(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 35/04 20060101AFI20220517BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20220517BHJP
B63B 27/08 20060101ALI20220517BHJP
B63B 27/10 20060101ALI20220517BHJP
B66D 1/74 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B63B35/04
B63B35/00 N
B63B27/08
B63B27/10 Z
B66D1/74 A
(21)【出願番号】P 2019170613
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉永 浩志
(72)【発明者】
【氏名】古田 博英
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-104596(JP,A)
【文献】実開平3-86898(JP,U)
【文献】特開平10-114296(JP,A)
【文献】特開昭54-93577(JP,A)
【文献】特開昭63-272777(JP,A)
【文献】特開昭62-99296(JP,A)
【文献】特開平2-220997(JP,A)
【文献】米国特許第5013186(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0117287(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126962(US,A1)
【文献】白崎勇一,浅川賢一,小島淳一,開発物語 海底ケーブル建設・保守技術の開発 ~水中ロボットを中心に~,通信ソサイエティマガジン No.22 [秋号] 2012,No.22 (第6巻,第2号),日本,一般社団法人 電子情報通信学会 通信ソサイエティ,2012年09月01日,pp.154-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/03- 35/04
B63B 35/00
B63B 21/04
B63B 21/16
B63B 27/08
B63B 27/10
B63B 27/16
B63C 11/00
B66D 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測機器を搭載可能な船体と、
船体内に設けられ、海底に敷設される海底ケーブルを収容可能なケーブルタンクと、
前記観測機器に一端が接続され、前記船体から海中に前記観測機器を投入したときに前記観測機器を吊り下げる吊下げロープと、
前記船体に設けられて、前記海底ケーブルを前記ケーブルタンク内に巻揚可能であるとともに、前記吊下げロープを海中から巻揚可能なケーブル巻揚機と、
前記船体の船首尾方向で、前記ケーブル巻揚機よりも船首側で且つ前記ケーブルタンクの上方の上甲板に配置され、前記ケーブル巻揚機に巻き揚げられた前記吊下げロープの他端側を巻き取り可能
であるとともに、前記吊下げロープのみを巻き取り可能なロープ格納リールと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記吊下げロープの単位長さ当たりの重量は、前記海底ケーブルの単位長さ当たりの重量よりも小さい
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記ケーブル巻揚機は、前記観測機器と前記ロープ格納リールとの間に設けられ、前記吊下げロープの前記一端と前記他端との間の中間部が巻き付けられる巻揚ドラムを備える請求項1
又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記ロープ格納リールは、前記船体に着脱可能に設けられている請求項1
から3の何れか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記船体は、
前記ロープ格納リールの上方に設けられた上部甲板と、
前記上部甲板の下面に設けられ、前記ロープ格納リールを吊り下げて移動させる天井クレーンと、を備える請求項1から
4の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、観測機器の船上での投入及び揚収を行うため、船舶上に、起倒自在な門型フレームと、観測機器が索体を介して連結されるウインチと、索体を支持する曳航シーブと、を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような船舶では、海中に投入した観測機器を海底まで到達させるために、索体が数千mといった長大なものとなる場合が多い。そのため、索体の繰出し及び巻取りを行うウインチは、観測機器と、数千mに及ぶ索体とを合わせた重量以上の巻揚性能を有する必要がある。このため、ウインチが大型なものとなり、その設置に要する搭載スペース及び船体が大型化し、コストが増大する。
また、このような(特に大型の)観測機器は、使用する頻度が少なく、経済性等の面から、稼働率を高めることが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、船舶の低コスト化を図るとともに、観測機器の稼働率を高めることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、ケーブルタンクと、吊下げロープと、ケーブル巻揚機と、ロープ格納リールと、を備える。前記船体は、観測機器を搭載可能である。前記ケーブルタンクは、前記船体に設けられている。前記ケーブルタンクは、海底に敷設される海底ケーブルを収容可能である。前記吊下げロープは、前記観測機器に一端が接続される。前記吊下げロープは、前記船体から海中に前記観測機器を投入したときに前記観測機器を吊り下げる。前記ケーブル巻揚機は、前記船体に設けられている。前記ケーブル巻揚機は、前記海底ケーブルを前記ケーブルタンク内から海底へ敷設・揚収可能である。前記ケーブル巻揚機は、前記吊下げロープを海中へ繰出・巻揚可能である。前記ロープ格納リールは、前記船体の船首尾方向で、前記ケーブル巻揚機よりも船首側で且つ前記ケーブルタンクの上方の上甲板に配置され、前記ケーブル巻揚機に巻き揚げられた前記吊下げロープの他端側を巻き取り可能であるとともに、前記吊下げロープのみを巻き取り可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、船舶の低コスト化を図るとともに、観測機器の稼働率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の側断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶において、海底ケーブルを敷設する場合の側断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る船舶において、吊下げロープを巻き揚げる場合の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(船舶の構成)
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1に示すように船舶1は、船体2と、ケーブルタンク20と、ロープ格納リール30と、ケーブル巻揚機40と、を主に備えている。船舶1は、海底への海底ケーブル200(
図2参照)の敷設を行うケーブル敷設船としての機能と、観測機器M(
図3参照)の投入、及び揚収を行う観測船としての機能とを兼ね備えている。
【0010】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板からなる。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板からなる。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0011】
船体2は、その内部に、第一甲板5、第二甲板6を含む、複数層の甲板を備えている。この実施形態における第一甲板5は、満載喫水線よりも上方に配置されている。第二甲板6は、第一甲板5の上方に配置されている。第二甲板6は、船体2内で一対の舷側3A,3Bの間に設けられた最上層の甲板(言い換えれば、上甲板)である。
【0012】
この実施形態で例示する船体2は、第二甲板6上に、乗員の居室等を備えた上部構造8が設けられている。本開示において、上部構造8は、第二甲板6上において、船首尾方向FAの船首2a側に設けられている。これにより、船体2の船首尾方向FAの船尾2b側の第二甲板6に後部作業甲板6rが形成されている。この船舶1は、例えば、後部作業甲板6r上に、観測機器M(
図3参照)を搭載可能である。観測機器Mとしては、例えば海底の泥を採取する採泥機を例示できる。観測機器Mは、採泥機以外であってもよく、その用途は構成を何ら限定するものではない。
【0013】
この実施形態で例示する船体2は、更に、第一甲板5の下方に、底部甲板9を備えている。
船体2は、第一甲板5と底部甲板9との間に、後部隔壁11と、隔壁12と、を備えている。後部隔壁11と、隔壁12とは、船首尾方向FAに間隔を空けて配置されている。後部隔壁11、及び隔壁12は、それぞれ舷側3Aから舷側3Bに至るとともに、それぞれ第一甲板5から底部甲板9に至っている。この実施形態において、第一甲板5と底部甲板9との間で且つ、後部隔壁11と隔壁12との間の区画は、機関室10とされている。
【0014】
機関室10内には、主機(図示無し)が設けられている。主機(図示無し)は、船舶1を航行させる推進力を発揮する。主機(図示無し)は、船体2の船尾2bの外部に設けられた推進器14を駆動する。推進器14としては、アジマス型推進器を例示できる。推進器14は、アジマス型推進器に限らず、例えば、通常のスクリュー等を用いることもできる。
【0015】
(ケーブルタンクの構成)
図1、
図2に示すように、ケーブルタンク20は、船体2内に設けられている。ケーブルタンク20は、海底に敷設される海底ケーブル200を収容可能になっている。この実施形態で例示するケーブルタンク20は、船体2の船首尾方向FA中央部に配置されている。ケーブルタンク20は、隔壁12に対して船首尾方向FAの船首2a側に設けられている。
【0016】
この実施形態で例示するケーブルタンク20は、第一甲板5と第二甲板6の間に形成された開口部(図示無し)より下方に配置されている。つまり、ケーブルタンク20は、その上方が第二甲板6によって覆われている。このケーブルタンク20の底面は、底部甲板9により形成されている。ケーブルタンク20内には、下方から上方に向かって外径が漸次小さくなる円錐台形状のケーブルコーン22が設けられている。ケーブルタンク20内に収容される海底ケーブル200は、ケーブルコーン22を中心として巻き回される。このようなケーブルタンク20及びケーブルコーン22は、船首尾方向FAに、例えば2組が設けられている。
【0017】
(ロープ格納リールの構成)
図3に示すように、ロープ格納リール30は、吊下げロープ100を巻き取り可能に構成されている。この吊下げロープ100は、海中に投入する観測機器Mを吊り下げるために用いられる。吊下げロープ100は、例えば、ワイヤーロープ、繊維ロープ等を用いることができる。吊下げロープ100は、その一端が観測機器Mに接続される。吊下げロープ100は、船体2から海中に観測機器Mを投入したときに観測機器Mを吊り下げる。
【0018】
ロープ格納リール30は、リール本体31と、リール駆動部(図示無し)と、を備えている。リール本体31は、吊下げロープ100の他端が接続される。リール本体31には、吊下げロープ100が巻き回される。リール駆動部は、例えばモーター等からなり、リール本体31を回転させる。ロープ格納リール30は、リール駆動部(図示無し)によりリール本体31が回転駆動されることで、リール本体31からの吊下げロープ100の繰出し、及びリール本体31から繰り出した吊下げロープ100の他端側の巻取り、の双方を実行可能である。
【0019】
このようなロープ格納リール30は、後述するケーブル巻揚機40に対して、船首尾方向FAの船首2a側に配置されている。ロープ格納リール30は、第二甲板6上に、ボルト等によって着脱可能に固定されている。ロープ格納リール30は、第二甲板6上に配置されている。
【0020】
(ケーブル巻揚機の構成)
図2、
図3に示すように、ケーブル巻揚機40は、船体2に設けられている。この実施形態において、ケーブル巻揚機40は、ケーブルタンク20に対して船首尾方向FAの船尾2b側に配置されている。ケーブル巻揚機40は、ケーブルタンク20内からの海底ケーブル200の繰出し、及び海中からの海底ケーブル200の巻揚げが可能である。また、ケーブル巻揚機40は、ロープ格納リール30からの吊下げロープ100の繰出し、及びロープ格納リール30から繰り出された吊下げロープ100の巻揚げが可能である。ケーブル巻揚機40は、巻揚ドラム41と、ホールド装置42と、張力計(図示無し)と、を備えている。
【0021】
巻揚ドラム41は、船幅方向に円筒状をなし、船幅方向に延びる中心軸回りの周方向Dcに回動自在に設けられている。巻揚ドラム41の外周面には、海底ケーブル200、吊下げロープ100の延伸方向の中間部が、複数周にわたって巻き回される。巻揚ドラム41は、油圧モーターや電動モーター等からなるドラム駆動部(図示無し)によって、周方向Dcに回転駆動される。巻揚ドラム41を周方向Dcに回転させると、巻揚ドラム41に巻き回された海底ケーブル200や吊下げロープ100が、巻揚ドラム41の外周面との間で生じる摩擦力によって巻揚ドラム41とともに回転する。巻揚ドラム41を周方向Dcの第一方向Dc1に回転させると、巻揚ドラム41に巻き回された海底ケーブル200や吊下げロープ100が、船首尾方向FAの船尾2b側に繰り出される。また、巻揚ドラム41を周方向Dcの第二方向Dc2に回転させると、巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船尾2b側から、海底ケーブル200や吊下げロープ100が巻き揚げられる。
【0022】
ホールド装置42は、巻揚ドラム41に対して、船首尾方向FAの船首2a側に配置されている。ホールド装置42は、巻揚ドラム41と、ケーブルタンク20との間に配置されている。ホールド装置42は、巻揚ドラム41に巻き回される海底ケーブル200、吊下げロープ100を挟み込んで保持する。ホールド装置42は、海底ケーブル200、吊下げロープ100を挟み込む力を調整することで、巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船首側における海底ケーブル200、吊下げロープ100の張力を調整する。
【0023】
(船体に設けられたその他の装備)
図3に示すように、船体2の第二甲板6の上方には、天井クレーン50が設けられている。天井クレーン50は、レール51と、クレーン本体52と、を備えている。
レール51は、第二甲板6の上方で船首尾方向FAに延びている。クレーン本体52は、レール51に沿って船首尾方向FAに移動したり、船幅方向に移動したりすることが可能となっている。
ロープ格納リール30は、クレーン本体52に掛止された状態で、クレーン本体52をレール51に沿って走行移動させることで、第二甲板6上で移動可能とされている。これにより、ロープ格納リール30の不使用時には、ロープ格納リール30を、他の作業の邪魔にならない位置に退避させることができる。
【0024】
船体2の船尾2b側の後部作業甲板6r上には、さらに、シーブ61と、A型フレームクレーン62と、が設けられている。
シーブ61は、後部作業甲板6rの船尾端部に設けられ、ケーブル巻揚機40から繰り出されて海中に投入される海底ケーブル200や吊下げロープ100を下方に案内する。
A型フレームクレーン62は、船幅方向に延びる軸周りに回動可能に設けられている。A型フレームクレーン62は、吊下げロープ100の一端が接続された観測機器Mの後部作業甲板6r上から海中への投入、及び海中から後部作業甲板6r上への揚収等を行う。
【0025】
(海底ケーブルの敷設)
図2に示すように、上記船舶1において、海底ケーブル200を海底に敷設する場合、敷設すべき海底ケーブル200を、ケーブルタンク20に収容しておく。海底ケーブル200の一端は、ケーブルタンク20から第二甲板6上に引き出され、ホールド装置42を経て巻揚ドラム41に複数周巻き回される。巻揚ドラム41をドラム駆動部(図示無し)で周方向Dcの第一方向Dc1に回転させると、巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船首2a側では、ケーブルタンク20内の海底ケーブル200が順次引き出される。巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船尾2b側では、巻揚ドラム41に巻き回された海底ケーブル200が船首尾方向FAの船尾2b側に繰り出され、シーブ61を経て海中に投入される。
【0026】
この場合、ロープ格納リール30は、海底ケーブル200の敷設作業の邪魔とならない他の適宜の場所に、天井クレーン50により移動させておくようにしてもよい。
【0027】
(観測機器の投入・揚収)
図3に示すように、上記船舶1において、観測機器Mを海中に投入する場合、ロープ格納リール30を、第二甲板6上の所定位置に設置する。ロープ格納リール30から繰り出される吊下げロープ100の一端と他端との間の中間部は、ケーブル巻揚機40の巻揚ドラムに複数周巻き回す。ロープ格納リール30に巻き回された吊下げロープ100の一端は、観測機器Mに接続する。
【0028】
その後、観測機器Mを、A型フレームクレーン62を用いて観測機器Mを海中に投入する。巻揚ドラム41をドラム駆動部(図示無し)で周方向Dcの第一方向Dc1に回転させると、巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船首2a側では、ロープ格納リール30から吊下げロープ100が順次引き出される。また、巻揚ドラム41に対して船首尾方向FAの船尾2b側では、吊下げロープ100が巻揚ドラム41から船尾2b側に繰り出され、シーブ61を経て海中に投入される。これにより、一端が吊下げロープ100に接続された観測機器Mは、海中に没していく。
【0029】
観測機器Mを船舶1に揚収するには、巻揚ドラム41をドラム駆動部(図示無し)で周方向Dcの第二方向Dc2に回転させる。すると、ケーブル巻揚機40に対して船首尾方向FAの船尾2b側では、渦中から吊下げロープ100が巻き上げられる。ケーブル巻揚機40に対して船首尾方向FAの船首2a側では、巻揚ドラム41から船首尾方向FA前方に送られる吊下げロープ100が、ロープ格納リール30によって巻き取られていく。このとき、吊下げロープ100は、巻揚ドラム41に巻き回された部分で、巻揚ドラム41の外周面との間に生じる摩擦力によって保持されている。このため、ロープ格納リール30では、巻揚ドラム41と連動させて回転させることで、巻揚ドラム41よりも船首尾方向FAで船首2a側に位置する吊下げロープ100のみを巻き取れるだけの巻き揚げ能力を有していればよい。
【0030】
(作用効果)
上記構成の船舶1では、海底ケーブル200をケーブル巻揚機40によりケーブルタンク20から繰り出し、繰り出した海底ケーブル200を海中に順次投入していくことで、海底ケーブル200を海底に敷設することができる。また、この船舶1では、ロープ格納リール30に巻き取られている吊下げロープ100を、ケーブル巻揚機40により繰り出し、繰り出した吊下げロープ100を海中に投入していくことで、吊下げロープ100の一端に接続された観測機器Mを海中に投入することができる。また、吊下げロープ100をケーブル巻揚機40で巻き揚げることで、吊下げロープ100の一端に接続された観測機器Mを海中から船体2上に引き上げることができる。そして、ケーブル巻揚機40で巻き揚げた吊下げロープ100は、ロープ格納リール30で巻き取ることができる。ケーブル巻揚機40は、単位長さ当たりの重量が吊下げロープ100よりも遙かに大きい海底ケーブル200の巻き揚げが可能な能力を有している。そのため、ロープ格納リール30では、観測機器M、及び観測機器Mに一端が接続された吊下げロープ100の繰り出し、及び巻き揚げを、余裕をもって行うことができる。このように、ケーブル巻揚機40で吊下げロープ100の繰り出し、及び巻き揚げを行うことで、ロープ格納リール30は、ケーブル巻揚機40で巻き揚げた吊下げロープ100を巻き取ることができるだけの能力を有していればよい。したがって、観測機器M、及び観測機器Mに一端が接続された吊下げロープ100全体を巻き揚げる場合に比較して、ロープ格納リール30に要求される巻揚能力が小さくて済む。その結果、ロープ格納リール30を小型化することができる。また、ケーブル巻揚機40は、観測機器Mの投入及び揚収だけでなく、海底ケーブル200の海底への敷設にも利用することができる。その結果、船舶1の低コスト化を図るとともに、観測機器Mの稼働率を高めることが可能となる。
【0031】
上記構成の船舶1では、一端が観測機器Mに接続された吊下げロープ100は、ロープ格納リール30に接続された他端との間で、ケーブル巻揚機40の巻揚ドラム41に巻き付けられる。巻揚ドラム41を回転させると、ロープ格納リール30に巻き付けられた吊下げロープ100の繰り出し、及び海中に投入した吊下げロープ100の巻き揚げを行うことができる。ロープ格納リール30では、巻揚ドラム41とロープ格納リール30との間に位置する吊下げロープ100の巻き取りが行えるだけの能力が要求され、ロープ格納リール30の小型化を図ることができる。
【0032】
上記構成の船舶1では、ロープ格納リール30は、船体2に着脱可能に設けられている。これにより、例えば海底ケーブル200の敷設時等、観測機器Mの投入、及び揚収を行わないときには、ロープ格納リール30を他の場所に移動させることができる。
【0033】
上記構成の船舶1では、船体2には、ロープ格納リール30の上方に設けられた上部甲板7と、上部甲板7の下面に設けられ、ロープ格納リール30を吊り下げて移動させる天井クレーン50と、を備える。これにより、例えば海底ケーブル200の敷設時等、観測機器Mの投入、及び揚収を行わないときには、ロープ格納リール30を、上部甲板7の下面に設けられた天井クレーン50で他の場所に容易に移動させることができる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、観測機器Mとして採泥機を船体2に搭載するようにしたが、これに限るものではなく、例えば他の用途の機器を観測機器Mとして搭載してもよい。
また、上記実施形態では、海底ケーブル200として、海底に敷設される通信用の光ファイバケーブル、給電用の電力ケーブル等を例示したが、これに限るものではなく、他の用途の海底ケーブルを敷設するようにしても良い。
また、上記実施形態では、吊下げロープ100として、ワイヤーロープ、繊維ロープ等を例示したが、これに限るものではなく、例えばチェーン等を吊下げロープ100としてもよい。
また、上記実施形態では、ケーブル巻揚機40、ロープ格納リール30について説明したが、その具体的な構成は、それぞれ所要の機能を発現できるのであれば、いかなる構成としてもよい。
【0035】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0036】
(1)第1の態様に係る船舶1は、船体2と、ケーブルタンク20と、吊下げロープ100と、ケーブル巻揚機40と、ロープ格納リール30と、を備える。前記船体2は、観測機器Mを搭載可能である。前記ケーブルタンク20は、前記船体2に設けられている。前記ケーブルタンク20は、海底に敷設される海底ケーブル200を収容可能である。前記吊下げロープ100は、前記観測機器Mに一端が接続される。前記吊下げロープ100は、前記船体2から海中に前記観測機器Mを投入したときに前記観測機器Mを吊り下げる。前記ケーブル巻揚機40は、前記船体2に設けられている。前記ケーブル巻揚機40は、前記海底ケーブル200を前記ケーブルタンク20内に巻揚可能である。前記ケーブル巻揚機40は、前記吊下げロープ100を海中から巻揚可能である。前記ロープ格納リール30は、前記ケーブル巻揚機40に巻き揚げられた前記吊下げロープ100の他端側を巻き取り可能である。
観測機器Mの例としては、採泥機等が挙げられる。
海底ケーブル200としては、海底に敷設される通信用の光ファイバケーブル、給電用の電力ケーブル等が挙げられる。
吊下げロープ100としては、ワイヤーロープ、繊維ロープ等が挙げられる。
【0037】
この船舶1は、海底ケーブル200をケーブル巻揚機40によりケーブルタンク20から繰り出し、繰り出した海底ケーブル200を海中に順次投入していくことで、海底ケーブル200を海底に敷設することができる。また、この船舶1は、ロープ格納リール30に巻き取られている吊下げロープ100を、ケーブル巻揚機40により繰り出し、繰り出した吊下げロープ100を海中に投入していくことで、吊下げロープ100の一端に接続された観測機器Mを海中に投入することができる。また、吊下げロープ100をケーブル巻揚機40で巻き揚げることで、吊下げロープ100の一端に接続された観測機器Mを海中から船体2上に引き上げることができる。ケーブル巻揚機40で巻き揚げた吊下げロープ100は、ロープ格納リール30で巻き取る。ケーブル巻揚機40は、単位長さ当たりの重量が吊下げロープ100よりも遙かに大きい海底ケーブル200の巻き揚げが可能な能力を有している。したがって、ケーブル巻揚機40は、観測機器M、及び観測機器Mに一端が接続された吊下げロープ100の繰り出し、及び巻き揚げを、余裕で行うことができる能力を有している。このようなケーブル巻揚機40で、吊下げロープ100の繰り出し、及び巻き揚げを行うことで、ロープ格納リール30は、ケーブル巻揚機40で巻き揚げた吊下げロープ100を巻き取ることができるだけの能力を有していればよい。したがって、観測機器M、及び観測機器Mに一端が接続された吊下げロープ100全体を巻き揚げる場合に比較して、ロープ格納リール30に要求される巻揚能力が小さくて済む。その結果、ロープ格納リール30を小型化することができる。また、ケーブル巻揚機40は、観測機器Mの投入及び揚収だけでなく、海底ケーブル200の海底への敷設にも利用することができる。したがって、観測機器Mを備えた船舶1の低コスト化を図るとともに、観測機器の稼働率を高めることが可能となる。
【0038】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記ケーブル巻揚機40は、前記観測機器Mと前記ロープ格納リール30との間に設けられ、前記吊下げロープ100の前記一端と前記他端との間の中間部が巻き付けられる巻揚ドラム41を備える。
【0039】
これにより、一端が観測機器Mに接続された吊下げロープ100は、ロープ格納リール30に接続された他端との間で、ケーブル巻揚機40の巻揚ドラム41に巻き付けられる。巻揚ドラム41を回転させると、ロープ格納リール30に巻き付けられた吊下げロープ100の繰り出し、及び海中に投入した吊下げロープ100の巻き揚げを行うことができる。ロープ格納リール30では、巻揚ドラム41とロープ格納リール30との間に位置する吊下げロープ100の巻き取りが行えるだけの能力が要求されるため、ロープ格納リール30の小型化を図ることができる。
【0040】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(1)又は(2)の船舶1であって、前記ロープ格納リール30は、前記船体2に着脱可能に設けられている。
【0041】
これにより、例えば海底ケーブル200の敷設時等、観測機器Mの投入、及び揚収を行わないときには、ロープ格納リール30を他の場所に移動させることができる。
【0042】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(1)から(3)の何れか一つ船舶1であって、前記船体2は、前記ロープ格納リール30の上方に設けられた上部甲板7と、前記上部甲板7の下面に設けられ、前記ロープ格納リール30を吊り下げて移動させる天井クレーン50と、を備える。
【0043】
これにより、例えば海底ケーブル200の敷設時等、観測機器Mの投入、及び揚収を行わないときには、ロープ格納リール30を、上部甲板7の下面に設けられた天井クレーン50で他の場所に容易に移動させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
4…船底
5…第一甲板
6…第二甲板
6r…後部作業甲板
7…上部甲板
8…上部構造
9…底部甲板
10…機関室
11…後部隔壁
12…隔壁
14…推進器
20…ケーブルタンク
22…ケーブルコーン
30…ロープ格納リール
31…リール本体
40…ケーブル巻揚機
41…巻揚ドラム
42…ホールド装置
50…天井クレーン
51…レール
52…クレーン本体
61…シーブ
62…A型フレームクレーン
100…吊下げロープ
200…海底ケーブル
Dc…周方向
Dc1…第一方向
Dc2…第二方向
FA…船首尾方向
M…観測機器