(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ブローアウトパネル開放装置
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20220517BHJP
G21C 13/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/02 300
(21)【出願番号】P 2019142018
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓
(72)【発明者】
【氏名】西郷 諭
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄亮
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-112690(JP,U)
【文献】特開昭63-312465(JP,A)
【文献】特表2009-529129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067565(US,A1)
【文献】実開昭52-138195(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/004
G21C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所内の建物の外壁が備える開口部を覆うように前記外壁に設置されたブローアウトパネルを開放するように構成され、
前記外壁の、前記ブローアウトパネルに面する位置に設けられた、膨張可能な袋状部材と、
前記袋状部材を膨張させて前記ブローアウトパネルを開放する作動部と、
を備えることを特徴とするブローアウトパネル開放装置。
【請求項2】
前記作動部は、前記袋状部材に接続されており圧縮ガスを貯蔵したガス貯蔵部を備える請求項1に記載のブローアウトパネル開放装置。
【請求項3】
前記袋状部材は、前記外壁の外面に設けられており前記ブローアウトパネルに向かって開口する凹部に設置されている請求項1に記載のブローアウトパネル開放装置。
【請求項4】
前記袋状部材は、前記外壁の外部に設置されている請求項1に記載のブローアウトパネル開放装置。
【請求項5】
前記作動部は、前記袋状部材と前記ガス貯蔵部を接続する配管と、前記配管に設けられたバルブを備え、
前記バルブは、遠隔操作が可能である請求項2に記載のブローアウトパネル開放装置。
【請求項6】
前記圧縮ガスは、前記原子力発電所から供給された空気である請求項2に記載のブローアウトパネル開放装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローアウトパネルを開放する装置、特に原子力発電所内の建物に設置されるブローアウトパネル開放装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所には、配管破断事故による原子炉建屋内の圧力上昇を緩和するために、原子炉建屋にブローアウトパネルが設置されている。ブローアウトパネルは、原子炉建屋の外壁に設けられた開口部を塞いでおり、原子炉建屋内の圧力が増加したときに自動的に開く。
【0003】
原子力発電所で炉心を損傷する事故が発生すると、この事故により発生する水素が原子炉建屋内に滞留して爆発し、原子炉建屋が損傷するおそれがある。この水素爆発を回避するために、原子炉建屋内に水素の滞留を防止することが求められている。そこで、本来は配管破断事故による圧力上昇を緩和するためのブローアウトパネルを開放することで、水素の滞留を防止する。
【0004】
特許文献1には、ブローアウトパネルを開放する装置の例が記載されている。特許文献1に記載のブローアウトパネル開放装置は、ブローアウトパネルを補強するフレームと、ブローアウトパネルを建物の壁面に開けた開口から外して開放するフレーム移動手段を備え、フレーム移動手段が遠隔操作可能であり、全電源喪失状態でも遠隔からブローアウトパネルを開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のブローアウトパネル開放装置は、ブローアウトパネルを開放するフレーム移動手段として、油圧ジャッキなどの作動機構や機械式並進機構という機械的な駆動部を用いる。このため、ブローアウトパネルを開放するときには、機械的な駆動部での金属同士の接触により火花が発生する可能性がある。原子炉建屋内での水素の滞留を防止するためにブローアウトパネルを開放したときに火花が発生すると、火花により水素に点火して水素爆発が起こるおそれがある。このため、ブローアウトパネルを任意のタイミングで開放できるとともに、水素に点火する原因を排除して水素の点火を防止でき、原子力発電所の安全性を高めることができるブローアウトパネル開放装置が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、ブローアウトパネルの周辺に機械的な駆動部を備えずに、ブローアウトパネルを任意に開放できるブローアウトパネル開放装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるブローアウトパネル開放装置は、原子力発電所内の建物の外壁が備える開口部を覆うように前記外壁に設置されたブローアウトパネルを開放するように構成され、前記外壁の、前記ブローアウトパネルに面する位置に設けられた、膨張可能な袋状部材と、前記袋状部材を膨張させて前記ブローアウトパネルを開放する作動部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ブローアウトパネルの周辺に機械的な駆動部を備えずに、ブローアウトパネルを任意に開放できるブローアウトパネル開放装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】原子炉建屋の外壁の鉛直方向断面図であり、本発明の実施例1によるブローアウトパネル開放装置を示す概略図。
【
図3】原子炉建屋の外壁の鉛直方向断面図であり、袋状部材が膨張してブローアウトパネルを開放したブローアウトパネル開放装置を示す概略図。
【
図4A】開放された開口部を原子炉建屋の外側から見た図。
【
図4B】ブローアウトパネル閉止装置によって閉止された開口部を原子炉建屋の外側から見た図。
【
図5】原子炉建屋の外壁の鉛直方向断面図であり、本発明の実施例2によるブローアウトパネル開放装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるブローアウトパネル開放装置は、原子力発電所内の建物に設置されたブローアウトパネルを圧縮ガスの力により任意のタイミングで強制的に開放できる。本発明によるブローアウトパネル開放装置は、ブローアウトパネルの周辺に機械的な駆動部を備えないので、火花が発生せず、建物の内部の水素に点火するのを防止できる。
【0012】
以下、本発明の実施例によるブローアウトパネル開放装置を、図面を用いて説明する。以下の実施例では、原子炉建屋の外壁に設置されたブローアウトパネルを開放するブローアウトパネル開放装置について説明する。本発明によるブローアウトパネル開放装置は、原子炉建屋の天井に設けられたブローアウトパネルを開放することもできる。以下の実施例では、原子炉建屋の外壁には原子炉建屋の天井も含むものとする。また、本発明によるブローアウトパネル開放装置は、原子炉建屋に設置されたブローアウトパネルに限らず、例えばタービン建屋など、原子力発電所内の任意の建物の外壁に設置されたブローアウトパネルを開放することができる。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1によるブローアウトパネル開放装置を説明する。
【0014】
図1は、原子炉建屋13の模式図である。原子炉建屋13は、原子炉圧力容器22と、原子炉圧力容器22を格納した原子炉格納容器21を格納する。原子炉建屋13の外壁1には、ブローアウトパネル3が設置されている。ブローアウトパネル3は、クリップ(保持部材)で外壁1に保持されており、原子炉建屋13の外側に向かって外壁1から外れることができる。
【0015】
図2は、原子炉建屋13の外壁1の鉛直方向断面図であり、原子炉建屋13に設置された、本実施例によるブローアウトパネル開放装置を示す概略図である。原子炉建屋13の外壁1は、外壁1を貫通する開口部2を備え、ブローアウトパネル3が開口部2に設置されている。ブローアウトパネル3は、開口部2を原子炉建屋13の外側から覆って塞ぐように外壁1に設置されている。ブローアウトパネル3が外壁1から外れると、開口部2が開放される。
【0016】
外壁1は、外面に、ブローアウトパネル3に向かって開口する凹部6を備える。凹部6は、外壁1の、ブローアウトパネル3に面する位置(ブローアウトパネル3よりも原子炉建屋13の内側に近い位置)に設けられる。
【0017】
外壁1は、開放された開口部2を閉止する装置であるブローアウトパネル閉止装置9を備える。ブローアウトパネル閉止装置9は、サポート10に支持され、外壁1に沿ってスライド移動可能な扉部9aを備える。扉部9aは、開口部2の近くに設けられ、スライド移動して開口部2を覆うことができる。
【0018】
図4Aは、開放された開口部2を原子炉建屋13の外側から見た図である。原子炉建屋13の外壁1には、ブローアウトパネル閉止装置9の扉部9aが設けられている。
【0019】
図4Bは、ブローアウトパネル閉止装置9の扉部9aによって閉止された開口部2を原子炉建屋13の外側から見た図である。扉部9aは、開放された開口部2を外壁1に沿ってスライド移動して覆うことで、開口部2を閉止することができる。
【0020】
図2に示すように、本実施例によるブローアウトパネル開放装置は、袋状部材4と、袋状部材4の作動部を備える。
【0021】
袋状部材4は、膨張可能な袋状の部材で構成され、外壁1の凹部6(外壁1の内部)に設置される。すなわち、袋状部材4は、外壁1の、ブローアウトパネル3に面する位置(ブローアウトパネル3よりも原子炉建屋13の内側に近い位置)に設けられる。袋状部材4は、例えば、高強度の任意の繊維からなる布や、高強度の任意のゴムで構成することができる。
【0022】
袋状部材4の作動部は、ガス貯蔵部7と、配管5と、バルブ8を備える。袋状部材4の作動部は、袋状部材4を膨張させてブローアウトパネル3を原子炉建屋13の外側に押し出して外壁1から外し、ブローアウトパネル3を開放する。
【0023】
ガス貯蔵部7は、可搬式ボンベ7aと非可搬式ボンベ7bの少なくとも一方を備える。可搬式ボンベ7aと非可搬式ボンベ7bは、圧縮ガスを貯蔵する。圧縮ガスには、例えば、空気、窒素、またはヘリウムを用いることができる。
【0024】
配管5は、袋状部材4とガス貯蔵部7を接続し、袋状部材4に圧縮ガスを供給する。
【0025】
バルブ8は、配管5に設けられ、袋状部材4とガス貯蔵部7の間に位置する。バルブ8は、例えば、電動式または電磁式で開閉する。袋状部材4の作動部は、作業員が遠隔操作によって手動で開閉するバルブ8と、作業員がバルブ8の設置場所にて手動で開閉するバルブ8のうち、少なくとも一方を備える。バルブ8は、遠隔操作が可能であるのが好ましい。
【0026】
ガス貯蔵部7とバルブ8は、バルブ8の開閉の際などに発生した火花が水素に点火しないように、原子炉建屋13の内部や周囲に設置せず、原子炉建屋13から十分離れた位置に設置するのが好ましい。バルブ8を原子炉建屋13から離れた位置に設置することで、ブローアウトパネル3を開放するためにバルブ8を開いた作業員が、開いた開口部2から放出された放射性物質を含む気体で被ばくするのを防止できる。また、遠隔操作で開閉するバルブ8を用いることによっても、作業員の被ばくを防ぐことができる。
【0027】
非可搬式ボンベ7bは、原子力発電所から供給された空気を圧縮ガスとして貯蔵することができる。非可搬式ボンベ7bに原子力発電所内から空気を供給できない場合は、非可搬式ボンベ7bを使用せず、可搬式ボンベ7aを使用して袋状部材4に圧縮ガスを供給することができる。
【0028】
袋状部材4は、配管5によって、ガス貯蔵部7の可搬式ボンベ7aまたは非可搬式ボンベ7bと接続され、バルブ8が開くことによりガス貯蔵部7から圧縮ガスが供給される。袋状部材4は、圧縮ガスが供給されると膨張し、ブローアウトパネル3を開放する。
【0029】
図3は、原子炉建屋13の外壁1の鉛直方向断面図であり、袋状部材4が膨張してブローアウトパネル3を開放したブローアウトパネル開放装置を示す概略図である。
【0030】
例えば原子炉建屋13の内部での水素の滞留を防止するために、ブローアウトパネル3を強制的に開放する場合には、作業員によりバルブ8が開かれる。バルブ8が開かれると、可搬式ボンベ7aまたは非可搬式ボンベ7bから配管5を通って袋状部材4に圧縮ガスが供給される。なお、必要であれば、送風機を用いて袋状部材4に圧縮ガスを供給してもよい。
【0031】
袋状部材4は、圧縮ガスが供給されると膨張し、ブローアウトパネル3を原子炉建屋13の外側に押し出す。ブローアウトパネル3が袋状部材4の膨張によって押し出されて外壁1から外れると、外壁1の開口部2が開放される。
【0032】
本実施例によるブローアウトパネル開放装置は、以上のようにしてブローアウトパネル3を開放し、開口部2を通して原子炉建屋13の内部の水素を原子炉建屋13の外部に放出することができる。本実施例によるブローアウトパネル開放装置は、ブローアウトパネル3の周辺に機械的な駆動部を備えず、圧縮ガスの力によりブローアウトパネル3を任意に強制的に開放するため、火花が発生せず、水素に点火しない。
【0033】
袋状部材4は、主に、ブローアウトパネル3が開放する方向(原子炉建屋13の内側から外側に向かう方向)に膨らむのが好ましい。本実施例によるブローアウトパネル開放装置では、袋状部材4が外壁1の凹部6に設置され、凹部6がブローアウトパネル3に向かって開口しているため、袋状部材4は、主に、ブローアウトパネル3が開放する方向に膨らむことができる。このため、袋状部材4の膨張力をブローアウトパネル3に効率よく伝えることができ、ブローアウトパネル3を効果的に開放することができる。
【0034】
袋状部材4は、ブローアウトパネル3を開放できるような高い強度を持つ材料で構成する。袋状部材4を高強度の繊維やゴムで構成することで、袋状部材4は、ブローアウトパネル3を開放するときの荷重に耐えることができる。
【0035】
袋状部材4は、ブローアウトパネル3に面する位置であれば、外壁1の任意の位置に設置することができる。すなわち、外壁1は、ブローアウトパネル3に面する任意の位置に凹部6を備えることができる。袋状部材4と凹部6の数も、任意に定めることができる。袋状部材4は、ブローアウトパネル3の周縁部に面する位置に設置するのが好ましく、ブローアウトパネル3が長方形や正方形であれば、ブローアウトパネル3の四隅に面する位置に設置するのが好ましい。
【0036】
ブローアウトパネル3は、チェーンやロープなどの線状部材11によって、原子炉建屋13の外壁1に接続することができる。外壁1から外れたブローアウトパネル3は、線状部材11によって動きが制限され、ブローアウトパネル閉止装置9に接触せず、外壁1から落下しない。このため、ブローアウトパネル閉止装置9は、確実に稼動して開口部2を閉止することができる。
【実施例2】
【0037】
本発明の実施例2によるブローアウトパネル開放装置を説明する。以下では、本実施例によるブローアウトパネル開放装置について、実施例1によるブローアウトパネル開放装置と異なる点を説明する。
【0038】
図5は、原子炉建屋13の外壁1の鉛直方向断面図であり、原子炉建屋13に設置された、本実施例によるブローアウトパネル開放装置を示す概略図である。
【0039】
本実施例によるブローアウトパネル開放装置では、袋状部材4は、外壁1の外部に設置される。外壁1は、外面に保持部14を備える。保持部14は、クリップでブローアウトパネル3を保持するとともに、袋状部材4が設置される。保持部14は、袋状部材4の周囲を囲む板状部材で構成され、ブローアウトパネル3に向かって開口する。袋状部材4は、外壁1の外部の、ブローアウトパネル3に面する位置(外壁1の外面とブローアウトパネル3との間の位置)に設けられる。
【0040】
本実施例によるブローアウトパネル開放装置でも、袋状部材4は、圧縮ガスが供給されると膨張し、ブローアウトパネル3を原子炉建屋13の外側に押し出す。ブローアウトパネル3が袋状部材4の膨張によって押し出されて外壁1から外れると、外壁1の開口部2が開放され、開口部2を通して原子炉建屋13の内部の水素を原子炉建屋13の外部に放出することができる。本実施例によるブローアウトパネル開放装置は、ブローアウトパネル3の周辺に機械的な駆動部を備えず、圧縮ガスの力によりブローアウトパネル3を任意に強制的に開放するため、火花が発生せず、水素に点火しない。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…外壁、2…開口部、3…ブローアウトパネル、4…袋状部材、5…配管、6…凹部、7…ガス貯蔵部、7a…可搬式ボンベ、7b…非可搬式ボンベ、8…バルブ、9…ブローアウトパネル閉止装置、9a…扉部、10…サポート、11…線状部材、13…原子炉建屋、14…保持部、21…原子炉格納容器、22…原子炉圧力容器。