(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20220517BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220517BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2019125707
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2019-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591115475
【氏名又は名称】株式会社三菱総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】一ノ宮 弘樹
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】山本 章裕
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022807(JP,A)
【文献】特開2016-134939(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-10/10, 30/00-30/08, 50/00-50/20, 50/26-99/00
G16Z 99/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する個別情報生成部と、
複数の個別調整可能能力を用いて、確率を用いた統合調整可能能力を予測する総合情報生成部と、
前記個別調整可能能力を出力し、また前記統合調整可能能力を確率とともに出力する出力部と、
を備え、
前記調整可能能力予測モデルは、前記リソースにおける電力生成実績を用いて生成される電力生成モデルと、当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて生成される電力需要モデルとを有し、
前記個別情報生成部は、前記電力生成モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力生成予想と前記リソースの電力生成能力との差分及び前記電力生成予想と前記電力需要モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力需要予想との差分のうち小さい方を前記リソースの個別調整可能能力として予測する情報処理装置。
【請求項2】
前記個別情報生成部は個別調整可能能力を確率とともに生成し、
前記出力部は前記個別調整可能能力を確率とともに出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測変数情報は、気温、天候及びカレンダー情報のいずれか1つ以上を含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記リソースは操業情報を有する操業施設の自家発電機を含み、
操業施設に設置された自家発電機からなるリソースに対する調整可能能力予測モデルは、適用される予測変数情報として操業施設における操業情報を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
電力の価格を予測する価格予測部を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記リソースを実際に稼働する際に、優先順位に基づいてリソースを稼働する稼働部を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
予め設定された条件にしたがって、所定の時間又は時間帯における入札に適したリソースの組み合わせを決定する決定部を備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は余力電力の期待値を出力する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
モデル生成部によって、リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースの調整可能能力予測モデルを生成する工程と、
個別情報生成部が、前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する工程と、
総合情報生成部によって、複数の個別調整可能能力を用いて、確率を用いた統合調整可能能力を予測する工程と、
出力部によって、前記個別調整可能能力を出力する工程と、
出力部によって、前記統合調整可能能力を確率とともに出力する工程と、
を備え、
前記調整可能能力予測モデルは、前記リソースにおける電力生成実績を用いて生成される電力生成モデルと、当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて生成される電力需要モデルとを有し、
前記個別情報生成部は、前記電力生成モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力生成予想と前記リソースの電力生成能力との差分及び前記電力生成予想と前記電力需要モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力需要予想との差分のうち小さい方を前記リソースの個別調整可能能力として予測する情報処理方法。
【請求項10】
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記プログラム
が情報処理装置
を、
リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する個別情報生成部と、
複数の個別調整可能能力を用いて、確率を用いた統合調整可能能力を予測する総合情報生成部と、
前記個別調整可能能力を出力し、また前記統合調整可能能力を確率とともに出力する出力部
として機能させ、
前記調整可能能力予測モデルは、前記リソースにおける電力生成実績を用いて生成される電力生成モデルと、当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて生成される電力需要モデルとを有し、
前記個別情報生成部は、前記電力生成モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力生成予想と前記リソースの電力生成能力との差分及び前記電力生成予想と前記電力需要モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力需要予想との差分のうち小さい方を前記リソースの個別調整可能能力として予測するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提供可能な電力の予測情報を出力可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来は電力会社等の有する大規模な発電所が独占的に電力を供給していたが、分散型電源の導入拡大により、電力会社以外の事業者等が電力を供給できるようになっている。現在、バーチャルパワープラント(VPP)が提案されており、工場や家庭内に設置した太陽光発電システムや蓄電池、自家発電等の電力を、電力の需給により効率的に役立てる仕組みが提案されている。
【0003】
電力を供給する際には入札等で決定された量の電力を供給することが要求される。例えば特許文献1では、制御装置が、電力需要地において発電される電力、又は、電力需要地において消費される電力のうちの少なくともいずれかに関する指標の予測情報であって、第1の時点において予測される第1の予測情報と、第1の時点よりも後の第2の時点において予測される第2の予測情報と、を記憶する予測情報記憶手段を備え、第2の時点より前に、第1の予測情報と第1の時点における実績情報との関係に基づいて、予測情報記憶手段に記憶された第2の予測情報を補正することで、蓄電装置の充放電を制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、個々の蓄電池での予想を行うに過ぎず、複数のリソースを組み合わせて総合的に供給される電力を予想することは提案されていない。
【0006】
本願では、複数のリソースによって総合して供給できる予想電力を出力可能な情報処理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による情報処理装置は、
リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する個別情報生成部と、
前記個別調整可能能力を出力する出力部と、
を備え、
リソースの電力生成能力も用いて前記個別調整可能能力を予測してもよい。
【0008】
本発明による情報処理装置において、
複数の個別調整可能能力を用いて統合調整可能能力を予測する総合情報生成部をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明による情報処理装置において、
前記総合情報生成部は統合調整可能能力を確率とともに生成し、
前記出力部は前記統合調整可能能力を確率とともに出力してもよい。
【0010】
本発明による情報処理装置において、
前記個別情報生成部は個別調整可能能力を確率とともに生成し、
前記出力部は前記個別調整可能能力を確率とともに出力してもよい。
【0011】
本発明による情報処理装置において、
前記予測変数情報は、気温、天候及びカレンダー情報のいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0012】
本発明による情報処理装置において、
前記リソースは操業情報を有する操業施設の自家発電機を含み、
操業施設に設置された自家発電機からなるリソースに対する調整可能能力予測モデルは、適用される予測変数情報として操業施設における操業情報を含んでもよい。
【0013】
本発明による情報処理装置は、
電力の価格を予測する価格予測部を備えてもよい。
【0014】
本発明による情報処理装置は、
前記リソースを実際に稼働する際に、優先順位に基づいてリソースを稼働する稼働部を備えてもよい。
【0015】
本発明による情報処理装置において、
予め設定された条件にしたがって、所定の時間又は時間帯における入札に適したリソースの組み合わせを決定する決定部を備えてもよい。
【0016】
本発明による情報処理装置において、
前記出力部は余力電力の期待値を出力してもよい。
【0017】
本発明による情報処理装置において、
前記モデル生成部は、リソースの電力生成能力、リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルを生成してもよい。
【0018】
本発明による情報処理装置において、
前記調整可能能力予測モデルは、前記リソースにおける電力生成実績を用いて生成される電力生成モデルと、当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて生成される電力需要モデルとを有し、
前記個別情報生成部は、前記電力生成モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力生成予想情報及び前記電力需要モデルに予測変数情報を適用することで得られた電力需要予想情報と、前記リソースの電力生成能力とを用いて、前記リソースの個別調整可能能力を予測してもよい。
【0019】
本発明による情報処理方法は、
モデル生成部によって、リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースの調整可能能力予測モデルを生成する工程と、
個別情報生成部が、前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する工程と、
出力部によって、前記個別調整可能能力を出力する工程と、
を備え、
リソースの電力生成能力も用いて前記個別調整可能能力を予測してもよい。
【0020】
本発明によるプログラムは、
情報処理装置にインストールされるプログラムであって、
前記プログラムがインストールされた情報処理装置は、
リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルを生成するモデル生成部と、
前記調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、前記リソースの個別調整可能能力を予測する個別情報生成部と、
前記個別調整可能能力を出力する出力部と、
を備え、
リソースの電力生成能力も用いて前記個別調整可能能力を予測してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明において、リソースの電力生成能力と、リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて当該リソースに対する調整可能能力予測モデルとを用いて、リソースの個別調整可能能力を予測する態様を採用する場合には、リソースの調整可能能力を高い精度で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態による情報処理装置の概略ブロック図
【
図2】リソースアグリゲーター(RA)及びアグリゲーションコーディネーター(AC)の関係を示した図
【
図3】ある需要家における電力需要実績から、当該ある需要家における確率付きの需要予測を出力する態様を説明するための図
【
図4】ある需要家のリソースの稼働実績から、当該リソースで生成される電力の電力生成予測を出力する態様を説明するための図
【
図5】確率付きでリソース予想余力を出力した態様を説明するための図
【
図6】複数の確率付きでリソース予想余力を出力し、集計する態様を説明するための図
【
図7】確率付きで制御可能能力を出力した態様を説明するための図
【
図9】余力状況とディスパッチ戦略との関係を示した図
【
図10】リソースの電力生成能力、電力生成実績及び電力需要実績と調整可能能力の関係を示した図
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態
《構成》
本実施の形態の情報処理装置は、一つの装置から構成されてもよいし複数の装置から構成されてもよい。本実施の形態では、本実施の形態の情報処理装置を用いた情報処理方法、情報処理装置を生成するためにインストールされるプログラムや、当該プログラムを記憶したUSB、DVD等からなる記憶媒体も提供される。
【0024】
本実施の形態の情報処理装置は、蓄電池や自家発電機等の需要家側エネルギーリソースを、IoT等で束ねて制御することで、従来からの大型発電所と同等の機能を提供するために利用できる。本実施の形態の情報処理装置の典型的な利用者はリソースアグリゲーター(以下「RA」ともいう。)である(
図2参照)。このリソースアグリゲーター(RA)とは、需要家とVPPサービス契約を直接締結してリソース制御を行う事業者である。ただし、RAだけが利用者となるわけではなく、RAが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者であるアグリゲーションコーディネーター(以下「AC」ともいう。)が情報処理装置の利用者となってもよい(
図2参照)。RAとしては様々な事業者が存在し、太陽電池やEVといった同じようなリソースだけを有するRAもいるが、太陽電池、EV、自家発電機等の異なる種類のリソースを有するRAも存在する。リソースは需要家が保有し、RAは複数の需要家が保有するリソースを束ねるようにしてもよいし、RA自身が複数のリソースを保有していてもよく、またこれらを組み合わせた態様であってもよい。
【0025】
図1に示すように、情報処理装置は、複数のリソース毎における電力生成能力及び電力生成実績とリソース毎に関連した電力消費に関する電力需要実績とを用いてリソース毎の調整可能能力予測モデルを生成するモデル生成部10と、調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、リソース毎の個別調整可能能力を予測する個別情報生成部20と、複数の個別調整可能能力を用いて統合調整可能能力を予測する総合情報生成部30と、個別調整可能能力及び/又は統合調整可能能力を出力する出力部70と、様々な情報を記憶する記憶部80と、を有してもよい。リソースから出力される電力は受電点又はリソースに付属する計器によって測定された電力であってもよい。モデル生成部10は、リソースで生成される電力に関する電力生成モデルと、リソースに関連した電力消費に関する電力需要モデルとを生成してもよい。この場合には、調整可能能力予測モデルが電力生成モデル及び電力需要モデルという2つのモデルを有しており、これら電力生成モデル及び電力需要モデルによって調整可能能力予測モデルが構成されることになる。
【0026】
図10に示すように、リソースには電力生成能力が存在している。典型的には電力生成能力と電力生成実績との差分又は電力需要実績と電力生成実績との差分の小さい方が調整可能能力となり、電力供給の指令を受けた際に供給できる電力量となる。
図10に示す態様では、電力需要実績が電力生成実績よりも上回っていることから、外部から電力を購入している態様となっている。本実施の形態では、対象となっているリソースでは電力の需要及び生成に関して従前と同様の動きをするであろうという前提のもとでモデルを生成し、従前と同様の動きをしながらも外部に供給できる電力量(調整可能能力)を予測する態様となっている。
【0027】
リソースの電力生成能力、電力生成モデルに予測変数情報を適用することで得られる電力生成予想情報及び電力需要モデルに予測変数情報を適用することで得られる電力需要予想情報から、調整可能能力予想情報を生成するようにしてもよい。より具体的には、予め定まっているリソースの電力生成能力及び電力需要予想情報(予測需要電力量)のうち値の小さい方から電力生成予想情報(予測生成電力量)を差し引くことで調整可能能力予想情報生成するようにしてもよい。ただし、このような態様に限られることはなく、一つの調整可能能力予測モデルに予測変数情報を適用することで調整可能能力予想情報が直接得られるようにしてもよい。この態様を採用した場合には、一つのモデルで調整可能能力予想情報を得ることができる点で有益である。
【0028】
統合調整可能能力を予測するために用いられる個別調整可能能力は、利用者であるRAが保有しているリソースの全てであってもよいし、RAが選択したリソースであってもよい。リソースによって電力が供給された場合には、その後の一定時間において当該リソースによる電力供給を行えない場合がある(例えば蓄電池等)。この場合には、当該リソースは統合調整可能能力を予測するために用いられる個別調整可能能力から除外されるようにしてもよい。このような選別は総合情報生成部30によって自動的に行われてもよいし、パソコン、タブレット、スマートフォン等の操作部140(
図1参照)から利用者が入力することで行われてもよい。なお、自家発電機の場合にも24時間連続して稼働することは想定されておらず、例えば1日6時間程度の稼働を想定している。このため、1日当たりの稼働時間を考慮して、統合調整可能能力を予測するために個別調整可能能力として用いるかどうかが総合情報生成部30によって決定されてもよい。
【0029】
個別情報生成部20は所定の時間(例えば15時)又は所定の時間帯(例えば15時~15時30分)での個別調整可能能力を予測してもよい。総合情報生成部30も所定の時間(例えば15時)又は所定の時間帯(例えば15時~15時30分)での統合調整可能能力を予測してもよい。
【0030】
総合情報生成部30は統合調整可能能力(電力量)を確率とともに生成してもよい。また、個別情報生成部20も個別調整可能能力(電力量)を確率とともに生成してもよい。また、総合情報生成部30は統合調整可能能力を期待値として生成してもよい。同様に、個別情報生成部20も個別調整可能能力を期待値として生成してもよい。総合情報生成部30は統合調整可能能力の確率や期待値を用いて、入札による期待収益情報を生成してもよい。
【0031】
出力部70は統合調整可能能力を確率とともに出力してもよいし、統合調整可能能力の期待値を出力してもよい。同様に、出力部70は個別調整可能能力を確率とともに出力してもよいし、個別調整可能能力の期待値を出力してもよい。出力部70で出力された情報はパソコンのディスプレイ、タブレット、スマートフォン等の表示部90(
図1参照)で表示されてもよい。
【0032】
統合調整可能能力及び/又は個別調整可能能力は確率密度関数付きで提供されてもよい(
図5及び
図7参照)。確率とともに統合調整可能能力及び/又は個別調整可能能力を提供することで、確度を考慮した電力の調整可能能力情報を取得できる。制御指令値に対する実際に供給できる電力との乖離が大きい場合にはペナルティが課されることもあるが、このような態様を採用することでペナルティを受ける可能性を低減できる。また、個別調整可能能力を確率とともに生成する場合には、どのような特性を持つリソースを獲得すれば総合的な余力向上に貢献するかという、将来のリソース獲得戦略に役立てることができ、また予測が外れた場合の原因分析と対策立案を効果的に行うことができる。
【0033】
一例として、
図3に示すように、ある需要家(
図3では「需要家A」として示している。)における電力需要実績を用いて、当該ある需要家における確率付きの需要予測を出力するようにしてもよい。また
図4に示すように、ある需要家(
図4では「需要家A」として示している。)が保有しているリソース(
図4では「リソースR1」として示している。)の稼働実績から、当該リソースで生成される電力の電力生成予測を出力するようにしてもよい。これら需要予測及び電力生成予測から
図5に示すように調整可能能力(
図5では「リソース予想余力」として示されている。)を出力するようにしてもよい。この際、
図5で示すように確率(
図5では「Probability」として示されている。)とともにリソース予想余力(調整可能能力)をグラフの形式で出力するようにしてもよい。なお、リソースによっては生成した電力を自ら又は関連する設備等で消費することを想定していないものもあり、当該リソースの場合には需要予測を行う必要はない。
【0034】
図3乃至
図5で示す態様では、電力生成モデルに予測変数情報を適用することで電力生成予想情報を生成し(
図3参照)、電力需要モデルに予測変数情報を適用することで電力需要予想情報を生成し(
図4参照)、これらと電力生成能力(
図10参照)から調整可能能力予想情報を生成する態様となっている(
図5)。ただし、前述したとおりこのような態様に限られることはなく、一つの調整可能能力予測モデルに予測変数情報を適用することで調整可能能力予想情報が直接得られるようにしてもよい。
【0035】
ある需要家(「需要家A」)が複数のリソースを有する場合には、各リソースに対して同じような処理を行い、リソース毎に
図5で示すようなリソース予想余力を出力するようにしてもよい。そして、リソース毎のリソース予想余力(調整可能能力)を集計するようにし(
図6参照)、
図7で示すように、ある需要家Aの属するグループ(
図6及び
図7では「X社」として示している。)における制御可能能力(統合調整可能能力の一種である。)を出力するようにしてもよい。この際、
図7で示すように確率とともに制御可能能力をグラフの形式で出力するようにしてもよい。
【0036】
なお
図4ではリソースとして自家発電機である態様を示している。
図4の定格容量が電力生成能力を示している。
図4では±20kWという所定の幅で出力できる電力を調製できることが示されており、20kW増やす方向と減らす方向の両方向に調整可能能力があることを示している。
【0037】
予測変数情報は、気温、天候及びカレンダー情報のいずれか1つ以上を含んでもよいし、これらの2つ以上を含んでもよいし、これら3つの全てを含んでもよい。また、その他の変数を含んでも良い。天候には、晴、雨、曇、雪等の情報が含まれてもよい。カレンダー情報には、平日、土曜日、日曜日、祭日といった情報が含まれてもよい。予測変数情報は、蓄電池の容量を含んでもよい。
【0038】
工場、家庭、ビル等の操業情報を有する操業施設に設置された自家発電機からなるリソースに対する調整可能能力予測モデルは、適用される予測変数情報として操業施設の操業情報を含んでもよい。入力される電力需要実績としては、リソース過去稼働実績が含まれてもよく、過去の需要実績や操業パターンや負荷傾向等が含まれてもよい。
【0039】
図1に示すように、電力の価格を予測する価格予測部110が設けられてもよい。
【0040】
入札が終了しリソースを実際に稼働する際に、優先順位に基づいてリソースを稼働する稼働部120が設けられてもよい(
図1参照)。優先順位は原価を基準として決定されてもよく、例えば、原価の安い順番で設定されてもよい。入札する段階では複数のリソースを組み合わせて出力できる電力を予想しており、一定の余力がある状態となっている。このため、実際にリソースを稼働する際には入札時に予定していた割合とは異なる割合で稼働し、例えば原価の安いものから順に駆動する態様を採用することで、高い利益を得ることを期待できる。
【0041】
図9に示すように、出力部70によってRA毎の予想余力電力が時刻とともに出力されてもよい。当該情報に基づいて、各RAから出力してもらう余力電力を決定することでディスパッチ戦略を立てるようにしてもよい。
図9に示す態様では、15:00において20MWを入札するに際して、A社からは10MWを出力してもらい、B社からは8MWを出力してもらい、C社からは2MWを出力してもらうことをディスパッチ戦略として立てることを示している。このようなディスパッチ戦略は利用者によって立てられてもよいが、決定部130(
図1参照)によって自動的に決定されてもよい。決定部130は統合調整可能能力及び/又は個別調整可能能力の確率や期待値を用いて、ディスパッチ戦略を立ててもよい。当該ディスパッチ戦略はACで行われてもよいしRAで行われてもよい。ACで行われるディスパッチ戦略は複数のRAの組み合わせに関するものであり、RAで行われるディスパッチ戦略は複数のリソースの組み合わせに関するものとなる。
【0042】
出力部70は、予め設定された条件にしたがって、所定の日付及び時間帯における入札に適したリソースの組み合わせを出力してもよい。一般的に入札は所定時間毎(例えば3時間毎)に行われることから、時間帯に応じたリソースの組み合わせを出力部70は出力してもよい。この出力部70によって出力される情報は決定部130によって決定されてもよい。
【0043】
出力部70は、AC向け情報として、RA別余力状況や市場入札/ディスパッチ戦略等を出力してもよい。出力部70は、RA向け情報として、リソース別余力状況やディスパッチ戦略等を出力してもよい。
【0044】
モデル生成部10は人工知能機能を有してもよく、機械学習を行うことで調整可能能力予測モデルを随時又は一定期間ごとに更新するようにしてもよい。この場合には、予測変数情報からなる採用変数と、当該採用変数に対する採用係数を用いて調整可能能力予測モデルを生成してもよい。
【0045】
モデル生成部10、個別情報生成部20、総合情報生成部30、出力部70、価格予測部110、稼働部120、決定部130、評価部150等は一つのユニット(制御ユニット)によって実現されてもよいし、異なるユニットによって実現されてもよい。複数の「部」による機能が統合されてもよく、例えば個別情報生成部20及び総合情報生成部30の機能が一つのユニットによって実現されてもよい。また、モデル生成部10、個別情報生成部20、総合情報生成部30、出力部70、価格予測部110、稼働部120、決定部130、評価部150等は回路構成によって実現されてもよい。
【0046】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による効果であって、未だ説明していないものを中心に説明する。
【0047】
VPP市場、特に調整力市場では、制御指令に対してリソースが正確に応答することが、ペナルティを課されないようにするためにも非常に重要である。制御指令値に近い電力を供給するためには、配下のリソースの余力(Flexibility)状況を正確に知ることが重要であるが、正確な把握は容易ではなく、AC/RAの対応は遅れているのが現状である。これに対して、本実施の形態で示す情報処理装置を用いることで、複数のリソースから供給可能な電力を正確に予想することができるようになる。
【0048】
リソースの電力生成能力と、リソースにおける電力生成実績及び当該リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いて生成される調整可能能力予測モデルから、リソースの個別調整可能能力を予測する態様を採用する場合には、リソースの調整可能能力を高い精度で予測することができる。
【0049】
生成された調整可能能力予測モデルに、予測変数情報を適用することで、リソース毎の個別調整可能能力を予測し、複数の個別調整可能能力を用いて統合調整可能能力を予測する態様を採用する場合には、利用者は、個別調整可能能力に加え、統合した調整可能能力を入手でき、全体的に出力できる調整可能能力を把握することができる。
【0050】
なお、ペナルティが課された場合には事業収支の悪化に直結してしまうが、本態様を採用することで、ペナルティが課されるリスクを低減できる。ペナルティが課されないようにするために余裕をもって入札量を決定することも考えられるが、本来であればより高い収益が見込まれるにも関わらず、その収益をリスク回避のために放棄することとなる。したがって、正確な供給電力を予想できることで、ペナルティが課されるリスクを低減しつつ、極力高い収益を得ることを期待できる。
【0051】
制御指令値に対する実績値は、指令値の±10%以内に入ることが有益であるが、本実施の形態の態様を採用することで、制御指令値に対する実績値を当該指令値の±10%以内に入れることがより容易に行うことができる。つまり、本態様を採用しない場合には、制御指令値からの実績値のずれが大きくなってしまい、
図8に示すように指令値の±10%以内に入らない状態が生じ得る。他方、本態様を採用することでこのような
図8に示すような事態が生じることを効率良く防止できる。
【0052】
統合調整可能能力が確率とともに生成され、出力される態様を採用した場合には、利用者は、予想される統合調整可能能力をその確率と共に把握することができる。このため、例えば電力供給の入札を行う際に、当該確率を考慮して入札を行うかどうかを利用者は決定できる。一例としては、ペナルティのリスクを低く抑える場合には高い確率の電力に基づいて入札を行えばよいし、ペナルティのリスクが少々高くなっても収益を高く得たい場合には低い確率ながらも大きな電力で入札を行えばよい。
図5及び
図7で示すように供給可能な電力量が確率と共にグラフ形式で表示される態様を採用することで、利用者は直感的に供給可能な電力量(
図5では予想余力及び
図7では制御可能能力)をその確率とともに把握することができる点で有益である。
【0053】
ペナルティのリスクを評価する評価部150が設けられてもよい(
図1参照)。一例として評価部150は、制御指令値を満たせずにペナルティを支払う可能性を評価してもよい。この可能性は利用するリソースを操作部140からの入力で入れ替えることで再計算されるようにしてもよい。この場合には、利用者がリソースの組み合わせを適宜変更することでペナルティを支払う可能性を低減できることを期待できる。
【0054】
決定部130は入札を行う電力量を自動で決定してもよい。決定部130は低リスク重視か高収益重視かという重視するファクタに応じて入札金額を決定するようにしてもよい。低リスク重視、高収益重視等の重視するファクタの決定は操作部140から利用者によって入力されるようにしてもよい。重視するファクタによって閾値となる確率が変わるようにしてもよく、例えば低リスク重視の場合には例えば80%以上の確率で出力される電力量に基づいて個別調整可能能力が出力され、これらが集計されて統合調整可能能力が出力されてもよい。他方、例えば高収益重視の場合には例えば40%以上の確率で出力される電力量に基づいて個別調整可能能力が出力され、これらが集計されて統合調整可能能力が出力されてもよい。また、リソース毎に異なる確率(閾値確率)での電力量を採用するようにしてもよく、例えば、自家発電機の場合には60%の確率における個別調整可能能力(電力量)を採用し、太陽光発電の場合には80%確率における個別調整可能能力(電力量)を採用するようにしてもよい。なお、RAがACに電力を供給する際には信頼度が高い程、高値が付くこともある。このため、確率を考慮して見込まれる予測電力価格を価格予測部110は予測してもよい。また利用者の選択した態様が記憶部80で記憶され、出力部70によってRAやAC等の利用者に対して(例えば後日)出力されるようにしてもよい。この場合には、利用者毎の傾向(低リスク重視、高収益重視等)を示すことができる。
【0055】
総合調整可能能力の他に個別調整可能能力が出力されて表示部90で表示される態様を採用する場合には、総合調整可能能力だけではなく個別調整可能能力も加味して例えば電力供給の入札を行うかどうかを決定することができる。個別調整可能能力が確率とともに生成されて出力される場合には、予想される個別調整可能能力をその確率とともに把握することができる。同様に、総合調整可能能力が確率とともに生成されて出力される場合には、予想される総合調整可能能力をその確率とともに把握することができる。
【0056】
予測変数情報が気温を含む場合には、気温に応じたリソースの電力生成量及びリソースに関連した電力消費量を考慮して個別調整可能能力を予測し、ひいては統合調整可能能力を予測することができる。予測変数情報が天候を含む場合には、天候に応じたリソースの電力生成量及びリソースに関連した電力消費量を考慮して個別調整可能能力を予測し、ひいては統合調整可能能力を予測することができる。予測変数情報がカレンダー情報を含む場合には、カレンダー情報に応じたリソースの電力生成量及びリソースに関連した電力消費量を考慮して個別調整可能能力を予測し、ひいては統合調整可能能力を予測することができる。
【0057】
工場、家庭、ビル等の操業情報を有する操業施設の自家発電機からなるリソースに対する調整可能能力予測モデルが、適用される予測変数情報として操業施設の操業情報を含む場合には、操業施設の操業情報を考慮して個別調整可能能力を予測し、ひいては統合調整可能能力を予測することができる。工場、家庭、ビル等の操業施設の場合、操業状況に応じて提供可能な電力(受電点での電力)が大きく異なることから、このように操業情報を予測変数情報として用いることは非常に有益である。
【0058】
電力の価格を予測する価格予測部110が設けられている場合には、例えば、電力の価格を予想したうえで、リソース毎の個別電力量を決定できる。前述したとおり、リソースによって電力が供給された場合には、その後の一定時間において当該リソースによる電力供給を行えないこともあるので、価格予測部110による価格も考慮したうえで、利用者が当該リソースを用いた入札を行うかを決定してもよい。また、決定部130が予め設定された内容にしたがって収益を考慮して入札を行うか自動で決定してもよく、例えば決定部130は期待収益が最も高くなるようにリソースからの電力供給を行うようにして入札を行うようにしてもよい。この場合にも、計算に利用する電力量としては一定の確率(例えば60%、70%、80%といった下限確率)での電力量を用いるようにしてもよい。
【0059】
リソースを実際に稼働する際に優先順位に基づいてリソースを稼働する稼働部120が設けられている場合には、予め定められた優先順位に基づいてリソースを稼働することができる。一例として原価が低いリソースから稼働する場合には、利益率の高いリソースによって電力を供給することができる点で有益である。
【0060】
出力部70が予め設定された条件にしたがって所定の日付、及び時間又は時間帯における入札に適したリソースの組み合わせを出力する態様を採用した場合には、入札に適した組み合わせのリソースを提供でき、ひいては効率よく入札を行うことができる。
【0061】
出力部70が統合調整可能能力として期待値を出力する場合には、例えば電力供給の入札を行う際に、当該期待値を考慮して入札を行うかどうかを利用者は決定できる。
【0062】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また出願当初の請求項を適宜拡張することもでき、例えば、モデル生成部10が、リソースに関連した電力消費に関する電力需要実績を用いず、リソースの電力生成能力とリソースにおける電力生成実績だけを用いて当該リソースに対する個別調整可能能力を予測するような態様を採用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10 モデル生成部
20 個別情報生成部
30 総合情報生成部
70 出力部
110 価格予測部
120 稼働部