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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】クローラ式作業用車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/04 20060101AFI20220517BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220517BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20220517BHJP
   B60K 6/08 20060101ALI20220517BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
F02D29/04 F
E02F9/22 A
B60K26/02
B60K6/08
F02D29/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019173788
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050653
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝広
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 貴登
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一郎
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-143428(JP,A)
【文献】特開2009-264211(JP,A)
【文献】特開2012-91541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/04
E02F 9/22
B60K 26/02
B60K 6/08
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される走行油圧ポンプおよびパイロット油圧ポンプと、
前記走行油圧ポンプから供給される圧油により駆動される走行油圧モータと、
車体の左右に一対で設けられて前記走行油圧モータにより駆動されるクローラと、
走行レバーの操作量に基づいて前記パイロット油圧ポンプから供給される圧油により走行パイロット圧を生成する走行パイロット圧生成装置と、
前記走行パイロット圧の圧力値を検出する圧力センサと、
前記エンジンの負荷率の算出および回転数制御を含む駆動制御を行う制御装置と、を備え、
前記走行油圧モータとして、左右の前記クローラにそれぞれ対応する第1走行油圧モータおよび第2走行油圧モータの二つが設けられており、
前記走行パイロット圧として、前記第1走行油圧モータの制御用となる第1走行パイロット圧、および前記第2走行油圧モータの制御用となる第2走行パイロット圧が生成され、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動後に、前記第1走行パイロット圧の圧力値および前記第2走行パイロット圧の圧力値を取得して、前記第1走行パイロット圧の圧力値と前記第2走行パイロット圧の圧力値との差が所定範囲内となる車両直進状態の場合において、前記第1走行パイロット圧の圧力値もしくは前記第2走行パイロット圧の圧力値の少なくとも一方が所定の第1圧力値より上昇しない場合に高速域がOFFであり、前記第1走行パイロット圧の圧力値および前記第2走行パイロット圧の圧力値が共に所定の第1圧力値より上昇した場合に高速域がONであると判定すると共に、
前記エンジンの前記負荷率が所定の第1負荷率より上昇しない場合に低負荷状態であり、前記エンジンの前記負荷率が所定の第1負荷率より上昇した場合に高負荷状態であると判定し、
前記負荷率が低負荷状態の場合において、
前記高速域がOFFの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を課して、許容回転数として相対的に低く設定されている第1最大回転数に回転数の上限を設定し、
前記高速域がONの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を解除して、許容回転数として相対的に高く設定されている第2最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行うこと
を特徴とするクローラ式作業用車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記負荷率が高負荷状態の場合において、
前記高速域がOFFの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を課して、前記第1最大回転数に回転数の上限を設定し、
前記高速域がONの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を解除して、前記エンジンの前記負荷率の値に対応させて前記第1最大回転数と前記第2最大回転数との間の範囲内で設定された最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行うこと
を特徴とする請求項1記載のクローラ式作業用車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記高速域がONであると判定した後に、前記第1走行パイロット圧の圧力値もしくは前記第2走行パイロット圧の圧力値の少なくとも一方が所定の第2圧力値より低下した場合に前記高速域がOFFであると判定すること
を特徴とする請求項1または請求項2記載のクローラ式作業用車両。
【請求項4】
前記第2圧力値は、前記第1圧力値よりも小さい値に設定されていること
を特徴とする請求項3記載のクローラ式作業用車両。
【請求項5】
前記圧力センサは、前記走行レバーの操作量に応じて増減する前記走行パイロット圧の圧力値を信号として出力する構成であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のクローラ式作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右に一対で設けられたクローラにより走行するクローラ式作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラにより走行する作業用車両の一例として、クローラ式キャリアが知られている(特許文献1:特開平8-244651号公報参照)。このようなクローラ式キャリアは、一例として、車体の前部(例えば、左側部)に、オペレータが乗車して操縦を行う操縦室が設けられ、車体の前部(例えば、右側部)に、走行装置等を駆動するためのエンジンが収納されるエンジンルームが設けられている。一方、車体の後部に、土砂等を積載するベッセル(荷台)が跳ね上げ動作可能なように設けられている。走行の際は、左右のクローラの作動速度を異ならせることによって進行方向の転換を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-244651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に例示されるような従来のクローラ式作業用車両においては、走行レバーを僅かに操作して低速で走行するような場合にもエンジンの回転数が上昇してしまう構成となっていた。そのため、燃費性能の悪化や騒音の増大を招くばかりでなく、操作性を悪化させる要因ともなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、特に低速走行時等における燃費性能の改善および騒音の低減が可能であると共に、操作性の悪化を防止することが可能なクローラ式作業用車両を実現することを目的とする。
【0006】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係るクローラ式作業用車両は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される走行油圧ポンプおよびパイロット油圧ポンプと、前記走行油圧ポンプから供給される圧油により駆動される走行油圧モータと、車体の左右に一対で設けられて前記走行油圧モータにより駆動されるクローラと、走行レバーの操作量に基づいて前記パイロット油圧ポンプから供給される圧油により走行パイロット圧を生成する走行パイロット圧生成装置と、前記走行パイロット圧の圧力値を検出する圧力センサと、前記エンジンの負荷率の算出および回転数制御を含む駆動制御を行う制御装置と、を備え、前記走行油圧モータとして、左右の前記クローラにそれぞれ対応する第1走行油圧モータおよび第2走行油圧モータの二つが設けられており、前記走行パイロット圧として、前記第1走行油圧モータの制御用となる第1走行パイロット圧、および前記第2走行油圧モータの制御用となる第2走行パイロット圧が生成され、前記制御装置は、前記エンジンの始動後に、前記第1走行パイロット圧の圧力値および前記第2走行パイロット圧の圧力値を取得して、前記第1走行パイロット圧の圧力値と前記第2走行パイロット圧の圧力値との差が所定範囲内となる車両直進状態の場合において、第1走行パイロット圧の圧力値もしくは第2走行パイロット圧の圧力値の少なくとも一方が所定の第1圧力値より上昇しない場合に高速域がOFFであり、前記第1走行パイロット圧の圧力値および前記第2走行パイロット圧の圧力値が共に所定の第1圧力値より上昇した場合に高速域がONであると判定すると共に、前記エンジンの前記負荷率が所定の第1負荷率より上昇しない場合に低負荷状態であり、前記エンジンの前記負荷率が所定の第1負荷率より上昇した場合に高負荷状態であると判定し、前記負荷率が低負荷状態の場合において、前記高速域がOFFの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を課して、許容回転数として相対的に低く設定されている第1最大回転数に回転数の上限を設定し、前記高速域がONの場合には、前記エンジンの最大回転数の第1制限を解除して、許容回転数として相対的に高く設定されている第2最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行うことを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクローラ式作業用車両によれば、特に低速走行時等において、燃費性能の改善および騒音の低減を図ることができると共に、操作性の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るクローラ式作業用車両の例を示す斜視図である。
図2図1に示すクローラ式作業用車両の油圧回路システムの概略図である。
図3図1に示すクローラ式作業用車両のエンジン回転数制御に係るフローチャートである。
図4図1に示すクローラ式作業用車両のエンジン回転数制御におけるエンジン回転数の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係るクローラ式作業用車両1の例を示す概略図(後部上方からの斜視図)である。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0011】
はじめに、クローラ式作業用車両1(以下、単に「車両」と称する場合がある)の全体構成について説明する。ここでは、本実施形態に係るクローラ式作業用車両1としてクローラ式キャリアを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、クローラ式作業用車両1は、車体10の下部に、左右一対のクローラ(無端状の履帯)22を有する走行装置12が設けられている。また、車体10の前部(例えば、左側部)には、オペレータ(操縦者)が乗車して操縦を行う密閉型(もしくは開放型)の操縦室16が設けられている。さらに、車体10の前部(例えば、右側部)には、走行装置等を駆動するためのエンジン24等が収納されるエンジンルーム20が設けられている。一例として、エンジンには、水冷式ディーゼルエンジンが用いられる。一方、車体10の後部には、土砂等を積載するベッセル14が跳ね上げ動作可能なように設けられている。なお、操縦者によって走行の操作を行う走行レバーおよびベッセル14の操作を行う操作レバー、ならびにエンジンのスロットル開度を調整するアクセルペダルは、操縦室16内に配置されている(いずれも不図示)。
【0013】
続いて、本実施形態に係るクローラ式作業用車両1の油圧回路システムの概略図を図2に示す。一例として、クローラ式作業用車両1は、HST(Hydraulic Static Transmission)を備えて走行する構成としている。より詳しくは、エンジン24により駆動される可変容量型の走行油圧ポンプ26(26A、26B)およびパイロット油圧ポンプ28と、走行油圧ポンプ26(26A、26B)から供給される圧油により駆動される走行油圧モータ30(30A、30B)と、走行レバーの操作量に基づいてパイロット油圧ポンプ28から供給される圧油により走行パイロット圧を生成する走行パイロット圧生成装置32と、を備えている。すなわち、上記のクローラ22は、走行油圧ポンプ26(26A、26B)から供給される圧油で駆動される走行油圧モータ30(30A、30B)によって駆動される。
【0014】
さらに、走行パイロット圧の圧力値を検出して制御装置40へ出力する圧力センサ34(34FL、34RL、34FR、34RR)と、クローラ式作業用車両1全般の駆動制御を行う制御装置40と、制御装置40からの指令に基づいてエンジン24の制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)42と、を備えている。なお、本実施形態においては、制御装置40が、エンジン24の負荷率の算出および回転数制御(ECU42への回転数指令)を行う構成としている。
【0015】
また、走行油圧ポンプ26(26A、26B)から走行油圧モータ30(30A、30B)に油路36(36A、36B)を介して供給される圧油の方向および流量を制御するリモコンバルブ38(38A、38B)や、当該リモコンバルブ38(38A、38B)および油圧回路システムのその他機構の駆動に係る各制御圧を制御する信号制御弁(不図示)等を備えている。なお、走行パイロット圧は、操縦者による走行レバーの操作によりリモコンバルブ38(38A、38B)が開閉制御されて、圧力が設定(調整)される。
【0016】
このような構成によって、操縦者が走行レバーを操作することで走行パイロット圧が設定され、当該圧力によって出力が可変となる走行油圧ポンプ26(26A、26B)が走行油圧モータ30(30A、30B)を駆動することでクローラ22を動作させて、車両の走行や旋回が行われる。なお、ベッセル14の動作を行う油圧機構等については、公知の車両と同様であるため、詳細の説明を省略する。
【0017】
ここで、本実施形態においては、走行油圧モータ30として、一方(例えば、左)のクローラに対応する第1走行油圧モータ30A、および他方(例えば、右)のクローラに対応する第2走行油圧モータ30Bの二つが設けられている。したがって、走行パイロット圧として、第1走行油圧モータ30Aの制御用となる第1走行パイロット圧、および第2走行油圧モータ30Bの制御用となる第2走行パイロット圧が生成される構成となっている。
【0018】
前述の通り、圧力センサ34は、走行レバーの操作量に応じて増減する走行パイロット圧の圧力値を検出し、信号として制御装置40へ出力する構成である。本実施形態においては、当該圧力センサ34として、第1走行油圧モータ30Aが前進方向に回転する際の第1走行パイロット圧の圧力値を検出・出力する第1前進センサ34FL、第1走行油圧モータ30Aが後進方向に回転する際の第1走行パイロット圧の圧力値を検出・出力する第1後進センサ34RLを備えている。さらに、第2走行油圧モータ30Bが前進方向に回転する際の第2走行パイロット圧の圧力値を検出・出力する第2前進センサ34FR、第2走行油圧モータ30Bが後進方向に回転する際の第2走行パイロット圧の圧力値を検出・出力する第2後進センサ34RRを備えている。
【0019】
このような構成によって、以下で詳しく説明する本実施形態ならではの制御方法が実現できるため、前述の課題に対してその解決を図ることが可能となる。ここで、図3は、本実施形態に係るクローラ式作業用車両1におけるエンジン回転数制御に係る処理内容を示すフローチャートである。また、図4は、当該制御におけるエンジン回転数を説明する図である。
【0020】
本実施形態に係る制御装置40が行うエンジン回転数制御の概要として、先ず、制御装置40は、前述の各圧力センサ34(第1前進センサ34FL、第1後進センサ34RL、第2前進センサ34FR、第2後進センサ34RR)により検出されて出力される圧力値を取得するステップを実施する(ステップS1)。
【0021】
次いで、制御装置40は、クローラ式作業用車両1の走行状態に関して直進状態であるか否かを判定するステップを実施する(ステップS2)。一例として、圧力センサ34によって検出される第1走行パイロット圧の圧力値と第2走行パイロット圧の圧力値とが、共に走行レバーの操作による走行指令を受けた状態において、両圧力値の差が所定範囲内となる場合に車両直進状態であると判定する。当該ステップS2において、車両直進状態であると判定された場合に、後述のステップS3を実施し、車両直進状態ではないと判定された場合に、後述のステップS4を実施する。ちなみに、車両直進状態ではない状態として、具体的には車両旋回状態および車両停止状態が挙げられる。
【0022】
次いで、制御装置40は、クローラ式作業用車両1の走行状態に関して高速域であるか否かを判定するステップを実施する(ステップS3)。より詳しくは、エンジン24の始動後に、第1走行パイロット圧の圧力値もしくは第2走行パイロット圧の圧力値の少なくとも一方が所定の第1圧力値より上昇しない場合に高速域がOFFであり、第1走行パイロット圧の圧力値および第2走行パイロット圧の圧力値が共に所定の第1圧力値より上昇した場合に高速域がONであると判定する。ただし、高速域がONであると判定した後においては(換言すれば、高速域がONであるとの判定を継続している状態においては)、第1走行パイロット圧の圧力値もしくは第2走行パイロット圧の圧力値の少なくとも一方が所定の第2圧力値より低下した場合に高速域がOFFであると判定する。なお、これらの判定はいずれも車両直進状態を前提としている。
【0023】
すなわち、上記の高速域の判定において、ON判定は次のOFF判定となるまで継続され、OFF判定は次のON判定となるまで継続される。なお、エンジン始動後の初期設定はOFF判定である。
【0024】
したがって、具体的な操作と共に説明すると、例えば、エンジン24の始動後に走行を開始するにあたって、走行レバーを始点側から終点側へ操作して始点基準の操作量が所定量よりも小さい状態にある場合に、高速域がOFFであると判定される。さらに、走行レバーを始点側から終点側へ操作して始点基準の操作量が所定量よりも大きい状態となる場合に(前述の第1圧力値より上昇した場合となる)、高速域がONであると判定される。一方、走行を開始して、走行レバーを始点側から終点側へ操作して始点基準の操作量が所定量よりも大きい状態となることによって高速域がONであると判定されている状態から、走行レバーを終点側から始点側へ操作して操作量が所定量よりも小さい状態となる場合に(前述の第2圧力値より低下した場合となる)、高速域がOFFであると判定される。
【0025】
本実施形態において、第2圧力値は、第1圧力値よりも小さい値に設定されている。一例として、第1圧力値は、1.8[MPa]に設定され、第2圧力値は、1.5[MPa]に設定されるが、これらに限定されるものではない。この構成によれば、操縦者に対して、特に走行レバーを戻す場面で、走行のパワー感が無い印象を与え難くすることができる。
【0026】
次いで、ステップS3において、高速域がOFFであると判定した場合に、制御装置40は、エンジン24の最大回転数の第1制限を課して、許容回転数として相対的に低く設定されている第1最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行うステップを実施する(ステップS4)。したがって、走行レバーを僅かに操作して低速で走行する等の場合においてもエンジン24の回転数が上昇してしまうことなく、燃費性能の改善および騒音の低減を図ることができる。また、低速走行時における操作性の悪化を防止することもできる。ちなみに、最大回転数の「上限」は、スロットル開度が100[%]のときに到達するように設定されている(後述のステップS5においても同様)。
【0027】
これに対して、ステップS3において、高速域がONであると判定した場合に、制御装置40は、エンジン24の最大回転数の第1制限を解除して、エンジン24の負荷率を算出したうえで下記のように設定される最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行うステップを実施する(ステップS5)。より具体的には、エンジン24の負荷率が低負荷状態の場合においては、許容回転数として第1最大回転数よりも相対的に高く設定されている第2最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行う。一方、エンジン24の負荷率が高負荷状態の場合においては、エンジン24の負荷率の値に対応させて第1最大回転数と第2最大回転数との間の範囲内で設定された最大回転数に回転数の上限を設定する制御を行う(図4参照)。したがって、エンジン24の最大回転数の第1制限を課すことが適当でない場合にはこれを解除でき、設定最大出力で効率的な作業を行うことができる。
【0028】
上記の「第1最大回転数」、「第2最大回転数」、「エンジンの負荷率の値に対応させて第1最大回転数と第2最大回転数との間の範囲内で設定された最大回転数」については、走行油圧ポンプ26および走行油圧モータ30の設計強度、ならびに、エンジン24の出力特性および走行、作業性能等に基づいて適宜、設定される。一例として、第1最大回転数は2330[rpm]に設定され、第2最大回転数は2530[rpm]に設定されるが、これらに限定されるものではない。また、エンジン24の負荷率における低負荷状態と高負荷状態との境界値は、一例として74[%]に設定されるが、これに限定されるものではない。なお、エンジン24の負荷率は燃料噴射量をベースに算出している。
【0029】
次いで、制御装置40は、スロットル開度の情報を取得して、前述のステップS4もしくはS5により設定された最大回転数の上限を超えないように、当該開度に応じたエンジン回転数を決定し、ECU42への回転数指令を出力するステップを実施する(ステップS6)。
【0030】
上記のステップS1~S6は、イグニッションキーがOFFとされる等によって制御装置40の電源がOFFとなるまで繰り返し実行される。
【0031】
以上説明した通り、従来のクローラ式作業用車両においては、走行パイロット圧の検出に圧力スイッチを用いること等の要因によって生じ得るエンジン回転数制御面での課題があった。その一例として、走行レバーを僅かに操作して低速で走行するといった場合にも、エンジンの回転数の制御が解除されてしまう状態が生じ、燃費性能の悪化や騒音の増大を招くと共に、走行操作性を悪化させていた。これに対し、本発明を適用することによって、当該課題の解決を図ることが可能となる。すなわち、特に車両が低速で走行するような場合において、燃費性能の改善および騒音の低減を図ることが可能となり、良好な走行操作性を実現することも可能となる。
【0032】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、クローラ式作業用車両としてクローラ式キャリアを例に挙げて説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、パワーショベル等の他のクローラ式作業用車両に対しても同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 クローラ式作業用車両
10 車体
12 走行装置
14 ベッセル
16 操縦室
20 エンジンルーム
22 クローラ
24 エンジン
26、26A、26B 走行油圧ポンプ
28 パイロット油圧ポンプ
30、30A、30B 走行油圧モータ
32 走行パイロット圧生成装置
34、34FL、34FR、34RL、34RR 圧力センサ
38、38A、38B リモコンバルブ
40 制御装置
42 エンジンコントロールユニット(ECU)
図1
図2
図3
図4