(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物、及び電子レンジ加熱用容器
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
(21)【出願番号】P 2018104753
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(73)【特許権者】
【識別番号】390021429
【氏名又は名称】株式会社JSPパッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 良成
(72)【発明者】
【氏名】秋元 斉
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079940(JP,A)
【文献】特開2003-192819(JP,A)
【文献】特開2006-028292(JP,A)
【文献】特開昭58-196239(JP,A)
【文献】特開昭57-109834(JP,A)
【文献】特開2012-177086(JP,A)
【文献】特開平08-085532(JP,A)
【文献】特開平11-042747(JP,A)
【文献】特開2003-231169(JP,A)
【文献】特開2005-105113(JP,A)
【文献】特開2016-188301(JP,A)
【文献】特開2016-113580(JP,A)
【文献】特開2004-142262(JP,A)
【文献】特開2001-096602(JP,A)
【文献】特表2017-523272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0022366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 9/00 - 9/42
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
B32B 1/00 - 43/00
B65D 1/00 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m
3以上
130kg/m
3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する方法において、
該物理発泡剤として、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用い、
該物理発泡剤100重量%に対するジメチルエーテルの配合割合が、50重量%を超え、
該ポリスチレン系樹脂100重量部に対する該物理発泡剤の配合量が、2.0重量部以上3.8重量部未満であり、
該ポリスチレン系樹脂100重量部に対するブタンの配合量が、0.5重量部以上1.5重量部未満であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートが、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられる熱成形用シートであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対するブタンの配合量が、0.5重量部以上0.9重量部未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記ブタンが、イソブタンであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対するジメチルエーテルの配合量が、0.5~2.7重量部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項5】
ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより形成された、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m
3以上
130kg/m
3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、
該物理発泡剤が、ブタンとジメチルエーテルとを含み、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるブタンの含有量が、0.5重量%以上1.4重量%未満であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面から厚み中心方向に向かって200μmまでの部分である表層部Bの見掛け密度(B)が、140~270kg/m
3
であり、
該見掛け密度(B)に対する、該ポリスチレン系樹脂発泡シートを160℃で30秒間加熱した後の発泡シートの表面から厚み中心方向に向かって200μmまでの部分である表層部Cの見掛け密度(C)の比(C/B)が、0.65~1であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートが、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられる熱成形用シートであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるブタンの含有量が、0.5重量%以上0.9重量%未満であることを特徴とする請求項
5に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項7】
前記ブタンが、イソブタンであることを特徴とする請求項
5または6に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物、及び電子レンジ加熱用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られる容器は、トレイ、弁当箱、丼、カップ等の各種容器として、コンビニエンストア等で広く使用されている。その中でも、近年では、調理済食品が包装された状態で電子レンジ加熱される、電子レンジ加熱用容器の需要が高まっている。
このような電子レンジ加熱用容器としては、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリオレフィン系樹脂フィルムなどが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものが広く使用されている。
【0003】
電子レンジ加熱用容器を熱成形可能な積層発泡シートとしては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体とポリスチレン系樹脂との混合物であって、相構造指数が0.4~2のポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡シートの片面に、ゴム変性ポリスチレン樹脂層を介して、ポリオレフィン系樹脂フィルム層が積層接着されてなる多層シートが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子レンジ加熱用容器の熱成形に用いられる前記耐熱性発泡シートは、軽量性やコストの観点から、その見掛け密度が低いことが好ましい。しかし、見掛け密度の低い発泡シートを熱成形してなる容器を、パスタ等の食品が包装された状態で電子レンジにより加熱した場合、加熱条件によっては、食品からの伝熱によって容器の表面が局所的に加熱され、容器の表面に部分的な膨れ等(以下、ミミズ腫れということがある)が発生するおそれがあることがわかった。
【0006】
本発明は、軽量で、熱成形性に優れ、食品を包装した状態で電子レンジ加熱を行っても、ミミズ腫れが発生しにくく、外観の低下が抑制された容器を熱成形により得ることが可能なポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供することを目的とする。また、ミミズ腫れの発生が抑制された容器を熱成形により得ることが可能なポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートが巻き取られたポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物、及びミミズ腫れの発生が抑制された電子レンジ加熱用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物、電子レンジ加熱用容器が提供される。
[1] ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上130kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する方法において、
該物理発泡剤として、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用い、
該物理発泡剤100重量%に対するジメチルエーテルの配合割合が、50重量%を超え、
該ポリスチレン系樹脂100重量部に対する該物理発泡剤の配合量が、2.0重量部以上3.8重量部未満であり、
該ポリスチレン系樹脂100重量部に対するブタンの配合量が、0.5重量部以上1.5重量部未満であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートが、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられる熱成形用シートであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
[2] 前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対するブタンの配合量が、0.5重量部以上0.9重量部未満であることを特徴とする前記1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
[3] 前記ブタンが、イソブタンであることを特徴とする前記1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
[4] 前記ポリスチレン系樹脂100重量部に対するジメチルエーテルの配合量が、0.5~2.7重量部であることを特徴とする前記1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
[5] ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより形成された、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上130kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、
該物理発泡剤が、ブタンとジメチルエーテルとを含み、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるブタンの含有量が、0.5重量%以上1.4重量%未満であり、
該見掛け密度(B)に対する、該ポリスチレン系樹脂発泡シートを160℃で30秒間加熱した後の発泡シートの表面から厚み中心方向に向かって200μmまでの部分である表層部Cの見掛け密度(C)の比(C/B)が、0.65~1であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡シートが、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられる熱成形用シートであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
[6] 前記ポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるブタンの含有量が、0.5重量%以上0.9重量%未満であることを特徴とする前記5に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[7] 前記ブタンが、イソブタンであることを特徴とする前記5または6に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法によれば、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂を用い、特定配合量のブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いることにより、軽量であるにもかかわらず、電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制された容器を熱成形可能な、ポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、ビカット軟化温度110℃以上の特定のポリスチレン系樹脂を用い、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いて製造され、ブタンの含有量が少ないものであることにより、軽量であるにもかかわらず、電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制された容器を熱成形可能なものである。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物は、ロール状物を構成する発泡シートの各部分において、ブタンの含有量が少ないと共に、ブタン含有量が一定範囲内に収まっており、部分ごとの物理発泡剤量のバラツキが小さいので、該ロール状物から巻き戻された発泡シートの熱成形により得られる容器は、厚みが均一で、電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制されたものである。
本発明の電子レンジ加熱用容器は、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いて製造された発泡シートの熱成形により得られたものであり、ブタンの含有量が少ないので、電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物、電子レンジ加熱用容器についてこの順で詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法は、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することによる、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上150kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法において、該物理発泡剤として、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用い、該ポリスチレン系樹脂に対する該物理発泡剤の配合量が特定量であり、該ポリスチレン系樹脂に対するブタンの配合量が特定量である、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法である。
【0011】
本発明の製造方法は、例えば、次のようにして実施することができる。まず、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と、必要に応じて添加されるタルクなどの気泡調整剤等を押出機に供給し、加熱、溶融、混練して溶融樹脂とする。次に、該溶融樹脂に物理発泡剤を圧入し、さらに混練し、発泡可能な樹脂温度に調整して発泡性溶融樹脂とする。次に、該発泡性溶融樹脂を押出機の下流側に取り付けられた環状ダイに導入し、大気中に押出発泡させて、筒状発泡体を形成する。次いで該筒状発泡体を円柱状冷却装置に沿わせて引取りながら切り開くことにより、発泡シートを得ることができる。
なお、環状ダイを用いて発泡シートを製造すると、コルゲートと呼ばれる波状模様の発生を抑えて、幅1000mm以上の幅広の発泡シートを容易に製造することができる。
【0012】
本発明の製造方法においては、発泡シートを構成する基材樹脂としてビカット軟化温度が110℃以上のポリスチレン系樹脂が用いられる。
ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂としては、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体(以下、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体及びそれらの混合物を総称してスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体ともいう。)、スチレン-αメチルスチレン等の耐熱ポリスチレンと称されるものが例示される。また、ポリスチレンとこれらの耐熱ポリスチレンとの混合物や、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)と耐熱ポリスチレンとの混合物、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物、耐熱ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物、ポリスチレンと耐熱ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等も例示される。これらの中でも、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)と耐熱ポリスチレンとの混合物がより好ましく用いられ、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)とスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体との混合物が特に好ましく用いられる。
【0013】
前記スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体においては、該スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸成分の含有量は、該共重合体中に5~25重量%程度である。また、スチレンと共重合される共重合成分はメタクリル酸とアクリル酸との混合物であってもよい。また、成形性などを改良するために、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルが第三成分として共重合されていてもよい。
【0014】
本明細書において、樹脂のビカット軟化温度はJIS K7206(試験荷重はA法、伝熱媒体の昇温速度は50±5℃/時の条件)にて求められる。
【0015】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法においては、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤が用いられる。該物理発泡剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、2.0重量部以上3.8重量部未満である。該物理発泡剤の配合量が少なすぎると、所望される厚み、見掛け密度の発泡シートを得ることができないおそれがある。該配合量が多過ぎると、得られる発泡シートを熱成形してなる容器中の発泡剤含有量が多くなるので、電子レンジ加熱時の三次発泡による容器表面の部分的な膨れ等の発生を抑制できないおそれがある。かかる観点から、該全体配合量は、2.1重量部以上3重量部未満が好ましく、より好ましくは2.1重量部以上2.5重量部未満である。
【0016】
本発明の製造方法におけるブタンの配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上1.5重量部未満である。該ブタンの配合量が少なすぎると、得られる発泡シート中のブタン含有量が少なくなりすぎて、熱成形時の二次発泡性が低下し、熱成形性が損なわれるおそれがある。また、所望の厚み、見掛け密度の発泡シートを得ることができず、容器の軽量性が損なわれるおそれがある。該配合量が多すぎると、得られる発泡シート中のブタン含有量が多くなりすぎて、発泡シートを熱成形して得られた容器を電子レンジ加熱する際に、三次発泡が起き、ミミズ腫れが発生しやすくなるおそれがある。かかる観点から、該配合量は、0.5重量部以上1.2重量部未満であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5重量部以上0.9重量部未満である。
【0017】
前記ブタンとしては、ノルマルブタン、イソブタン、又はノルマルブタンとイソブタンを含む混合ブタンが用いられる。これらの中でも、発泡シートからの散逸速度が遅く、熱成形における発泡シートの二次発泡性を長期にわたって確保することができる点から、イソブタンが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法におけるジメチルエーテルの配合量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~2.7重量部であることが好ましい。ジメチルエーテルは、発泡シートからの散逸速度が速いので、物理発泡剤としてジメチルエーテルを用いることにより、得られる発泡シート中の発泡剤の含有量を少なくすることができる。その結果、得られる発泡シートを熱成形してなる容器は電子レンジで加熱する際の三次発泡が抑えられ、ミミズ腫れの発生が抑制されたものとなる。したがって、該配合量が上記範囲内であると、見掛け密度が小さく、軽量性に優れる容器を熱成形可能な発泡シートを製造できると共に、得られた発泡シートを熱成形してなる容器は、電子レンジ加熱時に、ミミズ腫れの発生が十分に抑制されたものとなる。さらに、熱ラミネーションや熱成形時の発泡シート表層部における微細気泡の発生を十分に抑制することができる。かかる観点から、該配合量は0.7~2.5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.9~2.3重量部である。
【0019】
本発明の製造方法における物理発泡剤中のジメチルエーテルの配合割合は、物理発泡剤100重量%に対して、50重量%を超えることが好ましい。ジメチルエーテルの配合割合が上記範囲内であると、得られた発泡シートを熱成形してなる容器は電子レンジ加熱する際に、ミミズ腫れの発生がより抑制されたものとなる。さらに、熱ラミネーションや熱成形時の発泡シート表層部における微細気泡の発生をより一層抑制することができる。かかる観点から、該配合割合は52重量%以上であることが好ましく、より好ましくは55重量%以上である。また、その上限は80重量%である。
【0020】
また、本発明で用いられる物理発泡剤は、本発明の目的、効果を阻害しない範囲においてブタンとジメチルエーテルに加え、その他の物理発泡剤を含んでもよい。その他の物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、水等の無機発泡剤が挙げられる。
【0021】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法によれば、軽量で、熱成形性に優れ、食品を包装した状態で電子レンジ加熱を行っても、ミミズ腫れが発生しにくい容器を熱成形可能なポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【0022】
従来の容器においては、電子レンジ加熱の際に、加熱条件によっては、ミミズ腫れの発生を防止することができない場合があった。該ミミズ腫れが発生する原因は、パスタ等の食品が入った容器を電子レンジで加熱する際に、パスタ等の食品の熱が容器に伝わり、容器の表面が局所的に加熱されて三次発泡することにより生じるものと考えられる。ミミズ腫れの発生は、容器としての性能自体を損なうものではなく、ミミズ腫れが発生した容器は使用可能ではあるが、外観不良となる。
【0023】
このようなミミズ腫れは、低見掛け密度(高発泡倍率)の発泡シートの熱成形により得られる容器で発生しやすいものと考えられる。低見掛け密度の発泡シートは、製造時に発泡剤を多く使用することにより、発泡シート中の発泡剤の残存量が多く、該発泡シートを熱成形してなる容器中の発泡剤の含有量が多くなるためである。
【0024】
このことから、ミミズ腫れは、電子レンジ加熱用容器の熱成形に用いる発泡シート中の発泡剤の残存量を減らせば抑制することができると考えられる。しかし、単に発泡シート製造時における発泡剤の配合量を減らすと、発泡倍率が低下して発泡シートの製造時の厚み(一次厚)が小さくなり、熱成形時の二次発泡後の厚み(二次厚)が不足して、得られる発泡シートの熱成形性が低下するおそれがある。一方、発泡シート製造時の発泡剤の配合量を減らしたままで、一次厚を確保しようとすると、発泡シートの樹脂量(坪量)を増加させなければならないので、容器の軽量性が損なわれるおそれがある。また、コストアップになってしまう。
【0025】
さらに、単に発泡シート製造時の発泡剤の配合量を減らすと、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のガラス転移温度の高い樹脂を基材樹脂とするポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する場合、発泡剤による溶融樹脂の可塑化が不十分となり、所望の厚み、見掛け密度の発泡シートを得ることが困難となるおそれがある。さらに、基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含む場合、押出発泡された発泡シートを引取ることが困難となるおそれがある。
【0026】
本発明の製造方法によれば、物理発泡剤としてブタンと共に散逸速度の速いジメチルエーテルを特定量含む物理発泡剤を用いているので、ジメチルエーテルが早期に散逸し、発泡シート中の物理発泡剤含有量が少なくなるので、最終的に得られる容器中の物理発泡剤含有量も少なくなる。その結果、ミミズ腫れの発生が抑制されるので、本発明方法によれば、軽量であるにもかかわらず、ミミズ腫れが発生しにくい容器を熱成形可能なポリスチレン系樹脂発泡シートを安定して得ることができる。また、基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含む場合でもあっても、製造時には可塑化に必要な量の物理発泡剤を配合することができるので、安定して発泡シートを製造することができる。
【0027】
また、ブタン等が多く残存する発泡シートは、熱ラミネーションや熱成形工程などにより加熱されたとき、発泡シートの表層部に残存する発泡剤により微細気泡が発生する場合がある。このような微細気泡の発生した発泡シートを熱成形して得られる容器は、電子レンジで加熱した場合、微細気泡がさらに発泡し、ミミズ腫れの発生を助長するおそれがある。
【0028】
それに対して、本発明により得られる発泡シートは、物理発泡剤としてブタンとジメチルエーテルとを用いており、ジメチルエーテルが早期に散逸し、発泡剤の含有量が少なくなるので、微細気泡の発生が抑制される。このため、得られる発泡シートを熱成形してなる容器はミミズ腫れの発生がより抑制されたものとなる。また、微細気泡の発生が抑制された発泡シートは熱成形性にも優れるものとなる。
【0029】
本発明においては、前記基材樹脂に、必要に応じて気泡調整剤、顔料、染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0030】
該気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。なかでも難燃性を阻害することがなく気泡径を調整することが容易であるタルクが好適である。気泡調整剤の添加量は、該気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、基材樹脂100重量部に対し、概ね、0.01~8重量部、更に0.02~5重量部、特に0.05~3重量部が好ましい。
【0031】
本発明方法により得られるポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、0.5~3mmである。該厚みが上記範囲内であると、得られる発泡シートの熱成形性が良好なものとなり、発泡シートの熱成形により得られる容器は剛性、断熱性、取り扱い性等に優れるものとなる。かかる観点から、該厚みは0.7~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは1~2mmである。
【0032】
該発泡シートの厚みは、発泡シートの幅方向にわたって等間隔の10箇所について厚みを測定し、それらを算術平均することにより求められる値である。
【0033】
該発泡シートの見掛け密度は、60kg/m3以上150kg/m3未満である。該見掛け密度が小さすぎると、得られる発泡シートを熱成形してなる容器の強度が低下するおそれがある。また、該見掛け密度が大きすぎると、容器の断熱性、軽量性が低下するおそれがある。かかる観点から、該見掛け密度は70kg/m3以上140kg/m3未満であることが好ましく、より好ましくは100kg/m3以上130kg/m3未満である。
【0034】
該発泡シートの見掛け密度は、次の通り測定される値である。発泡シートから縦25mm×横25mm×発泡シートの厚みの試験片を切り出して該試験片の重量(g)を測定し、該重量を1600倍して、単位換算することで坪量(g/m2)を求める。次いで、求められた発泡シートの坪量(g/m2)を前記発泡シートの厚み(mm)で除した値を単位換算し、発泡シートの見掛け密度(kg/m3)とする。
上記測定を、発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を発泡シートの見掛け密度とする。
【0035】
次に、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートについて説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより形成された、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上150kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、該物理発泡剤が、ブタンとジメチルエーテルとを含み、該ポリスチレン系樹脂発泡シートにおけるブタンの含有量が特定量である、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートである。
【0036】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、例えば、前記した本発明の製造方法により製造することができる。
【0037】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートを構成する基材樹脂は、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂である。ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂としては、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法で用いられるポリスチレン系樹脂と同様のものが例示される。
【0038】
本発明の発泡シートの製造に用いられる物理発泡剤は、前記発泡シートの製造方法で用いた、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤である。
【0039】
該ブタンとしては、ノルマルブタン、イソブタン、又はノルマルブタンとイソブタンを含む混合ブタンが用いられる。これらの中でも、発泡シートからの散逸速度が遅く、熱成形における発泡シートの二次発泡性や、可塑化を長期にわたって確保することができ、発泡シートのライフサイクルを長くすることができる点から、イソブタンを用いることが好ましい。
【0040】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートは、物理発泡剤としてブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用い、発泡シートにおけるブタンの含有量が特定量であることにより、軽量であるにもかかわらず、ミミズ腫れが発生しにくい容器を熱成形可能なポリスチレン系樹脂発泡シートである。
【0041】
また、ブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いると、本発明の製造方法において説明したように、発泡シートの二次発泡性を維持しつつ、得られた発泡シートの表層部に残留する物理発泡剤の含有量を少なくすることができる。また、発泡シートが熱ラミネーションなどによって加熱されることによる微細気泡の発生が抑制されるので、熱成形成を向上させると共に、ミミズ腫れの発生をより抑制することができる。
【0042】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート中のブタンの含有量は0.5重量%以上1.4重量%未満である。該含有量が少なすぎると、発泡シートの二次発泡性が低下して熱成形性が悪化し、成形不良が発生するおそれがある。また、所望される厚み、見掛け密度の容器を得ることができなくなるおそれがある。該含有量が多すぎると、発泡シートを熱成形して得られる容器は、電子レンジ加熱する際に、三次発泡が起きてミミズ腫れが発生しやすいものとなるおそれがある。かかる観点から、該含有量は、0.5重量%以上1.2重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以上1.1重量%未満であることがより好ましく、0.5重量%以上0.9重量%未満であることが更に好ましい。
【0043】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シート中のブタンの含有量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。具体的には、発泡シートから適量のサンプルを切り出し、このサンプルを完全に溶解し得る量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、十分に撹拌し発泡板中の発泡剤をトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行い、ブタンの含有量を求める。なお、発泡シートの片面または両面に熱ラミネーションによりフィルムが積層接着されている場合、フィルムの重量を差し引いて発泡シート中のブタンの含有量を求める。
【0044】
本発明の発泡シートの厚みは、前記本発明方法の場合と同様に、0.5~3mmであり、0.7~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは1~2mmである。
【0045】
該発泡シートの見掛け密度は、前記本発明方法の場合と同様に、60kg/m3以上150kg/m3未満であり、70kg/m3以上140kg/m3未満であることが好ましく、より好ましくは100kg/m3以上130kg/m3未満である。
【0046】
本発明の発泡シートにおいては、発泡シートの表面から厚み中心方向に向かって200μmまでの部分である表層部Bの見掛け密度(B)が、140~270kg/m3であることが好ましい。該見掛け密度(B)が上記範囲内であると、発泡シートは機械強度に優れるものとなる。かかる観点から、見掛け密度(B)は、145~250kg/m3であることがより好ましく、更に好ましくは150~220kg/m3である。
【0047】
さらに、表層部Bの見掛け密度(B)に対する、発泡シートを160℃で30秒間加熱した後の該発泡シートの表面から厚み中心方向に向かって200μmまでの表層部Cの見掛け密度(C)の比(C/B)が、0.6~1であることが好ましい。
比(C/B)がこの範囲内であることは、発泡シートの表層部における見掛け密度の変化が加熱前後で小さいことを意味する。したがって、該比(C/B)が上記範囲内にある発泡シートを熱成形してなる容器はミミズ腫れの発生がより抑制されたものとなる。かかる観点から、比(C/B)の下限は0.65であることが好ましく、より好ましくは0.7である。
該比がこのような範囲を満たす発泡シートは、例えば、前記した本発明の製造方法により得ることができる。
【0048】
前記表層部の見掛け密度の測定は次のように行なう。
発泡シートの表面から厚み方向中心に向かって200μmまでの部分から、幅5mm×長さ20mmの試験片を切り出し、試験片の重量と厚みをゲージで測定する。試験片の重量を試験片の体積(幅×長さ×厚み)で割算し、単位換算して表層部の見掛け密度を求める。
上記測定を、発泡シートの幅方向にわたって等間隔の10箇所について行い、それらの算術平均値を表層部の見掛け密度とする。
【0049】
本発明の発泡シートは、その片面または両面に、ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層接着し、積層発泡シートとすることができる。
【0050】
通常、ポリオレフィン系樹脂フィルムは、ポリスチレン系樹脂発泡シートと接着させるために接着層が設けられている。接着層を構成する接着剤としては、一般的に使用されるアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤などの従来公知の接着剤や、エチレン-酢酸ビニルなどの従来公知の接着性樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂フィルムとポリスチレン系樹脂フィルムとを予め接着させた、いわゆるPO/PSドライラミネートフィルムを用いることもできる。ポリオレフィン系樹脂フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂フィルムは耐油性に優れるため、該フィルムが積層接着された積層発泡シートを熱成形してなる容器は、油分の多い食品を包装し電子レンジ加熱する用途により好適に用いることができる。
【0052】
前記ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層接着させる方法としては、例えば、熱ラミネーションや押出ラミネーション等の公知の方法をあげることができる。中でも、軽量性やコストの観点から、熱ラミネーションにより発泡シートの片面または両面に、ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層接着させることが好ましい。
【0053】
前記熱ラミネーションの方法、熱ラミネーションに使用する装置は、従来公知のものを用いることができる。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂フィルムの坪量は、熱成形性と耐油性付与とを両立する観点から、10~50g/m2が好ましく、20~30g/m2であることがより好ましい。
【0055】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートにポリオレフィン系樹脂フィルムが積層接着された積層発泡シートである場合、発泡シートの坪量は、得られる容器の機械強度等の観点から100~300g/m2であることが好ましく、110~250g/m2であることがより好ましく、120~220g/m2であることがさらに好ましく、130~210g/m2であることが特に好ましい。同様の観点から、積層発泡シートの坪量は110~350g/m2であることが好ましく、120~300g/m2であることがより好ましく、140~250g/m2であることがさらに好ましい。
【0056】
次に、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物について説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物(以下、単にロール状物ともいう。)は、ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより形成された、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上150kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートが巻き取られたポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物において、該物理発泡剤が、ブタンとジメチルエーテルとを含み、該発泡シートのブタンの含有量がロール状物全体にわたって特定範囲内であり、該ロール状物の最外周部に位置する発泡シートのブタンの含有量(I)と該ロール状物の厚み方向中央部かつ幅方向中央部に位置する発泡シートのブタンの含有量(II)とが特定の関係を満たす、電子レンジ加熱用容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物である。
【0057】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物は、例えば、前記本発明の製造方法により製造されたポリスチレン系樹脂発泡シート、又は前記本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートを巻き取り機等にてロール状に巻き取ることにより形成される。
【0058】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物は、該ロール状物を構成する発泡シートのブタンの含有量が、ロール状物の全ての位置において0.5重量%以上1.4重量%未満である。該含有量が少なすぎると、発泡シートの二次発泡性が低下して熱成形性が悪化し、成形不良が発生するおそれがある。また、所望される厚みや見掛け密度の容器を得ることができなくなるおそれがある。該含有量が多すぎると、発泡シートを熱成形して得られる容器は、電子レンジ加熱する際に、三次発泡が起きてミミズ腫れが発生しやすいものとなる。かかる観点から、該含有量は、0.5重量%以上1.2重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以上0.9重量%未満であることがさらに好ましい。
【0059】
また、該ロール状物の最外周部に位置する発泡シートのブタン含有量(I)と該ロール状物の厚み方向中央部かつ幅方向中央部に位置する発泡シートのブタンの含有量(II)とは、下記(1)式を満たすことを要する。
0.8≦含有量(I)/含有量(II)≦1.0 ・・・(1)
【0060】
(1)式が満たされるということは、ロール状物の最外周部と巻きの中央部とで、発泡シート中のブタンの含有量に大きな差がないことを意味する。したがって、本発明のロール状物が、(1)式を満たすことにより、該ロール状物を巻き戻した発泡シートは、ロール状物の全体にわたり、均一の厚み、見掛け密度の容器を熱成形することができるものとなる。また、該容器は電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制されたものとなる。かかる観点から、(1)式の下限は、0.85であることが好ましく、より好ましくは0.9、更に好ましくは0.95である。
【0061】
通常、ポリスチレン系樹脂発泡シートは、製造後、ロール状物の状態で養生される。養生期間の経過とともに、ブタンが徐々に散逸し、発泡シート中のブタン含有量は減少するが、ロール状物の外周部と比較してロール状物の厚み方向中央部はブタンが散逸しにくい。したがって、物理発泡剤としてブタンのみを使用して発泡シートを製造し、ロール状物の状態で養生によりブタン量を減少させようとした場合、ロール状物の外周部と厚み方向中央部とでブタン含有量にバラつきが生じると考えられる。その結果、ロール状物の全周にわたって、均一の厚み、見掛け密度の容器を熱成形することができないおそれがある。また、養生期間を長くした場合であっても、ロール状物の厚み方向中央部に位置する発泡シートを熱成形してなる容器はミミズ腫れの発生を十分に抑制できないおそれがある。
【0062】
それに対して、本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物は、物理発泡剤としてブタンとジメチルエーテルとを用い、ロール状物を構成する発泡シートの各部分において、ブタンの含有量が少ないと共に、最外周部と巻きの中央部とで、発泡シート中のブタンの含有量の差が小さいものである。したがって、本発明のロール状物は、ロール状物の全周にわたって、厚み、見掛け密度が均一で、電子レンジ加熱の際にミミズ腫れの発生が抑制された容器を熱成形可能なものとなる。
【0063】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物のサイズは、特に限定されないが、通常、全長20~500mの発泡シートが巻き取られた大きさであり、ロール幅は630~2000mm、ロール径は500mm~2000mmである。ただし、ロール径は巻取り軸に10インチ軸を使用した際の直径である。
【0064】
次に、本発明の電子レンジ加熱用容器について説明する。
本発明の電子レンジ加熱用容器(以下、単に容器ともいう。)は、ビカット軟化温度が110℃以上のポリスチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる発泡性溶融樹脂を押出発泡することにより形成された、厚み0.5~3mm、見掛け密度60kg/m3以上150kg/m3未満のポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形することにより得られる電子レンジ加熱用容器において、該物理発泡剤が、ブタンとジメチルエーテルとを含み、該容器におけるブタンの含有量が特定量未満である電子レンジ加熱用容器である。
【0065】
本発明の電子レンジ加熱用容器は、例えば、前記本発明の製造方法により製造されたポリスチレン系樹脂発泡シート、前記本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート、あるいは前記本発明のポリスチレン系樹脂発泡シートロール状物を巻き戻した発泡シート等を熱成形することにより得られるものである。
【0066】
該ビカット軟化温度110℃以上のポリスチレン系樹脂としては、前記本発明の製造方法に記載したものが例示される。
【0067】
本発明の容器は、物理発泡剤としてブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いて製造された発泡シートを熱成形してなるものである。また、該ブタンとしてはイソブタンが好ましい。
【0068】
本発明の容器の熱成形に用いる発泡シートの厚みは、前記本発明の製造方法の場合と同様に、0.5~3mmであり、0.7~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは1~2mmである。
【0069】
本発明の容器の熱成形に用いる発泡シートの見掛け密度は、前記本発明の製造方法の場合と同様に、60kg/m3以上150kg/m3未満であり、70kg/m3以上140kg/m3未満であることが好ましく、より好ましくは100kg/m3以上130kg/m3未満である。
【0070】
本発明の容器中のブタンの含有量は、1.0重量%未満である。該含有量が多すぎると、電子レンジ加熱の際に、三次発泡によるミミズ腫れが発生しやすくなる。かかる観点から、該含有量は0.9重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.85重量%未満である。また、容器中のブタンの含有量の下限は通常0.5重量%である。
【0071】
前記容器中のブタンの含有量は、前記発泡シート中のブタンの含有量の測定と同様の方法で測定することができる。具体的には、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。まず、容器から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを完全に溶解し得る量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉める。その後、十分に撹拌し容器の発泡剤をトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行い、ブタンの含有量を求める。なお、片面または両面に熱ラミネーションによりフィルムが積層接着されている発泡シートを熱成形してなる容器の場合、フィルムの重量を差し引いて容器中のブタンの含有量を求める。
【0072】
本発明の容器は耐熱性に優れ、局所的に加熱されても三次発泡が起き難いので、電子レンジ加熱用容器として好適に使用できるものである。
【0073】
本発明の容器は特にパスタ用容器として好ましく使用される。パスタを包装した容器は、電子レンジ加熱されると、パスタに接触している部分が局所的に加熱されることにより、ミミズ腫れを発生し易い傾向がある。これに対し、本発明の容器を用いると、ミミズ腫れの発生が効果的に防止される。但し、本発明の容器による包装の対象となる被包装物に制限はなく、パスタのほか、グラタン、スープ、弁当など、あらゆる食材に使用することができる。
【実施例1】
【0074】
以下、本発明につき実施例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例、比較例において、発泡シート形成用の装置として、内径115mmの単軸の第一押出機と内径150mmの単軸の第二押出機を直列に連結したタンデム押出機を用いた。
【0076】
実施例、比較例において用いたポリスチレン系樹脂を表1に示す。
【0077】
【0078】
実施例1~5、比較例1~6
表2、表3に示す種類・配合比(重量比)のポリスチレン系樹脂と、気泡調整剤としてポリスチレン系樹脂100重量部に対して1.4重量部のタルク(松村産業社製ハイフィラー#12)を前記タンデム押出機の第一押出機に供給して、加熱溶融し混練してから、表2、表3に示す種類の物理発泡剤をポリスチレン系樹脂100重量部に対して表2、表3に示す量となるように圧入し、さらに混練して、第二押出機に移送して表2、表3に示す樹脂温度に調整して発泡シート形成用樹脂溶融物とし、該発泡シート形成用樹脂溶融物を環状ダイから、吐出量220kg/hrで大気中に押出発泡させて発泡筒状体とし、該発泡筒状体を外径670mmの冷却用筒(マンドレル)の外面に沿わせながら表2、表3に示す速度で引取りながら、さらに押出方向に沿って2枚に切り開き、2枚の発泡シート(幅1050mm)とし、それぞれをロール状に巻き取り、長さ205mのロール状物を得た。ロール状物は、それぞれ通気性のあるポリエチレン製袋で包装後、室内環境下(23℃、相対湿度50%)で養生(エージング)した。
【0079】
なお、物理発泡剤の注入はそれぞれ独立したダイヤフラム式ポンプを用いて、各々のガス流量(時間あたりの注入ガス重量)を設定し、溶融状態の樹脂に同時に注入した。全体の吐出量(kg/hr)、各々のガス注入量(kg/hr)から、発泡剤の配合量を算出した。
【0080】
14日間の養生後のロール状物の最外周部に位置する発泡シートを用いて、発泡シートの厚み、見掛け密度、ブタン含有量、表層部の見掛け密度(B)及び加熱後の表層部の見掛け密度(C)を測定した。また、微細気泡の発生の評価を行った。測定及び評価の結果を表2、表3に示す。各測定方法及び微細気泡の評価方法については後述する。
【0081】
30日間の養生後のロール状物を用いて、ロール状物のブタンの含有量(I)及び(II)を測定した。測定の結果を表2、表3に示す。測定方法については後述する。
【0082】
また、30日間の養生後のロール状物を構成する発泡シートを巻き戻して、熱ラミネーションを行った。
該熱ラミネーションにおいては、発泡シートの片面に、熱ロール200℃、ピンチクリアランス0.3mm、ライン速度15m/minの熱ラミネーション条件で、CPP25μm/PS20μmの透明のドライラミネートフィルムを積層接着した。
【0083】
熱ラミネーションの後、室内環境下(23℃、相対湿度50%)で養生し、24時間経過後に熱成形を行い、熱成形性(連続安定成形性、経時成形安定性、金型再現性)の評価を行った。また、二次厚を測定した。評価及び測定の結果を表2、表3に示す。
24時間経過後に熱成形を行ったのは、微細気泡が発生した発泡シートはその微細気泡に空気が入り込み、該空気が熱成形でさらに膨張し、熱成形性を阻害することがあるため、微細気泡の影響も考慮した正確な評価を行うためである。熱成形性(連続安定成形性、経時成形安定性、金型再現性)の評価方法及び二次厚の測定方法については後述する。
【0084】
熱成形により得られた容器を室内環境下(23℃、相対湿度50%)に24時間放置した後、容器のブタン含有量を測定した。また、ミミズ腫れの評価を行った。測定及び評価の結果を表2、表3に示す。容器のブタンの含有量の測定方法及びミミズ腫れの評価方法については後述する。
【0085】
【0086】
【0087】
次に、表中の各物性値の測定方法、各評価の評価方法について説明する。
【0088】
(発泡シートの厚み)
発泡シートの厚みは、前記方法により測定した。具体的には、発泡シートの幅方向にわたって等間隔に10箇所の厚みを測定し、それらを算術平均することにより求めた。
【0089】
(発泡シートの見掛け密度)
発泡シートの見掛け密度は、前記方法により測定した。具体的には、発泡シートの幅方向における等間隔の10箇所から縦25mm×横25mm×発泡シートの厚みの試験片を切り出して重量を測定し、該重量を1600倍して、単位換算することで坪量を求めた。次いで、求めた発泡シートの坪量を前記発泡シートの厚みで除した値を単位換算し、各試験片の見掛け密度を求め、それらの算術平均値を発泡シートの見掛け密度とした。
【0090】
(発泡シートのブタン含有量)
発泡シートのブタン含有量は、発泡シートの幅方向中央部から約1gとなるサイズで切り出した試験片について、前記方法によりガスクロマトグラフ(GLサイエンス社製GC-4000)を用いて測定した(n=2)。
【0091】
(表層部の見掛け密度(B)、(C))
表層部の見掛け密度は、加熱する前の発泡シートと、熱風式加熱オーブンを用いて160℃30秒の条件で加熱した発泡シートについて、それぞれ前記方法により測定した。具体的には、加熱前後の発泡シートの表面から200μmの部分(200±10μm)から、それぞれ長さ20mm、幅5mmの試験片を10個ずつ切り出し、切り出された試験片の重量を、試験片の体積(厚み×長さ×幅)で割算し、単位換算してそれぞれの試験片の表層部の見掛け密度を求めた(n=10)。加熱前の発泡シートの試験片の表層部の見掛け密度の算術平均値を見掛け密度(B)、加熱後の発泡シートの試験片の表層部の見掛け密度の算術平均値を見掛け密度(C)とした。更に得られた見掛け密度を用いて比(C/B)を算出した。
【0092】
(微細気泡の発生の評価)
発泡シートの全幅にわたって切り出した試験片を、加熱オーブンにより160℃30秒の条件で加熱した後の試験片(C)について、その表面を、CCDカメラを用いて観察して、微細気泡の発生を観察した。
なお、比較例5のみ145℃30秒の条件で加熱して試験片(C)を得た。
【0093】
微細気泡は、主に熱ラミネーション工程において熱ロールを用いてフィルムを熱融着する際に発生するが、加熱オーブンで加熱した場合にも同様の微細気泡が発生する。フィルムを熱融着したあとに、接着界面の発泡層の表面を観察するよりも、加熱オーブンで加熱した発泡シートの表面を観察するほうが簡単であるため、オーブンで加熱した発泡シートを用いて微細気泡の観察・評価を行った。
【0094】
微細気泡の発生は、次の基準で評価した。
◎:微細気泡発生せず
〇:微細気泡やや発生
△:微細気泡が一面に平均的に発生
×:微細気泡が多く発生し白化して見える
なお、表面に存在する気泡のうち、加熱により気泡膜部分に新たに発生し、表面の気泡よりも明らかに小さい(概ね30μm以下)気泡を微細気泡とした。
【0095】
(ロール状物のブタン含有量(I)、(II))
ブタン含有量(I)
ロール状物の最外周且つ巾方向中央部から切り出した試験片につき、ブタン含有量(I)をガスクロマトグラフで測定した。
ブタン含有量(II)
ロール状に巻かれた発泡シートの厚み方向中央部且つ巾方向中央部から切り出した試験片につき、ブタン含有量(II)をガスクロマトグラフで測定した。
なお、切り出す試験片のサイズ、測定方法は上記発泡シートのブタン含有量の測定と同様とした。
【0096】
(熱成形性の評価(連続安定成形性、経時安定性、金型再現性))
熱成形性の評価は、口径φ200、高さ45mmの内嵌合蓋を嵌め込み可能な形状のパスタ容器成形型が、巾方向4個×流れ方向5個で配置された、標準的なパスタ容器の金型を用いて、2ゾーン加熱、4.5秒/1ショットの条件(合計加熱時間9秒)で行い、連続安定成形性、経時安定性、金型再現性を評価した。なお、加熱ヒータは上下ともに280℃に調整した。
【0097】
(連続安定成形性の評価)
約200mのロール状に巻かれた積層発泡シートの繰り出しはじめの5m付近と予め目印をつけたロール状物の厚み方向中央部付近で、金型によりプレスせずに取り出した1ショット分の積層発泡シートにつき、厚み(二次厚)を均等升目状に4×5=20点測定し、その平均値を算出し、繰り出しはじめの5m付近の二次厚と、厚み方向中央部付近の二次厚の差を求め、次の基準で評価した。
◎:ロールの全周にわたって良好な成形品が得られる(二次厚の差が0.15mm未満)
〇:ロール厚み方向中央部と外周部とで加熱後厚みがやや異なるものの問題はない(二次厚の差が0.15mm以上0.30mm未満)
×:ロール厚み方向中央部と外周部とで加熱後厚みが異なり成形条件の修正を必要とする(二次厚の差が0.30mm以上)
【0098】
(経時安定性の評価)
前記ロール状物の養生60日経過後に、養生30日経過後の場合と同様に熱ラミネーションを行い、養生30日経過後と養生60日経過後との間の熱成形時の積層発泡シートの二次厚の変化量を、前記連続安定成形性の評価と同様の方法で比較し、次の基準で評価した。
◎:二次厚の差が0.20mm以内
〇:二次厚の差(減少)が0.3mm以内
△:二次厚の差(減少)が0.4mm以内
×:二次厚の差(減少)が0.4mmを超える
【0099】
(金型再現性の評価)
金型再現性の評価は、得られた容器の型再現性を目視観察することにより行った。なお、金型の再現性が悪いと嵌合部への蓋のおさまりが悪くなる。
【0100】
金型再現性は、内嵌合部の型の再現性の観点から、次の基準で評価した。
◎:内嵌合部の成形品の形状が良好
〇:内嵌合部の成形品の形状に問題なし
×:内嵌合部が不良
【0101】
(二次厚)
二次厚の測定は次のように行った。前記連続安定成形性の場合と同様の方法で、連続安定成形性の評価で測定した2ヶ所の他に任意の3ヶ所から採取した積層発泡シートの二次厚を求め、計5ヶ所において算出した二次厚の算術平均値を二次厚とした。
【0102】
(容器のブタン含有量)
容器のブタン含有量は、前記発泡シートのブタン含有量と同様の方法により測定した。具体的には、得られた容器の底部から切り出した試験片を用いて、ガスクロマトグラフにより測定した。フィルム重量の影響を避けるため、ブタン含有量は発泡シートに対する濃度に換算した。
【0103】
(ミミズ腫れの評価)
容器に「スパゲッティナポリタン 内容量 約400g」を入れて、専用蓋で容器を蓋い、1600W、50秒の条件で電子レンジにより加熱した。加熱後の容器底部の、食材に接する面を観察し、次の基準でミミズ腫れを評価した。
◎:ミミズ腫の発生がない。
〇:ミミズ腫の発生は、ほぼないとみなせる。
△:ミミズ腫の発生は見られるが、許容される程度である。
×:ミミズ腫の発生があり、見た目が悪い。
××:ミミズ腫に加えて穴あきもある。
【0104】
実施例1~5
実施例1~5で得られた容器はいずれもブタンとジメチルエーテルとを含む物理発泡剤を用いて製造された発泡シートの熱成形により得られたものであり、ブタンの含有量が少なく、ミミズ腫れの発生がないか、あるいは比較例により得られた容器と比較して大幅に抑制されたものであった。
【0105】
比較例1
物理発泡剤としてジメチルエーテルを使用せず、イソブタンのみを使用して、実施例1の発泡シートと同等の厚み、見掛け密度となるよう物理発泡剤の配合量を調整した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。得られた発泡シート、該発泡シートを巻き取ってなるロール状物中のブタン含有量が多いため、その熱成形により得られた容器のブタン含有量は多いものであった。その結果、電子レンジ加熱により容器にミミズ腫れが発生した。また、得られた発泡シートは微細気泡の発生が認められた。
【0106】
比較例2
物理発泡剤としてジメチルエーテルを使用せず、ブタンとしてノルマルブタンを使用して、実施例1の発泡シートと同等の厚み、見掛け密度となるよう物理発泡剤の配合量を調整した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。ノルマルブタンを使用した場合であっても、容器にミミズ腫れが発生した。
【0107】
比較例3
物理発泡剤としてブタン:ジメチルエーテル=70:30(重量比)のものを使用した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。得られた発泡シート、該発泡シートを巻き取ってなるロール状物中のブタン含有量がやや多く、その熱成形により得られた容器のブタン含有量はやや多いものであった。その結果、容器にミミズ腫れが発生した。
【0108】
比較例4
物理発泡剤として、ジメチルエーテルに替えて水を使用した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。ポリスチレン系樹脂を十分に可塑化することができず、押出樹脂温度が上昇し、発泡性が低下した。その結果、容器の熱成形用シートとして好ましい発泡シートを得ることができなかった。
【0109】
比較例5
ポリスチレン系として、GPPSを使用し、発泡シート中のブタン含有量が実施例1と同等になるように物理発泡剤の配合量を調整した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。樹脂の耐熱性が低く、容器にミミズ腫れが発生した。