(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】側溝の構造とその構築方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
E03F5/04 A
(21)【出願番号】P 2018149373
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 和徳
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123457(JP,A)
【文献】特開昭61-057731(JP,A)
【文献】特開昭61-057730(JP,A)
【文献】実開平03-054836(JP,U)
【文献】特開平04-108919(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面がU字状の側溝であって、
底面は底面補強筋を包囲して打設したコンクリート、あるいは吹き付けたコンクリートで構成してあり、
側面は2枚の有孔板
で構成した側面型枠の間に吹き付けたコンクリートで構成してあ
り、
側面型枠の相対する2枚の有孔板は、
外側の有孔板の高さ方向の長さを、内側の有孔板の高さ方向の長さよりも長くしておくことで、
外側の有孔板の下端が地表面に届き、内側の有孔板の下端は、底面補強筋の上部に位置するように配置してあることを特徴とする、
側溝の構造。
【請求項2】
断面がU字状の側溝の構築方法であって、
底面に配置した底面補強筋にコンクリートを打設し、あるいは吹付けコンクリートを打設した後、
底面の側面に配置した2枚の有孔板
で構成した側面型枠の間に吹付けコンクリートを打設して行う
方法であって、
側面型枠の相対する2枚の有孔板は、
外側の有孔板の高さ方向の長さを、内側の有孔板の高さ方向の長さよりも長くしておくことで、
外側の有孔板の下端が地表面に届き、内側の有孔板の下端は、底面補強筋の上部に位置するように配置して行うことを特徴とする、
側溝の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は側溝の構造とその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集中豪雨の中でも降雨の範囲が非常に狭く、また降雨時間が短いにもかかわらず単位時間あたりの降雨量が非常に多いもの、つまり、非常に狭い地域の中で短い時間で驚異的な大量の雨が降る局地的豪雨のことを、ゲリラ豪雨と呼ばれている。
これは、地球温暖化により日本の気候が亜熱帯化して来ており、その結果、雨の降り方も変化していることが主な原因と言われている。
しかし斜面での災害を考えると、従来はこのようなゲリラ豪雨の発生を想定していなかった。
そのために従来の土木構造物の排水基準に基づく設計では対応が不十分であり、斜面の表面を雨水が流下して土石流やがけ崩れが発生している。
また従来は、斜面や山岳地帯の排水工として一般にはコンクリート二次製品のU字溝を設置しているが、斜面の高所や山岳地帯において、重量の大きいコンクリート製品を引き上げて所定の位置に設置する作業は危険であり困難でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-242277号公報。
【文献】特開2004-346678号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような最近のゲリラ豪雨や集中豪雨の発生に対応する側溝の構造、あるいは山岳地帯に限定した側溝の構造に関する発明は、検索しても容易に発見することができなかった。
ということは、集中豪雨やゲリラ豪雨に対応した斜面、山岳地帯での側溝については、従来はほとんど考慮されていなかったのではないか、と推測される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのような課題に対応する本発明の側溝の構造は、 断面がU字状の側溝であって、 底面は底面補強筋を包囲して打設したコンクリート、あるいは吹き付けたコンクリートで構成してあり、側面は2枚の有孔板で構成した側面型枠の間に吹き付けたコンクリートで構成してあり、側面型枠の相対する2枚の有孔板は、外側の有孔板の高さ方向の長さを、内側の有孔板の高さ方向の長さよりも長くしておくことで、外側の有孔板の下端が地表面に届き、内側の有孔板の下端は、底面補強筋の上部に位置するように配置してあることを特徴とするものである。
また本発明の側溝の構築方法は、断面がU字状の側溝の構築方法であって、 底面に配置した底面補強筋にコンクリートを打設し、あるいは吹付けコンクリートを打設した後、 底面の側面に配置した2枚の有孔板で構成した側面型枠の間に吹付けコンクリートを打設して行う方法であって、側面型枠の相対する2枚の有孔板は、外側の有孔板の高さ方向の長さを、内側の有孔板の高さ方向の長さよりも長くしておくことで、外側の有孔板の下端が地表面に届き、内側の有孔板の下端は、底面補強筋の上部に位置するように配置して行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の側溝の構造とその構築方法は以上説明したようになるから次のような効果の少なくともひとつを得ることができる。
<1> 斜面などの現場に設置するのは、金網のような軽量な部材を使用するから、足場の悪い急斜面でも容易に施工することができ、危険性がない。
<2> 側溝を、斜面の傾斜方向を横断する方向に設置すれば、斜面を流下する表面水を側溝に導入して所定の位置に排水することができ、斜面の崩壊を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の側溝を構成する部材の配置の実施例の説明図。
【
図2】底面補強筋と側面型枠の配置の経過の説明図。
【
図3】底面補強筋と側面型枠を配置した状態の説明図。
【
図5】側溝に有孔板の蓋を取り付けた実施例の説明図。
【
図6】底面補強筋と側面型枠との組み合わせの実施例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の側溝の構造とその構築方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>全体の構造。
本発明の側溝は、その断面形状がU字状の側溝であり、底面と両側の壁である側面とで構成した形状である。
ただし従来の工場で製造するU字溝とは異なり、本発明では現場において吹付けコンクリートを打設し、あるいは通常の打設を行って製造する点に特徴を有する。
以下、施工の順次に従って説明する。
【0010】
<2>底面の構成。(
図1)
側溝を設置する場所を整地して、その上にスペーサーなどを介在させて地表面から浮かして底面補強筋1を設置する。
この底面補強筋1は、鋼棒を縦横に溶接した溶接金網など、市販の金網で構成する。
後述するように、この底面補強筋1を包囲する状態で吹付けコンクリートを打設し、あるいは通常のコンクリートを打設するが、その圧力で移動しないように適当な間隔で地表面にアンカー2を打設し、そのアンカー2に底面補強筋1を結束することで移動を防止する。
なお本明細書で底面補強筋1,側面補強筋5と記載するが、棒状の鉄筋に限定するものではなく、金網のような面体も含む意味で使用する。
【0011】
<3>側面の構成。(
図1、2、3)
側溝の側面は、対面状態の2枚の有孔板の間を鋼棒で連結して側面型枠3として組み立てる。
この連結鋼棒を、各有孔板に対して回転自在に取り付けて回転セパレーター4として配置する。
回転自在のセパレーター4で接続することで、2枚の有孔板を、位置をずらせて簡単に折りたたむことができ、高所への運搬も容易となる。
側面型枠3の相対する2枚の有孔板は、外側の有孔板の高さ方向の長さを、内側の有孔板の高さ方向の長さよりも長くしておくことで、外側の有孔板の下端が地表面に届き、内側の有孔板の下端は、底面補強筋1の上部に位置するように配置することができる。
【0012】
<4>側面と底面の組み立て。
側面型枠3の配置の前に、底面補強筋1の端部に鉛直方向に側面補強筋5を結束して取り付け、この側面補強筋5の両側に側面型枠3を配置することで、側溝の側面が側溝の底面と強固に一体化することになる。
あるいは2枚の側面型枠3の間に先行して側面補強筋5を一体に取り付けておき、その下端を底面補強筋1の両端の立ち上がり部11に、側溝の内側から結束することで配置することもできる。
あるいは2枚の有効板の間を連結するセパレーター4に、セパレーター4と直交する角度で側面補強筋5を回転自在に取り付けておけば、補強板を広げるだけで中間の側面補強筋5の配筋が完了する。
その際に側面補強筋5として金網状の面体を採用することもできるが、その素材と側面型枠3の素材を同一の金網などで構成すれば経済的である。
あるいは
図6に示すように、底面補強筋1の両端の立ち上がり部11の位置をずらしておき、2枚の側面型枠3の有孔板の内側面に接触して位置するように設置すると、側面型枠3の間隔は回転セパレーター4で拘束されているから、側面型枠3を確実に、かつ簡単にセットすることができる。
【0013】
<5>吹付けコンクリートの打設。(
図4)
上記の構造の底面補強筋1と側面型枠3を設置した後、吹付けコンクリート6を打設する。
このような斜面でのコンクリート6の吹付け技術は公知であり、効率のよい吹付けポンプなどが開発されている。
吹付けはまず、側溝の底面に配置した底面補強筋1を包囲する状態で吹付けコンクリート6を打設する。
その後に側面に配置した2枚の有孔板の間に吹付けコンクリート6の打設を行い、2枚の対面する有孔板の間をコンクリート6で充填する。
金網やパンチメタル、エキスパンドメタルのような穴開きの板体であっても、その網目や穴の寸法、直径、あるいは穴の縁の折り曲げ角度を調整することでコンクリート6の穴からの流出を阻止することができる。
こうして現場に応じた規格の側溝を、安全でかつ迅速に、したがって安価に構築することができる。
なお底面補強筋へのコンクリートの打設は、コンクリートを高圧下で吹き付ける吹付けコンクリートだけでなく、コンクリートポンプに接続したパイプからコンクリートを吐出させて打設する通常の工法を採用することもできる。
【0014】
<6>有孔蓋の取り付け。(
図5)
側溝の内部には、流水とともに斜面の上方からの土砂が流入しやすい。
そこで側溝の上には金網などの有孔板の蓋7を取り付ける構造を採用することができる。
その場合に特に側溝の断面において、斜面の上方側を高くして高低差hを設けて、有孔蓋7に斜面とほぼ同じ角度の傾斜を与えておけば、土砂は有孔蓋7の上面を勢い良く下方に向けて流下してしまい、側溝内への土砂の流入を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0015】
1:底面補強筋
3:側面型枠
5:側面補強筋
6:コンクリート
7:有孔蓋