(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電子ビーム蒸発器、コーティング装置及びコーティング方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/30 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
C23C14/30
(21)【出願番号】P 2019545988
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 EP2018054515
(87)【国際公開番号】W WO2018154054
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】102017103746.2
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518105116
【氏名又は名称】フォン アルデンヌ アセット ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト,エクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ファベール,ヨルク
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266728(JP,A)
【文献】特開2008-163464(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム蒸発器であって、
- 管状ターゲットであって、前記管状ターゲットは管軸に対して平行に延在する套面と、前記套面に対して角度をなして延在する軸方向端面とを有する、管状ターゲットと、
- 電子ビームによって前記管状ターゲットの除去面上で少なくとも1つの蒸気源を生成するための電子ビーム銃と、
を有し、
前記除去面は、前記管状ターゲットの前記軸方向端面であり、
前記管状ターゲットは、前記電子ビーム
銃と前記蒸
気源との間で、変化しない前記蒸
気源の源位置が達成されるように、前記管軸に関して並進運動及び回転運動
し、
前記電子ビーム蒸発器は、
前記管状ターゲットがその回転軸周りに回転できるように、前記管状ターゲットを回転可能に支持するための支持アセンブリをさらに有し、
前記支持アセンブリは、前記管状ターゲットがその回転軸に沿って移動できるようにさらに構成されている、電子ビーム蒸発器。
【請求項2】
前記除去面は、前記管状ターゲットの、リング形状の軸方向端面又は自由端縁から円錐形に若しくは湾曲して延在する面である、
請求項1記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項3】
前記除去面の面法線と前記管軸との間の角度は、0°から75°までの領域にある、
請求項1又は2記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項4】
前記除去面の空間位置を表すセンサデータを捕捉するためのセンサと、
前記管状ターゲットを
前記管軸に沿って移動させるための作動装置と、
前記センサデータに基づいて、前記作動装置を用いて前記除去面の位置を固定的に保つように、又は、コーティングされるべき基板に対する前記除去面の距離を一定に保つように、構成された調整部と、
をさらに有する、請求項
1乃至3いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項5】
前記電子ビーム蒸発器はさらに、
前記除去面を部分的に覆うシールドアセンブリを有し、
前記シールドアセンブリは、少なくとも1つのシールド開口を有し、前記シールド開口を介して前記電子ビームが前記管状ターゲットの前記除去面上に導かれることができる、
請求項1乃至
4いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項6】
電子ビーム蒸発器であって、
- 管状ターゲットと、
- 電子ビームによって前記管状ターゲットの除去面上で少なくとも1つの蒸気源を生成するための電子ビーム銃と、
を有し、
前記除去面は、前記管状ターゲットの軸方向端面であり、
前記電子ビーム蒸発器はさらに、
- 前記除去面を部分的に覆うシールドアセンブリ
と、
- 前記シールドアセンブリからの、前記管状ターゲットの前記除去面の距離を表すセンサデータを捕捉するための距離センサと、
- 前記管状ターゲットを軸方向に移動させるための作動装置と、
- 前記センサデータに基づいて、前記作動装置によって、前記シールドアセンブリに対する前記除去面の距離を一定に保つように構成されている調整部と、をさらに有
し、
前記電子ビーム蒸発器は、
前記管状ターゲットがその回転軸周りに回転できるように、前記管状ターゲットを回転可能に支持するための支持アセンブリをさらに有し、
前記支持アセンブリは、前記管状ターゲットがその回転軸に沿って移動できるようにさらに構成されている、
電子ビーム蒸発器。
【請求項7】
前記シールドアセンブリはさらに、前記シールドアセンブリを冷却するための冷却構造を有する、
請求項
5又は6記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項8】
前記除去面の未蒸発の残留物を除去するように構成されている除去装置をさらに有する、
請求項1乃至7いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器。
【請求項9】
コーティング装置であって、
少なくとも1つのコーティング領域を有するコーティングチャンバと、
前記コーティング領域において基板をコーティングするために、少なくとも1つの、請求項1乃至8いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器と、を有する、
コーティング装置。
【請求項10】
請求項1乃至8いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器を用いたコーティング方法であって、
前記電子ビームによって、前記管状ターゲットの前記除去面上で、少なくとも1つの蒸気源を生成するステップと、
前記少なくとも1つの蒸気源を用いて基板をコーティングするステップと、を含む
コーティング方法。
【請求項11】
請求項1乃至8いずれか1項記載の電子ビーム蒸発器の前記管状ターゲットの使用方法であって、
前記電子ビームを用いて、前記除去面の上に、少なくとも1つの蒸気源を生成するための、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の例示的実施態様は、電子ビーム蒸発器、コーティング装置及びコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、化学気相堆積又は物理気相堆積に基づく種々のコーティング方法が、基板のコーティングのために用いられることができる。例えば、電子ビームを用いて所謂ターゲットから材料を蒸発させることができ、これは電子ビーム蒸発と呼ばれる。電子ビームによって、いわゆる蒸気源(具体的には局所的に強く加熱された領域)が、ターゲットの表面で生成されることができる。蒸発した材料は蒸気源から出発して拡散する、即ち、蒸発した材料は具体的には蒸気源から放出される。放出された材料は例えば基板上で凝縮し、したがって基板上に層を形成する。
【0003】
電子ビーム蒸発は、種々の変形例において実施されることができる。通常、ターゲットの材料(ターゲット材料と称される)は、電子ビームによって溶解するので、坩堝内で供給される。コーティングされるべき基板は、例えば坩堝の上で、例えば自由に吊るされて(freihaengend)又は基板キャリア内に載置されてガイドされることができ、具体的には下からコーティングされることができる。例えば、所謂電子ビーム銃が、電子ビームを出力するために用いられることができる。電子ビーム銃は、電子ビームを生成するための電子ビーム源と、電子ビームを所望の方向に静的に又は動的に偏向させる偏光装置と有する。電子ビームが所望の電子ビーム形状に応じて所定のルートに沿ってガイドされることができるので、偏向装置によれば、所望の電子ビーム形状(又は具体的にはパターン)が、蒸発すべきターゲットの表面上に生成される(換言すると、描かれる)ことができる。このようにして、例えば、所望の形状を有する又は所望のパターンを有する蒸気源が生成されることができる。さらに、例えば、複数の蒸気源が、ターゲットの表面上で互いに隣り合って生成されることができる。さらにまた、1つの電子ビームだけを用いて、(隣り合って配置された)複数のターゲット上でそれぞれ1つの蒸気源を生成することもできる。例えば電場及び/又は磁場によって行われることができる電子ビームの偏向は、例えば、ビームガイド(Strahlfuehrung)と称される。
【0004】
いくつかのコーティング形態の場合、基板とターゲットとの間の領域に電子ビームを照射することが必要又は有用であり得、これは、コーティング形状に応じて、垂直に対して異なる角度、例えば、実質的に水平に行うことができる。この場合、電子ビームは、相応に構成された磁場によってターゲット表面上に偏向されてもよい。一般に、磁場は、電子ビームが可能な限り急勾配で(例えば、実質的に直角に)ターゲット表面に衝突するように提供されてもよい又は提供されることができる。このような外部磁場を発生させる要素は、一般に偏向システムと呼ばれる。
【発明の概要】
【0005】
種々の実施形態によれば、電子ビームによって効率的な方法でターゲット材料(特に、昇華する及び/又は高融点を有するターゲット材料)を蒸発させることを可能にする電子ビーム蒸発器(ein Elektronenstrahlverdampfer)が提供される。さらに、蒸発プロセスを、中断なしで長期間安定的に行うことが可能となる。また、本明細書に記載される電子ビーム蒸発器を用いることによって、コーティングされるべき基板が低い熱的負荷に曝されることも可能となる。
【0006】
種々の実施形態によれば、例えば、電子ビーム蒸発器は、管状ターゲットと、電子ビームによって管状ターゲットの除去面上で少なくとも1つの蒸気源を生成するための電子ビーム源及びビームガイド(すなわち電子ビーム銃)と、を有することができ、除去面は、管状ターゲットの、リング形状の軸方向端面、又は、自由端縁(vom freien Stirnrand)から円錐形に若しくは(例えば凹状又は凸状に)湾曲して延在する(gewoelbt verlaufende)面である。
【0007】
例示的には、除去面は、限られたプロセス設定時間後に(nach einer begrenzten Prozesseinrichtungszeit)除去面の形状安定性(eine Formstabilitaet)が調整されるように構成されている。
【0008】
種々の実施形態によれば、
限られたプロセス設定時間後に調整される除去面の所望の形状(具体的には調整されるべき除去輪郭(die sich einstellende Abtragskontur))は、予め求められる(ermittelt)(例えば計算的に又は経験的に求められる)ことができる。したがって、調整されるべき除去輪郭に実質的に相応する(即ち、調整されるべき除去輪郭に既に可能な限り近づいている)初期輪郭をプロセス開始前に既に有する蒸発ターゲットが提供されることができる。その結果、例えば、より迅速な安定したコーティングプロセスのための(zugunsten eines schneller stabilen Beschichtungsprozesses)プロセス設定時間を節約することができる。
【0009】
種々の実施形態によれば、コーティング装置は、少なくとも1つのコーティング領域を有するコーティングチャンバと、コーティング領域において基板をコーティングするための、本明細書に記載されているような、少なくとも1つの電子ビーム蒸発器と、を有することができる。
【0010】
種々の実施形態によれば、コーティング方法は、電子ビームによって管状ターゲットの除去面上で蒸気源を生成するステップであって、除去面は、管状ターゲットの、リング形状の軸方向端面又は自由端縁から円錐形に若しくは湾曲して延在する面である、ステップと、蒸気源から生成された蒸気によって基板をコーティングするステップと、を含むことができる。
【0011】
種々の実施形態によれば、複数の電子ビーム蒸発器を有する又は例えば複数の管状ターゲットを有する電子ビーム蒸発器アセンブリが提供されていてもよい又は提供されることができる。
【0012】
種々の実施形態によれば、リング形状の面(eine ringformige Flache)は、例えば円経路に沿って循環する(umlaufend
entlang einer Kreisbahn)、閉じられた循環面であると解され得る。種々の実施形態によれば、リング形状面は、循環中に一定の半径方向の、曲率又は湾曲を有する閉じられた循環する面として解され得る。
【0013】
例示的な実施態様は、図面に図示されて、以下においてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】種々の実施形態に従った電子ビーム蒸発器を模式的に示す図である。
【
図2】
図2A乃至
図2Cは、種々の実施形態に従った管状ターゲットを模式的に示す図である。
【
図3】種々の実施形態に従った電子ビーム蒸発器を模式的に示す図である。
【
図4】種々の実施形態に従った電子ビーム蒸発器を模式的に示す図である。
【
図5】種々の実施形態に従った電子ビーム蒸発器アセンブリを模式的に示す図である。
【
図6】種々の実施形態に従ったコーティング装置を模式的に示す図である。
【
図7】種々の実施形態に従ったコーティング方法のフローチャートを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す添付図面を参照する。これに関して、「上方(oben)」、「下方(unten)」、「前方(vorne)」、「後方(hinten)」、「前部(vorderes)」、「後部(hinteres)」等の方向を示す用語は、説明される(複数の)図の方向に関して使用される。実施形態の構成要素は様々な異なる向きに配置することができるので、方向を示す用語は例示的なものであり、決して限定的なものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的又は論理的変更を行うことができることを理解されたい。本明細書に記載される様々な例示的実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせることができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で考慮されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって特定される。
【0016】
本明細書で使用される「連結(verbunden)」、「接続(angeschlossen)」及び「結合(gekoppelt)」という用語は、直接的連結及び間接的連結、直接的又は間接的接続、並びに、直接的又は間接的結合を説明するために使用される。図面では、同一又は類似の要素には、必要に応じて同一の参照番号が付けられている。
【0017】
種々の実施形態によれば、本明細書に記載された電子ビーム蒸発器は、例えば、燃料電池、電池の製造、又はごく一般的に、基板上での、炭素層(例えばグラファイト及び/又はダイヤモンド状層)の製造又はセラミック層の製造等の、電子ビーム蒸発器を用いた大面積コーティングのために使用されることができる。
【0018】
電子ビーム蒸着は、物理気相堆積(PVD)のコーティングプロセスの系統に属し、EB-PVD(電子ビーム物理気相堆積(electron beam physical vapor deposition))とも呼ばれる。この方法において、蒸発材料は、従来は、(例えば金属の場合)可能な限り相応の供給坩堝から蒸発する。一般に、基板は、帯状に、電子ビームによって生成される蒸気源を通り抜けて移動し(ueber den mit dem Elektronenstrahl erzeugten Dampfquellen
hinwegbewegt)、又は、基板担体(所謂キャリア)内に保持されて、電子ビームによって生成される蒸気源を通り抜けて移動し、このようにしてコーティングされる。蒸気源は、十分な層厚均一性及び可能な限り高い蒸気利用(eine moeglichst hohe Dampfausnutzung)が達成されることができるように、位置決めされることができる(即ち、相互間の相応な距離及び基板平面からの相応な距離で位置決めされることができる)。さらに、コーティングプロセスが大きな期間にわたって安定して保たれることができるように、適応側で(anwendungsseitig)考慮されることができる。
【0019】
昇華材料においては、一般に坩堝と称される、蒸発材料が充填されるべき容器は、場合によっては省かれることができる。かかる場合には、蒸発材料は、サポート(即ち相応に構成された支持アセンブリ)によって、蒸発位置/プロセス位置に保持される。
【0020】
例えば、昇華材料の蒸発プロセスの長期的安定度を達成することは困難であり得る。なぜなら、蒸発材料が溶融せず、従って、材料除去が、(例えば、多くの金属の場合)従来生じていた溶融相に基づいて均一化されないからである。従来、蒸発に基づく材料除去にもかかわらず略固定的な源位置決めを目的とする種々の構造又はアセンブリ(Anordnungen)が使用されている。例えば、従来の坩堝システム又は蒸発材料支持システムは、蒸気源をフィードする(Speisung)ために、平面内の均一な材料補充(Materialnachfuehrung)が二次元移動によって行われるように構成されことができる。このシステム移動は、蒸発材料のメアンダ形状又は螺旋形状の供給を達成するように調整されることができる。この解決法にとって不利なことは、例えば、蒸発プロセスの間の蒸発(又は、材料除去)のために増加する蒸着距離を、可能な限り長く(moglichst lange)、略一定に維持するために、蒸発材料を供給するために大きな表面積が必要とされることである。蒸着距離の変化は、例えば、基板上の層厚分布を変化させてしまうことがあり、これは、コーティング活動の(einer Beschichtungskampagne)間に可能な限り回避されるべきである。他方で、従来用いられてきた蒸発システムのような大表面の加熱は、プロセスチャンバ及びコーティングされるべき基板に相当な熱的放射負荷(thermischen Strahlungsbelastungen)をもたらす。これは、特に高い蒸発温度を有する材料にあてはまる。
【0021】
さらに、電子ビーム蒸発器は、ロッド蒸発器として構成することもでき、ここで、蒸気源は、コーティングされるべき基板に対向するロッド先端の表面領域上に位置決めされることができる。ロッドは、回転運動及び並進送り運動(eine translatorische Zustellbewegung)を実行することができ、したがって、変化しない源位置が達成されることができる。ロッドの高温放射面(Die heise abstrahlende Oberflache)は、2次元水平移動システムの場合よりもかなり小さい。しかしながら、(ロッドの体積によって定義される)供給量が少ない(die geringe Bevorratungsmenge)ことは不利でありうる。なぜなら、例えば、ロッドの長さが、プラント工学上(anlagentechnisch)制限されなければならないからである。頻繁なロッドの交換は不所望なプロセスの中断を招く。結合された連続ロッドの遷移部(Uebergange verkoppelter Stabfolgen)は、例えば、蒸発レートの不所望な変動を招き得る。さらに、ロッド先端の蒸発される面又は面積(der abdampfenden Flaeche)を一定に保つことは困難であり、例えば、非常に複雑な設計を有する電子ビーム形状が必要とされる。
【0022】
本明細書に記載される電子ビーム源の構造は、例えば、以下の少なくとも1つを考慮することができる:
蒸気源の位置を最適な源位置(Quellortlage)に適応できること;
蒸気源の位置をプロセス実施の長い期間(例えば、1日以上又は1週間以上)にわたって一定に保つことができること;
プロセス実施を可能な限り簡単に管理可能であること(例えば、蒸発プロセス及び材料補充(der Materialnachfuehrung)に関して);
蒸発プロセスを中断することなく長期間安定して実施できること(例えば1日より長く又は1週間より長い)、これは、例えば、蒸発材料(ターゲット材料とも称される)の相応の広範囲な供給及び補充を必要とする;
蒸発材料が容易に製造可能な形状で提供されること;及び/又は、
蒸発材料からの放射に基づく基板の熱負荷が可能な限り小さいこと。
【0023】
図1は、本発明による電子ビーム蒸発器100(電子ビーム蒸発装置とも称される)を模式的な斜視図で示す。
【0024】
電子ビーム蒸発器100は、例えば、少なくとも1つの管状ターゲット102を有することができる。少なくとも1つの管状ターゲット102によって蒸発材料が提供される。さらに、電子ビーム蒸発器100は、少なくとも1つの電子ビーム銃104を有する。電子ビーム銃104は、管状ターゲット102の除去面102f上で少なくとも1つの蒸気源102qを電子ビーム104eによって生成するように構成されている。電子ビーム銃104は、電子ビーム源104qと、電子ビーム源104qによって生成される電子ビーム104eを偏向する偏向システム104aとを有することができる。
【0025】
主放出方向に垂直な平面における電子ビーム104eの偏向は、X-Y偏向と称され得る。例えば、主放出方向は、電子ビーム源104qによって予め定められることができる。このようなX-Y偏向は、例えば、複数の(例えば、2、4又は6個の)コイルによって行われることができ、複数のコイルは、主放出方向がコイル同士の間を通り抜けて延在するように、主放出方向に垂直な平面内に配置される。対照的に、電子ビーム104eは、電磁レンズ(磁気レンズ)によって収束されることができ、この場合、電子ビーム104eが1つのコイルを通過して伝搬し、その際に、そのコイルによって収束されることができるように、コイルが配置されることができる。磁気集束は、高ビーム出力においても使用されることができる。
【0026】
さらに、電子ビーム蒸発器100又は電子ビーム蒸発器アセンブリは、管状ターゲット102の除去面102f上で少なくとも1つの蒸気源102qを生成するために、プロセス位置の方向に電子ビームを導くためのさらなる要素(図示せず)、例えば偏向磁場器等、を有することができる。
【0027】
図1に示すように、除去面102fは、管状ターゲット102のリング形状の軸方向端面であり得る。換言すると、除去面102fは、管状ターゲット102の軸方向端部において軸方向に露出する(freiliegende)面であってもよい。あるいは、管状ターゲット102の除去面102fは、例えば
図2Bに示すように、管状ターゲット102の、自由端縁から円錐状に又は湾曲して延在する表面であり得る(例えば、除去面は半径方向に湾曲していることができる)。
【0028】
種々の実施形態によれば、プロセスに導入される蒸発材料は、少なくとも1つの管(例えば、炭素層を生成するためのグラファイト管)として提供され、その端部側において、例えば位置固定的に(ortsfest)、電子ビーム104eによって、少なくとも1つの小面積の蒸気源(eine
Kleinflaechendampfquelle)が生成される。小面積の蒸気源は、例えば、管の壁厚(die
Wandstaerke)102wに実質的に適合する表面積を有することができる。種々の実施形態によれば、蒸気源102qの面積範囲(die Flaechenausdehnung)は、50cm2未満、例えば、40cm2未満、30cm2未満、20cm2未満、又は10cm2未満とすることができる。蒸気源102qの面積範囲が小さければ小さいほど、昇華材料を蒸発させるのに優れているが、例えば効率だけの理由だけからも(schon allein aus Effizienzgruenden)、最小サイズを下回るべきではなく、例えば、蒸気源102qの面積範囲は1cm2より大きくてもよい。
【0029】
図2A、
図2B及び
図2Cは、それぞれ例示的に管状ターゲット102を軸平面(管状ターゲット102の管軸102aに平行な平面)による断面図を示す。
【0030】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、実質的に中空円筒形状を有することができる。換言すれば、管状ターゲット102は、内径203iを有する内側円筒套面202iと、外径203aを有する外側円筒套面202aとを有することができる。半径の差は、管状ターゲット102の壁厚102wに相応する。
【0031】
図2Aに示すように、円筒形の管状ターゲット102の端面は、除去面102fとして使用されることができ、除去面上では、電子ビーム104eによって少なくとも1つの蒸気源102qが形成される(すなわち、管状ターゲット102のターゲット材料が除去される)。換言すれば、除去面102fは、管状ターゲット102の管軸102aに対して実質的に垂直に延在するリング形状の端面であってもよい。この場合、除去面102fの面法線202nは、管状ターゲット102の管軸102aに対して実質的に平行である。管状ターゲット102の除去面102fの反対側における管状ターゲット102の形状は、任意の態様で構成されることができる。
【0032】
図2Bに示すように、管状ターゲット102は、例示的に、前端が鋭く尖っていてもよく、又は面取りされていてもよい。換言すれば、自由端縁202rから円錐状に延在する管状ターゲット102の表面が、除去面102fとして使用されることができる。
図2Cに示すように、管状ターゲット102は、例示的に、丸められてもよく、又は端面側端部に(am stirnseitigen Ende)丸み又は湾曲部を有してもよい。換言すると、自由端縁202rから湾曲して延在する管状ターゲット102の表面は、除去面102fとして使用されることができる。この場合、除去面102fは、内側円筒套面202i(又は内側円周壁)から外側円筒套面202a(又は外側円周壁)に延在することができる。あるいは、除去面102fは、内径203iよりも大きな直径を有する外側端縁から外側円筒套面202aまで延在することができる。さらに、外側端縁は、外径203aより小さい直径を有することができる。換言すると、除去面102fは、管状ターゲット102の管軸102aに対して角度207で配向された面法線202nを有するリング形状の面であってもよい。管状ターゲット102の除去面102fの反対側における管状ターゲット102の形状は、任意の態様で構成されることができる。
【0033】
例示的には、図示された両方の実施例において、除去面102fは、その面法線202nが管軸102aに対して垂直に配向されている管状ターゲット102の外側套面ではなく、面法線202nが管軸102aに対して90°未満の角度207に配向された面法線202nを有する管状ターゲット102の露出した面であり、例えば、角度207は、75°未満の角度207、0°から75°までの角度207、又は0°から50まで°の角度207である。
【0034】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、管軸102aに対して実質的に回転対称に成形されてもよい。したがって、除去面102f上に生成される少なくとも1つの蒸気源102qは、管状ターゲット102がその管軸102a周りに回転されるとき、静止状態又は位置固定されたままに保たれる(ortsfest verbleiben)ことができる。
【0035】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、約0.1cm~約10cmの範囲、好ましくは約1cm~約6cmの範囲の壁厚102wを有し得る。あるいは、壁厚102wは、約10cmより大きくてもよい。
【0036】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、約2cmを超える、例えば約5cmを超える、又は約10cmを超える内径203iを有し得る。この場合、管状ターゲット102の内径203iは、管状ターゲットターゲット102の長さ203h及び壁厚102wを考慮してプロセスチャンバ内の設置空間(Bauraum)によって許容されるように、又は好都合であることが証明されるように(wie
es sich fur gunstig erweist)、選択されることができる。例えば、管状ターゲット102の内径203iは、管状ターゲットの製造可能性に関してどのような限界寸法が存在するかに応じて、数メートルまでであり得る。
【0037】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、10cmを超える長さ203hを有し得る。この場合、管状ターゲット102の長さ203hは、管状ターゲット102の内径203i及び壁厚102wを考慮して、プロセスチャンバ内の構成空間によって許容されるように、又は好都合であることが証明されるように、選択されることができる。例えば、管状ターゲット102の長さ203hは、数メートル未満であってもよい。
【0038】
一方、長さ及び/又は直径に関する管状ターゲット102の寸法は、所定の材料量(Materialmenge)において、可能な限り小さい構成空間を有するコーティングチャンバが使用され得るように提供されることができる。対照的に、管状ターゲット102の壁厚は、例えば材料に依存し、任意に増加させることはできない。なぜなら、除去される壁材料の厚さは、例えば、除去のための電子ビームの源面積(Elektronenstrahl-Quellflaeche)の妥当な範囲(einer
sinnvollen Ausdehnung)に対応するからである。逆に、除去のための電子ビームの源面積は、所望の蒸発レート(Verdampfungsrate)のために要求される源温度を生成するために必要な出力密度入力(Leistungsdichteeintrag)から決定される。
【0039】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、管状ターゲットを製造可能である限り、炭素又は別の昇華材料を含有するか、又は、から成ることができる。炭素の他に、ホウ素、クロム、マグネシウム、ヒ素、テルル、ヨウ素、及び、いくつかの硫化物、フッ化物、テルル化合物、炭化物、ホウ化物又は酸化物も適している。
【0040】
図3は、本発明による電子ビーム蒸発器100を模式的な斜視図で示す。管状ターゲット102は、例えば、支持アセンブリ302によって回転可能に軸支されることができる。したがって、管状ターゲット102は、管軸102a周りに(例えば、適切な駆動部によって)回転302rされることができる。これは、例えば、材料を除去面102fから均一に除去することを可能にする。さらに、管状ターゲット102は、管状ターゲット102が軸方向に(例えば、適切な駆動部によって)移動できるように軸支されていてもよい又は軸支されることができる。このことは、例えば、少なくとも1つの蒸気源102qが位置固定的に保たれることができるように、除去面102fを補充する(ein Nachfuehren)ことを可能にする。したがって、例えば、除去面102fからコーティングされるべき基板320又は基板平面320eまでの距離は、コーティングされるべき基板320が搬送方向320tに沿ってガイドされることによって、実質的に一定(例えば、5mm未満又は1mm未満の偏差を伴う)に維持され得る。例えば、供給源の、例えば1mm以下の最大偏差を有する、一定の高さ位置は、前進移動(der Vorschubbewegung)によって達成されてもよい。
【0041】
例示的には、管状ターゲット102及び電子ビーム銃104、ならびに基板搬送部は、基板320が生成された蒸気の流れを通って適切な方法で移動するように、相応に構成される。
【0042】
図4は、本発明による電子ビーム蒸発器100を模式的な斜視図で示す。
【0043】
例えば、センサデータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサ404が提供されてもよい又は提供されることができる。センサデータは、例えば、除去面102fの空間位置を表すことができる。センサ404は、例えば、距離測定のためのレーザの使用に基づく光距離センサであってもよい。あるいは、任意の他の適切なセンサ404を使用することができる。
【0044】
さらに、管状ターゲット102を軸方向において移動させるように構成された作動装置402(eine Stellvorrichtung 402)が設けられてもよい。作動装置402は、例えば、管状ターゲット102を基平板面320eの方向において前進させること(Vorschub)を可能にする線形作動装置であってもよい。
【0045】
基板平面320e(搬送平面とも称される)は、例えばそれぞれの使用される搬送装置(Transportvorrichtung)によって画定されることができ、搬送装置は、基板320を少なくとも1つの蒸気源102qに対して搬送方向320tに沿って移動させるように構成されている。
【0046】
調整部406を用いて、例えば、センサ404によって検出されたセンサデータに基づいて、除去面102fの空間的位置(例えば、基準対象物、例えば基板平面320eへの相対距離)を、作動装置402によって一定に保つことができる。
【0047】
種々の実施形態によれば、電子ビーム蒸発器100は、シールドアセンブリ408を有することができる。シールドアセンブリ408は、除去面102fを部分的に覆うように構成されてもよい。シールドアセンブリ408は、例えば、少なくとも1つの蒸気源102qを生成するために、電子ビーム104eがシールド開口408oを通って管状ターゲット102の除去面102f上に導かれることができるように、少なくとも1つのシールド開口408oを有する。
【0048】
種々の実施形態によれば、センサ404は、シールドアセンブリ408に対する除去面102fの距離を検出するように構成されることができる。又は、換言すると、調整部406の基準対象物はシールドアセンブリ408であるか、又はシールドアセンブリ408の一部であることができる。さらに、センサ404は、シールドアセンブリ408に取り付けられていてもよいか、又は、取り付けられることができる。
【0049】
種々の実施形態によれば、シールドアセンブリ408は、シールドアセンブリ408を冷却するための冷却構造を有することができる。さらに、例えば、少なくとも1つの冷却チャネルが、シールドアセンブリ408内に及び/又はシールドアセンブリ408上に(in und/oder an)設けられていてもよい又は設けられることができる(図示せず)。例えば、液体冷却(例えば、水冷)が使用されることができる。
【0050】
上述のように、昇華蒸発材料の蒸発及び管端部側からの材料除去の間に、管はその対称軸(又は管軸102a)周りに回転されることができ、したがって、新たな蒸発材料が蒸発スポット又は源領域に供給される。同時に、さもなければ蒸発によって変化してしまう蒸着距離が実質的に一定に保たれるように、管状ターゲット102はその対称軸に平行に源位置の方向へ並進運動302aにより移動することができる。
【0051】
回転運動302r及び並進運動302aは、互いに独立して生成されることができる。あるいは、回転運動302r及び並進運動302aは、例えば1つの駆動部のみによる螺旋運動として、結合された態様で実行されてもよい。
【0052】
1つの又は複数の送り運動の速度は、蒸発レートに応じた除去に適合される。
【0053】
冷却された遮蔽部(Abschirmung)(シールドアセンブリ408とも称される)は、電子ビーム104eが入射する管状ターゲット102の端部側の上方に配置されてもよいか又は配置されることができる。この遮蔽部は、例えば、以下の機能を有することができる:
1.管状ターゲット102の高温領域を、基板320に対して部分的に遮蔽し、蒸発する源領域102qは露出させ、
2.蒸発材料の補充302aの際に、相応の速度適合及び/又は出力適合によって、少なくとも1つの蒸気源102qの位置的不変性(Ortskonstanz)(最も簡単な場合には高さ不変性)を許容限界内に維持するために、管状ターゲット102と遮蔽部との間の距離を検出するための少なくとも1つの距離センサ404を保持する。
【0054】
例えば、
図2Bに示すように、管状ターゲット102が円錐状の除去面102fを有する限り、シールドアセンブリ408は、その形状に応じて適合されることができ、例えば、同様に、管状ターゲット102と一致する円錐状形状を有することができる。
【0055】
種々の実施形態によれば、除去装置は、管状ターゲット102の端部側の蒸発材料上にある蒸発していない残留物を(例えば機械的に)除去し、したがって端部側を平坦化するように構成されており、シールドアセンブリ408に及び/又はシールドアセンブリ408の下方に(an der Blendenanordnung 408 und/oder unter der Blendenanordnung 408)、配置されていてもよく又は配置されることができる。
【0056】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102の外径203aは、電子ビーム104eによって除去面102f(例えば、円周方向に沿って)に、2つ以上の蒸気源102qを生成することも可能な大きさに選択されてもよい。種々の実施形態によれば、蒸気源102qの源位置は、所定の層厚均一性を有するコーティングを基板320上に生成することが可能であるように選択されてもよい。
【0057】
種々の実施形態によれば、大きな管直径203a(例えば、0.5mを超える、又は1mを超える)を使用することができ、このことは、相応に大量のターゲット材料の提供を可能にする。このようにして、例えば、長期間の蒸発プロセスを提供することができる。例えば、グラファイト管を管状ターゲット102として使用することができ、これはグラファイト半製品メーカーの(der Graphit-Halbzeug-Hersteller)標準供給プログラムで1200mmの直径203aまで入手可能である。管状ターゲット102の長さ302hは相応に大きな管直径203aの場合に小さく保たれることができ、例えば0.5m未満であることができる。このようにして、プロセスチャンバの容積の最小化に関して、蒸発器の幾何学的形状を最適するが可能性が得られる。
【0058】
選択的に、2つ以上の管蒸発器を蒸着構成で組み合わせることができる。この場合、管状ターゲット102、蒸気源102q、使用される電子ビーム銃104の数、及びビームガイド(Strahlfuhrueng)は、相応に適合されていてもよく又は適合されることができる。複数の管状ターゲット102の対称な全体的配置の場合には(Bei symmetrischen ganzzahligen Anordnungen)、例えば、
図5に概略図で示されるように、基板フローの対称軸に関して線対称(spiegelsymmetrisch)に配置された管状ターゲット102は、有利には、反対方向に回転503rを実行することができる。
【0059】
図5に示される蒸着構成の場合、基板搬送方向320tは、図面の平面に対して垂直であってもよい。したがって、それぞれの基板320は、例えば、その全幅にわたってコーティングされることができる。
【0060】
このようにして、例えば、1つ又は複数の蒸気源102qの基板320に対する位置的不変性を達成することが可能である。さらに、簡単なプロセス装置、及び、熱的プロセス条件並びに除去の幾何学的形状を一定に保つことがもたらされる。さらに、材料供給のための簡単なモニタリングと制御の可能性がもたらされる。材料交換のためにプロセスを中断することなく、長い活動のための大きな蒸発材料体積又は十分な供給がもたらされる。したがって、材料交換によるレート低下を最小化することが可能である。さらに、利用可能なプロセス空間における配置並びに最適化に関する、及び、基板フローの幅に関するフレキシビリティがもたらされる。
【0061】
さらに、本明細書に記載される電子ビーム蒸発器100の構造によれば、管状ターゲット102の端面(すなわち、除去面102f)を、除去装置を用いて(例えば、機械的に)平坦化することが可能である。
【0062】
図6は、種々の実施形態による電子ビーム蒸発器100を有するコーティング装置600を概略図に示す。
【0063】
例えば、コーティング装置600は、少なくとも1つのコーティング領域602pを有するコーティングチャンバ602と、コーティング領域602pにおいて基板320をコーティングするための、少なくとも1つの電子ビーム蒸発器100と、を有することができる。例えば、コーティングチャンバ602は真空チャンバであることができ、コーティング領域602pにおいて、1mbar以下の圧力、例えば約10-6mbarから約1mbarの範囲内の圧力が提供されていてもよいか又は圧力を提供することができる。
【0064】
さらに、コーティング装置600は、コーティング領域602p内で搬送方向320tに沿って基板320を搬送するための搬送装置604を有することができる。
【0065】
搬送装置604は、それぞれの搬送されるべき基板320に適合されることができる。剛性基板又は基板担体(所謂キャリア)は、例えば、搬送ローラのアセンブリ上に載置されて搬送されることができる。フレキシブル基板(例えば、フィルム又はストリップ)は、巻付け及び巻取りローラ(einer Auf- und Abwickelrolle)によって、さらに任意で、1つ以上の偏向ローラ(ローラからローラへ)によって搬送されることができる。さらに、コーティング領域602p内で基板320を搬送し及び/又は位置決めする為のあらゆる適切な装置を使用することができる。
【0066】
図5にも示されるように、例えば、複数の電子ビーム蒸発器100又は複数の管状ターゲット102が、コーティングチャンバ602内に設けられてもよい又は設けられることができる。例えば、複数の管状ターゲット102は、搬送方向320tに対してある角度(例えば、横方向)の方向に沿って一列に(in einer Reihe entlang einer Richtung in einem Winkel (z.B. quer))配置されてもよい又は配置されることができる。同様に、1つの電子ビーム蒸発器100の複数の管状ターゲット102は、搬送方向320tに対してある角度(例えば、横方向)の方向に沿って一列に配置されてもよい又は配置されることができる。その際、1つ以上の電子ビーム蒸発器100の2つの隣接する管状ターゲット102はそれぞれ、反対の回転方向302r、502rに回転するように構成されることができる。あるいは、全ての管状ターゲット102が同じ回転方向に回転することもできる。
【0067】
図7は、各種実施形態に従ったコーティング方法のフローチャートを模式的に示す。例えば、コーティング方法700は、710における、電子ビーム104eによって管状ターゲット102の除去面102f上に、蒸気源102qを生成するステップであって、除去面102fは、管状ターゲットの、リング形状の軸方向端面、又は、自由端縁から円錐状に若しくは湾曲して延在する面である、ステップと、720における、蒸気源102qから生成された蒸気を用いて基板320上にコーティングするステップと、を含むことができる。
【0068】
種々の実施形態によれば、方法は、除去面102fからの材料除去を補償するために、管状ターゲット102を回転軸周りに回転させ、管状ターゲット102をコーティングされるべき基板320又は基板平面320eの方向に移動させるステップ、をさらに含むことができる。
【0069】
種々の実施形態によれば、補充される回転管上に蒸気源102qを提供するように構成された電子ビーム蒸発器100が提供される。
【0070】
管状ターゲット102内の中空空間に基づいて、管状ターゲットが、中実ターゲット(例えばロッド)の際に起こり得るように、広範囲で加熱されるのを防止されることができる。管状ターゲット102の幾何学的形状に基づいて、蒸気源102qの領域からの熱伝導による熱伝播は制限される。
【0071】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、コーティング装置600内で垂直に立てられて使用されてもよい。あるいは、コーティング装置600内で、垂直方向に対して傾けられて配置されていてもよい又は配置されることができる。
【0072】
種々の実施形態によれば、電子ビームによって除去面102f上で生成される電子ビームパターンは静止状態で生成されることができる。その際、管状ターゲット102が回転することにより、除去面102fは電子ビームパターンの下を通って移動する。
【0073】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102は、ふらつき運動(eine Taumelbewegung)が回避されるように、軸支(例えばクランプ(eingespannt))されることができる。
【0074】
種々の実施形態によれば、必要に応じて、2つの又は2以上の管状ターゲット102が同軸に互いに挿入されて(ineinandergesteck)配置されていてもよい又は配置されることができ、ここで、隣り合う管状ターゲット102同士の間にはそれぞれ空隙が残されている。その際、それぞれの除去面102fは、実質的に同一平面上に、即ち共通の平面内に存在してもよい。
【0075】
種々の実施形態によれば、必要に応じて、2つの又は2以上の管状ターゲット102が同軸に隣り合って配置されていてもよい又は配置されることができ、ここで、隣り合う管状ターゲット102同士の間にはそれぞれ空隙が残されている。その際、それぞれの除去面102fは、実質的に同一平面上に、即ち共通の平面内に存在してもよい。
【0076】
様々な実施形態によれば、管状ターゲット102は、x、y、及びz方向に沿って並進移動でき、さらに少なくとも1つの軸(例えば、管軸102a)周りに回転できるように軸支されることができる。
【0077】
以下、上記に関連する種々の実施例について説明する。
【0078】
実施例1は、電子ビーム蒸発器100であって、管状又は円筒状ターゲット(ein Rohrtarget)102と、電子ビーム源104qと、電子ビーム104eを用いて管状ターゲット102の除去面102f上に(auf einer Abtragflaeche)蒸気源102qを生成するためのビームガイド(eine Strahlfuehrung)とを有し、除去面102fは、管状ターゲット102の、リング形状の軸方向端面、又は、自由端縁から円錐形に若しくは湾曲して延在する面である。同様に、電子ビーム蒸発器100は、管状ターゲット102と、電子ビーム104eを用いて管状ターゲット102の除去面102f上に蒸気源102qを生成するための電子ビーム銃104と、を有し、ここで、除去面102fは、管状ターゲット102の、環状の軸方向端面、又は、自由端縁から円錐形に若しくは湾曲して延在する面である。図示されるように、除去面は、管状ターゲット102の外側套面に相当しないように提供されている。
【0079】
実施例2において、実施例1による電子ビーム蒸発器100は、任意に、除去面の面法線(einer Flaechennormalen)202nと管軸との間の角度207が0°から75°までの範囲にある形態を含むことができる。
【0080】
実施例3において、実施例1又は2による電子ビーム蒸発器100は、任意に、管状ターゲット102が、約0.5cmから約10cmまでの範囲の壁厚(eine Wandstaerke)102wを有する形態を含むことができる。例えば、管状ターゲット102の壁厚102wは、約1cmから約6cmの範囲にあることができる。例えば、これは、炭素又はグラファイトの効果的な蒸発又は昇華を可能にする。
【0081】
実施例4において、実施例1乃至3のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意に、管状ターゲット102が、2cmより大きな内径203iを有すること、を含むことができる。例えば、内径203iは、10cmより大きくてもよい。
【0082】
実施例5において、実施例1乃至4のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意に、管状ターゲット102が10cmより大きな長さ203hを有することを含むことができる。
【0083】
実施例6において、実施例1乃至5のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意に、管状ターゲット102が炭素又は別の昇華材料(ein anderes sublimierendes Material)を含有する形態、を含むことができる。例えば管状ターゲット102は、炭素又はグラファイトから実質的に成ることができる。例えば管状ターゲット102は、昇華材料から実質的に成ることができる。
【0084】
実施例7において、実施例1乃至6のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、管状ターゲット102を回転可能に支持するための支持アセンブリ(eine Lageranordnung)302を有することができる。支持アセンブリ302は例えば、管状ターゲット102が、その管軸102a周りに回転することができるように、構成されることができる。
【0085】
実施例8において、実施例1乃至7のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、管状ターゲット102をシフト可能に支持する(verschiebbaren Lagern)ための支持アセンブリ302、402を有することができる。
【0086】
実施例9において、実施例7による電子ビーム蒸発器100は、任意に、管状ターゲット102が軸方向に移動可能にさらに構成される形態を含むことができる。
【0087】
実施例10において、実施例1乃至9のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、除去面102fの空間位置を表す検出センサデータを捕捉するためのセンサ404と、管状ターゲット102を軸方向に移動302aさせるための作動装置(eine Stellvorrichtung)402と、センサデータに基づいて、作動装置402を用いて除去面102fの位置を固定的に保つように(ortsfest zu halten)、又は、コーティングされるべき基板320に対する管状ターゲット102の除去面102fの距離を一定に保つように、構成された調整部(eine Regelung)406と、を有する。
【0088】
実施例11において、実施例1乃至9のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、除去面102fを部分的に覆うシールドアセンブリ(eine Blendenanordnung)408を有し、シールドアセンブリ408は、電子ビーム104eがシールド開口408oを介して除去面102f上に導かれるように、少なくとも1つのシールド開口408oを有する。
【0089】
実施例12において、実施例11による電子ビーム蒸発器100は、任意に、シールドアセンブリ408がさらに、シールドアセンブリ408を冷却するための冷却構造を有する形態を含むことができる。
【0090】
実施例13において、実施例11又は12による電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、シールドアセンブリ408からの、管状ターゲット102の除去面102fの距離を表すセンサデータを捕捉するための距離センサ404と、管状ターゲット102を軸方向に移動302aさせるための作動装置402と、センサデータに基づいて、作動装置402によって、シールドアセンブリ408に対する除去面102fの距離を一定に保つように構成されている調整部406と、をさらに有する。
【0091】
種々の実施形態によれば、管状ターゲット102をセットする(stellen)ための(具体的には移動させる(Bewegen)ための)作動装置、及び、管状ターゲット102を支持するための支持アセンブリは、共通の位置決めアセンブリ(einer gemeinsamen Positionieranordnung)が提供されていてもよく又は提供されることができる。
【0092】
実施例14において、実施例1乃至13のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、
平坦な除去面102fを生成するために、管状ターゲット102の端面上の蒸発材料表面の(an Verdampfungsgut)未蒸発の残留物(nicht verdampfte
Reste)を除去するように構成されている除去装置を有することができる。
【0093】
実施例15において、実施例1乃至13のいずれかによる電子ビーム蒸発器100は、任意にさらに、除去面102fを平坦化するために、好ましくは機械的に平坦化するために構成された除去装置を有することができる。このために、例えば、除去装置は、管状ターゲット102の除去面102fとシールドアセンブリ408との間に配置されていてもよい又は配置されることができる。さらに、除去装置は、シールドアセンブリ408に取り付けられていても良く又は取り付けられることができる。さらにまた、除去装置は、機械的平坦化のために少なくとも1つの切削エッジ及び/又は研磨エッジ(eine Schneid- und/oder Schleifkante)を有することができる。
【0094】
実施例16はコーティング装置600であって、少なくとも1つのコーティング領域602pを有するコーティングチャンバ602と、コーティング領域602pにおいて基板320をコーティングするために、実施例1乃至8いずれかによる、少なくとも1つの電子ビーム蒸発器100と、を有する。
【0095】
実施例17において、実施例16によるコーティング装置600は、任意にさらに、搬送方向(entlang einer Transportrichtung)320tに沿ってコーティング領域602p内で基板320を搬送するための搬送装置(eine Transportvorrichtung)604を有することができる。
【0096】
実施例18において、実施例16又は17によるコーティング装置600は、任意に、コーティング装置600が複数の電子ビーム蒸発器100を含み、複数の電子ビーム蒸発器100のそれぞれの管状ターゲット102は、搬送方向320tに対して横方向又はある角度の方向(einer Richtung in einem Winkel)に沿って一列に(in
einer Reihe entlang einer Richtung)配置されている、という形態を有することができる。
【0097】
実施例19において、実施例16乃至18のいずれかによるコーティング装置600は、任意に、電子ビーム蒸発器100が複数の管状ターゲットを有し、複数の管状ターゲットは、搬送方向320tに対して横方向に又はある角度の方向に沿って一列に配置されている形態を含むことができる。
【0098】
実施例20において、実施例18又は19によるコーティング装置600は、任意に、複数の管状ターゲット102のそれぞれ2つの隣り合う管状ターゲット102は、これらが反対の回転方向302r、502rに回転するように構成されている態様を含むことができる。
【0099】
実施例21は、電子ビーム蒸発器100であって、管状ターゲット102と、電子ビーム104eによって管状ターゲット102の除去面102f上に少なくとも1つの蒸気源102qを生成するための電子ビーム銃104と、を有し、管状ターゲット102の除去面102fは回転軸102aに対して横方向又はある角度に延在する。
【0100】
実施例22は、コーティング方法700であって、少なくとも1つの電子ビーム104eによって管状ターゲット102の除去面102f上に、少なくとも1つの蒸気源102qを生成するステップであって、除去面102fは、管状ターゲットの、リング形状の軸方向端面、又は、自由端縁から円錐状に若しくは湾曲して延在する面である、ステップと、少なくとも1つの蒸気源102qを用いて基板320をコーティングするステップと、を含む。同様に、コーティング方法700は、少なくとも1つの電子ビーム104eによって管状ターゲット102の除去面102f上に、少なくとも1つの蒸気源102qを生成するステップであって、
管状ターゲット102の除去面102は、管軸102aに対して横方向に又はある角度で延在する、ステップと、少なくとも1つの蒸気源102qを用いて基板320をコーティングするステップと、を含むことができる。
【0101】
実施例23において、実施例22によるコーティング方法700は、任意にさらに、管状ターゲット102を管軸102a周りに回転させるステップ、を含むことができる。
【0102】
実施例24において、実施例22又は23によるコーティング方法700は、任意にさらに、除去面からの材料除去を補償するために、基板が搬送される方向である基板平面320eの方向又は基板320の方向に管状ターゲット102を移動させるステップ302aを含むことができる。
【0103】
実施例25において、実施例22乃至24のいずれかによるコーティング方法700は、任意にさらに、少なくとも1つの電子ビーム104eによって管状ターゲット102の除去面102f上に、追加の蒸気源102qを生成するステップ、を含むことができる。
【0104】
実施例26において、リング形状の除去面102fを有する管状ターゲット102は、電子ビームを用いて除去面102f上に少なくとも1つの蒸気源102qを生成するために使用される。
【0105】
実施例27において、管状ターゲット102の自由端縁202rから円錐状に又は湾曲して延在する除去面102fを有する管状ターゲット102は、電子ビームを用いて除去面102f上に少なくとも1つの蒸気源102qを生成するために使用される。
【0106】
実施例28は、電子ビーム蒸発器100であって、管状ターゲット102と、電子ビーム104eを用いて管状ターゲット102の除去面102f上に少なくとも1つの蒸気源102qを生成するための電子ビーム銃104と、を備え、除去面102fは、管状ターゲット102の、リング形状に延在する面であって、管状ターゲットの内周壁から外周壁へと延在する面である。