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特許7074695トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物含有組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20220517BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20220517BHJP
   C07C 211/08 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C08F10/00 510
C07C211/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019011214
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019059795
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊幸
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 1/00-5/06
C08F 4/00-346/00/00
C07C 1/00-409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと式(1)で示されるアミン化合物とを反応させることを含み、かつ水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対して等当量以上の式(1)で示されるアミン化合物を用いる、式(1)で示されるアミン化合物(式中、R1は炭素数1~30のアルキル基を表し、2およびR3は互いに同じでも異なっていてもよい炭素数8~30のアルキル基を表す)および式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物(式中、R1、R2およびR3は前記に同じ)を含有する組成物の製造方法
【化1】
【請求項2】
前記組成物における式(1)で示されるアミン化合物および式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物の合計モル数に対する式(1)で示されるアミン化合物の含有量は、1~30モル%の範囲である、請求項1に記載の製造方法
【請求項3】
2およびR3が炭素数14以上である、請求項1または2に記載の製造方法
【請求項4】
前記組成物は、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含有しない、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法
【請求項5】
前記組成物は、エーテル化合物を含有しない、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法
【請求項6】
水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対する式(1)で示されるアミン化合物の量比が1.01~1.5当量の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記組成物は、オレフィンおよびジエンから成る群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合助触媒用である、請求項1~のいずれかに記載の製造方法
【請求項8】
水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと式(1)で示されるアミン化合物とを反応させることを含み、かつ水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対して等当量以上の式(1)で示されるアミン化合物を用いて、式(1)で示されるアミン化合物(式中、R 1 は炭素数1~30のアルキル基を表し、R 2 およびR 3 は互いに同じでも異なっていてもよい炭素数8~30のアルキル基を表す)および式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物(式中、R 1 、R 2 およびR 3 は前記に同じ)を含有する組成物を得る工程、
前記工程で得た組成物を助触媒として使用して、オレフィンおよびジエンから成る群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合する工程を含む、重合体の製造方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィンやジエンの重合の助触媒として使用される、有用なトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物含有組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオレフィンやジエンの重合用触媒として、メタロセン化合物やジイミン錯体、フェノキシ錯体などの非メタロセン系金属錯体触媒が使用されることか数多く報告されている。これらの金属錯体触媒を用いた触媒系の多くで、メチルアルミノキサンやテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物が活性種を安定化させるための助触媒として使用されている。テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物はメチルアルミノキサンよりも熱安定性に優れることや、金属錯体に対して使用される量論比がメチルアルミノキサンよりも少なくて済むことから、溶液重合系での助触媒として広く使用されている。
【0003】
また、金属錯体触媒によるオレフィンやジエンの重合で使用される溶媒としては、通常非極性の炭化水素溶剤が使用されている。特に臭気や毒性の観点からトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒よりもヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶剤への切り替えも進んでいる。
【0004】
しかしながら、通常のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物はトルエンなどの芳香族炭化水素溶剤に難溶であること、溶解したとしても、ボレート化合物が溶解した濃厚相と溶解してない希薄相の液―液2相に分離することが知られている(特許文献1)。
【0005】
またヘキサンやヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤には難溶であることから、脂肪族炭化水素溶媒に可溶なテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物が望まれ、提案されている(特許文献2)。特許文献2に記載のジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートやビス(水添牛脂アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは炭化水素に易溶な化合物として有用である。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法ではリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと別途調整したジアルキルメチルアミンの塩酸塩とを反応させることで調製されており、この方法では水に難溶な原料のリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートあるいは長鎖脂肪族アミンの塩酸塩が生成物に残存し、これらが触媒毒となり、重合用の助触媒として使用した際に十分な活性を示さないことが懸念されていた。実際、特許文献2の実施例2ではエーテルが生成物中に残存しており、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのジエチルエーテル錯体が残存していることが推察される。
【0007】
特許文献3では、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアルカリ金属塩とアミンとを混合したのちにプロトン酸で処理するアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート誘導体の製造方法が開示されている。しかし、この方法でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアルカリ金属塩のエーテル錯体あるいは長鎖脂肪族アミンのプロトン酸塩が生成物中に残存し、触媒毒として作用することが懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-104335
【文献】特表2000-507157
【文献】特表2007-530673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、これら従来技術を鑑み、触媒毒となる化合物の残存を抑制したトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物含有組成物およびその工業的製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物組成物の製造方法について、鋭意検討した結果、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを製造用原料としてトリアルキルアミンと反応させることで本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、オレフィンやジエンの重合用の助触媒として有用なトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含有する組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、式(1)で示されるアミン化合物(式中、R1は炭素数1~30のアルキル基を表す。R2およびR3は互いに同じでも異なっていてもよい炭素数8~30のアルキル基を表す)および式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物(式中、R1、R2およびR3は前記に同じ)を含有する組成物に関する。
【0013】
【化1】
【0014】
1は炭素数1~30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~20のアルキル基を表す。R2およびR3は互いに同じでも異なっていてもよい炭素数8~30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数14~30のアルキル基を表す。
【0015】
式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物の具体例は以下の通りである。
ジ-n-オクチルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ-n-オクチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(2-エチルヘキシル)アミンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリノニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ-n-デシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリウンデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジドデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリト゛デシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ硬化牛脂アルキル(C14~18)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0016】
式(1)で示されるアミン化合物および式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物の合計モル数に対する式(1)で示されるアミン化合物の含有量は、例えば、1~30モル%の範囲であり、好ましくは2~25モル%の範囲である。式(1)で示されるアミン化合物は、特許文献2に記載のジアルキルメチルアミンの塩酸塩と異なり、触媒毒とはなり得ない。そのため、本発明の組成物においては、式(2)で示されるトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物から式(1)で示されるアミン化合物を分離除去することなく、そのまま含んだ状態で、重合体の製造に用いることができる。
【0017】
本発明の組成物は、エーテル錯体を形成して触媒毒となり得る、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物あるいはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの金属塩を含有しないことが好ましい。さらに、本発明の組成物は、触媒毒となり得る、エーテル化合物を含有しないことが好ましい。エーテル化合物を含有しないとは、1H-NMR分析の結果、エーテル化合物が検出されないことを意味する。
【0018】
本発明は、本発明の組成物の製造方法を包含する。
この製造方法は、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと式(1)で示されるアミン化合物とを反応させることを含み、かつ水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対して等当量以上の式(1)で示されるアミン化合物を用いる方法である。
【0019】
上記製造で原料として用いられる水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは公知化合物であり、製造方法には特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの金属塩をプロトン酸で処理する方法が挙げられる。
【0020】
水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの製造で使用されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの金属塩としては、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、などのアルキル金属塩の他、マグネシウムビス[テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]あるいはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)マグネシウムクロライドやテトラキス(ペンタフルオロフェニル)マグネシウムブロマイドなどのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)マグネシウムハライドといったアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらは精製品を用いてもよいし、当該化合物を調整した溶液を用いてもよいが、最終的に得られるボレート化合物(2)は炭化水素溶媒に易溶であり、再結晶などによる精製が困難であることから、できるだけ純度の高いボレートの金属塩を用いることが好ましい。
【0021】
水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの製造に際に使用される溶媒としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの金属塩が溶解しかつ、水とは混和しない溶媒であれば特に限定されないが、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を用いることが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、他のエーテル系溶媒あるいはトルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素溶媒との混合溶媒として使用してもよい。
【0022】
また、ボレートの金属塩を処理する際に使用されるプロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
【0023】
プロトン酸の使用量は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの金属塩に対して等量以上であれば特に問題ないが、処理後の有機相に使用したプロトン酸が残存しないように、水洗後の水相のpHが3以上になるまで有機相を水洗することが好ましい。水相のpHが3未満の場合だと、有機相に使用したプロトン酸塩が残存し、後述のアミン化合物(1)との反応において、アミンのプロトン酸塩が生成し、ボレート化合物(2)中に残存することで、重合時の触媒毒となることが懸念される。
【0024】
本発明の製造方法においては、上記のように調製された水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの溶液を、そのままアミン化合物(1)との反応に使用することができる。
【0025】
本発明の製造方法に使用される一般式(1)で示されるアミン化合物は、反応により生成した式(2)のボレート化合物が、溶媒である炭化水素に溶解するような化合物であれば特に限定されない。具体的なアミン化合物としては、ジ-n-オクチルメチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、トリノニルアミン、ジデシルメチルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリウンデシルアミン、ジドデシルメチルアミン、トリト゛デシルアミン、ジ硬化牛脂アルキル(C14~18)メチルアミン、ジオクタデシルメチルアミンなどが挙げられる。
【0026】
中でも炭素数が14以上のアルキル基を2つ以上有するアミン化合物(1)を用いて得られるボレート化合物(2)は脂肪族炭化水素溶媒にも可溶となる。
【0027】
本発明の製造方法においては、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対して等当量以上の式(1)で示されるアミン化合物を用いる。そうすることで、未反応の水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが生成物である組成物中に残存することを抑制できる。水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートに対するアミン化合物(1)の使用量は、好ましくは1.01~1.5当量の範囲であり、より好ましくは1.02~1.4当量の範囲である。1.0当量未満の場合は、エーテル化合物あるいは水が付加した水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが生成物である組成物中残存し、重合用助触媒として使用した際に、この化合物が触媒毒として作用する虞がある。
【0028】
本発明の製造方法における、反応温度及び時間は特に限定されないが、好ましくは10~40℃、10分以上であることができるが、この範囲に限定される意図ではない。
【0029】
反応終了後,反応液は無水硫酸ナトリウムあるいは無水硫酸マグネシウムなどの脱水剤で脱水した後、溶媒を除去することで、アミン化合物(1)およびトリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物(2)を含有する生成物である組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の組成物に含まれるボレート化合物(2)は炭化水素溶媒などを用いて再結晶することもできる。但し、R2およびR3が炭素数10以上のアルキル基であるボレート化合物(2)は、常温で液体状の化合物である、再結晶による精製は、R2およびR3が炭素数10未満のアルキル基であるボレート化合物(2)に限られる。
【0031】
本発明の組成物は、アミン化合物(1)およびボレート化合物(2)を含有し、炭化水素溶媒に易溶であり、好ましくは、触媒毒となるアミンのプロトン酸塩やエーテル化合物を含有しない。そのため、オレフィンやジエンの重合用助触媒として有用である。
【0032】
本発明は、上記本発明の組成物を助触媒として使用して、オレフィンおよびジエンから成る群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合することを含む、重合体の製造方法を包含する。ボレート化合物(2)を助触媒として使用して、オレフィンおよびジエンから成る群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを重合することは、例えば、特許文献2に記載され公知であるので、本発明の組成物を助触媒として使用すること以外は、特許文献2に記載の重合体の製造方法を参照して、本発明の重合体の製造方法を実施できる。
【実施例
【0033】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
1H-NMRおよび19F-NMR:日本電子株式会社(JEOL)製ECA-500SS
【0035】
[実施例1]
カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(含水量5.9wt%)16.5g(21.6mmol)をジイソプロピルエーテル30mLで溶解し、4N-塩酸15mLで2回処理した。分相した有機相は、水相のpHが3以上になるまで水洗を実施した。得られた有機相の19F-NMR内標法による分析にて、水素化テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの回収率は100%であった。
【0036】
上記で得られた溶液にジ硬化牛脂アルキルメチルアミン(商品名:リポミン M2HT(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ))12.2g(22.7mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。反応液は飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムを用いて脱水後、減圧濃縮した。濃縮後得られた粘ちょう液体は、トルエンで溶解し再濃縮をし、25.9gの褐色の粘ちょう液体を得た。
【0037】
得られた粘ちょう液体の19F-NMR分析からボレートの純度は99.9%であり、2,3,4,5,6-ペンタフルオロトルエンを内標に用いた、粘ちょう液体中のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)含量は49.9wt%であった。2,3,4,5,6-ペンタフルオロトルエンを内標に用いた、1H-NMR測定の結果から、ジ硬化牛脂アルキルメチルアミン含量が46.5wt%含まれており、溶媒として使用したジイソプロピロピルエーテルは検出されなかった。本分析結果から本化合物はジ硬化牛脂アルキルメチルアミンが18mol%含まれているジ硬化牛脂アルキルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることを確認した。なお、収率は99%であった。
【0038】
以下に、ジ硬化牛脂アルキルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのNMR分析データを示す。
【0039】
19F-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): -132.9(t,8F)、-164.5(t,4F)、-168.3(t,8F)
1H-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): 0.85(t,6H)、1.20~1.44(m,56H)、1.84(m,4H)、3.04(s,3H)、3.30(m,4H)
また、溶媒に使用したジイソプロピルエーテルは検出されなかった。
なお、本化合物はヘキサンと任意の割合で混和した溶液を形成することを確認した。
【0040】
[実施例2]
ジ硬化牛脂アルキルメチルアミンに替えてジデシルメチルアミンを使用した以外は、実施例1と同様の方法にて製造を実施した。その結果、粘ちょう液体のボレート化合物を98%の収率で得た。19F-NMRおよび1H-NMR分析の結果、本化合物はジデシルメチルアミンが10mol%含まれているジデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることを確認した。
【0041】
以下に、ジデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのNMR分析データを示す。
【0042】
19F-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): -132.9(t,8F)、-164.5(t,4F)、-168.3(t,8F)
1H-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): 0.83(t,6H)、1.20~1.44(m,28H)、1.85(m,4H)、3.08(s,3H)、3.35(m,4H)
【0043】
また、溶媒に使用したジイソプロピルエーテルは検出されなかった。
なお、本化合物はヘキサンには難溶であるものの、トルエンと任意の割合で混和した溶液を形成することを確認した。
【0044】
[実施例3]
ジ硬化牛脂アルキルメチルアミンに替えてジ-n-オクチルメチルアミンを使用した以外は、実施例1と同様の方法にて製造を実施後、ヘキサンにて晶析することでジ-n-オクチルメチルアミンが5mol%含まれているジ-n-オクチルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを94%の収率で得た。
【0045】
以下に、ジ-n-オクチルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのNMR分析データを示す。
【0046】
19F-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): -132.9(t,8F)、-164.5(t,4F)、-168.3(t,8F)
1H-NMR(アセトン-d6) δ(ppm): 0.83(t,6H)、1.18~1.44(m,20H)、1.86(m,4H)、3.11(s,3H)、3.38(m,4H)
【0047】
また、溶媒に使用したジイソプロピルエーテルは検出されなかった。
なお、本化合物はヘキサンには難溶であるものの、トルエンと40wt%の溶解度で溶液を形成することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、オレフィンやジエンの重合用助触媒として有用である、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート化合物を含有する組成物に関連する分野に有用である。