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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】プッシュプル式医療装置送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20220517BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20220517BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/07
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020031949
(22)【出願日】2020-02-27
(62)【分割の表示】P 2016563460の分割
【原出願日】2015-05-01
(65)【公開番号】P2020096942
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】61/988,038
(32)【優先日】2014-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/701,508
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ディー.カリニエミ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.ウィリアムズ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05591228(US,A)
【文献】米国特許第06849087(US,B1)
【文献】米国特許第07850643(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置を送達するためのシステムであって、前記システムは:
細長い第一の部分とガイドワイヤルーメンを含む第一の部材であって、第一の経皮的アクセス部位から体の外側へと延在するよう構成された、第一の部材と;
前記第一の部材とは別であり、第一の部材とは別に患者の体内に挿入されるよう構成された第二の部材であって、前記第二の部材は細長い第二の部分を含み、第二の経皮的アクセス部位から体の外側へと延在するよう構成され、前記第二の部分は孔を画定し、前記第二の経皮的アクセス部位は前記第一の経皮的アクセス部位とは異なる、第二の部材と;
拘束部材と;
前記第一の部材の第一の部分の外側の周りに配置され、ヒト脈管の処理部位へと前記医療装置を腔内送達するために、前記拘束部材によって前記第一の部分の周りに送達形態で解放可能に保持された、医療装置とを含み、
前記第一及び第二の部材は、前記第一の部分及び前記第二の部分を身体の外側から操作することによって、前記処理部位における前記医療装置の位置決めを可能にし、前記第一の部分の末端は、前記第二の部分の末端の中に受容されるよう構成され、前記医療装置が前記第一の部材の前記第一の部分の周りに送達形態で配置されている状態で、前記第二の部分は、前記医療装置及び前記拘束部材を前記第二の部分の前記孔の中に受容するよう構成された、システム。
【請求項2】
前記第一の部材の前記第一の部分及び前記第二の部材の前記第二の部分は、互いに軸方向に動かすことができるよう分離可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第二の部材の前記第二の部分に孔が画定され、前記第二の部材の前記第二の部分は、前記医療装置の少なくとも第一の部分を受容するための孔を画定する略環状の内壁を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記内壁は、前記送達形態にある前記医療装置の少なくとも前記第一の部分を係合及び保持する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第二の部材の前記第二の部分を前記医療装置に対して軸方向に移動させることによって、前記医療装置の少なくとも前記第一の部分を展開することができる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記医療装置は拡張可能なステントグラフトである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記医療装置は自己拡張性である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記医療装置の第二の部分が、前記拘束部材によって前記送達形態で解放可能に保持され、前記拘束部材は可撓性拘束スリーブである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記医療装置の前記第二の部分は、前記第一の部材の前記第一の部分に取り付けられている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第一の部材の前記第一の部分及び前記第二の部材の前記第二の部分は、互いに解放可能に連結される、請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
前記医療装置と前記第二の部材の前記第二の部分の前記内壁との間の係合が、前記第一の部材の前記第一の部分と前記第二の部材の前記第二の部分との間の解放可能な結合を画定する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記拘束部材は、可撓性拘束スリーブである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第一の部材は前記第一の部分と前記第二の部分との間に取付部分を含み、前記医療装置は前記取付部分に取り付けられている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第一の部材の前記第一の部分及び前記第二の部材の前記第二の部分の少なくとも一方は、押すことで体を通過することができない程度に十分に可撓性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
移植可能なプロテーゼの送達システムであって、前記送達システムは:
第一のガイドワイヤルーメンを含む第一の細長い送達部材と;
拘束部材と;
前記第一の細長い送達部材とは別の第二の細長い送達部材であって、前記第一の細長い送達部材とは別に患者の体内に挿入されるよう構成された、第二の細長い送達部材と;
前記第一の細長い送達部材の周りに取り付けられ、前記拘束部材によって拘束された拡張可能装置とを含み、
前記第一の細長い送達部材の末端は、前記第二の細長い送達部材の末端の中に受容されるよう構成され、前記第二の細長い送達部材は、前記拡張可能装置及び前記拘束部材を前記第二の細長い送達部材の孔の中に受容するよう構成された、送達システム。
【請求項16】
前記第二の細長い送達部材は、前記孔を画定する環状表面を含む、請求項15に記載の送達システム。
【請求項17】
前記拡張可能装置は、部分的に展開されて前記環状表面と係合し、それによって解放可能な結合を形成する、請求項16に記載の送達システム。
【請求項18】
医療装置を送達するためのシステムであって、前記システムは:
取付部分を含むカテーテルと;
前記取付部分の外側の周りに配置され、拘束部材によって拘束された医療装置とを含み、
前記カテーテルは、第一のガイドワイヤルーメンを有し、第一の挿入部位を通って体の外へ出るよう構成された細長い第一の部分、及び前記医療装置が処理部位に位置しつつ前記第一の挿入部位とは異なる第二の挿入部位を通って体の外へ出るよう構成された細長い第二の部分を更に含み、
前記第一の部分及び前記第二の部分の少なくとも一方は、押すことで体を通過することができない程度に十分に可撓性であり、前記第一の部分の末端は、前記第二の部分の末端の中に受容されるよう構成され、前記第二の部分は、前記医療装置及び前記拘束部材を前記第二の部分の孔の中に受容するよう構成され
前記取付部分は、前記第二の部分の前記末端の中に受容されるよう構成された前記第一の部分の前記末端に位置する、システム。
【請求項19】
医療装置を送達するためのシステムであって、前記システムは:
第一のガイドワイヤルーメンを有し、第一の挿入部位を通って体の外へ出るよう構成された第一の細長い送達部材と;
前記第一の挿入部位とは異なる第二の挿入部位を通って体の外へ出るよう構成された第二の細長い送達部材であって、前記第一の細長い送達部材とは別であり、前記第一の細長い送達部材とは別に患者の体内に挿入されるよう構成された、第二の細長い送達部材と;
医療装置であって、前記医療装置が前記第一の細長い送達部材の外側の周りに配置され、拘束部材によって拘束されるように、そして前記医療装置、前記第一の細長い送達部材及び前記拘束部材が、前記第二の細長い送達部材の孔の中に配置されるように、前記第一の細長い送達部材と前記第二の細長い送達部材との間に取り付けられた、医療装置とを含み、
それぞれ前記第一の挿入部位及び前記第二の挿入部位を通って体の外に延在する前記第一の細長い送達部材及び前記第二の細長い送達部材は、前記医療装置を位置決めするよう操作されるよう構成され、
前記第一の細長い送達部材及び前記第二の細長い送達部材の少なくとも一方は、押すことで体を通過することができない程度に十分に可撓性である、システム。
【請求項20】
前記第一の細長い送達部材及び前記第二の細長い送達部材の両方は、押すことで体を通過することができない程度に十分に可撓性である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
移植可能なプロテーゼの送達システムであって、前記送達システムは:
拡張可能な移植可能なプロテーゼと;
第一のガイドワイヤルーメン、第一のカテーテル外壁、及び第一のカテーテル内壁を有し、第一の経皮的アクセス部位から体の外へ出るよう構成された、第一のカテーテルと;
第二のカテーテル外壁及び第二のカテーテル内壁を有し、前記第一の経皮的アクセス部位とは異なる第二の経皮的アクセス部位から体の外へ出るよう構成された第二のカテーテルであって、前記第一のカテーテルとは別であり、前記第一のカテーテルとは別に患者の体内に挿入されるよう構成された、第二のカテーテルとを含み、
前記第一のカテーテル内壁は、前記第一のカテーテルと前記第二のカテーテルとが部分的に重なるよう前記第二のカテーテル外壁に沿って延在し、
前記拡張可能な移植可能なプロテーゼは、前記第一のカテーテル内壁によって少なくとも部分的に拘束され、かつ、解放可能な拘束部材によって前記第二のカテーテル外壁に少なくとも部分的に沿って拘束された、送達システム。
【請求項22】
前記移植可能なプロテーゼを前記第二のカテーテル外壁に沿って解放可能に拘束している前記拘束部材は、シースである、請求項21に記載の送達システム。
【請求項23】
前記第一のカテーテル内壁は滑らかでない、請求項22に記載の送達システム。
【請求項24】
前記拘束部材は、ePTFE管構造体である、請求項23に記載の送達システム。
【請求項25】
医療装置を送達するためのシステムであって、前記システムは:
第一のガイドワイヤルーメンを有し、第一の経皮的アクセス部位から体の外へ出るよう構成された細長い第一の部分、及び前記第一の経皮的アクセス部位とは異なる第二の経皮的アクセス部位から体の外へ出るよう構成された細長い第二の部分であって、前記細長い第一の部分とは別であり、前記細長い第一の部分とは別に患者の体内に挿入されるよう構成された、細長い第二の部分を含む、送達部材と;
前記送達部材の前記第一の部分の末端に解放可能に結合され、ヒト脈管の処理部位へと医療装置を腔内送達するための送達形態で、拘束部材によって開放可能に保持された、医療装置とを含み、
前記送達部材は、前記第一の部分及び前記第二の部分を体の外から操作することによって、前記処理部位で前記医療装置を位置決めすることを可能にし、前記第二の部分は、前記第一の部分及び前記第二の部分が、前記医療装置及び前記拘束部材と同軸に軸方向に並ぶよう、前記第一の部分に解放可能に結合可能であり、前記第一の部分の前記末端は、前記第二の部分の末端の中に受容されるよう構成され、前記第二の部分は、前記医療装置及び前記拘束部材を前記第二の部分の孔の中に受容するよう構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移植可能な医療装置のための送達システムに関し、より詳細には、複数の経皮的アクセスポイントを利用した、移植可能な医療装置の腔内送達及びプッシュ-プル式位置決めのための送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、疾患のある脈管構造及び他の身体導管の治療における移植可能な医療装置の使用は一般的になった。そのような装置は、処理部位へと外科的に移植し、又は管腔内的に供給することができる。後者の場合、これらの装置は、典型的には経皮的アクセス部位を通して挿入するため、カテーテルの先端に沿って拘束された冠径に保持される。臨床医が一つのアクセスポイントを通してカテーテルを押して、こぶになること又はゆがむことなく脈管構造を横断させることができ、更に処理部位に装置を配置する際に軸方向又は回転制御が可能な程度に、カテーテルが十分な剛性を有することが望ましい可能性がある。一方で、カテーテルは、曲がりくねった脈管構造を横断する程度に十分な可撓性を有することが時には望ましい。場合により、複数のアクセス部位及び/又は複数のカテーテルを用いて、複数の装置及び/又は関連する道具を処理部位へと供給することができる。複数のアクセス部位及びカテーテルは、ヘルスケア提供者がより複雑な処置を遂行することを助けることがあるが、しかしながら、現行の複数のアクセス部位送達方式は、正確に医療装置を供給する点においていくつかの欠点を未だに有している。
【0003】
複数の経皮的アクセス部位は、一つのアクセスが橈骨又は上腕であり、他方が腸骨又は大腿である大動脈において有用であることがある。末梢組織において、臨床医は、装置、例えばステント、ステントグラフトを配置するために、又は管内用具、例えば塞栓摘出術用具、CTO用具、血栓切除用具、又は粥腫切除用具を使用及び制御するために、腸骨又は大腿とともにペダルアクセスを使用することがある。他の可能性のあるアクセス部位としては、大動脈への経腰アクセス、心臓から橈骨、上腕、若しくは大腿への経心尖アクセス、大動脈分岐を通じた大腿から大腿、心房中隔を横断してあらゆる適切な動脈アクセス部位へとつながるあらゆる静脈アクセスが挙げられる。明らかなように、腔内用具によって横断したとき臨床医に腔内道具及び装置の手技周辺の強化された制御を提供することができる、あらゆる複数のアクセス部位を想定してもよい。同様に、アクセス及び退出は、脈管系に限定されない。これらの同様の利点は、他の身体系、例えば胃腸、結腸直腸、食道、及び胆管に適用する。道具及び装置が実際に主ルーメン経路を離れて代替経路を確立する処置、例えばバイパス移植において、また、神経刺激のための留置導線等の配置のように主導管が全くない場合でさえ、利点があることも想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、移植可能な装置及び管内用具の正確で効果的な腔内展開を促進する、複数のアクセス部位送達システムを提供することが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するものとして含まれ、本明細書中に取り入れられて一部を構成し、本開示の実施形態を例示し、その記載と共に本開示の原則を説明するのに役立つ。
【0006】
図1図1は、大動脈弁から腸骨血管までのヒト組織の模式図を示す。
【0007】
図2図2は、ヒト組織、並びにヒト組織内へのガイドワイヤ及び導入シースの配置を示す模式図である。
【0008】
図3A図3Aは、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位を通して供給され第二のアクセス部位から出る第一のカテーテルの模式図を示す。
【0009】
図3B図3Bは、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位から突出した第一のカテーテルと、インサイチュの第二のカテーテル上に拘束された装置を有する、第二のアクセス部位から突出した第二のカテーテルの模式図を示す。
【0010】
図4図4は、第二のカテーテルから第一のカテーテルへと装置を少なくとも部分的に移動させる前の、第二のカテーテル上の装置、及び第一のカテーテル内部の第二のカテーテルの模式図を示す。
【0011】
図5図5は、第一のカテーテルに沿って部分的に展開された第二のカテーテル上の装置の側面図を示す。
【0012】
図6図6は、ヒト組織とともに、第一のカテーテルに沿って部分的に展開された第二のカテーテル上の装置の模式図を示す。
【0013】
図7A図7Aは、ヒト組織とともに、装置の一端は第二のカテーテルから脈管壁まで部分的に展開され、装置の対向端は第一のカテーテルによって拘束され、脈管に対して拡張している装置の模式図を示す。
【0014】
図7B図7Bは、ヒト組織とともに、装置の一端は第二のカテーテルに沿って部分的に拘束され、装置の対向端は第一のカテーテルから部分的に展開されて脈管に対して拡張した装置の模式図を示す。
【0015】
図8図8は、ヒト組織とともに、第二のカテーテルから展開されて脈管に対して拡張した装置の模式図を示す。
【0016】
図9A図9Aは、カテーテルに沿って拘束された装置を示す。
【0017】
図9B図9Bは、第一のより大きな外径と、第一のより大きな外径に沿って拘束された装置と、第一の外径より小さな第二の外径とを有するカテーテルを示す。
【0018】
図9C図9Cは、ヒト組織とともに、インサイチュの第一のカテーテル上に拘束された装置を有する、第一のアクセス部位及び第二のアクセス部位から突出した第一のカテーテルの模式図を示す。
【0019】
図10図10は、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位から供給され第二のアクセス部位から出るガイドワイヤの模式図を示す。
【0020】
図11図11は、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位から供給され第二のアクセス部位から出るガイドワイヤであって、第一のアクセス部位及び第二のアクセス部位から操作することが可能なガイドワイヤの模式図を示す。
【0021】
図12図12は、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位を通り第二のアクセス部位を通って供給される第一のカテーテルと、第二のカテーテルに沿って拘束された装置を有し、体外で第一のカテーテルに接続可能な第二のカテーテルの模式図を示す。
【0022】
図13図13は、ヒト組織とともに、第一のアクセス部位から突出した第一のカテーテルと、第二のアクセス部位から突出した第二のカテーテルと、第二のカテーテルに沿って拘束され、第一のカテーテル及び第二のカテーテルによってインプラント部位に配置された装置の模式図を示す。
【0023】
図14図14は、ヒト組織とともに、移植側の近くに配置された塞栓保護装置及びカテーテル装置であって、カテーテル装置は、第二のカテーテルへと接続された第一のカテーテルを介して位置へと操作される、模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者であれば、本開示の様々な側面は、意図された機能を発揮するよう構成されたあらゆる方法及び装置によって実現することができることを容易に認識するだろう。言い換えれば、他の方法及び装置は、意図された機能を発揮するよう本明細書に取り入れることができる。本明細書において参照される添付の図面はすべて一定比率で描かれたものではなく、本開示の様々な側面を例示するために誇張されている可能性があり、その点において、図面は限定的なものとして解釈すべきでないこともまた注意すべきである。最後に、本開示は様々な原則及び考えに関連付けて記載されている可能性があるが、しかしながら、本開示は理論に限定されない。
【0025】
この明細書の全体にわたって、及び特許請求の範囲において、用語「遠位(distal)」とは、移植されたとき装置の他の部分よりも血流に対して更に下流にある場所、又は腔内装置(例えばステント-グラフト)の一部を意味する。同様に、用語「遠位に(distally)」とは、血流の方向、又は血流の方向に更に下流を意味する。
【0026】
用語「近位(proximal)」とは、移植されたとき装置の他の部分よりも血流に対して更に上流にある場所、又は腔内装置の一部を意味する。同様に、用語「近位に(proximally)」とは、血流の方向とは反対方向、又は血流の方向から上流を意味する。
【0027】
近位及び遠位との用語に対して更に考慮すれば、本開示は周辺及び/又は中心的アプローチに限定されないので、本明細書はこれらの用語に関して狭く解釈されるべきでない。むしろ、本明細書に記載の装置及び方法は、患者の解剖学に関して変更及び/又は調整することができる。
【0028】
この明細書の全体にわたって、及び特許請求の範囲において、用語「先導(leading)」は、患者の脈管構造内に挿入され、それを通って進む装置の終端により近い、装置上の相対的な場所を意味する。用語「追従(trailing)」とは、患者の脈管構造の外側に位置する装置の終端により近い装置上の相対的な場所を意味する。
【0029】
本明細書は、図1に示すような、様々な脈管系疾患を処理するための、例えば、脈管100に沿った動脈瘤10を処理するための、複数の経皮的アクセス部位を利用した、拡張可能な装置又はインプラントを展開するための送達システムを開示する。腹部大動脈瘤(AAA)を処理するためにステントグラフトを展開する文脈で示されているが、しかしながら、本明細書に記載の装置、システム、及び方法は、AAAの処理に限定されず、ヒト脈管構造の他の部分の疾患を処理するための、管腔内的に配達可能なあらゆる装置、部品、又は道具の送達に適用することができることを理解すべきである。本開示に従う送達システムによって使用可能なステントグラフトの例としては、Martinらの米国特許第6,042,605号明細書に開示されている。
【0030】
図2、3A、3B、及び3Cを参照すれば、二以上の経皮的アクセス部位102及び104を利用する形態の送達システムが示されている。この構成において、送達システムは、送達システムの少なくとも2つの部分又は部材を、それぞれのアクセス部位から、身体の外側から操作することを通して、脈管処理部位における拡張可能装置のプッシュ-プル式の位置決め及び送達を可能にする。送達システムは、第一及び第二の導入シース202及び204を含み、それぞれのアクセス部位102及び104を通した手術用具の導入を促進することができる。送達システムは、脈管構造の一部を経由して通すことができ、「ボティフロス(body floss)」又は「スルーアンドスルー(through-and-through)」のアクセス形態で扱われるガイドワイヤ206を含み、ガイドワイヤ206の反対側の末端205及び207は、第一及び第二の導入シース202及び204を介して、それぞれの経皮的アクセス部位102及び104から身体の外側へ延在している。
【0031】
移植可能な医療装置の腔内送達のための送達システムは、それぞれ第一及び第二の経皮的アクセスポイントを通って延在し、その先導端で互いに解放可能に連結された細長い第一及び第二のカテーテルを含んで、移植可能な医療装置を処理部位において完全に展開させる前にプッシュ-プル式又はプル-プル式で位置決めすることを可能にすることができる。例えば、図3Aに示すように、一般に300で示す第一のカテーテルは、先導端306及び反対側の追従端322を含む。第一のカテーテル300は、ガイドワイヤ206を通すことができるガイドワイヤルーメン310を有する。ガイドワイヤ206の第一の末端205は、第一のカテーテル300の先導端306において、ガイドワイヤルーメン310内に挿入することができる。第一のカテーテル300の先導端306は、第一の導入シース202を介して第一のアクセス部位102を通して脈管構造内に供給することができる。次に、第一のカテーテル300を、ガイドワイヤ206に沿って302で示す方向に、先導端306が第二のアクセス部位104を出るまで押すことができる。第一のカテーテル300の追従端322は身体の外側に残存し、第一の導入シース202を介して第一のアクセス部位102から延在する。この構成において、第一のカテーテル300の先導端306及び追従端322を身体の外側から押す又は引くことによって、カテーテル300を動かすことができる。
【0032】
代替として、カテーテル300は、第二の導入シース204を介して第二のアクセス部位104を通して挿入し、302で示す方向とは反対の逆行する方向へ移動させて、第一のアクセス部位102から出すことができる。いずれにせよ、第一のアクセス部位102と第二のアクセス部位104との間の先導端306の移動は、スネアで促進することができる。これは、身体の外側からカテーテルの一端を押すことのみによってはアクセス部位の間で効果的に操縦することができない程度にカテーテルの曲げ強度又はカラム強度が小さい場合に有用である可能性がある。
【0033】
図3Aをさらに参照すれば、一般に400で示す第二のカテーテルは、先導端406と反対側の追従端422とを含む。第二のカテーテル400は、ガイドワイヤ206を通して受容するためのガイドワイヤルーメン410を有する。ガイドワイヤ206の第二の末端207は、第二のカテーテル400の先導端406において、ガイドワイヤルーメン410内に挿入することができる。先導端306及び406が係合するまで、第二のカテーテル400をガイドワイヤ206に沿って押すことができる。
【0034】
拡張可能装置は、第一及び第二のカテーテルのうち一方の先導端又はその近くに、解放可能に連結することができる。拡張可能な装置は、あらゆる適切な拘束手段、例えばスリーブを拘束するフィルム、拘束綱又は格子、格納式シース等によって、解放可能に維持することができ、又は腔内送達のための送達形態へと半径方向に圧縮することができる。例えば、図3Aに示すように、拡張可能装置500は、第二のカテーテル400の先導端406又はその近くに配置されている。拡張可能装置500の周りに延在し、解放ライン504によって合わせて保持された対向する端又は部分を有する拘束スリーブ502によって、拡張可能装置500は送達形態へと圧縮され、保持されている。解放ライン504を拘束スリーブ502から分離して、装置500を、無拘束状態若しくは部分的に無拘束状態へと、又はそうでなくとも処理部位において周囲の脈管壁と係合する方へと、半径方向に外向きに拡張させることができる。任意に、一つ若しくは複数の拘束手段又は拘束手段の組合せを構成して、完全に展開させる前の一つ又は複数の中間の拡張状態をとおした段階的な拡張を可能にすることができる。腔内送達のために装置を解放可能に拘束するための手段の例としては、Leopoldらの米国特許第6,352,561号明細書に提供されている。
【0035】
第一及び第二のカテーテル300及び400の先導端306及び406は、互いに嵌合的に係合又は連結するよう構成することができる。更に、先導端306及び406は、互いに解放可能に連結するよう構成することができる。先導端の結合は、様々な結合性配置によって達成することができる。結合性配置の非限定的な例としては、圧入、スレッド、ボール及び戻り止め、関節動作式クリップ又はジョー、マジックテープ(登録商標)、並びに磁気が挙げられる。図3Aに示すように、第一及び第二のカテーテル300及び400の先導端306及び406は、身体外で互いに連結することができる。代替として、図3Bに示すように、第一及び第二のカテーテル300及び400は、それぞれの第一及び第二のアクセス部位102及び104内に挿入することができ、先導端306及び406は、処理部位又はその周辺においてインサイチュで連結することができる。
【0036】
一旦先導端306及び406が連結されると、身体の外側の第一及び第二のカテーテル300及び400の追従端322及び422を押して、引いて、及び回転させて、拡張可能装置500を軸方向に及び回転可能に処理部位に配置することができる。拡張可能装置500を望ましい場所及び配向で処理部位に配置したあと、図8に示すように、拡張可能装置500を完全に展開して、処理部位における周囲の脈管壁に係合させることができる。
【0037】
第一及び第二のカテーテルのうち一方の先導端上に送達形態の拡張可能装置を提供し、第一及び第二のカテーテルのうち他方の先導端と解放可能に係合する方向へと拡張可能装置を部分的に展開することによって、第一及び第二のカテーテルの先導端を連結することができる。移植可能なプロテーゼは、第一及び第二のカテーテルのうち一方の外壁に沿って少なくとも部分的に拘束することができ、第一及び第二のカテーテルのうち一方の内壁に沿って少なくとも部分的に拘束することができ、それによって、第一のカテーテルと第二のカテーテルとの間に解放可能な接続を形成する。図4に示すように、例えば、拡張可能装置500は、第二のカテーテル400の先導端406又はその近くに配置されている。より具体的には、拡張可能装置500の少なくとも一部は、第二のカテーテル400の先導端406又はその近くで、第二のカテーテル400の外面428に沿って延在している。拡張可能装置500は、解放ライン504によって合わせて保持された拘束スリーブ502によって送達形態へと圧縮され、保持されている。解放ライン504を拘束スリーブ502から分離して、装置500の少なくとも一部が、第一のカテーテル300の先導端306と係合する方向へ向かって外向き半径方向に拡張することを可能にすることができる。多くの実施形態において、第一のカテーテル300の先導端306は、内面362によって画定される孔360を含むことができる。第二のカテーテル400の先導端406とその上に支持され拘束された拡張可能装置500とを中に受容するよう、内面362は一般に環状であることができる。
【0038】
図5を参照すれば、拘束スリーブ502から解放ライン504を開放することは、装置500の少なくとも一部が、第一のカテーテル300の先導端306の内面362と係合する方向へと外向き半径方向に拡張することを可能にする。拡張可能装置500の部分的に拡張した部分506は、内面362と係合して第一及び第二のカテーテル300及び400の間に解放可能な相互接続を生じている部分的に拡張した部分506の長さで測定される、係合長さを有する。拡張可能装置500の残りの拘束された部分508は、第一のカテーテル300の先導端306に少なくとも部分的に延在してもよい。部分的に拡張した部分506は、第一及び第二のカテーテル300及び400の間に摩擦結合を形成する程度に充分な外向きの半径方向の力を内面362に対して適用するはずであり、このことは、一つの形態において、第一及び第二のカテーテル300及び400を押して及び/又は引いて及び/又は回転させて、拡張可能装置500を軸方向に及び/又は回転可能に処理部位に配置することを可能にする。他の構成において、部分的に拡張した部分506と内面362との間の係合によって形成された結合を解放して、第一及び第二のカテーテル300及び400を分断及び分離させることが可能である。
【0039】
部分的に拡張した部分506に沿った拘束スリーブ502の開いた部分は、第一のカテーテルの内壁と拡張可能装置500との間に残存するよう構成することができる。代替として、拘束スリーブ又はその部分は、処理部位で拡張可能装置を展開した後完全に除去されるよう構成することができる。
【0040】
任意に、内面362は、第一のカテーテル300と第二のカテーテル400との間の係合又は結合を強化するよう構成することができる。例えば、内面362は滑らかでない又はゴムのようなコーティング又は層を含んで、拡張可能装置と内面との間の摩擦を増加させることができる。代替として、内面362は、拡張可能装置500の外郭との干渉係合に対応する又はそうでなければ形成する断面形状を有することができる。
【0041】
一旦先導端306及び406が連結されると、身体の外側の第一及び第二のカテーテル300及び400の追従端322及び422を押して、引いて、及び回転させて、拡張可能装置500を、軸方向に及び回転可能に処理部位に配置することができる。拡張可能装置500を望ましい場所及び配向で処理部位に配置したあと、図8に示すように、拡張可能装置500を完全に展開して、処理部位で周囲の脈管壁に係合させることができる。
【0042】
図7Aに示すように、一つの展開型式において、拘束スリーブ502から解放ライン504を外すことによって拘束スリーブ502を開いて、残りの拘束された部分508が、処理部位で動脈瘤10の第一の側部91の周囲の脈管壁と係合する方向へと拡張することを可能にすることができる。拡張可能装置500を第二のカテーテル400に解放可能に連結したまま、及び/又は装置500を脈管壁に係合、係合若しくは固定したまま、第一のカテーテル300を、矢印602で示すように第二のカテーテル400から近位に又は離れるように移動させて、拡張可能装置500と内面362との間の摩擦係合に打ち勝つことができる。第二のカテーテル400から離れる第一のカテーテル300の移動は、拡張可能装置500の部分的に拡張した部分506が、動脈瘤10の第二側部92の周囲の脈管壁と係合する方向へ拡張することを可能にし、それによって、図8に示すように、脈管を通る通常の血流から動脈瘤10を除くことが完了する。
【0043】
代替の展開型式において、第一のカテーテル300を、矢印602で示すように第二のカテーテル400から近位に又は離れるように移動させて、拡張可能装置500と内面362との間の摩擦係合による第一及び第二のカテーテル300及び400の間の解放可能な接続に打ち勝つことができる。図7Bに示すように、第二のカテーテル400から離れる第一のカテーテル300の移動は、拡張可能装置500の部分的に拡張した部分506が、動脈瘤10の第二側部a2の周囲の脈管壁と係合する方向へと拡張することを可能にする。拘束スリーブ502から解放ライン504を外すことによって、拡張可能装置500の残りの拘束された部分508が、処理部位において周囲の脈管壁と係合する方向へ拡張することを可能にすることができ、それによって、図8に示すように、脈管を通る通常の血流から動脈瘤を除くことが完了する。
【0044】
拡張可能装置500を展開した後、第一及び第二のカテーテル300及び400は、それぞれの処理部位(図示せず)から、処理部位及び身体から除去することができる。
【0045】
代替として、送達システムの第一及び第二のカテーテルの少なくとも一つは、第一及び第二のカテーテルの他より実質的に可撓性で、曲がりくねった組織を横断することを促進することができる。例えば、第一のカテーテルは、0.5インチ(12.7mm)の外径及び0.040インチ(1.016mm)の内径を有し、Xのデュロメーターを有する、ペバックス(Pebax)材料であるよう選択することができる。第二のカテーテルは、0.2インチ(5.08mm)の外径及び0.040インチ(1.016mm)の内径を有し、.45Xのデュロメーターを有する、ペバックス(Pebax)材料であるよう選択することができる。他のパラメータを変化させて、一つのカテーテルと他のカテーテルとの異なる比を達成することができる。例えば、外径及び内径を変化させることができ、カテーテルの一方若しくは両方に強化部材を加えることができ、又は他の適切な材料を選択することができる。
【0046】
代替として、第一及び第二のカテーテルの一方又は両方は、脈管構造内及び脈管構造を通して効果的に押すことができない程度に、カラム強度を実質的に有さず、又は少なくとも可撓性であることができる。カラム強度を実質的に有しないカテーテルを用いることの潜在的利点は、脈管を通してカテーテルをより容易に供給する(例えば、順行性の態様で血液によって押す、又は曲がりくねった組織を通してスネアによって引く)ことができる、ということである。例えば、第一のカテーテルは、約8mmの外径及び約1.1mmの内径を有し、Xのデュロメーターを有する、ペバックス(Pebax)材料を含むことができる。第二のカテーテルは、約4mmの外径及び約1.1mmの内径を有し、約0.5Xのデュロメーターを有する、ペバックス(Pebax)材料を含むことができる。他の例では、第二のカテーテルは、所望の外側及び内径を有する、ePTFE管構造体であることができる。約8mmの内径及び8.14mmの外径のePTFE管状構造を作製する、そのような例を以下に記載する。長さ80cm、幅40mm、厚さ0.03mm、密度約0.3g/ccの、延伸PTFEフィルムの片側に接着剤を有する多孔質延伸PTFEフィルムを、接着剤を外側にして、第一の層の長手方向の縫い目が少なくとも一回少なくとも重なるように直径8mmの筒状のステンレス鋼マンドレルの周りに巻き、余分なフィルムをトリミングし、フィルムを巻いたマンドレルを加熱する。非多孔質PTFEの密度は約2.2g/ccであり;したがってこのフィルムの多孔性は約86%である。
【0047】
任意に、第一及び第二のカテーテルの一方又は両方はテーパー形であり、脈管構造への挿入、及びこれを通した動きを促進することができる。
【0048】
代替として、送達システムは、細長い第一の部分と細長い第二の部分とを有するカテーテルを含むことができ、拘束された装置は、拘束形態又は送達形態でカテーテルの第一の部分と第二の部分との間に取り付けることができる。細長い第一及び第二の部分は一体で、カテーテルを形成することができる。代替として、細長い第一及び第二の部分は別々で、接続可能又は解放可能に接続可能で、カテーテルを形成することができる。例えば、図9Aに示すカテーテル600は、第一の部分602と第二の部分604とを有する。第一の部分602は、その第一の長軸606に沿って細長く延在し、カテーテル600の第一の末端603で終わる。同様に、第二の部分604は、その第二の長軸608に沿って細長く延在し、カテーテル600の第二の末端605で終わる。拡張可能装置700は、第一の部分602と第二の部分604との間のカテーテル600の中間部分610に支持されている。拡張可能装置700は、腔内送達に適する送達形態で、半径方向に拘束されていることができる。他の実施形態において上記のように、第一の部分602が第一のアクセス部位102’から第一の導入シース202’を介して外向きに延在し、第二の部分604が第二のアクセス部位104’から任意に第二の導入シース204’を介して外向きに延在するように、カテーテル600を脈管構造内に挿入することができる。身体の外側に延在する第一及び第二の部分602及び604を押して、引いて、及び回転させて、拡張可能装置500を軸方向に及び回転可能に処理部位に配置することができる。
【0049】
代替として、カテーテルの細長い第一及び第二の部分のうち一方は、細長い第一及び第二の部分の他方より小さい直径を有することができる。例えば、図9Bに示すように、カテーテル600’の第二の部分604’は、カテーテル600’の第一の部分602’より小さい直径を有することができる。
【0050】
代替として、カテーテルの細長い第一及び第二の部分のうち一方は、カテーテルの細長い第一及び第二の部分の他方より実質的に可撓性であることができる。
【0051】
代替として、カテーテルの第一及び第二の部分の一方又は両方は、脈管構造内及び脈管構造を通して効果的に押すことができない程度に、カラム強度を実質的に有さず、又は少なくとも可撓性であることができる。
【0052】
代替として、カテーテルの第一及び第二の部分は、互いに向かって軸方向に圧縮可能で、カテーテル及びインプラントをゆがめることができる。このゆがみは、カテーテルの回転と組み合わせたとき、腔内装置の正しく正確な配置に有用であることがある。
【0053】
代替として、カテーテルの第一及び第二の部分の一方又は両方は、それぞれ第一及び第二の末端に向かってテーパーが付けられ、脈管構造を通したカテーテルの挿入及び動きを促進することができる。
【0054】
代替として、第一及び第二のカテーテルのうち一方はePTFE繊維の形態であってもよく、繊維は内部ルーメンを有しなくてもよい。
【0055】
図10~14を参照すれば、経心尖アクセス部位及び経大腿動脈アクセス部位の両方を利用する送達システムが示されており、送達システムの少なくとも2つの部分又は部材を、それぞれ経心尖アクセス部位及び経大腿動脈アクセス部位から身体の外側から操作することをとおして、心臓内に、心臓に、又はその近くに、拡張可能なインプラントのプッシュ-プル式の位置決め及び送達が可能である。
【0056】
例えば、送達システムを用いて、体内プロテーゼ装置、例えば大動脈弓の上昇部分を処理するためのステントグラフト、又は不全な弁を置換するための弁装置を展開することができる。これらの例に続いて、図10に示すように、ガイドワイヤ1206は、経心尖アクセス部位を通して心臓1100の左室1010に挿入することができる。図11に示すように、ガイドワイヤ1206を、大動脈弁1012、大動脈1014、一方の脚の大腿動脈を通して、経大腿動脈アクセス部位(図示せず)を介して身体から出して、その結果、ガイドワイヤ1206の反対の追従端1205及び1207が、それぞれ経心尖アクセス部位及び経大腿動脈アクセス部位1102及び1104から身体の外側へと延在した、「ボディフロス(body floss)」又は「スルーアンドスルー(through-and-through)」アクセス形態にすることができる。任意に、図11の矢印「a」及び「b」で示すように、ガイドワイヤ1206の対向する末端1205及び1207を引くことによってガイドワイヤ1206に張力をかけて、ガイドワイヤ1206を大動脈弓の内径に沿って延在させることができる。
【0057】
第一の導入シース1202を、ガイドワイヤ1206上に、経心尖アクセス部位を経て心臓1100内に挿入して、処置の間、これを通して手術用具の導入を促進することができる。同様に、第二の導入シース(図示せず)をガイドワイヤ1206上に挿入して、経大腿動脈アクセス部位を通した手術用具の大腿導入を促進することができる。
【0058】
図12を参照すれば、一般に1300で示す第一のカテーテルは、先導端1306と、反対側の追従端1322とを含む。第一のカテーテル1300は、ガイドワイヤ1206を通すことができるガイドワイヤルーメン1310を有する。ガイドワイヤ1206の第一の末端1205は、第一のカテーテル1300の先導端1306で、ガイドワイヤルーメン1310内に挿入することができる。第一のカテーテル1300の先導端1306は、第一の導入シース1202を介して、経心尖アクセス部位1102を通して脈管構造内に供給することができる。次に、第一のカテーテル1300を、ガイドワイヤ1206に沿って1302で示す方向に、先導端1306が経大腿動脈アクセス部位(図示せず)を出るまで押すことができる。第一のカテーテル1300の追従端1322は身体の外側に残存し、第一の導入シース1202を介して第一のアクセス部位1102から延在している。この構成において、第一のカテーテル1300の先導端1306及び追従端1322を身体の外側から押す又は引くことによって、カテーテル1300を動かすことができる。更に、図11に示すようにガイドワイヤ1206に任意に張力をかけることは、結果として、図12~14に示すように、第一のカテーテル300、又はガイドワイヤ1206上で供給された任意の他の道具が、大動脈弓の内径に沿って追従して留まることに繋がることがある点に留意すべきである。
【0059】
図12をさらに参照すれば、一般に1400で示す第二のカテーテルは、先導端1406と、反対側の追従端1422とを含む。第二のカテーテル1400は、ガイドワイヤ1206を通して受容するためのガイドワイヤルーメン1410を有する。ガイドワイヤ1206の第二の末端1207は、第二のカテーテル1400の先導端1406で、ガイドワイヤルーメン1410内に挿入することができる。先導端306及び306が係合するまで、第二のカテーテル1400をガイドワイヤ1206に沿って押すことができる。
【0060】
大動脈又は大動脈弓の上昇部分に沿って不全な心臓弁又は疾患を処理するための体内プロテーゼ装置は、第一及び第二のカテーテルの一つの先導端又はその近くに、解放可能に連結することができる。体内プロテーゼ装置は、あらゆる適切な拘束手段、例えばスリーブを拘束するフィルム、拘束綱又は格子、格納式シース等によって、解放可能に維持することができ、又は腔内送達のための送達形態へと半径方向に圧縮することができる。任意に、一つ又は複数の拘束手段又は拘束手段の組合せを構成して、完全な展開へと導かれる一つ又は複数の中間の拡張状態をとおした段階的な拡張を可能にすることができる。図12に示すように、例えば、装置1500は、第二のカテーテル1400の先導端1406又はその近くに連結された送達形態で解放可能に保持されている。
【0061】
第一及び第二のカテーテル1300及び1400の先導端1306及び1406は、互いに嵌合的に係合又は連結するよう構成することができる。更に、先導端1306及び1406は、互いに解放可能に連結するよう構成することができる。第一及び第二のカテーテル1300及び1400の先導端1306及び1406は、体外又はインサイチュで互いに連結することができる。図13に示すように、一旦先導端1306及び1406が連結されると、第一及び第二のカテーテル1300及び1400の追従端1322及び1422は、それぞれ経心尖1102及び経大腿動脈1202のアクセス部位1102及び1104から身体の外側でアクセスし、押して、引いて、及び回転させて、装置1500を軸方向に及び回転可能に処理部位に配置することができる。装置1500を望ましい場所及び配向で処理部位に配置したあと、装置1500を処理部位で完全に展開して周囲組織に係合させることができる。
【0062】
心臓若しくはその中、又は大動脈弓に沿った装置の展開に関連して、他の手術用具を、第三のアクセスポイントを通して、大動脈弓に沿った主要分枝動脈の1つを通して、大動脈弓に供給してもよい。図14に示すように、例えば、フィルタ1800を展開して、分岐動脈1016、1018及び1020に入る血液をフィルタリングしてもよい。
【0063】
本開示の精神又は範囲を逸脱しない範囲で、本開示において様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかである。したがって、本開示は、この本開示の変更及び変形を、それらが添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内である限りにおいて包含することを意図する。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
医療装置を送達するためのシステムであって、前記システムは:
送達部材と;
前記送達部材に取り付けられ、ヒト脈管の処理部位へと前記医療装置を腔内送達するための送達形態で解放可能に保持された、医療装置とを含み、
前記送達部材は、第一の経皮的アクセス部位から身体の外側へ延在するよう構成された細長い第一の部分と、第二の経皮的アクセス部位から身体の外側へ延在するよう構成された細長い第二の部分とを含み、前記第一の部分及び前記第二の部分を身体の外側から操作することによって、前記処理部位における前記医療装置の位置決めが可能である、システム。
[2]
前記送達部材の前記第一の部分及び前記第二の部分は、互いに軸方向に動かすことができるよう分離可能である、項目1に記載のシステム。
[3]
前記送達部材の前記第一の部分は、その中に前記医療装置の少なくとも第一の部分を受容するためのルーメンを画定する略環状の内壁を含む、項目2に記載のシステム。
[4]
前記内壁は、前記送達形態にある前記医療装置の少なくとも前記第一の部分を係合及び保持する、項目3に記載のシステム。
[5]
前記送達部材の前記第一の部分を前記医療装置に対して軸方向に移動させることによって、前記医療装置の少なくとも前記第一の部分を展開することができる、項目4に記載のシステム。
[6]
前記医療装置は拡張可能なステントグラフトである、項目5に記載のシステム。
[7]
前記医療装置は自己拡張性である、項目6に記載のシステム。
[8]
前記装置の第二の部分が、可撓性拘束スリーブによって前記送達形態で解放可能に保持される、項目7に記載のシステム。
[9]
前記医療装置の前記第二の部分は、前記送達部材の前記第二の部分に取り付けられている、項目8に記載のシステム。
[10]
前記送達部材の前記第一の部分及び前記第二の部分は、互いに解放可能に連結される、項目3に記載のシステム。
[11]
前記医療装置と前記送達部材の前記第一の部分の前記内壁との間の係合が、前記送達部材の前記第一の部分と前記第二の部分との間の解放可能な結合を画定する、項目10に記載のシステム。
[12]
前記医療装置は、可撓性拘束スリーブによって前記送達形態で解放可能に保持される、項目1に記載のシステム。
[13]
前記送達部材は前記第一の部分と前記第二の部分との間に取付部分を含み、前記医療装置は前記取付部分に取り付けられている、項目12に記載のシステム。
[14]
前記送達部材の前記第一の部分及び前記第二の部分の少なくとも一方は、カラム強度を実質的に有しない、項目1に記載のシステム。
[15]
前記医療装置は自己拡張性であり、前記送達部材の前記第一の部分及び前記第二の部分の一方と係合する方向へ向かう拡張可能装置の少なくとも一部の拡張が、前記送達部材の前記第一部分と前記第二の部分との間の解放可能な結合を画定する、項目1に記載のシステム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14