(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】液体を節約する特徴を有する多層薄膜をスピンコーティングする方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220517BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220517BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20220517BHJP
B05D 1/40 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/68 P
H01L21/30 564D
H01L21/30 573
B05C11/08
B05D1/40 A
(21)【出願番号】P 2018563411
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 US2017040363
(87)【国際公開番号】W WO2018006011
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-24
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515220524
【氏名又は名称】カーボン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】フェラー,ボブ・イー
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,ジェイムズ・エム・イアン
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-106543(JP,A)
【文献】特開平03-041716(JP,A)
【文献】特開平07-022305(JP,A)
【文献】特開2001-326173(JP,A)
【文献】特開2004-273846(JP,A)
【文献】特開2007-214232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 11/08
G03F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンコーティング流体を薄膜に形成する際にスピンコーティング流体を保持するシステムであって、
回転式チャックと、
前記回転式チャック上の基板であって、内部領域及び外周縁部を有する基板と、
前記基板の前記外周縁部上の流体保持壁であって、前記基板の前記内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、前記回転式チャックの回転中に保持するように構成されている流体保持壁と
、
前記回転式チャックに前記流体保持壁を固定するように構成されている固定部材と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記流体保持壁と前記基板との間に封止部材を更に備え、前記封止部材が、前記基板と前記流体保持壁との間の流体封止を維持するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流体保持壁が、前記基板の前記外周に当接する底部分と、前記基板の前記内部領域上に堆積する前記スピンコーティング流体を前記回転式チャックの回転中に保持するように構成される角度で、前記基板の前記外周から
内部領域に向かって延在する又は前記基板に対して垂直に延在する上側部分とを有する請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記流体保持壁の前記上側部分が、前記基板に対し
て垂直に延在する第1の部分と、前記基板の前記内部領域に向かって延在する第2の部分とを備える請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記流体保持壁上の複数の流体案内フィンを更に備え、前記フィンが、
前記流体保持壁に対して、前記回転式チャックの回転速度が落ちた場合に、前記スピンコーティング流体を、前記基板の前記内部領域
内に案内させる角度で形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記回転式チャックが、外側封止部材と、前記回転式チャックと前記基板との間に圧力が低減された領域を形成するように構成されている内部チャネルとを備える請求項1から
5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記回転式チャックが、外周上に前記基板の取り外しを容易にするように構成されている切欠きを備える請求項1から
6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
スピンコーティング流体を薄膜に形成する際にスピンコーティング流体を保持するシステムであって、
回転式チャックと、
前記回転式チャック上の基板であって、内部領域及び外周縁部を有する基板と、
前記基板の前記外周縁部上の流体保持壁であって、前記基板の前記内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、前記回転式チャックの回転中に保持するように構成されている流体保持壁と
を備え、
前記流体保持壁が、前記基板の前記外周に当接する底部分と、前記基板の前記内部領域上に堆積する前記スピンコーティング流体を前記回転式チャックの回転中に保持するように構成される角度で、前記基板の前記外周から内部領域に向かって又は前記基板に対して垂直に延在する上側部分とを有し、前記流体保持壁の前記上側部分が、前記基板に対して垂直に延在する第1の部分と、前記基板の前記内部領域に向かって延在する第2の部分とを備えるシステム。
【請求項9】
前記流体保持壁と前記基板との間に封止部材を更に備え、前記封止部材が、前記基板と前記流体保持壁との間の流体封止を維持するように構成されている請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記流体保持壁上の複数の流体案内フィンを更に備え、前記フィンが、前記流体保持壁に対して、前記回転式チャックの回転速度が落ちた場合に、前記スピンコーティング流体を、前記基板の前記内部領域内に案内させる角度で形成されている請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転式チャックが、外側封止部材と、前記回転式チャックと前記基板との間に圧力が低減された領域を形成するように構成されている内部チャネルとを備える請求項8から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記回転式チャックが、外周上に前記基板の取り外しを容易にするように構成されている切欠きを備える請求項8から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記回転式チャックに前記流体保持壁を固定するように構成されている固定部材を更に備える請求項8から12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
薄膜を形成する際にスピンコーティング流体を保持する方法であって、
a)基板を載せた回転式チャックを回転させるステップであって、前記基板が内部領域及び外周縁部を有し、前記基板の前記外周縁部上に流体保持壁があるステップと、
b)前記回転式チャックを回転させている間に、スピンコーティング流体を基板の内部領域上に堆積させ、これにより薄膜を形成するステップと、
c)前記基板の前記内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、前記回転式チャックの回転中に前記流体保持壁で保持するステップと
を含み
、
前記薄膜を前記基板から取り外すステップを更に含む方法。
【請求項15】
前記基板の前記内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を前記回転式チャックの回転中に前記流体保持壁で保持するステップが、d)前記スピンコーティング流体が前記基板の前記内部領域をコーティングし、且つ前記流体保持壁によって保持されるような回転速度で、前記基板を載せた前記回転式チャックを回転させるステップと、e)前記流体保持壁によって保持された前記スピンコーティング流体の少なくとも一部を、前記基板の前記内部領域に流入させ、これにより前記薄膜の別の層を形成するように、前記回転式チャックの前記回転速度を変えるステップとを更に含む請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)及びe)を繰り返し、これにより複数のスピンコーティングされた層を備える薄膜を形成するステップを更に含む請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記スピンコーティング流体が第1のスピンコーティング流体を含み、本方法が、第2のスピンコーティング流体を前記基板へ追加するステップと、前記第1のスピンコーティング流体から形成された1つ又は複数の層及び前記第2のスピンコーティング流体から形成された1つ又は複数の層を有する薄膜を形成するように前記回転式チャックを回転させるステップとを更に含む請求項
14から
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記スピンコーティング流体がポリマーを含む請求項
14から
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記スピンコーティング流体が有機溶媒を含む請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記回転式のチャックから前記基板を取り外すステップと、前記基板上で前記スピンコーティング流体を加熱及び/又は硬化して薄膜とするステップとを更に含む、請求項
14から
19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のシステムを使用する、請求項
14から
20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年7月1日出願の米国仮特許出願第号62/357,614号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の開示はここに引用することでその全体が本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、スピンコーティングの方法及びシステムに関し、特に、薄膜をスピンコーティングするための、並びにスピンコーティングの方法において使用される溶液、例えば溶媒及び溶質を節約する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば半導体のデバイスの製造において、スピンコーティング処理が広く採用されている。シリコンウエハなどのベースプレート又は基板を、ターンテーブル又はチャック上でスピンさせる。基板上にコーティング用の液体を堆積(deposit)させ、基板の回転による遠心力によって、基板の表面全体を覆うように分散させる。
【0004】
回転式チャックをスピンコーティングチャンバ内に設置して、過剰なコーティング液体が基板の外周から出たら、このチャンバ内で回収するとしてもよい。一部のスピンコーティングチャンバは、過剰なコーティング液体を排出するための放出ドレーンを備える。しかし、この構成では、かなりの量のコーティング液体が失われる場合があり、このことにより製造コストが上昇し得る。
【発明の概要】
【0005】
一部の実施形態において、薄膜を形成する際にスピンコーティング流体を保持するシステムが提供される。このシステムは、回転式チャックと、回転式チャック上の内部領域及び外周縁部を有する基板と、基板の外周縁部上の流体保持壁とを備え、流体保持壁は、基板の内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、回転式チャックの回転中に保持するように構成されている。
【0006】
一部の実施形態では、流体保持壁と基板との間に封止部材があり、この封止部材は、基板と流体保持壁との間の流体封止を維持するように構成されている。流体保持壁は、基板の外周に当接する底部分と、上側部分とを有し、上側部分は、基板の内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、回転式チャックの回転中に保持するように構成された角度で、基板の外周から延在する。
【0007】
一部の実施形態では、流体保持壁の上側部分は、基板に対して概ね垂直に延在する第1の部分と、基板の内部領域に向かって延在する第2の部分とを備える。
【0008】
一部の実施形態では、流体保持壁上の流体案内フィンは、回転式チャックの回転速度が落ちた場合に、スピンコーティング流体を基板の内部領域に向けて方向転換させるように構成されている。流体案内フィンは、回転式チャックの回転速度が落ちた場合に、スピンコーティング流体を基板の内部領域に向けて方向転換させるように構成されている角度及び曲率で、流体保持壁から基板の内部領域に向かって延在していてもよい。
【0009】
一部の実施形態では、回転式チャックは、外側封止部材と、回転式チャックと基板との間に圧力が低減された領域を形成するように構成された内部チャネルとを備える。
【0010】
一部の実施形態では、回転式チャックは、外周上に基板の取り外しを容易にするように構成されている切欠きを備える。
【0011】
一部の実施形態では、固定部材は、回転式チャックに流体保持壁を固定するように構成されている。
【0012】
一部の実施形態では、薄膜を形成する際にスピンコーティング流体を保持する方法が提供される。本方法は、a)内部領域及び外周縁部を有する基板を載せた回転式チャックを回転させるステップであって、基板の外周縁部上に流体保持壁があるステップと、b)回転式チャックを回転させている間にスピンコーティング流体を基板の内部領域上に堆積させるステップと、c)基板の内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を、回転式チャックの回転中に流体保持壁で保持し、これにより薄膜を形成するステップとを含む。
【0013】
一部の実施形態では、基板の内部領域上に堆積するスピンコーティング流体を回転式チャックの回転中に流体保持壁で保持するステップは、d)スピンコーティング流体が基板の内部領域をコーティングし且つ流体保持壁によって保持されるような回転速度で、基板を載せた回転式チャックを回転させるステップと、e)流体保持壁によって保持されているスピンコーティング流体の少なくとも一部を、基板の内部領域に流入させるように、回転式チャックの回転速度を変えるステップとを更に含む。一部の実施形態では、ステップd)及びe)が繰り返される。
【0014】
一部の実施形態では、スピンコーティング流体は、基板上に堆積される。一部の実施形態では、基板は回転式のチャックから取り外され、スピンコーティング流体が基板上で加熱及び/又は硬化されて、薄膜が提供される。一部の実施形態では、薄膜は基板から取り外される。本方法は、本明細書に記載するシステムを使用してもよい。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に記載する方法によって形成された薄膜が提供される。
【0016】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、以下の説明とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】薄膜を形成する際にスピンコーティング流体を保持するシステムの側面図であって、一部の実施形態に係る回転式チャックと、このチャック上の基板と、この基板の外周縁部上の流体保持壁とを有する。
【
図4】
図1のシステムのチャック、基板、及び流体保持壁の詳細な断面斜視図である。
【
図5】
図1のシステムの概略図であって、一部の実施形態に係る流体リザーバ及び堆積ノズル、スピンナ、並びに制御装置を備える。
【
図6】一部の実施形態に係る複数のオペレーションを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態が示されている添付の図面及び例を参照して、以下に、本発明を説明する。ただし本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載する実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。そうではなく、これらの実施形態は、本開示が周到かつ完全となり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されている。
【0019】
全体を通して、同じ符号は同じ構成要素を指している。図面において、分かりやすくするために、特定の線、層、構成要素、要素、又は特徴の厚さが、誇張されている場合がある。
【0020】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態について記述することだけを目的としており、本発明を限定するものとなることを意図していない。本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、そうではないと文脈が明白に示さない限りは、複数形も含むことを意図している。用語「comprises(含む、備える)」及び/又は「comprising(含む、備える)」は、本明細書で使用するとき、述べられた特徴、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しないことが、更に理解されるであろう。本明細書で使用する場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された事物のうちの1つ又は複数の、ありとあらゆる組み合せを含む。本明細書で使用する場合、「XとYとの間」及び「ほぼXとYとの間」のような句は、X及びYを含むように解釈するべきである。本明細書で使用する場合、「ほぼXとYとの間」のような句は、「約Xと約Yとの間」を意味する。本明細書で使用する場合、「ほぼXからYまで」のような句は、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0021】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての用語(技術及び/又は科学用語を含む)は、本発明が属する技術の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されているような用語などの用語は、明細書及び関連技術の文脈におけるその意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈するべきであり、本明細書において明示的にそうであると定義しない限りは、理想化された又は過度に形式ばった意味に解釈するべきではないことが、更に理解されよう。周知の機能又は構造は、簡潔さ及び明晰さのために、詳細に記述しない場合がある。
【0022】
ある要素が別の要素に対して、「上にある」、「取り付けられている」、「接続されている」、「結合されている」、「接触している」などと言及される場合は、そのある要素はその他の要素に対して直接、上にある、取り付けられている、接続されている、結合されている、若しくは接触していることが可能であるか、又は介在する要素が散在してもよいことが、理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素に対して、例えば「直接上にある」、「直接取り付けられている」、「直接接続されている」、「直接結合されている」、「直接接触している」と言及される場合は、介在する要素は存在しない。別の特徴に「隣接して」配設されている構造又は特徴への言及は、その隣接する特徴と重なる又はその下にある部分を有してもよいことも、当業者には諒解されよう。
【0023】
本明細書では、図に示されるようなある要素又は特徴の別の要素又は特徴に対する関係を説明するために、説明を容易にする目的で、空間に関連する用語、例えば「下方」、「下」、「下側」、「上方」、「上側」などが使用される場合がある。これらの空間に関連する用語は、図に描写されている配向の他に、使用又は動作時のデバイスの異なる配向を包含することを意図していることが、理解されよう。例えば、図中のそのデバイスを上下逆にした場合、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」として記述される要素はこの結果、他の要素又は特徴の「上方」に配向されることになる。このように、「下方」という例示的な用語は、「上方」及び「下方」の両方の配向を包含し得る。デバイスはそれ以外で(90度回転されて又は他の配向で)配向されてもよく、本明細書で使用する空間に関連する記述語は、それに応じて解釈される。同様に、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は、本明細書では、そうでないと明確に示されない限り、説明の目的のためだけに使用される。
【0024】
「第1の」、「第2の」などの用語が、様々な要素を記述するために本明細書において使用される場合があるが、これらの要素は、それらの用語によって限定されるものではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下で検討される「第1の」要素を、本発明の教示から逸脱することなく「第2の」の要素と呼称することも可能である。一連の動作(又はステップ)は、そうでないと明確に示されない限り、特許請求の範囲又は図に提示される順序に限定されない。
【0025】
本発明を、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及び/又はコンピュータプログラム製品の、ブロック図及び/又はフローチャート図を参照して、以下に記述する。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック、並びにブロック図及び/又はフローチャート図中のブロックの組み合せを、コンピュータプログラム命令によって実装できることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令を汎用コンピュータ、専用コンピュータ、及び/又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供して、マシンを作り出すことができ、この場合、このコンピュータ及び/又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行される命令は、ブロック図及び/又はフローチャートの1つ又は複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実装するための手段を創出する。
【0026】
これらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータ又はプログラム可能データ処理装置に特定の様式で機能するように指示できる、コンピュータ可読メモリに記憶することもでき、この場合、コンピュータ可読メモリに記憶された命令は、ブロック図及び/又はフローチャートの1つ又は複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実施する命令を含む製品を作り出す。
【0027】
コンピュータプログラム命令を、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置にロードし、一連の作業ステップをこのコンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行させるようにして、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令がブロック図及び/又はフローチャートの1つ又は複数のブロックにおいて特定された機能/動作を実装するためのステップを提供するような、コンピュータ実装プロセスを生み出すこともできる。
【0028】
したがって、本発明は、ハードウェア及び/又はソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、等を含む)において具現化することができる。更に、本発明の実施形態は、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取可能非一時的記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとってもよく、この媒体においては、命令実行システムによって又はこれと関連して使用される、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取可能プログラムコードが具現化されている。
【0029】
コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取可能媒体は、例えば、限定するものではないが、電子的な、光学的な、電磁的な、赤外線の、又は半導体の、システム、装置、又はデバイスであり得る。コンピュータ読取可能媒体のより詳細な例(非網羅的なリスト)には、以下、すなわち、1つ若しくは複数のワイヤを有する電気接続部、ポータブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM若しくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、及び可搬のコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)が含まれるであろう。
【0030】
図1~
図5に図示するように、薄膜を形成するときにスピンコーティング流体を保持するためのシステム100は、回転式チャック102と、このチャック上の基板104と、流体保持壁106とを備える。基板104は、内部領域104Aと、外周縁部104Bとを備える。流体保持壁106は、基板104の外周縁部104B上に位置している。
図3に示すように、システム100は、接続ピン108Aによってチャック102に接続される基部コネクタ108を備えてもよい。
図5に図示するように、本システムは、スピンコーティング流体を溜めておくための流体リザーバ150と、堆積ノズル(deposition nozzle)152とを備えてもよい。基部コネクタ108が、チャック102を、チャック102を回転させるスピンナ(spinner)154に接続させてもよい。制御装置156は、スピンナ154及び流体リザーバ150/堆積ノズル152と通信可能となっていてもよい。基板104と流体保持壁106との間の流体封止を維持するために、流体保持壁106と基板104との間に、Oリングなどの封止部材110が位置してもよい。流体保持壁106上には流体案内フィン112があり、これはピン114などの固定具によって、チャック102上の所定位置に保持されてもよい。
【0031】
図4に示すように、流体保持壁106は、基板104の外周に当接する底部分106Aと、上側部分106Bとを備える。底部分106Aは、基板104から外側へ延在しており、基板104と角度θ1で交わる。流体保持壁106の上側部分106Bは、基板104に対して概ね垂直に延在する部分106B’と、この部分106B’から角度θ2で基板104の内部領域に向かって延在する部分106B’’とを備え、これにより流体保持キャビティ116が画定される。
図3及び
図5に図示するように、チャック102は、外側封止部材102Aと、内部チャネル102Bと、切欠き(notch)102Cとを備える。
【0032】
この構成では、チャック102上に基板104が位置し、内部チャネル102B内には、例えば基部コネクタ108に接続された真空源又はチャネルへの他の好適な接続を使用して、圧力が低減された領域が形成されてもよい。この結果、基板104は、内部チャネル102B内の低減された圧力によって、チャック102上に保持することができる。流体保持壁106は、基板104及びチャック102上に、ピン114によって保持されてもよい。ピン114が保持壁106をチャック102上に保持するように図示しているが、保持壁106及びチャック102上で協働する磁石などの他の固定機構を使用してもよいことが理解されるべきである。
【0033】
図6を参照すると、チャック102は基板104及び流体保持壁106と一緒に回転する(ブロック200)。この回転中に、基板104の内部領域上に、堆積ノズル152によってスピンコーティング流体を堆積する(ブロック202)。チャック102が回転するにつれ、流体は基板104をコーティングし、基板104の内部から周縁部へと拡がる。回転中に流体保持壁106によって、過剰なスピンコーティング流体が保持される(ブロック204)。より詳細には、スピンコーティング流体は、上側部分106Bによって形成されたキャビティ116内に保持され得る。図示するように、上側部分106Bは、角度θ1が約90度になるように基板104に対して概ね垂直に延在する部分106B’と、この部分106B’から角度θ2で基板104の内部領域に向かって延在する別の部分106B’’とを備える。ただし、他の構成や他の角度θ1及びθ2を使用することができる。例えば、流体保持壁106を、一つの連続的に湾曲した壁としてもよいし、又は基板104の内部領域に向かって延在する部分の無い上向きに延在する単一の壁としてもよい。更に、キャビティ116は、図示するように1つの側(one side)が開いていてもよいし、又は1つの側よりも多く開いてもスピンコーティング流体をその中に保持するものであってもよい。
【0034】
一部の実施形態では、チャック102は、スピンコーティング流体が基板をコーティングし且つ流体保持壁106によって保持されるような速度で回転してもよく(ブロック206)、次いで、流体保持壁106によって保持されるスピンコーティング流体の少なくとも一部が逆に流れて基板の内側に入るように、チャック104の回転速度を変更してもよい(例えば、速度を低減してもよく、及び/又はスピンの方向を逆にしてもよい)(ブロック208)。このように、スピンコーティング流体を基板104の内側から流体保持壁106へと流し(基板104をコーティングする)、次いで、スピンコーティング流体を流体保持壁106から逆に基板104の内側に向かって流して、基板104上に追加の層が形成するように、スピンコーティング流体に対する遠心力を周期的に増減させてもよいし、又はスピン方向を逆にしてもよい。より高い回転速度で、スピンコーティング流体を基板104の内側から外側へと全体的に流し、流体保持壁106内に保持させ、次いで、流体保持壁106に保持されたスピンコーティング流体が基板104の内側へ戻るように、より低い回転速度で、スピンコーティング流体を基板104の内側又は中心に向かって全体的に流して、基板上に複数の追加のコーティング層を提供するようにブロック206及び208を繰り返してもよい。
【0035】
流体案内フィン112は、基板104の内部領域に向かってスピンコーティング流体を方向転換させるように構成されている。例えば、流体案内フィン112は、流体保持壁106に対して、チャック102がある方向に又はある速度でスピンするとき、スピンコーティング流体が少なくともキャビティ116に流入し、チャック102がより低い速度で又は異なる方向にスピンするとき、スピンコーティング流体が基板104の内側へと更に案内されるような角度で形成されてもよい。ただし、フィン112は任意選択のものであり、一部の実施形態では、流体保持壁106による流体の保持及び方向転換は、フィン112無しで達成され得ることが理解されるべきである。
【0036】
この結果により得られる多層にスピンコートされた材料は、基板104上に留まったままでもよい。しかし一部の実施形態では、このスピンコートされた材料を基板104から持ち上げて取り外し、これにより薄膜またはシートの材料を提供するとしてもよい。
【0037】
したがって、スピンコーティング流体の損失を低減しながら、多層にスピンコートされた材料を形成することができる。従来のスピンコーティングの方法では、基板の表面全体を覆うスピンコーティング材料の単一の層を追加するのに、過剰なスピンコーティング材料がスピンにより基板の側部から溢れ出ていた。過剰な流体がスピンによって溢れ出ることなくスピンコーティング溶液の複数の層をコーティングするために流体保持壁106を使用することができるが、これは、スピンコーティング流体が流体保持壁106内に保持されるからである。チャック102の回転速度を変化させて、過剰な流体を後続の層の形成に使用してもよく、保持壁106内に保持された流体を基板104に戻し、次いで、チャック102を更に回転させて追加の層をスピンコーティングしてもよい。本明細書に記載する方法及びシステムは、1回のコーティング塗布では所望の厚さにコーティングできない材料、例えば低溶解性材料にとって特に有用な場合があり、複数の層を効率的に形成することは、所望の厚さを形成するのに有用な場合がある。また、壁106内での流体保持により、無駄になるスピンコーティング流体が低減され、このことは、特に貴重な又は高価なスピンコーティング材料の場合に望ましい場合がある。
【0038】
スピンコーティング流体は、スピン処理中に溶媒が蒸発又は部分的に蒸発して溶質の薄い固形物を形成するような溶液であってもよく、この固形物はある程度の残留溶媒を含んでもよい。余ったスピンコーティング液体は、スピンにより保持壁106内に入り、ここではもはやフィルムと相互作用しない。その後チャック102をスピンさせる速度を落とすか又はスピンを停止し、これにより、保持壁106内の液体が基板104の領域を覆うように再び拡散する。流体のモーメントにより、チャック102のスピンを落とした後、ある程度の時間、流体はスピンしたままとなり得る。任意選択の流体案内フィン112により、流体の速度を更に落とし、流体を基板104の内部領域へと方向転換させてもよい。
【0039】
例えば、一部の実施形態では、スピンコーティング流体は、ポジティヴ及びネガティヴのフォトレジストを含むフォトレジストを含む溶液であってもよく、このフォトレジストの例としては、限定するものではないが、SU-8などのエポキシフォトレジスト、ノボラック樹脂及びレゾール樹脂などのフェノール重合体等が挙げられ、任意選択的に、溶解抑制剤(例えば、ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル(DNQ)、ポリアミド又はセルロースアセテートのポリマーなどの気体分離膜ポリマー、バッテリ内のポリマーフィルム分離層用のポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ塩化ビニル)、TEFLON AF1600(商標)又はTEFLON AF2400(商標)のフルオロポリマーフィルムのような非晶性熱可塑性フルオロポリマーなどの、特にパーフルオロポリエーテル(PFPE)フィルム又はシリコーンポリマーフィルムを形成するための、PFPEのフルオロポリマー、及びDuPontから市販されているフルオロポリマーなどの、他の成分を含有している。追加の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン又はポリテトラフルオロエチレンと2、2-ビストリフルオロメチル-4、5-ジフルオロ-1、3-ジオキソールのコポリマーなどのパーフルオロポリエーテルポリマー、ポリ(メチルグルタルイミド)、ポリヒドロキシスチレン系ポリマー、ナノ構造ポリスチレン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(PS-b-PMMA)などのブロックコポリマー等が挙げられる。
【0040】
任意の好適な溶媒を使用できる。例としては、限定するものではないが、アセトン、ガンマ-ブチロラクトン、シクロペンタノンなどの有機溶媒、Fluorinert(登録商標)、Flutec(登録商標)、Galden(登録商標)、及びVertrel(登録商標)などの過フッ素化有機溶媒、パーフルオロ-(2-パーフルオロ-n-ブチル)テトラヒドロフラン、ギ酸とジクロロメタンの混合物、等が挙げられる。溶媒中にポリマーを有する溶液は、ポリマー粉末を溶媒とともに撹拌し、この混合物をロールさせる(rolling)又はこの混合物を超音波バス内に置くことによって、調製されてもよい。
【0041】
好適なポリマー及び溶媒の追加の例としては、限定するものではないが、米国特許第8,980,418号、同第8,444,768号、同第7,449,280号、及び同第7,282,324号に記載されているものが挙げられる。
【0042】
スピンコーティングされた材料に対して、熱処理、光焼成、UV照射等のような硬化ステップを含む、追加の処理ステップを行ってもよい。例えば、フィルムを例えば周囲温度から140℃まで数時間にわたって加熱することによって、フィルムを硬化させ、その後140℃で1時間維持してもよい。フィルムを次いで2時間の傾斜時間で周囲温度から170℃までベーキングしてもよく、この170℃が48時間維持される。
【0043】
図5では、堆積ノズル152はチャック102の中心に図示されているが、このノズル152はチャック102の上方の任意の位置に配置してもよい。一部の実施形態では、連続的に溶媒を補充するために、このノズル152を使用してもよい。1つの層がコーティングされるたびに溶媒の一部が蒸発によって除去されるので、スピンコーティング流体に溶液を追加することによって、より均一な流体レベルを維持することが望ましい場合がある。一部の実施形態では、ノズル152は、回転させるステップ中に追加の溶媒を加えることができるように、基板104の縁部の部分の上方に配置してもよい。溶媒がスピン処理中に基板104の中央領域内に追加される場合、スピンコーティング流体のフィルムは完全には乾かない傾向があり、複数の層を形成することが難しい場合がある。一部の実施形態では、ノズルによって基板104に異なるスピンコーティング流体を追加して、異なる材料の交互の層を形成してもよい。先行する層に使用されたスピンコーティング流体は、流体保持壁106内に留まってもよく、又は、例えば開口又は排出路を開けることによって、スピンコーティングシステム100から排出してもよい。
【0044】
基板104は、任意選択の硬化ステップの前に又は後に、流体保持壁106を取り外すことによって、及びチャック102の切欠き102Cの上方で基板104を把持し基板104を持ち上げることによって、チャック102から取り外してもよい。次いで、スピンコーティングされた薄膜を基板104から取り外し、任意選択的に他のデバイスに適用してもよく、又は別法として、フィルムは他の使用のために基板上に残っていてもよい。
【0045】
前述の内容は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の例としての実施形態をいくつか記述してきたが、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを、当業者は容易に諒解するであろう。したがって、かかる修正は全て、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲内に含まれることを意図している。したがって、上記の内容は本発明を例示するものであり、開示される特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないこと、並びに、開示される実施形態並びに他の実施形態に対する修正は、付属の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図していることを、理解されたい。本発明は以下の特許請求の範囲によって規定され、これには請求項の等価物が含まれるものとする。