(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】磁気歯車
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20220518BHJP
H02K 49/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K49/10 A
(21)【出願番号】P 2018053877
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】303049418
【氏名又は名称】株式会社プロスパイン
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄真
(72)【発明者】
【氏名】大石 悠平
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 眞喜人
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-257021(JP,A)
【文献】特開2012-107719(JP,A)
【文献】特開2014-194230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、
前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に
複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、
前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周
方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、
を有し、
前記アウター歯車には、同極が対向する向きで隣接する一対の前記アウター磁石に
挟まれた磁極部が複数形成され、
前記磁極部を挟む前記一対の前記アウター磁石は、外径側よりも内径側の方が間隔が
広くなるように配置されていることを特徴とする磁気歯車。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気歯車において、
前記アウターヨークは前記アウター磁石が埋め込まれるアウター磁石孔を有し、
前記アウター磁石孔は、前記アウターヨークの内周面および外周面の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする磁気歯車。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気歯車において、
前記アウター磁石における一端の縁の少なくとも一部は、前記開口部の縁と一致していることを特徴とする磁気歯車。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気歯車において、
前記インナー歯車には、同極が対向する向きで隣接する一対の前記インナー磁石に挟まれた磁極部が複数形成され、
前記磁極部を挟む前記一対の前記インナー磁石は、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置されていることを特徴とする磁気歯車。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気歯車において、
前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、
前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面または外周面の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする磁気歯車。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気歯車において、
前記インナー磁石における一端の縁の少なくとも一部は、前記開口部の縁と一致していることを特徴とする磁気歯車。
【請求項7】
インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、
前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複 数の軟磁性体を配列したセンターリングと、
前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方 向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車とを有し、
前記インナー歯車には、同極が対向する向きで隣接する一対の前記インナー磁石に挟まれた
インナーヨークの磁極部が複数形成され、
前記磁極部を挟む前記一対の前記インナー磁石は、
長尺方向が対向する態様で且つ、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置され、
前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面または外周面の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする磁気歯車。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気歯車において、
前記インナー磁石における一端の縁は、前記開口部の縁と一致していることを特徴とする磁気歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用した歯車により非接触でトルクを伝達する磁気歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な歯車機構は複数の歯車を用い、その歯数比によって変速を行っており、歯同士の接触による振動・騒音が発生するとともに、摩耗による機械的寿命があり、しかも注油などのメンテナンスが必要となる。これに対して、磁気を利用して非接触でトルクを伝達する磁気歯車の開発および実用化が進められている。磁気歯車では非接触でトルク伝達を行うことから上記のような不都合がない。
【0003】
磁気歯車の一般的構成としては、例えば特許文献1に示されるように、周方向に複数の磁石を配列したインナー歯車およびアウター歯車と、周方向に複数のポールピースを配列したセンターリングとを備え、内径側から外径側に向かってインナー歯車、センターリングおよびアウター歯車の順で同心かつ相対回転可能に構成される。インナー歯車、センターリングおよびアウター歯車のうちいずれか1つを入力部とし、いずれか1つを出力部とし、変速して回転伝達を行う。
【0004】
非特許文献1では、磁気歯車のセンターロータを固定する場合とアウター歯車を固定する場合とでは異なる変速比が得られること、およびそれらの変速比の計算式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】安藤「磁気歯車の開発動向」、日本AEM学会誌、Vol24、No.2、2016年、p.15―20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような磁気歯車では磁気的に非接触でトルクを伝達する構造であることからその伝達トルクに限度があり、伝達可能トルクの一層の向上が望まれている。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、伝達可能トルクを増大させることのできる磁気歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる磁気歯車は、インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、を有し、前記アウター歯車には、同極が対向する向きで隣接する一対の前記アウター磁石に挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁極部を挟む前記一対の前記アウター磁石は、外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
前記アウターヨークは前記アウター磁石が埋め込まれるアウター磁石孔を有し、前記アウター磁石孔は、前記アウターヨークの内周面および外周面の少なくとも一方に開口部を有してもよい。
【0011】
前記アウター磁石における一端の縁の少なくとも一部は、前記開口部の縁と一致していてもよい。
【0012】
前記インナー歯車には、同極が対向する向きで隣接する一対の前記インナー磁石に挟まれた磁極部が複数形成され、前記磁極部を挟む前記一対の前記インナー磁石は、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置されていてもよい。
【0013】
前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面または外周面の少なくとも一方に開口部を有してもよい。
【0014】
前記インナー磁石における一端の縁の少なくとも一部は、前記開口部の縁と一致していてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる磁気歯車は、インナーヨークの周方向に複数のインナー磁石を配列したインナー歯車と、前記インナー歯車に対して外周側に相対回転可能に設けられ、非磁性筒体の周方向に複数の軟磁性体を配列したセンターリングと、前記センターリングに対して外周側に相対回転可能に設けられ、アウターヨークの周方向に複数のアウター磁石を配列したアウター歯車と、を有し、前記インナー歯車には、隣接する一対の前記インナー磁石に挟まれた磁極部が複数形成され、同極が対向する向きで前記磁極部を挟む前記一対の前記インナー磁石は、内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置され、前記インナーヨークは前記インナー磁石が埋め込まれるインナー磁石孔を有し、前記インナー磁石孔は、前記インナーヨークの内周面または外周面の少なくとも一方に開口部を有することを特徴とする。
【0016】
前記インナー磁石における一端の縁は、前記開口部の縁と一致していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる磁気歯車では、磁極部を挟む一対のアウター磁石は、同極が対向する向きでかつ外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるように配置され、または、磁極部を挟む一対のインナー磁石は、同極が対向する向きでかつ内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるように配置されている。これにより、磁極部の磁力がセンターリングに指向されやすくなり、アウター歯車、センターリングおよびインナー歯車の間における磁気的作用が強まり、伝達可能トルクを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる磁気歯車を示す分解斜視図である。
【
図2-1】
図2-1は、第1の実施形態にかかる磁気歯車であり、インナー軸が左側の側面から突出するように組み立てられた状態を示す断面図である。
【
図2-2】
図2-2は、第1の実施形態にかかる磁気歯車であり、インナー軸が右側の側面から突出するように組み立てられた状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの一部拡大正面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態にかかる磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。
【
図7】
図7は、解析の比較対象である磁気歯車のアウター歯車、インナー歯車およびセンターリングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる磁気歯車の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下、方向を識別するために、
図1における軸方向を基準として右上方向をX1方向、左下方向をX2方向とし、各図に方向を示す矢印を表記する。また、内側および内径方向とは回転軸中心を向く方向で、外側または外径方向とはその逆方向とする。さらに、ボルトについてはサイズおよびタイプに拘わらず全てボルトBと呼ぶ。
【0020】
図1、
図2-1に示すように、第1の実施形態にかかる磁気歯車10aは、アウター歯車体12と、インナー歯車14と、センター体16と、アウター軸18と、インナー軸20と、ベース22とを有する。
【0021】
アウター歯車体12はケーシング24と、アウター歯車26と、アウター側面部28とを有する。ケーシング24は筒体であって、磁気歯車10aにおいてベース22を除く本体部の外枠を形成する。
【0022】
アウター歯車26はアウターヨーク26aと、NL=31極対に対応したアウター磁石26bとを有する。アウター歯車26では1極対あたり4つの磁石が使用され、全部で124(=31×4)個のアウター磁石26bが用いられている(
図3参照)。つまり、アウター磁石26bの個数は4の倍数になる。アウター歯車26は低速ロータとも呼ばれる。アウター歯車26のさらに詳細な構成については後述する。
【0023】
アウター側面部28は磁気歯車10aのX1方向側を覆う蓋体であり、複数のボルトBによりケーシング24のX1方向端面に固定され、アウター歯車26に対して回転不能で一体的に回転する。アウター側面部28はインナー軸20が挿通可能な中心孔28aと、等角度に配置された6つのボルト孔である軸固定部28bと、6つのボルト孔であるベース固定部28cとを有する。軸固定部28bはボルトBによりアウター軸18を固定可能である。ベース固定部28cは軸固定部28bよりも外径側に配置されており、ボルトBによりベース22に固定可能である(
図2-2参照)。軸固定部28bとベース固定部28cとの間にはX1方向に突出する環状突起28dが設けられ、該環状突起28dよりも内径側は浅い嵌合溝28eが形成されている。軸固定部28bは嵌合溝28eの底部に設けられている。
【0024】
インナー歯車14はインナーヨーク14aと、NH=3極対に対応したインナー磁石14bとを有する。インナー歯車14では1極対あたり4つの磁石が使用され、全部で12(=3×4)個のインナー磁石14bが用いられている(
図3参照)。つまり、インナー磁石14bの個数は4の倍数になる。インナー歯車14の中心にはインナー軸20が挿通して固定されるインナー軸固定孔15が設けられている。インナー歯車14は高速ロータとも呼ばれる。インナー歯車14のさらに詳細な構成については後述する。
【0025】
センター体16はセンターリング30と、センター側面部32とを有する。センターリング30はポールホルダ30aと、NS=34個のポールピース30bとを有する。ポールホルダ30aは非磁性体の筒体である。ポールピース30bは軟磁性体であって、ポールホルダ30aに対して周方向に等角度に配列されている。インナーヨーク14a、インナー磁石14b、アウターヨーク26a、アウター磁石26bおよびポールピース30bは、それぞれ軸方向位置と軸方向長さが略等しくなるように設定されている(
図2-1参照)。
【0026】
なお、アウター歯車26におけるアウター磁石26bの極対数NL、インナー歯車14におけるインナー磁石14bの極対数NHおよびセンターリング30におけるポールピース30bの個数NSは、
NS=NL±NH
という関係が成立するように選定される。
磁気歯車10aではNS=34、NL=31、NH=3であり、
34=31+3
という関係が成立している。
【0027】
センター側面部32は磁気歯車10aのX2方向側を覆う蓋体である。センターリング30とセンター側面部32とは一体成形されて相対回転不能であり、センター側面部32の外周部がセンターリング30のX2方向端面と接続されている。センター側面部32はインナー軸20が挿通可能な中心孔32aと、等角度に配置された6つのボルト孔である軸固定部32bと、等角度に配置された6つのボルト孔であるベース固定部32cとを有する。軸固定部32bはボルトBによりアウター軸18を固定可能である。ベース固定部32cは軸固定部32bよりも外径側に配置されており、ボルトBによりベース22に固定される。軸固定部32bとベース固定部32cとの間にはX2方向に突出する環状突起32dが設けられ、該環状突起32dよりも内径側は浅い嵌合溝32eが形成されている。軸固定部32bは嵌合溝32eの底部に設けられている。
【0028】
6つの軸固定部32bおよび上記の6つの軸固定部28bは、軸方向から見て同形状かつ同配置であり、それぞれアウター軸18が固定可能である。6つのベース固定部32cおよび上記の6つのベース固定部28cは、軸方向から見て同形状かつ同配置であり、それぞれベース22が固定可能である。
【0029】
センター側面部32はアウター側面部28の外周近傍を除く内径側部分と同一の対称構造となっており、中心孔28aと中心孔32a、軸固定部28bと軸固定部32b、ベース固定部28cとベース固定部32c、環状突起28dと環状突起32d、および嵌合溝28eと嵌合溝32eはそれぞれ同一形状で同配置となっている。
【0030】
アウター軸18およびインナー軸20は、駆動機構および従動機構が接続される入出力部である。アウター軸18はフランジ18aと、該フランジ18aから一方に突出した軸部18bと、フランジ18aに設けられた等間隔で6つの孔18cとを有する。ボルトBが孔18cを通って軸固定部28bに螺合されると、アウター軸18はアウター側面部28に固定され、軸部18bはX1方向に突出する。フランジ18aは嵌合溝28eに嵌合して安定する。アウター軸18はアウター側面部28およびセンター側面部32のいずれにも固定可能でありアウター/センター兼用軸または低速軸とも呼ばれ得るものだが、ここでは単にアウター軸18と称する。
【0031】
インナー軸20は長尺な円柱軸形状であって、インナー軸固定孔15に対して機械的(例えば、キー、スプライン、Dカット構造)に接続され、インナー歯車14に対して回転不能で一体的に回転する。インナー軸20はインナー軸固定孔15に対して着脱可能で、軸方向逆向きに組み替え可能な構成となっている。インナー軸20のX1方向端部近傍はアウター側面部28の中心孔28aに対してベアリング34aで軸支されている。インナー軸20のほぼ中心部はセンター側面部32の中心孔32aに対してベアリング34bで軸支されている。ベアリング34a,34bの内輪とインナー歯車14との間にはそれぞれスペーサ36a,36bが介挿されている。ベアリング34a,34bはスナップリング38a,38bにより抜け止め処理されている。インナー歯車14はベアリング34a、34bによりアウター歯車体12およびセンター体16に対して相対回転可能となっている。インナー軸20は高速軸とも呼ばれ得る。
【0032】
アウター側面部28の一部とセンターリング30のX1方向端内周面との間にはベアリング40aが設けられている。センター側面部32のX2方向端外周面とケーシング24のX2方向端内周面との間にはベアリング40bが設けられている。ベアリング40a,40bによりアウター歯車体12とセンター体16とは相対回転可能となっている。
【0033】
ベース22は固定台としての機能を備え、側面視でL字形状であって側板22aとベース板22bとを有する。側板22aは、ベース板22bと直交して立設している。側板22aは、中心に設けられた軸挿通孔22cと、該軸挿通孔22cの周囲で等角度に設けられた6つの孔22dとを有する。ボルトBが孔22dを通ってベース固定部32cに螺合されると、ベース22はセンター側面部32に固定される。軸挿通孔22cはアウター軸18、フランジ18aおよびインナー軸20が挿通可能な径となっている。軸挿通孔22cの一端には浅い環状切欠22eが設けられ、該環状切欠22eには環状突起28dまたは環状突起32dが嵌合可能となっている。軸挿通孔22cと嵌合溝28e,32eとは同径となっている。
【0034】
図2-1に示すように、アウター軸18はアウター歯車体12のアウター側面部28に固定されて軸部18bはX1方向に突出する。インナー軸20はインナー歯車14のインナー軸固定孔15に固定され、中心孔32aおよび軸挿通孔22cを通ってX2方向に突出するように組み立てられている。アウター軸18とインナー軸20とは同軸構造となる。ベース22はセンター体16のセンター側面部32に固定される。磁気歯車10aはこのように組み立てられることにより、アウター軸18が一体固定されたアウター歯車体12が低速側入出力部となり、インナー軸20が一体固定されたインナー歯車14が高速側入出力部となる。アウター軸18とインナー軸20との間は、アウター歯車体12、インナー歯車14およびセンターリング30の磁気的作用によって変速されて回転のトルクが伝達される。
【0035】
このとき、アウター軸18を入力側、インナー軸20を出力側とした場合の変速比Grは以下の式で求められる。
Gr=-NL/NH=-31/3=-10.33
つまり、変速比Grの絶対値は10.33であり、マイナス符号であるから回転方向は逆向きとなる。
【0036】
一方、
図2-2に示すように、アウター軸18はセンター体16のセンター側面部32にも固定可能であり、この場合には軸部18bはX2方向に突出する。インナー軸20はインナー歯車14のインナー軸固定孔15に固定され、中心孔28aおよび軸挿通孔22cを通ってX1方向に突出するように組み立てられる。この場合もアウター軸18とインナー軸20とは同軸構造となる。ベース22はアウター歯車体12のアウター側面部28に固定される。磁気歯車10aはこのように組み立てられることにより、アウター軸18が一体固定されたセンター体16が低速側入出力部となり、インナー軸20が一体固定されたインナー歯車14が高速側入出力部となる。アウター軸18とインナー軸20との間は、アウター歯車体12、インナー歯車14およびセンターリング30の磁気的作用によって変速されて回転のトルクが伝達される。
【0037】
このとき、変速比Grは以下の式で求められる。
Gr=NS/NH=34/3=+11.33
つまり、変速比Grの絶対値は11.33であり、プラス符号であるから回転方向は順向きとなる。なお、磁気歯車10a~10cの磁気作用で変速動作が得られる原理については、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように公知であるからここでは説明を省略する。
【0038】
インナー歯車14およびアウター歯車26の構造について
図3および
図4を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0039】
図3および
図4に示すように、アウターヨーク26aおよびインナーヨーク14aは筒体であることから、それぞれの内周面および外周面は回転軸中心の円周面であって無駄な凹凸がない。したがって、インナーヨーク14aの外周面とセンターリング30の内周面との隙間は十分に狭く、またアウターヨーク26aの内周面とセンターリング30の外周面との隙間は十分に狭い。特に後述する磁極部26dおよび磁極部14dとセンターリング30との隙間が狭く、それぞれ磁気の力を作用させやすい。
【0040】
アウター歯車26のアウターヨーク26aは軟磁性体であり、ケーシング24の内周面に固定された筒体である。アウターヨーク26aは、アウター磁石孔26cと、磁極部26dと、ブリッジ26eと、挟持部26fとを有する。
【0041】
磁極部26dは、内径側のセンターリング30に対して磁束を指向させる疑似的な磁極として作用する部分であり、NL=31極対に対応して62か所設けられている。このうち1つおきの32か所がN極であり、他の32か所がS極である。
図4では磁極部26dのうちN極となる所を符号26dnで識別し、S極となる所を符号26dsで識別している。なお、
図4、
図5では理解が容易となるようにアウター磁石26bおよびインナー磁石14bにおいてN極をドット地、S極を白地として識別している。
【0042】
アウター磁石孔26cはアウター磁石26bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク26aの内周面側に開口部26gを有する。アウター磁石26bはアウター磁石孔26cと同形状であって、開口部26g以外の3辺はアウター磁石孔26cと隙間なく接しており、その内側端部は開口部26gの縁26hと一致している。
【0043】
アウター磁石26bおよびアウター磁石孔26cは矩形で、アウターヨーク26aに対して径方向に対してやや傾斜した向きに長尺で、かつ外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるような略V字形状に配置されている。個々の磁極部26dは周方向両側をアウター磁石26bで挟まれており、かつ外径側よりも内径側の方が間隔が広くなるような狭い略扇形状である。
【0044】
アウター磁石26bは短尺方向に着磁されており、磁極部26dを挟んで同極が対向する向きとなっている。
図4ではN極の磁極部26dnを挟んでいるアウター磁石26bのN極側部分を符号26bnで識別し、S極の磁極部26dsを挟んでいるアウター磁石26bのS極側部分を符号26bsで識別している。すなわち、一対のアウター磁石26bnは磁極部26dnを挟んでN極同士が対向しており、一対のアウター磁石26bsは磁極部26dsを挟んでS極同士が対向している。
【0045】
アウター磁石26bn同士またはアウター磁石26bs同士で挟まれる部分が磁極部26dであり、アウター磁石26bnとアウター磁石26bsで挟まれる三角部分が挟持部26fとなる。隣り合う磁極部26dと挟持部26fは外側でブリッジ26eにより相互に接続されている。
【0046】
このように、磁極部26dは、両側を同極のアウター磁石26bで挟まれており、しかも内径側が広がるような形状であることから強い磁力をセンターリング30に作用させることができ、伝達トルクが増大する。また、磁極部26dは外径側が十分に狭く形成されており、外側への磁力の漏れが少なく、内径側へ作用する磁力を強めることができる。
【0047】
上記のように、アウター磁石孔26cは内周面側に開口部26gを有している。アウター磁石孔26cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま内側に開口していて開口部26gには凹凸がない。また、アウター磁石孔26cはアウター磁石26bは径方向に対してやや傾斜していることから、開口部26gも周方向に対してやや傾斜している。これにより、アウターヨーク26aの内周面で、磁極部26d以外の部分は2つの開口部26gを二辺とする低い略二等辺三角形の凹部26iが形成されている。
【0048】
ブリッジ26eは隣り合う磁極部26dと挟持部26fをアウターヨーク26aの外周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ26eにより各磁極部26dと挟持部26fが相互に接続され、アウターヨーク26aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ26eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部26dの磁束強度が維持される。アウター磁石26bがアウターヨーク26aに対してこのように埋め込まれているアウター歯車26はIPM型(Interior Permanent Magnet、磁石埋め込み型)である。
【0049】
インナー歯車14のインナーヨーク14aは軟磁性体であって、円盤形状である。インナーヨーク14aは、インナー磁石孔14cと、磁極部14dと、ブリッジ14eと、挟持部14fとを有する。
【0050】
磁極部14dは、外径側のセンターリング30に対して磁束を指向させる疑似的な磁極として作用する部分であり、NH=3極対に対応して6か所設けられている。このうち1つおきの3か所がN極であり、他の3か所がS極である。
図4では磁極部14dのうちN極となる所を符号14dnで識別し、S極となる所を符号14dsで識別している。
【0051】
インナー磁石孔14cはインナー磁石14bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク14aの外周面側に開口部14gを有する。インナー磁石14bはインナー磁石孔14cと同形状であって、開口部14g以外の3辺はインナー磁石孔14cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部14gの縁14hと一致している。
【0052】
インナー磁石14bおよびインナー磁石孔14cは矩形で、インナーヨーク14aに対して径方向に対して45°傾斜した向きに長尺で、かつ内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるような略V字形状に配置されている。個々の磁極部14dは周方向両側をインナー磁石14bで挟まれており、かつ内径側よりも外径側の方が間隔が広くなるようなやや広い略扇形状である。
【0053】
インナー磁石14bは短尺方向に着磁されており、磁極部14dを挟んで同極が対向する向きとなっている。
図4ではN極の磁極部14dnを挟んでいるインナー磁石14bのN極側部分を符号14bnで識別し、S極の磁極部14dsを挟んでいるインナー磁石14bのS極側部分を符号14bsで識別している。すなわち、一対のインナー磁石14bnは磁極部14dnを挟んでN極同士が対向しており、一対のインナー磁石14bsは磁極部14dsを挟んでS極同士が対向している。
【0054】
一対のインナー磁石14bnは直交する向きであり、同様に一対のインナー磁石14bsは直交する向きとなっている。この様に一対のインナー磁石14bn,14bsを直交する向きに配置することにより、磁極部14dに磁束を指向させながら、インナー磁石14bn,14bsの体積を最大にすることが可能となる。
【0055】
インナー磁石14bn同士またはインナー磁石14bs同士で挟まれる部分が磁極部14dであり、インナー磁石14bnとインナー磁石14bsで挟まれる三角部分が挟持部14fとなる。隣り合う磁極部14dと挟持部14fは内側でブリッジ14eにより相互に接続されている。
【0056】
このように、磁極部14dは、両側を同極のインナー磁石14bで挟まれており、しかも外径側が広がるような形状であることから強い磁力をセンターリング30に作用させることができ、伝達トルクが増大する。また、磁極部14dは内径側が十分に狭く形成されており、内側への磁力の漏れが少なく、外径側へ作用する磁力を強めることができる。
【0057】
上記のように、インナー磁石孔14cは外周面側に開口部14gを有している。インナー磁石孔14cを形成する3辺のうち長尺方向の二辺は平行線であり、平行線のまま外側に開口していて開口部14gには凹凸がない。また、インナー磁石孔14cは径方向に対して傾斜していることから、開口部14gも周方向に対してやや傾斜している。これにより、インナーヨーク14aの外周面で、磁極部14d以外の部分は2つの開口部14gが傾斜対辺となる低い略台形の凹部14iが形成されている。
【0058】
ブリッジ14eは隣り合う磁極部14dと挟持部14fをインナーヨーク14aの内周部で相互に接続する幅の狭い部分である。ブリッジ14eにより磁極部14dと挟持部14fが相互に接続され、インナーヨーク14aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ14eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部14dの磁束強度が維持される。インナー磁石14bがインナーヨーク14aに対してこのように埋め込まれているインナー歯車14はIPM型である。
【0059】
このように、磁気歯車10aはそれぞれIPM型構造のアウター歯車26とインナー歯車14とを有する。IPM型構造では、磁石が各ロータの表面に配置され、磁石の着磁方向が径方向となるSPM型(Surface Permanent Magnet、表面磁石型)と比較して高トルクが得られる。また渦電流損が少ないため高効率となる。さらに、インナー磁石14bおよびアウター磁石26bは埋め込み構造であるため、遠心力の作用によって外側に剥がされてしまう懸念がなく、高速回転に適する。また、インナー歯車14およびアウター歯車26の少なくとも一方をIPM型構造にすれば、上記の効果が相応に得られる。
【0060】
アウター歯車26では、アウター磁石孔26cが内周側に開口部26gを有していることから、アウター磁石26bは最大限内側に寄った配置が可能となっており、その内側端部は開口部26gの縁26hと一致していてセンターリング30の外周面に極めて近い。また、開口部26gが設けられていることから、アウター歯車26の内周側ではアウター磁石26bの磁極部26dnまたは磁極部26dsにそれぞれ接する磁極部26dと挟持部26fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。したがって、磁極部26dは内側方向に特に強い磁束を指向させることができる。
【0061】
インナー歯車14では、インナー磁石孔14cが外周側に開口部14gを有していることから、インナー磁石14bは最大限外側に寄った配置が可能となっており、その外側端部は開口部14gの縁14hと一致していてセンターリング30の内周面に極めて近い。また、開口部14gが設けられていることから、インナー歯車14の外周側ではインナー磁石14bの磁極部14dnまたは磁極部14dsにそれぞれ接する磁極部14dと挟持部14fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。したがって、磁極部14dは外側方向に特に強い磁束を指向させることができる。このような構成によりインナー歯車14およびアウター歯車26は、センターリング30を介し相手側に対して相互に強い磁力を作用させることができる。
【0062】
また、アウター磁石26bをアウター磁石孔26cに挿入する際には軸方向から挿入してもよいし、または開口部26gから径方向に挿入してもよい。同様にインナー磁石14bをインナー磁石孔14cに挿入する際には軸方向から挿入してもよいし、または開口部14gから径方向に挿入してもよく、それぞれ組立の自由度が増す。
【0063】
なお、アウター磁石26bの内側端部は開口部26gの縁26hと一致し、インナー磁石14bの外側端部は開口部14gの縁14hと一致しているが、ここでいう一致とは厳密な意味ではなくおおよそ等しい位置にあればよい。例えば、アウター磁石26bおよびインナー磁石14bは、アウターヨーク26aの内周面およびインナーヨーク14aの外周面から突出してしまうとセンターリング30に干渉する懸念があることから、寸法誤差や組立誤差を考慮し余裕をみてやや短めに設定するということも、ここでいう一致と同義である。また、例えば
図4の仮想線で示すように、インナー磁石孔14cが矩形でない場合には、インナー磁石14bの端部のうち一部が縁14hに一致していればよい。アウター磁石孔26c、アウター磁石26b、縁26hについても同様である。
【0064】
次に、第2の実施形態にかかる磁気歯車10bについて
図5を参照しながら説明する。磁気歯車10bおよび後述する磁気歯車10c,100について、上記の磁気歯車10aと同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
図5に示すように、磁気歯車10bは上記のアウター歯車26に代えてアウター歯車42が設けられるとともに、上記のインナー歯車14に代えてインナー歯車44が設けられている。アウター歯車42はアウターヨーク42aと、アウター磁石26bとを有する。アウター磁石26bは上記の磁気歯車10aにおけるものと同じであり、該アウター磁石26bの配置によって磁極部26dおよび挟持部26fが形成されている。アウターヨーク42aは、上記のアウターヨーク26aにおけるアウター磁石孔26cおよびブリッジ26eに代えてアウター磁石孔42cおよびブリッジ42eが設けられている。アウター磁石孔42cはアウター磁石26bが埋め込まれて収容される孔であり、アウターヨーク42aの外周面側に開口部42gを有する。アウター磁石26bはアウター磁石孔42cと同形状であって、開口部42g以外の3辺はアウター磁石孔42cと隙間なく接しており、その外側端部は開口部42gの縁42hと一致している。このような構成によりアウター磁石26bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部42gが設けられていることから、アウター歯車42の外周側ではアウター磁石26bの磁極部26dnまたは磁極部26dsにそれぞれ接する磁極部26dと挟持部26fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。
【0066】
ブリッジ42eは隣り合う磁極部26dと挟持部26fをアウターヨーク42aの内周部で接続する幅の狭い部分である。ブリッジ42eにより各磁極部26dと挟持部26fが相互に接続され、アウターヨーク42aは一体構成になるとともに強度が確保される。ブリッジ42eの幅は十分に狭く形成されていることからN極からS極への磁束の短絡的導通を抑制し、磁極部26dの磁束強度が維持される。
【0067】
また、アウターヨーク42aの外周面はケーシング24の内周面に固定されていることから強度が確保されている。したがって、アウターヨーク42aは内周面側の強度がブリッジ42eで確保されるとともに外周面側の強度がケーシング24で確保されることになり、高速回転に適するとともに耐振動性に優れる。
【0068】
インナー歯車44はインナーヨーク44aと、インナー磁石14bとを有する。インナー磁石14bは上記の磁気歯車10aにおけるものと同じであり、該インナー磁石14bの配置によって磁極部14dおよび挟持部14fが形成されている。インナーヨーク44aは、上記のインナーヨーク14aにおけるインナー磁石孔14cおよびブリッジ14eに代えてインナー磁石孔44cおよびブリッジ44eが設けられている。インナー磁石孔44cはインナー磁石14bが埋め込まれて収容される孔であり、インナーヨーク44aの内周面側に開口部44gを有する。インナー磁石14bはインナー磁石孔44cと同形状であって開口部44g以外の3辺はインナー磁石孔44cと隙間なく接している。このような構成によりインナー磁石14bを大きくすることができ、強い磁力が得られて伝達トルクを増大させることができる。また、開口部42gが設けられていることから、インナー歯車44の内周側ではインナー磁石14bの磁極部14dnまたは磁極部14dsにそれぞれ接する磁極部14dと挟持部14fが接続されてなく、この部分でのN極からS極への磁束の短絡的導通がない。インナー磁石14bの内径側はインナーヨーク44aの内周面よりもやや外径側に寄った位置に設定される。これにより、インナー磁石14bの内径側端面を直線形状としてもインナーヨーク44aの内周側に設けられたコア46との干渉を回避することができる。
【0069】
上記の磁気歯車10aおよび磁気歯車10bでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は設けなくてもよい。つまり、アウター歯車26,42において外周側のブリッジ26e(
図4参照)と、内周側のブリッジ42e(
図5参照)の両方が設けられていてもよい。またインナー歯車14,44において内周側のブリッジ14e(
図4参照)と、外周側のブリッジ42e(
図5参照)の両方が設けられていてもよい。
【0070】
上記の磁気歯車10aおよび磁気歯車10bでは、磁石が埋め込まれる磁石孔は内径側か外径側のいずれか一方に開口が設けられているが、条件によってはこのような開口は内径側と外径側の両側に設けられていてもよい。図示は省略するが、磁石孔の開口部が各ヨークの外側と内側の両方に設けることにより、アウター磁石やインナー磁石を一層大きくすることができる。この場合、磁極部同士、挟持部同士を周方向に接続する部材がないので、軸方向端部で各磁極部を接続し固定するとよい。
【0071】
また、埋め込み磁石をV字配置にして扇型の磁極部を形成するのはアウター歯車26,42かインナー歯車14,44のいずれか一方だけでもよく、例えば、
図6に示すような、第3の実施形態にかかる磁気歯車10cのような形態でもよい。
【0072】
磁気歯車10cでは、インナー歯車14およびセンターリング30は上記の磁気歯車10aにおけるものと同じであり、アウター歯車26に代えてアウター歯車50が設けられている。磁気歯車10cは磁気歯車10aと同様にNS=34、NL=31、NH=3の構成である。アウター歯車50は、アウターヨーク50aと、NL=31極対(62個)のアウター磁石50bとを有する。アウター磁石50bはアウター磁石孔50cに埋め込まれている。アウター磁石50bは62個が径方向に長尺な向きで、等間隔で放射状に配置されている。アウター磁石50bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。アウター磁石50bの総体積は上記のアウター磁石26bの総体積とほぼ等しい。アウター歯車50では一対のアウター磁石50bで挟み込まれる領域が磁極部50dとなり、疑似的な磁極として作用する。アウター歯車50はIPM型であるが、上記のアウター歯車26のようにアウター磁石26bをV字配置にして扇型の磁極部26dを形成する形態ではない。
【0073】
このようなアウター歯車50は、アウター磁石50bおよびアウター磁石孔50cが適度に大きく、しかも個数が比較的少ないため製造・組立が容易であり低コストである。また、磁気歯車10cは、上記の磁気歯車10aと同様のインナー歯車14を備えていることから、相応の伝達トルク増大効果が得られる。
【0074】
本願発明者は、例として磁気歯車10aおよび磁気歯車10cにおけるアウター磁石26b、インナー磁石14bのV字配置特性を調べるため、
図7に示す磁気歯車100に対して比較解析を行った。磁気歯車100では、センターリング30は上記の磁気歯車10aにおけるものと同じであり、アウター歯車26に代えてアウター歯車50が設けられ、さらにインナー歯車14に代えてインナー歯車52が設けられている。アウター歯車50は磁気歯車10c(
図6参照)におけるものと同じである。
【0075】
磁気歯車100は磁気歯車10aと同様にNS=34、NL=31、NH=3の構成である。インナー歯車52は、インナーヨーク52aと、NH=3極対(6個)のインナー磁石52bを有する。インナー磁石52bはインナー磁石孔52cに埋め込まれている。インナー磁石52bは6個が径方向に長尺な向きで、等間隔で放射状に配置されている。インナー磁石52bは周接線方向つまり短尺方向に着磁されており、隣り合う磁石は着磁方向が逆となる向きに配置され、周方向でS極同士が向かい合い、N極同士が向かい合っている。インナー磁石52bの総体積は上記のインナー磁石14bの総体積とほぼ等しい。インナー歯車52では一対のインナー磁石52bで挟み込まれる領域が磁極部52dとなり、疑似的な磁極として作用する。インナー歯車52はIPM型であるが、上記のインナー歯車14のようにインナー磁石14bをV字配置にして扇型の磁極部14dを形成する形態ではない。
【0076】
比較解析の結果によれば、第1の実施形態にかかる磁気歯車10a(
図3参照)は磁気歯車100に対して最大伝達トルクが24%大きくなり、第3の実施形態にかかる磁気歯車10c(
図6参照)でも磁気歯車100に対して最大伝達トルクが17%大きくなることが確認された。
【0077】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10a,10b,10c,100 磁気歯車
12 アウター歯車体
14,44,52 インナー歯車
14a,44a,52a インナーヨーク
14b,14bn,14bs,52b インナー磁石
14c,44c,52c インナー磁石孔
14d,14dn,14ds,26d,26dn,26ds,50d,52d 磁極部
14e,26e,42e ブリッジ
14f,26f 挟持部
14g,26g,42g,44g 開口部
14h,26h,42h 縁
14i,26i 凹部
16 センター体
24 ケーシング
26,42,50 アウター歯車
26a,42a,50a アウターヨーク
26b,26bn,26bs,50b アウター磁石
26c,42c,50c アウター磁石孔
30 センターリング
30a ポールホルダ(非磁性筒体)
30b ポールピース(軟磁性体)