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  • 特許-粉体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20220517BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20220517BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20220517BHJP
   C04B 18/16 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B01J20/30
B01D53/62
C02F11/13
C04B18/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022023475
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021026337
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
(72)【発明者】
【氏名】赤土 恵巳
(72)【発明者】
【氏名】八木 利之
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-008796(JP,A)
【文献】特開平05-212278(JP,A)
【文献】特開2009-279552(JP,A)
【文献】特開2010-260015(JP,A)
【文献】特開2015-150497(JP,A)
【文献】特開2002-045898(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112191090(CN,A)
【文献】国際公開第2019/115722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
B01D53/00-53/96
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
C04B18/00-18/30
C01F11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程で排出されたコンクリートスラッジを固液分離した固体部分をロータリー乾燥機に導入口から導入して撹拌及び粉粒化しつつ前記ロータリー乾燥機に二酸化炭素を含むガスを導入し、さらに前記ロータリー乾燥機に水蒸気を導入し、前記固体部分を乾燥させることで粉体を製造する
ことを特徴とする粉体の製造方法。
【請求項2】
水蒸気は、ロータリー乾燥機の中間部に導入する
ことを特徴とする請求項1記載の粉体の製造方法。
【請求項3】
水蒸気は、所定回数導入する
ことを特徴とする請求項2記載の粉体の製造方法。
【請求項4】
水蒸気は、固体部分をロータリー乾燥機に導入口から導入する際に前記導入口から導入する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の粉体の製造方法。
【請求項5】
ロータリー乾燥機に導入口から乾燥用の過熱水蒸気を導入する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートスラッジを主成分とする粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素(CO2)を吸着する技術として、アミン吸収液(アミン類)に二酸化炭素を吸収させるなどの化学吸収法、あるいは、地球の頁岩(シェール)に二酸化炭素を吹き込む二酸化炭素回収貯留(CCS(Carbon dioxide Capture and Storage))と呼ばれる技術等がある。
【0003】
これらの方法は、設備等が必要であり、大きなコストが掛かるという問題点がある。特に、アミン吸収液を用いる化学吸収法の場合、アミン吸収液が水生生物をはじめとする生態系、あるいは人の健康に与える有害性が懸念されていることから、これらに配慮した処理が必要であり、さらなるコスト増を招くこととなる。
【0004】
この点、例えば鉄筋コンクリート構造物の撤去等で発生するコンクリートがらを破砕した微粉末状モルタルを主成分とする二酸化炭素吸着材を用いて二酸化炭素を吸着する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、コンクリート二次製品製造時に排出されるコンクリートスラッジを主成分とする二酸化炭素吸着材を用いて二酸化炭素を吸着する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
これらの方法は、常温常圧での二酸化炭素の吸着が可能であるものの、これらの二酸化炭素吸着材に多く含まれる骨材系の石粉(微粉、細粒分)等は二酸化炭素の吸着に寄与しないため、二酸化炭素の吸着効能及び効率が低いという課題を有する。石粉等を除去すれば二酸化炭素の吸着効率が向上するものの、石粉等の除去は技術的に困難であり、製造コストが掛かるため、循環型素材としては難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-212278号公報
【文献】特許第2559557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、安価で、環境負荷が少なく、かつ、二酸化炭素を効率よく固定化できる二酸化炭素の固定化方法が求められている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、安価で、環境負荷が少なく、かつ、二酸化炭素を効率よく固定化できる粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の粉体の製造方法は、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程で排出されたコンクリートスラッジを固液分離した固体部分をロータリー乾燥機に導入口から導入して撹拌及び粉粒化しつつ前記ロータリー乾燥機に二酸化炭素を含むガスを導入し、さらに前記ロータリー乾燥機に水蒸気を導入し、前記固体部分を乾燥させることで粉体を製造するものである。
【0010】
請求項2記載の粉体の製造方法は、請求項1記載の粉体の製造方法において、水蒸気は、ロータリー乾燥機の中間部に導入するものである。
【0011】
請求項3記載の粉体の製造方法は、請求項2記載の粉体の製造方法において、水蒸気は、所定回数導入するものである。
【0012】
請求項4記載の粉体の製造方法は、請求項1ないし3いずれか一記載の粉体の製造方法において、水蒸気は、固体部分をロータリー乾燥機に導入口から導入する際に前記導入口から導入するものである。
【0013】
請求項5記載の粉体の製造方法は、請求項1ないし4いずれか一記載の粉体の製造方法において、ロータリー乾燥機に導入口から乾燥用の過熱水蒸気を導入するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価で、環境負荷が少なく、かつ、二酸化炭素を効率よく固定化した粉体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の粉体の製造方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0017】
本実施の形態の製造方法で製造される粉体は、二酸化炭素を固定化した二酸化炭素固定化粉体であって、かつ、二酸化炭素吸着機能を有する二酸化炭素吸着材である。この粉体は、コンクリート二次製品製造時に発生するコンクリートスラッジを原素材とする。コンクリート二次製品とは、セメント、水、細骨材、粗骨材、混和材からなるコンクリート材料を固化させた、例えばコンクリート柱、コンクリート杭等の製品をいう。特に、この粉体は、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジを原素材とする。遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジは、品質的にモルタルスラッジ、さらにはセメントペーストスラッジと同等のものである。そのため、この粉体は、粗骨材及び細骨材が除去されている。本実施の形態で製造される粉体は、粒子径0.5mm以上の骨材(石粉等)を含んでいない。
【0018】
なお、コンクリート二次製品工場で発生するコンクリートスラッジ、あるいは、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)についても、粗骨材及び細骨材を分離することで、本実施の形態により製造される粉体の原素材として使用可能である。すなわち、この粉体の原素材となるコンクリートスラッジは、いずれもフレッシュコンクリートの余剰分である。
【0019】
当該原素材は、セメント由来のカルシウム(Ca)分を豊富に含む、高アルカリ性の材料である。当該カルシウム分が二酸化炭素の吸着に有効な成分である。また、原素材には、水和反応機能が残存しており、時間経過により固結し、強度が発現して大きな塊を生成する。そのため、本実施の形態の製造方法では、原素材に対し二酸化炭素の吸着率をさらに増加させるとともに、水和反応による強度発現を低減させるために、製造時に水分を含ませる。
【0020】
また、好ましくは、この粉体は、5mm以下、または、0.5mm以下、または、10μm以下の粒体である。粉体は、細粒化されているほど、二酸化炭素の吸着機能が向上して、より早く反応し、粒が大きいほど、長期に亘り二酸化炭素の吸着機能が維持される。
【0021】
さらに、好ましくは、この粉体は、比重が0.6kg/L以上1.0kg/L以下であり、かつ、比表面積が20m2/g以上45m2/g以下である。比表面積は、例えばBET法を用いて測定される。比重や比表面積がこれらの範囲外の場合、粉体のカルシウム含有率に影響を与え、反応効率の悪化等を招く。
【0022】
この粉体は、基本的にセメントと水のみの組成であり、一例として、カルシウム20重量%以上30重量%以下、ケイ素(Si)5重量%以上10重量%以下、アルミニウム(Al)1重量%以上5重量%以下、鉄(Fe)1重量%以上5重量%以下を含有する。
【0023】
次に、一実施の形態の粉体の製造方法(二酸化炭素の固定化方法)について説明する。
【0024】
本実施の形態の製造方法で製造される粉体は、上記の通り、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程で不要物として分離排出された余剰セメントペーストであるコンクリートスラッジを原素材とする。製造工程に遠心成形工程を含むコンクリート二次製品としては、例えばコンクリート柱、コンクリート杭等が挙げられる。
【0025】
次いで、ペースト状のコンクリートスラッジを、フィルタプレス等により固液分離して脱水し、固体部分である不整形のセメントスラッジ塊すなわちセメントスラッジ変換素材を中間体Mとして得る。この中間体Mは、時間経過とともに硬化していくが、時間経過が浅い軟塑性状態でも、あるいは、硬化した状態でも、二酸化炭素を十分に吸着可能な性能を保持している。
【0026】
その後、脱水した中間体Mを細粒化しつつ乾燥する。中間体Mの乾燥には、例えば図1に示されるロータリー乾燥機1を用いる。
【0027】
ロータリー乾燥機1は、一例として、スラッジドライヤーが用いられる。ロータリー乾燥機1には、中間体Mとともに、ガス導入手段である熱風供給手段2から二酸化炭素を含む熱風が供給される。熱風供給手段2は、一例として、ボイラが用いられ、このボイラから発生する熱風の一部(排ガス)が熱風として利用される。熱風供給手段2の吸入側には、誘引ファン3が流量計4を介して接続されている。誘引ファン3は、流量調整弁5を介して大気を吸引する。また、熱風供給手段2には、液化プロパンガス(LPG)等の燃料がタンク7から消費メータ(流量計)8及びバルブ9を介して供給されるとともに、この燃料に対して、燃焼ファン10、流量計11及び流量調整弁12を介して外気が導入される。熱風供給手段2は、燃料の燃焼により内部の蓄熱部を蓄熱し、この蓄熱部に誘引ファン3からの大気を通すことで熱交換を生じさせ、昇温させた熱風を排出する。そして、熱風供給手段2の排出側には、シャットオフ弁14が接続され、熱風供給手段2が排出した熱風が、ロータリー乾燥機1の空気供給機1aへと供給される。
【0028】
ロータリー乾燥機1は、破砕撹拌機能を有する。例えば、ロータリー乾燥機1は、回転可能な函体1bと、この函体1b内で函体1bに対して回転可能な回転粉砕翼1cと、を備える。函体1bは、円筒状に形成され、中心軸周りに回転可能である。回転粉砕翼1cは、函体1bよりも高速で回転可能となっている。そして、ロータリー乾燥機1は、ホッパから函体1bの一端部の導入口に導入された中間体Mを、函体1bを緩速回転させながら回転粉砕翼1cを高速回転させることにより撹拌及び粉粒化しつつ、熱風供給手段2から供給されている熱風に含まれる二酸化炭素を中間体Mに固定化する。ロータリー乾燥機1は、中間体Mの導入から例えば60分~75分稼働される。
【0029】
好ましくは、ロータリー乾燥機1には、中間体Mによる二酸化炭素の吸着機能を高めるために、水蒸気15が導入される。水蒸気15は、中間体Mを函体1bの導入口から導入する際に、函体1bの導入口から噴入される。例えば、この水蒸気15の導入は、中間体Mの導入時にのみ行われる。
【0030】
さらに、ロータリー乾燥機1の函体1b内の中間体Mは、函体1b内で乾燥される。この乾燥には、熱風供給手段2から供給される熱風を用いてもよいし、電熱器を用いた送風などを行ってもよいが、それらに代えて、または、それらに加えて、二酸化炭素の発生がない乾燥用気体として、例えば過熱水蒸気16を函体1bの導入口から導入する。この過熱水蒸気16は、例えば800℃程度の温度である。過熱水蒸気16の導入は常時行われ、函体1b内で撹拌及び粉粒化される中間体Mを効果的に乾燥させる。
【0031】
また、ロータリー乾燥機1には、中間体Mによる二酸化炭素の吸着機能をさらに高めるために、函体1bの中間部において、函体1b内に水蒸気17が導入される。水蒸気17は、中間体を函体1bの導入口から導入した後、定期的に導入される。すなわち、水蒸気17の導入は、所定の回数行われる。例えば、中間体Mの導入から15分後~乾燥終了までの間に、1回~3回導入される。水蒸気17の導入は、所定時間毎に定期的でもよいし、任意のタイミングでもよい。好ましくは、水蒸気17は、ノズル1dから函体1b内に加圧噴射される。
【0032】
このように、コンクリートスラッジを固液分離した固体部分である中間体Mをロータリー乾燥機1に導入口から導入して撹拌及び粉粒化しつつロータリー乾燥機1に二酸化炭素を含むガスを導入し、さらにロータリー乾燥機1の中間部に水蒸気17を導入して、中間体Mを乾燥しつつ二酸化炭素を固定化する。
【0033】
この後、ロータリー乾燥機1により乾燥された乾燥物を、函体1bの他端部つまり後段に配置された集塵機または分離手段によって分離することで、複数種類の異なる粒径の粉体を得ることができる。図示される例では、ロータリー乾燥機1により乾燥された乾燥物は、ロータリー乾燥機1から直接分離される粉体である第一乾燥物C1と、第一集塵機である第一分離手段20により分離される粉体である第二乾燥物C2と、第二集塵機である第二分離手段21により分離される粉体である第三乾燥物C3と、の3種類に分離される。このように、複数の分離工程を経ることで、分離される粉体が細粒化される。
【0034】
第一分離手段20は、一例として、サイクロン分離装置が用いられる。また、第二分離手段21は、第一分離手段20よりも小さい粒径の乾燥物を分離する。第二分離手段21は、一例として、バグフィルタが用いられる。
【0035】
第一分離手段20は、ロータリー乾燥機1の排出側に接続される。ロータリー乾燥機1の排出側には、シャットオフ弁22が接続される。また、第一分離手段20には、吸入側と排出側との間に亘り、流量計23が接続される。第一分離手段20の排出側と第二分離手段21の吸入側との間には、流量調整弁24が接続される。そして、第二分離手段21の排出側には、排気ファン25が接続される。この排気ファン25の排気により、ロータリー乾燥機1から排出される排気中に含まれる乾燥物が第一分離手段20及び第二分離手段21へと順次誘引される。
【0036】
したがって、ロータリー乾燥機1から直接分離される第一乾燥物C1は、粒径が最も大きく、例えば5mm以下であり、第一分離手段20で分離される第二乾燥物C2は、第一乾燥物C1よりも粒径が小さく、例えば0.5mm以下であり、さらに第二分離手段21で分離される第三乾燥物C3は、粒径が最も小さく、例えば10μm以下である。
【0037】
このように、ロータリー乾燥機1を用いることで、前記の不整形のコンクリートスラッジである原素材を固液分離した中間体Mを、破砕機などにより予め破砕することなく、そのまま投入し乾燥できる。ロータリー乾燥機1にて乾燥された第一乾燥物C1の粒径は5mm以下であり、さらに破砕する設備が不要となる。さらに、ロータリー乾燥機1の後段に設置された第一分離手段20としてサイクロン分離装置を用いた場合、第二乾燥物C2の粒径を0.5mm以下、例えば60μm~20μmにすることができ、第二分離手段21としてバグフィルタを用いた場合、第三乾燥物C3の粒径を10μm以下にすることができる。
【0038】
そして、これら乾燥物C1~C3は、それぞれ必要に応じて加水され、含水比が調整されることで、製品として製造される。
【0039】
このように製造された粉体は、安価で、環境負荷が少なく、かつ、二酸化炭素が効率よく固定化されている。つまり、ロータリー乾燥機1で中間体Mを破砕撹拌しながら乾燥させる際に、ロータリー乾燥機1に水蒸気15,17を導入することで、中間体Mが有する二酸化炭素吸着機能を積極的に発揮させて二酸化炭素の吸着率を向上し、短時間で多くの二酸化炭素を吸着させることが可能になる。
【0040】
また、水蒸気17をロータリー乾燥機1の中間部に導入することで、二酸化炭素の吸着率をより向上させることが可能になる。
【0041】
このとき、水蒸気17を所定回数導入することで、二酸化炭素の吸着率をより向上させることが可能になる。
【0042】
さらに、中間体Mをロータリー乾燥機1に導入口から導入する際に、水蒸気15を導入口から導入することで、二酸化炭素の吸着率をより向上させることが可能になる。
【0043】
例えば、本実施の形態の製造方法で製造された粉体は、水蒸気を導入することなく製造した粉体と比較して、二酸化炭素の吸着率が約10%程度向上しており、当該粉体の二酸化炭素の吸着率は、当該粉体の重量に対して10wt%以上25wt%以下である。
【0044】
また、ロータリー乾燥機1に導入口から乾燥用の過熱水蒸気を導入することで、二酸化炭素を新たに発生させることなく中間体Mを乾燥させることができる。
【0045】
さらに、コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程で排出されたコンクリートスラッジを分離、脱水、乾燥、細粒化し、含水比を調整して粉体を製造するので、粒子径0.5mm以上の骨材を含まない粉体を容易に製造できる。また、例えば一般的な廃コンクリートは、通常発生する廃コンクリート(粒径300mm以下程度)をさらに細かく(粒径40mm以下程度に)破砕しなければ、効率よく二酸化炭素を吸着できないのに対し、本実施の形態の粉体は、コンクリートスラッジの固液分離後の固体部分を用いるため、上記のような製造工程で粒径を容易に変えることができ、より低コストで製造できる。
【0046】
そして、この粉体は、ロータリー乾燥機1によって基本的に表面のみに二酸化炭素が吸着されており、その内部においてさらなる二酸化炭素吸着機能を備え、時間経過とともに二酸化炭素を吸着する機能、つまり緩速的な二酸化炭素吸着機能を発揮する。つまり、この粉体は、常温常圧下で大気中程度の濃度の二酸化炭素を吸着するDAC(Direct Air Capture)機能を有する。すなわち、本実施の形態の粉体は、単に野外に曝露するだけでも二酸化炭素の吸着が可能である。しかも、DAC機能は、粉体の製造直後から発揮される。
【0047】
好ましくは、この粉体は、工場の燃焼排ガスを接触させて、この燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を吸着、固定化する。工場としては、例えば石炭火力発電所等が対象として挙げられる。また、工場の燃焼排ガスとしては、二酸化炭素を含む任意のものでよいが、例えば二酸化炭素以外にも窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)分等も含む燃焼生排ガスが用いられる。この粉体は、このような燃焼生排ガスに対しても、簡単な装置フローにて効果的に二酸化炭素を吸着できる。
【0048】
しかも、本実施の形態により製造される粉体は、長期に亘り二酸化炭素の吸着機能を維持できる。二酸化炭素の吸着機能は、微細粉(粒径1μm以上30μm以下)であれば、より早く二酸化炭素を吸着でき、粒状(粒径5mm以上20mm以下)であれば、より長期に亘り緩速的に二酸化炭素を吸着できる。
【0049】
例えば、本実施の形態により製造される粉体は、山岳トンネル及びシールドトンネルの裏込め注入剤の主材、コンクリート混練り時の混和材、あるいは土壌改良剤としての脱水及び硬化助材、中和剤等、様々なものに適用でき、使い勝手が良好である。
【0050】
したがって、従来産業廃棄物として廃棄されてきて年間300万トン以上の排出があるコンクリートスラッジを有効利用して粉体を製造できるだけでなく、二酸化炭素に起因する地球温暖化対策にも有効であるとともに、二酸化炭素を回収し有効利用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)に好適に用いることができる。
【0051】
また、二酸化炭素を吸着した粉体は、炭酸カルシウムを含んでおり、調湿剤等の建材としての再利用が見込まれ、カーボンリサイクルの実現が可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1 ロータリー乾燥機
15,17 水蒸気
16 過熱水蒸気
M 固体部分である中間体
【要約】
【課題】安価で、環境負荷が少なく、かつ、二酸化炭素を効率よく固定化できる粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート二次製品製造時の遠心成形工程で排出されたコンクリートスラッジを固液分離した固体部分である中間体Mをロータリー乾燥機1に導入口から導入して撹拌及び粉粒化しつつロータリー乾燥機1に二酸化炭素を含むガスを導入し、さらにロータリー乾燥機1に水蒸気15,17を導入し、中間体Mを乾燥させることで粉体を製造する。
【選択図】図1
図1