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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】水性2液型1コート塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220518BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220518BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220518BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220518BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D167/00
C09D175/04
C09D5/02
B05D1/36 A
B05D1/36 Z
B05D7/24 301U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017229456
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019099625
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大西 康平
(72)【発明者】
【氏名】今中 健二
(72)【発明者】
【氏名】北川 博視
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152232(JP,A)
【文献】特開2008-223013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)、ポリイソシアネート化合物(C)及び着色顔料(D)を含有する水性2液型1コート塗料組成物であって、
水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価100~200mgKOH/g、酸価5~50mgKOH/g のアクリル樹脂であり、
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)が、原料の酸成分として脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)を含み、その含有量が酸成分の合計量を基準として少なくとも30モル%であり、且つ原料のアルコール成分として分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(x2)を含み、その含有量がアルコール成分の合計量を基準として少なくとも40モル%であって、水酸基価100~200mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/gのポリエステル樹脂であり、
着色顔料(D)の配合量が、水性2液型1コート塗料組成物中の、水酸基含有アクリル樹脂(A) 、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)及びポリイソシアネート化合物(C)の合計固形分100質量部を基準として、20~150質量部の範囲内であることを特徴とする水性2液型1コート塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有アクリル樹脂(A)が、有機溶剤の存在下で相異なる組成の重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて重合して得られるアクリル樹脂を水分散して得られ、そのうちの一つである重合性不飽和モノマー成分(I)が、エポキシ基含有有重合性不飽和モノマー(a1)、水酸基含有有重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の有重合性不飽和モノマー(a3)を含むものであり、別の少なくとも1つの段階の重合で使用される重合性不飽和モノマー成分(II)が、カルボキシル基含有有重合性不飽和モノマー(b1)、水酸基含有有重合性不飽和モノマー(b2)及びその他の有重合性不飽和モノマー(b3)を含んでなるものである請求項1記載の水性2液型1コート塗料組成物。
【請求項3】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)の原料の酸成分としてダイマー酸を除く請求項1又は2に記載の水性2液型1コート塗料組成物。
【請求項4】
金属製被塗物にカチオン電着塗料を塗装した後、その上に請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性2液型1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項5】
プラスチック製被塗物にプライマー塗料を塗装した後、その上に請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性2液型1コート塗料組成物を塗装することを特徴とする塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温硬化性に優れ、硬度、仕上り外観に優れたソリッド色の塗膜が形成できる水性2液型1コート塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板部にカチオン電着塗料などの下塗塗料及び中塗り塗料を塗装し、ついでその塗面にソリッド系等の上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法や、カチオン電着塗料などの下塗塗料の塗面に直接上塗り塗料を塗装して仕上げる塗装方法はすでに公知である。これらの方式は、上塗り塗膜を1コート方式で形成させるために工程が少なく、生産性が高いという利点を有する。
【0003】
従来、このようなソリッド色塗料として有機溶剤系が主流であるが、省資源、公害対策上の観点から、水性の上塗り1コート用塗料の開発が望まれていた。たとえば特許文献1では、(A)水酸基価120~160、酸価20~40であるポリエステル樹脂、(B)水性メラミン樹脂及び(C)白色系着色顔料を含有することを特徴とする水性上塗り1コート用白色系塗料が提案され、リコート付着性がすぐれた塗膜を形成できることが示されている。
【0004】
近年、エネルギー低減の観点から、塗膜の焼付け温度の低温化が望まれており、またプラスチック素材でも上塗り塗膜を1コート方式で形成することが望まれており、たとえば特許文献2では水系アクリル樹脂(A)、水系ポリエステル樹脂(B)及び自己乳化性のイソシアネート硬化剤(C)を含有し、前記樹脂(A)は、水酸基価50~150mgKOH/g、数平均分子量が1000~5000であり、前記樹脂(B)は、酸価20~50mgKOH/g、水酸基価50~150mgKOH/g、数平均分子量1000~5000、溶解性パラメーターが8.5~9.7であり、且つダイマー酸成分を全単量体成分中に10~40質量%含有する2液型の水性1コート塗料組成物が提案され、外観性、耐候性、耐薬品性に優れた塗膜を得ることができることが示されている。
【0005】
しかしながら特許文献2の塗料組成物では、低温硬化性や仕上がり性には優れるが、塗膜硬度が不十分であり、硬度と仕上り外観との両立が出来ないという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-206439号公報
【文献】特開2014-152232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の不具合を解消し、低温硬化性に優れ、硬度、仕上り外観に優れたソリッド色の塗膜が形成できる水性2液型1コート塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)、ポリイソシアネート化合物(C)及び着色顔料(D)を含有する水性2液型1コート塗料組成物であって、水酸基含有アクリル樹脂(A)が、水酸基価100~200mgKOH/g、酸価5~50mgKOH/gのアクリル樹脂であり、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)が、原料の酸成分として脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)を含み、その含有量が酸成分の合計量を基準として少なくとも30モル%であり、且つ原料のアルコール成分として分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(x2)を含み、その含有量がアルコール成分の合計量を基準として少なくとも40モル%であって、水酸基価100~200mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/gのポリエステル樹脂であることを特徴とする水性2液型1コート塗料組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物によれば、低温硬化性に優れ、硬度、仕上り外観に優れた塗膜が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)、ポリイソシアネート化合物(C)及び着色顔料(D)を含有する水性2液型1コート塗料組成物である。
【0011】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水酸基価100~200mgKOH/g、酸価5~50mgKOH/gのアクリル樹脂であり、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0012】
特に本発明では、形成塗膜の硬度や仕上がり性の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A)が、有機溶剤の存在下で相異なる組成の重合性不飽和モノマー成分を多段階に分けて重合して得られるアクリル樹脂を水分散して得られ、そのうちの一つである重合性不飽和モノマー成分(I)が、エポキシ基含有有重合性不飽和モノマー(a1)、水酸基含有有重合性不飽和モノマー(a2)及びその他の有重合性不飽和モノマー(a3)を含むものであり、別の少なくとも1つの段階の重合で使用される重合性不飽和モノマー成分(II)が、カルボキシル基含有有重合性不飽和モノマー(b1)、水酸基含有有重合性不飽和モノマー(b2)及びその他の有重合性不飽和モノマー(b3)を含んでなるものであることが望ましい。
【0013】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a1)は、後述の重合性不飽和モノマー成分(II)に含まれるカルボキシル基と反応させ、重合性不飽和モノマー成分(I)による共重合体と重合性不飽和モノマー成分(II)による共重合体をグラフトさせ、アクリル樹脂エマルション水分散安定性をより一層向上させるために用いられるモノマーであり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。


【0014】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)は、水酸基含有アクリル樹脂(A)に、後述のポリイソシアネート化合物(C)と反応させるための水酸基を導入するために共重合されるモノマーであり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;アリルアルコール等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
その他の重合性不飽和モノマー(a3)としては、上記モノマー(a1)及びモノマー(a2)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(商品名、大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ-n-プロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(b1)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A)に水分散基を導入すると共に、上記重合性不飽和モノマー成分(I)による共重合体に含まれるエポキシ基と反応させる官能基を導入するために用いられるモノマーでもあり、具体的には(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0017】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(b2)としては、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a2)に列記した化合物と同様であり、これらの中から単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
その他の重合性不飽和モノマー(b3)としては、上記モノマー(b1)及びモノマー(b2)以外の重合性不飽和モノマーであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー等;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ-n-プロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
水酸基含有アクリル樹脂(A)において上記重合性不飽和モノマー成分(I)におけるモノマー(a1)~(a3)の使用割合は本発明の範囲内にある限り適宜調整でき、一般に、
モノマー(a1)が0.1~40質量%、好ましくは0.5~25質量%、
モノマー(a2)が15~54.9質量%、好ましくは20~44.5質量%、
モノマー(a3)が45~84.9質量%、好ましくは55~79.5質量%、
の範囲内であることができる。
【0020】
また、上記重合性不飽和モノマー成分(II)におけるこれらモノマー(b1)~(b3)の使用割合は本発明の範囲内にある限り適宜調整でき、一般に、
モノマー(b1)が5~60質量%、好ましくは10~50質量%、
モノマー(b2)が20~75質量%、好ましくは25~65質量%、
モノマー(b3)が20~75質量%、好ましくは25~65質量%、
の範囲内であることができる。
【0021】
また、これら重合性不飽和モノマー成分(I)及び(II)において、重合性不飽和モノマー成分(I)に含まれるエポキシ基1モルに対する重合性不飽和モノマー成分(II)に含まれるカルボキシル基の量としては3~30モル、特に6~20モルの範囲内となるように調整されることが、水酸基含有アクリル樹脂(A)の貯蔵安定性並びに得られる塗膜の仕上がり性の観点からも適している。
【0022】
本発明において上記重合性不飽和モノマー成分(I)及び(II)の使用割合は、モノマー成分(I)/モノマー成分(II)の質量比で60/40~95/5特に70/30~90/10の範囲内にあることが水酸基含有アクリル樹脂(A)の水分散安定性と得られる塗膜の仕上がり性の点から適している。
【0023】
上記重合性不飽和モノマー成分(I)及び(II)の重合は、特に制限されるものではないが、例えば、有機溶剤の存在下で加熱しながら重合性不飽和モノマー成分(I)を滴下して重合し、重合性不飽和モノマー成分(I)による共重合体溶液中に、重合性不飽和モノマー成分(II)を滴下して重合させることが、得られる水酸基含有アクリル樹脂(A)の水分散性、貯蔵安定性が優れる傾向にあり望ましい。
【0024】
また、上記重合性不飽和モノマー成分(I)及び(II)以外の重合性不飽和モノマー成分による重合を必要に応じて適宜追加してもよい。
【0025】
モノマー(I)及び(II)を重合させる際の反応温度は通常約60~約200℃、好ましくは約70~約160℃の範囲であり、そして反応時間は通常約10時間以下、好ましくは約0.5~約6時間である。
【0026】
上記の反応においては、適宜、重合開始剤を添加することが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-アミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4´-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0027】
これら重合触媒は単独で又は2種以上併用してもよい。また、重合性不飽和モノマー成分(I)及び重合性不飽和モノマー成分(II)の重合時で重合開始剤の種類や量が異なっても何ら問題ない。
【0028】
重合開始剤の配合量としては、その段階で使用される重合性不飽和モノマー100質量部に基づいて0.01~20質量部、特に0.1~15質量部、さらに特に0.3~10質量部の範囲が、得られる水酸基含有アクリル樹脂(A)の水分散安定性の点から好ましい。
【0029】
上記重合は通常有機溶剤の存在下で行う。有機溶剤の選択は、重合温度、水分散体製造時の取り扱いやすさ及び得られる水分散体の長期貯蔵安定性を考慮して適宜行うことができる。
【0030】
また、アクリル樹脂を水中に分散させる場合にも有機溶剤を添加することが可能である。
【0031】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤などが好ましい。具体的には、例えば、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のカルビトール系溶剤などを挙げることができる。
【0032】
また、有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤も水酸基含有アクリル樹脂(A)の水分散安定性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、この有機溶剤として、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを挙げることができる。
【0033】
上記の如きして得られる水酸基含有アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量が5,000~100,000、特に10,000~50,000、さらに特に10,000~30,000の範囲内にあることが、水酸基含有アクリル樹脂(A)の水分散安定性及び塗膜の仕上がり性、平滑性などの観点から適している。
【0034】
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/minの条件下で測定することができる。
【0035】
水分散の手法としては、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基等のアニオン性基の一部または全部を塩基性化合物で中和して水中に分散するか又は、塩基性化合物を含有する水性媒体中に該アクリル樹脂を添加して分散させることも可能である。
【0036】
中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミンなどの有機アミン;或いはカセイソーダ、カセイカリなどのアルカリ金属水酸化物等を挙げることができ、アクリル樹脂中のカルボキシル基に対し0.1~1.5当量、好ましくは0.5~1.2当量用いることが適当である。
【0037】
上記の如きして得られる水酸基含有アクリル樹脂(A)は、重合性不飽和モノマー成分(I)による共重合体をコアとし、重合性不飽和モノマー成分(II)による共重合体をシェルとするコアシェル型アクリルエマルションであることができ、その平均粒子径が0.05~1.0μm、好ましくは0.08~0.8μmの範囲内とすることができる。
【0038】
本明細書において平均粒子径としてはサブミクロン粒子アナライザーN4(商品名、ベックマン・コールター株式会社製、粒度分布測定装置)にて、試料を脱イオン水にて測定に適した濃度に希釈して、常温(20℃程度)にて測定した値とする。
【0039】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)は、貯蔵安定性、形成される塗膜の仕上がり性の観点から、固形分あたりの水酸基価が100~200mgKOH/g、特に100~130mgKOH/g、さらに特に100~120mgKOH/gの範囲内、固形分あたりの酸価が5~50mgKOH/g、特に10~35mgKOH/gさらに特に20~30mgKOH/g、の範囲内である。
【0040】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)を塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、20~70質量部、好ましくは20~65質量部の範囲内で含有することができる。
【0041】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、酸成分とアルコール成分の反応によって得られるものであり、水酸基価100~200mgKOH/g、好ましくは105~195 mgKOH/g、酸価10~30mgKOH/g、好ましくは10~25mgKOH/gのポリエステル樹脂である。
【0042】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、塗膜硬度確保の観点から、原料の酸成分として脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)を含み、その含有量が酸成分の合計量を基準として少なくとも30モル%であり、且つ原料のアルコール成分として分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(x2)を含み、その含有量がアルコール成分の合計量を基準として少なくとも40モル%である。
【0043】
脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)には、1分子中に少なくとも1個の脂環式構造(好ましくは4~6員環構造)と少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物及び該化合物の酸無水物が包含され、具体的には、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸-1,2-無水物、ヘット酸等が挙げられ、なかでも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を好適に用いることができる。上記脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
【0044】
前記脂環族多価カルボン酸(酸無水物を含む)(x1)と併用し得る他の酸成分としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル樹脂の製造に際して通常使用されるものが同様に使用可能であり、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの無水物等の脂肪族多価カルボン酸(酸無水物を含む);フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸(酸無水物を含む);ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸等を挙げることができる。
【0045】
前記アルコール成分としては、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができ、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
【0046】
分岐アルキレン基を有する炭素原子数が少なくとも5のジオール(x2)としては、上記2価アルコールのうち、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールを挙げることができる。
【0047】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)の合成方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分を、窒素気流中、約150~約250℃で5~10時間程度加熱し、水酸基とカルボキシル基のエステル化反応を行なうことにより合成することができる。
【0048】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応せしめる際には、これらを一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させてハーフエステル化させてもよい。
【0049】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、得られる塗膜の平滑性及び塗膜性能の観点から、一般に300~50000、特に500~20000、さらに特に800~10000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。また水酸基含有ポリエステル樹脂(B)は、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが好ましい。
【0050】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B)を塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、10~50質量部、好ましくは10~45質量部の範囲内で含有することができる。
【0051】
上記ポリイソシアネート化合物(C)は、1分子中に少なくとも2個のブロック化されていないイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0052】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0053】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0054】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0055】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-もしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0056】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。
【0057】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
【0058】
また、ポリイソシアネート化合物(C)としては、得られる塗膜の平滑性などの観点から、水分散性ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。該水分散性ポリイソシアネート化合物としては、水性媒体中に安定に分散可能なポリイソシアネート化合物であれば制限なく使用することができるが、なかでも、親水性に変性した親水化ポリイソシアネート化合物(C-1)、ポリイソシアネート化合物(C)と界面活性剤とを予め混合することにより水分散性を付与したポリイソシアネート化合物等を好適に使用することができる。
【0059】
上記親水化ポリイソシアネート化合物(C-1)としては、例えば、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基を、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させて得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(C-1-1)、ポリオキシエチレンのモノアルコールなどの親水性ポリエーテルアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(X2-1-2)などが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、べタイン構造含有基などのアニオン性基を有し、且つイソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物が包含され、該化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物に親水性を付与することができる。アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(C-1-1)としては、特にスルホン酸基を有するものが好適である。
【0061】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)及びポリイソシアネート化合物(C)を、水酸基含有樹脂中の水酸基1当量に対し、ポリイソシアネート化合物(C)中のイソシアネート基が1.0~2.0当量、特に1.0~1.7当量となる割合で含有することが低温硬化性の観点から好適である。
【0062】
上記着色顔料(D)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などの着色顔料を挙げることができ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
着色顔料(D)の配合量は、水性2液型1コート塗料組成物中の、上記水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)及びポリイソシアネート化合物(C)の合計固形分100質量部を基準として、一般に1~200質量部、好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは50~120質量部の範囲内であることが好適である。
【0064】
上記着色顔料(D)には、必要に応じて、体質顔料や光輝性顔料を併用することができる。体質顔料としては、例えばクレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、光輝性顔料としては例えばアルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレークなどを挙げることができ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記着色顔料(D)の分散には、必要に応じて、従来公知の顔料分散用樹脂や分散助剤が使用可能である。顔料分散用樹脂としては、通常、水溶性アクリル樹脂が用いられ、特に着色顔料に対しては高顔料濃度での濡れ性や分散安定性、さらに得られる塗膜の光沢や耐水性等の点から、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する重合性不飽和モノマーやポリオキシアルキレン鎖を有する非イオン性重合性不飽和モノマー、及びその他のエチレン性不飽和モノマーからなるモノマー混合物をラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られるアクリル共重合体が好適に使用できる。
【0066】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、さらに必要に応じて、(A)及び(B)成分以外の樹脂成分、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を適宜含有することができる。
【0067】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物の固形分濃度は、通常、30~70質量%であるのが好ましく、35~65質量%であるのがより好ましく、40~60質量%であるのが更に好ましい。
【0068】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、通常、水酸基含有アクリル樹脂(A)、水酸基含有ポリエステル樹脂(B)及び着色顔料(D)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(C)を含有する硬化剤とからなる二液型塗料とするものである。
【0069】
本発明の水性2液型1コート塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの中でも、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。その塗布量は、硬化膜厚として、通常、10~80μm、好ましくは10~50μmとなる量であるのが好ましい。得られる塗膜を加熱して硬化乾燥する場合には、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等により、50~120℃、好ましくは60~110℃の温度で、10分間~40分間程度加熱するのが適当である。
【0070】
被塗物としては、特に制限はなく、例えば、金属、プラスチックなどの素材からなるものを挙げることができる。なかでも、金属製及び/又はプラスチック製の自動車車体、又はその部品、特に自動車車体用の鋼板には、通常行われているように、必要に応じて、化成処理を行うことができ、また、予めカチオン電着塗装を施しておくこともできる。またプラスチック面には必要に応じてプライマーを塗装しておくことができる。
【実施例
【0071】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0072】
水酸基含有アクリル樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを50部入れ、撹拌しながら窒素気流下120℃まで昇温した。120℃に達したところで下記混合溶液1を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃の温度に1時間保持した。
【0073】
≪混合溶液1≫
スチレン 5部、
n-ブチルメタクリレート 13部、
i-ブチルメタクリレート 31.5部、
2-エチルヘキシルアクリレート 5部、
イソボルニルアクリレート 10部、
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 20部、
グリシジルメタクリレート 0.5部、
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 1.5部。
【0074】
引き続き120℃の温度を保持したまま、上記フラスコ中に、下記混合溶液2を1時間かけて滴下し、さらに滴下終了後120℃に1.5時間保持して水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。
【0075】
≪混合溶液2≫
i-ブチルメタクリレート 6部、
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 6部、
アクリル酸 3部、
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.3部。
【0076】
得られたアクリルポリオール溶液の樹脂固形分は77.5%であり、重量平均分子量は15000であった。続いて、得られたアクリルポリオール溶液から固形分が85%になるまでプロピレングリコールモノプロピルエーテルを減圧下で留去した。これを95℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミン2.41部を添加して30分間撹拌した。さらに、撹拌しながら樹脂固形分が45%となるように脱イオン水を2時間かけて滴下して、樹脂固形分あたりの酸価21mgKOH/g、樹脂固形分当たりの水酸基価112mgKOH/g、平均粒子径0.12μmの水酸基含有アクリル樹脂水分散体(A-1)を得た。
【0077】
製造例2~9
製造例1において各原料及び配合量を下記表1に示す内容とする以外は製造例1と同様にして各水酸基含有アクリル樹脂水分散体(A-2)~(A-9)を得た。
【0078】
(*)貯蔵安定性試験
上記製造例で得られた各水酸基含有アクリル樹脂水分散体について、下記試験方法に従って、貯蔵安定性の試験を行った。
貯蔵安定性;上記各水分散体を容量が約1Lのガラス瓶に800g入れ、40℃の恒温室中で120日間貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0079】
◎:沈降物の発生や粘度変化が全く認められない。
○:沈降物の発生や粘度変化が僅かに認められるが攪拌により元に戻る。
△:沈降物の発生や粘度変化が認められる。
×:沈降物の著しい発生及び/又は著しい粘度変化が認められる。
【0080】
【表1】
【0081】
水酸基含有ポリエステル樹脂(B)の製造
製造例10~15
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び精留塔を備えた4つ口フラスコに、下記表2に示すモル比の酸成分及びアルコール成分を仕込み、160℃まで昇温させた後、160℃から230℃まで3時間かけて生成する縮合水を精留塔を用いて溜去しながら昇温させ、その後230℃で2時間反応させた。
【0082】
次に精留塔を水分離器に付け替え、トルエンを適宜加え、230℃で還流状態を保持し、縮合水を水分離器で分離、溜去しながら縮合反応させた。
【0083】
樹脂酸価が7となった時点で、減圧下でトルエンを除去し、170℃まで冷却した。反応生成物に下記表1に示すモル比の無水トリメリット酸を添加し、170℃で60分間付加反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを反応生成物に対して10%加え、温度を85℃とした後、N,N-ジメチルエタノールアミンで中和し、さらに脱イオン水を徐々に添加して水分散体とすることにより、固形分45%の各ポリエステル樹脂(B-1)~(B-6)(pHはすべて8.5に調整)を得た。得られた各水酸基含有ポリエステル樹脂(B-1)~(B-6)の酸価、水酸基価及び数平均分子量を併せて下記表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
水性2液型1コート塗料の作製
実施例1
顔料分散ペースト(P-1)(注1)を固形分で100部、製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂水分散体(A-1)を固形分で30部、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(B-1)を固形分で20部、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH調整し、さらに硬化剤No.1として「バイヒジュールXP-2655」(商品名、住化コベストロウレタン社製、ポリイソシアネート化合物)30部(NC0/OH比が1.0)、エチルジグリコールアセテート20部を均一に混合し、固形分45%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度20秒の水性2液型1コート塗料(X-1)を得た。
【0086】
実施例2~19及び比較例1~2
実施例1において、表3の配合組成とする以外は実施例1と同様にして、水性2液型1コート塗料(X-2)~(X-21)を得た。尚、表3は固形分表示である。
【0087】
(注1)顔料分散ペースト(P-1):撹拌混合容器に、分散用アクリル樹脂(i)溶液(注3)を固形分質量で20部、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)80部及び脱イオン水30部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、白色の顔料分散液(P-1)を得た。
【0088】
(注2)顔料分散ペースト(P-2):撹拌混合容器に、分散用アクリル樹脂(ii)溶液(注4)を固形分質量で20部、「IRGAZIN RED L3660HD」(商品名、BASF社製、ジケトピロロピロール系赤顔料)15部及び脱イオン水30部を入れ、均一に混合し、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、赤色の顔料分散液(P-2)を得た。
【0089】
(注3)分散用アクリル樹脂(i)溶液:温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート18部、n-ブチルアクリレート15部、イソボルニルアクリレート35部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10部、アクリル酸1.5部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート0.5部、「NFバイソマーS20W」(商品名、第一工業製薬社製、分子量2000であるポリエチレングリコールモノメタクリレート)20部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分50%の分散用アクリル樹脂(i)溶液を得た。得られたアクリル樹脂は酸価が15mgKOH/g、水酸基価が48mgKOH/gであった。
【0090】
(注4)分散用アクリル樹脂(ii)溶液:温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の分散用アクリル樹脂(ii)溶液を得た。得られたアクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0091】
(注5)硬化剤No.2:「バイヒジュール3100」、商品名、住化コベストロウレタン社製、ポリイソシアネート化合物。
【0092】
試験用被塗物の作製
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT-10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物(1)とした。
【0093】
またポリプロピレン板(脱脂処理済み)に、プライマー「ソフレックス3100」(商品名:関西ペイント社製、ポリオレフィン含有導電性有機溶剤型塗料)を乾燥膜厚で10μmになるようにエアスプレー塗装を行ない、80℃で4分間加熱して試験用被塗物(2)とした。
【0094】
さらにABS板(脱脂処理済み)及びFRP板(脱脂処理済み)に、それぞれプライマー「ASX3807CD」(商品名:関西ペイント社製、ポリオレフィン含有導電性水性塗料)を乾燥膜厚で10μmになるようにエアスプレー塗装を行ない、80℃で4分間加熱して試験用被塗物(3)及び試験用被塗物(4)とした。
【0095】
試験塗板の作製
上記試験用被塗物(1)~(4)に、上記実施例及び比較例で得た各水性2液型塗料を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で35~45μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。次いで、80℃で20分間(キープ時間)加熱して各試験塗板を作製した。
【0096】
評価試験
上記実施例1~19及び比較例1~2で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を併せて下記表3に示す。
【0097】
仕上り性:各試験塗板(1)の塗膜表面の光の明暗パタ-ンを光学的に走査し反射光のコントラスト(強弱)を解析する装置であるBYK社製「Wave-Scan」により、波長領域600~1000μmで測定される長波長値(longterm waviness)及び波長領域100~600μmで測定される短波長値(shortterm waviness)を求め、夫々、仕上り肌のパラメ-タとして評価した。これらは、測定される光強度の分散値である。値が小さいほど仕上り肌(塗装面の平滑性)が良好であることを示す。
【0098】
20°グロス:各試験塗板(1)~(4)のJIS K5600-4-7(1999)の鏡面光沢度(20度)に準じて各塗面の光沢度を測定した。目安として、20度光沢値の値が80以上であれば、仕上り外観(光沢)は良好である。
【0099】
硬度:各試験塗板(1)を20℃の恒温室に24時間放置後、TUKON(American Chain&Cable Company社製、micro hardness tester)にて「ツーコン硬度」を測定した。
【0100】
Knoop Hardness Number(KHN)とも言われるツーコン硬度は、四角錘ダイヤモンド圧子を一定の試験荷重で材料の試験面に押し込み、生じた菱形のくぼみの大きさから読み取られる塗膜の硬さを表したものであり、数値が大きいほど硬度が高いことを表す。
【0101】
【表3】