(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】架空線上運搬機
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2021080792
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2021-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141015
【氏名又は名称】株式会社かんでんエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000139702
【氏名又は名称】株式会社安田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】森鎌 慎大
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 康浩
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 徹朗
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-228809(JP,A)
【文献】特開平11-299027(JP,A)
【文献】特開平11-027819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高圧架空線に吊設して
径間スペーサの交換に使用可能な架空線上運搬機であって、 左右一対の駆動ローラーと、
前記左右一対の駆動ローラーの上方に設けられる左右一対の間隔保持用ローラーと、 前記一対の駆動ローラーをそれぞれ駆動する左右一対の駆動用モータと、
上下方向に延びるとともに前記一対の駆動ローラー、及び前記一対の間隔保持用ローラーを軸支する左右一対の支持柱と、
前記一対の支持柱に吊設される荷台部と
を備え
、
前記駆動ローラー、及び前記間隔保持用ローラーの前後に送電線上を走行するローラーを備えないことを特徴とする架空線上運搬機。
【請求項2】
前記駆動ローラーに下方から送電線を押し付ける押付ローラーを備える請求項1に記載の架空線上運搬機。
【請求項3】
前記支持柱は、前記荷台部を当該架空線上運搬機の走行方向に揺動可能に支持する揺動軸を備える請求項1に記載の架空線上運搬機。
【請求項4】
前記荷台部は、径間スペーサを吊り持つべく、前記一対の駆動ローラーの下方において前記一対の駆動ローラーの平面視における左右の外側へ延出するフックを備えている請求項1に記載の架空線上運搬機。
【請求項5】
径間スペーサに衝突したことを感知する接触センサーを備える請求項1に記載の架空線上運搬機。
【請求項6】
請求項1に記載の架空線上運搬機を用いて超高圧架空線の径間スペーサを交換する径間スペーサ交換方法であって、
前記架空線上運搬機の前後に隣接して走行するよう架空線に吊設した宙乗り機に作業者が搭乗し、前記宙乗り機から前記架空線上運搬機越しに、径間スペーサの取り付け、又は取り外しを行う径間スペーサ交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は2導体や4導体送電線からなる多導体超高圧送電線路上を走行する架空線上運搬機に関し、特に、径間スペーサの交換に使用可能な架空線上運搬機に関する。
【背景技術】
【0002】
多導体超高圧送電線路では、隣接する送電線の接触を防止するため、
図9に示したような径間スペーサが用いられている。この径間スペーサは、経年劣化により適宜交換する必要があり、その交換工事には、4つの駆動ローラーに人が乗る作業籠を吊設したいわゆる宙乗り機が用いられている(特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1では、作業床の下に設けたエンジンにより駆動されて下層の送電線上を走行する4つのローラーと、上層の送電線上を走行する姿勢安定用のローラーとを有する宙乗り機が提案されている。
【0004】
ところが、本出願人らが、かかる宙乗り機を用いて径間スペーサを交換する際には、径間スペーサを作業籠の外側にロープで吊るすようにしているため、送電線が登りになるところでは、人と径間スペーサの重量で登り切れずに、結局作業者が降りて宙乗り機を引っ張ったり押したりとかなりの労力がかかっている。
【0005】
そこで、本発明者らは、送電線上で宙乗り機と前後して宙乗り機と同様の4ローラー駆動式の運搬機を走行させ、宙乗り機に作業者が乗り込み、運搬機で径間スペーサを運搬することで、宙乗り機に係る負担を軽減することに想到する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この宙乗り機と同じ4ローラー駆動式の運搬機を用いる方法では、登りで宙乗り機を人力で押す必要がなくなるものの、径間スペーサの取付け、又は取外しの際に、径間スペーサと宙乗り機の間に運搬機が入るため、径間スペーサの取付け、又は取外しのいずれかを運搬機越しに行わなければならず、作業がやりにくいという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、径間スペーサと宙乗り機の間に置いても、径間スペーサの交換作業を邪魔しない架空線上運搬機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、超高圧架空線に吊設して径間スペーサの交換に使用可能な架空線上運搬機であって、 左右一対の駆動ローラーと、前記左右一対の駆動ローラーの上方に設けられる左右一対の間隔保持用ローラーと、前記一対の駆動ローラーをそれぞれ駆動する左右一対の駆動用モータと、上下方向に延びるとともに前記一対の駆動ローラー、及び前記一対の間隔保持用ローラーを軸支する左右一対の支持柱と、 前記一対の支持柱に吊設される荷台部とを備え、前記駆動ローラー、及び前記間隔保持用ローラーの前後に送電線上を走行するローラーを備えないことを特徴とする。
【0009】
本発明の架空線上運搬機は、このように、駆動ローラーと間隔保持用ローラーをそれぞれ一対のみにし、これらを支持柱で上下方向に並べて配設したので、前後の厚みが薄く、これ越しに径間スペーサの取外し、取付け作業を容易に行うことができる。
【0010】
本発明の架空線上運搬機は、前記駆動ローラーに下方から送電線を押し付ける押付ローラーを備えることが好ましい。こうすることで、駆動ローラーの力を効率よく送電線に伝達でき、また架空線上運搬機の姿勢をより安定させることができる。
【0011】
前記支持柱は、前記荷台部を当該架空線上運搬機の走行方向に揺動可能に支持する揺動軸を備えることが好ましい。こうすることで、荷台部の姿勢を水平に維持できるため、吊り下げた径間スペーサの緩衝を抑制できる。
【0012】
前記荷台部は、径間スペーサを吊り持つべく、前記一対の駆動ローラーの下方において前記一対の駆動ローラーの平面視における左右の外側へ延出するフックを備えていることが好ましい。こうすることで送電線の下側かつ外側に径間スペーサを吊るすことができるので、当該架空線上運搬機越しに作業する際に、吊るした径間スペーサが邪魔になることを抑制できる。
【0013】
本発明の架空線上運搬機は、径間スペーサに衝突したことを感知する接触センサーを備えることが好ましい。こうすることで、安心して径間スペーサのすぐ近くまで当該架空線上運搬機を寄せることができるので、より当該架空線上運搬機越しの径間スペーサの交換作業を容易にできる。
【0014】
本発明は、上記の架空線上運搬機を用いて超高圧架空線の径間スペーサを交換する径間スペーサ交換方法であって、前記架空線上運搬機の前後に隣接して走行するよう架空線に吊設した宙乗り機に作業者が搭乗し、前記宙乗り機から前記架空線上運搬機越しに、径間スペーサの取り付け、又は取り外しを行う径間スペーサ交換方法を含む。このように、宙乗り機に作業者が乗り、架空線上運搬機で径間スペーサを運搬することで、宙乗り機の重量を抑制できるので、送電線の登りの区間でも楽に宙乗り機を走行させられる。
【発明の効果】
【0015】
以上、本発明の架空線上運搬機、及び径間スペーサの交換工法によれば、径間スペーサの交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る架空線上運搬機の使用状態を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示した架空線上運搬機を走行方向前方から見た正面図である。
【
図3】
図2の架空線上運搬機の支持柱を折り曲げた様子を示す正面図である。
【
図4】
図2の架空線上運搬機の荷台部が後方へ振れた状態を示す側面図である。
【
図5】
図2の架空線上運搬機を分解した状態における本体右半部の(a)側面図、(b)正面図である。
【
図6】
図2の架空線上運搬機を分解した状態における本体左半部の(a)側面図、(b)正面図である。
【
図7】
図2の架空線上運搬機を分解した状態における荷台部の(a)平面図、(b)正面図である。
【
図8】(a)
図7の荷台部の側面図、(b)荷台部の主柱の揺動がストッパーに拘束される様子を示す要部拡大図である。
【
図9】4導体送電線に用いる径間スペーサの一例を示す正面図である。
【
図10】本発明に係る径間スペーサ交換工法における径間スペーサ取外し工程を示す説明図である。
【
図11】本発明係る径間スペーサ交換工法における径間スペーサ取付け工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。
図1、乃至
図4に、本発明の一の実施形態に係る架空線上運搬機100を示す。架空線上運搬機100は、主に4導体の多導体送電線からなる超高圧架空線Aに吊設して用いるものであるが、2導体の多導体送電線からなる超高圧架空線に用いることもできる。
図1の例は4導体の超高圧架空線Aに用いる場合を示している。以下、主に架空線上運搬機100を4導体に用いる場合に即して説明を行い、架空線上運搬機100の進行方向における前後左右を単に前、後、左、右ということがある。尚、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0018】
架空線上運搬機100は、
図2に示すように、送電線に沿って走行する本体部10と、本体部10に吊設される荷台部20と、電源部30とを主に備えている。
【0019】
本体部10は、4導体の下側の一対の送電線B2,B2上を走行する左右一対の駆動ローラー1,1と、4導体の上側の一対の送電線B1,B1上を走行する左右一対の間隔保持用ローラー2,2と、一対の駆動ローラー1,1をそれぞれ駆動する左右一対の駆動用モータ3,3と、一対の駆動ローラー1,1、及び一対の間隔保持用ローラー2,2を軸支する左右一対の支持柱4,4とを備えている。
【0020】
支持柱4は、鉄やアルミニウム、ステンレス等の金属材料を加工・溶接して形成され、
図2に示すように、左右方向の外側に設けられる支持柱本体41と、支持柱本体41の左右方向の内側において支持柱本体41に沿って設けられる駆動ローラーフレーム42とを備えている。駆動ローラー1は、
図2に示すように、支持柱本体41と駆動ローラーフレーム42により回転可能に軸支され、支持柱本体41の左右方向の外側に設けられた駆動用モータ3(
図5、
図6参照)により回転駆動される。駆動ローラー1は、厚み方向の中央が窪んだ鼓形をなし、この窪みに送電線B2を収容するよう構成されている。
【0021】
駆動ローラー1の下方には、前後一対の鼓形の押付ローラー11,11が、駆動ローラー1と上下に対向するよう設けられている。駆動ローラー1と押付ローラー11,11の上下方向の間には、送電線B2を挿通するスペースが設けられている。押付ローラー11,11は、その下方に設けられた電動シリンダー12により上下方向に出退自在に設けられている。
【0022】
一対の間隔保持用ローラー2,2は、駆動ローラー1よりやや小径の鼓型ローラーからなり、それぞれ支持柱4,4の上端近傍から左右方向の内側に延出する回動軸周りに回転可能に軸支されている。
【0023】
支持柱本体41は、上下方向に延びる柱状に設けられ、断面が長方形の角パイプからなる支持柱上部411と、断面がコ字のチャンネル材からなる支持柱中部412、及び支持柱下部413の上下3つの部分で構成されている。
【0024】
支持柱上部411は、支持柱中部412の内部を摺動して、支持柱本体41の長さを伸縮するよう構成されている。支持柱上部411の上端には、間隔保持用ローラー2と、矩形リング状の把手4dが設けられている。
【0025】
支持柱中部412と支持柱下部413は、開閉軸414により折り曲げ可能に連結されている。支持柱中部412には、駆動ローラー1、駆動用モータ3が設けられている。また、支持柱中部412における左右方向の外側には、左右の外側へ延出する直角三角形の枠43aの内側にリブ43bを有する仮預け用フック43が設けられている。
【0026】
支持柱下部413は、コ字断面の開放側を左右の外側に向けて立設され、押付ローラー11,11、及び電動シリンダー12が取り付けられている。
【0027】
駆動ローラーフレーム42は、
図5、
図6に示すように、カバー上部421とカバー下部422と、カバー底部423とからなる。カバー上部421とカバー下部422は、アイボルト47aとナット47bにより着脱自在に連結されている。
カバー上部421は、コ字材からそれぞれ切断した上辺421aと、縦辺421bを、コ字断面の開放側を外側に向けた状態でL字に溶接されている。また、カバー上部421は、下端内側にアイボルト47aを挿通してナット47bで係止する切り欠きが設けられた係止板48(
図5(a)参照)を備えている。
【0028】
カバー下部422は、断面の内側を左右方向の内側に向けて上下方向に延びるコ字材からなる。カバー底部423は、コ字断面の一対の側辺を左右に、コ字断面の内側を上に向けた扁平コ字材からなり、カバー下部422、及び支持柱下部413にビス固定されている。
【0029】
カバー下部422の上部には、アイボルト47aの円環状のアイを貫通してアイボルト47aを回動可能に枢支する六角穴ボルト45aが設けられている。六角穴ボルト45aは、リング状スペーサ45c,45cで、アイボルト47aを挟んだ状態でナット45bにより固定されている。
【0030】
支持柱下部413、カバー下部422、カバー底部423により押付ローラー11と電動シリンダー12が支持されている。電動シリンダー12はピストンロッド12aを上方へ摺動させて、送電線B2を介して押付ローラー11,11を駆動ローラー1に押し付ける。
【0031】
左右の支持柱4,4は、架空線上運搬機100の使用時において、
図5に示した補強バー6により連結される。補強バー6は、ステンレス製のアングル材により形成され、一端部(
図5(a)参照)に、係止用の貫通孔6aを有し、他端部の下縁から切れ込む2つの係止用の切り欠き6b,6b(
図5(b)参照)を有している。補強バー6の左側の端部は、貫通孔6aを介し、蝶ナットにより左側の支持柱4に設けられたL字金具からなる係止部49の係止孔49aに回動可能にかつ抜け落ち不能に連結されている。補強バー6の右側の端部は、切り欠き6bを介して、ボルトと蝶ナットにより左右の支持柱4,4の係止部49の係止孔49aに連結されている。補強バー6の右側の端部は切り欠き6bを介して固定されているので、蝶ナットを緩めるだけでボルトを切り欠き6bから抜き差しできる。
【0032】
荷台部20は、
図7に示すように、左右一対の支持柱4,4にそれぞれ吊持たれる吊持ち部51と、吊持ち部51に吊持たれる枠部52と、枠部52に複数設けられるフック53,53,…とを備えている。
【0033】
吊持ち部51は、
図7、
図8に示すように、枠部52に対し側面視で垂直に設けられる左右一対の主柱511,511と、各主柱511をそれぞれ補強する前後一対の斜材からなる補強板512,512,…と、枠部52の長辺間に架け渡される左右一対の梁部513,513と、左右の主柱を上端部で連結する一対の幅調節梁514,514を有している。主柱511、及び梁部513は角パイプ材により形成され、補強板512は板材により形成されている。幅調節梁514,514は、それぞれ長さ方向(
図7(b)の左右方向)に複数のビス孔514a,514aを有しており、左右の幅調節梁514,514は、互いのビス孔514a,514aを重ねてビスで連結することで、1本の梁状に連結される。左右の幅調節梁514,514は、異なるビス孔514a,514aを介して連結することで、下側の送電線B2,B2間の距離に合わせて、左右の主柱511,511間の距離を調節できる。
【0034】
主柱511の上部の左右方向の外側には、荷台部20を支持柱4に連結するための接続金具516が設けられている。接続金具516は、揺動軸54により主柱511に対し回動可能に接続されている。接続金具516は断面がコ字の金具からなり、揺動軸54はボルト・ナットからなる。また、接続金具516には、倒U字の把手515が接続金具516を挟むようにして接続金具516の側板516a,516aの外面に溶接されている。
【0035】
把手515の両下端に隣接して、左右方向の内側に平行に延出する棒状部材からなる一対のストッパー517,517が設けられており、荷台部20の揺動は、
図8(b)に示すように、主柱511がストッパー517,517に当接することにより、前後35°の範囲に制限されている。また、荷台部20は、ストッパー55により揺動しないよう固定できる。
【0036】
枠部52は、
図7(a)に示すように、前後方向(
図7(a)の上下方向)に延びる短辺521,521と、左右方向(
図7(a)の左右方向)に延びる長辺522,522とからなる矩形の枠状に形成されている。
【0037】
短辺521,521は、
図2に示すように、駆動ローラー1,1より左右方向(
図1の左右方向)の外側に設けられている。
【0038】
長辺522,522には、
図7(a)に示すように、長手方向に沿って、それぞれ複数のビス孔52a,52a,…が穿設されており、吊持ち部51の一対の梁部513は、その両端に設けられた係止用コ字金具513a,513a、及びビス孔52a,52aを介して、前後一対の長辺522,522に架け渡されている。左右一対の梁部513,513は、異なるビス孔52a,52aを介して長辺522,522に連結されることで、互いの距離が調節可能に構成されている。
【0039】
フック53,53,…は、枠部52の4隅と前側(
図7(a)の下側)の長辺522の中央の計5か所から枠部52の外側へ放射状に延出している。フック53は基端側より先端側の長い「し」の字に形成され、先端が枠部52より上方に設けられている。特に枠部52の4隅に設けられたフック53,53,…は、
図2に示すように全体が駆動ローラー1,1よりも左右方向の外側に位置している。
【0040】
枠部52には、
図4に示すように、電源部30が吊設される。電源部30は、4つのバッテリー8a,8a,…を内蔵したバッテリー部8と制御盤9とを備えている。駆動用モータ3、及び電動シリンダー12は、電源部30のバッテリー8aにより駆動される。
【0041】
(架空線上運搬機100を用いた径間スペーサCの交換方法)
架空線上運搬機100は、
図5に示した本体右半部10aと、
図6に示した本体左半部10bと、
図7に示した荷台部20と、電源部30(
図2参照)とを分解した状態で径間スペーサCを交換する現場に持ち込み、地上でこれらを組み立てる。
【0042】
架空線上運搬機100の組み立ては、まず、荷台部20の接続金具516をカバー下部422に嵌合し、ボルト・ナットで連結して荷台部20を本体部10に吊設する。荷台部20は、予め幅調節梁514,514を適宜のビス孔514aで連結し、梁部513,513を適宜のビス孔52aで枠部52に連結して、吊持ち部51,51の間隔を送電線B2,B2の間隔に合わせておく。電源部30は、枠部52の後ろ側の長辺522にフックで吊設する。架空線上運搬機100は、送電線Bに上がった作業者がロープ(不図示)で送電線上に吊上げる。
【0043】
架空線上運搬機100は、
図3に示すように、支持柱上部411、及び支持柱中部412を、支持柱下部413に対し開閉軸414周りに外側に折り曲げて駆動ローラー1,1を開放した状態で吊りあげ、4導体の下側2本の送電線B2,B2を駆動ローラー1,1にセットしたのち、支持柱4,4を直状に戻して送電線B2,B2を駆動ローラーフレーム42で覆うとともに間隔保持用ローラー2,2を上側の送電線B1,B1にセットし、アイボルト47aをナット47bで係止板48に係止して支持柱上部411,支持柱中部412を支持柱下部413に固定する。次に、補強バー6の適宜の切り欠き6bを蝶ナット・ボルトにて左右の支持柱4,4間に架け渡す。
【0044】
架空線上運搬機100を吊り上げたら、続けて宙乗り機200をロープで送電線上に吊上げる。本実施形態で用いる宙乗り機200は、下側の送電線B2,B2上を走行する前が1対の主ローラー201a、201aと後側一対の主ローラー201b,201bと、上側の送電線B1,B1を走行する一対の間隔保持ローラー202,202と、間隔保持ローラー202,202と前側の主ローラー201a,201aを支持する支持柱204,204と、人が乗りこむ作業籠205と、送電線B1,B2の脱落を防止する脱落防止ローラー206a,206bと、ブレーキ207とを備えている。
【0045】
架空線上運搬機100、及び宙乗り機200を送電線B上に設置したら、交換用の新しい径間スペーサCをロープで吊上げ、架空線上運搬機100の5本のフック53,53,…に適宜振り分けて吊り下げる。この際、荷台部20における枠部52の4隅に設けられたフック53,53,…は、全体が駆動ローラー1,1よりも左右方向の外側に設けられていることから、送電線B2,B2の左右方向の外側に飛び出しているので、径間スペーサCを掛けやすい。
【0046】
径間スペーサCを交換する際は、
図10に示すように、架空線上運搬機100を進行方向の前側に、宙乗り機200を進行方向の後側にして、作業者Mは、宙乗り機200に乗り込んで、リモコン(不図示)により駆動用モータ3,3、及び押付ローラー11,11を操作して、架空線上運搬機100を前進させる。架空線上運搬機100は、押付ローラー11,11を備えるので、駆動用モータ3,3の動力を無駄なく送電線B2,B2に伝えることができ、また、架空線上運搬機100の姿勢を安定させることができる。
【0047】
作業者Mは、架空線上運搬機100に続いて、宙乗り機200を進行させる。本実施形態では、宙乗り機200は駆動用モータを有さないため、送電線が下りとなるところでは作業者が足でブレーキをかけながら前進し、送電線が登りとなるところでは架空線上運搬機100に引かせるか、作業者が手で送電線を引くことで前進する。
【0048】
先行する架空線上運搬機100が、交換対象の径間スペーサCのところまで前進して接触センサー13がこの径間スペーサCに接触すると、架空線上運搬機100が停止する。
架空線上運搬機100は、このように接触センサー13を有するので、径間スペーサCを押しすぎて送電線を傷つける心配をすることなく、架空線上運搬機100と径間スペーサCの距離を詰めることができる。
【0049】
径間スペーサCに架空線上運搬機100を当接させたら、作業者Mは、宙乗り機200が架空線上運搬機100に当接するまで宙乗り機200を前進させる。
図10は、送電線B1,B2が進行方向(
図10では左方向)に下っており、荷台部20が進行方向側に振れので、宙乗り機200をより架空線上運搬機100に近づけることができる。
【0050】
この状態で、作業者Mは、架空線上運搬機100越しに手を伸ばして径間スペーサCを送電線Bから取り外す。本実施形態の径間スペーサCは、
図9に示すように、4導体に用いるもので、4つの電線把持部C1,C1,…と、4本の棒材からなる間隔体C2,C2,…とから略正方形に形成され、ボルトC3をレンチ等で緩めることで送電線Bから取り外すことができる。取り外した古い径間スペーサCは、落下防止のために仮預け用フック43に安全ロープに結び付けた上で、フック53に吊り下げる。
架空線上運搬機100は、一対の駆動ローラー1,1と一対の間隔保持用ローラー2,2の前後に送電線状を走行するローラーを備えないので、前後方向の寸法が小さく、架空線上運搬機100越しに径間スペーサCの交換作業を行うことが容易である。
【0051】
次に、架空線上運搬機100と宙乗り機200を取り外した径間スペーサCの位置より進行方向前方側に移動させる。しかる後、フック53から新しい径間スペーサCを取り出し、後方を向いて新しい径間スペーサCを送電線Bに取り付ける。
【0052】
以上、本発明の架空線上運搬機は、上述した実施例に限らず、例えば、本発明の架空線上運搬機は、押付ローラーやフック、接触センサーは備えなくてもよい。荷台部は、支持柱に対し揺動不能であってもよいし、荷台部の吊持ち部の幅は、変更不能でもよい。
また、本発明の架空線上運搬機は、4導体の架空線に限らず、2導体の架空線に用いることもでき、この場合は、前記一対の駆動ローラーが送電線上を走行するようにし、間隔保持用ローラーは、用いない。
本発明の径間スペーサ交換工法では、宙乗り機が架空線上運搬機より進行方向の前側を走行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 架空線上運搬機
1 駆動ローラー
11 押付ローラー
13 接触センサー
2 間隔保持用ローラー
3 駆動用モータ
4 支持柱
5 荷台部
52 フック
7 揺動軸
200 宙乗り機
A 超高圧架空線
B1,B2 送電線
C 径間スペーサ
M 作業者
【要約】 (修正有)
【課題】径間スペーサと宙乗り機の間に置いても、径間スペーサの交換作業を邪魔しない架空線上運搬機を提供する。
【解決手段】架空線上運搬機100は、左右一対の駆動ローラー1と、左右一対の駆動ローラーの上方に設けられる左右一対の間隔保持用ローラー2と、一対の駆動ローラーをそれぞれ駆動する左右一対の駆動用モータと、上下方向に延びるとともに一対の駆動ローラー及び一対の間隔保持用ローラーを軸支する左右一対の支持柱4と、一対の支持柱に吊設される荷台部20と、を備える。
【選択図】
図1