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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】乗物用天井構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
B60R13/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018112711
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019214305
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 敬
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 新介
(72)【発明者】
【氏名】新美 浩一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 多佳子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直之
(72)【発明者】
【氏名】森 和也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-036700(JP,A)
【文献】特開平07-267008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のボデーパネルに乗物室内側から取り付けられた仮保持部材に対し、乗物天井側に配される天井材が仮保持可能とされる乗物用天井構造であって、
前記天井材は、その端部において貫通形成された孔部を有し、
前記仮保持部材は、
本体部と、
前記本体部から垂れ下がる形を成し、弾性を有する壁部と、
前記壁部から乗物室外側に凸状を成し、前記ボデーパネルに当接した凸部と、
前記凸部よりも下方に位置し、前記壁部から乗物室内側へ延出した延出部と、
前記延出部から乗物天井側に突出した突出部と、
前記突出部から乗物室外側に折り返して成る折返部と、を有し、
前記壁部は、乗物室内側への弾性変形により、前記突出部及び前記折返部の位置が下方へ変位可能な構成とされ、
その下方への変位により、前記折返部が、前記孔部に挿通され、前記仮保持部材に前記天井材が仮保持されていることを特徴とする乗物用天井構造。
【請求項2】
前記天井材の端部は、前記孔部よりも乗物室内側において、下側に窪んだ窪み部を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用天井構造。
【請求項3】
前記仮保持部材は、
前記本体部と、
前記本体部から前記ボデーパネルに沿って延在し、弾性を有する前記壁部と、を有し、
前記壁部は、その基端部に、乗物室外側に凸状を成す前記凸部を有し、
前記延出部は、前記壁部において、前記基端部よりも先端側の先端部に配され、
前記凸部が、前記ボデーパネルに乗物室内側から当接することで、前記先端部と前記ボデーパネルとの間に空間が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の乗物用天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用天井構造として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の乗物用天井構造では、車室内に設けるルーフライニングの端部の仮保持片に係合孔を設け、ルーフパネルの車室内側において仮保持片を保持する仮保持台に係合突部を設け、この係合突部に係合孔を係合し、仮保持台は、ルーフサイドレールとルーフライニングとの間に設けられたルーフサイドパッドに形成されていることが開示されている。そしてこのような構成により、ルーフライニングを車体に取付ける際に行うルーフライニングの仮保持時に、剛性の弱いルーフライニングでも仮保持状態から落ちることはなく、車体側にルーフライニングを確実に仮保持しておくことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5171464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、係合突起は、仮保持台から略垂直に突出して形成されているので、例えば、ルーフライニング(天井材)が上下方向に動いた場合、係合孔が係合突部から外れる可能性がある。一方で、係合孔を係合突部から外れにくくするために、天井の構造を複雑にすると、組付けの際の作業員がルーフライニングを仮保持するときに手間がかかる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、天井材を簡単に仮保持することができる乗物用天井構造を提供することを目的の一つとする。また、天井材が仮保持された状態から外れにくい乗物用天井構造を提供することをさらなる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗物のボデーパネルに乗物室内側から取り付けられた仮保持部材に対し、乗物天井側に配される天井材が仮保持可能とされる乗物用天井構造であって、前記天井材は、その端部において貫通形成された孔部を有し、前記仮保持部材は、鉛直方向と交わる一の方向へ延出した延出部と、前記延出部から乗物天井側に突出した突出部と、前記突出部から前記一の方向の反対方向に折り返して成る折返部と、を有し、前記折返部が、前記孔部に挿通され、前記仮保持部材に前記天井材が仮保持されていることに特徴を有する。
【0007】
このような乗物用天井構造によると、突出部から一の方向の反対方向に折り返して成る折返部が、天井材の端部に貫通形成された孔部に挿通されることで、仮保持部材に天井材が仮保持されているので、簡単な構造で天井材を仮保持部材に仮保持することができる。また、天井材が動いたとしても、孔部が折返部から外れにくい。
なお、仮保持とは、クリップ等の取付部材を用いることなく天井材を所定位置に少なくとも一時的に保持することを意味し、仮保持状態では天井材の微少な位置移動が可能となったり、天井材を着脱できたりする状態を意味している。
【0008】
上記構成において、前記天井材の端部は、前記孔部よりも乗物室内側において、下側に窪んだ窪み部を有することとすることができる。このような乗物用天井構造によると、天井材が仮保持された状態において、天井材の自重が折返部に加わりやすい。すると、天井材の端部が適度な緊張状態を保つことができ、孔部が折返部から外れにくくなる。
【0009】
上記構成において、前記一の方向は、乗物室内側であることとすることができる。このような乗物用天井構造によると、組付けの際の作業員が、延出部、突出部、及び折返部を乗物室内側から視認しやすい。そして、孔部に折返部を挿通しやすい。すると、天井材を仮保持部材に簡単に仮保持することができる。
【0010】
上記構成において、前記仮保持部材は、本体部と、前記本体部から前記ボデーパネルに沿って延在し、弾性を有する壁部と、を有し、前記壁部は、その基端部に、乗物室外側に凸状を成す凸部を有し、前記延出部は、前記壁部において、前記基端部よりも先端側の先端部に配され、前記凸部が、前記ボデーパネルに乗物室内側から当接することで、前記先端部と前記ボデーパネルとの間に空間が形成されていることとすることができる。このような乗物用天井構造によると、先端部とボデーパネルとの間に空間が形成されているので、壁部が弾性変形することで、先端部が乗物室内外方向に動くことができる。すると、孔部に対する折返部の角度が調整されて、孔部に折返部を挿通しやすくなる。また、天井材が仮保持された状態では、天井材の自重が折返部に加わりつつ壁部が弾性復帰するので、孔部が折返部から外れにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天井材を簡単に仮保持することができる乗物用天井構造を提供することが可能となる。また、天井材が仮保持された状態から外れにくい乗物用天井構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る車両を示す側面図
図2】天井材を示す図
図3】天井材の端部を示す拡大図(図2の一点鎖線で囲まれた部分)
図4】車両後側かつ天井側のボデーパネルを車室内側から視た拡大図
図5】仮保持部材を示す斜視図
図6】仮保持部材を示す断面図(図4のA-A線断面)
図7】仮保持部材と天井材を示す断面図(壁部が弾性変形した態様を示す)
図8】仮保持部材に天井材を仮保持した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1から図8によって説明する。なお、矢印方向Frを前方、矢印方向Rrを後方、矢印方向Tを上方(車両天井側)、矢印方向Bを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方、矢印方向Inを車室内側、矢印方向Outを車室外側として説明する。
【0014】
車両(乗物)1は、図1に示すように、その外形を形成する板金のボデーパネル2を有する。ボデーパネル2は、車両の天井を形成するルーフパネル10や、ルーフパネル10を下方から支持する柱状のピラーパネル11,12,13,14等を有する。ピラーパネル11,12,13,14は、車両前側から、Aピラーパネル11、Bピラーパネル12、Cピラーパネル13、Dピラーパネル14と呼ばれる。Dピラーパネル14は、車両後側に配されている。
【0015】
ルーフパネル10の車室内側には天井材80が取り付けられている。天井材80は、図2に示すように、車両前後方向及び左右方向に拡がる薄板状の部材であり、適度な弾性を有する。また、天井材80は、左右の縁部の複数個所が部分的に面内内側に凹んだ複数の凹部81と、車両前後側に配され、厚み方向に開口が貫通形成された複数の開口部82と、を有する。凹部81は、後述する取付状態において、ピラーパネル11,12,13,14を避けるために設けられている。クリップ等の取付部材を開口部82の開口に挿通し、ルーフパネル10に設けられた所定の被取付部に挿入することで、天井材80は、図1に示すように、ルーフパネル10に車室内側から取り付けられる(この状態を、取付状態という)。
【0016】
天井材80の車両後側かつ左右の端部には、図2に示すように、面内外側(車室外側)に延出した片部83,83が設けられている。左側の片部83は、右側の片部83と左右対称の構成、形状等である。従って、以降は、右側の片部83について説明する。片部83は、図3及び図8に示すように、車室外側において厚み方向に孔が貫通形成された孔部84と、孔部84よりも車室内側において、下側に窪んだ窪み部85と、を有する。
【0017】
図4は、ボデーパネル2の右側であって、車両後側かつ天井側を車室内側から視た図である。図4中、車両天井側にはルーフパネル10が、下側にはCピラーパネル13、Dピラーパネル14が配されている。車両後側に配されたDピラーパネル14の上側には、仮保持部材20が車室内側から取り付けられている。
【0018】
仮保持部材20は、図5に示すように、樹脂製の本体部21と、本体部21から車室内側に突出した2つの押さえ部22,22と、本体部21から車室外側に突出した2つの取付部23,23と、を有する。仮保持部材20は、押さえ部22,22によって、天井材80を車両天井側に配したときに、天井材80の端部付近を車室内側へ押さえることが可能となっており、天井材80の形状を保持したり、天井材80が振動等によってがたつくことを防止したりすることができる。仮保持部材20は、取付部23,23によって、図4に示すように、Dピラーパネル14の上側部分に、車室内側から取り付けることが可能となっている。このような仮保持部材20に対し、車両天井側に配される天井材80が仮保持可能とされている(仮保持の具体的な態様は後述する)。
【0019】
また、仮保持部材20は、図5に示すように、本体部21の後下側から下方に向けて延在する壁部24を有する。壁部24は、適度な弾性を有しており、図6に示すように、下方に向かうほど車室外側に傾斜し、Dピラーパネル14(ボデーパネル2)に沿うように延在している。また、壁部24は、その基端部25において、車室外側に凸状を成す凸部26を有する。
【0020】
凸部26は、Dピラーパネル14に車室内側から当接している。これにより、基端部25よりも先端側に位置する先端部27と、Dピラーパネル14との間に空間が形成されている。従って、壁部24は、図7に示すように、車室内外方向に弾性変形することができる。そして、壁部24の先端部27は、ブランコのように揺動可能とされる。なお、実線を壁部24が弾性変形した状態とし、二点鎖線を壁部24が弾性復帰した状態として示す。
【0021】
さらに、壁部24は、図5及び図6に示すように、その先端部27から略水平方向かつ車室内側(鉛直方向と交わる一の方向)へ延出した延出部30を有する。延出部30は、その前後の端部及び車室内側の端部が、車両天井側に曲がった形状を成す。延出部30の前後方向における中央であって、車室内側の端部には、車両天井側に突出した突出部31が突設されている。突出部31の車両天井側の端部には、車室外側(一の方向の反対方向)に折り返すように延出した折返部32が設けられている。
【0022】
続いて、仮保持部材20に天井材80が仮保持される態様について説明する。まず、図2に示す天井材80を、車両1の車室内側に配する。そして、片部83が、図4に示す仮保持部材20の下方に位置するように、天井材80を移動する。天井材80を徐々に車両天井側に持ち上げると、図7に示すように、突出部31に孔部84が接近する。
【0023】
このとき、壁部24を車室外側に弾性変形させる。すると、壁部24の先端部27が車室外側かつ上方に曲がることで、延出部30の車室内側の端部、突出部31及び折返部32が、下方に下がる。そして、天井材80の片部83を車室外側かつ天井側に引っ張って弾性変形させ、孔部84に折返部32を挿通させる。
【0024】
すると、図8に示すように、天井材80の自重が折返部32に加わりつつ、壁部24が車室内側に弾性復帰する。そして、天井材80の後側は、車両天井側の位置を一時的に保持することができる。このようにして、仮保持部材20に対し天井材80が仮保持される。
【0025】
なお、当該仮保持状態の天井材80を、クリップ等の取付部材によって、ルーフパネル10に車室内側から取り付ければ、図1に示すような取付状態となる。また、当該取付状態の天井材80からクリップ等の取付部材を外すと、仮保持状態となる。
【0026】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本発明は、車両1のDピラーパネル14(ボデーパネル2)に車室内側から取り付けられた仮保持部材20に対し、車両天井側に配される天井材80が仮保持可能とされる乗物用天井構造において、天井材80は、その端部に設けられた片部83おいて貫通形成された孔部84を有し、仮保持部材20は、鉛直方向と交わる一の方向へ延出した延出部30と、延出部30から車両天井側に突出した突出部31と、突出部31から一の方向の反対方向に折り返して成る折返部32と、を有し、折返部32が、孔部84に挿通され、仮保持部材20に天井材80が仮保持されている。
【0027】
このような乗物用天井構造によると、突出部31から一の方向の反対方向に折り返して成る折返部32が、天井材80の片部83に貫通形成された孔部84に挿通されることで、仮保持部材20に天井材80が仮保持されているので、簡単な構造で天井材80を仮保持部材20に仮保持することができる。また、天井材80が動いたとしても、孔部84が折返部32から外れにくい。
【0028】
上記構成において、天井材80の端部に設けられた片部83は、孔部84よりも車両内側において、下側に窪んだ窪み部85を有する。このような乗物用天井構造によると、天井材80が仮保持された状態において、天井材80の自重が折返部32に加わりやすい。すると、天井材80の端部が適度な緊張状態を保つことができ、孔部84が折返部32から外れにくくなる。
【0029】
上記構成において、一の方向は、車室内側である。このような乗物用天井構造によると、組付けの際の作業員が、延出部30、突出部31、及び折返部32を車室内側から視認しやすい。そして、孔部84に折返部32を挿通しやすい。すると、天井材80を仮保持部材20に簡単に仮保持することができる。
【0030】
上記構成において、仮保持部材20は、本体部21と、本体部21からDピラーパネル14に沿って延在し、弾性を有する壁部24と、を有し、壁部24は、その基端部25に、車室外側に凸状を成す凸部26を有し、延出部30は、壁部24において、基端部25よりも先端側の先端部27に配され、凸部26が、Dピラーパネル14に車室内側から当接することで、先端部27とDピラーパネル14との間に空間が形成されている。このような乗物用天井構造によると、先端部27とDピラーパネル14との間に空間が形成されているので、壁部24が弾性変形することで、先端部27が車室内外方向に動くことができる。すると、孔部84に対する折返部32の角度が調整されて、孔部84に折返部32を挿通しやすくなる。また、天井材80が仮保持された状態では、天井材80の自重が折返部32に加わりつつ壁部24が弾性復帰するので、孔部84が折返部32から外れにくくなる。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
(1)上記実施形態以外にも、仮保持部材が取り付けられる部分は適宜変更可能である。上記実施形態では、仮保持部材が取り付けられる部分は、Dピラーパネルの上側としたが、これに限られない。例えば、仮保持部材が取り付けられる部分は、その他のピラーパネルの上側や、ルーフパネルであってもよい。
【0033】
(2)上記実施形態以外にも、延出部の延出する方向は適宜変更可能である。上記実施形態では、延出部の延出する方向は、車室内側としたが、これに限られない。例えば、延出部の延出する方向は、車室外側であってもよい。
【0034】
(3)上記実施形態で例示した乗物用天井構造は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記乗物用天井構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…車両(乗物)、2…ボデーパネル、10…ルーフパネル、11,12,13,14…ピラーパネル、20…仮保持部材、21…本体部、22…押さえ部、23…取付部、24…壁部、26…凸部、30…延出部、31…突出部、32…折返部、80…天井材、84…孔部、85…窪み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8