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特許7074683導電パターン構造及びその製造方法、アレイ基板、表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】導電パターン構造及びその製造方法、アレイ基板、表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/41 20060101AFI20220517BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20220517BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20220517BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01L29/44 S
H01L21/288 E
H01L29/50 M
C22C9/00
C22C5/06 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018549775
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2017109722
(87)【国際公開番号】W WO2018192210
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】201710263475.3
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 蒂▲ニ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲シャオ▼晋
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲偉▼
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-124216(JP,A)
【文献】特表2016-520995(JP,A)
【文献】特開平05-047760(JP,A)
【文献】特開2002-093809(JP,A)
【文献】特開2012-204585(JP,A)
【文献】特開平09-130050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144952(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105226070(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/41
H01L 21/288
H01L 29/417
C22C 9/00
C22C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターン構造であって、
第1金属パターンと第2金属パターンと、前記第1金属パターンの第1の主面にある緩衝層と、前記緩衝層から離れる前記第1金属パターンの第2の主面にある第3金属パターンと、を含み、
前記第2金属パターンは、前記第1金属パターンの側面、前記第3金属パターンの側面及び前記緩衝層の側面とのみ接触しており、前記第2金属パターンは、前記第1金属パターンの第1の主面及び第2の主面と接触しておらず、
前記第1金属パターンの金属材料の活性が前記第2金属パターンの金属材料の活性より弱い、導電パターン構造。
【請求項2】
前記第1金属パターンの金属材料は、銅系金属及び銀系金属のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電パターン構造。
【請求項3】
前記第2金属パターンの金属材料は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の導電パターン構造。
【請求項4】
前記銅系金属は、Cu、CuMo、CuTi、CuMoW、CuMoNb又はCuMoTiを含み、前記銀系金属は、Ag、AgMo、AgTi、AgMoW、AgMoNb又はAgMoTiを含む、請求項2に記載の導電パターン構造。
【請求項5】
前記銅系金属において、銅の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%であり、前記銀系金属において、銀の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%である、請求項2又は4に記載の導電パターン構造。
【請求項6】
前記緩衝層の材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi、TiNb、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む、請求項に記載の導電パターン構造。
【請求項7】
前記第3金属パターンの材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む、請求項に記載の導電パターン構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれかの1項に記載の導電パターン構造を含むアレイ基板。
【請求項9】
請求項に記載のアレイ基板を含む表示装置。
【請求項10】
導電パターン構造の製造方法であって、
第1金属パターンを形成するステップと、
前記第1金属パターンの第1の主面に緩衝層を形成するステップと、
前記緩衝層から離れる前記第1金属パターンの第2の主面に第3金属パターンを形成するステップと、
第2金属パターンを形成するステップと、を含み、
前記第2金属パターンは、前記第1金属パターンの側面、前記第3金属パターンの側面及び前記緩衝層の側面とのみ接触しており、前記第2金属パターンは、前記第1金属パターンの第1の主面及び第2の主面と接触しておらず、
前記第1金属パターンの金属材料の活性が、前記第2金属パターンの金属材料の活性より弱い、導電パターン構造の製造方法。
【請求項11】
前記第2金属パターンを形成するステップは、前記第1金属パターンが形成されていたベース基板を、第2金属イオンを含む溶液に入れて、前記第2金属パターンを形成するステップを含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1金属パターンの金属材料は、銅系金属及び銀系金属のうちの少なくとも1種を含む、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2金属パターンの金属材料は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第2金属イオンを含む溶液は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム又はチタンの塩化物、硝酸塩又は硫酸塩溶液を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記緩衝層の材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi、TiNb、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第3金属パターンの材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は導電パターン構造、その製造方法、アレイ基板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)では、ゲートライン、ゲート、ソース、ドレイン及びデータラインの材料として、一般的に化学的性質が安定的で抵抗率が高いTa、Cr又はMo等の金属、又は上記金属の任意の組合せから形成される合金が使用される。TFT-LCDデバイスの寸法が小さく、分解能が低い場合、ゲート信号の遅延が顕著ではなく、デバイスの表示効果への影響が顕著ではない。しかしながら、TFT-LCDの寸法と分解能の向上に伴って、ゲートラインの長さも徐々に増大し、信号遅延時間がその分長くなり、信号遅延時間がある程度まで増加すると、一部の画素が十分に充電できなくなり、表示輝度のムラを引き起こし、TFT-LCDのコントラストを低下させ、画像の表示品質に大きな影響を及ぼす。このため、低抵抗金属たとえばCuを用いてゲートライン、ゲート、ソース、ドレイン及びデータラインを製造することにより上記問題を解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
低抵抗金属を用いて金属線又は金属電極を製造する場合、低抵抗金属が酸化されて、低抵抗金属イオンが半導体層に拡散して、薄膜トランジスタの性能劣化を招くという問題があり、それによりTFT製品の性能に大きな影響を及ぼす。低抵抗金属で製造された金属線又は金属電極が高温条件に晒される場合、上記問題は特に深刻になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の少なくとも一実施例は、第1金属パターンと第2金属パターンとを含み、前記第2金属パターンは、少なくとも部分的に前記第1金属パターンの側面を被覆し、前記第1金属パターンの金属材料の活性が前記第2金属パターンの金属材料の活性より弱い導電パターン構造を提供する。
【0005】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記第1金属パターンの金属材料は、銅系金属及び銀系金属のうちの少なくとも1種を含む。
【0006】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記第2金属パターンの金属材料は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタンのうちの少なくとも1種を含む。
【0007】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記銅系金属は、Cu、CuMo、CuTi、CuMoW、CuMoNb又はCuMoTiを含み、前記銀系金属は、Ag、AgMo、AgTi、AgMoW、AgMoNb又はAgMoTiを含む。
【0008】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記銅系金属において、銅の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%であり、前記銀系金属において、銀の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%である。
【0009】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造はさらに緩衝層を含み、前記第1金属パターンは前記緩衝層上にある。
【0010】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記緩衝層の材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi、TiNb、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造は前記第1金属パターンの上面を被覆する第3金属パターンをさらに含む。
【0012】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造において、前記第3金属パターンの材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む。
【0013】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、上記いずれかの導電パターン構造を含むアレイ基板を提供する。
【0014】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、上記いずれかのアレイ基板を含む表示装置を提供する。
【0015】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、第1金属パターンを形成するステップと、少なくとも前記第1金属パターンの側面の一部に第2金属パターンを形成するステップとを含み、前記第1金属パターンの金属材料の活性が前記第2金属パターンの金属材料の活性より弱い導電パターン構造の製造方法を提供する。
【0016】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成するステップは、前記第1金属パターンが形成されていたベース基板を、第2金属イオンを含む溶液に入れて、前記第1金属パターンの側面を被覆する第2金属パターンを形成するステップを含む。
【0017】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第1金属パターンの金属材料は、銅系金属及び銀系金属のうちの少なくとも1種を含む。
【0018】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第2金属パターンの金属材料は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタンのうちの少なくとも1種を含む。
【0019】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第2金属イオンを含む溶液は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム又はチタンの塩化物、硝酸塩又は硫酸塩溶液を含む。
【0020】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第1金属パターンを形成する前に、さらに緩衝層を形成するステップを含む。
【0021】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記緩衝層の材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi、TiNb、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法はさらに、前記第1金属パターンの上面に第3金属パターンを形成するステップを含む。
【0023】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、前記第3金属パターンの材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例の図面を簡単に説明するが、勿論、以下の説明における図面は本開示の一部の実施例に関するものに過ぎず、本開示を制限するものではない。
【0025】
図1】導電パターン構造の断面構造模式図である。
図2】MoNb/Cu/MoNb金属層におけるCu金属の側面が酸化されたときの走査型電子顕微鏡像である。
図3】本開示の一実施例による導電パターン構造の断面構造模式図である。
図4】電解質溶液の動作原理図である。
図5】本開示の一実施例によるまた別の導電パターン構造の断面構造模式図である。
図6】本開示の一実施例によるさらに別の導電パターン構造の断面構造模式図である。
図7】本開示の一実施例によるさらに別の導電パターン構造の断面構造模式図である。
図8】本開示の一実施例によるアレイ基板の断面構造模式図である。
図9】本開示の一実施例による表示装置のブロック図である。
図10】本開示の一実施例による導電パターン構造の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施例の目的、技術案及び利点をさらに明確にするように、本開示の実施例の図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明確で完全に説明する。勿論、説明される実施例は、本開示の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。説明される本開示の実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得られる全ての他の実施例は、いずれも本開示の保護範囲に入る。
【0027】
特別に定義しなければ、本開示に使われる技術用語又は科学用語は本開示が属する分野における一般の従業者が理解できる通常の意味である。本開示に使われる「第1」、「第2」及び類似する用語は、異なる構成要素を区別するためのものに過ぎず、順番、数量又は重要度を示すものではない。「含む」又は「備える」等の類似する用語は、該用語の前に記載された素子又は物体が該用語の後に挙げられる素子又は物体及びそれらと同等のものをカバーするが、ほかの素子又は物体を排除しないことを意味する。「接続」又は「繋がる」等の類似する用語は、物理的又は機械的な接続に制限されるものではなく、直接接続されるか間接的に接続されるかを問わず、電気的な接続を含むこともできる。「上」、「下」、「左」、「右」等は単に相対位置関係を意味するものであり、説明される対象の絶対位置関係が変わると、当該相対位置関係もそれにつれて変わる可能性がある。
【0028】
表示デバイスの製造過程において、現在、産業化されている薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)は主に、アモルファスシリコーン、多結晶シリコン、単結晶シリコン、金属酸化物又はカーボンナノチューブ等を活性層材料としたTFTを含む。上記各種タイプの薄膜トランジスタは、通常、低抵抗金属を導線又は金属電極の材料として用いる。低抵抗金属は酸化されやすく、酸化された金属配線や金属電極の導電性が低下して、さらに薄膜トランジスタの性能に悪影響を与える。また、低抵抗金属イオンが薄膜トランジスタの活性層に拡散しやすく、それによって、薄膜トランジスタの特性劣化を招く。金属酸化物を活性層とした薄膜トランジスタの場合、上記金属配線又は金属電極の酸化と金属イオン拡散の現象が特に深刻である。
【0029】
通常、低抵抗金属の上下両側にそれぞれ第1緩衝層と第2緩衝層を形成することで、低抵抗金属の酸化を防止し、及び金属イオンの半導体層への拡散を減少させる。たとえば、図1は、導電パターン構造の断面構造模式図である。図1に示されるように、低抵抗金属102の上下両側にそれぞれ第1緩衝層101と第2緩衝層103が形成された後、第1緩衝層/金属/第2緩衝層の三層構造についてエッチング等処理のステップを施すと、三層構造の中間層である低抵抗金属の側面が空気に晒される恐れがあり、後続の絶縁層フィルム堆積と高温アニール等のステップでは、側面の低抵抗金属102が極めて酸化されやすく、また、低抵抗金属102の収縮及び金属線の切れの恐れもある。たとえば、図2はMoNb/Cu/MoNb金属層におけるCu金属の側面が酸化されたときの走査型電子顕微鏡像である。図2から分かるように、銅金属の側面に疎な突出物が形成され、該疎な突出物は銅酸化物である。
【0030】
本開示の少なくとも一実施例は、第1金属パターンと第2金属パターンとを含み、第2金属パターンは少なくとも部分的に第1金属パターンの側面を被覆し、且つ第1金属パターンの金属材料の活性が第2金属パターンの金属材料の活性より弱い導電パターン構造を提供する。
【0031】
本開示の実施例は、第1金属パターンに少なくとも部分的にその側面に被覆された第2金属パターンを形成することで、第1金属パターンの側面の酸化を防止し、それにより第1金属パターンの導電性低下の問題を避け、さらに製品の歩留まり低下の問題を避ける。また、下記のとおり、本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造はさらに、生産装置や外部環境への要件を低下させ、それにより導電パターン構造の製造プロセスの複雑性を低減させ、生産コストを削減させる。
【0032】
なお、金属活性とは、金属が置換される容易さをいい、金属の活性系列における金属の順番に応じて、前から後へ金属活性が次第に低下していく。金属の活性系列において、第1金属パターンを形成する金属が第2金属パターンを形成する金属より後にある。
【0033】
なお、第2金属パターンが少なくとも部分的に第1金属パターンの側面を被覆するとは、第2金属パターンが第1金属パターンの側面全体又は側面の一部を被覆する。第1金属パターンをよりよく保護する目的で、第2金属パターンは第1金属パターンの側面全体を被覆する。
【0034】
なお、第2金属パターンが第1金属パターンの側面を被覆する場合、第2金属パターンは第1金属パターンの上面及び/又は下面を被覆してもよい。
【0035】
たとえば、図3は本実施例による導電パターン構造の断面構造模式図である。図3に示されるように、該導電パターン構造20において、第2金属パターン202は第1金属パターン201の側面を被覆して、露出された第1金属パターン201の側面を外部から完全に遮断し、それにより、第1金属パターン201の酸化を防止して、第1金属パターン201の導電性低下の問題を避ける。
【0036】
図3に示されるように、第1金属パターン201の側面は第2金属パターン202に被覆され、第2金属パターン202は露出されており、このような場合、第2金属パターン202は酸化される可能性があるが、第2金属パターン202が酸化されても、その表面に薄くて緻密性に優れた酸化物フィルムが速く形成されて、さらなる酸化反応を防止する。
【0037】
たとえば、第1金属パターンの材料は低抵抗金属材料であり、該低抵抗金属材料は銅系金属及び銀系金属のうちの少なくとも1種を含み、すなわち、銅系金属だけを含んでもよく、銀系金属だけを含んでもよく、銅と銀を同時に含んでもよい。
【0038】
たとえば、銅系金属は、Cu、CuMo、CuTi、CuMoW、CuMoNb又はCuMoTiを含み、銀系金属は、Ag、AgMo、AgTi、AgMoW、AgMoNb又はAgMoTiを含む。
【0039】
たとえば、銅系金属において、銅の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%、たとえば、90wt%、92wt%、94wt%、96wt%、98wt%又は100wt%であり、銀系金属において、銀の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%、たとえば、90wt%、92wt%、94wt%、96wt%、98wt%又は100wt%である。なお、上記銅の質量百分率含有量と銀の質量百分率含有量の範囲に制限されず、10%変動しても、本願の範囲と見なされる。
【0040】
たとえば、第2金属パターンの金属材料は、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタンのうちの少なくとも1種を含む。金属の活性系列において、上記金属は銅の前にあり、且つ上記金属に対応した金属酸化物は緻密性に優れるため、さらなる酸化反応を防止できる。
【0041】
たとえば、該第1金属パターンの厚さが約200~400nm、たとえば、200nm、250nm、300nm、350nm又は400nmである。
【0042】
たとえば、該第2金属パターンの厚さが約10~50nm、たとえば、10nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm又は50nmである。
【0043】
なお、上記第1金属パターンと第2金属パターンの厚さ範囲に制限されず、10%変動しても、本願の範囲と見なされる。
【0044】
たとえば、少なくとも第1金属パターンの側面の一部に第2金属パターンを形成する過程は電解セル反応で実施できる。なお、電気エネルギーを化学エネルギーに変換する過程は電解と呼ばれ、対応した装置は電解セルであり、電解セルの作動媒体は電解質溶液である。たとえば、図4は電解質溶液の動作原理図であり、電解質溶液の動作原理としては、アニオンが陽極上に電子を失って酸化反応を行い、失われた電子が外部回路を介して電源の正極へ流れ、又は、陽極材料が活性電極材料である場合、陽極自体が電子を失って酸化されて、陽極金属に対応したカチオンを形成し、カチオンが陰極上で外部電源の陰極による電子を得て還元反応を行う。
【0045】
たとえば、本開示の実施例では、電解セル反応は下記例を含む。
【0046】
例1:第1金属パターンの材料は銅金属単体であり、該銅金属単体は陰極とし、陽極材料は不活性電極(たとえば、プラチナ又はパラジウム等)、電解質溶液は塩化ニッケル溶液(NiCl)である。電解質溶液におけるアニオンCl-1が陽極へ移動して、陽極で酸化反応を行い、カチオンNi2+が陰極へ移動して、陰極で電子を得て、ニッケル金属単体を形成する。
該電解セル反応:
陽極:2Cl-1-2e=Cl(g)
陰極:Ni2++2e=Ni
上記電気化学反応によって、銅金属単体を陰極とした電極にニッケル金属単体が形成され、すなわち、第1金属パターン(銅金属単体)に第2金属パターン(ニッケル金属単体)が形成される。
【0047】
なお、上記銅金属単体は銀金属単体、銅系金属合金又は銀系金属合金に交換してもよく、塩化ニッケル溶液(NiCl)は硫酸ニッケル溶液(NiSO)、硝酸ニッケル溶液(Ni(NO)、塩化アルミニウム溶液(AlCl)、硫酸アルミニウム溶液(Al(SO)、硝酸アルミニウム溶液(Al(NO)及びモリブデン、ニオブとチタンの硫酸塩、硝酸塩又は塩化塩のプラズマ溶液に交換してもよく、電解セル反応は上記陽極反応及び陰極反応と類似する。
【0048】
例2:第1金属パターンの材料は銅金属単体であり、該銅金属単体は陰極とし、陽極材料はニッケル金属単体、電解質溶液は塩化ニッケル溶液(NiCl)であり、陽極材料はニッケル金属単体、すなわち陽極は活性電極材料であり、陽極自体が電子を失って酸化されて金属イオンNi2+になり、陽極が酸化されてなるNi2+と溶液におけるNi2+が陰極へ移動して、陰極で電子を得てニッケル金属単体を形成する。
該電解セル反応:
陽極:Ni-2e=Ni2+
陰極:Ni2++2e=Ni
上記電気化学反応によって、銅金属単体を陰極とした電極にニッケル金属単体が形成され、すなわち、第1金属パターン(銅金属単体)に第2金属パターン(ニッケル金属単体)が形成される。
【0049】
なお、上記銅金属単体は銀金属単体、銅系金属合金又は銀系金属合金に交換してもよく、電解質溶液は硫酸ニッケル溶液(NiSO)、硝酸ニッケル溶液(Ni(NO)、塩化アルミニウム溶液(AlCl)、硫酸アルミニウム溶液(Al(SO)、硝酸アルミニウム溶液(Al(NO)、又はモリブデン、ニオブ及びチタンの硫酸塩、硝酸塩又は塩化塩のプラズマ溶液、又は水溶液に交換してもよく、電解セル反応は上記陽極及び陰極反応と類似する。
【0050】
たとえば、金属の活性が銅又は銀よりも強い金属のうち不動態化反応が発生しやすい金属、たとえばニッケル、アルミニウム、モリブデン、ニオブ及びチタンを選択してもよい。上記金属は、空気において酸化されても、緻密な酸化物フィルムを速く形成して、さらなる酸化反応を防止することができる。該導電パターン構造がアレイ基板に適用される場合、アレイ基板の製造過程において、後続の化学気相堆積とアニールプロセスにおいても酸化反応が発生することがなく、それにより、銅又は銀金属材料から形成される第1金属パターンの酸化や腐食による歩留まり低下の問題を効率的に防止できる。
【0051】
たとえば、マグネトロンスパッタリング方式で金属フィルムを堆積して、次に金属フィルムをパターン化して、第2金属パターンを形成し、ただし、マグネトロンスパッタリング過程が真空チャンバで行われ、高価な装置が必要であり、生産コストが高い。本開示の実施例による電解セル反応方法によって、第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成すると、製造過程がシンプルで、且つ苛酷な外部条件を必要としないため、製造コストを削減させる。
【0052】
たとえば、図5は本開示の実施例による別の導電パターン構造の断面構造模式図であり、第2金属パターン202は、第1金属パターン201の上面と側面全体を被覆する。このようにして、第1金属パターン201の上面の酸化が防止される。
【0053】
たとえば、図6は本実施例によるまた別の導電パターン構造の断面構造模式図である。図6に示されるように、該導電パターン構造はさらに緩衝層203を含み、該第1金属パターン201は該緩衝層203上にある。たとえば、該緩衝層203を形成する材料は、イオン拡散が発生しにくい金属材料又は無機非金属材料を含む。緩衝層203は、第1金属パターン201の下面の酸化を防止するとともに、第1金属パターン201における金属の拡散を防止することができる。たとえば、該金属材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi又はTiNb、該無機非金属材料は窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。
【0054】
図6に示されるように、第2金属パターン202は緩衝層203の側面上、及び第1金属パターン201の上面上に形成されてもよい。
【0055】
たとえば、該緩衝層の厚さが約20~30nm、たとえば、20nm、25nm又は30nmである。なお、上記緩衝層の厚さの範囲に制限されず、10%変動しても、本願の範囲と見なされる。
【0056】
たとえば、図7は本実施例によるさらに別の導電パターン構造の断面構造模式図である。図7に示されるように、該導電パターン構造20はさらに第1金属パターン201の上面に被覆される第3金属パターン204を含む。第3金属パターン204は、第1金属パターン201の上面の酸化を防止するとともに、第1金属パターン201における金属の拡散を防止することができる。
【0057】
たとえば、該第3金属パターン204を形成する材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む。
【0058】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、前記のいずれかの導電パターン構造を含むアレイ基板を提供する。
【0059】
たとえば、該導電パターン構造は、アレイ基板におけるゲート、ゲートライン、第1ソース・ドレイン電極、第2ソース・ドレイン電極、データライン及び共通電極ラインのうちの少なくとも1種である。
【0060】
たとえば、アレイ基板上に設置された薄膜トランジスタは主に、アモルファスシリコーン薄膜トランジスタ、多結晶シリコン薄膜トランジスタ、単結晶シリコン薄膜トランジスタ、金属酸化物薄膜トランジスタ又はカーボンナノチューブ薄膜トランジスタ等を含む。表示デバイスを製造するためのアレイ基板は、金属酸化物薄膜トランジスタを多く用いる。金属酸化物薄膜トランジスタはキャリア移動度が高いという利点を有するため、薄膜トランジスタを極めて小さくすることができ、それにより、平板ディスプレイの分解能を向上させて、表示デバイスの表示効果を改善し、また、金属酸化物薄膜トランジスタは、特性のムラが少なく、材料とプロセスが低コストで、プロセスの温度が低く、コーティングプロセスを利用でき、半導体層の透明性が高く、バンドギャップが大きい等の利点を有する。以下、アレイ基板における薄膜トランジスタをボトムゲート型金属酸化物薄膜トランジスタとする場合を例にして、説明する。
【0061】
たとえば、図8は、本実施例によるアレイ基板の断面構造模式図である。図8に示されるように、該アレイ基板30は、ベース基板301、ベース基板301上に設置されたゲート302、ゲート絶縁層303、活性層304、第1ソース・ドレイン電極305、第2ソース・ドレイン電極306、有機絶縁層307、パッシベーション層308、第1電極309、第1絶縁層312、第2電極310及び共通電極ライン311を含む。
【0062】
たとえば、該アレイ基板30におけるゲート302、ゲートライン(未図示)、第1ソース・ドレイン電極305、第2ソース・ドレイン電極306、データライン(未図示)及び共通電極ライン311は、本開示の実施例によるいずれかの導電パターン構造であってもよく、このように、第1金属パターン(たとえば、銅金属パターン又は銀金属パターン)の側面に金属活性が比較的強い第2金属パターン(たとえば、ニッケル、モリブデン、ニオブ、アルミニウム及びチタン金属パターン)が形成されることによって、銅又は銀材料から形成される第1金属パターンのさらなる酸化や腐食による歩留まり低下の問題を効果的に防止できる。
【0063】
たとえば、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、ニオブ及びチタンは、酸化されても、薄くて緻密な酸化物フィルムを形成するため、さらなる酸化反応を避ける。該導電パターン構造がアレイ基板に適用される場合、アレイ基板の製造過程に、後続の化学気相堆積とアニールプロセスにおいても酸化反応を発生させることがなく、それにより、銅又は銀金属材料から形成される第1金属パターンの酸化や腐食による歩留まり低下の問題を効果的に防止できる。
【0064】
たとえば、マグネトロンスパッタリング方式で金属フィルムを堆積し、次に金属フィルムをパターン化して第2金属パターンを形成し、ただし、マグネトロンスパッタリング過程が真空チャンバで行われ、高価な装置が必要であり、コストが高い。本開示の少なくとも一実施例による電解セル反応方法によって、第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成すると、製造過程がシンプルで、且つ苛酷な外部条件を必要としないため、製造コストを削減させる。
【0065】
たとえば、活性層304は金属酸化物半導体であり、該活性層304の材料はIGZO、HIZO、IZO、a-InZnO、a-InZnO、ZnO、In:Sn、In:Mo、CdSnO、ZnO:Al、TiO:Nb又はCd-Sn-Oを含む。
【0066】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例では、ゲート絶縁層303の材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含み、ゲート絶縁層303の材料は、上記各物質の材料の特性と同じ又は類似するほかの無機絶縁材料を用いてもよい。
【0067】
たとえば、ベース基板301は、透明絶縁基板を含み、その材料がガラス、石英、プラスチック又はその他の適切な材料であってもよい。
【0068】
たとえば、有機絶縁層307の材料は、ポリイミド、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体、アクリル酸樹脂又はポリエチレンテレフタレートのうちの1種又は複数種を含む。
【0069】
たとえば、パッシベーション層308の材料は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、二酸化チタン及びアルミナのうちの1種又は複数種を含む。
【0070】
たとえば、該第1電極309は画素電極、第2電極310は共通電極、又は、第1電極309は共通電極、第2電極310は画素電極である。
【0071】
たとえば、該第1電極309と第2電極310は、透明導電材料又は金属材料から形成されてもよく、たとえば、該透明導電材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)及びカーボンナノチューブ等を含む。該金属材料は、銀、アルミニウム等を含む。
【0072】
たとえば、該第1電極309と第2電極310の形成順番が交換してもよく、すなわち、第2電極310は第1電極309上に位置し、第1電極309は第2電極310上に位置するようにしてもよく、ここで制限がない。
【0073】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例によるアレイ基板における薄膜トランジスタは、ボトムゲート型薄膜トランジスタ、たとえば、ES(エッチングストッパ層)構造の薄膜トランジスタ又はBCE(バックチャネルエッチング)構造の薄膜トランジスタであってもよく、トップゲート型薄膜トランジスタ又はデュアルゲート型薄膜トランジスタであってもよい。
【0074】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、前記のいずれかのアレイ基板を備える表示装置を提供する。たとえば、図9は本開示の少なくとも一実施例による表示装置のブロック図である。図9に示されるように、該表示装置40はアレイ基板30を含む。
【0075】
該表示装置40の一例は液晶表示装置であり、ここで、アレイ基板と対向基板が互いに対向して液晶セルを形成し、液晶セルに液晶材料が充填されている。該対向基板はたとえばカラーフィルタ基板である。アレイ基板の各サブ画素の画素電極が電場を印加して液晶材料の回転度合いを制御することによって、表示操作を行う。いくつかの例では、該液晶表示装置はさらにアレイ基板にバックライトを提供するバックライト源を含む。
【0076】
たとえば、該表示装置のほかの例は、有機発光ダイオード(OLED)表示装置又は電子ペーパー表示装置等であってもよい。
【0077】
たとえば、該表示装置40におけるその他の構造について、一般的な設計を参照すればよい。該表示装置はたとえば、携帯電話、タブレット、テレビ、ディスプレイ、ノートパソコン、デジタルフォトフレーム、ナビゲータ等の任意の表示機能を有する製品又は部材である。該表示装置のほかの必要な部分はいずれも当業者が理解すべきものであるため、ここで詳細な説明を省略し、本開示の制限とならない。該表示装置の実施例は、上記アレイ基板の実施例を参照すればよいため、重複説明を省略する。
【0078】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、導電パターン構造の製造方法を提供し、たとえば、図10は本開示の一実施例による導電パターン構造の製造方法のフローチャートである。たとえば、該製造方法は以下を含む。
【0079】
S101:第1金属パターンを形成する。
【0080】
たとえば、第1金属パターンを形成する過程は以下を含む。ベース基板上に第1金属フィルムを堆積して、第1金属フィルムをパターン化して、第1金属パターンを形成する。
【0081】
たとえば、スパッタリング又は熱蒸発方法を用いて、厚さが約200~400nmの第1金属フィルムを連続的に堆積する。たとえば、該第1金属フィルムの厚さは200nm、250nm、300nm、350nm又は400nmである。なお、上記第1金属フィルムの厚さ範囲に制限されず、10%変動しても、本願の範囲と見なされる。
【0082】
たとえば、該ベース基板は透明絶縁基板であってもよく、その材料がガラス、石英、プラスチック又はその他の適切な材料である。
【0083】
たとえば、第1金属パターンの材料は低抵抗金属材料であり、該低抵抗金属材料は銅系金属と銀系金属のうちの少なくとも1種を含み、すなわち、銅系金属だけを含んでもよく、銀系金属だけを含んでもよく、銅と銀を同時に含んでもよい。
【0084】
たとえば、銅系金属はCu、CuMo、CuTi、CuMoW、CuMoNb又はCuMoTi、銀系金属は、Ag、AgMo、AgTi、AgMoW、AgMoNb又はAgMoTiを含む。
【0085】
たとえば、銅系金属において、銅の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%、銀系金属において、銀の質量百分率含有量が約90wt%~100wt%、たとえば、90wt%、92wt%、94wt%、96wt%、98wt%又は100wt%である。なお、上記銅の質量百分率含有量と銀の質量百分率含有量の範囲に制限されず、10%変動しても、本願の範囲と見なされる。
【0086】
たとえば、第1金属フィルムをパターン化する過程は以下を含む。第1金属パターン上に一層のフォトレジストをコーティングして、マスクを用いてフォトレジストについて露光と現像処理を行い、フォトレジストでフォトレジスト未保留領域とフォトレジスト保留領域を形成し、そのうち、フォトレジスト保留領域は第1金属パターン(たとえば、アレイ基板では、ゲート、ゲートライン、第1ソース・ドレイン電極、第2ソース・ドレイン電極、データライン又は共通電極ライン)が所在する領域に対応し、フォトレジスト未保留領域は上記パターン以外の領域に対応する。エッチングプロセスによってフォトレジスト未保留領域にある第1金属フィルムを完全にエッチングし、残りのフォトレジストを剥離して、第1金属パターンを形成する。
【0087】
S102:第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成する。該第1金属パターンを形成する金属の活性が該第2金属パターンを形成する金属の活性より弱い。
【0088】
金属活性とは、金属が置換される容易さをいい、金属の活性系列における金属の順番に応じて、前から後へ金属活性が次第に低下していく。金属の活性系列において、第1金属パターンを形成する金属が第2金属パターンを形成する金属より後にある。
【0089】
たとえば、導電パターン構造では、第2金属パターンは第1金属パターンの側面を被覆して、露出された第1金属パターンの側面を外部から完全に遮断し、それにより、第1金属パターンの酸化を防止して、第1金属パターンの導電性低下の問題を避ける。
【0090】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による製造方法において、第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成する過程は電解セル反応で実施できる。たとえば、該過程は以下を含む。第1金属パターンが形成されていたベース基板を、第2金属イオンを含む溶液に入れて、外電流の作用下で電気エネルギーを化学エネルギーに変換し、該第1金属パターンの側面を被覆する第2金属パターンを形成する。
【0091】
たとえば、電解セル反応は下記例を含む。
【0092】
例1:第1金属パターンの材料は銅金属単体であり、該銅金属単体は陰極とし、陽極材料は不活性電極(たとえば、プラチナ又はパラジウム等)、電解質溶液は塩化ニッケル溶液(NiCl)である。電解質溶液におけるアニオンCl-1が陽極へ移動して、陽極で反応を行い、カチオンNi2+が陰極へ移動して、陰極で電子を得て、ニッケル金属単体を形成する。
該電解セル反応:
陽極:2Cl-1-2e=Cl(g)
陰極:Ni2++2e=Ni
上記電気化学反応によって、銅金属単体を陰極とした電極にニッケル金属単体が形成され、すなわち、第1金属パターン(銅金属単体)に第2金属パターン(ニッケル金属単体)が形成される。
【0093】
なお、上記銅金属単体は銀金属単体、銅系金属合金又は銀系金属合金に交換してもよく、電解質溶液は硫酸ニッケル溶液(NiSO)、硝酸ニッケル溶液(Ni(NO)、塩化アルミニウム溶液(AlCl)、硫酸アルミニウム溶液(Al(SO)、硝酸アルミニウム溶液(Al(NO)及びモリブデン、ニオブとチタンの硫酸塩、硝酸塩又は塩化塩のプラズマ溶液に交換してもよく、電解セル反応は上記陽極及び陰極反応と類似する。
【0094】
例2:第1金属パターンの材料は銅金属単体であり、該銅金属単体は陰極とし、陽極材料はニッケル金属単体、電解質溶液は塩化ニッケル溶液(NiCl)であり、陽極材料はニッケル金属単体で、活性電極材料であり、陽極自体が電子を失って酸化されて金属イオンNi2+になり、陽極が酸化されてなるNi2+と溶液におけるNi2+が陰極へ移動して、陰極で電子を得てニッケル金属単体を形成する。
該電解セル反応:
陽極:Ni-2e=Ni2+
陰極:Ni2++2e=Ni
上記電気化学反応によって、銅金属単体を陰極とした電極にニッケル金属単体が形成され、すなわち、第1金属パターン(銅金属単体)に第2金属パターン(ニッケル金属単体)が形成される。
【0095】
なお、上記銅金属単体は銀金属単体、銅系金属合金又は銀系金属合金に交換してもよく、電解質溶液は硫酸ニッケル溶液(NiSO)、硝酸ニッケル溶液(Ni(NO)、塩化アルミニウム溶液(AlCl)、硫酸アルミニウム溶液(Al(SO)、硝酸アルミニウム溶液(Al(NO)、又はモリブデン、ニオブ及びチタンの硫酸塩、硝酸塩又は塩化塩のプラズマ溶液、又は水溶液に交換してもよく、電解セル反応は上記陽極及び陰極反応と類似する。
【0096】
たとえば、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、ニオブ及びチタンは、空気において酸化されても、薄くて緻密な酸化物フィルムを形成して、さらなる酸化反応を防止することができる。該導電パターン構造がアレイ基板に適用される場合、アレイ基板の製造過程において、後続の化学気相堆積とアニールプロセスにおいても酸化反応が発生することがなく、それにより、銅又は銀金属材料から形成される第1金属パターンの酸化や腐食による歩留まり低下の問題を効率的に防止できる。たとえば、マグネトロンスパッタリング方式で金属フィルムを堆積して、次に金属フィルムをパターン化して、第2金属パターンを形成し、ただし、マグネトロンスパッタリング過程が真空チャンバで行われ、高価な装置が必要であり、コストが高い。本開示の少なくとも一実施例による電解セル反応方法によって、第1金属パターンの側面に第2金属パターンを形成すると、製造過程がシンプルで、且つ苛酷な外部条件を必要としないため、製造コストを削減させる。
【0097】
たとえば、本開示の実施例による製造方法は、第1金属パターンを形成する前に、緩衝層を形成するステップをさらに含む。たとえば、第1金属パターンを形成する前、すなわちベース基板上に第1金属フィルムを堆積する前に、マグネトロンスパッタリング方法又は化学気相堆積方法で緩衝層フィルムを形成して、パターニングプロセスで緩衝層を形成するステップをさらに含む。
【0098】
たとえば、緩衝層フィルムの堆積過程は、プラズマ強化化学気相堆積(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、PECVD)方法で、酸化物、窒素化物又は酸素窒化合物の膜層を連続的に堆積し、次にエッチングして緩衝層を形成するステップを含む。対応した反応ガスは、SiH、NH、N、SiHCl又はNである。PECVD方法で堆積すると、温度が低く、堆積速度が高く、成膜品質が高く、ピンホールが少なく、割れにくいという利点がある。
【0099】
たとえば、緩衝層の材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi、TiNb、窒化ケイ素、酸化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。
【0100】
たとえば、該導電パターン構造の製造方法はさらに、第1金属パターンの上面に第3金属パターンを形成するステップを含む。
【0101】
たとえば、第3金属パターンを形成する材料は、Mo、Nb、Ti、MoW、MoNb、MoTi、WNb、WTi及びTiNbのうちの少なくとも1種を含む。
【0102】
たとえば、第3金属パターンを形成する過程については、上記第1金属パターンを形成する過程を参照すればよいため、ここで詳細な説明を省略する。
【0103】
たとえば、先ず、緩衝フィルム、第1金属フィルム及び第3金属フィルムを順に形成し、次に1つのマスクを用いた1回のパターニングプロセスで緩衝層、第1金属パターン及び第3金属パターンを形成する。
【0104】
本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造及びその製造方法、アレイ基板及び表示装置は、以下の少なくとも1つの有益な効果がある。
(1)本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造では、第1金属パターンにその側面に被覆された第2金属パターンを形成することによって、第1金属パターンの側面の酸化を防止し、それにより、第1金属パターンの導電性低下の問題を避け、さらに製品の歩留まり低下の問題を避ける。
(2)本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造は、生産装置や外部環境への要件を低下させ、それにより導電パターン構造の製造プロセスの複雑性を低減させる。
(3)本開示の少なくとも一実施例による導電パターン構造は、生産コストを削減させる。
【0105】
なお、
(1)本開示の実施例の図面中、本開示の実施例に関する構造だけが示されて、ほかの構造については通常の設計を参照すればよい。
(2)明瞭さから、本開示の実施例を説明する図中、層又は領域の厚さが拡大又は縮小されるものであり、すなわち、これら図面は実際な比例に応じて作成するものではない。 なお、たとえば、層、膜、領域又は基板のような素子が別の素子「上」又は「下」に位置すると記載される場合、該素子は別の素子「上」又は「下」に「直接」に位置し、又は、中間素子が存在する。
(3)矛盾がない場合、本開示の実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせて、新しい実施例を構成することができる。
【0106】
以上は本開示の好ましい実施形態に過ぎず、本開示の保護範囲を制限するものではなく、本開示の保護範囲は前記特許請求の範囲の保護範囲を基準にする。
【0107】
本願は、2017年4月20日に提出した中国特許出願第201710263475.3号の優先権を主張し、ここで、上記中国特許出願に開示されている全内容が本願の一部として援用される。
【符号の説明】
【0108】
20 導電パターン構造
30 アレイ基板
40 表示装置
101 第1緩衝層
102 低抵抗金属
103 第2緩衝層
201 第1金属パターン
202 第2金属パターン
203 緩衝層
204 第3金属パターン
301 ベース基板
302 ゲート
303 ゲート絶縁層
304 活性層
305 第1ソース・ドレイン電極
306 第2ソース・ドレイン電極
307 有機絶縁層
308 パッシベーション層
309 第1電極
310 第2電極
311 共通電極ライン
312 第1絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10