(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】コート紙、板紙又はフィルムの製造方法及びコート紙、板紙又はフィルム
(51)【国際特許分類】
D21H 19/34 20060101AFI20220517BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20220517BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
D21H19/34
D21H11/18
D21H15/02
(21)【出願番号】P 2019530734
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 IB2017058246
(87)【国際公開番号】W WO2018116223
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】サウッコネン、エサ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/097964(WO,A1)
【文献】特開2017-066545(JP,A)
【文献】特表2016-517901(JP,A)
【文献】特開2010-167411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0281487(US,A1)
【文献】特表2013-528239(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
B32B1/00-43/00
C08J5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むコート紙、板紙又はフィルムの製造方法:
- セルロース繊維を含む第1の懸濁液を提供する工程、
- 前記第1の懸濁液を基材上に塗布して、繊維ウェブを形成する工程であって、前記ウェブが第1及び第2の面を有する、工程、
- ミクロフィブリル化セルロースを含む第2の懸濁液を提供する工程、
ただし、第2の懸濁液中のミクロフィブリル化セルロースの乾燥重量は、第2の懸濁液の総重量の1重量%より大きく、10重量%を越えない、
- 前記第2懸濁液を乾燥装置の表面に塗布する工程、及び
- 前記繊維ウェブを、前記乾燥装置を通して導き、それによって前記第2の懸濁液を前記ウェブの前記第1の面に追加して、前記コート紙、板紙又はフィルムを形成する工程
。
【請求項2】
第1の懸濁液が、前記懸濁液の全乾燥重量に基づいて0.01重量%~20重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の懸濁液が、前記懸濁液の全乾燥重量に基づいて70重量%~100重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の懸濁液の前記ミクロフィブリル化セルロースが、90未満のSchopper-Riegler値を有する、請求項2~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2の懸濁液が、前記懸濁液の全乾燥重量に基づいて70重量%~100重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第2の懸濁液が、95を超えるSchopper-Riegler値を有するミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第2の懸濁液が、0.1~8gsmの坪量を有するコーティングが形成される量で塗布される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記形成された繊維ウェブを、前記ウェブが前記乾燥装置を通して導かれる前に、25~90重量%の乾燥含量にまで脱水する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
使用される前記乾燥装置が、Yankee乾燥cylinder、金属ベルト乾燥機、プラスチックベルト乾燥機又はCondebelt乾燥装置等の接触乾燥装置である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ポリマーを含む表面サイズ、フォームコーティング及び/又は分散コーティングを、前記接触乾燥装置に直接接触していない前記紙、板紙又はフィルムの前記面に塗布する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ポリマー層を、ポリマーフィルムの積層又はポリマーの押出コーティングのいずれかによって、前記接触乾燥装置に直接接触していない前記紙、板紙又はフィルムの前記面に塗布する工程をさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コート紙、板紙又はフィルムの製造方法であって、そのコーティングがミクロフィブリル化セルロースを含む方法、及びその方法に従って製造されるコート紙、板紙又はフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、板紙からパッケージを製造し、パッケージに関連して使用されるフィルムを製造する場合、それらが良好なバリア特性を有することはしばしば重要である。パッケージの最終用途に応じて、バリア特性及びパッケージ自体に対して種々の要求がある。
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、紙、板紙又はフィルムに、良好な強度特性及びバリア特性の両方を提供できることが知られている。しかしながら、ミクロフィブリル化セルロースを使用する場合には、より高いコンシステンシーにおけるそのゲル形成特性のために大きな課題がある。したがって、ミクロフィブリル化セルロースを添加しようとする場合、多量の水を添加する必要があるという課題がある。
【0003】
今日では、フィルムを製造する場合、多量のミクロフィブリル化セルロースを含む良好なバリアフィルムを製造することが可能である。このことは、例えば、AulinらのOxygen and oil barrier properties of microfibrillated cellulose films and coatings, Cellulose (2010) 17:559-574、LavoineらのMicrofibrillated cellulose - Its barrier properties and applications in cellulosic materials: A review, Carbohydrate polymers 90 (2012) 735-764、及びKumarらのComparison of nano- and microfibrillated cellulose films, Cellulose (2014) 21:3443-3456に記載されている。
【0004】
しかしながら、良好なバリア特性及び高い強度、特に高い引き裂き強度の両方を有し、多量のミクロフィブリル化セルロースを含むフィルム、特に薄いフィルムを製造することは困難である。1つの可能性のある解決策は、ミクロフィブリル化セルロース及びより長いセルロース繊維の両方を含むフィルムを製造することであろう。しかしながら、より長い繊維が存在すると、フィルムのバリア特性が悪化することが分かった。また、ミクロフィブリル化セルロースには、より長い繊維に強く結合する傾向があるので、繊維は、引き裂き条件下で(伸びるのではなく)切断されて、フィルムの引き裂き強度は改善されない。さらに、セルロース繊維はフィルムの厚さに影響を与える恐れがある。
別の解決策は、強度向上化学物質をフィルムに添加することであり得る。化学物質の使用はフィルムのバリア特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、化学物質を使用するとフィルムの製造コストも上昇する。
【0005】
したがって、良好なバリア特性及び強度特性の両方を有し、かつ効率的な方法で製造することができるミクロフィブリル化セルロースを含む紙、板紙又はフィルムを製造する必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、紙、板紙又はフィルムの少なくとも片面にミクロフィブリル化コーティング層を設ける方法を提供し、この方法により、先行技術の方法の欠点の少なくとも幾つかを排除又は軽減することである。
【0007】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。態様は、添付の従属請求項及び以下の説明に記載される。
本発明は、コート紙、板紙又はフィルムの製造方法であって、前記方法が、セルロース繊維を含む第1の懸濁液を提供する工程、前記第1の懸濁液を基材上に塗布して、第1の面と第2の面とを有する繊維ウェブを形成する工程、ミクロフィブリル化セルロースを含む第2の懸濁液を提供する工程、前記第2の懸濁液を乾燥装置の表面に塗布する工程、及び前記繊維ウェブを、前記乾燥装置を通して導き、これにより、前記第2の懸濁液が前記ウェブの前記第1の面に追加されて、コート紙、板紙又はフィルムが形成される工程、を含む、方法に関する。
【0008】
セルロース繊維とは、ミクロフィブリル化セルロースを含む任意の種類のセルロース繊維を意味する。
第1の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の固形分の全乾燥重量に基づいて0.01重量%から20重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。紙又は板紙製品を製造する場合、繊維ウェブは、紙又は板紙に改善された強度特性をもたらすために、ミクロフィブリル化セルロースを含むことができる。
第1の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の固形分の全乾燥重量に基づいて70重量%から100重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。このように、多量のMFC、好ましくは70から100重量%の間のMFCを含むMFCフィルムが製造され、これは最終的なコーティング層が追加される前のフィルム自体中のMFCの量に関係する。
【0009】
第1の懸濁液は、好ましくは、ミクロフィブリル化セルロースを含み、前記ミクロフィブリル化セルロースは90未満、好ましくは70から85の間のSchopper-Riegler(SR)値を有する。第1の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースの大部分、好ましくは第1の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースの50%より多くが、90未満のSR値を有する。したがって、第1の懸濁液は、非常に粗い及び/又は長いMFCを含み、中間のMFC品質と見なされ得る。
【0010】
第2の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の全乾燥重量を基づいて70重量%から100重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む。したがって、繊維ウェブに塗布されるコーティング(the coated)は多量のMFCを含む。これは、最終的な追加のコーティング層が追加される前のコーティング自体中のMFCの量に関する。
第2の懸濁液は、好ましくは、95を超えるSchopper-Riegler(SR)値を有するミクロフィブリル化セルロースを含む。第2の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースの大部分、好ましくは、第2の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースの50%より多くが、95を超えるSR値を有する。したがって、第2の懸濁液は、細かい及び/又は短いMFCを含む。
第2の懸濁液は、好ましくは、0.1から8gsm、好ましくは0.3から4gsmの間の坪量を有するコーティングが形成されるに至る量で塗布される。紙、板紙又はフィルムに形成されるコーティングは非常に薄い。紙、板紙又はMFCフィルムに薄いコーティングを追加することによって、紙、板紙又はフィルムのバリア特性が改善されることを見出した。
【0011】
本方法は、形成された繊維ウェブを、乾燥装置を通して導く前に、形成された繊維ウェブを25から90重量%、好ましくは40から90重量%、さらにより好ましくは50から80重量%の乾燥含量にまで脱水する工程をさらに含み得る。繊維ウェブを、乾燥装置を通して導くことができ、かつ第2の懸濁液の追加及びコーティング層の形成が可能になるように、繊維ウェブの乾燥含量が低過ぎないことが重要であり得る。乾燥含量が低過ぎる場合、乾燥装置を通して導くとき、繊維ウェブが破断する可能性がある。乾燥含量が高過ぎると、この方法はコスト効率が悪くなり、コーティング層の接着性が低下し得る。
【0012】
使用する乾燥装置は、好ましくは、Yankee乾燥シリンダー、金属ベルト乾燥機、プラスチックベルト乾燥機又はCondebelt乾燥装置等の接触乾燥装置である。
本方法は、紙、板紙又はフィルムの任意の面にポリマーを含む表面サイズ、フォームコーティング又は分散コーティングを塗布する工程をさらに含み得る。表面サイズ、フォームコーティング及び/又は分散コーティングを紙、板紙又はフィルムに塗布することによって、例えば、紙、板紙又はフィルムのヒートシール特性及び/又は耐水性若しくは水及び湿気バリア特性を改善することが可能になる。
【0013】
本方法は、ポリマー層を、ポリマーフィルムの積層又はポリマーの押出コーティングのいずれかによって、乾燥装置と直接接触していない紙、板紙又はフィルムの面に塗布する工程をさらに含み得る。ポリマー層を追加することによって、例えばヒートシール特性及び/又はバリア特性を有する紙、板紙又はフィルムを低コストで製造することができる。
本発明はまた、上記方法によって得られるコート紙又は板紙にも関する。
本発明はまた、上記方法によって得られるミクロフィブリル化セルロースを含むコートフィルムにも関する。
コートフィルムは、好ましくは、45gsm未満、好ましくは35gm未満、さらにより好ましくは30gsm未満の坪量を有する。フィルムは、好ましくは、700kg/cm3を超える密度を有する。フィルムは、好ましくは、ASTM D-3985に従って100cc/m2*日*atm未満の酸素透過率(OTR)値(23℃、50%相対湿度)、ISO 1974(Elmendorf法)に従って幾何学的MD/CD平均値として測定して2.0Nm2/gを超える引き裂き抵抗を有し、フィルムの第1の面は、好ましくは、ISO 8791-4に従って2μm未満、好ましくは1.5μm未満、最も好ましくは1μm未満の表面粗さPPS値を有する。
本発明によるフィルムは、好ましくは、高密度、高平滑性、良好なバリア特性及び良好な強度を有する薄い半透明又は透明フィルムである。
【0014】
詳細な説明
バリア特性と良好な強度特性の両方を有するコート紙又は板紙製品を製造することが可能であることを見出した。コーティングは、ミクロフィブリル化セルロースを含む第2のの懸濁液を乾燥装置の表面に加えることによって塗布される。このように、加えるミクロフィブリル化セルロースの乾燥含量は、ミクロフィブリル化セルロースが繊維ウェブに直接噴霧又は追加される場合と比較して、増加する。したがって、紙又は板紙に加えられる水の量は減少する。また、コーティング層は乾燥装置の表面に基づいて非常に光沢のある表面を有するので、製造された紙又は板紙の表面の光沢は改善される。
【0015】
さらに、驚くべきことに、フィルムを製造する間に乾燥装置にてMFCを含むコーティングを塗布することによって、良好なバリア特性及び強度特性を有するフィルムを製造することが可能であることを見出した。MFCを含む第2の懸濁液を乾燥装置の表面に塗布し、繊維ウェブが、追加した第2の懸濁液でコーティングされるように、セルロース繊維を含む、形成した繊維ウェブを、乾燥装置を通して導くことによって、良好なバリア特性を有するフィルムが製造される。このようにして、繊維ウェブは、フィルムが乾燥されるのと同時に、共に、第2の懸濁液を含むコーティング層でコーティングされる。懸濁液を乾燥装置の表面に加えることによって、コーティング層を塗布するので、コーティング層は繊維ウェブの表面上に留まる傾向がある、即ち、第2の懸濁液は繊維ウェブに浸透しない。さらに、本発明によるフィルムの製造速度を高めることが可能である。
【0016】
本発明の別の利点は、ウェブの脱水が改善されることである。コートフィルム、好ましくはMFCを含む二つ以上の層を有するMFCフィルムを製造することによって、脱水が改善されることが分かった。ウェブがそれほど厚くない場合、ワイヤ上の第1の懸濁液の脱水がより容易になる。その後、第2の懸濁液を加え、繊維ウェブを乾燥装置で乾燥させる。
【0017】
繊維ウェブは、第1の懸濁液を基材上に塗布することによって形成される。基材は、抄紙機の多孔質ワイヤであり得る。したがって、抄紙機のウェットエンドにてこの方法を適用することが可能である。次に、形成された繊維ウェブをワイヤから除去し、その後、乾燥装置を通して、好ましくは支持体上で、導く。抄紙機とは、紙、板紙、ティッシュ又は任意の類似の製品を製造するために使用される当業者に既知の任意の種類の抄紙機を意味する。
【0018】
基材はまた、紙又は板紙基材であってもよいので、本発明によって、MFCフィルムでコーティングされた板紙又は紙基材が形成される。
基材はまた、ポリマー基材又は金属基材であってもよい。繊維ウェブは、好ましくは、ポリマー又は金属基材上にキャストされる。次に、キャスト繊維ウェブを任意の従来の方法で乾燥させ、その後、基材から引き剥がすことができる。その後、引き剥がされた繊維ウェブを、本発明に従って、乾燥装置を通して導く。キャスト繊維ウェブを、キャストした支持体上で、乾燥装置を通して導くことも可能であり得る。
【0019】
乾燥装置は、好ましくは、接触乾燥装置である。好ましい乾燥装置は、Yankee Cylinder、金属ベルト乾燥機、プラスチックベルト乾燥機又はCondebelt乾燥装置である。Yankee Cylinderは、通常、非常に多孔質材料であるティッシュペーパーを乾燥するのに使用される。基材を乾燥させるためにYankee Cylinderを使用する場合、基材中の液体は、基材を通ってYankee Cylinderの方に、即ち、乾燥の間に形成される熱及び蒸気の方に流れる。我々の場合では、製品の液体はミクロフィブリルも含むので、紙、板紙又はフィルムの平滑化した表面上にてミクロフィブリルの濃度が高められる。このことから、紙、板紙又はフィルムの表面の平滑さがさらに改善され、これにより、紙、板紙又はフィルムのバリア特性が改善され、並びに光学特性及び透明性が改善される。紙又は板紙製品を乾燥する場合、金属ベルト乾燥装置又は金属ベルト乾燥機が通常使用される。金属ベルト乾燥機は、平滑な加熱された金属ベルトを使用して、紙、板紙又はフィルムを乾燥するが、そこで紙、板紙又はフィルムは、加熱された金属ベルトと直接接触することになる。金属乾燥機は、高温を使用し、良好に水分が除去されるので、非常に効率的である。金属ベルト乾燥機を用いる場合、紙、板紙又はフィルムの両面を同時に乾燥させることも可能である。プラスチックベルト乾燥機もまた使用することができる。また、加熱されたプラスチックベルトは、金属ベルト乾燥機の場合と同様に使用される。紙又は板紙製品を乾燥する場合、Condebelt乾燥装置が通常使用される。Condebelt乾燥プロセスを使用すると、従来の乾燥シリンダーと比較して乾燥速度が大幅に向上する。より高い乾燥速度は、より高い接触温度、高温の表面と乾燥される製品との間により高い圧力を加えることによって達成される。そこで、本発明によるウェブの第1面を、Condebelt乾燥装置の加熱ベルトに直接接触させる。直接接触装置に必要とされる接触時間は、ウェブの温度及び乾燥含量に依存する。
【0020】
第2の懸濁液は、乾燥装置の表面、好ましくは乾燥装置のシリンダー又は乾燥ベルトの表面に加えられる。第2の懸濁液は、噴霧等の接触又は非接触コーティング方法によって加えられる。コーティングはまた、任意の既知の方法で加えられ、その後、ドクターブレード等の適切な装置によって表面で平らにされる。加えた第2の懸濁液は乾燥装置の表面上に平らなコーティングを形成する。その後、加えた第2の懸濁液は繊維ウェブの第1の面に追加され、その後、コート繊維ウェブは乾燥装置を通って乾燥される。
【0021】
乾燥装置の表面に加える第2の懸濁液の乾燥含量は、好ましくは1から10重量%である。次に、加えた第2の懸濁液の乾燥含量は、繊維ウェブに追加される前に、乾燥装置上で高められる。
乾燥装置の表面は、繊維ウェブの第1の面と接触するが、第2の懸濁コーティングが基材の第1の面と乾燥装置との間に位置するので、これは、間接的な接触を意味する。
繊維ウェブの乾燥及びコーティング層の塗布の間に使用される温度は、好ましくは70から190℃、好ましくは100℃を超え、さらにより好ましくは110から190℃である。
紙、板紙又はフィルムの光沢等の光学特性もまた改善される。これは、接触乾燥装置にて紙、板紙又はフィルムを乾燥した後に視覚的に見ることができた。
【0022】
紙又は板紙とは、任意の種類の紙又は板紙製品を意味する。紙又は板紙はセルロース繊維を含む。任意の種類のセルロース繊維を使用することができる。即ち、硬材繊維及び/又は軟材繊維の両方を使用することができる。セルロース繊維は、任意の種類のパルプ繊維、例えば、クラフトパルプ繊維等のケミカルパルプ繊維、メカニカルパルプ繊維及び/又はサーモメカニカルパルプ繊維から作ることができる。
【0023】
フィルムとは、良好なガス、芳香又はグリース又は油バリア特性、好ましくは酸素バリア特性を有する薄い基材を意味する。コートフィルムは、好ましくは、40g/m2未満の坪量及び700から1400kg/m3の範囲の密度を有する。23℃及び相対湿度50%で30g/m2の坪量を有するコートフィルムの酸素透過率(OTR)値は、好ましくは、ASTM D-3985に従って30cc/m2*日*atm未満である。
【0024】
第1の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の固形分の全乾燥重量に基づいて0.01重量%から20重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。紙又は板紙製品を製造する場合、繊維ウェブに、紙又は板紙に改善された強度特性をもたらすためにミクロフィブリル化セルロースを含ませることができる。コート紙又は板紙製品を製造する場合、第1の懸濁液に、ミクロフィブリル化セルロース以外の他のセルロース系繊維も含ませることが好ましい。第1の懸濁液は、懸濁液の固形分の全乾燥重量に基づいて80から99重量%のセルロース系繊維(添加されるミクロフィブリル化セルロースを除く)を含むことが好ましい。第1の懸濁液は、ミクロフィブリル化セルロースを含む懸濁液の固形分の全乾燥重量に基づいて90から100重量%のセルロース系繊維を含むことが好ましい。
【0025】
フィルムを製造する場合、第1の懸濁液のセルロース繊維は、好ましくは、ミクロフィブリル化セルロースである。したがって、ミクロフィブリル化セルロースのみを含む、即ち他のセルロース繊維が存在しないフィルムを製造することが可能である。
第1の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の全乾燥重量に基づいて70重量%から100重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。したがって、製造されたMFCフィルムは多量のMFC、好ましくは70から100重量%の間のMFCを含み、これは最終的なコーティング層が追加される前のフィルム自体中のMFCの量に関係する。
【0026】
第1の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースは、好ましくは、90未満、好ましくは70から90又は70から85の間のSchopper Riegler(SR)値を有する。好ましくは、第1の懸濁液のMFCの少なくとも50%、より好ましくは75%より多い、さらにより好ましくは85%より多いMFCが90未満のSR値を有する。好ましくは、第1の懸濁液のMFCの少なくとも50%、より好ましくは75%より多い、さらにより好ましくは85%より多いMFCが70から85の間のSR値を有する。Schopper-Riegler値は、EN ISO5267-1に定義されている標準的な方法によって得ることができる。第1の懸濁液はまた、90を超えるSchopper-Riegler(SR)値を有するミクロフィブリル化セルロースも含み得る。第1の懸濁液はまた、より長いセルロース繊維、硬材又は軟材繊維のいずれか、好ましくはクラフトパルプ軟材繊維も含み得る。第1の懸濁液はまた、顔料、カルボキシメチルセルロース(CMC)、歩留まり化学物質、デンプン等の他の添加剤も含み得る。
【0027】
第2の懸濁液は、好ましくは、懸濁液の全乾燥重量に基づいて70重量%から100重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。したがって、製造される紙、板紙又はフィルムのコーティング層は、多量のMFC、好ましくは70から100重量%のMFCを含み、これは、最終的な追加のコーティング層が追加される前のコーティング層自体中のMFCの量に関係する。第2(first)の懸濁液のミクロフィブリル化セルロースは、好ましくは95を超える、好ましくは97を超えるSchopper-Riegler(SR)を有する。好ましくは、第2の懸濁液のMFCの少なくとも50%、より好ましくは75%より多い又はさらにより好ましくは85%より多いMFCがは95を超えるSRを有する。したがって、第2の懸濁液は非常に微細なMFCを含む。Schopper-Riegler値は、EN ISO5267-1に定義されている標準的な方法で得ることができる。
【0028】
第2の懸濁液はまた、顔料、カルボキシメチルセルロース(CMC)、歩留まり化学物質、デンプン、蛍光増白剤(optical brightening agents)、染料、潤滑剤、疎水剤、湿潤又は乾燥強度添加剤、生物活性化学物質、分散剤等の他の添加剤も含み得る。
第2の懸濁液は、好ましくは、0.1から8gsmの坪量を有するコーティングが形成される量で塗布される。紙、板紙又はフィルム上に形成されたコーティングは非常に薄い。紙、板紙又はフィルムに薄いコーティングを追加することによって、紙、板紙又はフィルムのバリア特性が改善されることがわかった。
【0029】
乾燥装置に導かれるウェブの乾燥含量は、好ましくは、40から90重量%、より好ましくは50から80重量%である。したがって、ワイヤ上に形成されるウェブは、それが直接乾燥装置に導かれる前にそれが適切な乾燥含量を有するようにするために、任意の従来の方法で、例えば加圧又は通常のシリンダー乾燥により、真空を使用することにより及び/又は熱風を使用することにより、乾燥又は脱水することができる。
【0030】
乾燥装置での乾燥に供した後の製造されたコート紙、板紙又はフィルムの乾燥含量は、好ましくは、70重量%を超え、さらにより好ましくは80重量%を超え、好ましくは85から97重量%の間である。製造されたコート紙、板紙又はフィルムはまた、直接乾燥装置で乾燥した後の追加の乾燥工程においても乾燥させることができる。任意の従来の乾燥装置を使用することができる。ポリマー又は金属層等の追加の層をコート紙、板紙又はフィルムに加える場合、紙、板紙又はフィルムの乾燥含量が非常に重要である。
【0031】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の内容においては、100nm未満の少なくとも1つの寸法を有するナノスケールセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的に又は完全にフィブリル化されたセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離した(liberated)フィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径若しくは粒度分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、供給源及び製造方法によって異なる。最も小さいフィブリルは、エレメンタリーフィブリル(elementary fibril)と呼ばれ、約2から4nmの直径を有する(参照:例えば、Chinga-Carrasco,G.:Cellulose fibres,nanofibrils and microfibrils,:The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view,Nanoscale research letters 2011,6:417)が、一方、ミクロフィブリルとしても定義されているエレメンタリーフィブリルの集合形態(Fengel,D.:Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides,Tappi J.,March 1970,Vol 53,No.3.)は、例えば、拡張叩解工程又は圧力降下解繊工程を使用して、MFCを製造するときに得られる主生成物であることが一般的である。供給源及び製造プロセスに応じて、フィブリルの長さは、1マイクロメートル前後から10マイクロメートルを越える範囲に及び得る。粗いMFCグレードは、実質的な部分のフィブリル化繊維、即ち、仮導管から突き出ているフィブリル(セルロース繊維)と、特定量の仮導管から遊離したフィブリル(セルロース繊維)とを含有し得る。
【0032】
セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースミクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリル状セルロース、ミクロフィブリル凝集体、及びセルロースミクロフィブリル凝集体等のMFCには、種々の頭字語が存在する。MFCはまた、大きな表面積、又は、水中に分散する際の、低い固形分(1から5重量%)でのゲル状物質形成能等の、種々の物理的特性又は物理化学的特性によっても特徴付けることができる。セルロース繊維は、BET法を用いて凍結乾燥物質について測定した場合、形成されたMFCの最終比表面積が約1から約300m2/g、又はより好ましくは50から200m2/gである程度にまでフィブリル化されることが好ましい。
【0033】
MFCを製造するには、例えば、単一又は複数叩解(single or multiple pass refining)、予備加水分解、続いて、叩解又は高剪断解繊又はフィブリルの遊離といった種々の方法が存在する。MFCの製造にエネルギー効率と持続可能性を共にもたらすには、通常、1つ以上の前処理工程が必要である。このため、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えば、繊維を加水分解若しくは膨潤させるように、又はヘミセルロース又はリグニンの量を減少させるように、酵素的又は化学的に前処理され得る。セルロース繊維は、フィブリル化前に化学的に修飾されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースにみられる官能基以外の(又は元のセルロースにみられる官能基よりも多くの)官能基を含有する。このような基としては、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上述した方法のうちの1つにより修飾又は酸化された後、繊維は、MFC又はナノフィブリルサイズフィブリル又はNFCに、より容易に解繊される。
【0034】
ナノフィブリル状セルロースは、一部のヘミセルロースを含有し得るが、その量は、植物源によって異なる。前処理された繊維の機械的解繊、例えば、セルロース原料の加水分解、予備膨潤又は酸化は、叩解機、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕機、超音波処理機、一軸又は二軸押出機、ミクロ流動化装置、マクロ流動化装置又は流動化装置型ホモジナイザー等の流動化装置等の適切な装置によって行われる。MFCの製造方法に応じて、製品は、微繊維若しくはナノ結晶セルロース、又は、例えば、木材繊維に若しくは抄紙工程に存在する他の化学物質もまた含有し得る。また、製品は、効果的にフィブリル化されていない種々の量のミクロンサイズの繊維粒子も含有し得る。
【0035】
MFCは、木材セルロース繊維から、硬材繊維又は軟材繊維の両方から生産される。また、MFCは、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガス等の農業繊維、又は他の非木材繊維源から製造することもできる。MFCは、バージン繊維由来のパルプ、例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ及び/又はケミサーモメカニカルパルプを含むパルプから製造されることが好ましい。さらに、MFCは、破損した紙又は再生紙から製造することもできる。
上述したMFCの定義には、非限定的に、結晶質領域と非晶質領域の両方を有し、幅5から30nmの高いアスペクト比、通常は50より高いアスペクト比を有する、複数のエレメンタリーフィブリルを含有するセルロースナノファイバー材料を定義する新しく提案された、セルロースナノフィブリル(CNF)に関するTAPPI標準W13021が含まれる。
【0036】
第1の繊維懸濁液はまた、湿潤強度剤も含み得る、即ち湿潤強度剤は懸濁液に添加され得る。湿潤強度化学物質は、ミクロフィブリル化されたものを架橋することによって、ウェブ、延いては紙、板紙又はフィルムの強度特性を改善する。ウレアホルムアルデヒド(UH)、メラミンホルムアルデヒド(MF)、ポリアミド-エピクロロヒドリン(PEA)、グリオキサール及び/又はポリアクリルアミド(PAM)、又はそれらの混合物等の種々の湿潤強度剤を添加することができる。
第1の懸濁液はまた、架橋剤も含み得る。架橋剤を第1の懸濁液に添加することによって、紙、板紙又はフィルムは高い相対湿度(RH)値で改良されたバリア特性を得る。クエン酸、ポリイソシアナート、金属イオン、好ましくはアルカリ土類金属イオン、アニオン性-カチオン性錯体及び/又は高分子電解質錯体等の種々の架橋剤を添加することができる。
【0037】
本発明による方法は、ポリマーを含む表面サイズ、フォームコーティング及び/又は分散コーティングを、紙、板紙又はフィルムの一つの面、好ましくは紙、板紙又はフィルムの第2の面に塗布する工程をさらに含み得る。塗布されたコーティング、例えば表面サイズ、フォームコーティング又は分散コーティングは、改善されたバリア特性を有する紙、板紙又はフィルムを製造することを可能にする。表面サイズ、フォームコーティング又は分散コーティングを含む紙、板紙又はフィルムは、改善されたヒートシール特性及び/又は耐水性及び湿気バリア特性を有することができる。表面サイズ、フォームコーティング又は分散コーティングのポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレン(PE)、エチレンコポリマー、アクリラート系結合剤、例えばメタクリラート系結合剤、スチレン系結合剤、例えばスチレン-オレフィンコポリマー、ビニル系結合剤、例えばPVCである。コーティングはまた、ヒートシール特性をさらに向上させる添加剤も含み得る。コーティング中の添加剤の例としては、ワックス、滑り止め剤(例えば、PEワックス、カルナバワックス)、粘着防止剤用、触覚(haptic)/光学用、粘度調整用の無機充填剤又は顔料、例えばシリカ、タルク、PCC、酸化防止剤、UV安定剤、蛍光増白剤(OBA)、消泡剤及び/又は接着促進剤が挙げられる。コーティングは、好ましくは、単一層コーティングを形成するために単一工程で追加することが好ましいが、多層コーティングを形成するために2つ以上の層で追加することもできる。
【0038】
本発明による方法は、ポリマー層を、ポリマーフィルムの積層又はポリマーの押出コーティングのいずれかによって、乾燥装置と直接接触していない紙、板紙又はフィルムの面に、即ち、紙、板紙又はフィルムの第2の面に塗布する工程をさらに含み得る。ポリマー層を追加することによって、良好なバリア特性及びヒートシール特性を有する紙、板紙又はフィルムを低コストで製造することが可能になる。ポリマーは、好ましくは、熱可塑性ポリマーである。熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)及びポリ乳酸(PLA)のいずれか1種であり得る。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)又はそれらの様々な組み合わせのうちのいずれか1つであり得る。例えばPLAを熱可塑性ポリマーとして使用することによって、製品は生分解性材料から完全に形成することができる。
【0039】
一態様によれば、直接乾燥装置による製造速度は約100m/分である。
本発明はまた、上記方法によって得られるコート紙又は板紙製品に関する。
本発明はまた、上記方法により得られるミクロフィブリル化セルロースを含むコートフィルムにも関する。
コートMFCフィルムは、好ましくは45gsm未満、好ましくは35gsm未満、さらにより好ましくは30gsm未満の坪量を有する。フィルムの坪量は10から40gsm、さらにより好ましくは10から30gsmであることが好ましい。
コートフィルムの密度は、好ましくは700g/m3を超え、好ましくは700から1400g/m3の間である。このような高密度を有するMFCフィルムを、直接乾燥装置にて高温を使用して乾燥させることが可能であることは驚くべきことである。
【0040】
コートフィルムは、好ましくは、ASTM D-3985に従って、100cc/m2*日*atm未満の酸素透過率(OTR)値(23℃、50%RH)を有する。したがって、製造されたMFCフィルムは非常に良好な酸素バリア特性を有する。
コートフィルムは、好ましくは、ISO1974(Elmendorf法)に従って幾何学的MD/CD平均値として測定して2.0Nm2/gを超える引き裂き抵抗を有する。
【0041】
コートフィルムの第1面は、好ましくは、ISO8791-4に従って2μm未満、さらにより好ましくは1.5μm未満、最も好ましくは1μm未満の表面粗さPPS値を有する。本発明によって非常に平滑な表面を有するフィルムを製造することが可能であることを見出した。アルミニウム層のような金属層をフィルムに付着させる必要がある場合、表面の平滑さは、非常に重要である。したがって、本発明によるMFCフィルムは、金属層をフィルムの第1の表面に適用するのに適している。
本発明によるMFCフィルムは、穀物等の乾燥食品を包装する場合の箱の中の袋として、包装基材として、紙、板紙又はプラスチックの積層材料として、及び/又は使い捨て電子機器用の基材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は本発明による方法についての概観を示す。
【0043】
図面の詳細な説明
図1は、本発明による方法の概略図を示す。セルロース繊維、例えばミクロフィブリル化セルロースを含む第1の懸濁液(1)は、基材(2)に導かれ、その基材(2)上に繊維ウェブ(3)を形成する。基材(2)は、好ましくは紙又は板紙の抄紙機(paper or paperboard machine)の多孔質ワイヤである。基材(2)及び繊維ウェブ(3)は、乾燥装置(4)を通して導かれる。乾燥装置の表面(5)に第2の懸濁液(6)を加える。次に、第2の懸濁液を、繊維ウェブ(3)の第1の面に塗布するが、この第1の面は塗乾燥装置(4)と(第2の懸濁液のコーティングを介して)接触する面である。このようにして、コート紙、板紙又はフィルムが非常に容易なかつ効率的な方法で製造される。
【0044】
例
クラフトパルプ繊維を含む第1の懸濁液を基材に塗布して繊維ウェブを形成した。繊維ウェブは約60gsmの坪量を有していた。4.5重量%のコンシステンシーを有する100重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む第2の懸濁液を薄層として、加熱した平滑な金属表面に加えた。金属表面の温度は約150℃であった。ミクロフィブリル化セルロース層の乾燥は、加熱した金属表面から水が蒸発するときに開始した。ミクロフィブリル化層がまだ湿っているとき、繊維ウェブを加熱表面上に位置するミクロフィブリル化セルロース層と接触させた。繊維ウェブとミクロフィブリル化セルロース層との間の良好な接触を確実にし、かつしわが生じないことを確実にするために圧力をかけた。
【0045】
乾燥後、コート紙製品を金属表面から引き剥がすのは容易であった。
得られたコート紙製品は非常に光沢があり、かつ平滑な表面を有していた。表面は視覚的にポリマーコート製品のように見えた。結果として、本発明の方法によって、良好なバリア特性並びに強度特性を有するコート紙製品を製造することが可能になった。
【0046】
本発明の上記の詳細な説明に鑑みて、当業者には、他の改変及び変更が明らかになる。しかしながら、このような他の改変及び変更を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行い得ることは明らかである。