(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】フィールドデバイス
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018231510
(22)【出願日】2018-12-11
(62)【分割の表示】P 2016500311の分割
【原出願日】2014-02-20
【審査請求日】2018-12-19
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ラブグレン, エリック, ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーガー, ロバート, マイケル
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-132577(JP,A)
【文献】特開2012-5004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143378(US,A1)
【文献】特開2006-187316(JP,A)
【文献】特開平10-227400(JP,A)
【文献】特表2006-501715(JP,A)
【文献】特開2012-38302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプロセスパラメータを検出するために設けられた第1のプロセスセンサと、
ネットワークマネジャと通信するように構成されたトランシーバと、
検出した第1のプロセスパラメータを処理するように構成されるプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プロセッサ及び前記ネットワークマネジャの両方に認識される指示された第1の適応スケジュールに従い、前記トランシーバを用いた信号の送受信、前記第1のプロセスセンサを用いた前記第1のプロセスパラメータの検出、前記第1のプロセスセンサの校正、及び前記第1のプロセスパラメータ
に応じた前記第1のプロセスセンサの操作のいずれかである第1のリソース集約的機能を実行するよう、前記トランシーバ及び前記第1のプロセスセンサに命令するように構成され、
前記第1の適応スケジュールは、前記リソース集約的機能の作動速度が、
カレンダー日付、時刻、時間帯、期間、曜日、休日、休業日を含む、1日、1週間及び/又は1年の中で経過した時間、且つ検出イベントに基づき変化するように、前記リソース集約的機能の
作動速度の変更を行うトリガとして検出イベントを指定するものであって、
前記プロセッサは、指定された前記検出イベントによってトリガされた前記リソース集約的機能の作動速度の変更を、前記トランシーバを介し、帯域幅に関する付随する要求と共に、前記ネットワークマネジャに伝達するように構成される
ことを特徴とするフィールドデバイス。
【請求項2】
前記トランシーバは、前記ネットワークマネジャとワイヤレス通信を行うように構成されたワイヤレストランシーバであることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項3】
前記ネットワークマネジャとの通信は、ワイヤレスメッシュネットワークを介した通信を含むことを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記指示された第1の適応スケジュールとは異なって与えられた第2の適応スケジュールに従い、前記トランシーバを用いた信号の送受信、前記第1のプロセスセンサを用いた前記第1のプロセスパラメータの検出、前記第1のプロセスセンサの校正、及び前記第1のプロセスパラメータ
に応じた前記第1のプロセスセンサの操作のいずれかである第2のリソース集約的機能を実行するように更に構成されることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項5】
前記第1のリソース集約的機能は、帯域幅を集中的に用いる機能であることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項6】
前記第1のリソース集約的機能は、電力を集中的に用いる機能であることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項7】
前記検出イベントは、前記第1のプロセスセンサによって検出されることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項8】
第2のプロセスパラメータを検出するために配置された第2のプロセスセンサを更に備え、
前記検出イベントは、前記第2のプロセスセンサによって検出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項9】
前記検出イベントは、前記トランシーバを介して受信されることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項10】
容量が限定された電源部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項11】
前記容量が限定された電源部は、充電量が限定された充電バッテリもしくはスーパーキャパシタ、または出力が限定されたローカルエネルギ回収器であることを特徴とする請求項10に記載のフィールドデバイス。
【請求項12】
タイムキーパを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス。
【請求項13】
前記指示された第1の適応スケジュールに従った前記リソース集約的機能の前記作動速度は、前記タイムキーパによって提供されるカレンダー日付、時刻、及び曜日の少なくとも1つに基づいて変化することを特徴とする請求項12に記載のフィールドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね産業プロセスフィールドデバイスに関し、より具体的には、産業フィールドデバイスのためのアクティビティスケジューリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
用語「フィールドデバイス」は、圧力、温度、及び流量といったパラメータを測定し、制御する、広範にわたるプロセス管理デバイスを包含するものである。多くのフィールドデバイスは、産業プロセス変数を検出または操作するためのトランスデューサと、制御室のコンピュータなどの遠隔制御デバイスまたは遠隔監視デバイスとの間の通信中継器としての役割を果たすトランスミッタである。例えば、センサの出力信号は、遠隔制御デバイスまたは遠隔監視デバイスとの有効な通信には不十分であるのが一般的である。トランスミッタは、センサからの通信を受信し、このセンサ信号を、長距離の通信に有効な形式(例えば、変調した4-20mA電流ループ信号、またはワイヤレスプロトコル信号)へと変換し、変換した信号を遠隔制御デバイスまたは遠隔監視デバイスに送信することによって、この問題を解消する。
【0003】
ワイヤレスフィールドデバイスネットワークは、異種のプロセス及び環境を制御し、監視するために使用される。単一のフィールドデバイスネットワークには、例えば、油田または製造プラントなどの広範なエリアにわたり、プロセスパラメータを検出したり操作したりするために配置されたフィールドデバイスが含まれることがある。センサやアクチュエータを主体とする用途のために構成されたワイヤレスネットワークシステムの場合、高額な設置費用を生じることなく、設備、センサ、並びにアクチュエータ及び安全監視デバイス或いはヒューマンインターフェースデバイスを配置しなければならないのに、交流120V商用電源または電力供給データバスといった電力設備が、付近に設置されていなかったり有害な場所への設置を認められなかったりすることから、ネットワークにおける多くのフィールドデバイスがローカルの電力供給を必要とする。「ローカルの電力供給」とは、自給式の電気化学的な電源(例えば、長寿命バッテリまたは燃料電池)などのローカル電源、または低電力のエネルギ回収式電源(例えば、振動発電、太陽発電、または熱電発電)による電力供給を意味する。ローカル電源の共通の特徴は、長寿命バッテリの場合のように電力を蓄えるもの、及び太陽電池パネルの場合のように電力を生成するもののいずれにおいても、限られたエネルギ容量、即ち限定された電力容量にある。多くの場合、低い設置コストとするための経済的な必要性から、ワイヤレスフィールドデバイスネットワークの一部として通信を行うバッテリ電力供給式デバイスの必要性を余儀なくされる。再充電できない一次電池などの限られた電力供給源の有効利用は、ワイヤレスフィールドデバイスを良好に機能させるために不可欠である。バッテリは、5年以上にわたる継続使用が期待され、適用製品の寿命程度まで継続して使用できることが好ましい。
【0004】
電力及びネットワーク帯域幅を節約するため、いくつかのワイヤレスネットワークプロトコルでは、メッセージをリスンするための限定された時間の間だけデバイストランシーバをオンにすることによって、任意の期間中に任意のノードまたはデバイスが扱うことができるトラフィックの量を限定している。このように、平均電力を削減するために、プロトコルは、オン状態とオフ状態との間での、トランシーバの反復使用を可能とするようにしてもよい。いくつかのワイヤレスネットワークプロトコルとして、ネットワーク全体が同時にオン及びオフとなるように、グローバルデューティサイクルを適用して、電力を節約するようにしてもよい。また、他のプロトコル(例えば、TDMAベースのプロトコル)として、共にリンクされたノードの通信ペアのみが、予め定められた時間に同期方式でオン及びオフするようスケジュールされた、ローカルデューティサイクルを使用するようにしてもよい。通常、このリンクは、特定のRF周波数チャネル上で通信を行うために、通信ネットワークノードの各ペアに、特定の周期的なタイムスロットを割り当てることにより、予め定められる。各フィールドデバイスは、コミッショニングの際にタイムスロットを割り当てられ、指定された作動速度で周期的に作動する。プロセス検出フィールドデバイスは、デバイストランシーバをオンにする直前にのみ、センサ測定を行うのが一般的である。トランシーバへの電力供給及びセンサ測定のそれぞれでは相当な電力を消費し、デバイス間通信は、ネットワーク帯域に渋滞を生じさせる。概して、各フィールドデバイスは、少なくとも1つのリソース集約的機能(例えば、周期的なワイヤレス通信、周期的なプロセス検出またはプロセス操作)を、指定された作動速度で何度も繰り返して実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
別の期間中には低い速度しか必要とされないか、或いはアクティビティがない一方で、ある期間中には、特定のフィールドデバイスのアプリケーションにより、高い速度でリソース集約的機能を実行するように求められることがある。従来のフィールドデバイスネットワークでは、高需要期間中に必要とされる高い作動速度で、そのようなフィールドデバイスを継続的に作動させるか、または、集中制御サーバもしくは集中監視サーバから、高需要期間及び低需要期間について、フィールドデバイスにあらためて指示するかのいずれかを行う。前者のケースでは、高い作動速度での継続的な作動により、低需要期間中において不必要な電力及び帯域幅が消費されることになる。後者のケースでは、再指示を行うことによって電力及び帯域幅が消費され、再指示のプロセス中にパケット損失をもたらすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フィールドデバイスを対象とするものであり、当該フィールドデバイスは、第1のプロセスパラメータを検出するために設けられた第1のプロセスセンサと、ネットワークマネジャと通信するように構成されたトランシーバと、検出した第1のプロセスパラメータを処理するように構成されるプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記プロセッサ及び前記ネットワークマネージャの両方に認識される指示された第1の適応スケジュールに従い、前記トランシーバを用いた信号の送受信、前記第1のプロセスセンサを用いた前記第1のプロセスパラメータの検出、前記第1のプロセスセンサの校正、及び前記第1のプロセスパラメータの操作のいずれかである第1のリソース集約的機能を実行するよう、前記トランシーバ及び前記第1のプロセスセンサに命令するように構成され、前記第1の適応スケジュールは、前記リソース集約的機能の作動速度が、経時的に、且つ検出イベントに基づき変化するように、前記リソース集約的機能の変更を行うトリガとして検出イベントを指定するものであって、前記プロセッサは、指定された前記検出イベントによってトリガされた前記リソース集約的機能の作動速度の変更を、前記トランシーバを介し、帯域幅に関する付随する要求と共に、前記ネットワークマネージャに伝達するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】複数のフィールドデバイスを含むワイヤレスプロセスネットワークの概略構成図である。
【
図2】
図1のフィールドデバイスの1つを簡略化して示す概略構成図である。
【
図3】
図2のフィールドデバイスについて、スケジュールされた作動方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、産業プロセスフィールドデバイスにおけるリソース最適化のためのスケジューリングシステムに関する。フィールドデバイスは、ワイヤレス信号の送受信、プロセスパラメータの検出、センサの校正、及びプロセスパラメータの操作といったリソース集約的機能を実行する際の変動する速度を定める動的なスケジュールを用いて作動する。各フィールドデバイスは、再指示を必要とすることなく、それぞれの動的なスケジュールに従ってリソース集約的機能の作動速度を変化させる。
【0009】
図1は、集中制御式及び集中監視式の少なくとも一方であって、センサ型フィールドデバイス及びアクチュエータ型フィールドデバイスの少なくとも一方である、ワイヤレスプロセスネットワーク10の一実施形態を示す概略構成図である。ワイヤレスプロセスネットワーク10は、ゲートウエイ12、フィールドデバイス14(フィールドデバイス14a、フィールドデバイス14b、及びフィールドデバイス14cを含む)、ホストコンピュータ16、施設ネットワーク18、及びネットワークマネジャ20を備える。ゲートウエイ12は、ホストコンピュータ16とフィールドデバイス14との間に設けられたワイヤレス対応ルータである。フィールドデバイス14は、ワイヤレス対応プロセストランスミッタであり、例えば、流体の流量、水位、温度、または圧力といったプロセスパラメータを検出するために配置された1以上のトランスデューサからの信号を受信し、処理し、送信するように構成することができる。これに代えて、フィールドデバイス14は、ゲートウエイ12を介して受信した信号に応答して、バルブまたはポンプといったプロセスアクチュエータに指令を発するように構成されたワイヤレスコントローラであってもよい。
図1は、各フィールドデバイス14と直接的にワイヤレス通信を行うゲートウエイ12を示しているが、任意のネットワークアーキテクチャを、ワイヤレスプロセスネットワーク10に採用することが可能である。いくつかの実施形態として、ゲートウエイ12は、全てのフィールドデバイス14にサービス提供するハブアンドスポーク型ネットワークのハブを形成する。別の実施形態として、フィールドデバイス14は、ゲートウエイ12とフィールドデバイス(例えば、フィールドデバイス14a)との間の通信が、1以上の仲介フィールドデバイス(例えば、フィールドデバイス14bやフィールドデバイス14c)を介して行われるように、メッシュネットワーク内に配置されるようにしてもよい。ホストコンピュータ16は、制御システムまたは監視システムの少なくとも一部を形成して、ゲートウエイ12を介し、フィールドデバイス14からのセンサ読み取り値の受信、及びフィールドデバイス14へのアクチュエータコマンドの送信の少なくとも一方を行う。ホストコンピュータ16は、例えば、オペレータ端末または自動化されたコントローラであってもよい。ホストコンピュータ16は、フィールドデバイス14からのセンサ読み取り値を収集して処理する。
【0010】
ホストコンピュータ16は、施設ネットワーク18を介してゲートウエイ12に接続されるように図示されており、施設ネットワーク18は、例えば、フィールドデバイス14のハブアンドスポーク型ネットワークまたはメッシュネットワークとは別個の、副次的な有線ネットワークまたはワイヤレスネットワークであってよい。これに代わる実施形態として、ホストコンピュータ16は、ゲートウエイ12とワイヤレスで直接通信するようにしてもよい。いくつかの実施形態として、ホストコンピュータ及びゲートウエイ12は、施設ネットワーク18を介在させずに、単一のデバイス内に組み込まれてもよい。
【0011】
ネットワークマネジャ20は、フィールドデバイス14からの情報を処理するソフトウェアプログラムであって、状況や用途に適合するように、ワイヤレスリンク、制御メッセージ、通信スケジュール、及びデータクエリを生成する。ネットワークマネジャ20は、ゲートウエイ12上で作動するように示されているが、これに代えて、ネットワークマネジャ20が、リモートでゲートウエイ12に接続されたコンピュータ、例えば、ホストコンピュータ16、または施設ネットワーク18に接続された別のコンピュータ上で作動するようにしてもよい。
【0012】
ネットワークマネジャ20は、
図2及び
図3に関して後述するように、ホストコンピュータ16によって設定される、またはフィールドデバイス14にローカルに適用されるパラメータに従い、それぞれのフィールドデバイス14に作動情報を提供する。作動情報には、ネットワークプロトコル(例えば、WirelessHART(登録商標)、Fieldbus(登録商標)、または別の適切なプロトコル)を指定し、かつワイヤレスプロセスネットワーク10における構成体として各フィールドデバイス14を確立するリンク情報が含まれる。また、この作動情報には、フィールドデバイス14毎に、検出、操作、診断、送信、受信、及びその他のリソース集約的機能の変化する作動速度を指定する適応スケジュールが含まれる。これらの速度は、適応スケジュールに従って経時的に変化し、適応スケジュールは、例えば、重要な期間中(例えば、朝の施設起動時)には、検出及びデータ送受信について高めの作動速度を指定し、あまり重要でない期間中(例えば、休業日で検出またはデータ送信がないような、施設が閉鎖されて作動していない間)には、低めの作動速度を指定するようにしてもよい。それぞれのフィールドデバイス14は、個々に独自の適応スケジュールに従って作動し、あらためて指定する必要性なしに、この適応スケジュールに従い、リソース集約的機能の様々な作動速度への切り換えを行う。更に、各フィールドデバイス14の適応スケジュールは、リソース集約的機能の作動速度を変更するトリガとして、イベント条件を指定するようにしてもよい。例えば、差圧の測定値を検出し、送信するように配置されたフィールドデバイスは、適応スケジュールに従い、閾値を超える差圧を検出した後の5分間には、より頻繁に圧力測定値を送信することも可能である。適応スケジュールを構成する固定的な(即ち、条件付きでない)要素が、ネットワークマネジャ20によるコミッショニングの際に提供され、ネットワークマネジャ20及びフィールドデバイス14の両方に指示される。特定のイベント条件によってトリガされる様々なデータ伝送速度への変更が、帯域幅に関する付随する要求と共に、ネットワークマネジャ20へと伝達される。
【0013】
図2は、ワイヤレスプロセスネットワーク10における、フィールドデバイス14と、ネットワークマネジャ20を実行するゲートウエイ12とを簡略化して示す概略構成図である。フィールドデバイス14は、ハウジング100、アンテナ102、トランシーバ104、プロセッサ106、信号調整器108、トランスデューサ110、メモリ112、電源部114、及びタイムキーパ116を備える。
【0014】
本実施形態において、ハウジング100は、剛性で、耐久性のある筐体であって、密閉することにより、トランシーバ104、プロセッサ106、信号調整器108、メモリ112、及び電源部114を、過激な温度や有害な環境から保護するようにしてもよい。トランスデューサ110は、ハウジング100の外側に位置するように示されているが、フィールドデバイス14のいくつかの実施形態として、ハウジング100にトランスデューサ110を収納するようにしてもよい。
【0015】
一実施形態によれば、トランシーバ104は、アンテナ102を介してワイヤレス信号を送受信する信号送受信機である。プロセッサ106は、マイクロプロセッサといった論理演算可能なデータプロセッサである。信号調整器108は、トランスデューサ110が入力または出力するトランスデューサ信号に作用するデジタルフィルタ及びアナログフィルタの少なくとも一方を備える。いくつかの実施形態として、信号調整器108は、トランスデューサ110からのセンサ信号をデジタル化し、或いはデジタル指令をトランスデューサ110のためのアナログコマンドに変換するために設けられたアナログ・デジタルコンバータを更に備えていてもよい。
【0016】
トランスデューサ110は、制御システムまたは監視システムのホストコンピュータ16への処理及び送信を行うために、センサ読み取り値をフィールドデバイス14に供給するセンサであってもよいし、コンピュータ16またはネットワークマネジャ20から受信した信号に応答して、産業プロセスにおける変化を操作するアクチュエータであってもよい。以下の説明では、トランスデューサ110がセンサを備えた実施形態を対象としているが、本発明がアクチュエータシステムにも同様に適用可能であることは、当業者が理解しうるものである。
図2には、単一のトランスデューサ110が示されているが、フィールドデバイス14のいくつかの実施形態として、複数のトランスデューサ110を運用するようにしてもよい。いくつかの実施形態として、トランスデューサ110は、操作及び検出の両方が可能な、または複数のパラメータを検出可能な、多機能トランスデューサであってよい。
【0017】
メモリ112は、マシン読み書き可能なメモリバンクである。電源部114は、トランシーバ104、プロセッサ106、信号調整器108、及びメモリ112に電力供給するエネルギ供給源である。いくつかの実施形態として、電源部114は、トランスデューサ110に電力供給するようにしてもよい。いくつかの実施形態として、電源部114は、ローカルエネルギ捕集器(例えば、出力が限定される太陽電池または振動エネルギ回収器)、または貯蔵デバイス(例えば、充電量が限定される化学電池またはスーパーキャパシタ)といった限定された容量のエネルギ供給源であってもよい。
【0018】
電源部114のエネルギ放出、及びワイヤレスプロセスネットワーク10における帯域幅の使用を最小限にするため、プロセッサ106は、メモリ112に記憶された適応スケジュール(上述)に従い、トランシーバ104及びトランスデューサ110の少なくとも一方を作動させる。この適応スケジュールは、コミッショニングの際に、ネットワークマネジャ20またはローカル構成デバイスを介し、ホストコンピュータ16から受信され、様々な期間(例えば、時間帯、曜日、特定の休日)に対応して、または、識別された条件(例えば、トランスデューサ110の検出値が、瞬時、またはある継続期間の間のいずれかに、特定の範囲内または特定の範囲外となる)に応答して、異なる起動または作動速度を指定する。より一般的にいえば、プロセッサ106は、
図3に関して後述するように、適応スケジュールに従い、フィールドデバイス14の任意のリソース集約的機能を作動させたりまたは非作動にしたりすることができる。また、メモリ112は、トランスデューサ110からのセンサ読み取り値の履歴、トランスデューサ110及びトランシーバ104のための診断プロトコル、並びにトランスデューサ110のためのアクチュエータコマンドの少なくとも1つを記憶することが可能である。
【0019】
一実施形態として、タイムキーパ116は、プロセッサ106に現在の時刻及び日付を提供するように構成されたリアルタイムクロックである。この時刻及び日付は、メモリ112に記憶された適応スケジュールと照合され、リソース集約的機能の作動速度をいつ更新するべきかを決定する(
図3及び関連する下記説明を参照)。例えば、適応スケジュールは、タイムキーパ116が提供するカレンダー日付、時刻、または曜日に応じ、リソース集約的機能の作動速度を高めの速度または低めの速度として、個々に作動モードを指定することができる。
図2では、トランシーバ104、プロセッサ106、信号調整器108、メモリ112、及びタイムキーパ116が、別個の要素として示されているが、フィールドデバイス14のいくつかの実施形態として、これらの要素のいくつか、または全てを、多機能プリント配線基板といった共通の物理的コンポーネントの中に組み込むようにしてもよい。
【0020】
図3は、スケジュールされた作動方法200を示すフローチャートである。スケジュールされた作動方法200は、上で紹介した適応スケジュールに従った、フィールドデバイス14の作動を示すものである。最初に、ヒューマンユーザまたはマシンユーザにより、トランシーバ104のオン状態、及びトランスデューサ110の診断ランまたは測定ランといった、リソース集約的機能の作動速度を規定する適応スケジュールが設定構成される(ステップS1)。この適応スケジュールは、上述したようにメモリ112に記憶され、複数のリソース集約的機能を個々に統括管理しうるものであって、リソース集約的機能の各々には、様々な時期に様々な作動速度を割り当てることが可能である。例えば、適応スケジュールは、トランスデューサ110が、火曜日の午前8時から午前9時まで、秒毎にプロセスパラメータ(例えば、圧力、温度)を検出し、当該期間中に、トランシーバ104が毎分一度だけ起動されて、メモリ112に蓄積されたデータを通信するように指定することができる。いくつかの実施形態として、適応スケジュールは、イベント条件、及び当該イベント条件に対応するリソース集約的機能の応答を指定するようにしてもよい。想定されるイベント条件には、トランスデューサ110からのプロセス測定値が、閾値を上回るもしくは下回ること、または閾値を上回ったままであるもしくは下回ったままであること、或いは、リモートデバイス(例えば、ゲートウエイ12または他のフィールドデバイス14)からコマンドまたはデータ信号が到着することが含まれる。例えば、フィールドデバイス14aは、第1のパラメータ(例えば、圧力)についてのトランスデューサ110の検出速度を、第2のパラメータ(例えば、流量)が異常に高いことを示すフィールドデバイス14bからの報告の受信に応答して、上昇させるようにしてもよい。別の例として、フィールドデバイス14は、予想範囲外となるトランスデューサ110のセンサ読み取り値に応答し、トランスデューサ110の検出速度を上昇させ、またはトランスデューサ110のセンサ診断を開始するようにしてもよい。同様に、複数のトランスデューサ110または多機能のトランスデューサ110を備えるフィールドデバイス14の実施形態の場合には、あるパラメータの測定に関し、別のパラメータの測定値に応じて、頻度を増加または減少させたり、測定を中止したりしてもよい。いくつかの実施形態として、フィールドデバイス14は、主たるトランスデューサ110が故障するか異常な挙動をするまで、即ち、主たるトランスデューサ110が故障しないか異常な挙動をしない限り、休止状態を維持する(即ち、検出作動しない)バックアップのトランスデューサ110を備えるようにしてもよい。
【0021】
コミッショニングの後、プロセッサ106は、トランシーバ102及びトランスデューサ110に対し、そのときスケジュールされている作動速度及び時期で作動するように指示する(ステップS2)。このプロセスは、スケジュールされたモード切換(ステップS4)、イベント駆動によるモード切換(ステップS5)、またはユーザによる優先入力(ステップS6)によって中断されるまで続行する。プロセッサ104は、タイムキーパ116によって指定された通りの現時刻及び日付を、メモリ112に記憶された適応スケジュールと周期的に比較し、適応スケジュールによって示される時刻及び日付である場合には、より高い作動速度またはより低い作動速度の新しいモードに切り換える(ステップS4)。このような比較の期間は、いかなる機能についても、適応スケジュールによって指定される最少速度に対応する期間よりも大きくならないように選定される。同様に、プロセッサ106は、トランスデューサ110及びトランシーバ104からの着信データを、適応スケジュールによって指定されたイベントフラグと比較し、適応スケジュールによって示されるイベントフラグに相当する場合には、イベント駆動によるモードに切り換える(ステップS5)。イベント駆動によるモードは、ステップS4で指定された時刻ベースのモードに優先することができ、また適応スケジュールによって指定されてタイムキーパ116との比較によって確認された持続時間もしくは満了時間をそれ自身で有するものとすることができる。ユーザによる優先入力がなければ(ステップS6)、フィールドデバイス14は、ゲートウエイ12により再度指示を与える必要性なしに、メモリ112に記憶されて最初に指定された稼働適応スケジュールに基づいて作動する。ヒューマンオペレータまたはマシンオペレータから(例えば、ネットワークマネジャ20、またはホストコンピュータ16のヒューマンオペレータから)、ゲートウエイ12を介して受信した任意の優先信号により、新たなまたは変更された適応スケジュールを、メモリ112にロードすることが可能となる(ステップS1)。
【0022】
スケジュールされた作動方法200により、フィールドデバイス14は、再度指示することなく、様々なスケジュールされた作動速度及びイベント駆動による作動速度の少なくとも一方で、継続的な作動が可能となる。このため、この作動方法200により、フィールドデバイス14は、そのときの用途または状況に必要な頻度でのみ、帯域幅を集中的に要する、または電力を集中的に要するタスクを実施可能となり、電源部114での電力放出、及びワイヤレスプロセスネットワーク10の輻輳を削減することができる。スケジュールされた作動方法200で説明したように、適応スケジュールを適用するフィールドデバイスは、1つのモードから別のモードに切り換えるために再度の指示を必要としないので、再指示による遅延に起因する欠落パケットやネットワークダウンタイムが最小限となる。適応スケジュールによって指定されたイベント駆動による切り換えにより、フィールドデバイス14及びワイヤレスプロセスネットワーク10は、プロセス条件、デバイス障害、及びセンサの不整合の発生に対し、迅速に応答することが可能となる。
【0023】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で本発明の各構成要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるための様々な変形が可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての態様を含むものである。