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特許7074754ポリマー処理されたアスファルト用の硫化水素捕捉剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ポリマー処理されたアスファルト用の硫化水素捕捉剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20220517BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220517BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K3/32
C08K5/3492
C08K5/3477
C08K5/053
C08K5/06
C08K5/17
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019530731
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017063760
(87)【国際公開番号】W WO2018106497
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】62/431,676
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トン シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ソレルス ジェニファー エル
(72)【発明者】
【氏名】アナンタネニ プラカーシャ ラオ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-047423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160355(US,A1)
【文献】特表2008-540739(JP,A)
【文献】特表2012-519745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289450(US,A1)
【文献】特表2011-515560(JP,A)
【文献】米国特許第05213680(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L95/00
C08K 3/00~3/40
5/00~5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリリン酸をさらに含むアスファルトまたはアスファルト混合物と、
(b)無水トリアジンからなる硫化物捕捉剤と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記硫化物捕捉剤が、低揮発性極性溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記低揮発性極性溶媒が、ジエチレングリコール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、モノエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリリン酸が、前記アスファルトまたはアスファルト混合物中に約1重量%で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ヘキサメチレンテトラミンをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アスファルトからの硫化水素排出を低減する方法であって、
ポリリン酸処理されたアスファルトまたはアスファルト混合物を無水トリアジンからなる硫化物捕捉剤と組み合わせることを含む、方法。
【請求項7】
アスファルトからの硫化水素排出を低減する方法であって、
ポリリン酸処理されたアスファルトまたはアスファルト混合物を硫化物捕捉剤と組み合わせることを含み、前記硫化物捕捉剤が、無水トリアジン、式Iの1,3,5-トリアジン誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
【化1】
(式I)
式中、R、R、およびRの各々が、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルから選択され、
ポリリン酸処理されたアスファルトは、カルボン酸亜鉛と組み合わされない、方法。
【請求項8】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルコキシから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が同じである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRのうちの少なくとも1つが、他のR、R、およびRとは異なる、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
が、-CHCHOHであり、Rが、-CHCHOHであり、Rが、-CHCHOHである、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記硫化物捕捉剤が、無水トリアジンである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記硫化物捕捉剤が、低揮発性極性溶媒をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硫化物捕捉剤がヘキサメチレンテトラミンをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
アスファルトからの硫化水素排出を低減する方法における、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
(a)ポリリン酸をさらに含むアスファルトまたはアスファルト混合物と、
(b)無水トリアジン、式Iの1,3,5-トリアジン誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択される硫化物捕捉剤と、
を含み、
【化2】
(式I)
式中、R、R、およびRの各々が、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルから選択され、
カルボン酸亜鉛を含まない、組成物。
【請求項17】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルコキシから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が、直鎖または分岐C~Cアルキルから選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が同じである、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記硫化物捕捉剤が、式Iのものであり、R、R、およびRのうちの少なくとも1つが、他のR、R、およびRとは異なる、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
が、-CHCHOHであり、Rが、-CHCHOHであり、Rが、-CHCHOHである、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリリン酸が、前記アスファルトまたはアスファルト混合物中に約1重量%で存在する、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、硫黄系種の捕捉剤に関し、より具体的には、ポリリン酸を含むがこれに限定されないポリマー改質(処理)されたアスファルトから放出される硫化水素および/またはメルカプタン蒸気を捕捉する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは、一般に、道路の建設および舗装に使用されている。アスファルトは、砂、砂利、および砕石などの骨材と熱いビチューメンとの混合物である。ビチューメンが骨材をコーティングしてアスファルトを生じ、これが路盤上に均一な層として広げられ、重い圧延装置で圧縮されて平滑化され得る。
【0003】
アスファルトは、常に硫黄を含有する。硫黄の量は、粗油の源、ならびに粗油をアスファルトに精製するために使用されるプロセスに依存する。硫黄は、異なる形態で存在し得る。例えば、硫黄は、硫化水素の形態であり得る。硫化水素、または硫化二水素は、式HSを有する化学化合物である。これは、特徴的に悪臭があるとみなされる無色の有毒な可燃性ガスである。
【0004】
硫化水素は、特にアスファルトがある特定の温度に加熱されると、アスファルトから放出され得る。例えば、硫化水素は、熱い混合温度、例えば、140℃より高い温度でビチューメンと硫黄との間で起こる脱水素反応から生じる。硫化水素排出は規制されている。したがって、アスファルト中の硫化水素の量を低減する必要性が存在する。
【0005】
アスファルトを改質するために様々なポリマーが使用されている。ポリマーがアスファルトの特性を改善する程度は、ポリマーとアスファルトの相溶性に依存する。例えば、ポリマーは、貯蔵中にアスファルトとポリマーの混合物中で分離しない。高度に相溶性または相溶化されたポリマーは、特性の改善を提供することにおいてより効果的である。ポリマーおよびアスファルトを「架橋」し、それによって混合物を相溶性にする目的で、広範囲の添加剤が使用されてきた。例えば、硫黄は周知の架橋剤である。
【0006】
ポリリン酸(Hn+23n+1)は、オルトリン酸のポリマー(HPO)である。市販されているポリリン酸は、オルトリン酸とピロリン酸、三リン酸、およびそれより高次の酸との混合物である。過リン酸は、105% HPOで販売されている同様の混合物である。他のグレードのリン酸は、水を含有する場合があるが、典型的に、アスファルト改質には使用されない。これは、精製所または末端での発泡および腐食の問題を排除する。PPAの主な用途は、界面活性剤製造、水処理、医薬品合成、顔料製造、防炎加工、金属加工、およびアスファルト改質である。この回覧では、アスファルト改質としてのPPAの使用について具体的に論じる。
【0007】
PPAは、アスファルトの性能特性を改質するために精製所で広く使用されてきた。しかしながら、その強い酸性度のために、PPAは、大部分のHS捕捉剤を元に戻し、捕捉剤処理されたアスファルトから望ましくない硫化水素の放出を許容するであろう。
【0008】
したがって、本開示は、アスファルトの調製中、ならびに最終アスファルト材料中の硫化水素の放出の低減または低い放出をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2016/289450号明細書
【発明の概要】
【0010】
一態様では、(a)ポリリン酸をさらに含むアスファルトまたはアスファルト混合物と、(b)ヘキサメチレンテトラミン、無水トリアジン、および式Iの1,3,5-トリアジン誘導体からなる群から選択される硫化物捕捉剤と、を含む組成物が開示され、
【化1】
式中、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルから選択される。
別の態様では、ポリリン酸処理されたアスファルトまたはアスファルト混合物を、硫化物捕捉剤と組み合わせることを含む、アスファルトからの硫化水素排出を低減する方法であって、該硫化物捕捉剤は、ヘキサメチレンテトラミン、無水トリアジン、および式Iの1,3,5-トリアジン誘導体からなる群から選択され、
【化2】
式中、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルから選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、式Iのものであり、R、R、およびRの各々が、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルコキシから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、式Iのものであり、R、R、およびRの各々は、C~C直鎖または分岐アルキルから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、式Iのものであり、R、R、およびRの各々は同じである。
【0014】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、式Iのものであり、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、他のR、R、およびRとは異なる。
【0015】
いくつかの実施形態では、Rは、-CHCHOHであり、Rは、-CHCHOHであり、Rは、-CHCHOHである。
【0016】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、ヘキサメチレンテトラミンである。
【0017】
いくつかの実施形態では、捕捉剤は、無水トリアジンである。
【0018】
いくつかの実施形態では、無水トリアジンは、低揮発性極性溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、低揮発性極性溶媒は、ジエチレングリコール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、モノエタノールアミン、およびそれらの混合物から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリリン酸は、アスファルトまたはアスファルト混合物中に約1重量%で存在する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、アスファルトからの硫化水素排出を低減する方法における、本明細書に開示される任意の組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、PPA処理されたアスファルトにおける使用のための硫化物捕捉剤のファミリー、およびその調製に関する。捕捉剤は、PPA処理されたアスファルトの硫化水素排出を低減することにおいて特に効率的である。本開示は、1種以上の硫化物捕捉剤とともに、PPA処理されたアスファルトを含む組成物を対象とする。本開示はまた、PPA処理されたアスファルトからの硫化水素排出を低減する方法、およびその調製を対象とする。
【0022】
異なるように明示的に述べられない限り、用語「a(ある1つの)」の使用は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの捕捉剤(a scavenger)」は、「少なくとも1種の捕捉剤」または「1種以上の捕捉剤」を含むことを意図する。
【0023】
絶対項または近似項で与えられる任意の範囲はどちらも、両方を包括することを意図するものであり、本明細書において使用されるあらゆる定義は、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるものの、具体的な実施例において示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、それらそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差に必然的に起因するある特定の誤差を本質的に含んでいる。また、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる全ての部分範囲(全ての小数値および全体値を含む)を包括するものとして理解されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「することができる(can)」、「含有する(contain)」、およびそれらの変形は、追加の作用または構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、または単語であることが意図される。単数形「a」、「and」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態または要素を「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」他の実施形態も企図する。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」等の語句は、特許請求の範囲を、特定の材料またはステップ、および請求された発明の基本的および新規特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップに限定する。
【0025】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、定義された数の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30個の炭素)を有する炭化水素ラジカルを指す。分岐アルキル基としては、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、1,1-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、3,4-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、1,2,2-トリメチルブチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,3,3-トリメチルブチル、2,2,3-トリメチルブチル、2,3,3-トリメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-エチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、1-エチル-1-メチルブチル、1-エチル-2-メチルブチル、1-エチル-3-メチルブチル、2-エチル-1-メチルブチル、2-エチル-2-メチルブチル、2-エチル-3-メチルブチル、1-プロピルブチル、1,1-ジエチルプロピル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~30である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~20である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~15である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~10である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~8である。
【0027】
本明細書で使用される「アルコキシル」という用語は、定義された数の炭素原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30個の炭素)を有するエーテルラジカルを指す。分岐アルキル基としては、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソブトキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メトキシブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1-メチルヘキソキシ、2-メチルヘキソキシ、3-メチルヘキソキシ、4-メチルヘキソキシ、5-メチルヘキソキシ、1,1-ジメチルペントキシ、1,2-ジメチルペントキシ、1,3-ジメチルペントキシ、1,4-ジメチルペントキシ、2,2-ジメチルペントキシ、2,3-ジメチルペントキシ、2,4-ジメチルペントキシ、3,3-ジメチルペントキシ、3,4-ジメチルペントキシ、4,4-ジメチルペントキシ、1,1,2-トリメチルブトキシ、1,1,3-トリメチルブトキシ、1,2,2-トリメチルブトキシ、1,2,3-トリメチルブトキシ、1,3,3-トリメチルブトキシ、2,2,3-トリメチルブトキシ、2,3,3-トリメチルブトキシ、1,1,2,2-テトラメチルプロポキシ、1-エチルペントキシ、2-エチルペントキシ、3-エチルペントキシ、1-エチル-1-メチルブトキシ、1-エチル-2-メチルブトキシ、1-エチル-3-メチルブトキシ、2-エチル-1-メチルブトキシ、2-エチル-2-メチルブトキシ、2-エチル-3-メチルブトキシ、1-プロピルブトキシ、1,1-ジエチルプロポキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態では、アルコキシ基のアルキル部分の炭素原子数は、6~30である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~20である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~15である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~10である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素原子数は、6~8である。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「アスファルト」は、室温で固体または半固体であり、加熱すると徐々に液化する様々な材料のうちのいずれかを指し、ここで主成分は、天然に存在するビチューメン(またはケロジェン)であるか、または石油精製中の残渣として得られる材料のようなビチューメンである。本明細書で使用されるアスファルトは、ASTMがアスファルトとして定義するもの、すなわち主成分が天然に存在するかまたは石油処理で得られるビチューメンである暗褐色から黒色のセメント質材料を含むことが明確に企図される。アスファルトは、アスファルテンと呼ばれる非常に高い分子量の炭化水素を特徴的に含有する。これらは、本質的に二硫化炭素、ならびに芳香族および塩素化炭化水素に可溶である。ビチューメンは、アスファルト、タール、ピッチ、およびアスファルテンが典型的である高分子量炭化水素で主に構成される、天然または製造された黒色または暗色のセメント質物質のクラスとしてASTMによって定義されている総称である。ASTMはさらに、稠度または粘度についての貫入試験を用いて、アスファルトまたはビチューメン質材料を固体、半固体、または液体として分類する。この分類では、固体材料とは、25℃で100グラムの荷重を5秒間かけたときに1ミリメートル以下の貫入を有するものであり、半固体とは、25℃で50グラムの荷重を5秒間かけたときに1ミリメートルを超える貫入を有するものである。今日、半固体および液体アスファルトが、商業的慣習で優勢を占めている。例えば、任意のアスファルト底部留分、ならびに天然に存在するアスファルト、タール、およびピッチは、本明細書では用語「ビチューメン」と交換可能に使用することができる。用語「アスファルトコンクリート」は、典型的に、舗装材料として使用するための、適切な骨剤が添加された結合剤として使用されるアスファルトを意味する。
【0030】
用語「底部留分」は、引火点が約70°F以上の粗留分を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「無水」は、存在する水の量が約5重量パーセント未満である組成物を指す。
【0032】
組成物
本明細書に開示される組成物としては、アスファルトまたはポリリン酸で処理されたアスファルト混合物が挙げられる。組成物はまた、硫化物捕捉剤を含む。硫化物捕捉剤は、ヘキサメチレンテトラミン、無水トリアジン、および式Iの1,3,5-トリアジン誘導体から選択され、
【化3】
式中、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキル、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキル、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、硫化物捕捉剤は、以下の構造を有する、ヘキサメチレンテトラミンである(時には(HMTA)と省略される)。
【化4】
【0034】
いくつかの実施形態では、硫化物捕捉剤は、無水トリアジンである。トリアジンは、以下の構造を有する。
【化5】
【0035】
いくつかの実施形態では、硫化物捕捉剤は、式Iの1,3,5-トリアジン誘導体であり、
【化6】
上記で定義されたR、R、およびRに対する置換基を有する。いくつかの実施形態では、R、R、およびRは、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々の各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルキルから選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は、独立して、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は、独立して、ヒドロキシル置換された直鎖または分岐C~C30アルキルである。
【0037】
いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルである。いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は、独立して、直鎖または分岐C~C30アルコキシで置換された直鎖または分岐C~C30アルキルである。
【0038】
いくつかの実施形態では、R、R、およびRの各々は同じである。いくつかの実施形態では、Rは、RおよびRとは異なる。いくつかの実施形態では、RおよびRは同じである。いくつかの実施形態では、RおよびRは同じであり、またRとは異なる。いくつかの実施形態では、Rは、RおよびRとは異なり、Rは、Rとは異なる。
【0039】
アスファルト組成物は、ポリリン酸を含む。アスファルトのかかる酸改変は、一般に、例えば、改善された低温性能を呈するアスファルト組成物をもたらす。アスファルト組成物は、約5重量%以下の酸を含む。いくつかの実施形態では、アスファルト組成物は、約3重量%以下の酸を含む。いくつかの実施形態では、アスファルト組成物は、約2.5重量%未満の酸を含む。いくつかの実施形態では、アスファルト組成物は、約1重量%未満の酸を含み、例えば、約0.01重量%~約1重量%の酸、または約0.05重量%~約1重量%の酸、または約0.1重量%~約1重量%の酸を含み得る。
【0040】
本明細書に開示される組成物は、1種以上の添加剤を任意に含み得る。適切な添加剤としては、アスファルテン抑制剤、パラフィン抑制剤、腐食抑制剤、スケール抑制剤、乳化剤、浄水剤、分散剤、乳化破壊剤、ガスハイドレート抑制剤、殺生物剤、pH調整剤、界面活性剤、溶媒、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
アスファルト組成物は、例えば、スルホン化剤、架橋剤、またはそれらの組み合わせなどの添加剤をさらに含んでもよい。アスファルト組成物は、例えば、全添加剤の約0.001重量%~約5重量%または全添加剤の約0.01重量%~約3重量%を含み得る。
【0042】
架橋剤は、例えば、活性剤(例えば、酸化亜鉛)、硫黄化合物(例えば、メルカプトベンゾチゾール(MBT))などの促進剤、またはMBTの亜鉛塩などの促進剤と活性剤の両方であり得る。一実施形態では、架橋剤は、金属酸化物である。
【0043】
添加剤は、例えば、不飽和官能性モノマー、不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和無水物、不飽和エステル、不飽和アミド、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0044】
調製方法
一般に、組成物は、無水の硫化物捕捉剤を用いて作製され、約250℃超またはそれ以下の温度での、ポリリン酸処理されたアスファルトおよびアスファルト混合物の取り扱いを容易にする。いくつかの実施形態では、アスファルトまたはアスファルト混合物の温度は、約200℃未満である。いくつかの実施形態では、アスファルトまたはアスファルト混合物の温度は、約150℃未満である。いくつかの実施形態では、アスファルトまたはアスファルト混合物の温度は、約100℃未満である。いくつかの実施形態では、アスファルトまたはアスファルト混合物の温度は、約90℃未満である。
【0045】
そのようなアスファルト組成物を形成する例示的な方法を以下に記載するが、そのような組成物を形成するために利用され得る方法を決して限定しない。例えば、一実施形態では、アスファルトを第1の混合容器中で約140℃~205℃の温度に加熱する。次いでアスファルト濃縮物を第2の混合容器に移すか、または第1の混合容器中に残してもよい。
【0046】
ポリリン酸を添加する。酸は、例えば、約20分~約1時間など、発泡を回避するのに十分な徐放で添加される。しかしながら、酸は、プロセス中の任意の時点で、プロセス中の任意の容器または導管に添加することができる。例えば、酸は、第1もしくは第2の混合容器に添加され得るか、または第1および第2の混合容器を動作可能に接続する導管に添加され得る。
【0047】
硫化物捕捉剤を添加する。捕捉剤は、ポリリン酸を添加する前またはその後に添加することができる。硫黄捕捉剤の撹拌下での添加は、典型的には15分~10時間である。硫黄捕捉剤の濃度は、混合物の加工性に応じて変化し、典型的には5重量%~90重量%、最も典型的には20~60重量%の範囲であり得る。アスファルトまたはビチューメンへの添加率は、その固形分に比例し、0.01~10重量%、好ましくは0.1~0.5重量%で変化する。他のプロセス制御ステップは、捕捉剤とアスファルト混合物との混合を保証するように完全な撹拌および混合を含む。
【0048】
製品用途
本明細書に記載のアスファルト組成物は、例えば、道路舗装、シーリング、防水加工、アスファルトセメント、および/または屋根葺きなどの多くの用途に使用することができる。
【0049】
化合物、組成物、方法、およびプロセスは、以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるであろう。これらの実施例は、例示として意図され、本開示の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0050】
ポリリン酸処理されたアスファルトからの硫化物排出を測定して、様々な硫化物捕捉剤の有効性を調べた。下記に報告され観察された全てのHSレベルは、注釈付きの温度および残存時間で修正ASTM D5705によって測定した。
【0051】
S試験は、アスファルトに1重量%のPPAを添加し、混合物を300°Fで24時間保持することによって実施して、任意のHSの放出を可能にした。この24時間の期間の終わりに、試料の気相HS濃度を決定し、初期HSとして記録した。次いで、捕捉剤をこのPPA処理されたアスファルト試料に添加し、さらに24時間または48時間にわたって試料を300°Fで保持した。この24時間または48時間後の気相HSを測定し、最終HSとして報告した。
【0052】
試験した硫化水素捕捉剤には、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)-表1および無水トリアジン-表2が含まれた。
【表1】

【表2】