(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01F 12/32 20060101AFI20220517BHJP
A01F 12/44 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
A01F12/32 A
A01F12/44 A
A01F12/32 Z
(21)【出願番号】P 2018158473
(22)【出願日】2018-08-27
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大介
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244214(JP,A)
【文献】特開平9-248046(JP,A)
【文献】特開2007-267629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0235152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/32
A01F 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置により脱穀された脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置と、
グレンタンクと、
を備え、
前記揺動選別装置は、
脱穀処理物を前記グレンタンクに搬送する第1搬送部と、
脱穀処理物を前記脱穀装置又は前記揺動選別装置の前端側に還元する第2搬送部と、
前記第1搬送部の上方に位置し、脱穀処理物を前記第1搬送部又は前記第2搬送部に振り分ける第1篩部と、
前記第1篩部を通過した脱穀処理物を前記第1搬送部に案内する案内部と、
前記第2搬送部の上方に位置して脱穀処理物を前記第2搬送部又は機外に振り分ける平板状の第2篩部と、
を有し、
前記第1篩部の後端は、前記案内部の後端よりも後方に位置
し、
前記第2篩部は、円形の漏下孔が形成されている、
コンバイン。
【請求項2】
前記揺動選別装置は、前後に揺動可能に構成された揺動フレームと、前記第1篩部の上方に配置され且つ前記揺動フレームに支持されるチャフシーブと、を備え、
前記第1篩部は、前記チャフシーブの揺動により選別された脱穀処理物を更に選別する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1篩部は、前部篩部と、前記揺動フレームに対して着脱可能に取り付けられ且つ前記前部篩部に連なる後部篩部と、を含み、
前記後部篩部の後端は、前記案内部の後端より後方に位置する、請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
作物を脱穀処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置により脱穀された脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置と、
グレンタンクと、
を備え、
前記揺動選別装置は、
脱穀処理物を前記グレンタンクに搬送する第1搬送部と、
脱穀処理物を前記脱穀装置又は前記揺動選別装置の前端側に還元する第2搬送部と、
前記第1搬送部の上方に位置し、脱穀処理物を前記第1搬送部又は前記第2搬送部に振
り分ける第1篩部と、
前記第1篩部を通過した脱穀処理物を前記第1搬送部に案内する案内部と、
前後に揺動可能に構成された揺動フレームと、
前記第1篩部の上方に配置され且つ前記揺動フレームに支持されるチャフシーブと、
を有し、
前記第1篩部は、前部篩部と、前記揺動フレームに対して着脱可能に取り付けられ且つ前記前部篩部に連なる後部篩部と、を含み、前記チャフシーブの揺動により選別された脱穀処理物を更に選別し、
前記
後部篩部の後端は、前記案内部の後端よりも後方に位置
し、
前記前部篩部又は前記後部篩部に対して左右方向に沿って機外からアクセス可能にするメンテナンス開口が設けられており、
前記前部篩部及び前記後部篩部の突き合わせ部分には、前記前部篩部又は前記後部篩部
を左右方向に沿って案内可能なレール部が設けられており、
前記前部篩部又は前記後部篩部は、前記レール部に沿って前記メンテナンス開口から抜
き差しされることで、前記揺動フレームに対して着脱可能に構成されている、
コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、従来のコンバインは、前後に揺動することによって脱穀処理物を荒く選別するチャフシーブと、チャフシーブの下方に配置され且つ揺動により脱穀処理物を精選別する篩部としてのグエンシーブと、グレンシーブを通過した穀物を一番穀粒搬送用スクリューコンベアに案内する案内板と、を有する。平面視において、グレンシーブの後端と、案内板の後端との間に隙間が形成されている。
【0003】
選別対象物が稲である場合には、チャフシーブにより穀粒と夾雑物とが選別できており、グレンシーブに至る物は、大半が穀粒である。万一、夾雑物がグレンシーブに到達しても、風で吹き飛ばせるので、グレンシーブの後端と案内板の後端との間に隙間があっても、選別不良は生じなかった。
【0004】
しかしながら、選別対象を大豆にした場合には、大豆には、蕾や未成熟な実があり、これらは、チャフシーブによる荒選別を抜けてグレンシーブに至ることがあり、しかも、グレンシーブから風により完全に吹き飛ばすことが難しい。このような大豆の蕾や未成熟な実は、グレンシーブの後端と案内板の後端の間の隙間から、案内板に落下し、一番穀粒搬送用スクリューコンベアを介してグレンタンクに搬送されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作物の種類を問わず選別性のよいコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコンバインは、作物を脱穀処理する脱穀装置と、前記脱穀装置により脱穀された脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置と、を備え、前記揺動選別装置は、脱穀処理物を前記グレンタンクに搬送する第1搬送部と、脱穀処理物を前記脱穀装置又は前記揺動選別装置の前端側に還元する第2搬送部と、前記第1搬送部の上方に位置し、脱穀処理物を前記第1搬送部又は前記第2搬送部に振り分ける第1篩部と、前記第1篩部を通過した脱穀処理物を前記第1搬送部に案内する案内部と、を有し、前記第1篩部の後端は、前記案内部の後端よりも後方に位置する。
【0008】
この構成によれば、第1篩部の後端から落下した物が案内部に到達しないので、グレンタンクに搬送すべきではない作物の一部が第1搬送部に案内されることを回避でき、選別性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】メンテナンス開口から揺動選別装置の内部を見た左側面図
【
図8A】メンテナンス開口から前部篩部を取り出す工程を示す左前方斜視図
【
図9】メンテナンス開口から後部篩部を取り出す工程を示す左前方斜視図
【
図10】変形例におけるメンテナンス開口から揺動選別装置の内部を見た左側面図
【
図11】後部篩部がない従来のコンバインでの選別結果を示す図、及び、後部篩部を設けた本開示のコンバインでの選別結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係るコンバインの一例について説明する。
【0011】
[コンバインの全体構造]
まずは、コンバインの全体構造について簡単に説明する。
図1~3は、それぞれ、本実施形態のコンバイン100の左側面、右側面、及び平面を示す。図中には、コンバイン100の前後方向、左右方向、及び、上下方向を矢印で示している。コンバイン100は、走行装置1と、刈取装置2と、脱穀装置3と、選別装置4と、貯留装置5と、動力装置6とを備える。
【0012】
走行装置1は、機体フレーム10の下方に設けられている。走行装置1は、トランスミッション11と、左右一対に設けられたクローラ装置12とを有する。トランスミッション11は、機体フレーム10に搭載された動力装置6の動力をクローラ装置12に伝達する。クローラ装置12は、コンバイン100を前後方向に走行させたり、コンバイン100を左右方向に旋回させたりする。
【0013】
刈取装置2は、走行装置1の前方に設けられている。刈取装置2は、リール21と、カッター(刈刃)22と、オーガ(横送りスクリュー)23と、搬送コンベア24とを有する。リール21は、回転することによって圃場の穀稈をカッター22へ案内する。カッター22は、リール21によって案内された穀稈を切断する。オーガ23は、カッター22によって切断された穀稈を所定の位置(搬送コンベア24の穀稈供給口)に集合させる。搬送コンベア24は、オーガ23によって集合させた穀稈を脱穀装置3のフロントロータ33(
図4参照)まで搬送する。
【0014】
脱穀装置3は、刈取装置2の後方であって、左右方向一方側(本実施形態では左側)に配置されている。脱穀装置3は、扱胴31と、その扱胴31の下方に設けられた受網32とを有する。扱胴31は、扱室30(
図4参照)に収容されている。扱胴31は、回転することによって穀稈を脱穀しながら後方へ搬送する。受網32は、扱胴31によって搬送される穀稈を支持するとともに、脱穀処理物を選別装置4へ落下させる。扱胴31の下方には、穀粒搬送用のスクリューコンベアである一番コンベア143と二番コンベア144(
図4参照)とが設けられている。これらは、いずれも脱穀処理物を水平方向(左右方向)に搬送する。
【0015】
選別装置4は、脱穀装置3の下方に設けられている。選別装置4は、前後方向に揺動することにより、受網32から漏下した脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置41を有する。揺動選別装置41で選別された穀粒は、一番コンベア143と揚穀コンベア151とによって搬送され、投入口153を介してグレンタンク51に投入される。また、選別装置4は、揺動選別装置41に向けて風を送る送風装置42を有する。送風装置42は、脱穀処理物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばす。藁屑などの夾雑物は、選別装置4の後方に設けられた排稈口45から外部へ排出される。
【0016】
貯留装置5は、刈取装置2の後方であって、左右方向他方側(本実施形態では右側)に配置されている。貯留装置5は、脱穀装置3と左右方向に隣接して設けられている。脱穀装置3及び選別装置4と、貯留装置5とは、機体フレーム10の上方で左右に並列配置されている。貯留装置5は、穀粒を貯留するためのグレンタンク51を備える。グレンタンク51は、選別装置4から一番コンベア143及び揚穀コンベア151を介して搬送されてきた穀粒を貯留する。グレンタンク51は、その後端部の縦軸芯51p周りで機体フレーム10に対して回動可能に支持されている。グレンタンク51内の穀粒を排出する際には、排出オーガ52が用いられる。排出オーガ52は、上下左右方向に回動自在に構成されており、穀粒を任意の場所に排出できる。
【0017】
動力装置6は、運転部13の下方で且つ貯留装置5の前方に設けられている。動力装置6は、エンジン61で構成されている。本実施形態のエンジン61は、ディーゼルエンジンであり、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。より具体的に説明すると、エンジン61は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを、走行装置1など各部を駆動する動力に変換する。動力装置6は、電気によって動力を発生させる電動モータであっても構わない。また、動力装置6はエンジン61と電動モータの双方を備えていてもよい。
【0018】
運転部13は、グレンタンク51の前方で機体フレーム10の右側前部に設けられている。運転部13はキャビン14で覆われており、そのキャビン14の後方にグレンタンク51が設けられている。図面には現れていないが、キャビン14の内部には、オペレータが着席する運転座席や、その運転座席の前方に配置された操向ハンドルが設置され、それらの周囲に変速レバーやクラッチレバー、スイッチ類など種々の操作具が配置されている。
【0019】
[脱穀装置]
次に、脱穀装置3について説明する。
図4に示すように、脱穀装置3は、扱室30と、扱胴31と、受網32と、フロントロータ33とを有する。扱室30は、受網32、機枠300などによって区画形成されている。機枠300には、扱胴31の上方に配置された上部カバー301と、扱胴31の前方に配置された前壁部材302と、扱胴31の後方に配置された後壁部材303とが取り付けられている。搬送コンベア24で搬送されてきた穀稈は、フロントロータ33によって扱室30内へ送り込まれる。フロントロータ33は、穀稈を搬送するだけでなく、予備的な脱穀(プレ脱穀)を行う機能も有する。
【0020】
扱胴31は、前後方向に沿って延びた扱胴軸311と、掻き込みスクリュー312と、ツースバー(扱歯支持部材)313とを有する。扱胴31は、扱胴軸311を中心に回転する。扱胴軸311は、前壁部材302及び後壁部材303によって回転自在に支持されている。扱胴軸311にはエンジン61からの回転動力が伝達される。扱胴軸311は、直線状に形成された構造体であり、掻き込みスクリュー312と複数のツースバー313とを支持する。
【0021】
掻き込みスクリュー312は、扱胴31の前部に配置されている。掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ(掻き込み羽根)312bが着脱可能に形成された構造体である。掻き込みスクリュー312は、フロントロータ33によって送り込まれてきた穀稈を掻き込む。つまり、掻き込みスクリュー312は、回転することにより、フロントロータ33によって送り込まれてきた穀稈を取り込んで後方へ送り出す。掻き込みスクリュー312は、螺旋状のインペラ312bが形成された構造に限られず、複数のブレードが形成された構造でも構わない。
【0022】
掻き込みスクリュー312の後方には、扱胴軸311を中心として複数のツースバー313が配置されている。ツースバー313は、複数の扱歯313tが所定の間隔を設けて互いに平行に配置された構造体である。ツースバー313は、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を脱穀する。つまり、ツースバー313は、回転することにより、掻き込みスクリュー312が送り出した穀稈を揉み込み、また打撃して脱穀物を落とす。ツースバー313は、複数の扱歯313tを有する構造に限られず、螺旋状のブレードを有する構造でもよい。本実施形態では、複数のツースバー313と、各ツースバー313同士に亘って設けられる複数の板部材314とにより、扱胴31の内部空間と扱胴31の外部空間とを隔てて全体として円筒状をなす回転体を構成しているが、これに代えて、円筒形状の回転体に複数の扱歯313tを備えた構造としてもよい。
【0023】
受網32は、扱胴31の下側外周面に沿って設けられ、前後方向から見て略U字状に形成されている。本実施形態では、複数のツースバー313によって構成される回転体の下方を覆うように、受網32が配置されている。受網32は、ツースバー313によって揉み込まれる穀稈を支持する。受網32は、主に網体321によって構成されている。網体321は、所定の間隔で平行にワイヤを張り巡らせてなる構造体である。受網32は、網体321の隙間を通じて、扱胴31により脱穀処理された脱穀処理物を漏下させる。受網32から漏下しなかった穀稈は、受網32の後端部から排稈として排出される。
【0024】
[選別装置]
次に、選別装置4について説明する。
図4に示すように、選別装置4は、揺動選別装置41と、送風装置42とを備える。揺動選別装置41は、脱穀処理物を篩いにかけることによって穀粒を選別する。送風装置42は、脱穀処理物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばすことによって穀粒を選別する。
【0025】
揺動選別装置41は、フィードパン411と、チャフシーブ412と、穴あきラック413とを有する。フィードパン411、チャフシーブ412及び穴あきラック413は、
図5Aに示すように揺動フレーム415に取り付け支持されている。本実施形態では、フィードパン411の後方にチャフシーブ412が配置され、そのチャフシーブ412の後方に穴あきラック413が配置されている。揺動選別装置41の後部下方には、左右方向に延びた軸41aの回転に連動して前後に揺動する偏心カム式の揺動駆動機構410が設けられている。揺動フレーム415は、揺動駆動機構410によって前後に揺動可能に構成されている。
【0026】
フィードパン411は、広く平らに形成された構造体である。フィードパン411は、受網32から落下してきた脱穀処理物を受け止める。フィードパン411は、前後に揺動することにより、フィードパン411上の脱穀処理物を均しながら後方に移動させる。このとき、脱穀処理物は、斜めに取り付けられたフィン411fによって左右方向にも満遍なく広げられる。
【0027】
チャフシーブ412は、所定の間隔を設けて相互に平行に並べられた複数のシーブプレート412pを有する。複数のシーブプレート412pは、左右方向に沿って延在しつつ前後方向に並設されている。シーブプレート412pの角度は、脱穀処理物の量に応じて調整可能である。チャフシーブ412は、前後に揺動することにより、フィードパン411から送られてきた脱穀処理物を篩いにかけ、混入している夾雑物を浮き上がらせて穀粒と分離する。チャフシーブ412上に残った脱穀処理物は、後方に移動して穴あきラック413へ送られる。チャフシーブ412で選別された脱穀処理物(穀粒と少数の夾雑物となっている)は、篩部であるグレンシーブ416に至る。グレンシーブ416を通過した脱穀処理物(穀粒のみとなっている「一番処理物」)は、第一流穀板431(案内部)で案内されて一番樋43に落下し、一番コンベア143(第1搬送部)へ送られる。グレンシーブ416上に残った脱穀処理物は後方に移動して第二流穀板441に至り、第二流穀板441で案内されて二番樋44に落下し、二番コンベア144(第2搬送部)によって揺動選別装置41の前端側に還元搬送され、再度の選別処理に供される。
【0028】
穴あきラック413は、揺動フレーム415に支持され、
図4、
図5A及び
図5Bに示すように、二番コンベア144(第2搬送部)の上方に位置して脱穀処理物を二番コンベア144又は機外に振り分ける。穴あきラック413は、円形の漏下孔413hが複数形成された平板部位413aと、平板部位413aを補強するための前後方向に延びる桟413bと、を有する。
図5Bに示すように、平板部位413aと桟413bとが重なる部分には、両部材を貫通する漏下孔413hが形成されている。桟413bにも漏下孔413hが形成されているので、選別風を遮ることを抑制している。穴あきラック413は、前後に揺動することにより、チャフシーブ412から送られてきた脱穀処理物を篩いにかけ、混入している比較的大きな夾雑物を支持して穀粒と分離する。穴あきラック413で選別された脱穀処理物(穀粒と少数の小さな夾雑物となっている「二番処理物」)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44に落下し、二番コンベア144によって揺動選別装置41の前端側に還元搬送され、再度の選別処理に供される。穴あきラック413上に残った脱穀処理物は、後方に移動して機外へ排出される。
【0029】
送風装置42は、揺動選別装置41の前部下方に配置され、揺動選別装置41に向かって選別風を供給する。送風装置42は、ファン421と、ファンケース422とを有する。本実施形態では、フィードパン411の下方にファン421が配置され、そのファン421を覆うようにファンケース422が配置されている。ファン421は、所定の角度で取り付けられた複数のファンプレート421pを有する。ファン421は、回転して風を送り出すことにより、チャフシーブ412及び穴あきラック413に載った夾雑物や、それらから落下した夾雑物を吹き飛ばす。ファンケース422は、板材を折り曲げて形成された構造体である。ファンケース422は、ファン421を覆うとともに、そのファン421が送り出した風を所定の方向へ案内する。なお、第1のファン421による送風を補充するために、第1のファン421よりも後方に第2のファン423を設けている。第2のファン423から送り出される風は、穴あきラック413に供給されて、穴あきラック413上の脱穀処理物の選別に寄与する。
【0030】
[グレンシーブ及び周辺構造]
揺動選別装置41は、脱穀処理物をグレンタンク51に搬送する一番コンベア143(第1搬送部)と、脱穀処理物を揺動選別装置41の前端側に還元する二番コンベア144(第2搬送部)と、グレンシーブ416(第1篩部)と、第一流穀板431(案内部)と、を有する。
【0031】
グレンシーブ416は、
図4及び
図6に示すように、一番コンベア143(第1搬送部)の上方に位置し、脱穀処理物を一番コンベア143又は二番コンベア144に振り分ける。グレンシーブ416の上方にはチャフシーブ412が配置されており、グレンシーブ416はチャフシーブ412の揺動により選別された脱穀処理物を更に選別する。グレンシーブ416は、グレンタンク51に貯留すべき穀粒を通過させ、穀粒以外の夾雑物(大豆であれば、蕾や未成熟な実)を通過させないことにより、両者を選別するための漏下孔416h(
図8A、
図8B、
図9参照)が複数形成された板状部位を有する。漏下孔416hの形状及びサイズは、作物の種類に応じて適宜設定される。グレンシーブ416は、揺動フレーム415に支持されている。
【0032】
図4及び
図6に示すように、グレンシーブ416の後端416rは、第一流穀板431(案内部)の後端431rよりも後方に位置している。これにより、平面視において第一流穀板431がグレンシーブ416に重なることになり、グレンシーブ416の後端416rから落下した脱穀処理物が第一流穀板431に到達せず、二番コンベア144に到達するようになる。
【0033】
グレンシーブ416は、前部篩部4160と、揺動フレーム415に対して着脱可能に取り付けられ且つ前部篩部4160に連なる後部篩部4161と、を有する。後部篩部4161の後端416rは、第一流穀板431(案内部)の後端431rよりも後方に位置している。前部篩部4160と後部篩部4161とが連なるとは、平面視にて両者が隙間なく接触しているか、平面視にて両者が重なっていることを意味する。両者が連なっていることにより、前部篩部4160から後部篩部4161への脱穀処理物の的確な受け渡しが可能になる。
【0034】
図8A、
図8B及び
図9に示すように、前部篩部4160及び後部篩部4161には、漏下孔416hが形成されている。前部篩部4160は、平板部位4160aと、平板部位4160aを補強するための前後方向に延びる桟4160bと、を有する。平板部位4160aと桟4160bとが重なる部分には、両部材を貫通する漏下孔416hが形成されている。桟4160bにも漏下孔413hが形成されているので、選別風を遮ることを抑制している。
【0035】
図9に示すように、後部篩部4161に形成された漏下孔416hは、第1のファン421からの風を遮らない役割も有する。本実施形態においては、後部篩部4161に漏下孔416hを形成しているが、これに限定されない。例えば後部篩部4161に漏下孔416hを形成しなくてもよい。特に本実施形態のように送風装置42を構成する第2のファン423を有するコンバインにおいては、後部篩部4161の下方であって後部篩部4161の後端416rより前方に第2のファン423を位置させることで、揺動選別装置41の後部(穴あきラック413及びその近傍)に第2のファン423の風が送られるため、選別能力を確保可能となる。
【0036】
前部篩部4160と後部篩部4161の突き合わせ部分には、互いに接触することにより左右方向に沿った移動を案内するレール部4162が設けられている。本実施形態では、断面L字部位が左右方向に延びているが、形状はこれに限定されない。前部篩部4160の断面L字部位が後部篩部4161の断面L字部位の上方に位置している。断面L字部位同士(レール部4162同士)を互いに接触させることで後部篩部4161を足場として前部篩部4160を左右方向にスライド移動可能とするレール部として機能する。これにより、前部篩部4160の着脱作業が容易となる。
【0037】
図6に示すように、後部篩部4161は、後方に向かうにつれて上方に上がっており、前部篩部4160との間に凹部4163を形成している。このように凹部4163を設けることで、夾雑物が前部篩部4160へ逆流せず且つ一時的に滞留するため、選別性能を向上させることが可能となる。
図6に示すように、グレンシーブ416全体が後方あがりになっており、後部篩部4161において一旦下がるものの、後部篩部4161自体が後方あがりであることにより、後部篩部4161の後端416rがグレンシーブ416全体において最も高い位置に配置されている。
【0038】
図6に示すように、グレンシーブ416の後端416r(後部篩部4161の後端416r)はチャフシーブ412の後端部412rよりも前方に位置し、且つ、グレンシーブ416の後端416rは穴あきラック413の前端部413fによりも前方に位置している。この構成によれば、チャフシーブ412を通過した脱穀処理物が、チャフシーブ412と穴あきラック413との間の隙間から落下したとしても、グレンシーブ416の後端416r(後部篩部4161の後端416r)には至らず、後部篩部4161に多量の脱穀処理物が供給されることを防ぐことが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、複数の篩部4160,4161によってグレンシーブ416を構成しているが、1つの篩部でグレンシーブ416を構成してもよい。
【0040】
図7及び
図8Aに示すように、篩部4160は、ボルト72により揺動フレーム415に着脱自在に固定されている。
図7及び
図9に示すように、後部篩部4161は、左右に固定用ステー4161aに固定されている。揺動フレーム415には、対をなす揺動側ステー417が溶接で固定されている。固定用ステー4161a及び揺動側ステー417には、ボルト孔が形成されており、このボルト孔に挿入したボルト73により、後部篩部4161、固定用ステー4161a及び揺動側ステー417が揺動フレーム415に固定される。
【0041】
図7、
図8A及び
図9に示すように、前部篩部4160及び後部篩部4161は、選別する作物の種類に応じて交換可能にするために、機体カバー70の側方に形成されたメンテナンス開口71を介して着脱自在に構成されている。取り外す手順は、機体カバー70の左右側方に形成されたメンテナンス開口71を閉塞するカバー(図示せず)を取り外す。次に、
図8Aに示すように、メンテナンス開口71を介して、前部篩部4160を揺動フレーム415に固定するボルト72を取り外す。すると、前部篩部4160を側方にスライド移動させれば、メンテナンス開口71を介して取り外すことができる。次に、
図9に示すように、揺動側ステー417と固定用ステー4161aを固定するボルト73を取り外す。次に、後部篩部4161及び固定用ステー4161aを、揺動側ステー417と干渉しないように前方に移動させ、続いて、側方に移動させれば、メンテナンス開口71を介して取り外すことができる。なお、第一流穀板431は、固定用ステー4161aに固定されているが、第一流穀板431はゴム板であるので、曲げることでメンテナンス開口71を通すことができる。
【0042】
図11の左写真は、後部篩部がない従来のコンバインでの選別結果を示す。
図11の右写真は、後部篩部を設けた本開示のコンバインでの選別結果を示す。従来のコンバインの選別結果には、蕾や未成熟な実が含まれており、適切に選別できていないことがわかる。しかし、本開示のコンバインの選別結果には、蕾や未成熟な実がほぼなく、適切に選別できていることがわかる。
【0043】
<変形例>
本実施形態では、
図7に示すように揺動フレーム415に揺動側ステー417が溶接で固定されているため、後部篩部4161を取り出すためには、揺動側ステー417を避けるために、後部篩部4161を前方に移動させなければならない。これに対して、
図10に示すように構成してもよい。
図10の例では、後部篩部4161及び後部篩部4161を揺動フレーム415に固定するためのステー4164が、メンテナンス開口71に左右方向で干渉しないように、メンテナンス開口71が大きく形成されており、更に、ステー4164をボルト73により揺動フレーム415に着脱可能に固定すればよい。このように構成すれば、ボルト73を取り外すだけで、後部篩部4161及び揺動側ステー417をメンテナンス開口71から左右方向に沿ってスライド移動させて取り外すことができる。
【0044】
前部篩部4160と後部篩部4161の突き合わせ部分は、変更可能である。例えば、揺動フレーム415に固定される下向きのT字状の保持部を設け、その保持部に前部篩部4160と後部篩部4161とを保持するようにすればよい。このようにすれば、保持部が前部篩部4160と後部篩部4161を保持するので、前部篩部4160だけを引き出したり、後部篩部4161だけを引き出したりすることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、二番コンベア144(第2搬送部)は、脱穀処理物を揺動選別装置41の前端側に還元するが、これに限定されない。例えば、二番コンベア144(第2搬送部)は、脱穀装置3(例えば扱胴31)に還元してもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態のコンバインは、
作物を脱穀処理する脱穀装置3と、
脱穀装置3により脱穀された脱穀処理物を揺動選別する揺動選別装置41と、を備え、
揺動選別装置41は、
脱穀処理物をグレンタンク51に搬送する一番コンベア143(第1搬送部)と、
脱穀処理物を脱穀装置3又は揺動選別装置41の前端側に還元する二番コンベア144(第2搬送部)と、
一番コンベア143(第1搬送部)の上方に位置し、脱穀処理物を一番コンベア143(第1搬送部)又は二番コンベア144(第2搬送部)に振り分けるグレンシーブ416(第1篩部)と、
グレンシーブ416(第1篩部)を通過した脱穀処理物を一番コンベア143(第1搬送部)に案内する第一流穀板431(案内部)と、を有し、
グレンシーブ416(第1篩部)の後端416rは、第一流穀板431(案内部)の後端431rよりも後方に位置する。
【0047】
この構成によれば、グレンシーブ416(第1篩部)の後端416rから落下した物が第一流穀板431(案内部)に到達しないので、グレンタンク51に搬送すべきではない作物の一部が一番コンベア143(第1搬送部)に案内されることを回避でき、選別性能を向上させることが可能となる。
【0048】
本実施形態において、揺動選別装置41は、前後に揺動可能に構成された揺動フレーム415と、グレンシーブ416(第1篩部)の上方に配置され且つ揺動フレーム415に支持されるチャフシーブ412と、を備え、グレンシーブ416(第1篩部)は、チャフシーブ412の揺動により選別された脱穀処理物を更に選別する。
【0049】
チャフシーブ412が荒選別する篩部であり、グレンシーブ416(第1篩部)がグレンタンク51へ搬送すべき穀粒のみを精密に選別する構成であり、精選別するグレンシーブ416(第1篩部)の選別性能を向上可能となる。
【0050】
本実施形態において、グレンシーブ416(第1篩部)は、前部篩部4160と、揺動フレーム415に対して着脱可能に取り付けられ且つ前部篩部4160に連なる後部篩部4161と、を含み、後部篩部4161の後端416rは、第一流穀板431(案内部)の後端431rより後方に位置する。
【0051】
この構成によれば、作物の種類に応じて後部篩部4161を着脱することで、作物の種類に応じて適切な選別を実現することができ、多品種に対応可能な選別が可能となる。
【0052】
本実施形態において、揺動選別装置41は、二番コンベア144(第2搬送部)の上方に位置して脱穀処理物を二番コンベア144(第2搬送部)又は機外に振り分ける平板状の穴あきラック413(第2篩部)を有し、穴あきラック413(第2篩部)は、円形の漏下孔413hが形成されている。
【0053】
この構成によれば、穴あきラック413(第2篩部)は、一般的なストローラックのような横桟型式ではなく、円形の漏下孔413hを有することで、穀稈の破片のような排藁が二番コンベア144(第2搬送部)に振り分けられることを適切に防ぎ、選別性能を向上させることが可能となる。
【0054】
図1~9に示す実施形態において、前部篩部4160に対して左右方向に沿って機外からアクセス可能にするメンテナンス開口71が設けられており、
前部篩部4160及び後部篩部4161の突き合わせ部分には、前部篩部を左右方向に沿って案内可能なレール部4162が設けられており、
前部篩部4160は、レール部4162に沿ってメンテナンス開口71から抜き差しされることで、揺動フレーム415に対して着脱可能に構成されている。
【0055】
図10に示す実施形態において、前部篩部4160又は後部篩部4161に対して左右方向に沿って機外からアクセス可能にするメンテナンス開口71が設けられており、
前部篩部4160及び後部篩部4161の突き合わせ部分には、前部篩部4160又は後部篩部4161を左右方向に沿って案内可能なレール部4162が設けられており、
前部篩部4160又は後部篩部4161は、レール部4162に沿ってメンテナンス開口71から抜き差しされることで、揺動フレーム415に対して着脱可能に構成されている。
【0056】
この構成によれば、前部篩部4160又は後部篩部4161を容易に着脱でき、メンテナンス性が向上する。また、作物に応じた適切な篩部に容易に切り替えることが可能となる。
【0057】
本実施形態では普通型コンバインの例を示したが、これに限られず、本開示は自脱型コンバインであってもよい。
【0058】
本開示は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 コンバイン
143 一番コンベア(第1搬送部)
144 二番コンベア(第2搬送部)
3 脱穀装置
41 揺動選別装置
412 チャフシーブ
413 穴あきラック(第2篩部)
413h 漏下孔
415 揺動フレーム
416 グレンシーブ(第1篩部)
4160 前部篩部
4161 後部篩部
4162 レール部
431 第一流穀板(案内部)
51 グレンタンク
71 メンテナンス開口