(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】核酸の正確な超並列定量化
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20220518BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220518BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220518BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2020511454
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2018072754
(87)【国際公開番号】W WO2019038372
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520058712
【氏名又は名称】エーアーヴェーアーゲー, スイス フェデラル インスティテュート オブ アクアティック サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】EAWAG, SWISS FEDERAL INSTITUTE OF AQUATIC SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】Uberland Str. 133, 8600 Dubendorf Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】タンミネン マヌ
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】スパーク イェニー
(72)【発明者】
【氏名】カドゥフ レーア
(72)【発明者】
【氏名】シッファー ハンナ
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0214825(US,A1)
【文献】PLoS ONE,2007年,Vol.2, No.2. e223,p.1-11
【文献】Communications Biology,2020年,Vol.3, article No.264,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料における1つ以上の標的ヌクレオチド配列のハイスループット検出方法であって、
(i)前記試料の各々における各標的ヌクレオチド配列に対して第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴを与えること、
ここで、前記第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含み、
前記第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含み、
前記架橋オリゴは、前記第1のプローブ及び前記第2のプローブのそれぞれ前記第1の架橋オリゴ特異的配列及び前記第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列、並びに任意選択で第3のバーコードを含み、
前記第1の配列バーコード又は前記第2の配列バーコード又は前記第3のバーコードの少なくとも1つがそれぞれ前記第1のプローブ又は前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在し、
T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列が前記第1のプローブ、前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在する、
前記与えること、
(ii)前記1つ以上の標的ヌクレオチド配列の各々について、前記第1のプローブ及び前記第2のプローブを、好ましくは分離管中の前記試料の各々で、前記架橋オリゴと接触させ、自己アニーリングさせて複数の連結複合体にすること、
(iii)前記標的ヌクレオチド配列について試験される前記複数の試料中に存在する核酸を前記複数の連結複合体と接触させること、
(iv)前記第1のプローブ及び前記第2のプローブのそれぞれ前記第1の標的特異的部分及び前記第2の標的特異的部分を前記標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成させ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成すること、
(v)連結された連結複合体を与えるために前記ハイブリダイゼーション複合体中の前記第1のプローブと前記第2のプローブを連結すること、
(vi)前記複数の試料からの前記連結された連結複合体を貯蔵すること、
(viii)前記連結された連結複合体に埋め込まれた前記T7RNAポリメラーゼプロモーターからRNA合成を開始するT7RNAポリメラーゼを用いて、前記1個以上の連結複合体からRNAを増幅すること、
(xi)任意選択で、汎用部位2に対して逆相補的であるDNAオリゴヌクレオチド分子を用いて前記RNA分子からcDNAを調製すること、
(xii)1つ又は複数の識別配列を決定するために、前記RNA又は前記cDNA分子をハイスループット配列決定技術に供すること、並びに
(xiii)前記第1の標的特異的部分及び/又は前記第2の標的特異的部分の少なくとも一部、及び/又は前記第1のバーコード及び/又は前記第2のバーコードの少なくとも一部、及び/又は前記第3のバーコードの少なくとも一部の測定によって前記複数の試料中の前記標的ヌクレオチド配列の存在及び/又は数を特定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のプローブ、前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴが、ウラシル特異的切り出し試薬を用いた切断によって直鎖化を可能にするデオキシウリジン部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記配列決定が次世代DNA又はRNA配列決定によって行われる、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のプローブの前記3'末端若しくは前記第2のプローブの前記5'末端又はその両方が、前記第1のプローブと前記第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾された、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のプローブ若しくは前記第2のプローブ又はその両方の前記架橋部分が、前記架橋オリゴとの結合を改善することができる化学修飾塩基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標的特異的部分、前記第2の標的特異的部分、前記第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は前記第2の架橋オリゴ特異的配列が、1個以上の化学修飾ヌクレオチドを互いに独立に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子標的の列挙が、標的1個当たり及び試料1個当たりの分子バーコードの数をカウントすることによって可能にされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記RNA分子又は前記cDNA分子が、増幅産物を与えるために第1のプライマー及び第2のプライマーを用いて増幅される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2個以上の試料に対して、又は2つ以上の遺伝子座/対立遺伝子組合せに対して、SNP及び/又はインデルなどの1つ以上の配列及び/又は多形について1つ又は複数の試料の遺伝子型を同定するためにバーコード配列が使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数の容器を含む部品のキットであって、少なくとも1個の容器が1組以上の第1のプローブと第2のプローブを含み、少なくとも1個の容器が1個以上の架橋オリゴを含み、
前記第1のプローブが、分子の5'末端から出発して、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含み、
前記第2のプローブが、分子の5'末端から出発して、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含み、
前記架橋オリゴが、前記第1及び第2のプローブのそれぞれ前記第1及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列、並びに任意選択で第3のバーコードを含み、
前記第1の配列バーコード又は前記第2の配列バーコード又は前記第3のバーコードの少なくとも1つがそれぞれ前記第1のプローブ又は前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在し、
T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列が前記第1のプローブ、前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在する、
キット。
【請求項11】
前記第1のプローブの前記3'末端若しくは前記第2のプローブの前記5'末端又はその両方が、前記第1のプローブと前記第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾された、請求項10に記載の部品のキット。
【請求項12】
前記架橋オリゴが、前記第1のプローブの配列に相補的な配列若しくは前記第2のプローブの配列に相補的な配列又はその両方に1個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む、請求項11に記載の部品のキット。
【請求項13】
好ましくは前記第1の標的特異的部分、前記第2の標的特異的部分、前記第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は前記第2のオリゴ特異的配列が1個以上の化学修飾ヌクレオチドを互いに独立に含む、請求項11又は12に記載の部品のキット。
【請求項14】
複数の試料中の少なくとも1つの標的配列の有無の判定及び/又は定量化におけるハイスループット配列決定のための第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴの使用であって、
前記第1のプローブが、分子の5'末端から出発して、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含み、
前記第2のプローブが、分子の5'末端から出発して、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、及び前記第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含み、
前記架橋オリゴが、前記第1のプローブ及び前記第2のプローブのそれぞれ前記第1の架橋オリゴ特異的配列及び前記第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列、並びに任意選択で第3のバーコードを含み、
前記第1の配列バーコード又は前記第2の配列バーコード又は前記第3のバーコードの少なくとも1つがそれぞれ前記第1のプローブ又は前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在し、
T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列が前記第1のプローブ、前記第2のプローブ又は前記架橋オリゴ中に存在し、
前記第1のプローブと前記第2のプローブのそれぞれの標的特異的セクションが、連結プローブを与えるために前記標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成されるときに、前記第1のプローブと前記第2のプローブが連結され、前記複数の試料からの前記連結プローブが貯蔵され、T7RNAポリメラーゼを用いて増幅され、1つ又は複数の識別配列を決定するために増幅産物がハイスループット配列決定技術に供される、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、次世代DNA塩基配列決定法、及び1個以上の核酸標的の正確な超並列定量化のための使用に関する。より詳細には、本発明は、ヒト及び動物集団並びに環境試料における遺伝子標的及び変異体の検出に主に使用される複合DNAプール中の遺伝子標的を検出し、定量化するためのプローブを含む方法及びキットに関係する。さらに、本発明は、生検材料、唾液及び他の分泌物、呼気水分抽出物、組織、血漿(液体生検材料)などを含めて、ただしそれらに限定されない、人体から得られる試料中の疾患を引き起こす遺伝子変化の検出の分野に特に応用される。本発明は、遺伝子標的1個当たり1個以上の標的特異的核酸プローブ(左プローブ及び右プローブ)及び架橋オリゴを含む。
【背景】
【0002】
遺伝的変異を研究する技術の進歩とともに、植物及び動物における遺伝的変異の検出は厄介ではなくなった。しかし、予防及び治療手段を容易にするための必要な情報を提供するために、突然変異、他の遺伝的変異などの遺伝子変化に対するヌクレオチド配列の非常に貴重な研究を提供する技術の進歩が必要である。ヌクレオチド配列決定は、目的の遺伝子標的におけるヌクレオチドの順番を決定するプロセスである。目的の遺伝子標的のヌクレオチド配列における変異の検出は、核酸配列決定法を用いて行われる。Maxam-Gilbert、Sangerなど、ただしそれらに限定されない、最もよく知られた配列決定法が、ヌクレオチド配列の検出に使用される。核酸配列決定技術は、分子生物学、進化生物学、メタゲノミクス、医薬品、法医学などの多数の分野で重要な役割を果たす。理想的には、遺伝子標的の検出及び定量化、例えば、母体血中のDNAの定量化は、非侵襲性出生前トリソミースクリーニングの基礎であり、循環DNA中の希少変異の定量化は、癌液体生検の基礎であり、抗生物質耐性遺伝子の定量化は、抗生物質耐性遺伝子の拡散のリスク推定の基礎である。
【0003】
一般に、癌診断法は、循環DNA中の腫瘍学的に関連する変異の検出及び定量化を必要とする。同様に、胎児の異常は、母体血中に低濃度で存在する胎児DNAの検出及び定量化を必要とする。こうした弱いシグナルを検出し、正確に定量化することは、配列決定費用の低下にもかかわらず、今でも骨が折れ、費用のかかるものである。コンセンサスバックグラウンドに対して遺伝子シグナルを検出するための特異性、弱い遺伝子シグナルを検出するための感度、検出シグナルの正確な定量化のための精度、アッセイ1回当たりの標的遺伝子標的の処理数、アッセイ1回当たりの費用、複数の試料を並行して検査するときのアッセイ費用規模を求めるスケーリング、サンプリングから結果までの時間を求める回転率などの様々な問題をより正確に示すことができる。
【0004】
現在、液体生検及び概念的に類似したアッセイ(抗生物質耐性遺伝子検出など)の典型的な定量化法としては、定量的PCR(qPCR)、アレイqPCR、デジタルPCR、多重連結依存性プローブ増幅(MLPA)、次世代DNA塩基配列決定データからの定量化などが挙げられる。定量化法は、堅牢な確立された方法ではあるが、方法の各々は、以下でより詳細に考察する特定の問題に関連する。
定量的PCR:定量的PCR(qPCR)は、PCR中の、すなわち実時間の標的DNA分子の増幅を含む分子生物学に基づく技術である。リアルタイムPCRは、定量的(定量的リアルタイムPCR)及び半定量的に、すなわちある量のDNA分子を超えて、又は未満で(半定量的リアルタイムPCR)使用することができる。
定量的PCR(qPCR)は、遺伝子標的定量化の標準である。現在、qPCR反応の検査室費用は約$2である。しかし、定量化された各標的の複製と一緒に、反応の準備のためのかなりの操作時間(労務費)、検量線の必要性を勘定に入れと、実費は実際にははるかに高い。別々の定量化実験が各遺伝子標的で必要なので、操作時間の量は、試料数とともに急勾配で増加する。試料1組当たりの定量化された標的1個当たり推定で少なくとも40の反応は、手作業の費用を除いて、約$80の単価になり、定量化することができる反応量の明確な限界を示している。
アレイPCR:PCRアレイは、関連する経路又は疾患に焦点を合せた一団の遺伝子の発現を解析するための最も信頼できるツールである。各96ウェルプレート、384ウェルプレート又は100ウェルディスクPCRアレイは、焦点を合せた一団の遺伝子の徹底的に研究された一団のSYBR Greenに最適化されたプライマーアッセイを含む。より新しいqPCR技術は、個々のqPCR反応を小型化したアレイqPCRである。アレイPCRは、個々のqPCR反応の費用を削減し、複数の標的及び試料に対する方法の拡張性を改善する。しかし、該方法は、現在、チップ1個当たり数千ドルの費用と解読インフラストラクチャーの大きい資本費で、12個の試料からの384個の標的(又は逆に384個の試料からの12個の標的)のプロファイリングに限定されている。したがって、数千の試料を上記構成でプロファイリングすると、法外に高価なものになる。
デジタルPCR:デジタルポリメラーゼ連鎖反応(デジタルPCR、DigitalPCR、dPCR又はdePCR)は、液滴-マイクロ流体工学及び蛍光検出によって標的を絶対的定量化する方法である。該方法は、比較的費用効果が高いが(試料1個当たり1個の標的の費用約$3)、各試料における各標的に対する個々の実験の準備、設置及び運転の操作時間を数千の試料に拡張するのに不十分である。
多重連結依存性プローブ増幅(MLPA)
MLPAは、個々の試料における複数の遺伝子標的の検出を単純化する手法を提供する。しかし、MLPAは、標的の相対定量化に過ぎず、各試料で別々の検出実験を必要とする。より最近では、MLPAの一変形法がDNAバーコーディング由来の概念を導入している。この概念は、従来のMLPAワークフローよりも良好な定量的解決及び試料多重化を可能にする。
次世代の配列決定に基づく手法:配列に基づく遺伝子発現分析をアナログ技術の代わりに「デジタル」にするハイスループット配列決定としても知られる次世代配列決定(NGS)。次世代DNA塩基配列決定データからの標的カウントは、DNA塩基配列決定の費用が低下し続けており、ますます魅力的になり、現在、例えば、NIPTスクリーニングに使用されている。しかし、現行手法は、高い配列決定ライブラリ調製費用、及び関連しない遺伝子標的の配列決定に費やされる無駄な配列決定労力の点で不利である。例えば、癌関連液体生検では、非標的手法は、腫瘍学的に関連しない遺伝子座に対する配列決定労力の損失を招く。胎児診断法においては、遺伝子座の非標的サンプリングは、データを解釈するための統計学的選択肢をかなり制限する。Guardant Health Incは、より標的を定めた配列決定手法を提供し、一連のRNA捕捉プローブによって次世代DNA塩基配列決定の標的を豊富にしている。
【0005】
したがって、上記考察に鑑みて、特異性、感度、精度、処理量、費用、規模、回転率など、ただしそれらに限定されない上記欠点を核酸標的の正確な超並列定量化によって克服する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、多重連結アッセイ(MLA)を測定するための方法及び組成物を提供しようとするものである。多重連結アッセイは、バーコーディングMLPAの単純性及び並行の可能性をqPCRの精度及び感度と組み合わせようとする分子連結に基づくアッセイである。
【0007】
本発明は、より詳細には、連結依存性アッセイを強化することによって極めて多数の試料における標的ヌクレオチド配列検出のハイスループット検出方法に関する。一実施形態においては、標的ヌクレオチド配列をDNA又はRNA、好ましくはDNAとすることができる。一実施形態においては、方法及び組成物は、複数の試料中の少なくとも1つの標的配列の有無の判定及び/又は定量化におけるハイスループット配列決定によって標的を解析するステップを含む。
【0008】
一側面においては、本開示の実施形態は、試料の各々における各標的ヌクレオチド配列に対する1組の標的特異的プローブを更に含む方法を提供する。標的特異的プローブアセンブリの設計は、遺伝子標的1個当たり2個の標的特異的核酸プローブ(左プローブ及び右プローブ)を含み、又は3個の標的特異的核酸プローブを有し、そのうち2個が遺伝子標的に特異的であり(左プローブ及び右プローブ)、1個が汎用(架橋オリゴ)である、標的特異的プローブアセンブリの設計を含む。汎用(架橋オリゴ)は、左プローブと右プローブの結合に使用される。
【0009】
一実施形態においては、第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の汎用配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含む。第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、任意選択で第2の汎用配列、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含む。好ましくは、第1の配列バーコード又は第2の配列バーコードの少なくとも一方は、それぞれ第1のプローブ又は第2のプローブ中に存在し、第1の配列バーコード若しくは第2の配列バーコード又はその両方は、ランダム配列とすることができ、又は標的ヌクレオチド配列識別配列、試料識別配列及び/又は標的列挙用分子バーコードを含むことができる。
【0010】
好ましくは、汎用架橋オリゴプローブは、T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列、第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の架橋オリゴ特異的配列及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列を含み、ランダム配列とすることができる、又は試料識別配列若しくは標的識別配列を含むことができる、第3のバーコードを任意選択で含む。T7RNAポリメラーゼのプロモーター配列は架橋オリゴ中に存在することが好ましいが、プロモーターが架橋オリゴ中に存在する代わりに、第1又は第2のプローブ中に存在することもできる。しかし、こうした場合には、プローブ及びオリゴの設計は、T7RNAポリメラーゼが試料及び標的の同定並びに標的配列の列挙に必要であるすべての配列を転写することができるようでなければならない。
【0011】
第1のプローブ及び第2のプローブは、第1の標的特異的部分、第2の標的特異的部分、第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は第2の架橋オリゴ特異的配列を含む。第1のプローブと第2のプローブは、配列を互いに独立に含む。第1のプローブ及び第2のプローブは、好ましくは、1個以上の化学修飾ヌクレオチド配列で化学修飾される。
【0012】
第1のプローブ及び第2のプローブは、好ましくは分離管中の試料の各々で、架橋オリゴと接触する。複数の第1及び第2のプローブは、複数の架橋オリゴに自己アニールして、複数の連結複合体になる。好ましくは、各連結複合体は、第1の標的特異的配列、第2の標的特異的配列及び1個以上のバーコード配列の組合せごとに独特である。これによって、増幅及び結果の分析後に標的配列を列挙することができる。
【0013】
続いて、各試料中の1つ以上の標的ヌクレオチド配列(単数又は複数)を連結複合体と接触させ、自己アニールさせて、複数のハイブリッド連結複合体にすることができる。第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の標的特異的部分及び第2の標的特異的部分は、標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成し、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成する。形成されたハイブリッド複合体における第1のプローブと第2のプローブの連結は、酵素的又は化学的に行われ、連結された連結複合体を与える。次いで、1個以上の試料中の連結された連結複合体が続いて貯蔵される。
【0014】
第1のプローブと第2のプローブの間にギャップが存在する場合、ギャップは、ポリメラーゼ及び1個以上のヌクレオチドを導入することによって充填されてもよい。ポリメラーゼは、(a)汎用架橋オリゴ配列に相補的なヌクレオチド及び(b)標的配列に相補的なヌクレオチドを付加し、それによって第1のプローブと第2のプローブの間の2つのギャップを充填して、左プローブと右プローブを連結する。架橋オリゴは、標的配列識別配列が架橋オリゴに組み込まれ、それによって1個以上の連結された連結複合体を形成するように、連結プローブに相補的な5'部位又は3'部位から伸長する。
【0015】
第1のプローブと第2のプローブが標的配列部分で連結される前にポリメラーゼが架橋オリゴを第1及び第2のプローブ上のそれぞれの標的配列中に伸長させるのを防止するために、好ましくは、適切なポリメラーゼが使用され、より好ましくは、二本鎖DNA配列中に伸長しないポリメラーゼが使用される。こうしたポリメラーゼの典型的な例は、Taqポリメラーゼである。
【0016】
次に、連結された連結複合体の架橋オリゴ配列上の二本鎖T7RNAポリメラーゼプロモーター部位上で結合し、RNAを下流に転写するT7RNAポリメラーゼ。1個以上の連結された連結複合体からの合成RNAの増幅は、例えば、エマルジョン逆転写酵素(RT)PCR又はT7RNAポリメラーゼを用いて行われる。遊離試料及びプローブ核酸の除去は、T7RNAポリメラーゼによるRNA合成後かつcDNA合成又はRT-PCR前に、DNA特異的エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼを貯蔵増幅反応物に任意選択で添加することによって行われる。
【0017】
好ましくは、連結断片の精製プロセスは、連結反応混合物の構成成分を精製カラム又はビーズ精製を用いて除去することによって行われる。cDNAは、汎用部位2に対して逆相補的であるDNAオリゴヌクレオチド分子を用いてRNA分子から調製されてもよい。cDNAが調製された後、従来のPCR又は好ましくはエマルジョンPCRを使用して、シグナルを増加させることができる。あるいは、RT-PCR又はエマルジョンRT-PCRを使用することができる。
【0018】
標的ヌクレオチド配列の有無は、増幅されたRNA又はcDNA分子をハイスループット配列決定技術に供して、1つ又は複数の識別配列を決定することによって判定される。
【0019】
別の一側面においては、本開示の一実施形態は、本発明の方法及び組成物に使用されるキットを提供する。キットは複数の容器を含み、少なくとも1個の容器は1組の第1のプローブと第2のプローブを含み、少なくとも1個の容器は架橋オリゴを含む。特定の一実施形態においては、1組の第1のプローブと第2のプローブを含む少なくとも1個の容器と架橋オリゴを含む少なくとも1個の容器は、1個の同じ容器である。こうした場合においては、3個のプローブは、あらかじめアニールし、連結複合体を形成することができる。
【0020】
本発明の特定の一効果は、独特のプローブ設計、すなわちプローブトリプレットを用いて目的の標的配列の検出及び増幅を可能にすることである。結合性の改善されたプローブが設計され、アッセイの特異性、感度及び精度が高くなる。本発明は、分子生物学、進化生物学、メタゲノミクス、遺伝子型同定、より具体的には、それらに限定されないが、癌診断法及び胎児染色体異常の領域で応用される。
【0021】
本開示の更なる側面、効果、特徴及び目的は、以下の添付の特許請求の範囲と併せて解釈される図面及び説明のための実施形態の詳細な説明から明らになるはずである。
【0022】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく、種々の組合せで組み合わせ可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
上記摘要及び説明のための実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的構成を図面に示す。しかし、本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び手段に限定されない。さらに、当業者は、図面が一定の縮尺ではないことを理解するであろう。可能な時はいつでも、同様の要素は同一の番号で示される。
【0024】
以下、本開示の実施形態を単なる例として以下の図を参照して記述する。
【0025】
【
図1】本明細書の一実施形態に係る多重連結アッセイ(MLA)の流れ図である。
【0026】
【
図2A】本明細書の一実施形態に係る複数のプローブ体を有するプローブトリプレットの原理構造を示す。
【0027】
【
図2B】本明細書の一実施形態に係る第1のプローブと第2のプローブの間を満たすギャップを示す。
【0028】
【
図3】プローブ結合効率を高め、連結効率を改善する、可能な化学修飾を示す。
【0029】
【
図4】本明細書の一実施形態に係る複製染色体カウントデータの分析の概要を示す。
【0030】
【
図5】本明細書の一実施形態に係る複数の遺伝子の変異体の割合を定量するための概要を示す。
【0031】
【
図6】本明細書の一実施形態に係る多重連結依存性プローブ増幅のフローチャートである。
【実施形態の詳細説明】
【0032】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態及びそれらを実施することができる方法を示す。本開示を実施する幾つかの様式を開示するが、当業者は、本開示を実施又は実行する別の実施形態も可能であることを認識されたい。
【0033】
第1の実施形態においては、本発明は、複数の試料における1つ以上の標的ヌクレオチド配列のハイスループット検出方法であって、以下のステップを含む方法を提供する。
【0034】
(i)試料の各々における各標的ヌクレオチド配列に対して第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴを与えること。ただし、
第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の汎用配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含み、
第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、任意選択で第2の汎用配列、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含み、
架橋オリゴは、第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の架橋オリゴ特異的配列及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列を含み、ランダム配列とすることができる、又は試料識別配列若しくは標的識別配列を含むことができる、第3のバーコードを任意選択で含み、
第1の配列バーコード又は第2の配列バーコード又は第3のバーコードの少なくとも1つは、それぞれ第1のプローブ又は第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在し、第1の配列バーコード若しくは第2の配列バーコード又はその両方は、ランダム配列とすることができ、又は標的ヌクレオチド配列識別配列、試料識別配列及び/又は標的列挙用分子バーコードを含むことができ、
T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列は、第1のプローブ、第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在し、好ましくは第1の標的特異的部分、第2の標的特異的部分、第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は第2の架橋オリゴ特異的配列は、互いに独立に1個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。
(ii)1つ以上の標的ヌクレオチド配列の各々について、第1のプローブ及び第2のプローブを、好ましくは分離管中の試料の各々で、架橋オリゴと接触させ、自己アニーリングさせて複数の連結複合体にすること。
(iii)標的ヌクレオチド配列について試験される複数の試料中に存在する核酸を複数の連結複合体と接触させること。
(iv)第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の標的特異的部分及び第2の標的特異的部分を標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成させ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成すること。
(v)連結された連結複合体を与えるためにハイブリダイゼーション複合体中の第1のプローブと第2のプローブを連結すること。
(vi)複数の試料からの連結された連結複合体を貯蔵すること。
(vii)任意選択で、架橋オリゴ上の第1のプローブと第2のプローブの間に存在するギャップが充填されるように、架橋オリゴ中に存在するバーコード配列が連結プローブに組み込まれるように連結プローブが5'部位若しくは3'部位から伸長するように、又は第1のプローブ若しくは第2のプローブ中に存在するバーコード配列が架橋オリゴに組み込まれるように架橋オリゴが5'部位若しくは3'部位から伸長するように、又はその両方であるように、ハイブリダイゼーション複合体にポリメラーゼ及び1個以上のヌクレオチドを与え、それによって1個以上の連結された連結複合体を形成すること。
(viii)連結複合体に埋め込まれたT7RNAポリメラーゼプロモーターからRNA合成を開始するT7RNAポリメラーゼを用いて、1個以上の連結された連結複合体からRNAを増幅すること。
(ix)任意選択で、DNA特異的エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼを貯蔵増幅反応物に添加して、試料及びプローブDNAを除去すること。
(x)任意選択で、残りのRNAをビーズ又はカラム精製によって精製すること。
(xi)任意選択で、第2の汎用部位に対して逆相補的であるDNAオリゴヌクレオチド分子を用いて、RNA分子からcDNAを調製すること。
(xii)1つ又は複数の識別配列を決定するために、増幅されたRNA又はcDNA分子をハイスループット配列決定技術に供すること。
(xiii)第1の標的特異的部分及び/又は第2の標的特異的部分の少なくとも一部、第1のバーコード配列及び/又は第2のバーコード配列の少なくとも一部、及び/又は第3のバーコード配列の少なくとも一部の測定によって複数の試料中の標的ヌクレオチド配列の存在及び/又は数を特定すること。
【0035】
定義:
【0036】
標的ヌクレオチド配列:標的ヌクレオチド配列という用語は、その検出が要求される目的の任意のヌクレオチド配列とすることができる。この用語は、隣接ヌクレオチドの配列、及び相補配列を有する核酸分子を指すことを理解されたい。標的配列は、好ましくは、多形である、又は多形に関連する、ヌクレオチド配列である。
【0037】
多形:多形という用語は、集団中の2個以上の遺伝的に決定された選択的配列又は対立遺伝子の出現を指す。多形マーカー又は部位は、配列の分岐が起こる遺伝子座である。多形遺伝子座は、1塩基対と小さい場合もある。
【0038】
試料:試料という用語は、本明細書では、2つ以上の標的配列を含む2個以上の試料に使用される。本発明に係る方法において用意される試料は、好ましくは、少なくとも標的核酸を抽出し、それらが本発明で使用されるプローブに接近できるようにするために調製される。特に、試料は各々少なくとも2個、好ましくは少なくとも100個、より好ましくは少なくとも250個、より好ましくは少なくとも500個、最も好ましくは少なくとも2000個、又はそれ以上の異なる標的配列を含む。試料という用語は、生検材料、唾液及び他の分泌物、呼気水分抽出物、組織、血漿(液体生検材料)を含めた人体から得られる2個以上の試料、水、廃水、土壌などを含めた環境から得られる2個以上の試料を指し得るが、それらに限定されない。
【0039】
プローブ:プローブという用語は、プローブ中の配列に相補的であるヌクレオチド配列(DNA又はRNA標的)の存在を検出するためにDNA又はRNA試料中で使用することができる長さ可変(通常、50~1000塩基長、好ましくは50~200塩基長)のDNA又はRNAの断片である。標的配列に相補的であるオリゴヌクレオチドプローブのセクションは、試料中の各標的配列に対して1対の左プローブと右プローブが与えられるように設計され、それによってプローブは各々、標的配列の一部に相補的であるセクションをそれらの末端に含む。さらに、本発明は、左プローブと右プローブを結合するのに使用される架橋オリゴを提供する。
【0040】
汎用:増幅手順を記述するのに使用されるときの汎用という用語は、複数の増幅反応に対して単一のプライマー又は1組のプライマーの使用を可能にする配列を指す。こうしたプライマーの使用は、複数の選択された核酸配列を増幅するのに2個のプライマーしか必要とされない点で多重化を大いに簡略化する。プライミング部位の記述に使用されるときの汎用という用語は、汎用プライマーがハイブリッド形成する部位である。汎用プライミング配列/プライマーの「組」を使用できることにも注目すべきである。
【0041】
ハイブリダイゼーション:ハイブリダイゼーション(hybridization又はhybridisation)という用語は、相補DNA又はRNAへのデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)分子アニーリングのプロセスを言う。DNA又はRNA複製及びRNAへのDNAの転写は、どちらもヌクレオチドハイブリダイゼーションに依拠する。
【0042】
連結:連結という用語は、酵素の作用による2個の核酸断片の結合である。DNAリガーゼは、相補鎖上の隣接部位で結合する2本のポリヌクレオチド鎖(の末端)間のリン酸ジエステル結合の形成を触媒することができる酵素である。特にポリヌクレオチドの両方の隣接末端が化学連結可能なように修飾されている場合、連結を化学的に行うこともできる。
【0043】
増幅:本明細書で使用する増幅という用語は、ヌクレオチド配列の混合物内の特定のヌクレオチド配列の濃度を増加させるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を表す。「PCR」、すなわち「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特異的DNA/RNAセグメントのインビトロ酵素増幅の迅速な手順である。増幅されるDNA/RNAは、試料を加熱することによって変性される。プライマーという用語は、DNA合成の出発点として役立つRNA又はDNAの短鎖(一般に約18~22塩基)である。このプロセスを触媒する酵素DNAポリメラーゼは、新しいヌクレオチドを既存のDNA鎖に付加することしかできないので、DNA複製にはプライマーが必要である。T7RNAポリメラーゼは、単一のDNA分子をRNAの複数のコピーに転写し、増幅することができる。RNAはcDNAに戻すことができる。
【0044】
ポリメラーゼ:ポリメラーゼは、核酸の長鎖又はポリマーを合成する酵素である。DNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼを使用して、DNA又はRNA鋳型鎖を塩基対合相互作用を利用してコピーすることによって、それぞれDNA及びRNA分子を組み立てる。本明細書で使用する特異的ポリメラーゼT7RNAポリメラーゼは、5'→3'方向のRNAの形成を触媒するT7バクテリオファージ由来のRNAポリメラーゼである。T7RNAポリメラーゼは、RNAの合成の補因子として部分二本鎖DNA鋳型及びMg2+イオンを必要とする。T7RNAポリメラーゼは、単一のDNA分子をRNAの複数のコピーに転写し、増幅することができる。
【0045】
ハイスループット:ハイスループットという用語は、多数のDNA試料を同時に処理し、スクリーニングする能力、及び単一のDNA試料内の多数の異なる遺伝子座を同時にスクリーニングする能力を表す。ハイスループット配列決定又はスクリーニングは、しばしばHTSと略記され、特に多量の試料を同時に効果的にスクリーニングすることに関連した科学的実験法である。
【0046】
ウラシル特異的切り出し試薬(USER):USERとしても知られるウラシル特異的切り出し試薬は、切断によってデオキシウリジンヌクレオチドが存在する環状DNA分子の直鎖化を可能にする。
【0047】
本発明は、次世代配列決定によって可能になる技術を用いて複合核酸プール中の遺伝子標的の配列を決定する方法を開示する。本発明は、連結依存性アッセイを強化することによって、幾つかの試料、好ましくは極めて多数の試料における複数の遺伝子標的をプロファイルする方法を提供する。本発明は、複数の試料における異なる標的核酸の問合せを可能にする多重連結依存性プローブ増幅の方法を提供する。本開示は、遺伝子変異体の有無の検出のために、試料中に存在する目的の核酸標的の正確な超並列定量化による標的核酸の配列決定のための方法及び組成物を当業者に提供する。さらに、配列決定データを処理するときに遺伝子標的を同定し、試料プールからの個々の試料の絶対的定量化をするために独特の配列識別配列が使用される。
【0048】
好ましい一実施形態においては、本発明の方法及び組成物は、ハイスループット配列決定技術を用いた複数の核酸試料の同定に関係する。本発明の方法及び組成物は、複数の試料における1つ以上の標的ヌクレオチド配列の配列決定を可能にし、異なる標的核酸用の複数の異なるプローブセットを提供する。本発明の方法及び組成物は、3個の核酸プローブを利用し、そのうち2個の標的特異的核酸プローブ(左プローブ及び右プローブ)は遺伝子標的に特異的であり、1個の核酸プローブは汎用(架橋オリゴ)である。左及び右プローブは架橋プローブとハイブリッド形成して、連結複合体を形成する。試料DNA/RNA上に標的同定部位を有する(1個以上のバーコード配列を含む)連結複合体は、クエリー試料の相補的標的配列と周囲条件下でハイブリッド形成することができる。ハイブリダイゼーション後、左プローブと右プローブは、化学的に、又はDNAリガーゼによって酵素的に連結し、連結された連結複合体を形成する。本発明においては、複数のこうした連結された連結複合体が、複数の分析試料における試料分析中に生成する。
【0049】
T7RNAポリメラーゼは、Illumina MiSeq、HiSeq又はNextSeqを含めて、ただしそれらに限定されない次世代配列決定プラットホームを用いた配列決定に使用される結合プローブを増幅する。試料は、配列データから分離され(デコンボリューション)、配列標的は、DNA塩基配列決定後にコンピュータで定量化される。好ましい一実施形態においては、本発明に係る方法が提供され、配列決定が次世代DNA又はRNA配列決定によって行われる。
【0050】
一実施形態においては、「複数の試料」という用語は、生検材料、唾液及び他の分泌物、呼気水分抽出物、組織、血漿(液体生検材料)を含めた人体から得られる2個以上の試料、水、廃水、土壌などを含めた環境から得られる2個以上の試料を指し得るが、それらに限定されない。使用される試料は、エタノール沈殿、フェノール-クロロホルム抽出、シリカカラムなどの現在利用可能な抽出技術のいずれかによって抽出されたDNA又はRNAとすることができる。
【0051】
一実施形態においては、方法及び組成物は、複数の試料中の少なくとも1つの標的配列の検出及び/又は定量化におけるハイスループット配列決定によって標的を解析するステップを含む。標的配列は、検出が必要な目的の任意のヌクレオチド配列を含む。本開示の標的ヌクレオチド配列は、患者の血中のわずかなDNA又は母体血中のわずかなDNAから得られるが、それらに限定されない。患者の血中のわずかなDNAは、アポトーシス/壊死癌細胞から、又は胎児由来の母体血中のわずかなDNAから得られる。さらに、分析結果を使用して、例えば、所与のタイプの癌に対する個体のリスク、所与の癌に対する所与の処置の有効性の判定、腫瘍における薬剤耐性関連変異の発生、又は胎児が一般的なトリソミーダウン、パトー、エドワーズ症候群などの遺伝性疾患を有するリスクを評価する。
【0052】
一実施形態においては、1個以上の試料に由来し得る1つ以上の標的ヌクレオチド配列のハイスループット検出方法が提供される。ある実施形態においては、方法は、各標的ヌクレオチド配列に対して複数の異なるプローブセットを用意することを含む。本明細書では、プローブセットという用語は、第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴを含む。
【0053】
ある実施形態においては、第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の汎用配列、任意選択で第1の配列バーコード、及びその3'末端における第1の標的特異的部分を含む。ある実施形態においては、第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、任意選択で第2の汎用配列、及びその3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含む。
【0054】
好ましい一実施形態においては、第1のプローブ又は第2のプローブは、第1の配列バーコード又は第2の配列バーコードの少なくとも一方を含む。第1の配列バーコード若しくは第2の配列バーコード又はその両方は、ランダム配列とすることができ、又は標的ヌクレオチド配列識別配列、試料識別配列及び/又は標的列挙用分子バーコードを含むことができる。
【0055】
好ましい実施形態においては、架橋オリゴは、T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列、第1及び第2のプローブのそれぞれ第1及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列、汎用配列を含み、及び/又はランダム配列とすることができる第3のバーコードを含むことができ、又は試料若しくは配列識別配列を含むことができる。なお、第3のバーコードは、第1及び第2のバーコードが既に存在することを必ずしも意味しない。上述したように、すべての試験試料におけるすべての連結複合体内の複合体を一義的に定義することができる少なくとも1個のバーコードが、連結された連結複合体中に存在すべきである。
【0056】
第1の標的特異的部分、第2の標的特異的部分、第1の架橋オリゴ特異的配列、及び/又は第2の架橋オリゴ特異的配列は、好ましくは、少なくとも1個の化学修飾ヌクレオチドを互いに独立に含む。プローブ結合を増加させる化学修飾としては、リボ核酸、ペプチド核酸及びロックド核酸が挙げられるが、それらに限定されない。ある実施形態においては、化学修飾は、隣接プローブの化学連結を可能にする。上記プローブは、完全に隣接する遺伝子座に、又は最高50塩基対離れて、好ましくは最高40塩基対離れて、より好ましくは最高30塩基対離れて、より好ましくは最高20塩基対離れて、より好ましくは最高10塩基対離れて、最も好ましくは最高5塩基対離れて結合する。
【0057】
標的配列を含む試料にプローブを接触させる前に、第1のプローブ及び第2のプローブを架橋オリゴと、好ましくは分離管中の試料の各々で接触させ、自己アニーリングによって連結複合体にすることができる。その後、複数の試料における1つ以上の標的ヌクレオチド配列を複数の連結複合体と接触させる。第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の標的特異的部分及び第2の標的特異的部分は、標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成し、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成する。形成されたハイブリッド複合体における第1のプローブと第2のプローブの連結は、酵素的又は化学的に行われ、連結された連結複合体を与える。次いで、連結された連結複合体は、1個以上の標的試料から続いて貯蔵される。
【0058】
第1のプローブと第2のプローブの間にギャップが存在する場合、ギャップは、ポリメラーゼ及び1個以上のヌクレオチドを導入することによって充填することができる。ポリメラーゼは、(a)汎用架橋オリゴ配列に相補的なヌクレオチド及び/又は(b)バーコード配列に相補的なヌクレオチドを付加し、それによって第1のプローブと第2のプローブの間の2つのギャップを充填して、左プローブと右プローブを連結し、汎用配列及び/又は第3のバーコード配列を架橋相補鎖に含める。架橋オリゴは、第1のプローブ又は第2のプローブ中に存在する標的配列識別配列が架橋オリゴに組み込まれるように、連結プローブに相補的な5'部位又は3'部位から伸長する。好ましくは、第1のプローブと第2のプローブが標的配列にアニールされたときに第1のプローブと第2のプローブの連結を妨害しないために、例えばTaqポリメラーゼなどの二本鎖DNAを分解しないポリメラーゼが使用される。
【0059】
好ましくは、プローブ又は架橋オリゴのどちらかは、ウラシル特異的切り出し試薬を用いた切断によって直鎖化を可能にするデオキシウリジン部分を含む。これによって、架橋オリゴ又は第1若しくは第2のプローブに埋め込まれたT7RNAポリメラーゼプロモーターからRNA合成を開始するT7RNAポリメラーゼを用いて、直鎖化された連結された連結複合体からRNAを転写することができる。増幅後、遊離試料及びプローブ核酸の除去は、DNA特異的エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼを貯蔵増幅反応物に任意選択で添加することによって行われる。上述したように、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列は、架橋オリゴ、第1のプローブ又は第2のプローブ中に位置することができる。同じことがデオキシウリジン部分にも当てはまる。しかし、当業者には明らかなように、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列及びデオキシウリジン部分は、異なる試料における異なる標的の列挙に必要であるすべての情報をT7RNAポリメラーゼが転写できるように位置すべきである。T7RNAポリメラーゼとデオキシウリジン部分の間に以下の配列が存在すべきである:標的の同定を可能にする少なくとも1個の配列、試料の同定を可能にする少なくとも1個の配列、及び試料中の標的配列のコピー数を決定することができる少なくとも1個の独特の識別配列。
【0060】
連結断片の精製プロセスは、連結反応混合物の構成成分を精製カラム又はビーズ精製を用いて除去することによって行うことができる。cDNAは、汎用部位2に対して逆相補的であるDNAオリゴヌクレオチド分子を用いてRNA分子から調製されてもよい。RNA分子は、cDNAに変換されてもよく、プローブの汎用部分に結合するプライマーを用いてPCR又はエマルジョンPCRによって増幅されてもよい。
【0061】
ハイスループット配列決定技術による第1及び/又は第2の標的特異的部分の少なくとも一部、第1及び/又は第2のバーコードの少なくとも一部、及び/又は第3のバーコードの少なくとも一部の測定による複数の試料中の標的ヌクレオチド配列の存在及び/又は数の特定。好ましくは、遺伝子標的の列挙は、標的1個当たり及び試料1個当たりの分子バーコードの数をカウントすることによって可能になる。
【0062】
標的ヌクレオチド配列の有無は、増幅されたRNA又はcDNA分子をハイスループット配列決定技術に供して、1つ又は複数の識別配列を決定することによって判定される。好ましい一実施形態においては、RNA分子又はcDNA分子が、増幅産物を与えるために第1のプライマー及び第2のプライマーを用いて増幅される、本発明に係る方法が提供される。好ましくは、連結複合体中に存在する第1及び第2の汎用配列に相補的な汎用第1のプライマー及び汎用第2のプライマーが使用される。
【0063】
本発明の方法及び組成物は、ヌクレオチド配列決定及び増幅のために先行技術で使用される方法に比べて有利である様々な側面を含む。本発明に開示された方法及び組成物は、定量的PCR(qPCR)、アレイPCR、デジタルPCR、多重連結依存性プローブ増幅などを限定せずに、既存の標的のどれよりも良好なアッセイを提供することを目的とする。
【0064】
本発明の効果としては、従来の核酸配列決定技術に比べて、低コスト、高い単純性、高い特異性、高感度、高精度、ハイスループット、高い拡張性及び高い回転率の定量化アッセイが挙げられるが、それらに限定されない。本発明の別の一側面は、本発明の方法及び組成物によって、ヒト及び動物集団を含めた複数の試料における複数の核酸標的の正確な超並列定量化が可能になることである。本発明の特定の一効果は、独特のプローブ設計、すなわちプローブトリプレットを用いて目的の標的配列の検出及び増幅を可能にすることである。プローブは、アニーリング及び結合効率を改善する特別に位置付けられた修飾ヌクレオチドを用いて設計される。結合性の改善によって、アッセイ特異性、感度及び精度が高くなる。本発明の方法及び組成物は、遺伝子変異体の研究にも同様に適用可能であり、SNP及び/又はインデルなどの1つ以上の配列及び/又は多形についての1つ又は複数の試料の遺伝子型の同定、癌診断法又は母体血からの胎児染色体異常を含めて、ただしそれらに限定されない診断及び予後に応用される。好ましい一実施形態においては、2個以上の試料に対して、又は2つ以上の遺伝子座/対立遺伝子組合せに対して、SNP及び/又はインデルなどの1つ以上の配列及び/又は多形について試料の遺伝子型を同定するためにバーコード配列が使用される、本発明に係る方法が提供される。
【0065】
別の一側面においては、本発明は、複数の容器を含む部品のキットであって、少なくとも1個の容器が1組以上の第1のプローブと第2のプローブを含み、少なくとも1個の容器が1個以上の架橋オリゴを含む、キットを提供する。
【0066】
ここで、第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の汎用配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含み、
【0067】
第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、任意選択で第2の汎用配列、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含み、
【0068】
架橋オリゴは、第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の架橋オリゴ特異的配列及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列を含み、ランダム配列とすることができる、又は標的ヌクレオチド識別配列若しくは試料識別配列を含むことができる、第3のバーコードを任意選択で含み、
【0069】
第1の配列バーコード又は第2の配列バーコード又は第3のバーコードの少なくとも1つは、それぞれ第1のプローブ又は第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在し、第1の配列バーコード若しくは第2の配列バーコード又はその両方は、ランダム配列とすることができ、又は標的ヌクレオチド配列識別配列、試料識別配列及び/又は標的列挙用分子バーコードを含むことができ、T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列が第1のプローブ、第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在し、
【0070】
好ましくは、第1の標的特異的部分、第2の標的特異的部分、第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は第2のオリゴ特異的配列は、1個以上の化学修飾ヌクレオチドを互いに独立に含むことができる。
【0071】
好ましくは、第1のプローブの3'末端若しくは第2のプローブの5'末端又はその両方は、第1のプローブと第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾される。
【0072】
好ましくは、架橋オリゴは、第1のプローブの配列に相補的な配列若しくは第2のプローブの配列に相補的な配列又はその両方に1個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0073】
好ましくは、第1のプローブ、第2のプローブ又は架橋オリゴは、ウラシル特異的切り出し試薬を用いた切断によって直鎖化を可能にするデオキシウリジン部分を含む。
【0074】
好ましくは、第1のプローブの3'末端若しくは第2のプローブの5'末端又はその両方は、第1のプローブと第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾される。
【0075】
好ましくは、第1のプローブ若しくは第2のプローブ又はその両方の架橋部分は、架橋オリゴとの結合を改善することができる化学修飾塩基を含む。
【0076】
別の一側面においては、本発明は、複数の試料中の1つ以上の標的配列の有無の判定及び/又は定量化におけるハイスループット配列決定のための、第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴの使用を提供する。
【0077】
第1のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第1の架橋オリゴ特異的配列、任意選択で第1の汎用配列、任意選択で第1の配列バーコード、及び第1のプローブの3'末端における第1の標的特異的部分を含む。
【0078】
第2のプローブは、分子の5'末端から出発して、任意選択で5'リン酸、第2の標的特異的部分、任意選択で第2の配列バーコード、任意選択で第2の汎用配列、及び第2のプローブの3'末端における第2の架橋オリゴ特異的配列を含む。
【0079】
架橋オリゴは、第1のプローブ及び第2のプローブのそれぞれ第1の架橋オリゴ特異的配列及び第2の架橋オリゴ特異的配列に相補的な配列を含み、ランダム配列とすることができる、又は試料識別配列を含むことができる、第3のバーコードを任意選択で含む。
【0080】
第1の配列バーコード又は第2の配列バーコード又は第3のバーコードの少なくとも1つは、それぞれ第1のプローブ又は第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在し、第1の配列バーコード若しくは第2の配列バーコード又はその両方は、ランダム配列とすることができ、又は標的ヌクレオチド配列識別配列、試料識別配列及び/又は標的列挙用分子バーコードを含むことができ、T7RNAポリメラーゼ用プロモーター配列が第1のプローブ、第2のプローブ又は架橋オリゴ中に存在する。
【0081】
第1の標的特異的部分、第2の標的特異的部分、第1の架橋オリゴ特異的配列及び/又は第2の架橋オリゴ特異的配列は、好ましくは、1個以上の化学修飾ヌクレオチドを互いに独立に含む。
【0082】
第1のプローブと第2のプローブは、プローブのそれぞれの標的特異的セクションが標的配列上の本質的に隣接するセクションとハイブリッド形成すると連結して、連結プローブを与える。T7RNAポリメラーゼは、好ましくは複数の試料の貯蔵後に、複数の試料からの連結プローブの増幅に使用される。増幅産物は、さらに、1つ又は複数の識別配列を決定するためにハイスループット配列決定技術に供される。
【0083】
好ましくは、第1のプローブの3'末端若しくは第2のプローブの5'末端又はその両方は、第1のプローブと第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾される。
【0084】
好ましくは、架橋オリゴは、第1のプローブの配列に相補的な配列若しくは第2のプローブの配列に相補的な配列又はその両方に1個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0085】
好ましくは、第1のプローブ、第2のプローブ又は架橋オリゴは、ウラシル特異的切り出し試薬を用いた切断によって直鎖化を可能にするデオキシウリジン部分を含む。
【0086】
好ましくは、第1のプローブの3'末端若しくは第2のプローブの5'末端又はその両方は、第1のプローブと第2のプローブの化学連結を可能にするように修飾される。
【0087】
好ましくは、第1のプローブ若しくは第2のプローブ又はその両方の架橋部分は、架橋オリゴとの結合を改善することができる化学修飾塩基を含む。
【0088】
本発明の更なる一側面は、本発明の方法に使用されるキットに関する。キットは、本明細書に記載の第1のプローブ、第2のプローブ及び架橋オリゴを含む。本発明の特定の一効果は、独特のプローブ設計、すなわちプローブトリプレットを用いて目的の標的配列の検出及び増幅を可能にすることである。結合性の改善されたプローブが設計され、アッセイの特異性、感度及び精度が高くなる。本発明は、癌診断法又は胎児染色体異常に応用されるが、SNP及び/又はインデルなどの1つ以上の配列及び/又は多形について1つ又は複数の試料の遺伝子型を同定することに限定されない。
【0089】
特定の好ましい一実施形態においては、架橋オリゴは、試料を同定する情報を含み、独特の識別配列を含む。こうした場合においては、第1及び第2のプローブは、すべての試料に普遍的に適用可能である(かつ標的を同定する情報のみを含む)。好ましい一実施形態においては、したがって、各試料の標的配列の列挙を可能にする独特の配列を含むバーコードを架橋オリゴが含む、本発明に係る方法、キット又は使用が提供される。
実験の項
【0090】
以下の実験は、本発明の様々な実施形態の例示を提供するが、本発明はこれらの実験に限定されない。
【0091】
ケース1:進行肺癌の高齢者は、第一選択の処置として化学療法により前処置される。組織生検による腫瘍の分析は、化学療法及び患者の状態のために適用できない。したがって、患者の腫瘍から組織DNAを得る可能性はない。第二選択の処置の場合、Guardant360液体生検が行われ、その結果に基づいて、患者は癌の標的処置を受ける。経過観察では、標的変異及び関連する耐性変異を追跡すべきである。処置費用は7000ユーロ/月であり、使用薬物に対して起こり得る耐性の検出のためには週1回の試料が最適であろう。(急速なTA時間の)個別化された標的変異分析をちょうど耐性発生時に非侵襲的に行うことができた場合、新しい広範囲な液体生検を考慮することができ、新しい標的薬物を考慮することができる。
【0092】
耐性の発生したもはや効果のない薬物を除外する節減は、1~3か月の処置で7~21000ユーロである。さらに、次世代処置の選択肢の利点がより速く得られ、疾患の結果を改善することができる。
【0093】
ケース2:母体血における胎児染色体のトリソミーを検出する多重連結アッセイ。
【0094】
各関連遺伝子が、典型的な変異を検出することができる複数のプローブによって標的にされる。複数のプローブを使用することによって、複数の遺伝子の変異体の割合を定量的に確認することができる。一般に、10種の連結複合体が、母体血からの胎児染色体異常の検出のために各染色体を標的にする。10種のプローブの使用は、各染色体で10種の独立した複製をもたらす。1組の複数の連結複合体が重要な変異を検出する。複製染色体カウントデータが、染色体標的の標準偏差パターンからの有意な偏差を検出するために統計学的ツールを用いて分析される。染色体標的の標準偏差パターンからの偏差によって、欠失(ウィリアムズ症候群など)及びトリソミー(パトー、エドワーズ、ダウン症候群など)を確認することができる。
【0095】
ケース3:癌患者の循環DNA中の腫瘍学的に関連する変異を検出する多重連結アッセイ。
【0096】
癌患者由来の循環DNA中の腫瘍学的に関連する遺伝子変異を検出する場合、各関連遺伝子が、癌タイプに典型的な変異を検出することができる複数の連結複合体によって標的にされる。多重連結アッセイによって、複数の遺伝子の変異体の割合を定量的に確認することができる。
【0097】
ケース4:糞便又は廃水試料中の多剤耐性遺伝子を検出し、定量化する多重連結アッセイ。
【0098】
糞便又は廃水材料から抽出されたDNA中の抗生物質耐性遺伝子を検出する場合、各抗生物質耐性遺伝子が複数の特異的連結複合体によって標的にされる。標的遺伝子1個当たり数個の異なる連結複合体を使用すると、各遺伝子に対して独立した技術的複製が得られる。この複製カウントデータを統計学的ツールで分析して、多数の試料中の多数の抗生物質耐性遺伝子のコピー数を定量化する。
図面の詳細な説明
【0099】
図1に、本発明の一実施形態のワークフローを示す。ステップ1においては、試料から抽出した核酸(DNA又はRNA)(102)を1組の連結複合体(104)と接触させる。連結複合体を標的核酸(106)上でアニールする。ステップ2においては、アニールされた連結複合体を連結し、連結された連結複合体(108)を得る。ステップ3においては、複数の試料からの連結された連結複合体(110)を一緒に貯蔵する(112)。ステップ4においては、連結された連結複合体からT7RNAポリメラーゼを用いてRNA(114)を合成する。プローブ及び試料DNAをエンドヌクレアーゼとエキソヌクレアーゼの混合物を用いて除去してもよい。ステップ5においては、RNAをcDNA(116)に変換し、PCR又はエマルジョンPCRによって任意選択で増幅する。ステップ6においては、増幅されたDNAを次世代DNA塩基配列決定法によって配列決定する。ステップ7においては、DNA塩基配列決定結果を生物情報学パイプラインによって標的カウントに変換する。
【0100】
図2Aは、本明細書の一実施形態に係る複数のプローブ体を有するプローブトリプレットの原理構造を示す。複数のプローブ体は、試料アニーリング前に組み立てられる左プローブ、右プローブ及び架橋オリゴを含む。左プローブの最初の塩基は、修飾1(200)と称される、酵素連結のためのリン酸部分又は隣接プローブの5'末端への化学連結を可能にする修飾を任意選択で含む。左プローブの15~25塩基は、架橋部位1と称される、効率的架橋オリゴ結合のための化学修飾塩基を更に含む架橋結合配列1(202)を含む。上述のセグメントは、T7RNAポリメラーゼプロモーターの逆相補配列も任意選択で含む。上述したように、異なる試料における標的配列の列挙のためのすべての必要情報をT7RNAポリメラーゼが転写することができるように架橋オリゴ並びに第1のプローブ及び第2のプローブが設計されたとすれば、このプロモーター配列は、架橋オリゴ中の代わりに、第1のプローブ又は第2のプローブ中に存在してもよい。左プローブの次の15~30塩基は、汎用部位1(204)と本明細書で称されるPCRプライマー用の汎用結合部位を任意選択で含む。さらに、左プローブは、バーコード1(206)と称される分子特異的バーコード又は試料特異的バーコードを形成するランダムヌクレオチドのセグメントを含む5'末端から次の10~20塩基を任意選択で含む。さらに、左プローブは、遺伝子標的に結合する5'末端から次の15~30塩基も含む(208)。202又は208のヌクレオチドの一部又はすべては、標的又は架橋オリゴ(226)に対するプローブの親和性を高める化学修飾を含むことができる。左プローブの最後の塩基は、修飾1(210)と称される、酵素連結のためのリン酸部分又は隣接プローブの5'末端への化学連結を可能にする修飾を任意選択で含む。
【0101】
右プローブの最初の塩基は、修飾2(212)と称される、酵素連結のためのリン酸部分又は隣接プローブの5'末端への化学連結を可能にする修飾を任意選択で含む。右プローブの5'末端から15~30塩基は、遺伝子標的に結合する右プローブの一部を含む(214)。右プローブの5'末端から次の10~20塩基は、バーコード2(216)と称される分子特異的バーコード又は試料特異的バーコードを形成するランダムヌクレオチドのセグメントを任意選択で含む。右プローブの5'末端から次の15~30塩基は、汎用部位2(218)と称されるPCRプライマー用の汎用結合部位を任意選択で含む。右プローブの最後の15~25塩基は、架橋配列2(220)と称される効率的架橋オリゴ結合のためのアンカー配列を含む。上述のセグメントは、T7RNAポリメラーゼプロモーターの逆相補配列も任意選択で含む。上述したように、異なる試料における標的配列の列挙のためのすべての必要情報をT7RNAポリメラーゼが転写することができるように架橋オリゴ並びに第1のプローブ及び第2のプローブが設計されたとすれば、このプロモーター配列は、架橋オリゴ中の代わりに、第1のプローブ又は第2のプローブ中に存在してもよい。214又は220のヌクレオチドの一部又はすべては、標的又は架橋オリゴ(224)に対するプローブの親和性を高める化学修飾を含むことができる。右プローブの最後の塩基は、修飾2(222)と称される、酵素連結のためのリン酸部分又は隣接プローブの5'末端への化学連結を可能にする修飾を任意選択で含む。
【0102】
架橋配列3(226)と称される架橋オリゴの5'末端から最初の15~25塩基は、左プローブの架橋配列1(202)に逆相補的であり、結合増強のための化学修飾ヌクレオチドを任意選択で含む。架橋配列4(224)と称される架橋オリゴの次の15~25塩基は、右プローブの架橋配列2配列(220)に逆相補的であり、結合増強のための化学修飾ヌクレオチドを任意選択で含む。架橋配列3(226)又は架橋配列4(224)は、T7RNAポリメラーゼプロモーターの配列を任意選択で含む。
【0103】
図2Bは、本明細書の一実施形態に係る第1のプローブと第2のプローブの間を満たすギャップを示す。ここで、架橋オリゴは、架橋配列3(226)と架橋配列4(224)の間にギャップ配列(228)を含む。ギャップ配列(228)は、T7RNAポリメラーゼプロモーターの配列を任意選択で含む。左プローブと右プローブの間のギャップは、ポリメラーゼ及び1個以上のヌクレオチドを導入することによって充填される。このプロセスでは、Stoffel断片、Taqポリメラーゼ又はPhusionポリメラーゼを使用することができる。ポリメラーゼは、(a)汎用架橋オリゴ配列に相補的なヌクレオチド及び(b)標的配列に相補的なヌクレオチドを付加し、それによって第1のプローブと第2のプローブの間の2つのギャップ、すなわちギャップ1とギャップ2を充填して、架橋オリゴに相補的な左プローブと右プローブを連結する。こうした方法においては、架橋オリゴ中の位置228にバーコードが存在する場合、バーコードは相補配列に組み込まれる。プローブ1若しくはプローブ2及び/又は標的配列208及び214中にバーコードが存在する場合、バーコードが架橋オリゴに組み込まれるように、架橋オリゴプローブ224が、連結プローブに相補的な5'部位又は3'部位から伸長し、それによって1個以上の連結された連結複合体が形成されてもよい。しかし、ポリメラーゼの作用が標的配列の部位において第1のプローブと第2のプローブの連結を妨げないことに注意すべきである。例えば、標的配列とハイブリッド形成する第1のプローブ及び第2のプローブの部分に例えば存在する二本鎖DNA部分にポリメラーゼが到達するとその作用を停止するポリメラーゼを使用することができる。T7RNAポリメラーゼプロモーター配列は、連結複合体中の架橋オリゴの位置226、228又は224中に埋め込むことができる。デオキシウリジン部分は、左プローブの位置204と206の間又は206内に埋め込むことができる。
【0104】
図3は、標的との結合を改善する、又は化学連結を可能にする、プローブ修飾例の略図である。標的結合を改善する化学修飾としては、リボ核酸、ペプチド核酸及び/又はロックド核酸が挙げられるが、それらに限定されない。化学連結を可能にする化学修飾としては、銅によって触媒される付加環化において結合することができる5'-アジド3'-アルキン修飾が挙げられるが、それらに限定されない。
【0105】
図4は、染色体標的の標準偏差パターンからの有意な偏差を検出するために統計学的ツールを用いた複製染色体のカウントデータの分析の概要である。複数の試料における複数の遺伝子標的(404)のプロファイリングを複数の標的特異的連結複合体混合物(402)を用いて行う。さらに、複数の遺伝子標的404は、母体血から抽出した核酸を含む。複数のプローブは、典型的な変異を検出することができる各関連遺伝子を標的にする。一般に、少なくとも10、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも500、最も好ましくは少なくとも1000種のプローブが、母体血からの胎児染色体異常の検出のための各染色体を標的にする。少なくとも10種のプローブの使用は、各染色体で少なくとも10種の独立した複製をもたらす。1組の複数のプローブは、特定の変異を検出する。複製染色体カウントデータが、染色体標的の標準偏差パターンからの有意な偏差を検出するために統計学的ツールを用いて分析される。染色体標的の標準偏差パターンからの偏差によって、ウィリアムズ症候群などの欠失及びパトー、エドワーズ、ダウン症候群などのトリソミーを確認することができる。
【0106】
図5は、1組の標的特異的連結複合体混合物(502)を複数の遺伝子標的(504)と混合することによって、複数の遺伝子の変異体の割合を定量的に確認する概要である。複数の遺伝子標的(504)は、患者の血漿から抽出した核酸(DNA)を含む。極めて多数の試料における複数の遺伝子標的(504)のプロファイリングを複数の標的特異的連結複合体混合物(502)を用いて行う。各関連遺伝子が、典型的な変異を検出することができる複数の異なるプローブによって標的にされる。複数の遺伝子標的(504)のプロファイリングの場合、20種のプローブが各遺伝子を標的にして、癌患者由来の循環DNA中の腫瘍学的に関連する変異を検出する。
【0107】
図6は、本明細書の一実施形態に係る多重連結依存性プローブ増幅のフローチャートである。ステップ604においては、(標的)核酸DNA/RNAが2個以上の試料から抽出される。こうした試料は、生検材料、唾液及び他の分泌物、呼気水分抽出物、組織、血漿(液体生検材料)を含めた人体から前もって得ることができ、2個以上の試料を水、廃水、土壌などを含めた環境から得ることができる。ステップ606においては、試料の各々に、連結複合体が用意される。連結複合体は、左プローブ、右プローブ及び架橋オリゴプローブを含む。ステップ608においては、標的試料を連結複合体と混合して、自己アニーリング可能にする。任意選択のステップ610においては、第1のプローブと第2のプローブの間でギャップを充填してもよく、さらに、環状に連結された連結複合体が形成されるように架橋オリゴプローブ伸長をポリメラーゼ酵素を用いて行ってもよい。これは、例えば、プローブトリプレットが組み立てられるとき、又は結合した標的特異的部分が伸長及び連結されるときに起こり得る。ステップ612においては、環状に連結された連結複合体が形成されるように、連結複合体がリガーゼ酵素を用いて連結される。ステップ614においては、複数のこうした連結された連結複合体が複数の試料セットから貯蔵される。任意選択のステップ616においては、任意選択のウラシル特異的切り出し試薬を添加して、環状に連結された連結複合体の切断によって直鎖化を促進する。ステップ618においては、連結された連結複合体の架橋オリゴ配列(又は第1若しくは第2のプローブ)上のT7RNAポリメラーゼプロモーター部位に結合するT7RNAポリメラーゼを添加して、RNAを転写する。任意選択のステップ620においては、DNA特異的エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼを反応混合物に添加して、遊離試料及びプローブを除去する。ステップ622においては、cDNAをRNAから逆転写プロセスによって合成する。任意選択のステップ624においては、cDNAは、PCR又はエマルジョンPCRによって増幅される。ステップ626においては、配列決定がハイスループット配列決定によって行われる。
【0108】
添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく、上に記載の本開示の実施形態の改変が可能である。
【配列表】