説明において成分(a2)として上述した。
【0085】
上記これらと共重合可能なモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N-ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマーなどをあげることができる。
【0086】
上記成分(F)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0087】
(D)無機粒子:
上記成分(D)は、本発明のハードコート積層フィルムの硬度を飛躍的に高める働きをする。
【0088】
無機粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物微子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子;などをあげることができる。
【0089】
これらの中でより表面硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの粒子が好ましく、シリカの粒子がより好ましい。シリカ粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
【0090】
無機粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの表面硬度を高めたりする目的で、当該無機粒子の表面をビニルシラン、及びアミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;及び脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いることは好ましい。
【0091】
上記成分(D)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0092】
上記成分(D)の平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及び硬度改良効果を確実に得る観点から、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下であってよい。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な無機粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
【0093】
なお本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法で測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。無機粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径として算出することができる。
【0094】
上記第3ハードコート形成用塗料が(F)活性エネルギー線硬化性樹脂と(D)無機粒子を含む塗料である場合、上記成分(D)の配合量は、上記成分(F)100質量部に対して、表面硬度の観点から、通常30質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、最も好ましくは120質量部以上であってよい。一方、透明性の観点から、通常300質量部以下、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下であってよい。
【0095】
(C)レベリング剤:
上記第3ハードコート形成用塗料には、上記第3ハードコートの表面を平滑なものにし、上記第1ハードコートを形成し易くする観点から、更に(C)レベリング剤を含ませることが好ましい。
【0096】
上記成分(C)レベリング剤については、上記第2ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記第3ハードコート形成用塗料に用いる上記成分(C)としては、これらの中で、アクリル系レベリング剤、及びシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0097】
上記第3ハードコート形成用塗料が(F)活性エネルギー線硬化性樹脂と(D)無機粒子を含む塗料である場合、上記成分(C)の配合量は、上記成分(F)100質量部に対して、上記第3ハードコートの表面を平滑なものにし、上記第1ハードコートを形成し易くする観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であってよい。一方、上記第3ハードコートの上に、上記第1ハードコート形成用塗料が弾かれることなく良好に塗工できるようにする観点から、通常1質量部以下、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下であってよい。
【0098】
上記第3ハードコート形成用塗料には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
【0099】
上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0100】
上記光重合開始剤については、第1ハードコート形成用塗料の説明において上述した。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0101】
上記第3ハードコート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及び有機粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0102】
上記第3ハードコート形成用塗料は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は上記成分(F)、上記成分(D)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。これらの中で、1‐メトキシ‐2‐プロパノールが好ましい。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0103】
上記第3ハードコート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0104】
上記第3ハードコート形成用塗料を用いて上記第3ハードコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0105】
上記第3ハードコートの厚みは、表面硬度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であってよい。一方、耐カール性、及び耐曲げ性の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下であってよい。
【0106】
なお上記第3ハードコートを形成する態様にあっては、上記第2ハードコート形成用塗料として、上記第3ハードコート形成用塗料と同じ塗料を用いる態様も好ましい。また上記第3ハードコートを形成する態様にあっては、上記第1ハードコートによるカール力と上記第3ハードコートによるカール力の和を勘案して上記第2ハードコートの形成用塗料、及び厚みを設定すべきことは言うまでもない。
【0107】
透明樹脂フィルム:
上記透明樹脂フィルムは、上記第1ハードコート;上記第1ハードコート及び上記第2ハードコート;上記第1ハードコート及び上記第3ハードコート;又は上記第1ハードコート、上記第2ハードコート、及び上記第3ハードコート;をその上に形成するための透明フィルム基材となる層である。上記透明樹脂フィルムとしては、高い透明性を有するものであること以外は制限されず、好ましくは高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。上記透明樹脂フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、及びビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のアクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン、及び4-メチル-ペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂;及びポリイミド系樹脂;などのフィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を、2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0108】
上記透明樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明のハードコート積層フィルムの取扱性の観点からは、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。本発明のハードコート積層フィルムを高い剛性を必要としない用途に用いる場合には、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明のハードコート積層フィルムをタッチパネルのディスプレイ面板として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。また装置の薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。
【0109】
上記透明樹脂フィルムは、好ましくは、アクリル系樹脂の透明樹脂フィルムである。上記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主として(通常50モル%以上、好ましくは65モル%以上、より好ましくは70モル%以上)含む共重合体、及びこれらの変性体などをあげることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0110】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などをあげることができる。
【0111】
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主として含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、及びN-置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合体などをあげることができる。
【0112】
上記変性体としては、例えば、分子内環化反応によりラクトン環構造が導入された重合体;分子内環化反応によりグルタル酸無水物が導入された重合体;及び、イミド化剤(例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアンモニアなどをあげることができる。)と反応させることによりイミド構造が導入された重合体(以下、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂という。);などをあげることができる。
【0113】
上記アクリル系樹脂の透明樹脂フィルムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物のフィルムをあげることができる。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を、2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0114】
上記透明樹脂フィルムは、より好ましくは、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体のフィルムである。表面硬度、耐擦傷性、透明性、表面平滑性、外観、剛性、及び耐湿性に優れたハードコート積層フィルムとなり、タッチパネルのディスプレイ面板として好適に用いることができる。上記ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体中の(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位の含有量は、全重合性モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、通常50~95モル%、好ましくは65~90モル%、より好ましくは70~85モル%であってよい。ここで「重合性モノマー」とは、(メタ)アクリル酸メチル、ビニルシクロヘキサン、及びこれらと共重合可能なモノマーを意味する。該共重合可能なモノマーは、通常、炭素・炭素二重結合を有する化合物であり、典型的にはエチレン性二重結合を有する化合物である。
【0115】
上記透明樹脂フィルムは、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のフィルムである。表面硬度、耐擦傷性、透明性、表面平滑性、外観、剛性、耐熱性、及び耐熱寸法安定性に優れたハードコート積層フィルムとなり、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることができる。
【0116】
上記アクリル系樹脂の黄色度指数(JIS K7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数が3以下のアクリル系樹脂を用いることにより、画像表示装置の部材として好適に用いることのできるハードコート積層フィルムを得ることができる。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0117】
上記アクリル系樹脂のメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)は、押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましくは0.1~20g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分である。
【0118】
また上記アクリル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、アクリル系樹脂を100質量部としたとき、0.01~10質量部程度である。
【0119】
上記透明樹脂フィルムは、好ましくは、第一アクリル系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二アクリル系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである。なお本明細書においては、上記α1層側にタッチ面が形成されるものとして本発明を説明する。
【0120】
アクリル系樹脂は表面硬度には優れているが、切削加工性が不十分になり易いのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は切削加工性には優れているが、表面硬度が不十分になり易い。そのため上記の層構成の透明多層フィルムを用いることにより、両者の弱点を補い合い、表面硬度、及び切削加工性の何れにも優れたハードコート積層フィルムを容易に得ることができるようになる。
【0121】
上記α1層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの表面硬度の観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、更に好ましくは80μm以上であってよい。
【0122】
上記α2層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、上記α1層と同じ層厚みであることが好ましい。
【0123】
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常-5~+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。
【0124】
上記β層の層厚みは、特に制限されないが、本発明のハードコート積層フィルムの耐切削性の観点から、通常20μm以上、好ましくは80μm以上であってよい。
【0125】
上記α1層及び上記α2層に用いるアクリル系樹脂については、上述した。
【0126】
なお上記α1層に用いるアクリル系樹脂と、上記α2層に用いるアクリル系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えば種類、メルトマスフローレート、及びガラス転移温度などの異なるアクリル系樹脂を用いても良いが、本発明のハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
【0127】
上記β層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0128】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0~30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100~70質量部)、好ましくは0~10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100~90質量部)の量で用いることにより、耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
【0129】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0130】
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01~10質量部程度である。
【0131】
上記透明樹脂フィルムの製造方法は特に制限されない。上記透明樹脂フィルムが第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである場合の好ましい製造方法としては、特開2015-083370号公報に記載された方法をあげることができる。また上記第1ハードコートや上記第2ハードコートを形成するに際し、上記透明樹脂フィルムのハードコート形成面又は両面に、ハードコートとの接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
【0132】
図2は本発明のハードコート積層フィルムの一例を示す断面の概念図である。タッチ面側から順に、第1ハードコート1、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)2、芳香族ポリカーボネート系樹脂層(β)3、第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)4、及び第2ハードコート5を有している。
【0133】
本発明のハードコート積層フィルムは、所望により、上記第1ハードコート、上記第2ハードコート、上記第3のハードコート、及び透明樹脂フィルムの層以外の任意の層を有していてもよい。上記任意の層としては、例えば、第4のハードコート、アンカーコート層、粘着剤層、透明導電層、高屈折率層、低屈折率層、及び反射防止機能層などをあげることができる。
【0134】
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、上記学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、上記第1ハードコートの表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察したとき、傷が認められないものであることが好ましい。往復10000回擦った後、傷が認められないものであることがより好ましい。往復11000回擦った後、傷が認められないものであることが更に好ましい。往復12000回擦った後、傷が認められないものであることが一層好ましい。往復13000回擦った後、傷が認められないものであることが最も好ましい。より多い回数擦った後、傷が認められないものであることが好ましい。このような耐擦傷性(耐スチールウール性)を有することにより、本発明のハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。
【0135】
本発明のハードコート積層フィルムは、全光線透過率(JIS K 7361-1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%以上であることにより、本発明のハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0136】
本発明のハードコート積層フィルムは、最小曲げ半径が好ましくは70mm以下、より好ましくは60mm以下、更に好ましくは50mm以下、より更に好ましくは40mm以下、最も好ましくは30mm以下である。最小曲げ半径が好ましくは70mm以下であることにより、本発明のハードコート積層フィルムは、フィルムロールとして容易に扱うことができるようになり、製造効率などの点で有利になる。最小曲げ半径は小さいほど好ましい。ここで最小曲げ半径は、下記実施例の試験(ホ)に従い測定した値である。なお最小曲げ半径は、ハードコート積層フィルムを折り曲げたとき、曲げ部の表面にクラックが発生する直前の曲げ半径であり、曲げの限界を示す指標である。曲げ半径は、曲率半径と同様に定義される。
【0137】
曲率半径は、以下のように定義される。曲線のM点からN点までの長さをΔS;M点における接線の傾きと、N点における接線の傾きとの差をΔα;M点における接線と垂直であり、かつM点で交わる直線と、N点における接線と垂直であり、かつN点で交わる直線との交点をO;としたとき、ΔSが十分に小さいときは、M点からN点までの曲線は円弧に近似することができる(図3)。このときの半径が曲率半径と定義される。また曲率半径をRとすると、∠MON=Δαであり、ΔSが十分に小さいときは、Δαも十分に小さいから、ΔS=RΔαが成り立ち、R=ΔS/Δαである。
【0138】
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート表面の水接触角が好ましくは95度以上、より好ましくは100度以上、更に好ましくは105度以上である。本発明のハードコート積層フィルムをタッチパネルのディスプレイ面板として用いる場合、上記第1ハードコートはタッチ面を形成することになる。上記第1ハードコート表面の水接触角が95度以上であることにより、タッチ面上において、指やペンを思い通りに滑らし、タッチパネルを操作することができるようになる。指やペンを思い通りに滑らせるという観点からは、水接触角は高い方が好ましく、水接触角の上限は特にないが、通常は120度程度で十分である。ここで水接触角は、下記実施例の試験(へ)に従い測定した値である。
【0139】
本発明のハードコート積層フィルムは、上記第1ハードコート表面の綿拭後の水接触角が好ましくは往復1万5千回綿拭後、より好ましくは往復2万回綿拭後、更に好ましくは往復2万5千回綿拭後において、好ましくは95度以上、より好ましくは100度以上、更に好ましくは105度以上である。往復1万5千回綿拭後の水接触角が95度以上であることにより、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持することができる。水接触角95度以上を維持できる綿拭回数は多いほど好ましい。ここで綿拭後の水接触角は、下記実施例の試験(ト)に従い測定した値である。
【0140】
本発明のハードコート積層フィルムの黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることができる。
【0141】
本発明のハードコート積層フィルムは、上述のように好ましい特性を有することから、物品又は物品の部材として好適に用いることができる。上記物品又は物品の部材としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、及びエレクトロルミネセンスディスプレイなどの画像表示装置、及びこれらのディスプレイ面板、透明導電性基板、及び筐体などの部材;テレビ、パソコン、タブレット型情報機器、スマートフォン、及びこれらの筐体やディスプレイ面板などの部材;更には冷蔵庫、洗濯機、食器棚、衣装棚、及びこれらを構成するパネル;建築物の窓や扉など;車両、車両の窓、風防、ルーフウインドウ、及びインストルメントパネルなど;電子看板、及びこれらの保護板;ショーウインドウ;太陽電池、及びその筐体や前面板などの部材;などをあげることができる。
【実施例
【0142】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
測定方法
(イ)耐擦傷性1(耐スチールウール性):
ハードコート積層フィルムを、第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機(摩擦試験機2形)に置いた。続いて、学振形試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、摩擦端子の移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で、試験片の表面を往復9000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察した。傷が認められない場合には、更に往復1000回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復13000回後でも傷は認められない。
B:往復12000回後では傷は認められないが、往復13000回後には傷を認めることができる。
C:往復11000回後では傷は認められないが、往復12000回後には傷を認めることができる。
D:往復10000回後では傷は認められないが、往復11000回後には傷を認めることができる。
E:往復9000回後では傷は認められないが、往復10000回後には傷を認めることができる。
F:往復9000回後で傷を認めることができる。
【0144】
(ロ)全光線透過率:
JIS K 7361-1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0145】
(ハ)ヘーズ;
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
【0146】
(ニ)黄色度指数;
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec-3700(商品名)」を用いて測定した。
【0147】
(ホ)最小曲げ半径:
JIS-K6902:2007の曲げ成形性(B法)を参考とし、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%にて24時間状態調節した試験片について、曲げ温度23℃±2℃、折り曲げ線はハードコート積層フィルムのマシン方向と直角となる方向とし、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが外側となるように折り曲げて曲面が形成されるようにして行った。クラックが発生しなかった成形ジグのうち正面部分の半径の最も小さいものの正面部分の半径を最小曲げ半径とした。この「正面部分」は、JIS K6902:2007の18.2項に規定されたB法における成形ジグに関する同用語を意味する。
【0148】
(へ)水接触角:
ハードコート積層フィルムの第1ハードコート面を、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
【0149】
(ト)耐擦傷性2(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの第1ハードコートが表面になるようにJIS L 0849:2013の学振形試験機に置き、学振形試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の第1ハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復1万回擦った後、上記(へ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。水接触角が95度以上であるときは、更に往復5千回擦った後、上記(へ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復2万5千回後でも水接触角95度以上。
B:往復2万回後では水接触角95度以上だが、2万5千回後は95度未満。
C:往復1万5千回後では水接触角95度以上だが、2万回後は95度未満。
D:往復1万回後では水接触角95度以上だが、1万5千回後は95度未満。
E:往復1万回後で水接触角95度未満。
【0150】
(チ)表面平滑性(表面外観):
ハードコート積層フィルムの表面(両方の面)を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、曇感がない。
○:間近に光を透かし見ると、僅かな曇感のある箇所がある。
△:間近に見ると、表面にうねりや傷を僅かに認める。また曇感がある。
×:表面にうねりや傷を多数認めることができる。また明らかな曇感がある。
【0151】
(リ)碁盤目試験(密着性):
JIS K 5600-5-6:1999に従い、ハードコート積層フィルムに第1ハードコート面側から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0152】
(ヌ)切削加工性(曲線状切削加工線の状態):
コンピュータにより自動制御を行うルーター加工機を使用し、ハードコート積層フィルムに、直径2mmの真円形の切削孔と直径0.5mmの真円形の切削孔を設けた。このとき使用したミルは刃先の先端形状が円筒丸型の超硬合金製4枚刃、ニック付きのものであり、刃径は加工箇所に合わせて適宜選択した。続いて直径2mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。同様に直径0.5mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。表には前者の結果-後者の結果の順に記載した。
◎:顕微鏡観察でもクラック、ヒゲは認められない
○:顕微鏡観察でもクラックは認められない。しかしヒゲは認められる。
△:目視でクラックは認められない。しかし顕微鏡観察ではクラックが認められる。
×:目視でもクラックが認められる。
【0153】
(ル)鉛筆硬度:
試験速度を2mm/秒とし、試験回数を5回にしたこと以外は、JIS K 5600-5-4:1999に従い、試験長さ25mm、及び荷重750gの条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、ハードコート積層フィルムの第1ハードコート面について測定した。傷跡が生じたか否かの判定は、蛍光灯下、蛍光灯から50cm離れた位置において、サンプル表面を目視観察することにより行った。
【0154】
(ヲ)ハンドリング性:
巻長さ300mのハードコート積層フィルムロールを、ライン速度20m/分で巻き返し作業を行った後、巻姿、及びハードコート積層フィルムの第1ハードコート面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:クラックは認められない。巻姿も良好
○:クラックは認められない。しかし、巻弛みなどが発生しており、巻姿は不十分であった。
△:クラックが巻長さ300m中に1~10ヵ所発生していた
×:クラックが巻長さ300m中に11ヵ所以上発生していた
【0155】
使用した原材料
(A)(a1)多官能(メタ)アクリレートと(a2)多官能チオールとの共重合体:
(A-1)大阪有機化学工業株式会社の「STAR‐501(商品名)」。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと4官能チオールとの所謂デンドリマー構造を有する共重合体。硫黄含有量2.2質量%。質量平均分子量1万2千、数平均分子量940、Z平均分子量7万3千。
【0156】
(A’)参考
(A’-1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A’-2)昭和電工株式会社の1分子中に4個の2級チオール基を有する化合物「カレンズMT PE-1(商品名)」。ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトブチレート)。
【0157】
(B)撥水剤:
(B-1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY-1203(商品名)」。固形分20質量%。
(B-2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。固形分70質量%。
(B-3)フルオロポリエーテル系撥水剤((メタ)アクリロイル基を有さない。)
(B-4)アクリル・エチレン共重合体ワックス系撥水剤。
(B-5)ユニマテック株式会社のアクリロイル基含有フルオロアルキル系撥水剤(2‐(パーフルオロブチル)エチルアクリレート)「CHEMINOXFAAC-4(商品名)」。固形分100質量%。
【0158】
(C)レベリング剤:
(C-1)ビックケミー・ジャパン株式会社のアクリル重合体系レベリング剤「BYK-399(商品名)」。固形分100質量%。
(C-2)楠本化成株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「ディスパロンNSH-8430HF(商品名)」。固形分10質量%。
【0159】
(D)無機粒子:
(D-1)ビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径20nmのシリカ粒子。
【0160】
(E)任意成分:
(E-1)BASF社のアセトフェノン系光重合開始剤(1‐ヒドロキシ‐シクロヘキシル‐フェニルケトン)「IRGACURE184(商品名)」。
(E-2)BASF社のアセトフェノン系光重合開始剤(2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン)「IRGACURE127(商品名)」。
(E-3)メチルイソブチルケトン
(E-4)1‐メトキシ‐2‐プロパノール
【0161】
(H1)第1ハードコート形成用塗料:
(H1-1)上記(A-1)100質量部、上記(B-1)1.25質量部(固形分換算0.25質量部)、上記(B-2)0.06質量部(固形分換算0.042質量部)、上記(E-1)2質量部、上記(E-2)1質量部、上記(E-3)40質量部、及び上記(E-4)100質量部を混合攪拌して得た塗料。表1に配合を示す。なお表に記載した値は、溶剤(上記(E-3)と上記(E-4))を除いて、全て固形分換算の値である。また表中の「第1HC塗料」とは、第1ハードコート形成用塗料を意味する。以下、同様である。
【0162】
(H1-2~13)塗料の配合を表1~4の何れか1に示すように変更したこと以外は、上記(H1-1)と同様にして得た塗料。
【0163】
(H2)第2ハードコート形成用塗料:
(H2-1)上記(A-1)100質量部、上記(C-1)0.5質量部、上記(E-1)2質量部、上記(E-2)1質量部、上記(E-3)40質量部、及び上記(E-4)100質量部を混合攪拌して得た塗料。なお表に記載した値は、溶剤(上記(E-3)と上記(E-4))を除いて、全て固形分換算の値である。表中の「第2HC塗料」とは、第2ハードコート形成用塗料を意味する。以下、同様である。
【0164】
(H2-2~6)塗料の配合を表1~4の何れか1に示すように変更したこと以外は、上記(H2-1)と同様にして得た塗料。
【0165】
(H3)第3ハードコート形成用塗料:
(H3-1)上記(A-1)100質量部、上記(D-1)140質量部、上記(C-2)2質量部(固形分換算0.2質量部)、上記(E-1)2質量部、上記(E-2)1質量部、上記(E-3)80質量部、及び上記(E-4)200質量部を混合攪拌して得た塗料。
【0166】
(P)透明樹脂フィルム:
(P-1)2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイ6、及び第一鏡面ロール8(溶融フィルムを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール。)と第二鏡面ロール9とで溶融フィルム7を押圧する機構を有する引巻取機を備えた装置(図4参照)を使用し、2種3層多層樹脂フィルムの両外層(α1層とα2層)としてエボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド「PLEXIMID TT50(商品名)」を、中間層(β層)として住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301-4(商品名)」を、共押出Tダイ6から連続的に共押出し、α1層が第一鏡面ロール側となるように、回転する第一鏡面ロールと第二鏡面ロールとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、α1層の層厚み80μm、β層の層厚み90μm、α2層の層厚み80μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度300℃、第一鏡面ロールの設定温度130℃;第二鏡面ロールの設定温度120℃、引取速度6.5m/分であった。
【0167】
(P-2)両外層として、上記「PLEXIMID TT50(商品名)」の替わりに、重合性モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、メチルメタクリレートに由来する構成単位を76.8モル%の量で、及びビニルシクロヘキサンに由来する構成単位を23.2モル%の量で含むアクリル系樹脂を用いたこと以外は、上記(P-1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
【0168】
(P-3)三菱樹脂株式会社の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」、厚み250μm。
【0169】
(P-4)単層Tダイ、及び第一鏡面ロール(溶融フィルムを抱いて次の移送ロールへと送り出す側のロール。)と第二鏡面ロールとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置を使用し、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301-4(商品名)」をTダイから連続的に押出し、回転する第一鏡面ロールと第二鏡面ロールとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度320℃、第一鏡面ロールの設定温度140℃;第二鏡面ロールの設定温度120℃、引取速度5.6m/分であった。
【0170】
例1
上記(P-1)の両面にコロナ放電処理を行った。両面とも濡れ指数は64mN/mであった。次にα2層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H2-1)をウェット厚み42.4μm(硬化後厚み18μm)となるように塗布した。続いて炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置を使用し(図5参照)、鏡面金属ロール11の温度60℃、積算光量500 mJ/cmの条件で処理し、第2ハードコートを形成した。次にα1層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1-1)をウェット厚み42.5μm(硬化後厚み18μm)となるように塗布した。続いて炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置(図5参照)を使用し、鏡面金属ロール11の温度60℃、積算光量500 mJ/cmの条件で処理して、第1ハードコートを形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(ヲ)を行った。結果を表1に示す。なお表中、「第1HC厚み」は第1ハードコートの硬化後厚みを意味する。「第2HC厚み」は第2ハードコートの硬化後厚みを意味する。表2~4についても同様である。
【0171】
例2、3
ハードコートの厚みを表1に示す厚みに変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0172】
例4、6~14、13-2、13-3
用いる塗料を表1~3の何れか1に示すものに変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1~3の何れか1に示す。なお例8は水接触角が最初から95度未満であったため、耐擦傷性2の試験は省略した。
【0173】
例5
用いる塗料を表1に示すものに変更し、ハードコートの厚みを表1に示す厚みに変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0174】
例15~17
用いる透明樹脂フィルムを表3又は4に示すものに変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表3又は4に示す。
【0175】
例17-2
用いる塗料、及び透明樹脂フィルムを表4に示すものに変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0176】
例18
上記(P-1)の両面にコロナ放電処理を行った。両面とも濡れ指数は64mN/mであった。次にα2層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H2-6)をウェット厚み53.8μm(硬化後厚み25μm)となるように塗布した。続いて炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置を使用し(図5参照)、鏡面金属ロール11の温度60℃、積算光量500 mJ/cmの条件で処理し、第2ハードコートを形成した。次にα1層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H3-1)をウェット厚み32.3μm(硬化後厚み15μm)となるように塗布した。次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置を使用し(図5参照)、鏡面金属ロール11の温度90℃、積算光量80mJ/cmの条件で処理した。上記(H3-1)のウェット塗膜は、指触乾燥状態(タック性のない状態)の塗膜になった。次に上記(H3-1)の指触乾燥状態の塗膜の上にダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1-1)をウェット厚み23.6μm(硬化後厚み10μm)となるように塗布した。続いて炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置(図5参照)を使用し、鏡面金属ロール11の温度60℃、積算光量500 mJ/cmの条件で処理して、第1ハードコートを形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(ヲ)を行った。結果を表4に示す。
【0177】
なお、表中の「第3HC厚み」は、第3ハードコートの硬化後厚みを意味する。また本明細書において、「塗膜が指触乾燥状態(タック性のない状態)にある」とは、塗膜がウェブ装置に直接触れてもハンドリング上の問題はない状態にあるという意味である。
【0178】
例19
上記(P-1)のα1層側の面にコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理後の濡れ指数は64mN/mであった。次にα1層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(H1-1)をウェット厚み42.5μm(硬化後厚み18μm)となるように塗布した。続いて炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた後、高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置10と直径25.4cmの鏡面金属ロール11とを対置した硬化装置(図5参照)を使用し、鏡面金属ロール11の温度60℃、積算光量500mJ/cm2の条件で処理して、第1ハードコートを形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(ヲ)を行った。結果を表4に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
【表4】
【0183】
本発明のハードコート積層フィルムは、耐擦傷性(少なくとも耐スチールウール性)に優れる。本発明の好ましいハードコート積層フィルムは、耐擦傷性、耐クラック性、表面外観、透明性、色調、表面硬度、及び耐曲げ性に優れ、タッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として好適な物性を発現している。なお、例14のハードコート積層フィルムに対する上記試験(イ)耐擦傷性1(耐スチールウール性)の試験において、最初の摩擦回数を往復9000回に替えて往復1000回にする試験も行ってみたところ、往復1000回後で既に傷を認めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0184】
図1】実施例で用いた上記成分(A-1)のGPC曲線である。
図2】本発明のハードコート積層フィルムの一例を示す断面図である。
図3】曲率半径を説明する図である。
図4】実施例で用いた製膜装置の概念図である。
図5】実施例で用いた紫外線照射装置の概念図である。
【符号の説明】
【0185】
1:第1ハードコート
2:第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α1)
3:芳香族ポリカーボネート系樹脂の層(β)
4:第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(α2)
5:第2ハードコート
6:Tダイ
7:溶融フィルム
8:第一鏡面ロール
9:第二鏡面ロール
10:紫外線照射装置
11:鏡面金属ロール
12:ウェブ
13:抱き角
図1
図2
図3
図4
図5