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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ロータシャフトを支承するシステム
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/12 20060101AFI20220517BHJP
   B64C 27/32 20060101ALI20220517BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20220517BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B64C27/12
B64C27/32
F16C19/26
F16C35/07
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020524861
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2018077303
(87)【国際公開番号】W WO2019091676
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】102017219831.1
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ リーダー
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-316(JP,A)
【文献】特開2012-011811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0248213(US,A1)
【文献】特開2013-154878(JP,A)
【文献】特開2017-036750(JP,A)
【文献】特開2011-163478(JP,A)
【文献】特開2017-094819(JP,A)
【文献】特開2013-035338(JP,A)
【文献】特開2017-096448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0125299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/32
B64C 27/12
F16C 35/07
F16C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフト(1)を支承するシステムであって、ロータシャフト(1)と、内輪(30)を有する転がり軸受(5)と、を備え、
前記ロータシャフト(1)は、前記ロータシャフト(1)の円周に沿って複数の第1突起部(21)を備え、前記第1突起部(21)が、前記ロータシャフト(1)から径方向外側に延在し、隣接する前記第1突起部(21)の間には、第1フリースペース(23)があり、
前記内輪(30)は、前記内輪(30)の端面から軸方向に延在する複数の第2突起部(31)を備え、隣接する前記第2突起部(31)の間には、第2フリースペース(33)があり、
前記第1突起部(21)と前記第2突起部(31)が周方向で交互に隣接して、前記内輪(30)と前記ロータシャフト(1)との間の回転が防止されるように、前記第1突起部(21)は前記第2フリースペース(33)に突出し、また前記第2突起部(31)は前記第1フリースペース(23)に突出し、
前記ロータシャフト(1)に対する前記内輪(30)の軸方向の変位が防止されるように、第1固定要素(41)が前記第1突起部(21)および前記第2突起部(31)を形状結合的に固定する、システム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記内輪(30)および前記ロータシャフト(1)は、周方向に第1溝または凹部(22)を備え、前記第1固定要素(41)は、前記第1溝または凹部(22)に係合する、システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムであって、前記第1固定要素(41)はワンピース型で構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のシステムであって、前記第1固定要素(41)は少なくとも2つの部分で構成されている、システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のシステムであって、第2固定要素(42)は、前記第1固定要素(41)を径方向に固定する、システム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のロータシャフト(1)を支承するシステムを備えることを特徴とする、ヘリコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータシャフトを支承するシステムに関する。さらに、本発明は、ロータシャフト、および転がり軸受の内輪に関する。またさらに、本発明は、ロータシャフトおよび内輪を製造する方法に関する。さらに、本発明は、ロータシャフトを支承するシステムを備えたヘリコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータシャフトは、典型的にはその下端において、ギヤボックスを介して、例えば内燃機関またはタービン等の駆動装置と接続されている。駆動装置は、ロータシャフトを回転運動させる。ロータハブは、ロータシャフトの上端において、ロータヘッドと堅固に接続されている。
【0003】
ヘリコプタのメインギヤボックスは、通常、少なくとも1つの入力軸と、少なくとも1つのテイルロータ出力軸と、少なくとも1つのロータマストと、から構成されている。関節式に支承されたロータブレードを備えないヘリコプタもある。その場合、ロータブレードの曲げ、張力、せん断、および振動などの力が、直接ロータマストに導入される。その結果生じる負荷は、ロータマストの1つ以上の転がり軸受によって吸収される。この種のヘリコプタには高い負荷がかかるため、ロータマストは、さらに、容易に解体可能または取り外し可能であるように設計されている。
【0004】
そのような転がり軸受は、例えば内輪と外輪とを備えてよく、軸方向に固定されなければならない。この場合、特に航空分野では、2つの構築法が定期的に検討されている。第一の方法によれば、ロータマストは、通常、下部軸受の下に位置するマストナットのみで固定される。マストナットを緩めた後、ロータマストを受容して特に上部軸受を支持する軸受縁部から、ロータマストを上方に引き抜き可能であり、メンテンテナンス作業の枠組みにおいて、ロータマストの不具合を検査することができる。ロータマストの基本的構成は、例えば、ドイツ登録特許第199 44 412 C2号明細書に開示されている。この方法によれば、マストナットまたはシャフトナットによって個々の内輪が固定される。この方法の欠点は、ねじ山が著しいノッチ効果を生み出し、これが構成要素の耐荷重性能に悪影響を及ぼすことである。その場合、ロータマストを補強しなければならず、それによってロータマストがより重くなる。
【0005】
第2の方法によれば、下部軸受と上部軸受との間にスペーサ管を配置する。ドイツ特許出願公開第10 2012 203 178 A1号明細書からは、上下の転がり軸受の間にスペーサ管を配置した動力伝達装置が既知である。このスペーサ管は、第1および第2長手方向部分を備える。第2長手方向部分は、第1長手方向部分よりも高い曲げ弾性を有する。しかしながら、この動力伝達装置のスペーサ管は、製造費用および手間がかかることで知られている。
【0006】
ドイツ特許出願公開第10 2014 216 695 A1号明細書からは、回転翼航空機の動力伝達装置のためのスペーサ管が既知である。このスペーサ管は、蛇行する断面形状と、複数の相互接続された直線の円錐台リング部分と、を備える。円錐台リング部分は、基底領域および頂部領域を備える。
【0007】
第2の方法の欠点は、スペーサもしくはスペーサ管、またはスペーサブッシュに摩耗する傾向があることである。これによって、プレテンションの損失が引き起こされ、ギヤボックスの破損につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ドイツ登録特許第199 44 412 C2号
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2012 203 178 A1号
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2014 216 695 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服する、ロータシャフト、特にヘリコプタのロータシャフトを支承するシステムを提供することである。特に、本発明の課題は、構造的に簡単で、かつ費用対効果の高いシステムを提供することである。更なる態様は、そのようなシステムのためのロータシャフトと、そのようなシステムのための転がり軸受の内輪と、を提供することである。本発明のまた更なる態様は、ロータシャフトを支承するそのようなシステムを備えるヘリコプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこの課題は、独立請求項1および6に記載の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0011】
したがって、本発明は、ロータシャフトを支承するシステムに基づくものである。
【0012】
本発明により、システムは、ロータシャフトと、転がり軸受と、第1閉鎖要素と、を備える。ロータシャフトは、転がり軸受の内輪と形状結合的に接続されている。第1固定要素は、この形状結合的接続を軸方向に固定する。
【0013】
固定する、または据え付ける、とは構成要素の位置または状態を保持することと、構成要素を固定することの、両方を意味することができる。軸方向に固定する、または固定される、とは、固定された構成要素の軸方向の移動が防止されることを意味する。これは、固定された構成要素の移動が軸方向の特定の領域に限定されるため、ある程度の遊びが許容されることを意味してもよい。
【0014】
玉軸受または円筒ころ軸受の形態の転がり軸受は、それ自体公知の転がり軸受である。転がり軸受において、2つの互いに可動な構成要素、いわゆる内輪および外輪が、転がり体または転動体によって分離される。運転中、これらの転動体は、内輪と外輪との間で転動する。これは、硬化した鋼表面、いわゆる軌道上で発生するものである。
【0015】
ロータシャフトと内輪との間は、周方向の回転が防止されるよう、形状結合的に接続される。
【0016】
本発明によって、構造的に単純でコンパクトな、特に費用対効果の高い軸受固定装置を提供できる、と判明した。有利にも、本発明によって、シャフトナットを使用する際のノッチ効果、ならびに軸受を固定するスペーサ管を使用する際に、スペーサ管の摩耗に起因してプレテンションの損失が引き起こされる可能性の、両方の悪影響が防止される。さらに、本発明にはノッチが全く存在しない。そのため、内輪の固定の支承構造から、ノッチ効果要因が発生しない。
【0017】
本発明の第1実施形態において、内輪およびロータシャフトは周方向に溝または凹部を備える。固定要素は、これらに係合する。
【0018】
好適には、第1固定要素はワンピース型で形成されている。例えば、ロータシャフトと内輪との間の形状結合的接続を軸方向に固定する、丸いワイヤスナップリングとして形成された固定リング、副子、またはこの種の他の要素を、ワンピース型で形成することができる。
【0019】
さらに、好適には、第1固定要素は少なくとも2つの部分で構成されている。第1固定要素が複数部分からなることの利点は、組み立てが容易になることである。複数部分からなる固定要素は、軸方向に固定するが、径方向に溝から脱落する可能性がある。
【0020】
さらに、好適には、第2固定要素は、第1固定要素を径方向に固定する。第2固定要素は、例えば、第1固定要素の上に押し付けられるリングであってよい。固定は、直接に、つまり直に接触して行うことができる。または、固定を間接的に行ってもよい。
【0021】
さらに、好適には、第2固定要素は、固定に加えてさらなる機能を、特に、ラジアルシャフトシールリング等の更なる構成部分のための走行面としての機能を果たす。
【0022】
第2固定要素は、ワンピース型の第1固定要素と組み合わせて使用することもできる。
【0023】
さらに、好適には、システムは以下の特徴を有する。ロータシャフトは、その円周に沿って配置された複数の第1突起部を備える。第1突起部は、ロータシャフトから径方向外側に延在する。隣接する第1突起部の間には、第1フリースペースがある。
【0024】
転がり軸受の内輪は、内輪の端面から軸方向に延在するように配置された複数の第2突起部を備える。隣接する第2突起部の間には、第2フリースペースがある。
【0025】
第1突起部は、第2フリースペースに突出する。第2突起部は第1フリースペースに突出する。これによって、第1突起部と第2突起部が周方向で交互に隣接するため、内輪とロータシャフトとの間の回転が防止される。
【0026】
ロータシャフトに対する内輪の軸方向の変位が防止されるように、第1固定要素が、第1突起部および第2突起部を形状結合的に固定する。
【0027】
突起部は、例えばロータシャフトまたは内輪等の構成部分における、例えば凸部または延長部であってよい。延長部は、対応する構成部分に、ワンピース型で成形されてよく、または2つの部分で成形されてもよい。しかしながら、製造上の理由から、構成部分と突起部とが、ワンピース型である、すなわち単一の構造ユニットを構成することが好適である。
【0028】
内輪の場合、凸部は、特に軸方向に延在することができる。ロータシャフトの場合、凸部は、特に径方向に、特にロータシャフトの表面を起点に径方向外側に延在することができる。
【0029】
凸部は、「歯部」と称されることもある。凸部と凸部の間にあるフリースペースは、「歯間」とも称される。
【0030】
さらに、好適には、第1突起部および第2突起部は断面にU字型プロフィールを有し、第1閉鎖要素はU字型プロフィールに対応するT字型の断面を有する。
【0031】
本発明の更なる態様により、ヘリコプタのためのロータシャフトが提供される。ロータシャフトは、その円周に沿って配置された複数の第1突起部を備える。第1突起部は、ロータシャフトから径方向に延在する。突起部は、第1固定要素を形状結合的に受容するように形成されている。
【0032】
さらに、好適には、ロータシャフトにおいて、第1閉鎖要素を形状結合的に受容する突起部は、それぞれ、円周に沿って配置された溝または凹部を備える。
【0033】
本発明の更なる態様により、転がり軸受のための内輪が提供される。内輪は、周方向に配置された複数の第2突起部を備える。第2突起部は、内輪の端面から軸方向に延在する。突起部は、第1固定要素を形状結合的に受容するように形成されている。
【0034】
好適には、第1閉鎖要素を形状結合的に受容する突起部は、それぞれ、円周に沿って配置された溝または凹部を備える。
【0035】
本発明の更なる態様は、ロータシャフトを製造する方法を提供することである。方法は、以下のステップを含む。
【0036】
ロータシャフトを製造する方法は、周方向に走るカラーを備えるロータシャフトを提供する第1ステップと、溝または凹部を第1突起部に切り込む第2ステップと、径方向外側に延在する複数の第1突起部をロータシャフトの外周面から製造するために、カラーをフライス加工する第3ステップと、を含む。
【0037】
工具の取り扱いの点で、溝を連続する周方向のカラーに切り込む方が、部分的に切り込むよりも簡単である。そのため、好適には、ロータシャフトを製造するこれらの3つのステップは、時系列的に相互に追従することができる。しかしながら、第2ステップの前に第3ステップを実行することも考慮可能である。
【0038】
本発明の更なる態様は、転がり軸受のための内輪を製造する方法を提供することである。方法は、転がり軸受のための内輪と提供する第1ステップと、溝または凹部を第2突起部に切り込む第2ステップと、軸方向に延在する複数の第2突起部を内輪の端面から製造するために、内輪をフライス加工する第3ステップと、を含む。
【0039】
工具の取り扱いの点で、溝を連続する周方向のカラーに切り込む方が、部分的に切り込むよりも簡単である。そのため、好適には、内輪を製造するこれらの3つのステップは、時系列的に相互に追従することができる。しかしながら、第2ステップの前に第3ステップを実行することも考慮可能である。
【0040】
本発明の更なる態様は、ロータシャフトを支承する上述のシステムを備えるヘリコプタを提供することである。
【0041】
本発明、本発明の実施形態、および本発明の更なる態様により、1つの構成部分、すなわちスペーサ管またはナットのねじ山のいずれかが省略され、摩耗部品を交換する必要がない。そのため、本発明、本発明の実施形態、および本発明の更なる態様は、特に、ギヤボックスの量産および保守においてコスト面で有利である。さらに、重量が低減されるため、ペイロードまたは最大離陸重量(Maximum Take Off Weight: MOTW)を増大させることができる。ワンピース型の第1固定要素を使用する場合には、第2固定要素を省略することができる。
【0042】
本発明を、以下の図面を参照して詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】従来技術による、ロータシャフトを支承するスペーサ管を備える転がり軸受の図である。
図2】本発明の第1態様による第1実施形態のロータシャフトの図である。
図3】本発明の第2態様による第1実施形態の内輪の図である。
図4】本発明の更なる態様による第1実施形態のロータシャフトを支承するシステムの図である。
図5】第1固定要素が挿入された状態の図4のシステムの、更なる図である。
図6】第2固定要素を備える図5のシステムの図である。
図7】ロータシャフトを支承するシステムの第2実施形態の図である。
図8図4乃至図6のシステムを組み立てた状態の長手方向断面図である。
図9図7のシステムを組み立てた状態の長手方向断面図である。
図10】ロータシャフトを支承するシステムを備えるヘリコプタの図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、ヘリコプタのメインロータシャフトとして形成された、従来技術から既知のシャフト1を示す。このシャフト1は、左側で軸受パッケージ11に、および右側で転がり軸受5に、回転可能に支承されている。軸方向に見て、軸受パッケージは下部軸受を構成し、転がり軸受5は上部軸受を構成する。軸受パッケージ11は、円筒ころ軸受11aの形態の転がり軸受、および四点軸受11bを備える。
【0045】
ねじ接続によって、図示しないハウジングに固定された円筒ころ軸受11aは、それ自体公知の態様で、内輪と、外輪と、特に内輪と外輪との間で径方向に走る円筒形の転動体を有する転動体ケージと、を含む。円筒ころ軸受11aは、径方向の耐荷重性能は大きい。しかしながら、円筒ころ軸受11aは、軸方向では、わずかな荷重のみを支える、乃至全く荷重を支えることができない。四点軸受11bは、これらの力を吸収するために設けられている。
【0046】
四点軸受11bは、アキシアル荷重を両方向で吸収できるように軌道が形成された、単列ラジアルアンギュラ玉軸受である。ラジアル荷重は、アキシアル荷重の何分の一かまでが、吸収されるのみである。四点軸受11bは、分割された内輪を備え、自己保持式ではない。内輪が分割されているために、複数の玉を軸受内に受容可能である。これによって、比較的高い耐荷重性能が得られる。
【0047】
上部ロータマスト軸受5は、内輪5aと、外輪5bと、径方向で内輪5aと外輪5bとの間に配置された転動体5cを有する転動体ケージと、を含む。外輪5bは、ねじ接続を用いて、シールキャリアまたはブッシュ3を介して、(図示されない)ハウジングに固定して、取り付けられている。軌道輪2およびシャフトシールリング4は、径方向でシャフト1とシールキャリアまたはブッシュ3との間に配置されている。軌道輪2は、シャフト1と共に回転する。内輪5aは2つの固定リム7、8を備える。転動体5cは、固定リム7、8の上へ導かれる。
【0048】
転がり軸受5は、シールキャリア3、シャフトシールリング4、および軌道輪2である要素とシャフト1との相互作用によって、軸方向右側に固定されており、荷重方向に対して回転する内輪5aは、通常のようなプレスフィットでは、シャフト1に取り付けられていないことが分かる。
【0049】
サムシャフト17は、図示されていない2つのギヤボックスの駆動トルクをロータシャフト1に伝達する。そのために、サムシャフト17は、差込接続部またはクランプ接続部17aによって、形状結合的に、軸受パッケージ11とロータシャフト1との間に差し込まれている、またはクランプされている。
【0050】
作動中の内輪5aの移動を防止するため、または支持するために、従来技術に従ってスペーサ管10が備えられている。スペーサ管10は、ロータシャフトと同軸に配置され、軸受パッケージ11を、転がり軸受5または内輪5aから離れた位置に保持する。これによって、内輪が、したがって転がり軸受5もが、左または下への軸方向の滑りに対して固定される。
【0051】
スペーサ管を用いた、従来技術において既知であるこの解決策は、摩耗する傾向が強い。その結果、プレテンションの損失が引き起こされ、ギヤボックスの破損につながる可能性がある。
【0052】
図2は、本発明の第1実施形態のロータシャフト1を示す。ロータシャフト1は、ロータシャフト1の周方向に走る6つの第1突起部21を有する。これらの突起部21の各々は、溝22を有する。周方向に隣接して位置する突起部21の間には、フリースペース23がある。第1突起部21は、径方向外側に延在する。
【0053】
図3は、本発明の第1実施形態の、転がり軸受5の内輪30を示す。内輪30を除いて、図3の転がり軸受は図1の転がり軸受と同一である。そのため、同じ符号を使用することができる。
【0054】
内輪30は、周方向に走る6つの第2突起部31を備える。これらの突起部31の各々は、第2溝32を有する。周方向に隣接して位置する突起部31の間には、フリースペース33がある。第2突起部31は、内輪30の端面から軸方向に延在し、いわゆる軸方向凸部を形成する。
【0055】
第1突起部21は、ロータシャフト20の周方向に走るカラーからフライス加工されたものである。そのため、等しい大きさで、かつ等離間の6つの突起部21が形成される。第2突起部31は、内輪30にフライス加工されたものである。そのため、等しい大きさで、かつ等間隔の6つの突起部31が形成される。第1溝22および第2溝32は、切り込まれたものである。
【0056】
突起部の個数は、変化させることができる。3、4、5、7、8、または9個の突起部を構成することもできる。個数は、特に6、7、または8個が好適である。通常、突起部には製造上のばらつきがある。そのため、寸法は同一でない。6、7、または8個の突起部を備える場合、隣接する突起部の間の周方向の面圧を最適に低減させることができ、それによって、有利な方法で摩耗の発生を低減できることが分かった。
【0057】
隣接する突起部の間隔を、変化させることも考慮可能である。突起部の大きさが等しく、かつ等間隔であることには、組み立てがより簡単である、という利点がある。
【0058】
第1突起部21は、第2突起部31に対応している。同様に、第1溝22および第2溝32は、相互に対応している。すなわち、まとめられた状態、または組み立てられた状態において、第1突起部21は第2フリースペース33に係合し、第2突起部31は第1フリースペース23に係合する。一方、第1溝22および第2溝32は、共通の周方向溝を構成する。
【0059】
図4は、ロータシャフトを支承するシステム100の図であり、内輪30およびロータシャフト1を備える転がり軸受5の組み立ての際の部分図である。内輪30は、その第2突起部31で第1フリースペース23内に押し込むことができるように、ロータシャフト1に対して配向されている。
【0060】
図4は、さらに、分割リングの形態の固定要素40を示す。分割リングは、複数部分からなる第1固定要素の一例である。分割リング41は、溝22、32に対して相補的な対応部を構成し、溝22、32に係合することができる。さらに図4は、第2固定要素42を示す。分割リング41は、径方向に固定されておらず、脱落する可能性がある。そのため、この場合、第2固定要素42が必要である。有利には、第2固定要素42が、同時に、図示されていないラジアルシャフトのラジアルシャフトシールリング43のための軌道輪としても機能する。支持管44は、外輪5bおよびハウジング45にねじ留めすることができる。分割リングを、例えば、径方向内側に走るカラーを備える円筒状の構成部分を、等しい大きさの2つの部分、またはハーフリングに分割することによって、製造することができる。
【0061】
図5は、内輪30と、ロータシャフト1と、分割リング41と、を備える転がり軸受5を、断面図で示す。内輪30の第2突起部と、この第2突起部に係合する分割リング41とを、明確に認識できる。この目的のために、内輪30の突起部31、およびロータシャフト1の図示しない突起部は、断面に矩形のU字形プロフィールを有する。分割リング41は、対応するF字型プロフィールを有する。しかしながら、分割リング41のT字形プロフィールも考慮可能であろう。内輪のシール品質は、個々の突起部の間に発生する隙間によって低減する可能性がある。(二重リングとも称される)F字形プロフィールは、形状結合的接続を改良する。またF字形プロフィールが軸方向に第1および第2突起部を平坦に覆うため、その後のシールが容易である。シールは、例えばゴムコンパウンドによって、ロータシャフト1、分割リング41、および軌道輪42がシールされるように行うことができる。
【0062】
図5に加えて、図6は、第2固定要素42を示す。第2固定要素42は、同時にラジアルシャフトシールリング43の軌道輪として機能する。軌道輪42は、分割リング41を径方向に固定する。軌道輪42のL字形プロフィールは、追加的に、軸方向に固定してシールするよう機能する。ラジアルシャフトシールリング43は、軌道輪42の径方向の裏面上を走る。内輪30の端面と軌道輪42との間の、軸方向の隙間は、軌道輪を取り外すために工具を係合させるよう機能する。
【0063】
図5および図6とは異なり、図7は、丸いワイヤスナップリングの形態である、ワンピース型の第1固定要素41を示す。この第1固定要素41は、溝22、32から径方向に落下しないため、形状結合を軸方向に固定するのに十分である。突起部をより良好にシールするために、断面がL字型のシール要素が備えられている。このシール要素は、径方向で突起部21、31と軌道輪42との間に配置されている。シール要素41aは、溝22、32に係合しない。図6によるシステムと比較すると、図6によるシステムでは、分割リングが、溝に係合し、またシールもしている。そのため、図7によれば、少なくとも1つの追加の構成部分が必要である。
【0064】
図8は、好適な第1実施形態のロータシャフト支承するシステムを、組み立てられた状態の長手方向断面図で示す。
【0065】
内輪30と、転動体ケージ5cと、外輪5bと、を備える転がり軸受5は、ロータシャフト1に押し付けられている。転動体ケージ5cは、径方向で内輪30と外輪5bとの間に位置する。2つの部分からなる固定要素41は、そのF字型プロフィールのT字型部分で、第1突起部21および第2突起部31の溝22、32に係合し、その端面で突起部21、31を包囲する。2つの部分からなるリング41は、リング42を用いて径方向に固定されている。リング42は、同時に、ラジアルシャフトシールリング43のための軌道輪としても機能する。支持管44は、外輪およびハウジングにねじ留めされている。
【0066】
図9は、好適な更なる実施形態のロータシャフトを支承するシステムを、組み立てられた状態の長手方向断面図で示す。
【0067】
図8とは異なり、第1固定手段41は、丸いワイヤスナップリングである。したがって、軌道輪は、形状結合的に溝21、31に係合するように追加的に形成されておらず、したがってT字形プロフィールを有さない。
【0068】
図10は、ロータシャフトを支承するシステム100を備えるヘリコプタを示す。システム100は、ヘリコプタ80において、メインロータギヤボックス50、テイルロータギヤボックス60、および/または偏向ギヤボックス70に使用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 シャフト、ロータシャフト
2 軌道輪
3 シールキャリア、ブッシュ
4 シャフトシールリング
5 ころ軸受、円筒ころ軸受
5a 内輪
5b 外輪
5c 転動体、転動体ケージ
6 接続手段、ねじ接続
7 第1リム
8 第2リム
9 第3リム
10 スペーサ管、スペーサ
11 軸受パッケージ
11a 円筒ころ軸受
11b 四点軸受
12 シャフトナット
13 スチールリング
14 ギヤアウトレットゾーン
15 ノーズ
16 手段、接触領域
17 サムシャフト
17a 形状結合的接続手段、差込アーム、クリップアーム
21 第1突起部、凸部、歯部
22 第1溝、凹部
23 第1フリースペース、ブランク
30 内輪
31 第2突起部、凸部、歯部
32 第2溝、凹部
33 第2フリースペース、ブランク
41 第1固定要素、ワンピース型/複数の部分からなる、丸いワイヤスナップリング、固定リング、副子、分割リング
41a シール要素
42 第2固定要素、リング、軌道輪
43 ラジアルシャフトシールリング
44 支持管
45 ハウジング
50 メインロータギヤボックス
60 テイルロータギヤボックス
70 偏向ギヤボックス
80 ヘリコプタ
100 ロータシャフトを支承するシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10