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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】積層体からの基材の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20220518BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220518BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C09J5/00
C09J201/00
C08J11/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021194258
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 弘武
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古野 寛之
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-193368(JP,A)
【文献】特開2021-075692(JP,A)
【文献】特開2000-169801(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066652(WO,A1)
【文献】特開2003-225962(JP,A)
【文献】特開2001-131484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08J 11/16
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)または(ii)の積層体から基材(1)を分離回収する方法であって、
(i)と(ii)および/または(iii)とを同時に、または(ii)のみを塩基性水
溶液に浸漬させる工程を含み、
粘着剤層が、粘着剤組成物から形成されており、粘着剤組成物100質量%中に、アルカ
リ可溶性かつガラス転移温度が-70℃~50℃であり、さらに70℃における貯蔵弾性
率が1.0×10~1.0×10Paである樹脂成分(A)を5~45質量%含有
する、
基材(1)の分離回収方法。
(i)基材(1)と印刷層を有する積層体。
(ii)(i)と、基材(2)と粘着剤層からなる粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
(iii)基材(3)と粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
【請求項2】
前記樹脂成分(A)の酸価が20~150mgKOH/gであることを特徴とする、請
求項1記載の基材(1)の分離回収方法。
【請求項3】
前記樹脂成分(A)の数平均分子量が2,000~100,000であることを特徴と
する、請求項1または2記載の基材(1)の分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体からの基材の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類などの海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
【0003】
上記プラスチック製品としてはプラスチック基材を使用した食品包装パッケージなどが主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル基材(PET)、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(OPP)、およびそれらの金属蒸着基材など、種々のプラスチック基材が使用されている。これらはグラビアインキ、フレキソインキその他の印刷インキにより印刷層が施され、更に接着剤等を介して熱溶融樹脂基材と貼り合わされ(ラミネート)積層体としたのちに、当該積層体をカットして熱融着されてパッケージとなる。パッケージ形態としては印刷層がパッケージ最外層となる形態(表刷りという)および印刷層が基材同士の中間層として存在する形態(ラミネートまたは裏刷りという)がある。
【0004】
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては上記パッケージにおいて(1)プラスチック基材を紙に代替する、(2)プラスチック基材を同種のみの使用に限定して(モノマテリアル化という)リサイクルを簡易化する、(3)不純物を除去してプラスチックをリサイクルする、などが挙げられる。
【0005】
上記(1)では紙を原料とすれば安全性・リサイクル性の面で有望であるが、プラスチック基材と比べてガスバリア性や耐水性が劣るため問題となる。紙用のコーティング剤など検討がされているものの、実用に向けてはハードルが高い。上記(2)ではプラスチック基材を、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン基材のみでパッケージを構成し、基材をリサイクルする試みである。しかし、そもそも耐レトルト適性や遮光性など高機能を要求される使用形態では当該ポリオレフィン基材ではその性能が得られないという問題がある。そのため、リサイクルの効率およびパッケージの性能を総合的に鑑みたうえで上記(3)についての技術開発がおこなわれている。
【0006】
上記(3)としては、プラスチック基材のリサイクル過程において不純物となる、印刷層や接着剤層をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。例えば、特許文献1では、プラスチック基材上にアクリル系樹脂やスチレンマレイン酸系樹脂からなる下塗り層を設け、下塗り層上に配置された表刷り印刷層を、アルカリ水により除去する技術が開示されている。
【0007】
特許文献2では、反応性接着剤層、インキ層、プライマー層の少なくとも一つの層が酸性基を有する化合物を含有させることで、反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムから、印刷層および接着剤層を剥離させて、基材を分離回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-131484号公報
【文献】国際公開2020/066652号
【0009】
しかしながら、これらの技術では、脱離した印刷層の再付着によってフィルム基材を着色してしまい、黒色や灰色のような濃色のプラスチック原料を得ることしかできないという課題があった。特に、PPやPEのようなポリオレフィンの基材はいったん着色すると透明な樹脂として取り出すことが困難であるため、着色していないポリオレフィン基材をマテリアルリサイクルすることが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、リサイクル過程において印刷層を有する積層体より脱離した印刷層の再付着によるフィルム基材の着色を抑制し、リサイクルに適した基材を得ることが可能な、積層体からの基材の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(i)または(ii)の積層体から基材(1)を分離回収する方法であって、(i)と(ii)および/または(iii)とを同時に、または(ii)のみを塩基性水溶液に浸漬させる工程を含み、
粘着剤層が、粘着剤組成物から形成されており、粘着剤組成物100質量%中に、アルカリ可溶性かつガラス転移温度が-70℃~50℃であり、さらに70℃における貯蔵弾性率が1.0×10~1.0×10Paである樹脂成分(A)を5~100質量%含有する、
基材(1)の分離回収方法に関する。
(i)基材(1)と印刷層を有する積層体。
(ii)(i)と、基材(2)と粘着剤層からなる粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
(iii)基材(3)と粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
【0012】
前記樹脂成分(A)の酸価が20~150mgKOH/gであることを特徴とする、上記記載の基材(1)の分離回収方法に関する。
【0013】
前記樹脂成分(A)の数平均分子量が2,000~100,000であることを特徴とする、上記記載の基材(1)の分離回収方法に関する。
【0014】
前記樹脂成分(A)の含有量が、粘着剤組成物100質量%中5~50質量%であることを特徴とする、上記記載の基材(1)の分離回収方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リサイクル過程において印刷層を有する積層体より脱離した印刷層の再付着によるフィルム基材の着色を抑制し、リサイクルに適した基材を得ることが可能な、基材の分離回収方法を提供することができる。粘着ラベル中に含まれる、インキ層やプライマー層、接着剤層には積極的に使用されない低Tg・高酸価の樹脂成分が、塩基性水溶液中に分散することで、PE、PP等の低極性であるオレフィン基材に吸着し、基材上に保護層を形成して、印刷層の再付着による基材の着色を防ぐことができたと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書の、ガラス転移温度はFOXの式により算出した値であり、貯蔵弾性率は粘弾性測定装置を用いて測定した値である。詳細は実施例に記載する。
【0017】
また、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。また、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル」と「メタクリル酸アルキルエステル」の総称を指す。
【0018】
≪積層体≫
本発明における積層体は、基材(1)と印刷層を有する積層体(i)、基材(2)と粘着剤層からなる粘着ラベルと積層体(i)とを貼り合わせた積層体(ii)、および基材(2)と粘着剤層からなる粘着ラベルと基材(3)を貼り合わせた積層体(iii)を含む。粘着ラベルは、積層体(i)または基材(3)の全面に貼り付けてもよく、あるいは一部に貼り付けてもよい。粘着ラベルの貼り付け方法としては、手張りでもよく、ラベラーを用いてもよい。
【0019】
<積層体(i)>
積層体(i)は、基材(1)と印刷層を有する。前記積層体(i)の構成としては、基材(1)/印刷層のような、印刷層がパッケージ最外層となる(表刷り)構成、基材(1)/印刷層/基材(1’)のような、印刷層が基材同士の中間層として存在する形態(裏刷り)構成が挙げられる。また、基材(1)と印刷層との間に、基材(1)を脱離させるためのプライマー層を設けることができる。なお、基材のリサイクルに支障のない範囲で、基材(1)および/または基材(1’)の外側(印刷層、プライマー層とは反対側)に層があってもよい。
積層体(i)は、印刷層、もしくは基材(1)と印刷層との間に設けられたプライマー層が、塩基性水溶液に浸漬することで溶解または膨潤し、基材(1)から剥離して、基材(1)を分離・回収することが可能である。
【0020】
[基材(1)]
基材(1)は、積層体(i)に一般的に用いられるフィルム状又はシート状のプラスチック基材、金属箔等のガスバリア基材、紙等が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。
プラスチック基材としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
【0021】
より詳細には、ポリエチレン(PE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体;等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムの厚さは、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~100μm、さらに好ましくは10~50μmである。
【0022】
ガスバリア基材は、例えば、アルミニウム箔;アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機蒸着層を有するプラスチック基材;ポリビニルアルコール等の有機層を有するプラスチック基材;等が挙げられる。アルミニウム箔の場合は、経済的な面から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。無機蒸着層を有するプラスチック基材の市販品としては、例えば、プラスチック基材上に、アルミナ等の無機蒸着層が積層された、「GL FILM」(凸版印刷社製)や、IB-FILM(大日本印刷社製)等が挙げられる。なお、アルミニウムやアルミナは、塩基性水溶液への溶解性を有するため、後述の分離回収方法において溶解し、プラスチック基材のみをリサイクルすることが可能である。
【0023】
リサイクル基材として再利用する観点から、基材(1)は、ポリエチレン、二軸延伸ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂フィルムを含むことが好ましい。
【0024】
基材(1)が積層体である場合、基材同士は接着剤層を介して積層されていることが好ましい。該接着剤層の形成方法は制限されず、公知の接着剤を用いて公知の方法で形成することができる。
基材(1)は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤を含有してもよく、基材表面が、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0025】
[印刷層]
印刷層は、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者または販売者の表示等を目的とした、任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、基材(1)またはプライマー層の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、顔料や染料を含む印刷インキを用いて形成してもよく、その形成方法は特に限定されない。印刷層は、単層あるいは複数の層から形成されていてもよい。
印刷層の厚さは、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは1~5μmである。
【0026】
印刷層を形成するためのインキとしては、例えば、顔料、バインダー、溶剤または水等の媒体を含む印刷インキが挙げられる。上記バインダーとしては、例えば、ニトロセルロース系、セルロースアセテート・プロピオネート等の繊維素材、塩素化ポリプロピレン系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系およびアクリルウレタン系、ポリアミド系、ポリブチラール系、環化ゴム系、塩化ゴム系あるいはそれらを適宜併用したバインダーを用いることができる。
中でも、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、これらの樹脂は、ガラス転移温度が50℃を超えている、または70℃における貯蔵弾性率が1.0×10Paを超えていることがより好ましい。ガラス転移温度、もしくは貯蔵弾性率が前記範囲であることで、塗膜の耐久性や耐ブロッキング性が良好となる。
【0027】
また、基材(1)と印刷層との間にプライマー層を設けない場合、印刷層は、基材(1)から脱離するために、酸性基を有する化合物を含有することが好ましい。酸性基を有する化合物としては、樹脂であっても、低分子化合物であってもよく、従来公知の酸性基を有する化合物から選択することができ、単独または2種以上併用してもよい。
酸性基を有する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性アクリル樹脂等のロジン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂あるいは塩化ビニル-アクリル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらを単独あるいは複数を同時に含むことができる。
中でも、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、これらの樹脂は、ガラス転移温度が50℃を超えている、または70℃における貯蔵弾性率が1.0×10Paを超えていることがより好ましい。ガラス転移温度、もしくは貯蔵弾性率が前記範囲であることで、塗膜の耐久性や耐ブロッキング性、基材(1)からの脱離性が良好となる。
【0028】
酸性基を有する低分子化合物は、常温で成膜性がある樹脂(酸性基を有する樹脂であっても、酸性基のない樹脂であっても良い)に添加することができる。
【0029】
酸性基を有する低分子化合物としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、オキソカルボン酸、カルボン酸誘導体、酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは複数を同時に含むことができる。
【0030】
飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などが挙げられ、不飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸などが挙げられ、ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などが挙げられ、芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸などが挙げられ、ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられ、トリカルボン酸としてはアコニット酸などが挙げられ、オキソカルボン酸としては、ピルビン酸、オキサロ酢酸などが挙げられ、カルボン酸誘導体としては、アミノ酸、ニトロカルボン酸が挙げられ、酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられ、これらを単独あるいは複数を同時に含むことができる
【0031】
基材(1)と印刷層との間にプライマー層を設けない場合、印刷層をベタ塗りする、又は複数の印刷層を重ね刷りして、積層体(i)の印刷層以外の層が基材(1)以外の層と接触しないようにすることで、基材(1)から印刷層を脱離させることができる。
【0032】
印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。印刷インキを塗工したものを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
【0033】
[プライマー層]
積層体(i)は、基材(1)と印刷層との間に、プライマー層を設けることができる。プライマー層は、基材(1)を脱離させるための層であり、酸性基を有する化合物を含有することが好ましい。酸性基を有する化合物としては、印刷層に例示したものを用いることができる。酸性基を有する化合物は単独または2種以上併用してもよい。
【0034】
酸性基を有する化合物はバインダー樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは15~400mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~300mgKOH/gである。5mgKOH/g以上であると塩基性水溶液による脱離性が良好となるため好ましく、400mgKOH/g以下であると、基材密着性や耐レトルト性が良好となるため好ましい。また、塩基性水溶液に対して分解しやすいエステル構造を有する樹脂を含むことも好ましい。あるいは、塩基性水溶液に対して膨潤しやすい樹脂を含むことも好ましい。
また、上記バインダー樹脂はさらに水酸基を有していることが好ましい。バインダー樹脂の水酸基価は、好ましくは1~250mgKOH/gであり、より好ましくは10~45mgKOH/gである。1mgKOH/g以上であると、塩基性水溶液による脱離性が良好となるため好ましく、250mgKOH/g以下であると、基材密着性が良好となるため好ましい。
【0035】
前記バインダー樹脂は、プライマー層を構成する樹脂成分総量のうち60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上含有することが好ましい。
バインダー樹脂の樹脂骨格としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂あるいは塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂等の塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸、及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を含んでもよい。
中でも、プライマー層は、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂及びスチレン-マレイン酸共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、これらの樹脂は、ガラス転移温度が50℃を超えている、もしくは70℃における貯蔵弾性率が1.0×10Paを超えていることがより好ましい。ガラス転移温度、または貯蔵弾性率が前記範囲であることで、耐ブロッキング性や基材(1)からの脱離性が良好となる。
【0036】
プライマー層は、さらに酸性基を有する樹脂以外のその他樹脂を含有してもよい。
その他樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂あるいは塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂等の塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、プライマー層は、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチレン-マレイン酸共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくも1種の樹脂を含むことが好ましい。また、これらの樹脂は、ガラス転移温度が50℃を超えているとより好ましい。
【0037】
酸性基を有する樹脂と、該その他樹脂との質量比(酸性基を有する樹脂:その他樹脂)は、好ましくは95:5~50:50である。上記範囲内であると、塩基性水溶液中において、プライマー層と共に印刷層が剥離した際に、印刷層が薄膜の状態で剥離され、回収が容易となるため好ましい。
【0038】
プライマー層は、被膜強度向上、光学的性質の改善、及びプライマー組成物の流動性向上の観点から、体質顔料を含有することが好ましい。
体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。中でも好ましくはシリカであり、より好ましくは親水性シリカである。
体質顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μmであり、より好ましくは1~8μmである。体質顔料の含有量は、プライマー層中に0.5~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%である。平均粒子径及び体質顔料の含有量が、上記範囲内であると、印刷層の濡れ性が向上し画質が向上するため好ましい。
【0039】
プライマー層はさらにイソシアネート系硬化剤を含有しても良い。プライマー層に架橋構造が導入されることにより、プライマー層上に形成される印刷層の浸透や滲みが抑制され、優れた画質を示すことが可能となる。
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0040】
硬化剤の含有量は、組成物中の固形分総量に対して、好ましくは0.1~15質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%であり、さらに好ましくは1~7質量%である。上記範囲内であると、プライマー層上に形成される印刷層の浸透や滲みが抑制され、優れた画質を発揮するため好ましい。
【0041】
[基材(1’)]
基材(1’)は、例えば、上述の基材(1)で挙げた基材、又は、シーラント基材が挙げられ、これらが積層された積層体であってもよい。基材(1’)として好ましくはシーラント基材であり、ポリオレフィンを含むものである。基材(1’)は、シリカ、アルミナ等の蒸着膜を有していてもよい。
【0042】
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
【0043】
リサイクル性の観点から、基材(1’)は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレン等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
【0044】
基材(1’)の厚みは特に限定されず、加工性又はヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは20~70μmである。基材(1’)に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や積層体(i)の引き裂き性を付与することができる。
【0045】
基材(1’)を積層する方法は特に限定されず、例えば、基材(1)、プライマー層及び印刷層を有する積層体(i)の印刷面と、基材(1’)とを、ラミネート接着剤を用いて貼り合わせる方法等が挙げられる。ラミネート接着剤としては、ポリオールとポリイソシアネートからなる2液硬化型が好適に用いられる。印刷層と、基材(1’)の間には、接着剤層などのそれ以外の層が存在してもよい。
接着剤層は酸性基を有する化合物を含有することが好ましい。酸性基を有する化合物を含有することで、接着剤層が基材(1’)より脱離し、基材(1’)についても分離・回収することができる。酸性基を有する化合物としては、印刷層に例示したものを用いることができる。酸性基を有する化合物は単独または2種以上併用してもよい。また、接着剤自体が酸性基を有していてもよい。
接着剤層の酸価は、特に限定はないが5~200mgKOH/gであることが好ましい。
【0046】
<積層体(ii)>
積層体(ii)は、基材(2)と粘着剤層からなる粘着ラベルと積層体(i)とを貼り合わせた積層体である。積層体(i)が表刷り構成である場合、粘着ラベルは、典型的には印刷層側に貼り付けられる。また、粘着ラベルと印刷層または基材(1)との間に別の層があってもよい。
積層体(i)が裏刷り構成である場合、粘着ラベルは、典型的には印刷層とは反対側の基材(1)上に貼り付けられる。粘着ラベルと基材(1)との間には別の層があってもよい。
【0047】
≪粘着剤組成物≫
粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、アルカリ可溶性である樹脂成分(A)を含有する。本発明の樹脂成分(A)は、塩基性水溶液に浸漬する工程において、塩基性水溶液中に溶解し、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制する。また、粘着剤組成物は、より良好な粘着性を確保するために、非アルカリ可溶性であるその他樹脂成分(B)を混合してもよい。
【0048】
[樹脂成分(A)]
樹脂成分(A)はアルカリ可溶性であり、粘着剤組成物100質量%中に5~100質量%含有される。前記範囲であることで、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制し、かつ、粘着剤組成物にアルカリ剥離性を付与することが可能である。
また、樹脂成分(A)の含有量を50質量%以下とすることで、粘着剤組成物中に含まれる非アルカリ可溶性成分を、印刷層等と共に効率的に回収することが可能となる。粘着剤組成物100質量%中の樹脂成分(A)の含有量は、より好ましくは5~50質量%であり、さらに好ましくは10~40質量%である。
【0049】
樹脂成分(A)が粘着剤組成物100質量%中に、50質量%を超えて含まれる場合には、粘着剤の凝集力を確保するために、金属キレート系化合物を架橋剤として含むことが好ましい。前記金属キレート系化合物は、塩基性水溶液中で架橋が外れるため、樹脂成分(A)のアルカリ可溶性を損ねることなく、良好な凝集力を付与することが可能である。
【0050】
金属キレート系化合物としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0051】
前記架橋剤は、粘着剤組成物100質量部に対して、0.1~10質量部使用することが好ましく、1~8質量部がより好ましい。前記範囲とすることで、粘着力と凝集力を両立することができる。
【0052】
[ガラス転移温度]
樹脂成分(A)のガラス転移温度は-70~50℃である。ガラス転移温度を前記範囲とすることで、良好な粘着力およびアルカリ剥離性を確保しつつ、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制することができる。より好ましくは-70℃~35℃であり、さらに好ましくは-70℃~-20℃である。
なお、ガラス転移温度は、FOXの式を用いて算出した。詳細は実施例の欄に記載する。
【0053】
[貯蔵弾性率]
樹脂成分(A)の70℃における貯蔵弾性率は1.0×10~1.0×10Paである。貯蔵弾性率が前記範囲にあることで、良好な粘着力および凝集力を両立することができる。また、70℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であることで、凝集力が高くなりすぎることを防止し、良好なアルカリ剥離性を確保することが可能となり、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制することができる。より好ましくは5.0×10~5.0×10Paである。
なお、貯蔵弾性率は粘弾性測定装置を用いて測定した値である。詳細は実施例の欄に記載する。
【0054】
[数平均分子量]
樹脂成分(A)の数平均分子量は、2,000~100,000が好ましい。数平均分子量を2,000以上とすることで脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制しやすくなり、100,000以下とすることでアルカリ剥離性を確保しやすくなる。3,000~80,000がより好ましく、3,000~50,000がさらに好ましい。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。詳細は実施例の欄に記載する。
【0055】
[酸価]
樹脂成分(A)の酸価は、好ましくは20~150mgKOH/gであり、より好ましくは30~120mgKOH/gである。酸価を20mgKOH/g以上とすることでアルカリ剥離性を確保しやすくなり、150mgKOH/g以下とすることで、オレフィン基材への吸着性が向上し、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制しやすくなる。
なお、酸価は、JISK0070に記載の方法に従って測定した。
【0056】
[アルカリ可溶性]
樹脂成分(A)はアルカリ可溶性である。本発明におけるアルカリ可溶性とは、樹脂成分をアルカリ水溶液と混合した水溶液の透過率が、80%以上であることを意味する。具体的な評価方法を説明する。70℃の2質量%濃度のNaOH水溶液100gに対して、樹脂成分(A)を固形分で3g添加し、5分間撹拌した後、水溶液の温度を70℃に保ったまま1日放置する。1日経過した水溶液の透過率を測定し、透過率が80%以上である場合には、樹脂成分(A)はアルカリ可溶性であると判断する。
透過率は濁度計を用いて測定する。詳細は実施例の欄に記載する。
【0057】
樹脂成分(A)はアルカリ可溶性を確保するため、酸性基を有する樹脂を含有することが好ましい。酸性基を有する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム樹脂等を用いることができる。酸性基を有する樹脂は単独または2種以上併用してもよい。中でも、アルカリ可溶性と粘着性を両立できる、かつ、塩基性水溶液中でも分解し難い点で、カルボキシル基含有重合性モノマーを共重合させた(メタ)アクリル樹脂(a)を含むことが好ましい。
【0058】
[(メタ)アクリル樹脂(a)]
(メタ)アクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有重合性モノマーを含む重合性モノマー混合物を重合して得られる共重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、またはミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレートなどが挙げられる。
これらは単独または2種類以上併用することができる。中でも、良好な粘着物性が得やすく、数平均分子量が調節しやすいことから、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを含むことが好ましい。
【0059】
カルボキシル基含有重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸カルボキシエチル、メタクリル酸カルボキシエチル、マレイン酸、フマル酸、またはイタコン酸などが挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0060】
また、(メタ)アクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基を有する重合性モノマーと共重合が可能なその他重合性モノマーを用いることができる。その他重合性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ならびにポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等のアミド基含有重合性モノマー;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有重合性モノマー;ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等の芳香族基含有重合性モノマー;が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは単独または2種類以上併用することができる。
【0061】
上記に例示したその他重合性モノマーの中でも、水への分散性向上の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドを用いることが好ましい。
【0062】
また、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン等のスチレン系モノマーについても、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。これらは単独または2種類以上併用することができる。
【0063】
[(メタ)アクリル樹脂(a)の製造方法]
(メタ)アクリル樹脂(a)の製造方法としては、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の重合方法を用いることができる。中でも、環境負荷低減の観点から、乳化重合法を用いることが好ましい。
乳化重合法では、前記重合性モノマー混合物を乳化剤により水中に分散して乳化物とし、これに重合開始剤を添加して重合することで、(メタ)アクリル樹脂(a)を含むエマルジョン(乳化重合物)が得られる。乳化重合物を得る方法としては、前記乳化物の全量を予め反応容器中に仕込んでから反応する方法、または前記乳化物の一部を反応容器中に仕込んで、前記乳化物の残分を数回に分けて添加または連続滴下する方法等公知の方法を使用することができる。
【0064】
[乳化剤]
乳化重合で使用する乳化剤は、アニオン性乳化剤およびノニオン性乳化剤から適宜選択することが好ましい。また、乳化剤はラジカル重合性の官能基を有する反応性乳化剤であってもよいし、ラジカル重合性の官能基を有さない非反応性乳化剤であってもよく、両者を併用することもできる。
乳化剤の中で、反応性乳化剤は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有するアニオン性の乳化剤である。例えば、スルホコハク酸エステル系乳化剤、アルキルフェノールエーテル系乳化剤等が挙げられる。
【0065】
非反応性アニオン性乳化剤は、例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0066】
非反応性ノニオン性乳化剤は、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類; ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシ多環フェニルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。乳化剤は、単独または2種類以上使用できる。
【0067】
前記乳化剤のなかでも、良好な重合安定性が得られるため反応性または非反応性のアニオン性乳化剤を使用するのが好ましい。乳化剤は重合性モノマー混合物100質量部に対して0.5~3質量部使用することが好ましい。
【0068】
[重合開始剤]
乳化重合には重合開始剤が使用される。重合開始剤は水溶性、油溶性の何れでも良いが、油溶性開始剤を用いる際はあらかじめ水混和性溶剤に溶解させて用いることが必要であり、このような所作が不要な水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。
【0069】
水溶性重合開始剤は、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレ-ト、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕等が挙げられる。これらの中でも、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
水溶性重合開始剤は、重合性モノマー混合物100質量部に対して、0.01~1.0質量部を使用することが好ましく、0.02~0.5質量部がより好ましい。0.01~1.0質量部であることで重合反応性をより向上できる。
【0070】
さらに水溶性重合開始剤は、レドックス系重合開始剤(酸化剤と還元剤を併用する)を使用することができる。酸化剤は、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、ベンゾイルパ-オキサイド、キュメンハイドロパ-オキサイド、p-メタンハイドロパ-オキサイド等が挙げられる。また、還元剤は、例えば亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が挙げられる。これらの中でも重合反応性に優れるため、酸化剤:過硫酸カリウムまたは過硫酸ナトリウムと、還元剤:亜硫酸ナトリウムまたは酸性亜硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用することが好ましい。
レドックス系重合開始剤は、酸化剤と還元剤をそれぞれ重合性モノマー混合物100質量部に対して、0.01~1.0質量部を使用することが好ましく、0.02~0.5質量部がより好ましい。0.01~1.0質量部であることで重合反応性より向上できる。
【0071】
[連鎖移動剤]
本発明では(メタ)アクリル樹脂(a)の数平均分子量を調整するため、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤は、例えばチオール基や水酸基を有する化合物が一般に知られている。チオール基を有する化合物としては、例えばラウリルメルカプタン、2-メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、およびメルカプトコハク酸等のメルカプタン;メルカプトプロピオン酸n-ブチル、およびメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキル;、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキル等が挙げられる。また、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、t-ブチルアルコール、およびベンジルアルコール等のアルコールも挙げられる。連鎖移動剤は、単独または2種類以上併用できる。
連鎖移動剤は、重合性モノマー混合物100質量部に対して0.1~15質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。このような含有量である場合、前記のような数平均分子量に調節することが容易となる。
【0072】
また、(メタ)アクリル樹脂(a)は、乳化重合の際、必要に応じてpHを調整するため、緩衝剤を使用できる。緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
緩衝剤は、重合性モノマー混合物100質量部に対して、0.01~5質量部使用することが好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。
【0073】
[その他樹脂成分(B)]
その他樹脂成分(B)は非アルカリ可溶性であり、より良好な粘着物性の発現に寄与する。その他樹脂成分(B)としては特に限定されないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム樹脂等が挙げられる。これらは単独または2種以上併用してもよい。中でも、粘着性に優れる点で(メタ)アクリル樹脂(b)が好ましい。
【0074】
[(メタ)アクリル樹脂(b)]
(メタ)アクリル樹脂(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした、重合性モノマー混合物を重合して得られる重合体であり、(メタ)アクリル樹脂(a)を除いたアクリル樹脂である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル樹脂(a)の項に例示したものを用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独または2種類以上併用することができる。中でも、良好な粘着物性が得やすいことから、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、重合性モノマー混合物100質量%中に30~99.9質量%であることが好ましく、50~99.9質量%であることがより好ましく、70~99.9質量%であることがさらに好ましい。含有量がこの範囲にあることで、良好な粘着物性を確保することができる。
【0075】
(メタ)アクリル樹脂(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、乳化重合の際の重合安定性を確保しつつ、良好な粘着物性を確保する目的で、アルカリ可溶性とならない範囲でカルボキシル基含有重合性モノマーを含有することが好ましい。カルボキシル基含有重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル樹脂(a)の項に例示したものを用いることができる。カルボキシル基含有重合性モノマーは単独または2種類以上併用することができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸を含むことが好ましい。
カルボキシル基含有重合性モノマーの含有量は、重合性モノマー混合物100質量%中に0.1~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。含有量がこの範囲にあることで、アルカリ可溶性とならずに、乳化重合の際の重合安定性を確保しつつ、良好な粘着物性を確保することができる。
【0076】
また、(メタ)アクリル樹脂(b)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基を有する重合性モノマーと共重合が可能なその他重合性モノマーを用いることができる。その他重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル樹脂(a)の項に例示したものを用いることができる。
その他重合性モノマーは単独または2種類以上併用することができる。中でも、安定性向上の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドを用いることが好ましい。
【0077】
また、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン等のスチレン系モノマーについても、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。これらは単独または2種類以上併用することができる。
【0078】
(メタ)アクリル樹脂(b)の製造方法としては、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の重合方法を用いることができる。中でも、環境負荷低減の観点から、乳化重合法を用いることが好ましい。乳化重合の際に用いる乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、緩衝剤としては、(メタ)アクリル樹脂(a)の項にて例示したものと同じものを用いることができる。
【0079】
[非アルカリ可溶性]
その他樹脂成分(B)は非アルカリ可溶性である。本発明における非アルカリ可溶性とは、樹脂成分をアルカリ水溶液と混合した水溶液の透過率が、80%未満であることを意味する。具体的には、70℃の2質量%濃度NaOH水溶液100gに対して、その他樹脂成分(B)を固形分で3g添加し、5分間撹拌した後、水溶液の温度を70℃に保ったまま1日放置する。1日経過した水溶液の透過率を測定し、透過率が80%未満である場合には、樹脂成分(B)は非アルカリ可溶性であると判断する。
透過率は濁度計を用いて測定する。詳細は実施例の欄に記載する。
【0080】
[粘着剤組成物の製造方法]
粘着剤組成物の製造方法としては、公知の方法を使用することができ、樹脂成分(A)とその他樹脂成分(B)を、必要により公知の中和剤で中和後、公知の方法で混合し、さらに、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤、防腐剤等の添加剤を配合する方法が用いられる。
【0081】
[その他添加剤]
また、粘着力調整のために、適当な粘着付与剤、例えば、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ポリテルペン、アセチレン樹脂、石油系炭化水素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、合成ゴム、天然ゴム等を適当量添加することができる。
さらに、可塑剤、充填剤、着色剤、シランカップリング剤なども添加しても良い。
加えて、本発明の粘着剤組成物中の各共重合体の分散粒子を粒子間架橋させるため、任意の架橋剤を配合しても良く、例えばエチレン性不飽和単量体成分としてカルボキシル基を有する単量体を用いた場合には、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、酸化亜鉛などの金属化合物が使用できる。また、水酸基を有する単量体を用いた場合は、イソシアネート化合物、チタンやジルコニウムなどのアルコキシド化合物等を用いる事ができ、カルボニル基を有する単量体を用いた場合には、アミン類、ヒドラジド化合物等を用いることができる。
【0082】
<粘着ラベル>
粘着ラベルは、基材(2)と粘着剤組成物から形成される粘着剤層からなる。
【0083】
[粘着ラベルの製造方法]
製造方法としては、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、次いで基材(2)上に粘着剤層を転写した後に剥離ライナーを剥離する方法や、基材(2)に粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0084】
[基材(2)]
基材(2)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セロハン等の樹脂材料からなるプラスチックフィルム;天然ゴム、ブチルゴム、等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム、ポリエチレン等を発泡させてなる発泡体シート;クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;綿布、スフ布等の布;セルロース系不織布、ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体を指す。これらの中でも、塩基性水溶液が浸透し、粘着剤層の剥離性に寄与するため、紙であることが好ましい。
また、このようなシート状基材の片面または両面に、下塗剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに、基材上には、商品名等の表示や装飾、美観を付与するための印刷層や、当該印刷層を保護したり、光沢などの意匠性を付与したりするためのオーバーコート層を設けてもよい。基材の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には10μm~500μm(典型的には10μm~200μm)程度である。
【0085】
[剥離ライナー]
剥離ライナー(セパレータと称されることもある。) としては、従来公知のものを特に限定なく用いることができる。例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤によって適当な基材(例えば、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等の樹脂フィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル系ポリマー等の樹脂をコートした紙)の少なくとも一方の面を処理してなる剥離ライナーを好ましく使用することができる。
【0086】
[塗工方式]
塗工の方式は、公知の手法を用いることができ、コンマコーター、リバースコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアチャンバーコーター、カーテンコーター等の各種公知のコーティング装置により、紙またはプラスチックフィルム基材、もしくは剥離性ライナー上に塗布し、乾燥されることによって、本発明の粘着シートを得ることができる。また、その際剥離ライナーなどに粘着剤組成物を塗布した後、80℃~120℃で乾燥することが好ましい。乾燥温度を80℃以上とすることで、適当な時間で粘着シートを得ることができ、120℃以下とすることで、基材または剥離性シートの熱劣化を防止することができる。
【0087】
<積層体(iii)>
積層体(iii)は、粘着ラベルと基材(3)を貼り合わせた積層体である。基材(3)としては、基材(1)や基材(1’)、基材(2)、剥離ライナーの項で例示した基材を用いることができる。基材(3)は、基材(1)と同じ基材を用いることが好ましい。
【0088】
以下に、本発明の積層体の構成の一例を挙げるが、これらに限定されない。前述のとおり、基材(1)、基材(1’)、基材(2)および基材(3)は、複数の基材が積層された積層体であってもよい。基材(1’)もリサイクルさせるためには、基材(1’)と接触する層(接着剤層など)も、酸性基を有する化合物を含む層であることが好ましい。
・基材(2)/粘着剤層/印刷層/基材(1)
・基材(2)/粘着剤層/印刷層/プライマー層/基材(1)
・基材(2)/粘着剤層/基材(1)/印刷層/接着剤層/基材(1’)
・基材(2)/粘着剤層/基材(1)/プライマー層/印刷層/接着剤層/基材(1’)
・基材(2)/粘着剤層/基材(3)
【0089】
≪基材(1)の分離回収方法≫
前記(i)または(ii)の積層体から基材(1)を分離回収する方法であって、(i)と(ii)および/または(iii)とを同時に、または(ii)のみを塩基性水溶液に浸漬させる工程を含む。この工程において、積層体中の粘着ラベルに含有される樹脂成分(A)が塩基性水溶液に溶解して基材(1)上に吸着することで保護層を形成し、印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制しているものと推定される。
【0090】
前記工程において、粘着ラベルの貼付面積は、基材の総面積に対して1~100%であることが好ましい。前記範囲であることで、脱離した印刷層の再付着による脱離基材の着色を抑制することが可能である。より好ましくは5~100%である。
【0091】
[塩基性水溶液]
塩基性水溶液に使用する塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)が好適に用いられるが、これらに限定されない。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群選ばれる少なくとも1種である。
塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~20質量%含むことが好ましく、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは3~15質量%含む。濃度が上記範囲内にあることで、塩基性水溶液は、樹脂成分(A)の溶解により積層体(i)または基材(3)から粘着ラベルを剥離させる、かつ、印刷層またはプライマー層を溶解または膨潤により剥離させて、基材(1)を脱離させるのに充分な塩基性を保持することができる。
【0092】
塩基性水溶液は、積層体の端部分から浸透して、印刷層もしくはプライマー層、または粘着剤層に接触し、溶解または膨潤することで、基材(1)と印刷層もしくはプライマー層とを分離させる、また、粘着ラベルを積層体(i)もしくは基材(3)から剥離させる。したがって、効率的に脱離工程を進めるために、積層体は、裁断または粉砕され、塩基性水溶液に浸漬する際に、断面に印刷層もしくはプライマー層、または粘着剤層がより多く露出している状態であることが好ましい。このような場合、より短時間で基材(1)を分離・回収することができる。
【0093】
積層体を浸漬する時の塩基性水溶液の温度は、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~120℃、特に好ましくは30~80℃である。塩基性水溶液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、好ましくは1分間~6時間である。塩基性水溶液の使用量は、積層体の質量に対して、好ましくは5~100,000倍量、より好ましくは10~10,000倍であり、脱離効率を向上させるために、塩基性水溶液の攪拌又は循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~5000rpm、より好ましくは80~4000rpmである。
【0094】
積層体から、印刷層もしくはプライマー層、または粘着ラベルが剥離し、基材(1)を分離・回収した後、基材(1)を水洗・乾燥する工程を経て、リサイクル基材を得ることができる。
【0095】
したがって、本発明によれば、積層体(i)と(ii)および/または(iii)とを同時に、または(ii)のみを塩基性水溶液に浸漬させる工程、積層体から印刷層もしくはプライマー層、または粘着ラベルを剥離させて基材(1)を分離する工程、基材(1)を回収する工程、基材(1)を水洗および乾燥する工程、を経ることで、基材(1)を積層体(i)より分離・回収し、リサイクル基材を得ることができる。得られたリサイクル基材は、押出機等によりペレット状に加工し、再生樹脂として再利用することができる。
【実施例
【0096】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ示すものとする。また、水、溶剤以外について、記載した配合量は不揮発分換算値である。
また、樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)のガラス転移温度、酸価、数平均分子量、透過率の測定方法は以下の通りである。
【0097】
[ガラス転移温度]
樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)のガラス転移温度は、下記のFOXの式により算出した。なお、下記の式におけるガラス転移温度の単位は絶対温度(K)である。
(数式1)
1/Tg
=w/Tg+w/Tg+w/Tg+…
(Tg:ガラス転移温度(K)、w:共重合体中の単量体1の質量分率、Tg:単量体1の単独重合体のガラス転移温度(K)、w:共重合体中の単量体2の質量分率、Tg:単量体2の単独重合体のガラス転移温度(K)、w:共重合体中の単量体3の質量分率、Tg:単量体3の単独重合体のガラス転移温度(K))
計算に用いた各単量体の単独重合体のガラス転移温度は下記の通りである。
ブチルアクリレート:-54℃
2-エチルヘキシルアクリレート:-70℃
メチルメタクリレート:105℃
アクリル酸:106℃
メタクリル酸:105℃
【0098】
[貯蔵弾性率]
樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)の70℃における貯蔵弾性率は、樹脂成分を剥離紙上で乾燥し、得られた膜を積層して厚さ1mmの試料を用意し、以下の装置ならびに測定条件により測定した。
装置:MCR302(アントンパール社製)
変形モード:ずりモード
温度範囲:-60℃~150℃
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
測定治具:パラレルプレート8mmφ
環境:N雰囲気下
【0099】
[酸価]
樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)の酸価は、以下に示すJISK0070に記載の方法に従って測定した。
樹脂成分(A)を三角フラスコに量り取り、アセトン100mLおよび指示薬としてフェノールフタレインを数滴加えて、水浴上で樹脂成分(A)が完全に溶解するまで十分に振り混ぜた。次に、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とした。そして、次式により酸価を算出した。
(数式2)
a=[b×f×5.611/s]/(不揮発分濃度/100)
(ただし、(数式2)中、a:酸価(mgKOH/g)、b:滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、f:0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(濃度補正係数)、s:樹脂成分(A)の質量(g))
【0100】
[数平均分子量]
樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)の数平均分子量は、乾燥させた樹脂成分をテトラヒドロフランに溶解させ、0.5%溶液を調製し、更にメンブレンフィルター(ADVANTEC社製13HP045AN 孔径0.45μm)で濾過処理をして、以下の装置ならびに測定条件により測定した。なお、THFに完全に溶解しない、または、溶解はするがフィルターを通らない樹脂については、十分に高分子量化しているとみなし、分子量を200万と記載した。

装置:HLC-8320-GPCシステム(東ソー社製)
カラム:TSKgel-Super Multipore HZ-M0021488 4.6 mmI.D.×15cm×3本(分子量測定範囲2千~約200万)
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
流速:0.6mL/分
試料溶液使用量:10μL
カラム温度:40℃
【0101】
[透過率]
樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)の透過率は、70℃の2%NaOH水溶液100gに樹脂成分(A)およびその他樹脂成分(B)を固形分で3g添加し、5分間撹拌して、70℃で1日放置した後の水溶液をガラスセル中に加えて測定した。測定には、濁度計(日本電飾工業社製 NDH2000)を使用した。
【0102】
(樹脂成分(A1)の製造)
ブチルアクリレート80部、メタクリル酸メチル10部、メタクリル酸10部に、連鎖移動剤としてtert-ドデシルメルカプタン1.8部を溶解した。さらに、アニオン系乳化剤としてニューコール707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩の水溶液、有効成分30%、日本乳化剤社製)6.7部、開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液5.6部をイオン交換水35部に溶解してから加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。
撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を72.5部仕込み、フラスコ内部の空気を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液2.4部を添加した。5分後、上記滴下ロートから上記乳化物を3時間かけて滴下した。
内温を80℃に保ったまま、さらに撹拌しながら80℃にて4時間熟成した後冷却し、固形分58%の樹脂成分(A1)を得た。得られた樹脂成分(A1)の透過率を前記した条件にて測定したところ、透過率は89%であった。
【0103】
(樹脂成分(A2)~(A12)、(X1)の製造)
樹脂成分(A1)の製造の材料およびその配合量(質量部)を表1に記載した通りに変更した以外は、樹脂成分(A1)の製造と同様に乳化重合を行うことでそれぞれ固形分58%の樹脂成分(A2)~(A12)、(X1)を得た。得られた樹脂成分(A2)~(A12)、(X1)の透過率を前記した条件にて測定し、表1に記載した。
(樹脂成分(X2)の製造)
RAFT法により樹脂成分(X2)を合成した。具体的には、窒素ガス導入管、撹拌機を備えた2Lフラスコに、RAFT開始剤としてBM1448を4.1部、AIBNを0.52部およびMMAを17.5部、MAAを9.5部、メチルエチルケトン溶媒50部を混合し、80℃で6時間反応させてプレポリマーを得た。H-NMRから算出したMMA、MAAの転化率はどちらも99.0%以上であった。
次いで、AIBNを0.50部、BAを146.0部、およびメチルエチルケトン溶媒150部をプレポリマー溶液全量に加え、80℃で更に12時間反応させた。1H-NMRから算出した2段目モノマーBAの転化率は99.5%以上であった。
更に、AIBNを0.15部およびMMAを17.5部、MAAを9.5部、メチルエチルケトン溶媒50部を混合し、80℃で6時間反応させた。H-NMRから算出した3段目モノマーMMA、MAAの転化率はどちらも99.5%以上であった。その後、室温まで冷却後、濾過、洗浄および乾燥によって重合体ブロック(A)の主鎖中にカルボキシル基を有する、A-B-Aトリブロック構造を有する、固形分45%のトリブロック重合体を得た。目的物の生成は、H-NMRより確認した。
得られたトリブロック重合体に、25%アンモニア水を15部、イオン交換水200部を混合し、中和・溶解させた後、減圧ストリッピングにて溶媒中のメチルエチルケトンを除去し、固形分30%の樹脂成分(X2)を得た。得られた樹脂成分(X2)の透過率を前記した条件にて測定したところ、透過率は94%であった。
【0104】
(その他樹脂成分(B1)の製造)
2-エチルヘキシルアクリレート36.5部、ブチルアクリレート63部、アクリル酸0.5部、ニューコール707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩の水溶液、有効成分30%、日本乳化剤社製)3.4部をイオン交換水10.9部に溶解してから加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。
撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオ
ン水を24.4部仕込み、フラスコ内部の空気を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を76℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液1.3部を添加した。5分後、上記滴下ロートから上記乳化物の滴下を開始し、これと並行して5%過硫酸アンモニウム水溶液3.8部を別の滴下口から3時間かけて滴下した。
内温を80℃に保ったまま、さらに撹拌しながら80℃にて4時間熟成した後冷却し、固形分58%のその他樹脂成分(B1)を得た。得られたその他樹脂成分(B1)の透過率を前記した条件にて測定したところ、透過率は8%であった。なお、(B1)がTHFに不溶であったため、数平均分子量を200万と記載した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に記載した重合性モノマーの略称は下記の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
【0107】
(粘着剤組成物(C1)の製造)
樹脂成分(A1)25部、及びその他樹脂成分(B1)75部を混合した後、消泡剤としてSNデフォーマー364(サンノプコ社製)0.3部、レベリング剤としてペレックスOT-P(花王社製)0.2部、防腐剤としてユニケムBN-202(ユニオンケミカル社製)0.05部を加え、さらに粘度調整剤としてシックナーSN618(サンノプコ社)0.4部を用いて増粘し、25%アンモニア水にてpH=7.2に調整し(堀場製作所 pHメーター D-52にて測定)、粘着剤組成物(C1)を得た。
【0108】
(粘着剤組成物(C2~C6、C9~C16、Y1~Y3)の製造)
樹脂成分(A)、その他樹脂成分(B)の配合量を表2の通りに変更した以外は、粘着剤組成物(C1)の製造と同様に粘着剤組成物(C2~C6、C9~C16、Y1~Y3)を得た。
【0109】
(粘着剤組成物(C7)の製造)
樹脂成分(A1)55部、及びその他樹脂成分(B1)45部を混合した後、架橋剤としてオルガチックスTC-300(マツモトファインケミカル社製)7.1部、消泡剤としてSNデフォーマー364(サンノプコ社製)0.3部、レベリング剤としてペレックスOT-P(花王社製)0.2部、防腐剤としてユニケムBN-202(ユニオンケミカル社製)0.05部を加え、さらに粘度調整剤としてシックナーSN618(サンノプコ社)0.4部を用いて増粘し、25%アンモニア水にてpH=7.2に調整し(堀場製作所 pHメーター D-52にて測定)、粘着剤組成物(C7)を得た。
【0110】
(粘着剤組成物(C8)の製造)
樹脂成分(A1)100部に変更した以外は、粘着剤組成物(C7)の製造と同様に粘着剤組成物(C8)を得た。
【0111】
【表2】
【0112】
(接着剤(Ad1)の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール188部、ネオペンチルグリコール316部、1,6-ヘキサンジオール179部、テレフタル酸315部、イソフタル酸315部、アジピン酸64部、セバシン酸323部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら250℃まで昇温し、エステル化反応を行った。所定量の水が留出し、酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHg以下で5時間脱グリコール反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。その後、イソホロンジイソシアネート8.5部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に無水トリメリット酸を0.4部添加し、180℃で約2時間反応させ、その後、固形分50%になるまで酢酸エチルで希釈することで、数平均分子量7,500、酸価2.2mgKOH/gの部分酸変性ポリエステルポリウレタンポリオール溶液を得た。
得られたポリエステルポリウレタンポリオール溶液100部に、ポリイソシアネート溶液(コロネート2785(東ソー社製 ヘキサンメチレンジイソシアネートから誘導されるビウレット型ポリイソシアネート)を酢酸エチルに希釈して、固形分50%、NCO%=9.6%に調整)を8部、マレイン化ロジン溶液(マルキードNo.32(荒川化学社製 酸価130mgKOH/g、固形分濃度100%品)を酢酸エチルで希釈して、固形分30%に調整)を9部配合し、酢酸エチルを加えて固形分30質量%の接着剤(Ad1)を調整した。
【0113】
(表刷り積層体H1の製造)
プライマー(BASF社製、JONCRYL 690)および印刷インキ(東洋インキ(株)製、レアルNEX 39藍 BO S3)を、酢酸エチル/イソプロパノールの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、25℃での粘度が15秒(離合社製、ザーンカップ#3)となるように希釈した。
OPP(コロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム 膜厚20μm)に対し、希釈したプライマーおよび印刷インキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、基材(1)(OPP)/プライマー層/印刷層の構成である表刷り積層体H1を得た。
【0114】
(裏刷り積層体T1の製造)
プライマー(BASF社製、JONCRYL 690)および印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファS R39藍)を、酢酸エチル/イソプロパノールの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、25℃での粘度が15秒(離合社製、ザーンカップ#3)となるように希釈した。
OPPに対し、希釈したプライマーおよび印刷インキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いてこの順で印刷し、50℃で乾燥して、基材(1)(OPP)/プライマー層/印刷層の構成である積層体を得た。
次いで、得られた積層体の印刷層上に、ドライラミネート機を用いて製造した接着剤(Ad1)を乾燥後塗布量が2g/mになるように塗布・乾燥した後、CPP(無延伸ポリプロピレンフィルム 膜厚30μm)と貼り合せて、基材(1)(OPP)/プライマー層/印刷層/接着剤層/基材(1’)(CPP)の構成である裏刷り積層体T1を得た。
【0115】
(粘着ラベル(P1)および積層体(D1)の製造)
得られた粘着剤組成物(C1)をコンマコーターで剥離紙上に乾燥塗膜量が20g/mになるように塗工し、100℃の乾燥オーブンで75秒乾燥させ、上質紙(60g/m)を貼り合わせた後、剥離紙を剥離して粘着ラベル(P1)を得た。得られた粘着ラベル(P1)の粘着剤層を、表刷り積層体H1の印刷層側に貼り合わせて、積層体(D1)を得た。
【0116】
(積層体(D2)の製造)
積層体(D1)で得られた粘着ラベル(P1)の粘着剤層を、裏刷り積層体T1の印刷層とは反対側の基材(1)上に貼り合わせて、積層体(D2)を得た。
【0117】
(積層体(D3)の製造)
積層体(D1)で得られた粘着ラベル(P1)の粘着剤層を、基材(3)(OPP)に貼り合わせて、積層体(D3)を得た。
【0118】
(粘着ラベル(P2)~(P6)、(P9)~(P16)、(PY1)、(PY2)および積層体(D4)~(D8)、(D11)~(D18)、(Z1)~(Z3)の製造)
粘着剤組成物を表3の通りに変更した以外は、積層体(C1)の製造と同様に粘着ラベル(P2)~(P6)、(P9)~(P16)、(PY1)、(PY2)を得た。
得られた粘着ラベル(P2)~(P6)、(P9)~(P16)、(PY1)、(PY2)から剥離紙を剥がし、表刷り積層体H1の印刷層側に貼り合わせて、積層体(D4)~(D8)、(D11)~(D18)、(Z1)~(Z3)を得た。
【0119】
(粘着ラベル(P7)および積層体(D9)の製造)
得られた粘着剤組成物(C7)をコンマコーターで剥離紙上に乾燥塗膜量が20g/mになるように塗工し、100℃の乾燥オーブンで75秒乾燥させ、上質紙を貼り合せた後、剥離紙を剥離して、粘着ラベル(P7)を得た。
得られた粘着ラベル(P7)の粘着剤層を、表刷り積層体H1の印刷層側に貼り合わせて、積層体(D9)を得た。
【0120】
(粘着ラベル(P8)および積層体(D10)の製造)
粘着剤組成物を表2の通りに変更した以外は、積層体(D9)の製造と同様に、粘着ラベル(P8)を得た。
得られた粘着ラベル(P8)の粘着剤層を、表刷り積層体H1の印刷層側に貼り合わせて、積層体(D10)を得た。
【0121】
【表3】
【0122】
(実施例1)
得られた積層体(D1)を長さ3cm×幅3cmの大きさに切り出したサンプル(x)30枚を2%の水酸化ナトリウム水溶液100gに浸し、70℃、500rpmで2時間撹拌した。
【0123】
[着色性]
実施例1において脱離した基材(1)を回収し、水洗、乾燥した後、得られた基材(1)15枚を重ねてヘイズメーター(日本電子工業(株)製、SH7000)で色彩値L 、a 、b を測定した。基材(1)に使用したOPPついても同様に、3cm×3cmの大きさに切り出したサンプル(y)30枚を2質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液100gに浸し、70℃、500rpmで2時間撹拌し、水洗、乾燥した後、得られた基材15枚を重ねて色彩値L 、a 、b を測定し、下記の数式により色差△Eを求めた。
(数式3)
△E=((L -L +(a -a +(b ―b 1/2
基材の着色(着色性)については、以下の基準で評価した。

◎:△Eが3未満である。極めて良好。
○:△Eが3以上20未満である。良好。
△:△Eが20以上50未満である。実用可。
×:△Eが50以上である。実用不可。
【0124】
[アルカリ剥離性]
実施例1において、撹拌開始から5、10、15分後に、水溶液中の積層体(D1)を全て取り出し、積層体(D1)からの粘着剤層の剥離性を目視で観察した。評価基準は以下の通りである。

◎:5分未満で粘着剤層の80%以上が基材から剥離する。極めて良好。
○:5分以上10分未満で粘着剤層の80%以上が基材から剥離する。良好。
△:10分以上15分未満で粘着剤層の80%以上が基材から剥離する。実用可。
×:上記以外。実用不可。
【0125】
[回収性]
実施例1において得られたサンプル(x)を含む水溶液をメッシュ(目開き10μm)でろ過し、水洗、乾燥して、サンプル(x’)を得た。回収性は、以下の数式を用いて算出した。
(数式4)
回収性(%)
=(x’-S)/(x-S)
(x:サンプル(x)の質量、x’:サンプル(x’)の質量、S:サンプル(x)中の基材の総質量)
当該回収性が高いほど、水酸化ナトリウム水溶液の汚染が軽減されるため、水酸化ナトリウム水溶液の再利用が容易となる。
【0126】
(実施例2~22、比較例1~5)
積層体の種類と枚数を表4のように変更した以外は、実施例1と同様に着色性、アルカ
リ剥離性、回収性を評価した。
ただし、実施例13、14は参考例である。
【0127】
【表4】
【0128】
表4の評価結果より、本発明の基材(1)の分離回収方法であれば、着色の少ない、リサイクルに適した基材を得られることが示された。
【要約】
【課題】
本発明の課題は、リサイクル過程において積層体より脱離した印刷層の再付着によるフィルム基材の着色を抑制し、リサイクルに適した基材を得ることが可能な、積層体からの基材の分離回収方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明の課題は、下記(i)と(ii)および/または(iii)とを同時に、または(ii)のみを塩基性水溶液に浸漬させる工程を含む、基材(1)の分離回収方法によって解決できる。
(i)基材(1)と印刷層を有する積層体。
(ii)(i)と、基材(2)と特定の粘着剤組成物から形成される粘着剤層からなる粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
(iii)基材(3)と粘着ラベルとを貼り合わせた積層体。
【選択図】なし