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特許7074675狭帯域システムにおいて工学的照射パターンを生成するための、システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】狭帯域システムにおいて工学的照射パターンを生成するための、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/04 20210101AFI20220517BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20220517BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
F24C7/04 301Z
H01S5/40
H01S5/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018538109
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 US2017014381
(87)【国際公開番号】W WO2017127712
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】62/286,029
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512287458
【氏名又は名称】プレスコ アイピー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PRESSCO IP LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】ケイツ,ジョナサン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ベンジャミン,ディ.
(72)【発明者】
【氏名】コクラン,ドン,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】コクラン,デビッド,ダブリュー.
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528906(JP,A)
【文献】特表2010-513081(JP,A)
【文献】特表2012-519826(JP,A)
【文献】豪国特許出願公開第2014202581(AU,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/04
H01S 5/40
H01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーダイオードからなるアレイを少なくとも一つ含んでなる半導体ベースの狭帯域赤外線のエミッタシステム;
ターゲットを中の適切な位置に置くことができるターゲットエリア;及び
前記エミッタシステムと前記ターゲットエリアとの間のビーム路に配置されたマイクロレンズまたは反射器アレイを含んでなる工学的ディフューザーコンポーネントを具備し、
前記工学的ディフューザーコンポーネントは、レーザーダイオードからなる前記アレイ内の個々のデバイスの幾何形状および出力対応して、前記狭帯域赤外線のエミッタシステムの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、前記出力エネルギーの工学的照射パターンを前記ターゲットエリア内に生成するように構成される、
工学的照射パターンを使用してターゲットを狭帯域放射加熱するためのシステム。
【請求項2】
前記エミッタシステムは、レーザーダイオードからなる複数のアレイを具備し、
複数のアレイ内の前記レーザーダイオードは、対応するディフューザーコンポーネントを通ってターゲットエリアの特定のゾーンにエネルギーを向かわせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エミッタシステムは少なくとも200nm離れた少なくとも二つの狭帯域波長範囲の出力エネルギーを供給し、それぞれは前記ターゲットに異なる加熱結果をもたらし、且つ前記ターゲットは食品を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記工学的ディフューザーコンポーネントが前記エミッタシステムと正確な関係にて保持されるように固定具にマウントされるか、又は
前記固定具が前記ビーム路内に2つ以上の工学的ディフューザーコンポーネントを包摂するか、又は
前記固定具が前記コンポーネントを置き換えるための、マガジン、回転式コンベヤ、若しくは他の機械式アレンジメントのうちの1つの形態を取るか、又は
前記置き換え可能に機械式でマウントするものが前記コンポーネントの取替え又は洗浄を促進するか、又は
前記マガジン、前記回転式コンベヤ若しくは前記置き換え可能に機械式でマウントするものは、一意的に位置を決める機構を使用して前記ビーム路内にだけ置くことができるか、又は
前記マウントする固定具が、工学的ディフューザーコンポーネントを少なくとも1つの向きに一意的に向けることを促進するか若しくは工学的ディフューザーコンポーネントを正確に位置決めしてマウントすることを可能にするための位置を決める機構を有するか、又は
前記置き換え可能に機械式でマウントするものが、制御システムからの信号に応じて自動又は手動で変えられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムはユーザのためにオープンフレームのアレンジメントを有し、安全装置はユーザが前記ターゲットエリア内で物理的に相互作用する場合に前記エミッタシステムの出力を遮断する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
レーザーダイオードからなる前記アレイのそれぞれは、前記ターゲットエリア内で生成される前記工学的照射パターンを修正するための独自の工学的ディフューザーコンポーネントに対応されているか、又は
前記工学的ディフューザーコンポーネントのそれぞれは、出力エネルギーを修正し、特定のパワー密度レベルで特定のターゲットに照射するようにするか、
異なるディフューザーコンポーネントが異なる放射強度パターンを促進するか、または
それぞれのレーザーダイオードからの照射が工学的ディフューザーコンポーネントの特定のセクションを通過する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
調理システムの少なくとも一部分を更に具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
レーザーダイオードからなる複数の前記アレイは、前記ターゲットエリアの周囲に1つ若しくは複数の向きに位置するか、又はレーザーダイオードからなる前記アレイは、前記ターゲットエリアの上方及び下方に位置する、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記工学的照射パターンは、円、正方形、三角形、長方形、円弧のうちの1つ、若しくは前記形状のうちの複数であるか、又は
前記エミッタシステムと前記工学的コンポーネントとの間の距離は、前記工学的照射パターンが所望のサイズになるように設計されるか、又は
前記ターゲットエリアは、可視光学的パターン投影、物理的マーキング、若しくは図式表現の少なくとも1つによりユーザのために明確にされるか、又は
前記工学的ディフューザーコンポーネントの特定のコンフィギュレーションは、制御システム若しくはユーザの少なくとも1つに報告される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
レーザーダイオードからなる少なくとも一つの前記アレイは、面発光レーザーダイオード、又はSEDFBデバイスを具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
レーザーダイオードからなるアレイを少なくとも一つ含んでなる半導体ベースの狭帯域赤外線のエミッタアレイ;
食品を中の適切な位置に置くことができるターゲットエリア;及び
前記エミッタアレイと前記ターゲットエリアとの間のビーム路内に配置されたマイクロレンズまたは反射器アレイを含んでなるディフューザーコンフィギュレーションを具備し、
前記ディフューザーコンフィギュレーションは、レーザーダイオードからなる前記アレイ内の個々のデバイスの幾何形状および出力対応して、前記狭帯域赤外線のエミッタアレイの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、前記出力エネルギーの工学的照射パターンを前記ターゲットエリア内に生成し、食品を調理又は加熱するように構成されている、
工学的照射パターンを使用して食品を狭帯域放射加熱するためのオーブン。
【請求項12】
照射出力エネルギーが250ワットを超える、請求項11に記載のオーブン。
【請求項13】
レーザーダイオードからなるアレイを少なくとも一つ含んでなる半導体ベースの狭帯域赤外線のエミッタシステムから、ターゲットを中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて、狭帯域赤外線エネルギーの出力を放出すること;及び
前記エミッタシステムと前記ターゲットエリアとの間のビーム路内に配置され、レーザーダイオードからなるアレイ内の個々のデバイスの幾何形状および出力対応した工学的ディフューザーコンポーネントを使用して、前記狭帯域赤外線のエミッタシステムの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、前記出力エネルギーの工学的照射パターンを前記ターゲットエリア内に生成することを含む、
工学的照射パターンを使用してターゲットを狭帯域放射加熱する方法。
【請求項14】
レーザーダイオードアレイから、食品を中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて、狭帯域赤外線の出力エネルギーを放出すること;及び
前記エミッタアレイと前記ターゲットエリアとの間のビーム路内に配置され、レーザーダイオードアレイ内の個々のデバイスの幾何形状および出力対応した工学的ディフューザーコンポーネントを使用して、前記狭帯域赤外線のエミッタアレイの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、前記出力エネルギーの工学的照射パターンを前記ターゲットエリア内に生成し、食品を加熱又は調理することを含む、
工学的照射パターンを使用して食品を狭帯域放射加熱する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年1月22日に出願された米国仮出願第62/286029号に基づき、その優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本出願の分野は、狭帯域デジタル熱注入技術を実施(implementation)するための方法及び構造技術に関する。より詳細に、本出願は、工学的(engineered)照射パターンを生成して、狭帯域デジタル熱注入技術を実施するための新規な技法を教示する。
【背景技術】
【0002】
狭帯域デジタル熱注入技法は、例えば、米国特許第7,425,296号(参照により本明細書に組み込まれる)および2010年3月5日に出願された米国特許出願第12/718,899号(参照により本明細書に組み込まれる)等で教示されている。従来の狭帯域加熱技術の適用例のいずれにおいても教示されていないことは、何らかの形態の光子の封じ込めを伴わずに安全に実施することができる加熱、調理、保存処理(curing)又は除氷のための方法である。同じく教示されていないのは、例えばディフューザーの新規な使用方法により、照射の領域を「平滑化」し、ターゲット上の適切な位置で放射エネルギーの適切なミックスを供給するための工学的方法である。これまで、狭帯域照射方法によるすべての加熱においては、様々な形態の保護ゴーグル、遮光保護面、キャビティ内への封じ込め、光学的隔離、又は採用される一つまたは複数の波長を実質的に透過しない保護衣類及び/又は他の物理的バリアの使用を必ず含めなければならなかった。採用される閾値及び特定の安全対策は、米国規格協会(ANSI)Z136.1規格シリーズに説明されている。こうした産業界で容認された安全基準は、狭帯域点源に対する最大許容可能露出量及びユーザが狭帯域点源の使用において安全であるための軽減対策を明記している。
【0003】
強力な狭帯域光エネルギーには、本来的な危険があり、安全なシステムにするには、丁寧に扱い、適切に使用しなければならない。狭帯域という用語は、全体を通じて、狭帯域光エネルギーの半値全幅が150ナノメートル未満であるが、実用上15ナノメートル未満であることが多い、光エネルギーを意味するものとして使用される。他種の狭帯域照射源を利用可能であるが、もっとも一般に利用可能であり、デジタル熱注入技術と共にもっとも使用されやすいものは、LED、レーザー及びレーザー・ダイオードである。ここ数十年、LEDはますますより強力になってきている。最近のニュース記事が示すことによれば、LEDのパワーは、ここ20年の各年において、1年あたり平均約23%増加している。現在、約20光ワットのパワーを生成することができる単一のLEDデバイスを入手することが可能であり、そのパワー出力能力は上昇し続けることが予期される。個々のデバイスはパワーが上昇しており、デジタル熱注入の個々の用途においてより有用になり始めている。しばしば、歴史的に、デジタル熱注入の用途を可能にする十分な集合パワーを生成するために、LEDは様々な様式で配列されてきた。
【0004】
レーザーは、前記他種の狭帯域照射源として一般的であり、異なる目的のために多種多様なものが利用可能である。全ての異なる種類のレーザーを記述することは本出願の範囲外であり、新たな種類のものが継続的に発明されている。レーザーは、一般に、ガス・レーザー、化学レーザー、固体レーザー及び半導体レーザーにカテゴリ分けされる。光子出力を生成する光子トランジスタ及びグラフェン・デバイスは、未だ研究段階であるが、近い将来のある時点において高効率でかなりの狭帯域出力を有し得るという示唆がある。この示唆により、光子トランジスタ及びグラフェン・デバイスが狭帯域照射分野において大きな存在となり、本発明はこれらからも利益を受けると思われる。
【0005】
あらゆる種類のレーザーを狭帯域加熱用途における実施のために採用することができるが、半導体レーザーは最も容易に適合可能である。半導体レーザーは、最も経済的な種類のものとして採用が一般的に且つ次第に増えてきている。半導体レーザーは、全体のパワー及び幾何形状コンフィギュレーションが用途に対し十分に適合するように他のデバイスと配列するのに適している。例えば、レーザー照射により、大きな面積の表面を有するターゲット物品を加熱することが要求される場合、ターゲット全体を適切に且つ必要なパワー密度で覆う放出パターンとしやすいように、幅や広がりを有し且つぴったり合う半導体レーザーのアレイを構築することができる。
【0006】
アレイを設計する際、アレイを構成する各半導体レーザー・デバイスの特定の照射パターンに慎重な考慮を行わなければならない。いくつかの個々のデバイスは、長方形の照射出力パターンを有する一方で、他のデバイスは、円形又は楕円形の出力パターンを有し得る。典型的には、発散におけるFAST軸及びSLOW軸として公知であり、これらの軸は、デバイスの出力パターンの中心線に沿って互いに90度に回転した状態で位置する。従来の端面発光レーザー・ダイオードは、典型的には、FAST軸方向にXの発散角度を有し、SLOW軸方向にYの発散角度を有する。VCSELS(垂直共振器面発光レーザー)は、ほぼZ度の円錐発散パターンを有する一方で、SEDFB(面発光分布帰還型)デバイスは、円柱状であるか、又は1つの軸内で発散せず、他の軸に6~10度わずかに逸れる。
【0007】
DHI照射システムの設計者は、意図するターゲットの非近接場平面又は3D表面におけるエネルギー強度の分布を考慮して各アレイを設計しなければならない。このことを達成するために、各個のデバイスの出力を理解し、アレイ・レイアウト内でモデル化しなければならない。従来の端面発光レーザー・ダイオードは、転換軸のそれぞれにおいて概略的にガウス出力を有しているので、このことは幾分厄介なものである場合がある。SEDFBデバイスは、概略的に平坦なフィールドの長方形出力を有するが、照射パターン重複部が設計に適合するように依然としてかなり慎重に配列しなければならない。
【0008】
エネルギー強度も、別の理由で、一連のレーザー照射を通じて十分に理解しなければならない。上記したように、所望の加熱結果、若しくはおそらくは調理結果を達成するために、ターゲットが受ける照射のされ方を、一定にすることができるか、又は均一照射を意図しない場合、ターゲットが受ける照射のされ方を、少なくとも理解できることが重要である。一連のレーザーの照射パターン及び強度は、別の重要な理由のためにも理解しなければならない。人間、動物及び所有物に対する本来的な安全を非常に慎重に考慮しなければならない。大部分の国において、安全上の理由で、単位面積当たりの最大強度を明記する規制上の問題があり、この規制内に設計を抑えなければならない。
【0009】
エネルギー強度又は密度に加えて、狭帯域照射システムを安全にする際に考慮すべき別の重要な態様がある。エネルギーが「点源」と事実上見なされ得るものから生成する場合、レーザーと見なされ得る全ての狭帯域供給源がこのケースであるが、問題は、人間又は動物の網膜上の点スポットに目の水晶体を通してエネルギーを再合焦できることである。環境における様々な光学的状況により、目を通じて意図しないエネルギーの再合焦が促され、網膜に損害を与えるには十分に小さいスポットに戻ることがある。約1,300ナノメートルを上回る特定の波長では、目の角膜における分子吸収特性は、十分な光子エネルギーを吸収し、光子エネルギーが網膜に達するのを防止する。中間及び長波赤外線帯域の一部ではかなりの吸収があるが、適正な実施及び技術者の職務では、損傷を生じさせるには十分に小さいスポットに点源エネルギーの再合焦することから目及び皮膚を保護しようとすることを想定しなければならず、この閾値は、ANSI Z136.1規格シリーズで定義されている。したがって、短紫外(UV)から長赤外(LIR)までの範囲のLED及びレーザー・ダイオード等の点源を使用する照射システムの設計には、特にこうした点源デバイスが相当な照射流束パワーを有する場合、慎重な注意を払う必要がある。
【0010】
加熱、調理、解凍、保存処理(curing)等を目的とする狭帯域照射に関連する別の決定的に重要な問題は、意図した仕事を達成するために、ターゲットの適切な領域に適切な量のエネルギーを得るという問題である。明確にすると、デバイス又はデバイス・アレイの「natural(ナチュラル)」照射パターンは、適切な量の照射エネルギーがターゲットの全ての所望の部位に到達するようにターゲットの形状にほぼ確実に対応していない。わかりやすい例として、5×5(25のデバイス)SEDFBデバイス・アレイは、ターゲット平面で3インチ×4インチを示すナチュラル照射パターンを有することがある。照射されるターゲットが約6インチ×8インチのサイズを有する場合、X及びY方向の両方で約2倍の大きさでターゲットエリアを覆うために追加の工学的発散を引き起される必要がある。加熱システム又は調理オーブンが、時として、いくつかの用途では6インチ×8インチ領域を照射するように設計されているが、他の用途では10インチ×14インチターゲット平面を照射することが望まれるというジレンマが存在する。10インチ×14インチターゲットエリアを照射するように設計された場合、熱束は、140平方インチにわたり広がる。ターゲットを6インチ×8インチターゲット平面領域内にうまく合わせた場合、この状況において48平方インチの照射領域を覆うだけでよいので、熱束の多くは無駄になる。同様に、オーブンが15インチの丸いピザを焼くように設計してあるが、時としてステーキ又は5インチ×7インチの冷凍ディナーを調理するために使用する場合、結果として、より小さいターゲットに合焦されない調理出力は使用されない。5インチ×7インチのターゲットエリアの場合の約35平方インチ(226平方センチメートル)と比較して、15インチの直径のピザは、約176平方インチ(1,135平方センチメートル)を網羅するため、約80%の調理出力は、このピザと比較してより小さなターゲットエリアを調理する際、単純に適切に利用されていない。システムの設計に応じて、利用可能なパワーの全てをオンにする必要はないが、速度面での利点を得るように、適切なサイズのターゲットエリア上でより多くの利用可能なパワーを合焦させるために、利用可能なパワーを単純には使用しない構成である。
【0011】
このような状況の全範囲及び加熱システム又は調理オーブンの設計サイドからの要求に応じて結果として生じる決定を想定することができる。当然、狭帯域照射システムにおいて所望されるキャビティサイズにも関連する。例えば、狭帯域照射が所望のサイズのターゲットエリアを照射できない構成である場合、より大きな表面積のターゲット又は食物を収容できるような大きいキャビティを有するのは意味がない。しかし、より小さいターゲットを加熱又は調理する場合、エネルギーをキャビティの全占有面積に単に向けるだけでは、エネルギーが実質的に浪費され、成果も低下する。
【0012】
単位面積当たりでより高いワットのパワー密度を有し且つかなり小さい照射ターゲットエリアを有する場合と、単位面積当たりで実質的により低いパワー密度を有し且つかなり大きいターゲットエリアを有する場合との間には葛藤がある。多くの適用例では、パワー密度比は、ものを加熱、熟成又は調理し得る速度に対する近似値である。上記した15インチのピザに対してターゲットエリアが5インチ×7インチである例を使用すると、5インチ×7インチ領域に合わせて切った小片のピザに対する調理は、エネルギーを5倍の広さの表面積上に広げることにより1枚のピザ全体を調理するよりも、約4から5倍速で調理できることが予期される。Fig.11は、オーブン又は加熱システム内に適合させる必要がある異なる加熱又は調理状況を表現するように様々な異なるターゲットエリアを示している。
【発明の概要】
【0013】
本発明に係る一実施形態において、工学的照射パターンを使用する、ターゲットの狭帯域放射加熱システムは、半導体ベースの狭帯域赤外線のエミッタシステム、ターゲットを中の適切な位置に配置することができるターゲットエリア、及びエミッタシステムとターゲットエリアとの間のビーム路に配置された工学的コンポーネントを具備し、工学的コンポーネントは、狭帯域赤外線のエミッタシステムの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成するように構成されている。
【0014】
本発明に係る別の一実施形態において、エミッタシステムは、狭帯域赤外線放射を放出する少なくとも1つの半導体デバイスを具備する。
【0015】
本発明に係る別の一実施形態において、エミッタシステムは、狭帯域赤外線放射を放出する半導体デバイスからなる一つのアレイを具備する。
【0016】
本発明に係る別の一実施形態において、エミッタシステムは、狭帯域赤外線放射を放出する半導体デバイスからなる複数のアレイを具備する。
【0017】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントは、ディフューザー、ディフューザーコンフィギュレーション、レンズ、回折格子、フレネルレンズ、ミラー、及び反射器の少なくとも1つを具備する。
【0018】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントは、エミッタアレイ内の個々のデバイスの幾何形状及び出力に適合しているマイクロレンズ・アレイを具備する。
【0019】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントは、エミッタと正確な関係にて保持されるように固定具にマウントされている。
【0020】
本発明に係る別の一実施形態において、固定具は、ビーム路内に2つ以上の工学的コンポーネントを包摂する。
【0021】
本発明に係る別の一実施形態において、固定具は、工学的コンポーネントを交換するための、マガジン、回転式コンベヤ、若しくは他の機械式アレンジメントのうちの1つの形態を取る。
【0022】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントは、エミッタシステムの出力を修正し、非修正出力による光学的障害を軽減する散乱特性を有する。
【0023】
本発明に係る別の一実施形態において、システムはユーザのためにオープンフレームのアレンジメントを有し、安全装置はユーザがターゲットエリア内で物理的に相互作用した場合にエミッタシステムの出力を遮断する。
【0024】
本発明に係る別の一実施形態において、アレイのそれぞれは、ターゲットエリア内で生成される工学的照射パターンを修正する独自の工学的コンポーネントと適合している。
【0025】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントのそれぞれは、出力エネルギーを修正し、特定のパワー密度レベルで特定のターゲットと相互作用する。
【0026】
本発明に係る別の一実施形態において、追加のコンポーネントは、工学的コンポーネント又は作業員の少なくとも1つを保護するために工学的コンポーネントとターゲットエリアとの間のビーム路内に置かれる。
【0027】
本発明に係る別の一実施形態において、追加のコンポーネントは、エミッタシステムの出力を更に修正するように構成される。
【0028】
本発明に係る別の一実施形態において、システムは、調理システムの少なくとも一部分を更に具備する。
【0029】
本発明に係る別の一実施形態において、異なる工学的コンポーネントは、異なる放射強度パターンを促進する。
【0030】
本発明に係る別の一実施形態において、置き換え可能に機械式でマウントするものにより、工学的コンポーネントの取替え又は洗浄を促進する。
【0031】
本発明に係る別の一実施形態において、マガジン、回転式コンベヤ又は置き換え可能に機械式でマウントするものは、一意的に位置を決める機構を使用してビーム路内にだけ置くことができる。
【0032】
本発明に係る別の一実施形態において、エミッタシステムは、ターゲットに対する異なる加熱結果それぞれのために1つ以上の狭帯域出力波長範囲で機能する。
【0033】
本発明に係る別の一実施形態において、放射放出デバイスは、ターゲットエリアの周囲に1つ若しくは複数の向きに位置する。
【0034】
本発明に係る別の一実施形態において、放射放出デバイスは、ターゲットエリアの周囲の上方及び下方に位置する。
【0035】
本発明に係る別の一実施形態において、マウントする固定具は、工学的コンポーネントを少なくとも1つの向きに一意的に向けることを促進するか、若しくは工学的コンポーネントを正確に位置決めしてマウントすることを可能にする、ための位置を決める機構を含む。
【0036】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的照射パターンは、円形、正方形、三角形、長方形、円弧のうちの1つ、又はこれら形状のうちの複数である。
【0037】
本発明に係る別の一実施形態において、エミッタシステムと工学的コンポーネントとの間の距離は、工学的照射パターンのサイズを変更するために調節可能である。
【0038】
本発明に係る別の一実施形態において、ターゲットエリアは、可視光学パターン投影、物理的マーキング、又は図式表現の少なくとも1つによりユーザのために明確にされる。
【0039】
本発明に係る別の一実施形態において、ターゲットは、ターゲットエリア内の一意的な位置にターゲットを保持する固定具に嵌合される。
【0040】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的コンポーネントの特定のコンフィギュレーションは、制御システム又はユーザの少なくとも1つに報告される。
【0041】
本発明に係る別の一実施形態において、置き換え可能に機械式でマウントするものは、制御システムからの信号に応じて自動又は手動で変えられる。
【0042】
本発明に係る別の一実施形態において、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタシステムは、レーザー・デバイス、レーザー・ダイオード、面発光レーザー・ダイオード又はSEDFBデバイスを具備する。
【0043】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的照射パターンを使用する、食品の狭帯域放射加熱のためのオーブンは、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタアレイ、食品を中の適切な位置に置くことができるターゲットエリア、及びエミッタアレイとターゲットエリアとの間のビーム路内に配置されたディフューザーコンフィギュレーションを具備し、ディフューザーコンフィギュレーションは、狭帯域赤外線エミッタアレイの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成し、食品を加熱又は調理するように構成する。
【0044】
本発明に係る別の一実施形態において、出力エネルギーは、250ワットを超える。
【0045】
本発明に係る別の一実施形態において、少なくとも175nm離れた少なくとも2つの波長範囲の出力エネルギーをエミッタアレイによって生成する。
【0046】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的照射パターンを使用する、ターゲットを狭帯域放射加熱する方法は、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタシステムから、ターゲットを中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて狭帯域赤外線出力エネルギーを放出すること;及びエミッタシステムとターゲットエリアとの間のビーム路内に配置された工学的コンポーネントを使用して、狭帯域赤外線エミッタシステムの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成することを含む。
【0047】
本発明に係る別の一実施形態において、工学的照射パターンを使用する、食品を狭帯域放射加熱する方法は、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタアレイから、食品を中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて、狭帯域赤外線出力エネルギーを放出すること;及びエミッタアレイとターゲットエリアとの間のビーム路内に配置されたディフューザーコンフィギュレーションを使用して、狭帯域赤外線エミッタアレイの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成し、食品を加熱又は調理することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】Fig.1は放出デバイスの出力パターンの一例を示す図である。
図2】Fig.2は放出デバイスの出力パターンの一例を示す図である。
図3】Fig.3は放出デバイスの出力パターンの一例を示す図である。
図4】Fig.4は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図5】Fig.5は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図6】Fig.6aは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図7】Fig.6bは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図8】Fig.6cは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図9】Fig.6dは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図10】Fig.7は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図11】Fig.8aは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図12】Fig.8bは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図13】Fig.9は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図14】Fig.10は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図15】Fig.11aは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11bは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11cは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11dは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11eは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11fは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11gは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図であり、Fig.11hは本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図16】Fig.12は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図17】Fig.13は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図18】Fig.14は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図19】Fig.15は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図20】Fig.16は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
図21】Fig.17は本発明に係る一実施形態における特徴の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本出願は、上記の困難な工学的課題の解決を助ける新規な実行形態を教示するものである。本出願は、アレンジメント又はシステム、例えば、特別に工学的に作製又は構成されたディフューザーを、狭帯域照射システム内に実装する、物理的又は遮光的な隔離を必要としない、新規な方法、および多くの用途において、狭帯域照射に曝されるのを防止する手段であるゴーグルやフィルタ処理などを必要としない、新規な方法を説明するものである。本出願は、エレメント、例えば、ディフューザー等の様々な工学的コンポーネント、又は各ターゲットのサイズ及び形状にちょうどいい又は適切な他のコンフィギュレーション若しくはエレメントを挿入することにより、照射エネルギーを異なる形状のターゲットエリアに向け直すのを助ける。
【0050】
一つの照射デバイス(例えば、半導体ベースの狭帯域赤外線放射放出デバイス)を使用して、又はそのような照射デバイスを複数(例えば、そのようなデバイスからなる1つのアレイ若しくは複数のアレイなど)使用して、狭帯域照射システム(例えば、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタシステム)を構築することが可能である。照射デバイスを用いる場合、これらは、典型的には、各デバイスの幾何学的な取り付け配置が、ターゲットにおける照射パターンが特定の用途に適正であるように適切に寄与するように、なんらかの形態のアレイで構成されている。確かに、円形配置、リング配置、及び様々な3Dアレイ形状を含めて、多くの異なる幾何学的アレイ配置を様々な目的のために考案することができるが、本出願を説明する目的では、平面、長方形X×Yアレイを例示のために使用する。確かに、概念は多くの異なる幾何学的構成に適用されるものであり、当業者であれば、こうした教示を相応に適用することができよう。
【0051】
一例として、レーザー・ダイオードのX×Yアレイは、アレイ平面から6インチ離れた平行な平面に、照射パターンに間隙はないが、パターンの一部には予測どおりの適切な重なりがあるように構成することができる。重ね合された照射パターンの全体のサイズが、6インチ離れた平面で、3インチ×5インチであると仮定してみよう。おそらく、同じ離隔距離における、照射パターンの全体を6インチ×8インチ照射パターンに調整することが望ましい。X寸法(3インチ)は、幅の2倍である必要がある一方で、パターンのY寸法(5インチ)は、60%増大させるだけでよいことに留意されたい。ディフューザーは、各デバイスからの照射が、平面又はターゲットに至る6インチの道のりの間にディフューザーの特定のセクションを通過するようにビーム路に挿入できるように構成又は設計される。ディフューザーをデバイスの近くに置くほど、各デバイスで利用可能になるディフューザーのセクションはより小さくなる。しかし、例示的アレイの経路に挿入される従来の均一なディフューザーは、X方向にY方向とほぼ同じ量の散乱又はビーム拡張をもたらすことが予期される。このことは、多くの用途では、完全に許容可能であるか、又は最も望ましい設計上の結果でさえあり得る。
【0052】
しかし、Y方向と比較してX方向に異なる量の散乱又はビーム拡張が望ましい場合、均一なディフューザーは要求されない。実際、市販のデバイスは、実験検証済みの、Y方向と比較してX方向に異なる量で急激に散乱するディフューザーを備えていることがある。ディフューザー専門の製造業者と連携することによって、多くの異なる設計状況の幾何形状に対し、散乱比率が完全であるような散乱デバイスを指定することが可能である。こうしたディフューザーは、ガラス製であることがあり、指向的にエッチング、パターン・エッチングされているか、又はプラスチックから成型され、特定の所望の非均一散乱をもたらすことができる。非線形散乱をもたらすように規定、設計されたこうした特別なディフューザーは、より一層の有用性をもたらすことができる。この非線形性は、出力パターンの中心付近で生じる散乱と出力パターンの末端付近で生じる散乱とが異なる大きさとなるように、各個のレーザー・ダイオード又は照射デバイスの前で特定の散乱に関連させることができる。シートディフューザーで述べたように、個々のレーザー・ダイオード・デバイスに対応する散乱領域のそれぞれは、同じである必要はない。デバイスのアレイディフューザー内に設計される散乱は、例えばアレイ中心から離れるにつれ散乱の結果が次第に大きくなるようにするか、又は逆により小さくなるようにすることができる。複数のデバイス又はアレイの位置のいずれかに対し、異なる方向及び異なる位置で、異なる散乱比率を挿入することによって、無限数の異なる照射パターンを、設計し、測定平面(measuring plane)又は照射ターゲットにもたらすことができる。
【0053】
いくつかの市販のディフューザーは、それによる散乱で、X字パターン、十字パターン、円(中空ドーナッツ形状及び中実の両方)、砂時計形状、正方形パターン等、非常に多くの種類の特定形状を投影することができる。そのようなディフューザーは、市販のものを購入し、丸、楕円又は長方形の照射の入力を上述した形状に変換することができる。非線形、円形非対称、指向性及び多くの組合せを各ディフューザーセクションに組み込み、そして、幾何学形状の中心がダイオード中心に対応するセクションが複合されたアレイを工学設計された照射をもたらすダイオード・アレイの非常に近い位置に配置することができる。そうして、理論上、各個のダイオードは、ターゲットエリアの正確な全体形状に向けることができ、各デバイスの出力は、単一デバイスの欠点から生じる複合照射パターンの穴又は間隙を生じさせないように、単純にターゲット平面でパワー密度に加えられる。
【0054】
望ましい正確な量及び形状の分散パターン又は散乱を組み込んだこの新規の方法は、照射パターンの点及び照射作業の結果において大きな予期しない影響を有することがある。更に、X及びY方向を本明細書で説明の目的で使用しているが、円形、非均一、円対称、又は非対称の照射パターンを組み込む高精度な照射分散又は散乱アレイを設計、実施し、本来は円錐照射パターンを生じさせるLED及びVCSEL等のデバイスの出力を変更、向け直す、又は修正することが可能である。また、これらは、パワーが円対称ガウス分布を有することも多く、工学的散乱アレイにより再度マッピングすることができる。これらの非均一散乱アレイは、適切に設計した場合、効果的な狭帯域照射用途のために決定的に重要な機能をもたらすことができる。こうしたアレイは、いくつかの種類のデバイスにとって困難な出力パターンを修正する機能をもたらし、最適な種類の照射デバイス又はデバイス・アレイの複合出力パターンをより一層良好に最適化することができる。
【0055】
狭帯域照射システムのために工学設計又は特別に構成された散乱を使用するこの方法は、正しく実行されると、全体的な更なる範囲の利益をもたらす。適切に指定され、構成されたディフューザーを通過した照射エネルギーは、点に戻るように再合焦させることができない。このことにより、主に目及び皮膚に対する安全が利益としてもたらされる。ユーザに露出される出力を散乱させることによって、レーザーの安全使用に関するANSI Z136.1基準は、もはや適用されず、代わりに米国産業衛生専門家会議(ACGIH)許容域値(TLV)を使用することができる。ACGIHハンドブックは、様々な露出継続時間に対する全ての種類の非点源照明源に関する露出限度を定義している。この新規の技法を利用することにより、強力な狭帯域エネルギーを使用する調理、加温又は保温ステーションを設計することが可能であり、このステーションは、筐体内に上記エネルギーを完全に包摂する必要がない。というのは、元の照射源が小さな点サイズに戻るように再合焦することがないのでより安全であるためである。これにより、工学的ディフューザーを通過する放射エネルギーを空間的に非干渉性にする。照射分野で利用可能なエネルギー密度は、依然として適切な安全予防策を必要とする場合があるが、狭帯域照射エリアの完全な封入を免れることが可能である。
【0056】
例えば、照射エネルギーが食品又はターゲット物品にまっすぐに慎重に向けられ、調理システムの周囲環境に漏出しない限り、開放側部を有する狭帯域照射システムの設計が望ましいことがある。非散乱狭帯域点源を使用すると、(任意の近赤外波長における)そのようなシステムの出力は、35W/m2又は15メートルを超えるハザードゾーンに制限される(ハザードゾーンは、ゴーグル等の安全対策を監督しなければならない稼働レーザーの周囲の領域として定義される。)。それと比較すると、適切に散乱する狭帯域源は、光が点源に戻るように再合焦することがなく、より高いエネルギー密度で動作させることができる。許容可能なエネルギー密度の正確な値は、予期される露出時間、即ち、ユーザと散乱赤外線エネルギーとの直接的な接触が予期される合理的な継続時間によって異なる。任意の近赤外波長への17分間を超える直接的な露出は、100W/m2未満に抑えなければならない。赤外線エネルギーが、ユーザに長時間直接に到達しないように向けられ(Fig.9に示す器具等)且つユーザが短時間の出し入れ処置の間にのみ照明と直接相互作用することが予期される場合、TLVを著しく増大させることができる。例えば、機器から食品を取り出す間に、ある任意の散乱近赤外波長への10秒間の露出を仮定すると、許容可能なエネルギー密度の限度は、ACGIHの各指標を3,000W/m2超で上昇する。
【0057】
必要な場合又は望まれる場合、存在検知技術を使用して、手等の異物が照射域に入ったことを検知することが可能であり、存在検知域への侵入がある間、照射エネルギー(例えば、場合によっては合計光子エネルギーが250ワットを超えることがある。)を即座に停止するか、照射エネルギー出力の何らかの態様を調整することによって安全にするようにする。これにより、イルミネーションに直接に曝されることをもはや考慮しなくてよいので、食品又は機器表面によってキャビティの外側に散乱されたエネルギーに対する露出限度のみが残ることになる。存在検知は、検出平面を通過するか又は挿入されたものを検知する、赤外線、走査赤外線、又は可視光ビーム若しくは不可視光ビームのカーテンといった他の形態を含むいくつかの形態を取ることができる。保護領域又は範囲に挿入された体又は他の物品を検知する容量場又はRF場の検出デバイスを利用することもできる。保護は、照射領域の安全が脅かされた場合に出力信号を送信し、照射をオフにする(止める)ことができるように、適切なコンピュータ処理技術に接続された電子カメラ等の、より単純で更により高度な手段によっても、提供することができる。カメラベースの検知は、加温又は保温の目的で、照射域にあるものに応じて、システムに出力を相応に調整させることもできる。一連の異なる検知デバイス及び知能を使用して、安全ではあるものの、侵入が照射域内で生じていることを検出することができる。この場合、エネルギーをオフにする必要はないが、エネルギー強度が現に安全閾値レベルを下回るように下げるか、又は侵入近傍に対応しない選択域への照射をオフにするかまたは下げることができる。
【0058】
狭帯域照射用途における本発明の実装形態における利点の一部を以下に列挙する。
【0059】
本発明の1つの利点は、光子エネルギーが人間又は動物の目又は組織に届かないようにするために、狭帯域照射源の物理的隔離又は不透過隔離を必要としないことである。
【0060】
本発明の別の利点は、工学的ディフューザーを用いてパワー密度の低減を行うので、安全ゴーグル又は特殊なフィルタ処理を照射源と人又は動物との間に配置する必要性をなくすことができることである。
【0061】
本発明の更に別の利点は、加熱又は調理すべきターゲット又は物品に衝突させる照射強度の平滑化を助けることである。
【0062】
本発明の更に別の利点は、半導体照射デバイスの幾何学的アレイアレンジメントにより柔軟性を持たせることを促進することである。
【0063】
本発明の更に別の利点は、照射アレイとユーザ又は偶然通りかかった人との間に配設するドア及び機械的インターロックをなくすことを促進することである。
【0064】
本発明の別の利点は、高度に指向された明確に照準された光子エネルギーを生成するが、点源に再合焦されることがないように光子エネルギーをもたらすシステムを設計できるため、より安全である。
【0065】
本発明の別の利点は、加熱、調理又は保温のための、光子エネルギーを筐体内に完全に含まない狭帯域照射システムの設計を促進することである。
【0066】
本発明の別の利点は、少なくとも一部は「外気に開放」又は「側部を開放」することができる狭帯域加熱、調理又は保温システムを促進することである。
【0067】
本発明の更に別の利点は、物理的バリアの代わりに、電子的な存在検知デバイスを組み込み、人への安全をもたらす狭帯域照射システムを設計できることである。
【0068】
本発明の更に別の利点は、X軸対Y軸におけるより多くの散乱を組み込むシステムを適切に設計できることである。
【0069】
本発明の更なる利点は、用途のニーズに合う特定の照射パターン及びエネルギー密度を有する狭帯域照射システムを設計できることである。
【0070】
本発明のまた更なる利点は、様々な車両、航空機又は汎用用途において、人間又は動物と安全に共存し得る狭帯域除氷システムの構築を促進することである。
【0071】
本技術の別の利点は、異なるディフューザーを異なる時に交換し、所与の用途に対し正確な照射域サイズをもたらすことができる。
【0072】
別の利点は、エネルギーを所望の形状、サイズ、強度及び位置に合焦させることによって、より高い率の照射エネルギーをオーブン内で生成し、これを利用できることである。
【0073】
本発明の更に別の利点は、オーブン内の、特定の大きさ及び形状をした多数の領域に照射エネルギーを合焦できることである。
【0074】
本発明の更に別の利点は、一調理域のうちで異なる領域に所望の異なる強度を向けることができることである。
【0075】
本発明の更に別の利点は、調理領域内の特定の形状をしたゾーンに照射エネルギーを向けることができることである。
【0076】
本発明の更に別の利点は、調理領域内でターゲットとし得るゾーンのそれぞれに異なる量の照射エネルギーを向けることができることである。
【0077】
本発明の更に別の利点は、特定の目的に適するように、オーブン内のディフューザーを手動又は自動で変更するのを促進することができることである。
【0078】
本発明の更に別の利点は、エネルギーが連続的に通過するように異なるディフューザーを重ねることによって、異なるディフューザーの効果を組み合わせできるため、複合効果を有することである。
【0079】
本発明の更なる利点は、制御システムが、用途に適したディフューザーの配置を構成し、そして狭帯域アレイの前の位置に自動的に割り振るか、又はそのようなディフューザーの手動でのポジショニングに関する指示を送信できることを促進する。
【0080】
本発明の更に別の利点は、必要ではない位置にエネルギーを送らない又は浪費しないが、照射システム内の各ターゲット領域のそれぞれが必要とする正確な形状及び濃度でエネルギーを向けることによって、劇的なエネルギー削減を促進する。
【0081】
次に、図面を参照すると、狭帯域照射システム(例えば、少なくとも1つの狭帯域赤外線放射放出半導体デバイス、またはそれからなる一つのまたは複数のアレイ)を含む狭帯域赤外線照射システム)のための工学的散乱システムの展開は、照射用途に関する供給源及びターゲットの両方の多くの態様及び特性を考慮しなければならない。利用し得る大部分の典型的なレーザー・ダイオードの照射パターンは、一般に、Fig.1に示す楕円パターン、Fig.2に示す長方形パターン又はFig.3に示す丸パターンにカテゴリ化することができる。各回路基板12、22及び32に取り付けられ、並びに領域13、23及び33における照射を行う各デバイスのそれぞれ(Fig.1の10、Fig.2の20及びFig.3の30)を示す。Fig.1、2及び3に示す各デバイスのそれぞれに対する照射パターンの中心軸が、直交平面と交差することを想定する場合、各照射パターンは、14、24及び34である。Fig.1に示す楕円パターンは、平均的な端面発光レーザー・ダイオード10に典型的なものであり、この照射は、ファセット11を通してレーザー・ダイオード10を出て、次に、FAST軸発散17及びSLOW軸発散18を呈する照射パターンを生成する。Fig.3に示す丸パターンは、LED又はVCSELデバイスに典型的なものである。単一チップ上のクラスタ化VCEL又は多重VCELSは、典型的には、Fig.3に示す丸パターンである複合パターンのように見え、概略的なガウス強度分布をパターン中心の周りに有する。
【0082】
SEDFB等の面発光レーザー・ダイオードは、典型的には、Fig.2に示す長方形パターン24を放出する。SEDFB型デバイスの特別なケースでは、FAST発散軸28は、典型的には、6から10度の範囲である。SLOW軸27は、典型的には、円柱状であるか、又は0度の発散である。このことは、いくつかのレーザー用途では大きな利点である。というのは、「FAST発散」軸を円柱状にするために単純な円筒形レンズのみを必要とし、これにより、両軸において完全な円柱状のデバイスがもたらされるためである。このことは、個々のデバイスに、又はデバイス・アレイを円柱状にすることに、当てはまる。
【0083】
狭帯域デバイスをアレイ状に構成すると、測定平面(measurement plane)26における、投影された照射パターンは、Fig.4及びFig.6aに示すように、各デバイスのそれぞれの出力パターンの複合である。Fig.5に示すように、SEDFBの単一の列は、図示のような照射パターンを有することができ、この照射パターンは、Fig.2に示す各SEDFBの照射パターンの出力の結果として、一方向にその中に間隙を有する。複合アレイの複合照射パターンは、個々のデバイスが円柱状でない限り、測定(measurement)に対する距離29の関数になるであろう。様々な放熱並びに機械的な取付け及び配線の理由で、間隙をなくすようにデバイスを配置することは現実的ではないことが多い。Fig.6a及びFig.6bは、SEDFBの4×6アレイの出力を示し、本来の複合パターンは、Fig.6bに示すように、一連の縞41であることを示す。Fig.6bに示すように、縞の間隙42もある。距離29が、本来の出力パターンが重複し始める最小距離未満である場合、結果は、Fig.6cに示すように、パターン43の間の間隙となる。逆に、Fig.6dに示すように、距離29が重複条件を超える場合、Fig.6dで代表されるような重複領域44をもたらす。
【0084】
いくつかの用途では、ターゲット平面26でかなり均一な照射を有することが非常に重要である。他の用途では、均一な照射は、それほど重要ではなく、照射パターンのわずかな重複または不重複は問題ではない。いくつかの例外では、一般に、大きな間隙42を照射パターンの間に有することは望まれない。このパラメータの臨界性は、本発明の設計者及び実行者に委ねられる。時として、アレイ板40上のデバイスの配置により、重複、不重複及び間隙の状況を十分に緩和することができる。時として、デバイスを幾何的に交互配置にするか又はデバイスの向きを意図的に交互にすることにより、測定平面26に所望の照射パターンを生成することができる。また、有効焦点長さを生成するように、アレイ板を湾曲させるか又はアレイ板を何らかの形で非平面にすることにより、測定平面26に適切な照射パターンを供給することができるが、このことは、アレイの製造工程を大幅に複雑にする。
【0085】
Fig.4に示すディフューザー25等の工学的コンポーネント又はエレメントを、SEDFBデバイス20の照射パターン域に挿入した場合、発散を向上させるか又は発散をもたらすように機能することができる。ディフューザー又はディフューザーコンフィギュレーションの例には、少なくとも1つのディフューザーを有する散乱アレンジメントを含む。2つ以上のディフューザーを1つのコンフィギュレーション内で使用することもできる。本発明で説明する実施形態による工学的照射パターンを生成するために使用する工学的コンポーネント又はコンフィギュレーションは、本明細書で企図する散乱アレンジメントの代替として、その一部として、又はその補足として、レンズ、回折格子、フレネルレンズ、ミラー、反射器又はマイクロレンズ・アレイを含み得ることも理解されよう。例示的実装形態として、マイクロレンズ・アレイは、エミッタアレイの個々のデバイスの幾何形状及び出力に適合させることができる。
【0086】
Fig.4に示すように、ディフューザーを適切に工学的に作製することによって、X方向又はY方向のいずれかを別々の量又は同じ量で修正することができる。実際は、ディフューザー/レンズ設計等の適切な工学的コンポーネントを使用すると、照射出力24の全体形状を、例えば長方形から丸形に、又は長方形からほぼあらゆる所望の形状に変更することができる。Fig.8aに示すようにディフューザー自体をアレイコンフィギュレーション50内に配置し、狭帯域アレイとターゲット平面26との間に挿入した場合、狭帯域照射アレイ全体の出力に対する修正を達成することができる。Fig.8aにおいてディフューザーアレイ50を狭帯域照射アレイ40の前に挿入することによって、測定平面26における照射パターン51は、Fig.8bに示すように完全に均一にすることができる。工学的ディフューザーアレイ50中の工学的ディフューザーのそれぞれは、特定の散乱タスクのために個々に調整することができる。ディフューザーは、レンズ効果を有することができ、X方向における散乱が、Y方向における散乱とは異なるが、アレイ中心付近のデバイスの散乱は、アレイ周辺部付近のデバイスの散乱とは異なるようにもする。当業者は、このことを大きな利点に使用し、特定の使用及び用途に望まれるターゲット平面上の各点における照射エネルギー量とすることができる。この使用法の一例として、Fig.8及びFig.8bは、ディフューザーセクション58を示し、領域52に示される結果をもたらし、対応するディフューザーセクション57の効果の結果として、領域53よりもX方向側に散乱が少ない結果をもたらす。
【0087】
すぐ上で説明した概念は、望ましくは、Fig.9に示すようなオーブン(例えば食品調理オーブン)内で使用することができ、オーブンは、狭帯域照射アレイ40(例えば少なくとも1つの狭帯域赤外線放射放出半導体デバイスを含む半導体ベースの一つの狭帯域赤外線エミッタ-アレイまたは複数のエミッタ-アレイ)を有し、工学的ディフューザーアレイ50は、狭帯域照射アレイ40の前に配置されている。本明細書で企図するそのような食品加熱及び/又は調理システムは、少なくともいくつかの形態では、有利には、放出デバイスから直接に放出する放射直接エネルギーを望ましくは用いて、ターゲット食品又は食品の部分の吸収特性に適合する赤外線エネルギーを放出し、(本実施形態のように、ディフューザー等の工学的コンポーネントを通して)ターゲット食品に衝突することは理解されよう。ターゲット照射領域51全体をターゲット化できる一方で、Fig.10に示すように、工学的ディフューザーアレイ50の各工学的ディフューザーのプロダクトは、照射領域52、53を適切なパワーにし、領域を狙うようにするために相応する仕事を行い、ターゲット領域51全体を、目下の調理作業に効果的な均質エネルギー・レベルに十分に近いものにする。
【0088】
Fig.10のターゲット領域51が単一の長方形ターゲット領域を表すと認識した場合、本発明を備えるオーブンの調理の柔軟性を低減させることになる。本発明で説明する実施形態は多くの異なる種類の狭帯域加熱用途に適用可能であり、決して調理オーブンに限定するものではなく、調理オーブンは例として使用される。Fig.11a~Fig.11hに示すように、多くの形状の照射ターゲット、すなわち、調理オーブン内で望まれる工学的照射パターンが在り得る。全てを図示しないが、いくつかは、円、正方形、三角形、長方形、円弧又は複数のこうした形状を含む。Fig.11aは、小さい長方形中心領域を示し、ターゲット窓に適合するステーキ、小さなアントレ又は冷凍ディナー・パッケージの調理に効果的であり得る。Fig.11b、Fig.11c及びFig.11dは、典型的なターゲット窓であり、それぞれ、小型、中型又は大型キャセロール・ディッシュ・ミールの調理に有用である。Fig.11eは、2つのパイ又は2つのピザを同時に調理し、有用なそれぞれの領域にエネルギーを集中させるのに有用であり得る。Fig.11fは、6つのポットパイ又は個々のディッシュ・アントレに有用であり得、エネルギーの浪費をなくす。その他の場合では、エネルギーが物品の間に落下し、調理に有用ではない。Fig.11gは、大きなピザに有用な領域であり、円形周囲の周りのエネルギーの浪費をなくす。その他の場合では、11d等のパターンを使用する場合は、エネルギーは、調理に有用でなく浪費される。Fig.11hは、3つの細長いディッシュのためのより稀なターゲットパターン領域を表し、3つの照射ターゲットストライプの間の2つの未使用の帯域内にあるエネルギーは浪費されることになるが、この構成では、エネルギーを有用調理領域に集中させることを示す。工学的レンズ及び/又はディフューザーは、エネルギーを単一アレイから取り、エネルギーをFig.11a~Fig.11hのパターンのそれぞれに示すように向けるように設計することができる。
【0089】
Fig.9に示す加熱・保温オーブン80は、2つの透過性側部及び2つの不透過性側部85を有する状態で示す。照射室が完全な筐体ではないために、光子又は照射エネルギーが通過しオーブン80を出ることができる明確な経路がある。狭帯域アレイ40の生成する光子エネルギーが工学的散乱アレイ50により適切に散乱されると仮定すると、光子エネルギーの多くは、ターゲット領域51に合焦され、これにより、食品ターゲット81に狭帯域光子エネルギーを衝突させることができる。食品ターゲット81を掴むために人が構造体80に手を入れた場合、手及び腕が狭帯域照射エネルギーに露出されることになる。この露出を防止するために、保護的な「光カーテン」を設け、空間80の境界内に手が侵入したことを検出することができる。この光カーテンは、例えば、一列の光子エミッタ82’の形態とすることができ、一列の光子エミッタ82’は、コーナ反射器83に向けて光ビーム84を放射し、コーナ反射器は、光ビーム84を反射し、一連の受光器82によって光ビーム84が受光されるように構成されている。この「光カーテン」技法は、危険な機械を保護するために重工業において首尾よく使用されているが、散乱狭帯域加熱技術と共に使用されたことはない。光ビーム84の1つ又は複数が手又は身体部位によって遮られると、制御システム内で回路が途切れ、1つまたは複数の狭帯域アレイへのパワーをオフにするか、又は少なくとも安全なレベルまでパワーを低減する。
【0090】
照射エネルギーに露出させるために食品を置くべきターゲット領域を消費者に理解させるために、表示システムを、使用し得る様々な工学的ディフューザーと関連付けることができる。ターゲットエリアは、ユーザのために、例えば、可視光学パターン投影、物理的マーキング、若しくは図式表現の少なくとも1つを用いて定義することができる。この点について、Fig.12は、そのような表示システム60を実施する一様式を示し、表示システム60は、例えば、外形周辺部61を光で投影する小型光投影器を備える。したがって、このバージョンでは、食品をその内側に置かなければならないターゲット領域を、有色光で容易に見える外形で表示している。これは、電力供給されたLED又はレーザー・ダイオードとすることができ、特別な工学的ディフューザー自体により、投影レンズアレンジメントを通じて、適切な形状を相応に与えることができる。又は、それは、例えば、調理ターゲット領域を継続的に走査し外形を囲む小型鏡付きガルバノメータとすることができる。それは、工学的ディフューザー/レンズ・アレイの一セクションが、それの前に挿入され、それに応じて、パターンを投影するようにする、狭帯域アレイの1つ又は複数の中に組み込んだ可視LED又はレーザー・ダイオードの形態であってもよい。より単純には、表示手段を、様々な工学的ディフューザーアレイに対応する形状をユーザが直観的に理解できるように、オーブンの食品調理サポートアレンジメント内に設計することができる。調理領域の外周は、UV又はIR光の存在下で蛍光を発するようにオーブンコンポーネント、トレイ又は料理器具に印刷することができる。調理領域表示器の実施の仕方に関する選択は、オーブン設計者によるものであるが、所与の時間で使用するために選択される工学的アレイに対応することにもなる。そのような表示器システムは、固定又は動的に照準する狭帯域照射エネルギーに対応する食品の置かれる領域を単に表示するために、工学的ディフューザーの不在下で使用することができる。この表示器システムは、調理指示又は調理レシピに対応し得るターゲット領域内のゾーンを表示するためにも使用することができる。例えば、制御システムは、鶏胸肉はターゲット領域ゾーン1に置く一方で、ブロッコリーはゾーン2に置き、パスタはゾーン3に置くように表示することができる。それは、形状及びゾーンの向きが表示システムの領域空間に対応するように図式的にスクリーン上に示すことができる。また、ターゲットは、ターゲットエリア内の一意的な位置にターゲットを保持するために固定具に嵌合することができる。
【0091】
狭帯域アレイから、Fig.11に示し得る任意の所望のパターン又は想定し得る他のパターンに照射エネルギーを効率的に向けるために、この仕事のために特別に設計される工学的レンズ散乱アレイを必要とする。設計者の問題として、次のようなものがあるかもしれない:「同じオーブンにおいて、Fig.11aのような形状のターゲット照射エリアのための1つの設計は、Fig.11cのようなターゲット照射形状に衝突する能力をどのようにして持たせるのだろうか?」
【0092】
設計者のこのジレンマに対する回答は、狭帯域照射アレイとターゲット領域との間に挿入して利用可能な多数の工学的ディフューザー/レンズ・アレイを持つことである。Fig.12に示すように、工学的ディフューザー/レンズ・アレイ54は、狭帯域照射アレイ2及び3からより小さな領域11aにエネルギーを向ける。ディフューザーアレイ54は、5つの狭帯域照射アレイの全てからエネルギーを向けるようにも設計されており、Fig.13は、狭帯域アレイ1、2、3及び4がスイッチオンにされ、ディフューザーにより領域11aにエネルギーを送出しているのを示す。Fig.14は、アレイ5もスイッチオンにされ、照射領域11aに向けられているのを示すが、アレイ5が他のアレイとは異なる波長にあり得ることを示す。アレイ5からのエネルギーは、11aの1つのゾーン又はセクション内に他のゾーン又はセクションよりも多くのエネルギーが望まれる場合、領域11aの特別なセクションに向けることができる。実際、ディフューザーアレイ54を相応に設計した場合、アレイ1、2、3、4又は5のいずれかは、領域11a内の特定ゾーンにより高いエネルギー・レベルを向ける又は供給することができる。
【0093】
ここで、Fig.14のアレイ54をFig.15のアレイ55に置き換える場合、5つのアレイのそれぞれからのエネルギーをより大きなターゲットエリア11cに向け直すことができる。この場合も、工学的ディフューザーは、各狭帯域照射アレイのそれぞれから、ターゲット領域11cの適切なセクターに照射エネルギーを向けることになる。各セクターには、狭帯域照射アレイに由来するエネルギーを表すために1、2、3及び4と番号を付けられている。ターゲット領域11cの表面の面積は、領域11aの面積の4倍であり、このため、単位面積当たりのエネルギー強度は4分の1であるが、より大きなターゲットのものを調理する能力が得られる。狭帯域照射アレイ5からのエネルギーは、ターゲット領域11c全体に均一に向けられていることに留意されたい。このことは、狭帯域照射アレイ5が、例えば、表面焼き色付け(surface browning)のための異なる波長照射をもたらす(例えば、1つの波長、例えば、焼き色付け波長は、使用する別の波長、例えば調理波長と少なくとも又は約100nm以上離れ、例えば少なくとも175nm離れる。)場合、他の照射アレイのいずれかから完全に個別に向けられ、制御されるという例によって示される。ここでの全体的な概念は、工学的アレイ54、55のそれぞれが、必要に応じて互いに交換可能であるということである。これは、設計者の想定する目的を達成するために且つ特定のオーブン設計に適切であるように、混合および適合できることを当業者であれば理解されよう。
【0094】
異なるディフューザーは、様々な異なる様式で交換することができる。ディフューザーは、手動/機械式に互いに交換することができるか、又はいくつもの種類の機械式若しくは電気機械式アクチュエータによって所定の位置に押し入れることができる。制御システムは、そのようなアクチュエータを制御し、レシピ、センサ、カメラ情報、又はユーザ入力が特定のコンフィギュレーションを指示した際に応答することができる。使用するディフューザーの特定のコンフィギュレーションを制御システム又はユーザに報告することもできる。
【0095】
挿入可能な工学的ディフューザーの種類の数は、何であれ、オーブン設計者のニーズ、消費者の好み及び価格の点に合わせる必要がある。この点について、1つのディフューザーを使用するか複数のディフューザーを使用するかにかかわらず、ディフューザーコンフィギュレーション又はアレンジメントのコンポーネントは、(本明細書で示すように、及び他の様式で)固定具にマウントすることができる。そのような固定具は、いくつかの形態では、ディフューザーを保持若しくは交換するような、マガジン、回転式コンベヤ、又は他の機械式アレンジメントの形態を取ることができる。一形態では、マガジン、回転式コンベヤ又は交換可能機械式マウンティングは、一意的に位置決めする機構を使用して適切な位置に置かれる。オーブンは、購入時に1つ標準的な工学的ディフューザーが所定の位置にある状態で設計し、次に、必要に応じて、消費者がアフターマーケットで入手可能な任意選択の工学的ディフューザーを購入し、挿入することができる。この領域のもう一方では、洗練されたオーブンは、6つの異なる工学的ディフューザーが埋め込まれており、これらは、制御システムの指示で、調理ニーズに応答して正確な挿入位置内でサーボ制御される。全てのレベルの精巧化は、本発明を実施し、調理機能、速度、費用、エネルギー効率及び調理結果の間の最適な組合せを得るためにかなり現実的な機会になると思われる。費用に関する事項を考慮しなければならず、これにより、システムがどの程度自動又は手動であるか、又は最終的な機能及び柔軟性をどの程度組み込むべきかに関し、システム設計者を多数の対策で誘導することになる。
【0096】
交換可能概念の更なる例として、Fig.16では、オーブン70は、位置71cで双方にヒンジ留めしたオーブン・ドア71を有し、オーブンの面を完全に覆い、閉鎖するように設計されている。照射アレイは、74及び75で概略的に示すように取り付けられ、スロットを表し、このスロットの中に工学的ディフューザーアレイをスライドさせて所定の位置に入れ、狭帯域照射アレイ74とオーブンキャビティ73内のターゲットエリア77との間にディフューザーアレイを挿入する。Fig.16では、散乱アレイ54及び55は、説明したスロット75内にスライドさせることができる2つの異なる種類の散乱アレイを表す。76で表す1つ又は複数のスロットは、現在使用していないアレイの保管のために設けることができる。75、74及び76で示すスロットを、オーブンキャビティ73の下に、ターゲットエリア77が底から照射されるように、ひっくり返すおよび折り返すことができる。狭帯域照射アレイが頂部及び底部にあることで、調理をより迅速に進めることができ、食品への透過率は約2倍とすることができる。オーブン・ドア71は、オーブンキャビティ73の下のスロット及びオーブンキャビティの上のスロットを覆うためにより高く作製することができるか、又は個別のドアを相応に設計し、連動させ、実装させることができる。そのようなドアは、制御システムがシステムを作動している際に開放できないように、安全性のために電気的にインターロックさせる必要がある。
【0097】
2つ以上の異なる工学的ディフューザーを自動的に交換するために、オーブン設計者には、本発明の実行に利用可能ないくつかの異なる可能性がある。Fig.17は、工学的ダブルディフューザーアレイを示し、散乱アレイ54及び55をディフューザーアレイ80で表されるように同じ平面に置いたように効果的である。ディフューザーアレイ80は、1a、2a、3a、4a及び5aから構成されるパターン並びに、1b、2b、3b、4b及び5bから構成されるパターンを有することに注目されたい。アレイを矢印Bの方向に押すと、対応するBのパターンが狭帯域アレイの前に置かれることになる。ディフューザーアレイをAの方向に押すと、Aのパターンが狭帯域照射アレイの前に置かれることになる。ダブルディフューザーアレイ80は、75で表す軌道内でスライドさせることができ、軌道は、工学的ディフューザー80の側面に位置させ、工学的ディフューザー80の両端を収容することができる。工学的ダブルディフューザー80の2つの位置のいずれかに自動的に移動させるために、アクチュエータ81は動力を供給することができる。既に述べたように、動力は、モータ、サーボ・ドライブ、空気若しくは液圧シリンダ、又は他の機械式若しくは電気機械式手段から供給することができる。動力は、制御システムの指示下にあり、制御システムは、アレイを位置a又は位置bに移動すべき時を決定し、この移動は、狭帯域照射アレイが作動されていない時に行われる。ターゲットエリア表示器60aは、「A」パターンを使用する際の正確なターゲット外形を投影することができる一方で、60bは、「B」パターンターゲットエリアに関する同様の機能をもたらすことができる。上記の例は、確かに、工学的散乱アレイの手動又は自動交換を達成する1つの様式であるが、設計者の特定の用途、空間及び機能に対するニーズに従って、このテーマに対する多くの変形形態を実施し得ることは理解されよう。
【0098】
本発明で説明する実施形態による方法は、上記で詳述した特徴及び説明に従って実施し得ることも理解されよう。例えば、工学的照射パターンを使用する、ターゲットの狭帯域放射加熱方法は、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタシステムから、ターゲットを中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて狭帯域赤外線出力エネルギーを放出すること;及びエミッタシステムとターゲットエリアとの間のビーム路内に配置した工学的コンポーネントを使用して、狭帯域赤外線エミッタシステムの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成することを含む。更に、別の例として、工学的照射パターンを使用する、食品の狭帯域放射加熱方法は、半導体ベースの狭帯域赤外線エミッタアレイから、食品を中の適切な位置に置くことができるターゲットエリアに向けて狭帯域赤外線出力エネルギーを放出すること;及びエミッタアレイとターゲットエリアとの間のビーム路内に配置したディフューザーコンフィギュレーションを使用して、狭帯域赤外線エミッタアレイの出力エネルギーの形状及びパワー密度を修正し、出力エネルギーの工学的照射パターンをターゲットエリア内に生成し、食品を加熱又は調理することを含む。
【0099】
ディフューザー等の工学的コンポーネントのこの新規な使用は、狭帯域照射システムの機能を劇的に拡張し、向上させる。狭帯域照射アレイと連携する工学的レンズ及び/又はディフューザーの使用法に関するこれら概念は、多くの異なる様式及び多くの異なる用途で使用でき、機能性及びエネルギー効率を劇的に改善させ得ることが理解されよう。
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