(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20220517BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20220517BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/16
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2018170910
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】関塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏行
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127042(JP,A)
【文献】特開2006-240545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
A47C 7/00 - 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突時に乗員と車両側部との間に展開して乗員の頭部を保護する保護装置を備えた車両に搭載される車両用シートであって、
シートクッションと、前記シートクッションのシート後方側の端部に連結されると共に、前記シートクッションに対してシート前後方向に回動可能に構成されたシートバックとを備えたシート本体と、
前記シート本体をシート上下方向に移動させるリフタ装置と、
を有し、
前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、前記シート本体が所定高さよりも低い場合に、
乗員の頭部が前記保護装置の保護範囲内に位置するように前記リフタ装置によって前記シート本体
をシート上方側へ移動さ
せる車両用シート。
【請求項2】
前記リフタ装置によって前記シート本体がシート上方側へ移動される際のリクライニング角度は、通常の運転時に設定される範囲よりも大きい角度である請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記リフタ装置は、前記シートバックのリクライニング角度が大きくなるほど、前記シート本体の高さを高くする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シート本体に着座した乗員の頭部の高さを検知又は推測可能な乗員検知センサを備え、
前記乗員検知センサによって検知又は推測された乗員の前記シート本体に対する頭部の高さが所定の高さよりも低い場合には、頭部の高さが所定の高さよりも高い場合と比較して、前記リフタ装置を作動させる際のリクライニング角度の閾値を小さくする請求項1~3の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記リフタ装置は、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きい場合には、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも小さい場合と比較して、より上方まで前記シート本体を移動可能とする請求項1~4の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも小さくなった場合で、かつ、前記シート本体が所定高さよりも高い場合に、前記リフタ装置によって前記シート本体をシート下方側へ移動させる請求項1~5の何れか1項に記載の車両用シート。
【請求項7】
シートクッションと、前記シートクッションのシート後方側の端部に連結されると共に、前記シートクッションに対してシート前後方向に回動可能に構成されたシートバックとを備えたシート本体と、
前記シート本体をシート上下方向に移動させるリフタ装置と、
を有し、
前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、前記シート本体が所定高さよりも低い場合に、前記リフタ装置によって前記シート本体がシート上方側へ移動される車両用シートであって、
前記シート本体に着座した乗員の頭部の高さを検知又は推測可能な乗員検知センサを備え、
前記乗員検知センサによって検知又は推測された乗員の前記シート本体に対する頭部の高さが所定の高さよりも低い場合には、頭部の高さが所定の高さよりも高い場合と比較して、前記リフタ装置を作動させる際のリクライニング角度の閾値を小さくする、車両用シート。
【請求項8】
シートクッションと、前記シートクッションのシート後方側の端部に連結されると共に、前記シートクッションに対してシート前後方向に回動可能に構成されたシートバックとを備えたシート本体と、
前記シート本体をシート上下方向に移動させるリフタ装置と、
を有し、
前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、前記シート本体が所定高さよりも低い場合に、前記リフタ装置によって前記シート本体がシート上方側へ移動される車両用シートであって、
前記リフタ装置は、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きい場合には、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも小さい場合と比較して、より上方まで前記シート本体を移動可能とする、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手動運転モードよりも自動運転モードの方が運転席のリクライニング角度が大きくなるように運転席のリクライニング角度を制御するリクライニング角度制御部を備えた車両用運転支援装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、サイドエアバッグ袋体とカーテンエアバッグ袋体とを備えた車両用エアバッグ装置において、両エアバッグ袋体の展開状態で、カーテンエアバッグ袋体がサイドエアバッグ袋体を嵌込み可能な形状とされた構造が開示されている。さらに、特許文献3には、運転者の体格に応じてリラックスポジションの位置姿勢(安楽姿勢)を算出する構成が開示されている。さらにまた、特許文献4には、手動運転状態から自動運転状態に移行した場合に、シートバックを倒し、かつ、シートクッションを傾斜させる構成が開示されている。また、特許文献5には、自動運転状態時と手動運転状態時とでシート各部の相対的な変位量を変化させる構造が開示されている。さらに、特許文献6には、手動運転から自動運転に切り替える場合に、リラックス姿勢に移行させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/011866号パンフレット
【文献】特開2008-290529号公報
【文献】特開2017-132383号公報
【文献】特開2017-136898号公報
【文献】特開2017-170942号公報
【文献】特開2016-168972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の自動運転時には、運転時よりもシートバックを後傾させてリクライニング状態にすることが考えられる。この場合、乗員の頭部の位置が運転時よりも下方側に位置するため、側面衝突時に乗員の頭部を保護するための乗員保護装置などによる乗員の頭部の保護性能を確保する観点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、リクライニング状態であっても乗員の頭部の保護性能を確保することができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車両用シートは、側面衝突時に乗員と車両側部との間に展開して乗員の頭部を保護する保護装置を備えた車両に搭載される車両用シートであって、シートクッションと、前記シートクッションのシート後方側の端部に連結されると共に、前記シートクッションに対してシート前後方向に回動可能に構成されたシートバックとを備えたシート本体と、前記シート本体をシート上下方向に移動させるリフタ装置と、を有し、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、前記シート本体が所定高さよりも低い場合に、乗員の頭部が前記保護装置の保護範囲内に位置するように前記リフタ装置によって前記シート本体をシート上方側へ移動させる。
【0008】
請求項1に記載の車両用シートでは、シート本体は、シートクッションとシートバックとを備えており、シートバックは、シートクッションのシート後方側の端部に回動可能に連結されている。また、リフタ装置は、作動されることでシート本体をシート上下方向に移動させる。そして、シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、シート本体が所定高さよりも低い場合に、リフタ装置によってシート本体がシート上方側へ移動される。これにより、例えば、自動運転時に、運転時よりもシートバックを後傾させてリクライニング状態となった場合であっても、リフタ装置によってシート本体がシート上方側へ移動され、乗員の頭部の位置をシート上方側へ移動させることができる。この結果、側面衝突時に展開して乗員の頭部を保護する保護装置の保護範囲に乗員の頭部を位置させることができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1において、前記リフタ装置によって前記シート本体がシート上方側へ移動される際のリクライニング角度は、通常の運転時に設定される範囲よりも大きい角度である。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、通常の運転時にシートバックのリクライニング角度が変更された場合であっても、リフタ装置が作動せず、乗員が煩わしさを感じるのを抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は2において、前記リフタ装置は、前記シートバックのリクライニング角度が大きくなるほど、前記シート本体の高さを高くする。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートでは、シート本体が既定の高さまで一気にシート上方側へ移動(上昇)する場合と比較して、乗員の頭部をリクライニング角度に応じた適切な高さに位置させることができる。なお、ここでいう「リクライニング角度に応じてシート本体の高さを変更する」とは、リクライニング角度とシート本体の高さとの関係が線形になる場合に限定されるものではない。例えば、リクライニング角度の増加に伴って、シート本体の高さが段階的に高くなる構造を広く含む概念である。
【0013】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1~3の何れか1項において、前記シート本体に着座した乗員の頭部の高さを検知又は推測可能な乗員検知センサを備え、前記乗員検知センサによって検知又は推測された乗員の前記シート本体に対する頭部の高さが所定の高さよりも低い場合には、頭部の高さが所定の高さよりも高い場合と比較して、前記リフタ装置を作動させる際のリクライニング角度の閾値を小さくする。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートでは、小柄な乗員のように頭部の高さが低い乗員が着座している場合には、リクライニング角度が比較的小さい場合でもリフタ装置によってシート本体を上昇させる。これにより、小柄な乗員が着座している場合であっても、側面衝突時に乗員の頭部が乗員保護装置などの保護範囲から外れるのを抑制することができ、頭部の保護性能を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項1~4の何れか1項において、前記リフタ装置は、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも大きい場合には、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも小さい場合と比較して、より上方まで前記シート本体を移動可能とする。
【0016】
請求項5に記載の車両用シートでは、リクライニング角度が所定角度よりも大きい場合には、リフタ装置による移動範囲が上方側へ拡大される。これにより、運転時などの通常の使用時にシート本体がシート上方側へ移動し過ぎるのを抑制しつつ、リクライニング角度が大きい場合に乗員の頭部をシート上方側へ移動させることができる。
【0017】
請求項6に記載の車両用シートは、請求項1~5の何れか1項において、前記シートバックのリクライニング角度が所定角度よりも小さくなった場合で、かつ、前記シート本体が所定高さよりも高い場合に、前記リフタ装置によって前記シート本体をシート下方側へ移動させる。
【0018】
請求項6に記載の車両用シートでは、シートバックをリクライニング状態から起立させた場合に、シート本体がシート下方側へ移動(下降)することで、スムーズに運転時のポジションへ移行させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートによれば、リクライニング状態であっても乗員の頭部の保護性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートを備えた車両の要部を概略的に示す概略図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用シートを示す側面図であり、(A)にはリフタ装置が作動する前の状態が示され、(B)にはシートバックがリクライニングされてリフタ装置が作動した状態が示されている。
【
図3】第1実施形態に係るシートバックのリクライニング角度とシート高さとの関係を示すグラフである。
【
図4】ECUのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係るシート上昇処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の変形例に係るシートバックのリクライニング角度とシート高さとの関係を示すグラフである。
【
図7】変形例に係るシート下降処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る車両用シートを備えた車両の要部を概略的に示す概略図である。
【
図9】第2実施形態に係るシートバックのリクライニング角度とシート高さとの関係を示すグラフであり、(A)には小柄な乗員の場合におけるグラフが示され、(B)には大柄な乗員の場合におけるグラフが示されている。
【
図10】第2実施形態に係る閾値変更処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る車両用シート10について、図面を参照して説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR及び矢印UPは、シートの前方向及び上方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態の車両11における運転席には、車両用シート10が設けられている。また、車両11の上部には、車両前後方向に沿ってルーフサイドレール12が延在されている。
【0023】
ルーフサイドレール12の車両幅方向内側には、カーテンエアバッグ14が収納されている。カーテンエアバッグ14は、車両11の側面衝突時に図示しないインフレータからガスが供給されることで乗員Pと車両側部との間にカーテン状に展開され、乗員Pの頭部Hを保護するように構成されている。なお、
図1では、展開状態のカーテンエアバッグ14が二点鎖線で描かれている。
【0024】
車両用シート10の車両前方側には、ステアリングホイール16が設けられており、このステアリングホイール16の中央部のセンタパッド部16A内には、図示しない運転席用エアバッグが収納されている。運転席用エアバッグは、車両11の前面衝突時に図示しないインフレータからガスが供給されることで、車両用シート10へ向かって膨張展開され、車両前方側へ慣性移動する乗員Pを拘束するように構成されている。
【0025】
次に、本実施形態に係る車両用シート10について説明する。車両用シート10は、主として、シート本体18とリフタ装置20とを備えており、シート本体18は、シートクッション22とシートバック24とを含んで構成されている。また、本実施形態では、シート前方側が車両前方側と一致しており、シート幅方向が車両幅方向と一致している。
【0026】
シートクッション22は、乗員Pの大腿部及び臀部をシート下方側から支持可能に構成されており、このシートクッション22のシート後方側の端部にシートバック24が連結されている。そして、シートバック24は、シートクッション22に対してシート前後方向に回動可能とされている。具体的には、シートクッション22とシートバック24との連結部分にリクライニング機構28が設けられており、このリクライニング機構28によってシートバック24がシートクッション22に対して回動(リクライニング)される。また、シートバック24の上端部には、乗員Pの頭部Hをシート後方側から支持可能なヘッドレスト26が設けられている。
【0027】
リフタ装置20は、フロント側リンク20A及びリア側リンク20Bを備えている。フロント側リンク20Aは、下端部が車体側に回動可能に取り付けられており、上端部がシートクッション22のフレームの前側に回動可能に取り付けられている。一方、リア側リンク20Bは、フロント側リンク20Aよりもシート後方側に位置しており、下端部が車体側に回動可能に取り付けられている。また、リア側リンク20Bの上端部は、シートクッション22のフレームの後側に回動可能に取り付けられている。なお、本実施形態では、フロント側リンク20A及びリア側リンク20Bはそれぞれ、左右一対設けられており、これらの4つのリンクによってシート本体18がシート上下方向に移動可能とされている。そして、リア側リンク20Bは、図示しないリフタギアを介してモータなどの駆動部に連結されており、駆動部が駆動することで、リフタギアを介してリア側リンク20Bが回動し、シート本体18が上下に移動されるように構成されている。
【0028】
ここで、車両11には、制御部であるECU(Electronic Control Unit)30が設けられており、車両用シート10は、ECU30と電気的に接続されている。
【0029】
図4に示されるように、ECU30は、主として、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)32、ROM(Read Only Memory)34、RAM(Random Access Memory)36、ストレージ38、衝突検知部40、リクライナ制御部42、角度検知部44、リフタ制御部46、高さ検知部48及びエアバッグ制御部50を含んで構成されている。各構成は、バス52を介して相互に通信可能に接続されている。
【0030】
CPU32は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU32は、ROM34又はストレージ38からプログラムを読み出し、RAM36を作業領域としてプログラムを実行する。CPU32は、ROM34又はストレージ38に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0031】
ROM34は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM36は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ38は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0032】
衝突検知部40は、車両11の衝突を検知又は予知する。具体的には、車両11に設けられた複数のセンサ類からの信号を受けて、車両11が衝突したことを検知又は予知する。このとき、車両11の衝突形態が前面衝突であるか側面衝突であるか、などの衝突形態についても判断する。
【0033】
リクライナ制御部42は、車両用シート10のリクライニング機構28を制御し、乗員Pによるレバー又はボタンなどの操作を検知して、シートバック24のリクライニング角度を変更する。また、角度検知部44は、シートバック24のリクライニング角度を検知する。
【0034】
リフタ制御部46は、リフタ装置20を制御し、乗員Pによるレバー又はボタンなどの操作を検知して、シート本体18の高さを変更させる。また、高さ検知部48は、シート本体18の基準に対する高さを検知する。
【0035】
エアバッグ制御部50は、車両11に搭載された各エアバッグ装置を制御し、衝突検知部40で検知又は予知された衝突形態に応じたエアバッグを膨張展開させる。具体的には、エアバッグ装置のインフレータを作動させることでガスを発生させ、エアバッグへガスを供給することでエアバッグを膨張展開させる。
【0036】
また、本実施形態では、ECU30は、シートバック24のリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、シート本体18が所定高さよりも低い場合に、リフタ装置20によってシート本体18をシート上方側へ移動させるように構成されている。このシート上昇処理の流れについて、
図2と、
図3のグラフと、
図5のフローチャートとを参照して説明する。なお、以下の説明では、
図2のθ1及びθ2に示されるように、シートクッション22とシートバック24とがなす角度のうち、鉛直方向に対してシートバック24が後傾した角度を「リクライニング角度」とする。
【0037】
図5のステップS102では、CPU32は、角度検知部44によってシートバック24のリクライニング角度θを検知する(
図4参照)。次に、ステップS104では、CPU32は、検知されたシートバック24のリクライニング角度θが30°よりも大きいか否かを判断する。
【0038】
ここで、本実施形態では、
図3のグラフに基づいてシートバック24のリクライニング角度とシート本体18の高さとの関係が設定されており、斜線部の領域に入らないように制御されている。また、リフタ装置20の制御が行われるリクライニング角度の閾値は、30°とされている。このため、本実施形態では、上述したように、
図5のステップS104において、CPU32は、シートバック24のリクライニング角度θが閾値である30°よりも大きいか否かを判断する。そして、シートバック24のリクライニング角度θが30°よりも大きい場合は、ステップS106へ移行し、シートバック24のリクライニング角度θが30°以下である場合は、処理を終了する。
【0039】
図2(A)では、シートバック24のリクライニング角度θ1は、20°から30°の間の角度に設定されており、通常の運転時に設定される範囲のリクライニング角度となっている。このような場合は、
図5のステップS104において、シートバック24のリクライニング角度θ1が30°以下であるため、処理を終了する。すなわち、リフタ装置20は作動されない。
【0040】
一方、
図2(B)に示されるように、リクライニング角度θ2が30°よりも大きい場合は、ステップS106へ移行する。ステップS106では、CPU32は、高さ検知部48によってシート本体18のシート高さHを検知する。
図3に示されるように、シート高さは、一例として、基準の高さHSが0mmに設定されており、この基準の高さHSよりも高い場合は正の数値となり、基準の高さHSよりも低い場合は負の数値となる。また、本実施形態では、シート高さは、-30mm(ロアモースト位置)から+30mm(アッパモースト位置)の範囲で移動可能とされている。
【0041】
図5のステップS108では、CPU32は、検知されたシート高さHが所定高さよりも低いか否かを判断する。例えば、
図3のグラフにおいてリクライニング角度が35°の場合、シート高さが-10mmよりも低ければ斜線部の領域に入る。このため、CPU32は、ステップS108において、シートバック24のリクライニング角度が35°の場合には、シート高さHが-10mmよりも低いか否かを判断する。そして、シート高さHが-10mmよりも低い場合は、ステップS110へ移行し、シート高さHが-10mm以上である場合は、処理を終了する。なお、ここでは一例としてリクライニング角度が35°の場合について説明したが、リクライニング角度が異なる場合、ステップS108における所定高さは、
図3のグラフに基づいて変更されることとなる。
【0042】
図5のステップS110では、CPU32は、リフタ装置20を作動させてリフタ位置を上昇させる。すなわち、シート本体18の高さを高くする。
【0043】
ここで、
図2(A)の状態から
図2(B)の状態へシートバック24を後傾させた場合について説明する。
図2(A)では、シートバック24のリクライニング角度θ1は、上述したように閾値である30°よりも小さい。また、シート本体18の高さH1は、基準高さHSよりも下方に位置しているため、負の数値となっている。
【0044】
この状態からシートバック24を後傾させて
図2(B)の状態とした場合、リクライニング角度θ2は、40°から50°の間の角度となっているため、閾値の30°以上となる。この場合、
図5のステップS104からステップS106へ移行される。また、シートバック24を後傾させただけでは、シート本体18の高さは変わらないので、
図2(A)に示されるように、シート本体18のシート高さH1は、負の数値となっている。このため、リクライニング角度とシート高さとの関係が
図3のグラフの斜線部の領域に入る。すなわち、シート高さH1が所定高さよりも低いと判断され、リフタ装置20によってシート本体18が上昇される。そして、リクライニング角度とシート高さとの関係が
図3の斜線部の領域から外れる位置までシート本体18が上昇して処理が終了される。なお、
図3において、リクライニング角度が45°以上の場合、シート高さは+30mm(アッパモースト位置)の状態が維持されるようになっている。
【0045】
以上のように、本実施形態では、シートバック24のリクライニング角度が大きくなるほど、シート本体18の高さが高くなるように制御されている。また、本実施形態でリクライニング角度の閾値となっている30°は、通常の運転時に設定される範囲よりも大きい角度とされている。すなわち、自動運転時などにおいて乗員Pが安楽姿勢となる場合の角度となっている。
【0046】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0047】
本実施形態の車両用シート10では、シートバック24のリクライニング角度が所定角度よりも大きく、かつ、シート本体18が所定高さよりも低い場合に、リフタ装置20によってシート本体18をシート上方側へ移動させることができる。
【0048】
ここで、例えば、
図1の二点鎖線で示されるように、自動運転時に、運転時よりもシートバック24を後傾させてリクライニング状態となった場合、リフタ装置20が作動しなければ、乗員Pの頭部Hの高さがカーテンエアバッグ14の保護範囲から外れることが想定される。本実施形態では、
図1の実線で示されるように、リフタ装置20を作動させてシート本体18をシート上方側へ移動させ、乗員Pの頭部Hの位置がシート上方側へ移動される。この結果、カーテンエアバッグ14の保護範囲に乗員Pの頭部Hを位置させることができる。すなわち、リクライニング状態であっても乗員Pの頭部Hの保護性能を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態では、リフタ装置20が作動されるリクライニング角度の閾値が、通常の運転時の角度よりも大きく、安楽姿勢となる角度に設定されている。これにより、通常の運転時にシートバック24のリクライニング角度が変更された場合であっても、リフタ装置20が作動せず、乗員Pが煩わしさを感じるのを抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、シートバック24のリクライニング角度に応じてシート本体18の高さを変更することで、シート本体18が既定の高さまで一気に上昇する場合と比較して、乗員Pの頭部Hをリクライニング角度に応じた適切な高さに位置させることができる。すなわち、
図3のグラフに示されるように、本実施形態では、シートバック24のリクライニング角度が大きくなるほど、必要なシート高さが高くなるように設定されている。このため、シートバック24を後傾させるにつれて、徐々にシート本体18を高くすることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、シート高さを-30mmから+30mmの範囲で移動可能としたが、これに限定されず、例えば、
図6に示される変形例のグラフのように制御してもよい。
【0052】
(変形例)
図6に示されるように、本変形例では、所定の条件において、シート本体18のシート高さが+30mmよりも高い位置まで移動できるように構成されている。
【0053】
具体的には、リフタ装置20は、通常の運転時には、+30mmよりも高い位置へ移動しないようにロックされている。そして、シートバック24のリクライニング角度が40°よりも大きい場合には、リフタ装置20のロック状態が解除されて、シート本体18をより上方まで移動可能とする。すなわち、リフタ装置20は、リクライニング角度が40°よりも大きい場合のみ、シート本体18を+30mmよりも高い位置まで移動できるように構成されている。
【0054】
また、本変形例では、リクライニング角度が所定角度よりも小さくなった場合で、かつ、シート本体18が所定高さよりも高い場合に、リフタ装置20によってシート本体18をシート下方側へ移動させる。このシート下降処理の流れについて、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
図7のステップS202では、CPU32は、角度検知部44によってシートバック24のリクライニング角度θを検知する(
図4参照)。次に、ステップS204では、CPU32は、検知されたシートバック24のリクライニング角度θが40°よりも
小さいか否かを判断する。そして、シートバック24のリクライニング角度θが40°よりも
小さい場合は、ステップS206へ移行し、シートバック24のリクライニング角度θが40°以
上である場合は、処理を終了する。
【0056】
ステップS206では、CPU32は、シート本体18のシート高さHを検知する。そして、ステップS208では、CPU32は、検知されたシート高さHが所定高さ以上であるか否かを判断する。例えば、
図6のグラフにおいてリクライニング角度が45°の場合では、シート高さは、+30mmから+50mmの範囲に設定されている。このため、CPU32は、ステップS208において、シートバック24のリクライニング角度が45°の場合に、シート高さHが+50mm以上であるか否かを判断する。そして、シート高さHが+50mm以上である場合は、ステップS210へ移行し、シート高さHが+50mmよりも低い場合は、処理を終了する。
【0057】
ステップS210では、CPU32は、リフタ装置20を作動させてリフタ位置を下降させる。すなわち、シート本体18の高さを低くする。
【0058】
以上のようにシート本体18の高さを低くすることで、シートバック24をリクライニング状態から起立させた場合に、シート本体18がシート下方側に移動しているため、スムーズに運転時のポジションへ移行させることができる。
【0059】
また、リクライニング角度が通常の運転時に設定される範囲である場合に、シート高さが+30mmより高くなるのを抑制することができる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両用シート60について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0061】
図8に示されるように、本実施形態の車両61における運転席には、車両用シート60が設けられている。車両用シート60は、主として、シート本体18と、リフタ装置20とを備えており、シート本体18は、シートクッション22とシートバック24とを含んで構成されている。また、本実施形態では、シート前方側が車両前方側と一致しており、シート幅方向が車両幅方向と一致している。
【0062】
シートクッション22は、乗員Pの大腿部及び臀部をシート下方側から支持可能に構成されており、このシートクッション22のシート後方側の端部にシートバック24が連結されている。また、シートクッション22の内部には、車両用シート60に着座した乗員Pの体重を検知可能な乗員検知センサとしての体重センサ62が設けられている。
【0063】
また、車両61のステアリングホイール16よりも車両前方側には、乗員検知センサとしての光学カメラ64が設けられており、この光学カメラ64によって車両用シート60を含む車室内を撮像できるように構成されている。そして、体重センサ62及び光学カメラ64は、ECU30と電気的に接続されている。ECU30は、第1実施形態と同様に、
図4に示される構成とされている。
【0064】
ここで、本実施形態では、CPU32は、体重センサ62及び光学カメラ64の少なくとも一方によって車両用シート60に着座した乗員Pのシート本体18に対する頭部Hの高さを検知又は推測する。そして、検知又は推測された乗員Pの頭部Hの高さに応じてリフタ装置20を作動させる際のシートバック24のリクライニング角度の閾値を変更させる。この閾値変更処置の流れについて、
図9のグラフ及び
図10のフローチャートを参照して説明する。なお、変更される前のリクライニング角度の閾値は30°とされている。
【0065】
図10のステップS302では、CPU32は、乗員Pの頭部Hの高さを検知する。なお、ここでは、光学カメラ64によって基準高さに対する頭部Hの高さを検知しており、体重センサ62は、頭部Hの高さを推測するために補助的に用いられる。すなわち、体重センサ62で検知された乗員Pの体重から乗員Pの頭部Hの高さを推測するようにしている。
【0066】
ステップS304では、CPU32は、乗員Pの頭部Hの高さが所定の第1高さよりも低いか否かを判断する。第1高さは、予め設定された数値であり、車両用シート60に着座した乗員が小柄であるか否かを判断するための閾値となっている。そして、頭部Hの高さが第1高さよりも低い場合、ステップS308へ移行する。一方、頭部Hの高さが第1高さ以上である場合、ステップS306へ移行する。
【0067】
ステップS308に移行した場合、CPU32は、乗員Pが小柄であると判断し、リフタ装置20を作動させる際のシートバック24のリクライニング角度の閾値を25°に変更する。そして、処理を終了する。
【0068】
図9(A)に示されるように、閾値が25°に変更された場合、閾値が30°である場合と比較して、同じリクライニング角度であってもシート高さが高くなるように制御される。すなわち、閾値が30°の場合、
図3に示されるように、リクライニング角度が45°のときにシート高さが+30mmとなる。これに対して、閾値が25°の場合、
図9(A)に示されるように、リクライニング角度が40°のときにシート高さが+30mmとなる。
【0069】
図10のステップS306では、CPU32は、乗員Pの頭部Hの高さが所定の第2高さよりも高いか否かを判断する。第2高さは、予め設定された数値であり、第1高さよりも高い数値となっている。そして、第2高さは、車両用シート60に着座した乗員が大柄であるか否かを判断するための閾値となっている。頭部Hの高さが第2高さよりも高い場合、ステップS310へ移行する。一方、頭部Hの高さが第2高さ以下である場合、ステップS312へ移行する。
【0070】
ステップS310に移行した場合、CPU32は、乗員Pが大柄であると判断し、リフタ装置20を作動させる際のシートバック24のリクライニング角度の閾値を40°に変更する。そして、処理を終了する。
【0071】
図9(B)に示されるように、閾値が40°に変更された場合、閾値が30°である場合と比較して、同じリクライニング角度であってもシート高さが低くなるように制御される。すなわち、シート高さが-30mmの場合では、リクライニング角度が40°になるまでリフタ装置20が作動しないようになっている。
【0072】
図10のステップS312では、乗員Pの頭部Hの高さが、第1高さと第2高さとの間の高さであるため、リクライニング角度の閾値を変更しない。すなわち、閾値を30°に維持する。
【0073】
以上のように、本実施形態では、CPU32は、検知又は推測された乗員Pのシート本体18に対する頭部Hの高さが所定の第1高さよりも低い場合には、頭部Hの高さが第1高さよりも高い場合と比較して、リフタ装置20を作動させる際のリクライニング角度の閾値を小さくする。また、CPU32は、検知又は推測された乗員Pのシート本体18に対する頭部Hの高さが所定の第2高さよりも高い場合には、頭部Hの高さが第2高さよりも低い場合と比較して、リフタ装置20を作動させる際のリクライニング角度の閾値を大きくする。
【0074】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0075】
本実施形態の車両用シート60では、小柄な乗員のように頭部Hの高さが低い乗員Pが着座している場合には、リクライニング角度が比較的小さい場合でもリフタ装置20によってシート本体18を上昇させる。これにより、小柄な乗員Pが着座している場合であっても、側面衝突時に乗員Pの頭部Hがカーテンエアバッグ14などの乗員保護装置の保護範囲から外れるのを抑制することができ、頭部Hの保護性能を確保することができる。
【0076】
以上、第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、
図3に示されるように、リクライニング角度が30°から45°の間において、リクライニング角度とシート本体18の高さとの関係が線形になっているが、これに限定されない。具体的には、リクライニング角度の増加に伴って、シート本体18の高さが段階的に高くなるようにしてもよい。この場合、シート高さは、リクライニング角度が大きくなるにつれて階段状に上昇する。例えば、リクライニング角度が2.5°大きくなると、シート高さが10mm上昇するように制御してもよい。この場合であっても、リクライニング角度に応じてシート本体18の高さが変更されることとなる。
【0077】
また、上記実施形態では、
図1及び
図8に示されるように、側面衝突時に乗員Pの頭部Hを保護する保護装置として、カーテンエアバッグ14を備えた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、ドアトリムやピラーガーニッシュなど車体側から乗員Pへ向かって膨張展開することで乗員Pの頭部Hを保護する保護装置を備えた車両に適用してもよい。
【0078】
さらに、上記実施形態では、リフタ装置20を作動させる際のリクライニング角度の閾値を30°としたが、これに限定されず、他の閾値に設定してもよい。
【0079】
さらにまた、第2実施形態では、乗員Pの頭部Hの高さに応じてリクライニング角度の閾値を25°、30°及び40°に変更させる構成としたが、これに限定されない。例えば、閾値を他の角度に設定してもよい。また、閾値を25°と30°のどちらかに設定するように構成してもよい。
【0080】
また、第2実施形態では、
図8に示されるように、乗員Pの頭部Hの高さを検知又は推測するための乗員検知センサとして、体重センサ62及び光学カメラ64が設けられた構成について説明したが、これに限定されない。例えば、車両用シート60に設けられたシートスライドセンサなどの設定値から乗員Pの体格を推測することで、頭部Hの高さを推測してもよい。すなわち、車両用シート60の車両後方側へのシートスライド量が大きいほど、乗員Pの体格が大きいと推測することができる。また、逆に、車両用シート60の車両後方側へのシートスライド量が小さいほど、乗員Pの体格が小さいと推測することができる。また、ヘッドレスト26に圧力センサを内蔵しておき、乗員Pの頭部Hから圧力センサへ荷重が入力されることで頭部Hの高さを検知又は推測してもよい。
【0081】
さらに、上記実施形態では、車両11又は車両61に設けられたECU30によってリフタ装置20を制御したが、これに限定されない。例えば、車両用シート10又は車両用シート60の内部に制御装置を別途設けて、この制御装置によってリフタ装置20を作動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 車両用シート
18 シート本体
20 リフタ装置
22 シートクッション
24 シートバック
60 車両用シート
62 体重センサ(乗員検知センサ)
64 光学カメラ(乗員検知センサ)