(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ブロードバンド・アンテナ・システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20220517BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20220517BHJP
H01Q 5/371 20150101ALI20220517BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q13/10
H01Q5/371
H01Q21/28
(21)【出願番号】P 2018195473
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-10-15
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518367839
【氏名又は名称】アドバンスト オートモーティブ アンテナズ, ソシエダッド リミタダ ユニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】Advanced Automotive Antennas, S. L. U.
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ・マルティネス・オルティゴサ
(72)【発明者】
【氏名】ラミロ・イルレラ・キンテロ
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0060528(US,A1)
【文献】特表2013-528961(JP,A)
【文献】国際公開第2007/107101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを含むアンテナ・システムであって、
前記アンテナは、
平面状のグランド面(2)と、
中央のセグメント(3a)と第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)とを有する平面状の放射素子(3)であって、前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)の各々が前記中央のセグメント(3a)から延び、前記放射素子(3)がU形状の構成を有し、前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)のうちの一方の長さは、他方よりも、±15%である、前記平面状の放射素子(3)と、
前記中央のセグメント(3a)と前記グランド面(2)の側部との間に結合される単一の給電接続ライン(4)と、
前記中央のセグメント(3a)と、前記給電接続ライン(4)が結合された前記グランド面(2)の同じ前記側部と、の間に結合される単一のグランド接続ライン(5)と、
を備え、
前記給電接続ライン(4)及び前記グランド接続ライン(5)は、直線であって互いに平行であり、
これらの2つの接続ライン(4,5)
は、
隙間なく、くっつき、前記グランド面(2)は、少なくとも1つの細長い開口(8)を規定し、前記開口(8)は、少なくとも1つの穴を有し、
前記開口(8)は、2つの端(9)を有し、
前記端(9)にそれぞれ結合される給電端子及びグランド端子を有する給電ラインを
更に備える、
アンテナ・システム。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記放射素子(3)及び前記グランド面(2)は、同一平面上にある、
アンテナ・システム。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記放射素子(3)は、前記グランド面(2)の上に配置され、且つ、前記グランド面(2)と実質的に平行である、
アンテナ・システム。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナ・システムであって、
前記グランド面(2)は、2対の平行な辺を有する実質的に矩形状の構成を有し、
前記中央のセグメント(3a)は、前記辺のうちの1つの上に配置され、
前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)は、それぞれ、他の2つの垂直な辺の上に配置される、
アンテナ・システム。
【請求項5】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記放射素子の前記セグメント(3a,3b,3c)は、実質的に直線であり、
前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)は、互いに平行であり、且つ、前記中央のセグメント(3a)と直交する、
アンテナ・システム。
【請求項6】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)間の距離(d)は、約0.1λであり、ここで、λは、最低動作周波数である、
アンテナ・システム。
【請求項7】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記放射素子(3)と前記グランド面(2)との間の高さ(H)は、0.05λよりも大きく、ここで、λは、最低動作周波数における波長である、
アンテナ・システム。
【請求項8】
請求項
6または7に記載のアンテナ・システムであって、
前記最低動作周波数は、700MHzである、
アンテナ・システム。
【請求項9】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記グランド面(2)に取り付けられるプリント回路基板(6)を
更に備えるアンテナ・システム。
【請求項10】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記グランド面(2)に固定され、且つ、前記第1及び第2の側部のセグメント(3b,3c)間に配置される衛星ナビゲーション・アンテナ(GNSS)(10)を
更に備えるアンテナ・システム。
【請求項11】
請求項1に記載のアンテナ・システムであって、
前記放射素子(3)と前記グランド面(2)の片側との間の距離(H)は、0.05λよりも大きく、ここで、λは、最低動作周波数における波長である、
アンテナ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の目的)
本発明は、一般に、ブロードバンド及びマルチバンドのアンテナに関し、好ましくは、車両用リモート・アンテナとして用いることができる。
【0002】
本発明の目的は、例えば車両内部等の狭い空間内に取り付けできるように小さな寸法を有するブロードバンド及びマルチバンドのアンテナを提供することである。
【0003】
本発明のもう1つの目的は、製造コストを減少させるために、それ自身で簡単に車両に取り付け可能である、すなわち、追加的な取付手段なしで、また、車両へのグランド接続なしで、車両用リモート・アンテナを提供することである。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
幾つかの電子デバイスは大きな寸法を有するので、限られた空間内部に大きなアンテナ・システムを収納することは、困難である。このため、自動車等の動力で動く乗り物における多くの通信デバイスは、内部アンテナの性能を高める外部アンテナを必要としている。このことから、外部アンテナは、車両内の狭い空間内部に取り付けできるように可能な限り小さな寸法を有することが重要である。
【0005】
内部アンテナに関する外部アンテナのもう1つの利点は、電子ノイズという点での性能である。内部アンテナは、電子ノイズ源(クロック、マイクロプロセッサ等)に近い時に、システム全体の感度が最も低下するであろう。したがって、外部アンテナの場合、これらのノイズ源から移動することができるので、この状況は、改善される。
【0006】
例えば、LTEアンテナは、特に、同時に、メイン・アンテナとダイバーシティ・アンテナとの双方を必要とする。しかしながら、これら2つのLTEアンテナ(メイン及びダイバーシティ)は、信号干渉が高く、且つ、アンテナ間の無相関レベルが不十分である、特に低周波数帯域(700 MHz - 1 GHz)において、シャーク・フィン・アンテナの狭い内部に収納することができない。LTE等の携帯システム上、複数のアンテナが要求される時に、アンテナは、アンテナ間で可能な限り無相関である必要がある。
【0007】
他方、平面逆Fアンテナ(以下、「PIFA」という。)は、通常、例えば携帯電話、無線携帯情報端末(PDA: personal digital assistant)、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)-ブルートゥース(登録商標)等の無線通信に利用することができる。PIFA(planar inverted F antenna)は、一般に、平面放射素子と、その放射素子に平行であるグラント面と、を備え、このグランド面は、アンテナの構造よりも大きい。導電性第1ラインは、放射素子の側部の端に配置される第1コンタクトで、放射素子と結合され、その第1ラインは、グランド面にも結合される。
【0008】
導電性第2ラインは、第1ラインと同じ側面に沿って、第1ラインとは違って端上の異なるコンタクト位置であるが、放射素子に結合される。第1及び第2のラインは、PIFAの動作周波数で、所望のインピーダンス、例えば50オームに結合するように適合される。PIFAにおいて、第1及び第2のラインは、それらが結合される放射素子の端に垂直であり、これにより、(平面逆Fアンテナの記述名となる)逆F形状を形成することができる。
【0009】
従来の既知の平面逆Fアンテナは、所与の無線アプリケーション用のPIFAの体積を減少する必要性によって犠牲になった帯域幅を有する。また、その性能は、アンテナが結合されるグランド面の物理的な寸法に強く依存する。通常、携帯電話帯域(LTEの例として)の最も低い周波数で適切に機能するためには、100mmより大きいグランド面が必要である。
【0010】
したがって、その大きさを増加させないで、また、アンテナ設置用に大きなグランド面を使用しないで、PIFAの帯域幅を改善する必要がある。
【0011】
更に、減少させた寸法で、マルチバンドで、高効率で、低VSWRのアンテナを得ることは、難題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、特許請求の範囲の独立請求項によって定められる。
【0013】
本発明のアンテナは、放射及び帯域幅という点でアンテナ効率を高めるために2つの逆Fアンテナを備え、その2つのFアンテナ間の協動のために、グランド面のサイズを減少させることができる。そのアンテナは、2D(2次元)平面アンテナ(planar antenna)又は3D(3次元)立体アンテナ(volumetric antenna)の何れかとして実施することができる。
【0014】
本発明の1つの態様は、実質的に平面のグランド面と実質的に平面の放射素子とを備えるアンテナ装置を含むブロードバンド及びマルチバンドのアンテナ・システムに関する。その2D平面アンテナにおいて、放射素子及びグランド面は、同一平面であり、また、その3D実装において、放射素子は、グランド面の上に配置され、且つグランド面と実質的に平行である。
【0015】
放射素子は、中央セグメント並びに中央セグメントから延びる第1及び第2の横又は側部のセグメントを有する。給電接続ラインは、中央セグメントとグランド面の側部との間に結合され、また、グランド接続ラインは、中央セグメントと、給電接続ラインが結合された、グランド面の同じ側部と、の間に結合される。
【0016】
放射素子は、中央セグメント並びに中央セグメントから延びる第1及び第2の側部のセグメントによって形成された、U形状の構成を有する。給電接続ラインは、中央セグメントとグランド面との間に結合され、また、グランド接続ラインは、中央セグメントとグランド面との間に結合される。
【0017】
好ましくは、放射素子及びグランド面は、二重PIFAアンテナとして構成される。
【0018】
好ましくは、放射素子のそれらのセグメントは、実質的に垂直であり、また、第1及び第2の側部セグメントは、互いに、実質的に平行であり、且つ、中央セグメントに対して、実質的に直交する。グランド面は、2つの短辺及び2つの長辺を有する、実質的に矩形の構成を有し、また、中央セグメントは、これらの短辺のうちの1つの上に配置され、また、これらの側部セグメントは、それぞれ、これらの長辺の上に配置される。
【0019】
本発明のアンテナ・システムは、好ましくは、少なくとも1つのロング・ターム・エボリューション(LTE: Long Term Evolution)周波数帯域で動作するように、また、自動車用リモート・アンテナとして使用されるように、適合される。
【0020】
本発明の幾つかの利点は、以下である:
- 高効率;
- ワイドバンド特性;
- マルチバンド特性;
- 従来の解決策と比較して、大幅に減少した寸法;
- 設置用の追加的な構造のない、一体化された部品(アンテナ+ブラケット);
- 内部に組み込まれたナビゲーション・アンテナとの互換性。
【図面の簡単な説明】
【0021】
(図面の簡単な説明)
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照しながら、以下に説明される。
【
図1】
図1は、2D平面アンテナのトポロジーの概念図を示し、
図1Aは、従来技術(prior-art)の逆Fアンテナであり、
図1Bは、本発明に従うπアンテナである。
【
図2】
図2は、3D立体アンテナに変換される、
図1の2D平面アンテナの展開の概念図を示し、
図2Aは、展開の第1ステップを示す、
図2Bは、最終の3Dアンテナを示す。
【
図3】
図3は、本発明に従うアンテナの概念図を示し、
図3A及び
図3Bは、それぞれ、斜視図及び平面図である。
【
図4】
図4は、本発明に従うアンテナ・システムの例示的な実装の2つの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、本発明に従うアンテナの幾つかの斜視図での概念図を示す。
【
図6】
図6は、測定されたVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)に対応するグラフを示す。
【
図7】
図7は、本発明に従うアンテナ・システムの分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の好ましい実施形態)
アンテナは、2D平面アンテナ又は3D平面アンテナの何れかで実装することができる。
図1Bで示される平面実装の場合、アンテナ構成は、「πアンテナ」として定義することができる。
【0023】
図1Bに示されるπアンテナは、長さ(L3)の中央セグメント(3a)から延びる第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)を有する放射素子(3)を備える。第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)の長さ(L1, L2)は、同等であり(+/- 15%)、それらは、特定のアプリケーション用の放射素子(3)に垂直であるグランド面(2)の第1辺(Y)に依存して選択される。
【0024】
この実施形態において、放射素子(3)及びグランド面(2)は、同一平面である。加えて、第1、第2及び中央のセグメント(3a,3b,3c)は、まっすぐで整列し、且つ、グランド面(2)の片側に配置されている。
【0025】
L1+Hの長さは、
図1Bに示されるグランド面の軸寸法「Y」よりも長く、その比が50%~70%、好ましくは、55%~65%、更に好ましくは、60%である時に、最適の実装が得られ、ここで、そのHは、
図1Bに示されるように放射素子(3)とグランド面(2)の片側との距離である。
【0026】
700MHz(λ~428mm)での最低動作周波数を有する携帯電話帯域で実装する場合、グランド面の「Y」寸法が0.12λ(50mm)である時に、L1(63mm)+H(20mm)が必要となる。この場合、Y/(L1+H)は、50/(63+20)=0.60であり、すなわち、増加した分岐長さに対するグランド面主軸(Y)の寸法は、60%程度である。
【0027】
距離Hは、アンテナ・インピーダンス及び帯域を減少させてしまう、グランド平面に対する高カップリング効果を防止するための最小値を有する。通常、最小値Hは、約0.05λであり、700MHzの最低動作周波数を有する携帯電話帯域の場合、その最小値「H」は、約20mmである。
【0028】
給電接続ライン(4)は、中央セグメント(3a)とグランド面(2)の側部との間に結合され、また、グランド接続ライン(5)は、中央セグメント(3a)と、給電接続ライン(4)が結合されるグランド面(2)の同じ側部と、の間に結合される。したがって、放射素子と給電及びグランドの接続ラインとは、共に、「π」形状を構成する。
【0029】
また、「πアンテナ」のこれらの接続ライン(4,5)間のギャップ(G)は、2つの逆「F」アンテナが適切に励起しないので、アンテナの放射特性の影響を受ける。通常、この新しい「πアンテナ」の利点を得るための範囲は、0.035λ~0.05λの範囲であり、したがって、700MHzの最低動作周波数を有する携帯電話帯域の場合、その範囲は、15mm~20mmとすべきである。
【0030】
図2に示されるように、「U」形状を形成するように第1及び第2の側部セグメント(3b,3c)を曲げることによって、
図1の発展形として、3Dのコンパクトな解決策を得ることができる。このU形状の幅W(中央セグメント(3a)の長さL3に略一致する)は、グランド面(2)の第2辺(X)の長さと同じような値であり、ここで、第2辺(X)は、第1辺(Y)と垂直である。
【0031】
最終的に、放射素子(3)は、折返し軸(x1)周りに最初に、それぞれ90°折り返し、また、結果として、接続ラインは、
図2に示される折返し軸(x2)周りに、それぞれ90°折り返し、「U」形状アンテナ(
図2B)のような3D実装を形成することができる。
【0032】
3D実装は、グランド面の周囲内に、すなわち、
図1Bの平面構造解決策と比べて同様のアンテナ性能を維持しながら表面寸法(X, Y)内に、アンテナの体積を保つことができる。
【0033】
図3は、本発明のアンテナの実例を示し、実例は、平面グランド面(2)と、そのグランド面(2)の上に配置され、且つそのグランド面(2)に実質的に平行である平面放射素子(3)と、を備えている。その放射素子(3)は、U形状構成を有し、その構成は、中央セグメント(3a)と、中央セグメント(3a)から延びる第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)と、を有している。
【0034】
放射素子(3)のセグメント(3a, 3b, 3c)は、直線状であり、長方形部分を含んでいる。第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)は、互いに平行であり、且つ、中央セグメント(3a)に直交する。好ましい実施形態において、
図3Bに示されるように、第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)は、グランド面(2)の2つの平行な辺の真上に配置される。
【0035】
グランド面(2)は、2対の平行な辺を有する一般的な矩形構成を有し、ここで、中央セグメント(3a)は、1辺の上に配置され、また、側部セグメント(3b, 3c)は、それぞれ、他の2つの垂直辺の上に配置される。
【0036】
図3で示されるように、これらの側部セグメントのうちの1つは、他の1つよりも長くなる可能性があり、この場合、側部セグメント(3b)は、セグメント(3c)よりも長い。
【0037】
加えて、
図3の実施形態において、セグメント(3b)は、グランド面(2)よりも長い。セグメント(3c)は、グランド面(2)よりも短く、また、その自由端は、「L」形状を構成するように、グランド面の中心に向かって、曲げられている。
【0038】
他の好ましい実施形態において、接続ライン(4,5)間のギャップ(G)は、グランド平面(2)上のスロットを使用することによって回避することができる。このスロットは、ギャップ(G)と等しい点間の電気的経路を発生させることができ、アンテナの最低動作周波数も下げることができる利点を持つ。
【0039】
例えば、代替的な実施形態の
図4、
図5Dにおいて、グランド面(2)は、所望の動作周波数にアンテナを同調させるための同調アンテナ・スロット(8a)として、少なくとも1つのスロット(8)を有する。グランド面(2)は、固定手段の一部としての機械的機能を備える他のスロット(8b)を有してもよい。更に、グランド面(2)は、アンテナ設置用のブラケットとして使用することができる、曲げ部(2a)を有する。この実施形態において、放射素子(3)とグランド面(2)との間に、接続ライン(4,5)は、結合されていない。
図4及び
図5Dの実施形態において、接続ライン(4,5)間のギャップ(G)はゼロであり、また、放射素子(3)及びグランド面(2)間に接続(11)が存在しているとも言える。
【0040】
加えて、アンテナ(2)は、グランド面(2)に取り付けられたプリント回路基板(6)で補償され、ここで、プリント回路基板(6)は、アンテナ・システム用の整合回路網と、アンテナ出力用の同軸ケーブル(7)と、を有する。
【0041】
同調アンテナ・スロット(8a)は、2つの端(9)を有する直線状の溝であり、(図示されない2つの端子、即ち給電端子及びグランド端子を有する)アンテナ・システムの給電ラインは、それぞれ、これらの端に接続される。スロット(8)の位置及び形状は、グランド面内での電流循環用の2つの経路を構成する。
【0042】
図5Aは、最低動作周波数をλとする時に、第1及び第2の側部セグメント(3b, 3c)間の距離dが約0.1λである実施形態を示す。
【0043】
図5Bは、最低動作周波数をλとする時に、放射素子(3)とグランド面(2)との高さHが0.05λよりも大きい実施形態を示す。
【0044】
図5Cは、最低動作周波数をλ(700MHzの場合にλ=430mm)とする時に、給電接続ライン(4)及びグランド接続ライン(5)が直線で、且つ互いに平行であり、また、2つの接続ライン間(4,5)のギャップGが0.05λ~0.035λの範囲内である実施形態を示す。
【0045】
図5Dは、2つの接続ライン間(4,5)のギャップGが0に等しい実施形態を示し、ここで、グランド面(2)は、周囲の全長が約0.25λであるスロット(8)を有し;
図6は、測定されたVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)に対応するグラフを示し、ここで、スロット(8)の影響は、2つの接続ライン間(4,5)が離れて設計された時のものと比べて、GNDが最低動作周波数で共振し、λは、最低動作周波数である。
【0046】
アンテナ・システムは、少なくとも1つのロング・ターム・エボリューション(LTE: Long Term Evolution)周波数帯域で動作するように適合される。最低動作周波数は、700MHzである。
【0047】
最後に、
図7は、前述のアンテナを備える完全なアンテナ・システム(1)を示し、追加的に、衛星ナビゲーション・アンテナ(GNSS)(10)と、アンテナを保護し、絶縁するためのケーシング(12)と、を含む。2つの側部セグメント(3b,3c)によって遮蔽されるために、GNSSアンテナ(10)は、これらの2つのセグメント間に配置される。
【0048】
したがって、アンテナ・システムは、以下の特徴及び特性の組み合わせによって特徴付けられる:
- πアンテナ、
- 接続ライン間の距離がない長細い溝(スロット)が付けられたグランド面、
- PCB内のアンテナ整合、
- 高周波数用のPCB内のプリントされたアンテナ、
- ナビゲーション衛星アンテナを内部で使用する互換構造、
- 非常に高い帯域幅(700-960MHz, 1600- 2800MHz)、
- 帯域幅の95%で、VSWR<2.5、
- 30%を超えて、高周波数で60%まで増加する放射効率、
- コンパクト形状:3D 60x60x15 mm3、
- 衛星ナビゲーションアンテナ(GNSS)を内蔵する互換構造。