(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】弾性不織布シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20220517BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220517BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20220517BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
D04H3/16
B32B5/26
B32B27/02
B32B27/32 Z
(21)【出願番号】P 2021530123
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2020055002
(87)【国際公開番号】W WO2020187540
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516034957
【氏名又は名称】ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン モーテン ライズ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321292(JP,A)
【文献】特開2007-321293(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070518(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143834(WO,A1)
【文献】特開2011-231444(JP,A)
【文献】国際公開第2008/108238(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0097154(US,A1)
【文献】国際公開第2009/032865(WO,A1)
【文献】国際公開第96/021562(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/183315(WO,A1)
【文献】特表2019-518150(JP,A)
【文献】国際公開第02/052085(WO,A2)
【文献】特開2016-141929(JP,A)
【文献】特開2018-028167(JP,A)
【文献】特表2005-514232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織ウェブからなる少なくとも2つの隣り合う層を有する不織布シートにおいて、
前記2つの層のうち第1の層は、捲縮多成分繊維を含むスパンボンド不織ウェブの形のキャリア層であり、
前記2つの層のうち第2の層は、熱可塑性エラストマー高分子材料からなる弾性繊維を含むスパンボンド不織ウェブの形の弾性層であり、
前記キャリア層のウェブは
、結合点を備える一方で、前記弾性層のウェブは
、結合点を欠いている、不織布シート。
【請求項2】
請求項1の不織布シートにおいて、
前記不織布シートは、スパンボンド不織ウェブからなる少なくとも3つの隣り合う層を備え、
前記3つの層のうち第3の層も、捲縮多成分繊維を含むスパンボンド不織ウェブの形のキャリア層であり、
前記弾性層は、2つの前記キャリア層に挟まれている、不織布シート。
【請求項3】
請求項2の不織布シートにおいて、
前記キャリア層の両方が
、結合点を備える、不織布シート。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記捲縮多成分繊維の平均捲縮数は、繊維において1cmあたり、少なくとも5捲縮、望ましくは少なくとも8捲縮の範囲である、不織布シート。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか1つの不織布シートにおいて、
1つ又は複数の前記キャリア層の坪量は、5-40g/m
2の間、望ましくは8-30g/m
2の間であり、且つ/又は、前記弾性層の坪量は10-140g/m
2の間、望ましくは20-120g/m
2の間である、不織布シート。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記不織布シートの全体としての厚さは、1.20mm未満である、不織布シート。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか1つの不織布シートにおいて、
少なくとも1つ、望ましくは両方の前記キャリア層は、それ自体が2つ又はそれ以上のスパンボンド材料の層を備え、当該各層における平均捲縮レベルは層同士で異なってる、不織布シート。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記不織布シートが少なくとも部分的に活性化され、且つ、微視的な繊維構成が異な
り平行且つ望ましくは途切れない縞となっている巨視的な領域を交互に備え、
前記各領域は
、前記シートの長さ方向を向いているか、又は
、前記シートの横断方向を向いている、不織布シート。
【請求項9】
請求項8の不織布シートにおいて、
前記不織布シートは、少なくとも1つの機械方向の活性化材料からなる帯と、少なくとも1つの隣接する機械方向の非活性化材料からなる帯とを備える、不織布シート。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記弾性繊維を構成する熱可塑性エラストマー高分子材料は、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー材料(TPE-o)であり、好ましくは、プロピレン-α-オレフィンコポリマーを含む熱可塑性ポリオレフィンエラストマー材料である、不織布シート。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記弾性層の少なくとも一部の前記弾性繊維は、2成分繊維であって、異なる性質の熱可塑性エラストマーからなる2つの区別可能な領域を有する、不織布シート。
【請求項12】
請求項1-11のいずれか1つの不織布シートにおいて、
20重量%まで、望ましくは10重量%までのホモポリプロピレンのような熱可塑性オレフィンが前記弾性層の前記弾性繊維に加えられている、不織布シート。
【請求項13】
請求項1-12のいずれか1つの不織布シートにおいて、
前記不織布シートは、隣り合う前記キャリア層と前記弾性層との間に接着剤を備えない、不織布シート。
【請求項14】
請求項1-13のいずれか1つの不織布シートの製造方法であって、
当該方法は、
(a)捲縮多成分繊維を含む第1のスパンボンド不織ウェブであって製造する前記不織布シートのキャリア層に対応するもの、を準備すること、及び、
(b)前記第1のウェブ上に弾性繊維を紡糸して敷くことにより前記布シートの前記弾性層を形成すること
を含む不織布シートの製造方法。
【請求項15】
請求項14の方法において、
前記第1のウェブは、形成済みの材料のロールから巻きを解くことにより供給される不織布シートの製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15の方法において、
当該方法は、更に、
(c)捲縮多成分繊維を含む第2のスパンボンド不織ウェブを、前記弾性層の露出した側に重ね合わせて、前記布シートの他のキャリア層を形成すること
を含む不織布シートの製造方法。
【請求項17】
請求項16の方法において、
前記第2のウェブは、形成済みの材料のロールから巻きを解くことにより供給される不織布シートの製造方法。
【請求項18】
請求項16の方法において、
前記第2のウェブは、前記弾性層の露出した側に、前記第2のウェブを形成するための繊維を直接紡糸して敷くことにより供給される。
【請求項19】
請求項14-18のいずれか1つの方法において、
当該方法は、更に、
(d)前記シートを前圧縮すること
を含む不織布シートの製造方法。
【請求項20】
請求項14-19のいずれか1つの方法において、
当該方法は、更に、
(e)互いに組み合わさる環状の溝と山とを表面に有していて噛み合う一対のロールを備えた機械において、シートを機械的に活性化すること
を含む不織布シートの製造方法。
【請求項21】
請求項14-19のいずれか1つの方法において、
当該方法は、更に、
(e’)互いに組み合わさる横断方向横断の方向の刃を有する一対のロールを供えた機械において、シートを機械的に活性化すること
を含む不織布シートの製造方法。
【請求項22】
請求項1-13のいずれかに記載の不織布シートにより、衛生製品を製造する使用方法。
【請求項23】
請求項1-13のいずれかに記載の不織布シートを弾性後耳部として用いたテープ型オムツ。
【請求項24】
請求項1-13のいずれかに記載の不織布シートを弾性ウエスト部の材料として用いたパンツ型オムツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有する不織布シート、そのような不織布の製造方法及びそのような不織布の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生産業において不織材料は頻繁に用いられ、例えばオムツや成人用失禁対策製品が作られる。そこでは、不織材料は、例えば裏打ちシートとして機能する。スパンボンドシート、又は、複数のスパンボンド層を有する複層シートは、非常に有用且つ経済的にも適していることが実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用目的によっては、例えば、オープン型オムツの後耳部又はパンツ型オムツのウエストベルトを作る際には、不織材料が弾性を有することは非常に望ましい。しかしながら、従来知られているスパンボンド型不織材料は、多少の伸展性は有するとしても、延ばされた後に概ね元の状態に戻るという意味において弾性を有するとは言い難い。
【0005】
この理由から、オープン型オムツの後耳部に関しては、全体が弾性材料のシートを外側の不織層の間に積層し、これらが接着される場合が多い。例となる材料が、WO 2018/183315 A1に開示されている。しかし、接着は、製造において個別の工程を伴い、且つ、積層体は概ね空気を透過せず、触れると硬い場合がある。
【0006】
ウエストベルト部に関しては、弾性の撚り糸が、製品の対応部分において二層の不織材料の間に積層される場合が多い。より複雑なその場しのぎは別として、このような弾性撚り糸は製品を身に着けて不快なものにしがちであり、皮膚に赤い跡を残すことがある。
【0007】
EP 2 342 075 A1には、それ自体の性質として弾性を有する不織布が開示されており、ここではメルトブローン法による弾性繊維がスパンボンドウェブの間に挟まれている。スパンボンドウェブは、梳綿(carding)及び水流絡合(hydro-entanglement)により、短繊維から形成される。スパンボンドウェブは、典型的には機械横断方向には優れた伸展性(extensibility)を有するが、比較的製造費が高く、製造可能な最小坪量及び製造速度の点で制限がある。メルトブローン法による弾性機能材料は優れた弾性特性を有するが、非常に高密度になりがちであり、製造可能な繊維径、坪量の点で制限があり、結果として安定性にも限界がある。
【0008】
本発明の目的は、それ自体の性質として弾性を有し、製造が容易で優れた特性を有する不織布シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、本発明は、少なくとも2つの隣り合うスパンボンドウェブ層を備える不織布シートを提案するものであり、2層のうち第1の層は、捲縮多成分繊維を含むスパンボンド不織ウェブ層という形のキャリア層であり、前記2層のうち第2の層は、熱可塑性エラストマー高分子材料からなる弾性繊維を含むスパンボンド不織ウェブという形の弾性層である。
【0010】
キャリア層のウェブは巨視的な結合点のパターンを備える一方、弾性層のウェブは巨視的な結合点を欠いている。キャリア層のウェブは、既成のウェブとして準備されても良い。従って、これらのウェブの熱結合は、カレンダー加工のような既知の結合工程を個別に行うことができ、同時に弾性層の結合まで行う必要は無い。これは、布全体として結合を行うと布が締まって弾性が劣化しやすいことを考えると、望ましい。
【0011】
層同士を結合する工程は省略し得る。これは、紡がれた後すぐの数秒間、弾性繊維はその性質として粘着性を有することによる。この粘着性により、各層の結合を行わなくても、層同士の優れた接着性と全体的な布の安定性が実現する。
【0012】
これに関連して、布シートは、キャリア層と弾性層とをニードルパンチすることで生じるニードルパンチパターンを備えないことが望ましく、更に、超音波結合、水流絡合等の他の結合技術に起因するパターンや構造を備えないことも望ましい。
【0013】
望ましくは、本発明の不織布シートは、少なくとも3つの隣接するスパンボンド不織ウェブ層を備え、3層のうち第3の層も捲縮多成分繊維を含むスパンボンド不織ウェブ層という形のキャリア層であって、弾性層は2つのキャリア層に挟まれている。これに関連して、不織布シートは、3層より多くの層を備えていてもよいと理解される。1例としては、不織布シートは、2つの弾性層と、2つのスパンボンド不織ウェブとを備える。
【0014】
キャリア層において、捲縮された多成分、望ましくは2成分の繊維における第1の成分は第1の熱可塑性高分子材料からなり、多成分繊維の第2の成分は、第1の熱可塑性高分子材料とは異なる第2の熱可塑性高分子材料からなる。有用な高分子材料は一般にポリオレフィンであり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン-ポリエチレンコポリマー(co-PP)である。例えば、第1の成分がPPであり、第2の成分は異なるPPであっても良い(PP/PP)。別の例では、第1の成分はPPであり、第2の成分はco-PPであっても良い(PP/co-PP)。更に別の例では、第1の成分はPPであり、第2の成分はPEであっても良い(PP/PE)。いずれの場合にも、一部、更には全部のポリオレフィン成分がスターチ(トウモロコシ又はサトウキビ由来)のような再生可能高分子によって置き換えられても良い。
【0015】
2つの成分は、繊維の断面において隣り合う配置でも良いし、異形の鞘-芯構造に配置されても良い。異なる熱可塑性高分子材料の異なる挙動によって、スパンボンド工程における熱処理及び延伸の後に捲縮が発生する。捲縮繊維から不織ウェブを製造すること自体はこの技術において周知であり、例えばUS 6,454,989 B1に開示されている。非常に柔らかい製品を製造するより新しい技術が、例えば、EP 3 054 042 A1、 EP 3 246 443 A1、 EP 3 246 444 A1 及び WO 2017/198336 A1に開示されている。
【0016】
第1及び/又は第2のキャリア層は、捲縮多成分繊維だけからなっている、つまり、他の繊維、例えば標準的な非捲縮の単成分繊維を含まないのであっても良いし、捲縮多成分繊維と、非捲縮の単成分繊維との混合物からなっているのであっても良い。混合物の場合、捲縮繊維は50重量%を越えることが望ましく、70受領%を越えることがより望ましく、90重量%を越えることが更に望ましい。
【0017】
1つの実施形態では、捲縮多成分繊維における捲縮数は、少なくとも繊維1cmあたり5捲縮、望ましくは8捲縮程度であり、これは、日本工業規格JIS L-1015-1981に従って、2mg/デニールの初期荷重を掛けて測定される。
【0018】
キャリア層は、布地の風合いを担っており、且つ、捲縮繊維に由来して一定の伸展性を備え、これは非捲縮単成分繊維からなる通常のスパンボンドウェブの伸展性を越える。特に、非捲縮単成分繊維からなる通常のスパンボンドウェブは、WSP 100.4に従う測定において典型的には機械方向(machine direction)に45-50%程度、機械横断方向(cross-machine direction)に55-65%程度の破断伸度(an elongation at break)を有するのに対して、捲縮多成分繊維からなる高ロフトなスパンボンドウェブは、機械方向に100%を越える伸度を持ち、更に、機械横断方向にはそれ以上、典型的には200%を越える伸度を持つ。
【0019】
スパンボンド型熱可塑性エラストマー(TPE)繊維からなる弾性層は、比較的高い安定性を有しており、これは、比較的容易に比較的容易に坪量を広い範囲に変えることができるからである。同時に、繊維はわりあいに太いので、安定で比較的開いた布になる。弾性層は、熱可塑性高分子材料からなる繊維だけでできていても良いし、大部分、つまり、60重量%を越えるか、更には80重量%を越える部分が熱可塑性高分子材料からなる繊維でできていても良い。
【0020】
1つの実施形態では、本発明の不織布シートは、2つのキャリア層と、その間の弾性層からなっていても良い。
【0021】
キャリア層の坪量は、5-40g/m2の範囲であっても良く、望ましくは8-30g/m2の範囲であり、より望ましくは8-25g/m2の範囲であり、更に望ましくは10-20 g/m2の範囲である。弾性層の坪量は、10-140 g/m2の範囲であっても良く、望ましくは20-120 g/m2の範囲であり、より望ましくは25-100 g/m2の範囲である。このような坪量とすることが、布地の風合い、弾性特性及び安定性の点で有用と実証されている。
【0022】
不織布シートの全体としての厚さは、WSP 120.6に従う測定において、1.20mm未満であることが望ましい。そのような本発明の材料は、典型的には、オムツ製品に用いたときに十分な機械的安定性を有する。同時に、薄い材料であることは、全体的に嵩が低く、そのような製品が通常のブリーフのような外見となるので有益である。
【0023】
1つの実施形態では、両方のキャリア層のウェブが、巨視的な結合点のパターンを備える。両方のキャリア層のウェブは、形成済みのウェブとして準備されても良い。
【0024】
望ましい変形例では、キャリア層の結合パターンは比較的開いている、つまり、1cm2あたりの結合点の数は30未満であり、且つ/又は、結合点の面積によって締められる布表面の総面積は18%未満、望ましくは15%未満である。
【0025】
キャリア層の緊密な構造を緩めて弾性層の弾性を示させるための望ましい方法の1つは、少なくとも2つの隣り合うスパンボンド不織ウェブを有する不織布シートの全体を、いわゆるリングローリング工程で処理することを含む。これについては、本発明の方法に関連して後に寄り詳しく説明する。結果として、布シートは少なくとも布の一部が活性化され、且つ、異なる微視的な繊維構成を有する領域を交互に有するようになることが望ましい。当該領域は、平行で且つ望ましくは途切れの無い縞状となっており、布シートの長さ方向を向いている。リングローリングにより、布シートにおける機械横断方向の破断伸度が大きくなって200%を越え、300%を越えることさえある。破断伸度は、WSP 100.4に従って測定する。同時に、布シートの機械方向における弾性及伸展性はほとんど影響を受けず、比較的低い機械方向の伸展性は、布シートを使って例えば衛生製品製造を作る際には非常に都合が良い。
【0026】
キャリア層の緊密な構造を緩めて弾性層の弾性を示させるための他の望ましい方法は、少なくとも2つの隣り合うスパンボンド不織ウェブを有する不織布シートの全体を、横断刃装置活性化を用いて長さ方向に活性化する工程を含む。これについても、本発明の方法に関連して後に寄り詳しく説明する。結果として、布シートは少なくとも布の一部が活性化され、且つ、異なる微視的な繊維構成を有する領域を交互に有するようになることが望ましい。当該領域は、平行且つ望ましくは途切れの無い縞状となっており、布シートを横断する方向を向いている。このような長さ方向活性化によると、布シートにおける機械横断方向の破断伸度が大きくなって150%を越え、200%を越えることさえある。破断伸度は、WSP 100.4に従って測定する。同時に、布シートの横断方向における弾性及伸展性はほとんど影響を受けない。
【0027】
1つの実施形態では、適宜処理した布シートは、高い弾性を有する機械方向の活性化材料帯の部分と、低い弾性を有する中間の非活性化材料帯の部分とを有していても良い。言い替えると、布は、少なくとも1つ機械方向の活性化材料からなる帯と、少なくとも1つの隣接する機械方向の非活性化材料からなる帯と、更に、交互となるような活性化又は非活性化材料からなる機械方向の帯とを備えていても良い。これは、布シートの部分的な活性化の結果であり、詳しくは更に後に本発明の方法に関連して後に更に詳しく説明する。
【0028】
1つの実施形態では、弾性層の弾性繊維を構成する熱可塑性エラストマー高分子材料は、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー材料(TPE-o)であり、望ましくはプロピレン-α-オレフィンコポリマーを含む熱可塑性ポリオレフィンエラストマー材料である。熱可塑性材料におけるプロピレン-α-オレフィンコポリマーの量は、1つの実施形態では、少なくとも80重量%である。本発明において用いるのに望ましいTPE-o材料は、EP 2 342 075 A1に開示されている。これに代えるか、又は追加して、つまりポリオレフィンエラストマー材料との混合物として、他の熱可塑性エラストマー材料、特に熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレンブロックコポリマー(TPE-s)等を用いても良い。
【0029】
1つの実施形態では、2成分弾性繊維が構成されても良い。これは、2つの異なる熱可塑性エラストマーからなり、例えば隣り合う形に又は鞘-芯構造に配置されても良い。このような配置において、2つの異なる熱可塑性エラストマーの弾性特性が繊維内で組み合わせられても良い。また、構成次第では、望ましい場合、一定の捲縮レベルは弾性糸に起因するのであっても良い。例えば、両方の要素がTPE-oからなっていても良く、望ましくは、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー材料はプロピレン-α-オレフィンコポリマーを含む。プロピレン-α-オレフィンコポリマーの熱可塑性材料における含有量は、2つの要素の間で異なっていても良い。
【0030】
1つの実施形態では、20重量%まで、望ましくは40重量%までの熱可塑性オレフィン、例えばホモポリプロピレンが熱可塑性エラストマーに加えられても良い。これにより、結晶化の挙動、ひいては粘着性及び弾性特性を変えることができ、有用な場合がある。
【0031】
これまでに既に述べたように、熱可塑性エラストマー材料を紡糸して得られた弾性繊維は、少なくとも紡糸の直後は、典型的に、それ自体の性質として比較的粘着性を有する。この結果、弾性層全体がそれ自体、粘着性を有し、接着剤を追加する必要なくキャリア層に良好に接着する。穏やかな前圧縮(pre-compaction)工程を製造中に行い、接着性を増進した場合は特に良好に接着する。従って、望ましい実施形態において、不織布は隣り合うキャリア層と弾性層との間に全く接着剤を用いていない。これは、接着剤の追加が追加の材料費と工程を伴うこと考慮すると、有利である。更にまた、揮発性の接着剤成分は製品の臭気となり、且つ、接着剤は環境問題からも望ましくない。
【0032】
本発明は、更に、本発明の不織布シートの製造方法に関する。当該方法は、(a)捲縮多成分繊維を用いた第1のスパンボンド不織ウェブであって、製造する布シートのキャリア層に対応するウェブを準備する工程と、(b)弾性糸を第1のウェブ上に紡糸して敷くことにより布シートの弾性層を形成する工程とを含む。
【0033】
工程(b)の紡糸は、スパンボンド装置中において弾性糸を押し出し、冷却、延伸することを含む。第1のウェブは、典型的にはスパンボンド装置にコンベヤベルトに乗せて運ばれる。
【0034】
第1のウェブは、望ましくは、形成済みの材料のロールから巻きを解くことで供給される。ウェブは、典型的には、コンベヤベルト上に巻きを解かれ、スパンボンド装置に運ばれる。形成済みの材料は、複数層からなる材料であって、捲縮繊維を含む1つ又はより多くのスパンボンドウェブを含むのであっても良いし、単純に捲縮繊維からなる一層のスパンボンドウェブであっても良い。典型的には、例えばカレンダー加工により結合されており、巨視的な結合パターンを有する。望ましい多層材料は、例えば2つ、3つ又は4つの個々のスパンボンド材料を含み、それぞれ異なる捲縮レベルであっても良い。
【0035】
1つの実施形態では、前記方法は更に、(c)捲縮多成分繊維を含む第2のスパンボンド不織ウェブを、弾性層の露出した側に重ね合わせて、布シートの他のキャリア層を形成するという工程を含む。この変形例の方法では、本発明の望ましい実施形態に対応するシート、2つのキャリア層の間に弾性層が挟まれた構造を有するシート、が供給される。
【0036】
第2のウェブについても、形成済みの材料のロールから巻きを解くことで供給されても良い。従って、形成済みの第2のウェブが直接、第1のキャリア層と弾性層とを備えるシートにおける弾性層の露出した側に重ねられても良い。シートは、典型的には弾性層の形成直後にコンベヤベルト上を運ばれてくる。この実施形態では、各キャリア層を構成する両方のウェブが形成済みの材料として供給されても良い。
【0037】
キャリア層のための形成済みの材料は、それぞれ複数層材料であって、捲縮繊維を含む1つ又はより多くのスパンボンドウェブを備えていても良いし、捲縮繊維を含む一層のスパンボンドウェブであっても良い。これらは、例えば典型的にはカレンダー加工により結合されるか、又は、多成分繊維の成分間の融点差が許容するなら(例えばPP/PEの組み合わせの場合)、熱風貫通方式で結合されても良い。カレンダー加工の場合、巨視的な結合点が生じる。望ましい変形例の説明のために、前記の本発明の布シートを参照する。
【0038】
別の実施形態では、第2のウェブは、第2のウェブを形成するための繊維を弾性層の露出面に直に紡糸して敷くことにより形成されても良い。この実施形態では、第2のウェブは、形成済みのウェブとして供給されるのではなく、捲縮2成分繊維と、選択的な他の繊維とをライン内にて紡糸、冷却及び延伸することで形成されても良い。これは、弾性繊維を形成するスパンボンド装置の下流側に配置された別のスパンボンド装置にて行われる。ライン内での第2のウェブの形成は、典型的には弾性層の形成の直後に行われる。
【0039】
1つの実施形態では、シートの前圧縮の行程(d)を更に備える。シートの前圧縮の工程(d)は、工程(b)の後、又は、追加又は差し替えの工程(c)が有る場合はその後に行われる。それらの工程の直後に、他の工程を間に入れること無く行われることが好ましい。典型的には、前圧縮の工程(d)において、材料が紡糸ベルト(spinbelt)と共に、2つの望ましくはパターンの無い前圧縮ローラーの間を通過する。加えられる線圧は、望ましくは3-5 N/mmである。ローラーの温度尾は、50-110℃であっても良く、60-100℃が望ましい。温度がこれらの上限に近づいた場合、各層間の接着強度は増加し、布は比較的平坦になって風合いが弱くなる。しかしながら、これは後の活性化、つまり、リングローリングによりいくらか補うことができる。いずれの場合も、60-90℃及び2-3Nという前圧縮ローラーの温度及び圧力レベルが、多くの場合に最も優れており、結果として布の風合いと積層強度とのバランスが最適化される。
【0040】
既に述べたように、発明のシートを説明する際、弾性繊維は粘着性を有しており、その結果、弾性層はそれ自体の性質としてキャリア層に粘着する。
【0041】
従って、典型的には、前圧縮は各層を接合するために十分であり、層の間に接着剤を塗布することは典型的には不要である。従って、望ましい実施形態では、本発明の方法によると工程(b)の前に第1のウェブに接着剤を塗布する工程、又は、工程(b)の後に弾性層に接着剤を塗布する工程を不要としている。
【0042】
同時に、カレンダー加工のような接合工程も、キャリア層と弾性層とが性質として接着することによって不要となっている。これに対して、追加の接合工程を行ったとすると、繊維を緊密にしてしまうので、優れた弾性特性のシートを供給しようとする目的に逆行してしまう。従って、他の望ましい実施形態では、捲縮繊維からなる形成済みウェブの供給の他には、本発明の方法はカレンダー加工のような接合工程を必要としない。
【0043】
1つの実施形態では、本方法は更に、シートを機械的に活性化する工程(e)を備え、これには互いに組み合わさる環状の溝と山とを表面に有していて噛み合う一対のロールを備えた機械を用いる。このいわゆるリングロール工程(e)により、微視的な繊維構成の違いによる巨視的に交互になった領域が生じる。この領域は、平行且つ望ましくは途切れの無い縞状となっており、シートの機械方向を向いていることが好ましい。より詳しくは本発明のシートについて既に説明した通りである。布シートはここで活性化されて、特に、機械横断方向について、弾性が増す。具体的には、キャリア層の構造が部分的に崩れて緩和され、延伸性が大きく増す一方、弾性層は概ね影響されない。不織布シートをリングロール工程により活性化することは既知であり、例えば、EP 3 290 014 A1に既に開示されている。
【0044】
更に他の実施形態では、本方法は更に、シートを機械的に活性化する工程(e’)を備え、これには互いに組み合わさる横断方向(又は、ロールとの関係では軸方向)の刃を有する一対のロールを備えた機械を用いる。このようなシートの長さ方向活性化(e’)工程により、微視的な繊維構成の違いによる巨視的に交互になった領域が生じる。この領域は、平行でシートの機械横断方向に延びる縞状となっている。より詳しくは本発明のシートについて既に説明した通りである。布シートはここで活性化されて、特に、機械方向について、弾性が増す。長さ方向のリングロール工程による活性化と同様に、横断活性化によりキャリア層の構造が部分的に崩れて緩和され、延伸性が大きく増す一方、弾性層は概ね影響されない。
【0045】
スパンボンドウェブの平均的な繊維配向は自然に機械方向となるので、通常の非捲縮で且つ非弾性のスパンボンドウェブは、機械方向には比較的弾性が小さい。しかしながら、本発明に基づいて構成され且つ横断活性化されると、破断前の伸展性は、初期長さの150%、更には200%にまで達する。衛生産業において求められる伸展性は、通常は50-100%であるから、これは全く十分である。
【0046】
リングロール工程(e)又は長さ方向活性化(e’)は、工程(d)が有るならその後に行っても良く、1つの変形例では工程(d)の直後に他の工程を挟まず行う。他の実施形態では、工程(e)又は(e’)は独立した工程として、工程(a)-(b)、及び、有る場合には工程(c)及び/又は(d)が行われる場所から離れた場所で行われても良い。このことから、非活性化状態であって、相対的に高密度な材料を出荷することができる。こうすると、出荷に必要な空間を削減し、結果として出荷の費用も削減することができる。
【0047】
1つの実施形態では、活性化を布シートに対して部分的に行っても良い。例えば、リングロール工程を布シートの幅全体には行わず、布シートの一部又は幾つか特定の部分だけに行っても良い。横断刃を用いる活性化も同様であり、布シートの幅の特定の部分だけに刃が延びているのであっても良い。これにより、部分的に活性化され、、弾性の高い活性化された部分と、活性化されていない弾性の低い部分とを有する布シートが得られる。活性化部分と非活性化部分とは、機械方向に交互になって縞として構成される。このような布シートは、オムツ等の衛生製品を製造するために非常に有用であり得る。例えばその耳部分では、弾性は局所的にだけ望まれるからである。
【0048】
本発明は更に、本発明の不織布シートを衛生製品の製造に用いることに関係する。本発明の不織布シートは、例えば、赤ちゃん用オムツ又は成人用失禁対策製品の製造に用いられる。これらは特に、オープン型オムツの後耳部又はパンツ型オムツのウエストベルトのように、大きな度合いの弾性を要する部分を作るのに有用である。
【0049】
この話題において、本発明は更に、本発明の不織布シートを弾性の後耳部の材料として有するオープン型/テープ型オムツに関係する。このような利用形態では、望ましくは、布シート材料の全体に対して部分的に活性化されおり、活性化部分は後耳部の幅全体の30-90%である。
【0050】
更にまた、本発明は、本発明の不織布シートを弾性ウエストベルト材料として有する赤ちゃん用又は成人用のオムツパンツにも関係する。このような利用形態では、そのようなオムツのウエスト上部が本発明の材料を用いており、例えば幅が0.5-4.5cm、より望ましくは1-4 cmである二重層の形に折りたたまれていることが好ましい。折りたたみ部分は、断続的な部分として熱接合されているか、超音波接合されているか、又は、接着されていても良い。必要に応じて、折りたたみ部分に弾性糸を追加し、性能を向上させても良い。
【0051】
本発明の更なる細部及び利点は、図と以下に続く例とによって更に明らかになるであろう。図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図2】本発明の不織布シートを製造するための例示的な機械構成である。
【
図3】本発明の不織布シートを製造するためのもう一つの例示的な機械構成である。
【
図4】本発明の不織布シートを活性化するために構成されたリングローリング装置を断面で示す図である。
【
図6】本発明の不織布シートを長さ方向について活性化するために構成された横断刃装置を示す図である。
【
図7】後耳部を有するオープン型/テープ型オムツと、赤ちゃん用及び成人用失禁オムツの製造の例である。
【
図8】本発明の不織布シートを用いて製造されたオープン型/テープ型オムツの図である。
【
図9】本発明の不織布シートを用いて製造された成人用失禁対策製品の図である。
【
図10A】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10B】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10C】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10D】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10E】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10F】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10G】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図10H】実施例の異なる活性化が施された例の弾性ヒステリシス曲線である。
【
図11】例の1つによる活性化された例の拡大写真である。
【
図12A】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12B】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12C】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12D】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12E】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12F】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12G】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【
図12H】実施例の異なる活性化が施された例の時間に対する弾性力曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1には、サンドイッチ型の弾性不織布シートの断面が示されている。全体として符号100が付けられているシートは、弾性中間層130と、その各々の面を覆う各キャリア層110及び120を備える。両方のキャリア層110及び120は、捲縮多成分繊維からなるスパンボンドウェブであり、少なくとも一方のキャリア層、つまりキャリア層110は、カレンダー接合点の規則的パターンを有する。中間層130は、弾性繊維からなるスパンボンド不織布ウェブであり、一切のカレンダー接合点を持たない。総110、120及び130は、接着剤無しで互いに接着されている。これは、単純に中間層130の弾性繊維がそれ自体の性質として粘着性を有することによる。
【0054】
図1に示す不織布シート100を製造するための例示的な機械構成が
図2に示されている。
【0055】
構成は、形成済みキャリアウェブの第1の供給ロール20から製品ロール80まで走行するコンベヤベルト10を備える。この途中において、コンベヤベルトは、紡糸装置30、形成済みキャリアウェブの第2の供給ロール40、及び、一対の前圧縮ローラーを通過する。紡糸装置30は、熱可塑性エラストマー成分を構成する高分子原材料の貯蔵部31、混合及び供給経路32、押出金型33、冷却及び延伸経路34、及び、コンベヤベルト10の下方の空気吸引装置35を備える。
【0056】
動作の際、形成済み不織布ウェブ110は、連続的に第1の供給ロール20から解かれて、コンベヤベルト10上を紡糸装置30に向けて運ばれる。その後、紡糸装置30内において、ウェブ110上に弾性高分子繊維を堆積することにより、弾性層130が形成される。他の形成済み不織ウェブ120が同時に第2の供給ロール40から解かれ、形成されたばかりの弾性層130上に重ねられる。この後、三層の布は前圧縮ローラー70の間である程度圧縮され、得られたシート100は製品ロール80に集められる。
【0057】
図1に示す不織布シート100を製造するための他の機械構成が
図3に示されている。
【0058】
この構成では、第2の供給ロールの代わりに追加の紡糸装置60が備えられ、上側キャリア層120がその場で形成される。追加の紡糸装置60は、2成分繊維の高分子成分を構成する高分子原材料の貯蔵部61a及び61b、対応する混合及び供給経路62a及び62b、押出金型63、冷却及び延伸経路64及びコンベヤベルト10の下方の空気吸引装置65を備える。追加の一対の中間前圧縮ローラー50が、紡糸装置30と追加の紡糸装置60との間に設けられている。
【0059】
動作の際、形成済み不織布ウェブ110は、連続的に第1の供給ロール20から解かれて、コンベヤベルト10上を紡糸装置30に向けて運ばれる。その後、紡糸装置30内において、ウェブ110上に弾性高分子繊維を堆積することにより、弾性層130が形成される。その後、二層の中間布は、中間前圧縮ローラー50の間である程度圧縮される。その後、追加の紡糸装置60内において、弾性層130上に捲縮2成分繊維を堆積することにより、上側キャリア層120が形成される。この後、三層の布は前圧縮ローラー70の間である程度圧縮され、得られたシート100は製品ロール80に集められる。
【0060】
図4は、本発明の不織布シート100の活性化に用いることのできるリングローリング装置90を示し、これは、
図2及び3の構成において前圧縮ローラー70と製品ロール80との間にライン内に備えられるか、又は、離れて独立に備えられる。装置90は、一対の対向回転するローラー91及び92を備える。環状円盤93がローラー91及び92の両方の表面に装着され、環状溝、つまり円盤の間の空間と、山、つまり円盤とからなる表面構造が得られている。円盤93は、ローラー91とローラー92とでズレを有するように装着され、ローラー91又は92の円盤93は、ローラー92又は91の円盤93と組み合っている。
図4において、円盤93の幅には"a"の文字で符号が付けられ、噛み合いの深さ(the depth of engagement、“DOE”)には"b"の文字で符号が付けられ、円盤93の間隔には"c"の文字で符号が付けられている。
【0061】
図5は、動作中の
図4の装置を示す。本発明の積層シート100は、
図1に示すように構成されたものであり、
図2又は3に示す作業ラインにて製造されたものであっても良く、弾性高分子繊維からなる弾性芯及びその両側のキャリア層からなるものであるが、ローラー91及び92の間を通過することにより、連続的に機械的な活性化を受ける。この活性化の結果、シート100は、機械横断方向に全体として延伸される。より詳しくは、布100は、主にストレス領域101において延伸され、無ストレス領域102ではほとんど延伸されない。延伸により、キャリア層110及び120の微視的な繊維構成が、機械方向の縞に沿って変化する。当該縞は、円盤93の効果断面に従う。この一方で、弾性層130の微視的構成は概ね影響されないが、これは、繊維の弾性と、熱接合が成されていないこととによる。
【0062】
機械的活性化レベルの評価法として、単なる噛み合いの深さの他に、延伸ストレス因子(elongation stress factor、EFS)と呼ばれるものが以下のように定義されている。文字"a"、"b"及び"c"は上記に定義されるとおりである。
【0063】
【0064】
図6は、本発明の不織布シート100を長さ方向に活性化するための例示的な横断刃装置190を示す。これは、装置90と同様に、
図2又は3に示す構成において前圧縮ローラー70と製品ロール80との間にライン内に設けても良いし、離れて独立に設けても良い。装置190は、一対の対向回転するローラー191及び192を備え、それぞれが噛み合う横断方向刃193を備える。装置190は、シート100を活性化する機能を有し、これは、微視的な繊維構成が異なる巨視的な領域を、シートの機械横断方向に平行な縞の形で交互に導入することにより行われる。
【0065】
本発明の素材における、機械横断方向及び機械方向の両方に延伸/活性化できる能力は、他に類を見ないものである。これにより、本材料は、オープン型/テープ型オムツの後耳部、機械横断方向の延伸可能性が要求される部分、に使用できると。これと共に、赤ちゃん用及び成人用のパンツ型失禁対策製品における弾性ウエストパネル、典型的にはオムツ製造ラインの機械方向を横断するように製造されることから長さ方向の延長可能性が要求される部分、にも使用できる。
【0066】
これは、
図7に良く示される。左の図は、伝統的なオープン型/テープ型オムツの製造が展示された様子を示し、後耳部201において材料が機械横断方向に活性化されている。右の図は、パンツ型の赤ちゃん用及び成人用の失禁オムツの製造を示し、弾性ウエストパネルが機械方向に活性化されている。
【0067】
図8及び
図9は、本発明の不織材料を用いて製造されうる製品を示す。
図8は、オープン型/テープ型赤ちゃん用オムツ200を示し、これは後耳部201を有している。
図9は、パンツ型の成人用失禁対策製品300を示し、弾性化されたウエストパネル301が追加の弾性糸302を強化のために備えている。
【実施例】
【0068】
図2に示す装置構成により、弾性不織布シートが製造される。
【0069】
第1の形成済みスパンボンドキャリア層110として、重量で50/50として隣り合う構成の捲縮2成分繊維からなるスパンボンドシートが準備される。同様に、第2の形成済みスパンボンドキャリア層120として、ポリマー成分A及びBからなり、重量で50/50で隣り合う構成の2成分捲縮繊維により形成されたスパンボンドシートも準備される。ポリマー材料は、下の表1に示されている。この話題では、サビック(Sabic)社のPP511Aは、商業的に入手でき、多分散性が比較的狭い3-5であり、メルトフローレートが25 g/10 min程度のポリプロピレン材料である。サビック社のQR674Kは、商業的に入手でき、比較的広い分子量分布を有するポリプロピレン-エチレン コポリマーである。ライオンデルバセル(Lyondellbasell)社のRP3386は、商業的に入手でき、比較的狭い分子量分布を有するポリプロピレン-エチレン コポリマーである。QR674KとRP3386とを50-50にて混合すると、多分散性が5を少し越え、メルトフローレートが30 g/10 min 程度のポリプロピレン-エチレンコポリマー組成物が得られる。シート110及び120は、いずれもオープンカレンダー結合パターンを有し、その結合面積は12%であり、平方センチメートル毎に24個の円形のカレンダー結合ドットを備える。
【0070】
弾性層は、商業的に入手できる単一のTPE-o材料であるエクソンモービル(ExxonMobil)社のVistamaxx(商標)7050FLからなる。これは、プロピレン系熱可塑性エラストマーコポリマーであって、エチレン組成は13重量%程度、メルトフローレートが48 g/10 min 程度、軟化点が51℃程度である。
【0071】
他に示さない限り、分子量分布及び軟化点は生産者の示す通りであり、メルトフローレートはISO 1133に従って、230℃で且つ2.16 kgの条件にて測定した。
【0072】
【0073】
紡糸装置30における押出温度は235℃と245℃との間であり、金型は長さ1メートル毎に6000の孔を有し、孔の直径は0.6mmである。前圧縮ローラー70は60℃に設定され、且つ、線圧力は4N/mmに設定される。例2-4の不織布は、前圧縮を伴って製造されるが、他に追加のカレンダー加工は行わない。例1の不織布には追加のカレンダー加工が施され、そのカレンダーパターンは12%のオープンドットを平行に24ドットで有する。
【0074】
化粧層110及び120にて得られる繊維の径は、平均1.71デニールと測定された。芯層130にて得られる繊維の径は、平均3.71デニールと測定された。
【0075】
活性化の前に、得られた布は、種々の物理的特性について試験された。結果は下の表2に示す。
【0076】
【0077】
機械方向(MD: machine direction)及び機械横断方向(CD: cross-machine direction)についての張力(TS:Tensile Strength)及び引張伸び(TE: tensile elongation)は、WSP 100.4 に従って、前加重0.1Nで測定された。
【0078】
曲げ長さ(Bending length)は、WSP 90.5に従って測定された。
【0079】
各試料は、続いて
図4及び5に模式的に示した装置において、機械的ミリング(リングローリング)により活性化された。
【0080】
機械的活性化のための装置90の構成は、a = 0.8 mm、d (= DOE) = 変数(3-6 mm)及び c = 3.3 mmであり、結果として上記の式1に基づくEFS最大値は、DOE=6において221%であった。布1-3は、いずれもDOE=6mmの活性化に対して全く寸断されること無く耐えた。布4は、DOE=5mmの活性化に対して全く寸断されること無く耐えた。
【0081】
結果として得られた活性化布は、再び種々の物理的特性について試験された。結果は下の表3に示す。
【0082】
【0083】
ここでも、機械方向(MD)及び機械横断方向(CD)についての張力(TS)及び引張伸び(TE)は、WSP 100.4 に従って、前加重0.1Nで測定された。
【0084】
通気性は、WSP 70.1に従って、圧力差200Paで且つ20cm2の試験ヘッドを用いて測定された。
【0085】
曲げ長さは、ここでも、WSP 90.5に従って測定された。
【0086】
加えて、いわゆるマーチンデール試験(Martindale test)(WSP 20.5)を活性化試料について行った。マーチンデール試験は、素材の機械的摩耗への耐性を知ることのできる摩擦試験である。この試験は、例4-3及び4-5に対して行われた。例4-3について、レーティングは16摩擦に対して1.6であり、60摩擦に対して2.0であった。例4-4について、レーティングは16摩擦に対して1.7であり、60摩擦に対して2.0であった。レーティングは、1-5の評価であり、1が最高、5が最低である。
【0087】
発明の不織布シートの要点となる性質は、弾性性能である。例えば、シートが赤ちゃん用オムツパンツのベルト構造として使用されたとすると、オムツが引き上げられて適切な位置に合わせられたとき、シートは伸ばしすぎた状態となる。その後、赤ちゃんが動き、オムツに尿、便を出したとしても、シートはオムツの位置を適切に維持するだけの反力を示す必要がある。シートがオープン型オムツの後耳部の製造に用いられたとすると、同様に、伸ばされた後にも弾性を維持することが極めて重要である。
【0088】
活性化シートの弾性性能を評価するための試験を以下に示すが、これらは、機械横断方向に行われた。リングローリング活性化により、素材は特にこの方向に優れた弾性特性を有すると予測される。
【0089】
WSP 110.4に説明される張力試験機が、活性化シートのヒステリシス曲線を得るために用いられた。発明のシートの50 mm幅の試料が試験された。試験器のクランプ速度は上方向に200mm/分、下方向に100 mm/分に設定され、前加重張力は0.1 Nに設定された。第1サイクルでは、シートは200 % (伸び100 % に該当)まで伸ばされ、すぐに100 mm/分 の速度で緩和された。第2サイクルでは、シートは再び200 % (伸び100 % に該当)まで伸ばされた。各サイクルにおいて、弾性復元力がシートの伸びに対する関数として記録された。
【0090】
記録された物理パラメータを下の表4に示す。
【0091】
【0092】
活性化試料のヒステリシス曲線は、
図10a-10hに示されている。3つの同等の標本による3度の測定に対応する例が平均され、表4の値が得られている。
【0093】
表4のデータ及び
図10a-10hの曲線から明らかなように、例1のシート(これはカレンダー加工されたものである)は、例2-4の永久歪みと比較して高い永久歪みを示す。永久歪みは低いことが理想である。カレンダー加工された素材を活性化すると、結合によって表面層と弾性コア層の両方の繊維が局所的に固められ、局所的に弾性がほとんど得られなくなるので、材料に穴が開くことがある。
【0094】
カレンダー加工されていない最終製品と、カレンダー加工された最終製品との違いは、
図11に示す拡大図において明らかになる。左には、カレンダー加工されていない例2-6を示す。明らかに、非常に厳しい活性化条件にも関わらず、布に孔は観察されない。右には、カレンダー加工された例1-6が示されている。明らかに、この素材では活性化により孔が生じている。
【0095】
表4のデータ及び
図10a-10hの曲線から更に明らかなように、より深い活性化により優れた弾性挙動が実現する。特に、より深い活性化を行った試料では、伸びが0-100%の歪み距離にわたって、より等質で均一な力を示す。また、より深い活性化より、100%の歪みにおける最大の力が減少している。言い替えると、活性化の設定により、ある歪みレベルに必要な最大の力だけでなく、ある歪みレベルにおける力も制御できる。
【0096】
活性化シートの例1-4の性能を評価するための他の評価は、所定の時間にわたって材料がどれだけの弾性力を維持できるかの試験である。
【0097】
この評価では、ヒステリシス試験の試験試料が張力試験器のクランプに装着される。前加重0.1 Nが印加される。試料は歪み50 % まで200 mm/分の速さで引っ張られる。このレベルに達すると、力が10分間にわたって測定され、張力の低下が記録される。低下が小さいほど優れている。
【0098】
各活性化試料について得られた測定曲線は
図12a-12hに示されている。ここでも、3つの例は、3つの同等の標本による3度の測定に対応する。
【0099】
本発明の材料の更なる利点は、以下から明らかになる。
【0100】
失禁の問題を抱える多くの人が、失禁対策パンツを穿かないが、これは、現在手に入るパンツが厚すぎ、従って明らかすぎるからである。表5に、商業的に手に入る成人用失禁対策製品の弾性ウエストパネルの厚さ測定結果が纏められている。測定は全て、WSP120.6に従って行われた。
【0101】
【0102】
ウエスト部分における厚さが上記の点の考慮には最も重要であるが、これは、この部分においてオムツが最も目に付くからである。
【0103】
製品「スロッギー・ベーシック」は、現在ヨーロッパで最も売れている女性用ブリーフである。これは、綿95%、エラスタン(elastane)5%による織布から作られている。ウエスト下部における厚さは0.60mmであり、ウエスト上部における厚さは1.50mmであった。ウエスト上部において厚さが増しているのは、追加の布を重ねて高い男性性能を得た結果である。
【0104】
他の製品は、ウエスト領域に更に厚い材料を有する。「テーナ・シルエット」の弾性化されたウエスト領域は、不織布からなる2つの外側層は、1つのコア層としての弾性フィルムとの積層体に基づく。失禁対策パンツの「花王・リリーフ」は、不織布からなる外側層と、中心層としての微細弾性繊維との積層体である。失禁対策パンツの「ユニチャーム・ライフリー」は、より伝統的な構成であって、不織布からなる2つの外側層と、必要な弾性性能を得るための中央の弾性撚り糸とを備える。これら全ての製品は、緩んだ状態のウエスト部分の厚さが2mmを越えている。
【0105】
本発明の不織材料を用いると、織布を用いた女性用ブリーフ「スロッギー・ベーシック」と同等のウエストの厚さを有する製品を作ることができる。表3から明らかなように、本発明の活性化材料は、坪量に応じて0.6-0.9mm程度の厚さを有する。
図9に示す失禁対策パンツ300の例に見られるように畳んだ場合、既に上記に論じたとおり、このような材料は坪量が90gsm程度あれば、機械的な観点からは成人用失禁対策パンツに要求される弾性を十分に備え、その厚さは0.75mm程度と測定されている。
二重に畳まれた材料からなり且つ垂直寸法が1-4mm程度であるウエストベルト301は、厚さが1.50mm程度であり、織布による女性用ブリーフ「スロッギ-・ベーシック」と同程度である。これにより、製品は通常のブリーフ同様の外見スタイルを有することができる。顧客にとって、オムツ製品の厚さを通常のブリーフと同様にまで小さくできることは大きな利点である。更に弾力を得るために、弾性撚り糸302を追加で折り畳み部分に入れることができる。これは
図9にて拡大して示すとおりである。