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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20220517BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220517BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C11B9/00 U
C11B9/00 S
A61Q13/00 101
A61K8/37
A61Q5/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019563281
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018062338
(87)【国際公開番号】W WO2018210725
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】17171045.2
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ルリェーブル,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アルヘンバーガー,アレン
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,ハインツ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143221(JP,A)
【文献】TAKEOKA, G. R. et al.,Cyclic esters: compounds possessing remarkably low odor thresholds,Lebensmittel-Wissenschaft und -Technologie,(1991), vol.24, no.6,pp. 569-570
【文献】FERREIRA, V. et al.,Modeling Quality of Premium Spanish Red Wines from Gas Chromatography-Olfactometry Data,Journal of Agricultural and Food Chemistry, (2009), vol.57, no.16,pp. 7490-7498 ,DOI:10.1021/jf9006483
【文献】ROSS, C. F. et al.,Aroma profile of Niagara grape juice contaminated with multicoloured Asian lady beetle taint using gas chromatography/mass spectrometry/olfactometry,International Journal of Food Science and Technology,(2010), vol.45, no.4,pp. 789-793,DOI:10.1111/j.1365-2621.2010.02197.x
【文献】FAN, W. et al.,Identification of Aroma Compounds in Chiinese "Moutai" and "Langjiu" Liquors by Normal Phase Liquid Chromatography Fractionation Followed by Gas Chromatography/Olfactometry,Flavor Chemistry of Wine and other Alcoholic Beverages(ACS symposium series),(2012), vol.1104,pp.303-338
【文献】GUTH, H. et al.,A comparative study of the potent odorants of different virgin olive oils,Fett Wissenschaft Technologie , (1991), vol.93, no.9,pp. 335-339,DOI:10.1002/lipi.19910930903
【文献】ESCUDERO, A. et al.,Analytical Characterization of the Aroma of Five Premium Red Wines. Insights into the Role of Odor Families and the Concept of Fruitiness of Wines,Journal of Agricultural and Food Chemistry,(2007), vol.55, no.11,pp. 4501-4510,DOI:10.1021/jf0636418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1重量%までのエチルシクロヘキサンカルボキシラートおよび少なくとも1のオドラントエステルを含エチルシクロヘキサンカルボキシラートおよび少なくとも1のオドラントエステルの間の重量比が、1:10,000,000~1:100(エチルシクロヘキサンカルボキシラート:エステル)である、フレグランス組成物。
【請求項2】
オドラントエステルが、式(I)
【化1】

で表され、300まで(例として130~250)の分子量を有する化合物である、式中
ii) Rは、メチル、エチル、C~Cアルキル、およびC~Cアルケニルから選択され、および
は、14Cまでの原子を含有し、-OH、-C(O)、および-O-から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルである;または
ii) Rは、14Cまでの原子を含有し、-OH、-C(O)、および-O-から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルであり、および
は、メチル、エチル、C~Cアルキル、およびC~Cアルケニルから選択される;または
iii) RおよびRは、それらが結合する原子と共に、5または6環原子を含有する環状エステルを形成し、ここで当該環は、アルキルおよびアルケニルから選択される1、2またはそれ以上の基で任意に置換され得る、
請求項1に記載のフレグランス組成物。
【請求項3】
1重量%までのエチルシクロヘキサンカルボキシラートをそこへ混合することにより得られる「増強された」匂いプロファイルを有する請求項2に定義された式(I)の少なくとも1つのエステルを含む、フレグランス組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のフレグランス組成物を含む、フレグランスが付与された物品。
【請求項5】
少なくとも1のオドラントエステルを含む組成物にエチルシクロヘキサンカルボキシラートを添加するステップを含エチルシクロヘキサンカルボキシラートおよび少なくとも1のオドラントエステルの間の重量比が、1:10,000,000~1:100(エチルシクロヘキサンカルボキシラート:エステル)である、エステルのフルーティー特徴を増強する方法。
【請求項6】
オドラントエステルが、式(I)
【化2】

で表され、300まで(例として130~250)の分子量を有する化合物である、式中
iii) Rは、メチル、エチル、C~Cアルキル、およびC~Cアルケニルから選択され、および
は、14Cまでの原子を含有し、-OH、-C(O)、および-O-から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルである;または
ii) Rは、14Cまでの原子を含有し、-OH、-C(O)、および-O-から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルであり、および
は、メチル、エチル、C~Cアルキル、およびC~Cアルケニルから選択される;または
iii) RおよびRは、それらが結合する原子と共に、5または6環原子を含有する環状エステルを形成し、ここで当該環は、アルキルおよびアルケニルから選択される1、2またはそれ以上の基で任意に置換され得る、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレグランス組成物およびそれらを増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレグランス組成物は通常、天然および合成の両方の揮発性の個々の成分のブレンドであり、全体的に所望される快楽特徴をもたらすために、熟練した調香師によって慎重にブレンドされる。個々の成分は、この特定の所望される特徴を追加するために選択される。
【0003】
フレグランスの極めて一般的なクラスは、エステルである。エステルは多くの植物のエッセンシャルオイルに含まれており、甘くフルーティーな匂いで知られている。結果として、それらは、フレグランス組成物のための人気のある選択肢である。人気のあるフレグランスエステルの典型例は、ベンジルアセタート、ボルニルアセタート(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]へプタン-2-イルアセタート)、2-tert-ブチル-シクロヘキシルアセタート(AgrumexTM)およびオクタヒドロ-4,7-メタノ-3aH-インデン-3a-カルボン酸,エチルエステル(FruitateTM)、および1,3-シクロヘキサジエン-1-カルボン酸,2,6,6-トリメチル-,エチルエステル(Ethyl SafranateTM)を包含する。これらの全ては、心地よい、所望の匂いを有することが知られている。
【0004】
特定の成分の添加が、エステル含有フレグランス組成物の所望の特性を増強させることができることが今や見出された。したがって、少なくとも1つの成分がエステルであるフレグランス成分のブレンドを含むフレグランス組成物であって、当該組成物は1重量%までのエチルシクロヘキサノアートを追加で含む、前記組成物が提供される。
【0005】
エチルシクロヘキシルカルボキシラートと称されることもある、エチルシクロヘキサノアート(CAS 3289-28-9)は、周知のフレーバーおよびフレグランスリソースであるGood Scents Companyのデータベースにおいて「フルーティー、チーズのような、ワインのような」と説明される匂いを有する。これは、様々な天然の油、例えば、バージンオリーブオイル(例えば、Reiners et al, J. Agric. Food Chem. 1998, 46, 2754-2763参照)およびラム酒(Franitza et al, J. Agric. Food Chem. 2016, 64, 637-645参照)に存在することが知られている。しかしながら、既知であり特徴づけられているが、それは商業用のフレグランス材料として製造されたことはなく、前記化合物を含むフレグランス組成物の開示はない。
【発明の概要】
【0006】
エステルの匂い特徴を増強することが独自に発見された;アルコール、ケトンまたはアルデヒドなどの、他のクラスのフレグランス成分には感知できるほどの効果を有さない。
【0007】
その上、この所望の効果を達成するためには、エチルシクロヘキサノアートの割合を厳しい制限内で使用しなければならないことが見出された‐少なすぎると、増強効果がなく、多すぎると、望ましくない「チーズのような」匂いがある。エチルシクロヘキサノアートは、したがって、フレグランス組成物に基づいて、1重量%まで、好ましくは0.000001~0.05重量%、例として、0.00001~0.1重量%の間、これは0.0001~0.02重量%(例として、0.0005%または0.001%)を包含する、の濃度で使用されるべきである。しかしながら、フレグランス組成物に存在するエチルシクロヘキサノアートの量は、存在する他のフレグランス成分に依存して異なり得る。本発明のさらなる側面において、エチルシクロヘキサノアートのエステルに対する比率は、好ましくは、望ましくない「チーズのような」匂いを避けるために、厳しい制限内で使用しなければならないことが理解される。エチルシクロヘキサノアートは、したがって、1:10’000’000~1:100(1:5’000’000~1:500など、これは1:1’000’000~1:1’000を含む)のフレグランス組成物のエステル構成要素との重量比(エチルシクロヘキサノアート:エステル(単数または複数))で使用するべきである。
【0008】
1重量%まで(例として0.000001、0.00001、0.00005、0.0001、0.0005、0.001、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.5重量%)のエチルシクロヘキサノアートを添加することを含む、少なくとも1つのエステルを含むフレグランス組成物のフレグランス品質を増強する方法も提供する。
【0009】
さらなる態様において、エステルの匂い特徴、とりわけステルが提供するフルーティーな匂い特徴を増強する方法を提供する。「フルーティーな特徴の増強」は、エチルシクロヘキサンカルボキシラートの添加が、よりジューシーでより自然な全体的な特徴として維持される匂い特徴をもたらすことを意味する。よって、フレーバーまたはフレグランス組成物にエチルシクロヘキサンカルボキシラートを添加するステップを含む、エステル、とりわけ以下に定義される式(I)のエステルのフルーティーな特徴を増強する方法を提供する。例えばこれは、ジューシーさ、およびグレープフルーツ、マンゴー、シトラス、オレンジ等の熟したフルーツの印象を増強する。
【0010】
「増強する」は、エステルの、およびそれが組み込まれているフレグランス組成物の快楽性が、より心地よいだけでなく、よりバランスがとれ、より自然であるおよび/またはより強い観点から改善されることを意味する。全体的な快楽効果は、エチルシクロヘキサノアートを含まない組成物と比較して、はるかに改善され、より所望のものであり、一般に、より好まれる。
【0011】
「エステル」は、少なくとも1つのエステル基(-C(O)O-)を含む炭化水素化合物を意味する。環状エステルである、γ-デカラクトン(6-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン);γ-ウンデカラクトン(5-へプチルオキソラン-2-オン)などのラクトンも包含する。任意に、当該炭化水素化合物は、アルコール(-OH)、カルボニル(-C(O)-)、およびエーテル(-O-)などの他の(例として、1、2または3つの)官能基(単数または複数)を含んでも良い。エステルは、300MWまで、好ましくは130および250MWの間の分子量を有する。
【0012】
好ましい態様において、エステルは、式(I)
【化1】
で表され、300まで(例として130~250)の分子量を有する化合物である:式中
i) Rは、メチル、エチル、C~Cアルキル、およびC~Cアルケニル(例えば、ヘキセニル、プロパ-2-エニル)から選択され、および
は、14C原子まで(例えば5、6、7、8、9、10または11C原子)を含有し、-OH(アルコール)、-C(O)-(カルボニル)、およびエーテル(-O-)から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルである;または
ii) Rは14C原子まで(例えば5、6、7、8、9、10または11C原子)を含有し、-OH(アルコール)、-C(O)-(カルボニル)、およびエーテル(-O-)から選択される1、2または3つの官能基を任意に含み得る炭化水素ラジカルである、および
は、メチル、エチル、C~Cアルキル、またはC~Cアルケニル(例えば、ヘキセニル、プロパ-2-エニル)から選択される;または
iii) RおよびRは、それらが結合する原子と共に、5または6環原子を含有する環状エステルを形成し、ここで当該環は、アルキルおよびアルケニルから選択される1、2またはそれ以上の基で任意に置換され得る。
【0013】
式(I)で表される化合物に関して使用される場合、特に明記されない限り、「炭化水素ラジカル」は、直鎖、分岐、単環、二環または三環式アルキル、直鎖、分岐、単環、二環または三環式アルケニル(1以上の二重結合を含む)、およびアリールを包含し、ここで、環(環状アルキル、環状アルケニル、アリールなど)は、任意にアルキルで置換され得る。
【0014】
エステルの非限定例は、RまたはRのいずれかがアルキルではない式(I)で表される化合物である。
さらに、エステルの非限定例は、炭化水素ラジカルが5~10個のC原子を含む、式(I)で表される化合物である。
【0015】
さらに、エステルの非限定例は、RおよびRが、それらが結合する原子と一緒に5または6個の環原子を含有する環状エステルを形成する式(I)の化合物であり、ここで環は、1つの直鎖C-C12アルキル(例として、C、C、C、C、C、C、Cアルキル)、または1つの直鎖C-C10アルケニル(1またはそれ以上の二重結合を含む、例として、C、C、Cアルケニル)で置換される。
【0016】
さらに、エステルの非限定例は、RおよびRが、それらが結合する原子と一緒に5または6個の環原子を含有する環状エステルを形成する式(I)の化合物であり、ここで環は、メチルおよび1つの直鎖C-C12アルキル(例として、C、C、C、C、C、C、Cアルキル)で、またはメチルおよび1つの直鎖C-C10アルケニル(1またはそれ以上の二重結合を含む、例として、C、C、Cアルケニル)で置換される。
【0017】
さらに、式(I)に従う既知のエステルは以下のものである:セドリルアセタート((1S,6R,8aR)-1,4,4,6-テトラメチルオクタヒドロ-1H-5,8a-メタノアズレン-6-イルアセタート);Helvetolide(R)(2-(1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)エトキシ)-2-メチルプロピルプロピオナート);4,8-ジメチル-2-(プロパン-2-イリデン)-1,2,3,3a,4,5,6,8a-オクタヒドロアズレン-6-イルアセタート;4-(tert-ブチル)シクロヘキシルアセタート;エチル2-メチルベンタノアート(Manzanate);ヘキシルサリチラート;メチル3-オキソ-2-ペンチルシクロペンタンアセタート(Hedione);2-tert-ブチル-シクロヘキシルアセタート(AgrumexTM);オクタヒドロ-4,7-メタノ-3aH-インデン-3a-カルボン酸,エチルエステル(FruitateTM);および1,3-シクロヘキサジエン-1-カルボン酸,2,6,6-トリメチル-,エチルエステル(Ethyl SafranateTM)である。式(I)に従うさらに特定のエステルは、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾアート(CAS4707-47-5);アリルヘプタノアート(CAS142-19-8);ジメチルベンジルカルビニルアセタート(CAS151-05-3);ジメチルベンジルカルビニルブチラート(CAS10094-34-5);エチル2-メチルブタノアート(CAS7452-79-1);3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-4,7-メタノインデン-6-イルプロピオナート(CAS68912-13-0);および(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルアセタート(CAS3681-71-8)である。
【0018】
エステルは合成成分であっても良く、またはこれらは天然のフレグランスオイルに存在し得る。既知の天然のフレグランスオイルに存在する個々のエステルは、「Perfume and Flavourist」または「Journal of Essential Oil Research」などの当業者に公知のジャーナルを参照して見出すことができ、またはS. Arctanderによる本、Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、およびAllured Publishing Corporation Illinoisにより、より最近再版されたもの(1994)などの参照テキストにリストされている。
【0019】
上述のフレグランス組成物は、少なくとも1のエステルに加えて、フレグランス組成物において有用であると当該技術分野で知られている他の天然のまたは合成の成分のいずれかを含有しても良い。かかる組成物の非限定例は以下を包含する:
‐ エッセシャルオイルおよび抽出物、例としてカストリウム、コスツスルートオイル、オークモスアブソリュート、ゼラニウムオイル、ツリーモスアブソリュート、バジルオイル、ベルガモットオイルおよびマンダリンオイルなどのフルーツオイル、マートルオイル、パルマローズオイル、パチョリオイル、プチグレインオイル、ジャスミンオイル、ローズオイル、サンダルウッドオイル、ワームウッドオイル、ラベンダーオイル油および/またはイランイランオイル;
【0020】
‐ アルコール、例として桂皮アルコール((E)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オール);cis-3-ヘキセノール((Z)-ヘキサ-3-エン-1-オール);シトロネロール(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);ジヒドロミルセノール(2,6-ジメチルオクタ-7-エン-2-オール);EbanolTM((E)-3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタ-4-エン-2-オール);オイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール);エチルリナロール((E)-3,7-ジメチルノナ-1,6-ジエン-3-オール);ファルネソール((2E,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-オール);ゲラニオール((E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール);Super MuguetTM((E)-6-エチル-3-メチルオクタ-6-エン-1-オール);リナロール(3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール);メントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール);ネロール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール);フェニルエチルアルコール(2-フェニルエタノール);RhodinolTM(3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール);SandaloreTM(3-メチル-5-(2,2,3-トリメチルシクロペンタ-3-エン-1-イル)ペンタン-2-オール);テルピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)プロパン-2-オール);またはTimberolTM(1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール);2,4,7-トリメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、および/または[1-メチル-2(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル]-メタノール;
【0021】
‐ アルデヒドおよびケトン、例としてアニスアルデヒド(4-メトキシベンズアルデヒド);アルファアミル桂皮アルデヒド(2-ベンジリデンヘプタナール);GeorgywoodTM(1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);ヒドロキシシトロネラール(7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール);Iso E Super(R)(1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン);Isoraldeine(R)((E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン);3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール;マルトール;メチルセドリルケトン;メチルイオノン;ベルベノン;および/またはバニリン;
【0022】
‐ エーテルおよびアセタール、例としてAmbrox(R)(3a,6,6,9a-テトラメチル-2,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロ-1H-ベンゾ[e][1]ベンゾフラン);ゲラニルメチルエーテル((2E)-1-メトキシ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン);ローズオキシド(4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン);および/またはSpirambrene(R)(2´,2´,3,7,7-ペンタメチルスピロ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2,5´-[1,3]ジオキサン]);
【0023】
‐ 大員環、例としてAmbrettolide((Z)-オキサシクロヘプタデカ-10-エン-2-オン);エチレンブラシラート(1,4-ジオキサシクロジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン);および/またはExaltolide(R)(16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン);および
‐ 複素環、例としてイソブチルキノリン(2-イソブチルキノリン)。
【0024】
上述のエチルシクロヘキサノアートおよび少なくとも1のエステルを含むフレグランス組成物は、フレグランスが付与された物品の幅広い範囲において、例えば、ファインおよび機能的香料のあらゆる分野、たとえば香水、エアケア製品、家庭用製品、洗濯製品、ボディケア製品および化粧品などにおいて用いることができる。組成物は、特定の用途および他のオドラント成分の性質および分量に依存して広く異なる量において用いることができる。割合は、典型的には、応用品の0.1~20重量パーセントである。一態様において、本発明の組成物を、0.2~1.5重量パーセント(例として0.8~1重量%)の量においてファブリック柔軟剤またはシャンプーにおいて用いても良い。別の態様において、エチルシクロヘキサノアートおよび少なくとも1のエステルを含むフレグランス組成物を、5~20重量パーセント(例として約30重量パーセントまで)の量においてファイン香料において使用しても良い。しかしながら、熟練した調香師はより低い濃度またはより高い濃度で、効果を達成すること、または新規のアコードを生み出すこともできるため、これらの値は、例として与えられるに過ぎない。
【0025】
その上、上述のフレグランス組成物を含むフレグランスが付与された物品が水で希釈される場合、匂い性能が増強されることが見出された。よって、特定の一態様として、シャンプーおよびシャワーゲルなどのリンスオフ製品だけではなく、水で高度に希釈される、手洗いファブリック洗浄剤(液体または粉末)または多目的フロアクリーナーなどにおける上述のエチルシクロヘキサノアートおよび少なくとも1のエステルを含むフレグランス組成物の使用が提供される。
【0026】
エチルシクロヘキサンカルボキシラートが、知覚される悪臭、たとえばキッチンの悪臭、バスルームの悪臭、汗の悪臭等を優位に低減することが観察された。よってさらなる例として、エチルシクロヘキサンカルボキシラートが混合され得るエアケア製品を挙げることができる。
【0027】
上記のフレグランス組成物は、フレグランス組成物を消費者製品ベースと単に直接混合することにより用いても良く、またはより前のステップにおいて、封入材料、例えば、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成剤、炭素またはゼオライトなどの吸収剤、環状オリゴ糖類およびそれらの混合物などで封入してもよい。
【0028】
本明細書に使用されるすべてのパーセンテージおよび比率は、特に明記しない限り重量による。
ここで、以下の非限定的な例を参照して本発明をさらに説明する。これらの例は、例示のみを目的とするものであり、当業者により変更および修正がなされ得ることが理解される。
【0029】
例1:エチルシクロヘキサノアートの合成
シクロヘキサン(64g)中のシクロヘキサンカルボン酸(64g、0.50mol)およびp-トルエンスルホン酸(1.0g、0.01mol)を73℃まで加熱した。エタノール(64g、1.39mol)を90分かけて添加し、反応混合物をさらに90分間還流させながら撹拌し、時間をかけて水相を徐々に除去した。反応混合物を室温まで冷却した後、有機相をHO、4%NaCO水溶液およびHOで洗浄した。有機相を濃縮および蒸留し、73g(93%)のエチルシクロヘキサンカルボキシラートを無色のオイルとして得た。
【0030】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 4.09 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.25 (tt, J = 11.3, 3.7 Hz, 1H), 1.90-1.83 (m, 2H), 1.78-1.70 (m, 2H), 1.64-1.58 (m, 1H), 1.46-1.36 (m, 2H), 1.31-1.17 (m, 3H), 1.22 (t, J = 7.1 Hz, 3H) ppm.
13C-NMR (CDCl3,100 MHz): δ= 176.0 (s), 59.9 (t), 43.2 (d), 29.0 (2t), 25.7 (t), 25.4 (2t), 14.2 (q) ppm.
MS (EI, tR = 4.89 min): 156 (43, [M]+・), 128 (21), 115 (16), 111 (41), 110 (23), 101 (68), 88 (21), 83 (100), 82 (17), 81 (17), 73 (21), 68 (15), 67 (16), 55 (79), 54 (11), 41 (38), 39 (20), 29 (30), 27 (20).
【0031】
例2:
以下の溶液を調製した。
A) エタノール中の0.1重量%エチルシクロヘキサノアート
B) エタノール中の10重量%フレグラント成分
【0032】
上記の2つのアルコール溶液を1:1の比率で混合した。
溶液B単独、およびA+Bの混合物の両方を、ランダムな順序で、吸い取り紙上にて三点試験法で臭覚的に評価した。訓練されたパネルは、もしあれば、嗅覚の違いを説明するよう求められた。結果を以下の表1にまとめる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
±: 混合物において、エステル(B)の全体的な性能が、明確に増強され、その特徴がわずかに変更された(詳細は括弧内に記載)。
-/-: 両方の成分が個々として認識され、それら自体は結び付かず、フレグラント成分(B)単独よりも心地よくない傾向にある。
【0036】
上記の結果からわかるように、フレグラントエステルへのエチルシクロヘキサノアートの添加は、より心地よく、よりバランスの取れた、より自然なおよび/またはより強い組成物をもたらし、これは、エステル単独と比較してより好ましい。他方、かかる利益は、エチルシクロヘキサノアートをフレグラントアルデヒド、ケトンまたはアルコールに添加した場合には観察されなかった。
【0037】
例3:
エチルシクロヘキサノアート(A)を、いくつかのオドラントエステルと組み合わせて、示した異なる濃度で、吸い取り紙上にて評価した。結果を以下の表2に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
--: 不快、チーズのような動物様
-: チーズのような動物様になる、
±: 混合物において、エステル(B)の全体的な性能が、明確に増強され、その特徴がわずかに変更された
+: エステル(B)の全体的な特徴および性能が、やや増強された
++: エステル(B)の全体的な特徴および性能が、明確に増強され、および混合物は(B)単独よりも好まれた。
【0040】
例4: シャンプーに好適なフレグランスアコード
【表4】
【0041】
29.6重量%の式(I)に従うエステル、および表3の最初の欄に示される可変の量のエチルシクロヘキサノアート(A)をDPG中に含むフレグランスアコードを、訓練されたパネルによって、そのまま(吸い取り紙上において)、シャンプー(フレグランスアコード@0.5重量%)中、および水で希釈したシャンプー(フレグランスアコード@0.5重量%)中で評価した。結果を以下表3に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
上記の表3における、フレグランスアコードの嗅覚的な説明の概要からわかるように、エチルシクロヘキサノアートのエステルへのプラスの影響は、単独で取るアルコール、アルデヒドおよびケトンに関する知見よりも、より有効であり、快楽的により心地よいフレグランス製剤をもたらす。