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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ケーブル設置・分岐用コンクリート製品
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/04 20060101AFI20220518BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20220518BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20220518BHJP
   B28B 7/00 20060101ALI20220518BHJP
   B28B 7/16 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H02G9/04
E02D29/12 E
H02G1/06
B28B7/00 D
B28B7/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019203366
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021078232
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-10-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596002424
【氏名又は名称】不二高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】福島 司
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-12978(JP,A)
【文献】特開平11-313433(JP,A)
【文献】特開2004-285568(JP,A)
【文献】特開2006-353072(JP,A)
【文献】特開2004-360401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/04
E02D 29/12
H02G 1/06
B28B 7/00
B28B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と該底壁から立設された側壁を有し、ケーブルを収容又は分岐する内部空間が形成されたコンクリート製筐体と、
側壁に設けられ常時は閉鎖されて側壁の一部を成し必要に応じて開口される予備孔と、
予備孔に嵌合しコンクリート製筐体の内部から側壁の外面に向けて台形状に拡大したコマ部材であり、テーパ側面を有して常時は予備孔を閉鎖して側壁の一部を成すコマ部材と、
コマ部材のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部と、止水材塗布部と、を含むことを特徴とするケーブル設置・分岐用コンクリート製品。
【請求項2】
コマ部材は、コンクリート製筐体の内部から側壁の外面に向けて拡大するテーパ側面を有し側壁の外面側に向けて次第に断面が大きくなる第1テーパ部と、
コンクリート製筐体の側壁の厚み中間位置から側壁の外面に向けて拡大するテーパ側面を有し側壁の外面に向けて次第に断面が大きくなる第2テーパ部と、
第1テーパ部と第2テーパ部との接合部に介設され第1テーパ部と第2テーパ部間に段差を形成させる段差部と、を含むことを特徴とする請求項1記載のケーブル設置・分岐用コンクリート製品。
【請求項3】
コマ部材のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部と、止水材塗布部と、はそれぞれテーパ側面に周状に塗布されて成ることを特徴とする請求項1又は2記載のケーブル設置・分岐用コンクリート製品。
【請求項4】
止水材は、段差部の段差壁部及びその近傍にのみ周状に塗着されて、側壁の一部を成すコマ部材部分のコンクリート製筐体の内外を止水することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のケーブル設置・分岐用コンクリート製品。
【請求項5】
側壁の予備孔にコマ部材を嵌合させたコンクリート製筐体は、
予め製造されたコンクリート二次製品のコマ部材であり、コンクリート製筐体の側壁の予備孔の取付位置に対応する位置に型枠で支持して配置されるコマ部材を含み、
型枠内にコンクリートを打設固化してコンクリート製筐体の側壁にコマ部材を一体化させてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のケーブル設置・分岐用コンクリート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、通信線や電線等のケーブル類を内部空間に配線、収容、設置、接続、分岐させるケーブル設置・分岐用コンクリート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電や配電のための電力線や電話や光通信のための通信線等のケーブル類(電線類)については、施工、メンテナンスの作業性の点や景観、防災性の点等から地上での電柱による支持に替えて、地中埋設化が推進され、実施される地域も増加している。地中に敷設される通信線や電線のケーブル類は、マンホール、ハンドホール、フィンガーホール等のコンクリート製の作業用ボックス内に引き入れて、他のケーブルと接続したり、分岐されたりされている。この際、ケーブル類を引き込む方向に応じて、作業用ボックスの側壁にケーブル類を通係するための貫通孔を形成させ、該貫通孔にフレキシブル管路やベルマウスを配置させて、外部から作業用ボックス内部にケーブル類を通係させる作業が行われる。従来、作業用ボックスの側壁にケーブル類の通係用孔を形成する方法としては、側壁のケーブル類を通係させるべき位置を予め薄肉としてノックアウト部を形成しておき、施工現場でこの薄肉のノックアウト部を叩打等して孔を形成する方法が知られている。しかしながら、従来の薄肉のノックアウト部を形成しておく方法では、外部からの土圧や水圧による水の浸透等を考慮して、ノックアウト部を極端に薄肉に成形することができず、その結果、作業現場でのノックアウト部で孔を形成する作業では、ピックやタガネ等を使用したハツリ作業が必要であり、極めて大きな労力がかかるうえ、熟練者でもスムーズに孔の縁をキレイに形成することができず、作業時間がかかる問題があった。
【0003】
これに対し本出願人は、特許文献1において、簡単、短時間で作業用ボックスのノックアウト用孔を形成することができる作業用ボックスのノックアウト部の形成方法を提案している。特許文献1の作業用ボックスノックアウト部の形成方法では、ケーブル通線用のノックアウト孔として打ち抜かれるべき位置に、予め円錐台状に形成した打抜き中実部材を型枠に支持させ、その状態で型枠内にコンクリートを充填して該打抜き中実部材を埋め込んで固化させてノックアウト部として形成する方法であり、ケーブルを通線する際には、打ち抜き中実部材をハンマ等でボックス内側から外側に向けて打撃して打ち抜くことで貫通孔を形成させるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-360401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の作業用ボックスでは、予め別部材として形成した円錐台状の打ち抜き中実部材と作業用ボックスの側壁を形成するコンクリートとを一体的に固着されているが、打ち抜き中実部材をハンマ等による小さい打撃力で打ち抜きやすい反面、極めて弱い力でも打ち抜き中実部材が抜けてしまうおそれがあった。例えば、作業用ボックスを搬送する際や、ボックス内でのケーブル類の設置、接続、分岐作業中に、不意に打ち抜き中実部材が側壁から外れてしまうことで、ケーブル類を通線させる予定のない側壁に貫通孔が形成されてしまう結果、その不要な貫通孔の埋め戻しする作業が必要となり、不要な労力、材料、コスト、時間がかかってしまう問題が生じるおそれがあった。さらに、作業用ボックスの側壁の打ち抜き中実部材の輪郭部分がコンクリートの打継ぎ目となることから外部の土圧や水圧で、ボックス内部へ水が浸入してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、必要に応じてケーブルを通すための貫通孔を側壁に短時間、低労力で簡単に形成できるとともに、ケーブルを通係させない側壁では不意に孔が形成されることがなく確実に閉鎖状態を保持できる上、外部から内部への水の浸入も防止できるケーブル設置・分岐用コンクリート製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、底壁12と該底壁12から立設された側壁14を有し、ケーブルLを収容又は分岐する内部空間16が形成されたコンクリート製筐体18と、側壁14に設けられ常時は閉鎖されて側壁14の一部を成し必要に応じて開口される予備孔20と、予備孔20に嵌合しコンクリート製筐体18の内部から側壁14の外面に向けて断面台形状に拡大したコマ部材であり、テーパ側面(34,36,39)を有して常時は予備孔20を閉鎖して側壁14の一部を成すコマ部材22と、コマ部材22のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部24と、止水材塗布部26と、を含むケーブル設置・分岐用コンクリート製品10から構成される。
【0008】
また、コマ部材22は、コンクリート製筐体18の内部から側壁の外面に向けて拡大するテーパ側面34を有し側壁14の外面側に向けて次第に断面が大きくなる第1テーパ部28と、コンクリート製筐体18の側壁14の厚み中間位置から側壁14の外面に向けて拡大するテーパ側面36を有し側壁14の外面に向けて次第に断面が大きくなる第2テーパ部30と、第1テーパ部28と第2テーパ部30との接合部に介設され第1テーパ部28と第2テーパ部30間に段差を形成させる段差部32と、を含むこととしてもよい。
【0009】
また、コマ部材22のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部24と、止水材塗布部26と、はそれぞれテーパ側面に周状に塗布されて成ることとしてもよい。
【0010】
また、止水材22は、段差部32の段差壁部38及びその近傍にのみ周状に塗着されて、側壁14の一部を成すコマ部材22部分のコンクリート製筐体18の内外を止水することとしてもよい。
【0011】
また、側壁14の予備孔20にコマ部材22を嵌合させたコンクリート製筐体18は、予め製造されたコンクリート二次製品のコマ部材22であり、コンクリート製筐体18の側壁14の予備孔20の取付位置に対応する位置に型枠(102)で支持して配置されるコマ部材22を含み、型枠(102)内にコンクリートを打設固化してコンクリート製筐体18の側壁14にコマ部材22を一体化させてなることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品によれば、底壁と該底壁から立設された側壁を有し、ケーブルを収容又は分岐する内部空間が形成されたコンクリート製筐体と、側壁に設けられ常時は閉鎖されて側壁の一部を成し必要に応じて開口される予備孔と、予備孔に嵌合しコンクリート製筐体の内部から側壁の外面に向けて断面台形状に拡大したコマ部材であり、テーパ側面を有して常時は予備孔を閉鎖して側壁の一部を成すコマ部材と、コマ部材のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部と、止水材塗布部と、を含むことから、ケーブルを通係させない側壁では、作業中や搬送中の振動等の弱い力では不意に予備孔が開口されることがなく確実に閉鎖状態を保持できるとともに、外部から内部への水の浸入を確実に防止できる。さらに、ケーブルを通す際等の必要に応じて予備孔を側壁に開口させる際には、例えば、ハンマによる打撃等によって、短時間、低労力で簡単にコマ部材を離脱させて、予備孔を開口させることができる。
【0013】
また、コマ部材は、コンクリート製筐体の内部から側壁の外面に向けて拡大するテーパ側面を有し側壁の外面側に向けて次第に断面が大きくなる第1テーパ部と、コンクリート製筐体の側壁の厚み中間位置から側壁の外面に向けて拡大するテーパ側面を有し側壁の外面に向けて次第に断面が大きくなる第2テーパ部と、第1テーパ部と第2テーパ部との接合部に介設され第1テーパ部と第2テーパ部間に段差を形成させる段差部と、を含む構成とすることにより、コマ部材の中間に拡大された段差部を有するので、例えば段差部分に止水材塗布部を設けると、止水材塗布部を介してコマ部材と側壁とが接着されている構造でも、スムーズにコマ部材を離脱させて予備孔を開口することができ、常時のコマ部材の閉鎖保持及び止水機能と、必要時の予備孔開口作業の作業性を同時に実現しうる。
【0014】
また、コマ部材のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部と、止水材塗布部と、はそれぞれテーパ側面に周状に塗布されて成る構成とすることから、剥離剤塗布部を周状に設けることにより側壁からのコマ部材の離脱操作をスムーズに行いうると同時に、特に、止水材塗布部が周状に設けられるので側壁のコマ部材部分での止水を確実にさせうる。
【0015】
また、止水材は、段差部の段差壁部及びその近傍にのみ周状に塗着されて、側壁の一部を成すコマ部材部分のコンクリート製筐体の内外を止水する構成とすることにより、止水機能を保持できると同時に、簡単かつスムーズにコマ部材を側壁から離脱させて予備孔を開口する作業を行える止水材塗布部の構造を具体的に実現できる。
【0016】
また、側壁の予備孔にコマ部材を嵌合させたコンクリート製筐体は、予め製造されたコンクリート二次製品のコマ部材であり、コンクリート製筐体の側壁の予備孔の取付位置に対応する位置に型枠で支持して配置されるコマ部材を含み、型枠内にコンクリートを打設固化してコンクリート製筐体の側壁にコマ部材を一体化させてなる構成とすることにより、テーパ側面を有する形状のコマ部材であって、かつコマ部材のテーパ側面に剥離剤塗布部と止水材塗布部が設けられたコマ部材を含む構造であっても、コマ部材をコンクリート製筐体の側壁に一体化させたケーブル設置・分岐用コンクリート製品を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブル設置・分岐用コンクリート製品の断面図及び要部を拡大した説明図である。
図2図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の全体斜視図である。
図3】(a)は、図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品のコマ部材の外側端面側から見た斜視図、(b)は同コマ部材の内側端面側から見た斜視図である。
図4図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品のコマ部材の側面図である。
図5図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の予備孔を開口させる際の作用説明図である。
図6図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の製造方法の一例の説明図である。
図7】(a)は、図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品でケーブルを通係させる際の一例の説明図、(b)は他の例の説明図である。
図8図1のケーブル設置・分岐用コンクリート製品のコマ部材の他の実施形態の説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るケーブル設置・分岐用コンクリート製品の斜視図である。
図10】(a)は、図9のケーブル設置・分岐用コンクリート製品のコマ部材の外側端面側から見た斜視図、(b)は同コマ部材の内側端面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しつつ本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の実施形態について説明する。本発明に係るケーブル設置・分岐用コンクリート製品は、例えば、マンホールやハンドホール等の作業用ボックス、又はU字溝等のコンクリート製で、内部に通信線、電力線等のケーブル類や電線類を配線、収容、設置したり、接続したり、分岐したりするためのケーブル類、電線類設置用のコンクリート二次製品である。図1ないし図7は、本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の第1の実施形態を示している。図1に示すように、本実施形態に係るケーブル設置・分岐用コンクリート製品10は、内部にケーブル類(電線類)を収容設置又は分岐する空間を有するケーブル設置・分岐用コンクリート製品であり、底壁12と側壁14と内部空間16を有するコンクリート製筐体18と、コンクリート製筐体18の側壁14に設けられた予備孔20と、予備孔20に嵌合して常時は予備孔20を閉鎖して側壁14の一部を成すコマ部材22と、コマ部材22の側面に設けられる剥離剤塗布部24と止水材塗布部26と、を備える。
【0019】
図1図2に示すように、本実施形態では、コンクリート製筐体18は、例えば、マンホール、ハンドホール、フィンガーホール等の地中に埋設される作業用ボックス19の例で説明する。コンクリート製筐体18は、例えば、略矩形状の底壁12と、該底壁12の外形輪郭形状となる略矩形状の四辺から立設された4つの側壁14と、を有し、略立体矩形状にコンクリートで一体成型されている。コンクリート製筐体18の底壁12と4つの側壁14に囲まれた内部には、通信線や電力線等のケーブル類が配線のために収容設置、接続、分岐等される内部空間16が形成されている。コンクリート製筐体18の内部空間16は、上方が開口されているが、従来の作業用ボックス同様に、開閉可能な蓋(図示せず)で閉鎖される。本実施形態では、コンクリート製筐体18の4つの側壁14にそれぞれ予備孔20が形成される部分に予備孔20が形成されコマ部材22が埋設されている。
【0020】
予備孔20は、コンクリート製筐体18の側壁14に設けられ、常時はコマ部材22によって閉鎖されて側壁20を成し、必要に応じて開口されて側壁14を厚み方向に貫通して内部空間16と外部空間17とを連通させたケーブル通係用の貫通孔である。図5にも示すように、予備孔20は、後述するコマ部材22のテーパ側面を有する外形形状に対応してテーパ部を含む段差付き孔形状で形成される。予備孔20は、該予備孔20に嵌合して閉鎖するコマ部材22が離脱された後に側壁14に開口された際には、ケーブル類を通す貫通孔となる。
【0021】
図1図3図4に示すように、コマ部材22は、コンクリート製筐体18の側壁14の予備孔20に嵌合して常時は該予備孔20を閉鎖して該側壁14の一部を成す部材である。コマ部材22は、コンクリート製筐体18の内部から側壁14の外面に向けて断面台形状に拡大して形成されており、テーパ側面を有している。コマ部材22は、必要に応じて側壁14から離脱されてケーブル類を通係する予備孔20を開口する。本実施形態では、コマ部材22は、例えば、コンクリート等で予め所定の立体形状に形成された中実部材からなり、両端面(33、35)がコンクリート製筐体18の側壁14の内外面に露出した状態で側壁14に埋設するように該側壁14とコンクリートで一体的に形成されている。より具体的には、コマ部材22は、コンクリート製筐体18の側壁14内において内部空間側から側壁外面側に向けて該側壁の厚み方向に順に、断面が異なる第1テーパ部28と第2テーパ部30とが一体的に接合して形成されており、それらの第1テーパ部28と第2テーパ部32との接合部には段差部32が介設されている。
【0022】
コマ部材22の第1テーパ部28は、コンクリート製筐体18の内部空間16側となる内側端面33から側壁14の厚み中間位置までの長さで設定され、内部空間側16側から側壁14の外面側(14G)に向けて拡大する第1テーパ側面36を有し、側壁14の外面側(14G)に向けて次第に断面が大きくなるように形成されている。第1テーパ部28は、例えば、断面台形状となる略円錐台形状に形成されており、中心軸を横倒しして小径の底面を内側端面33としている。第2テーパ部30は、第1テーパ部28の大径側となる外面側端部すなわちコンクリート製筐体18の側壁14の厚み中間位置から側壁14の外面に向けて拡大する第2テーパ側面38を有し、側壁14の外面に向けて次第に断面が大きくなるように形成されている。第2テーパ部30は、例えば、第1テーパ部28の中心軸上に中心軸を一致させて横倒しした断面台形状となる円錐台形状に形成されており、小径側を第1テーパ部28の大径側に一体的に接合させるとともに大径側の底面を外側端面35としている。一体的に接合された第1テーパ部28と第2テーパ部30との合計の厚み幅は、コンクリート製筐体18の側面14の厚み幅と同じに設定されており、コマ部材22の内側端面33は側壁14の内面14Nと略面一に、外側端面35は側壁14の外面14Eと略面一となるように側壁に埋設される。第1テーパ部28と第2テーパ部30の接合部周辺においては、第2テーパ部30の小径側は、第1テーパ部28の大径側よりも断面形状が段差的に拡大されて形成されており、第1テーパ部28と第2テーパ部30との間に段差壁部38を形成して段差部32を形成している。段差部32の段差壁部38はコマ部材22の第1テーパ部28と第2テーパ部30の接合部に周状に連続して形成される。例えば、第1テーパ部28の側壁14の厚み方向に沿った厚み幅は、第2テーパ部の厚み幅よりも大きく設定されており、段差部32は、側壁14の厚みの略中央の位置よりも側壁の外面側に寄った位置に設定されている。段差部32は、第1テーパ部28の大径側端部より径方向に突設するように段差壁部38を形成している。段差壁部38は、例えば、断面円弧状に第2テーパ部30側に向けて凹設されている。段差壁部38を円弧状に凹設したことにより、例えば、コマ部材部分での止水機能と、側壁との一体化する接着機能と、必要に応じてコマ部材を離脱させる際の離脱させやすさのバランスが良好である。なお、段差部32の段差壁部38の形状は、任意形状でもよい。
【0023】
上述のようにコマ部材22は、断面台形状となるテーパ側面を有する錐台状からなるが、これにより、コンクリート製品10を地中等に設置した際に、側壁14の外部から内側に向けて土圧や水圧等がかかってもコマ部材22が内側に離脱することなく閉鎖状態を保持できる。さらに、図5に示すように、必要に応じて、コマ部材22をコンクリート製筐体18の側壁14から離脱させて、該側壁14にケーブル類の通線用の予備孔24を開口するときには、ボックス内側から外側に向けてハンマ等で打撃するだけで簡単かつ短時間で離脱させて側壁に予備孔24を開口しうる。図1に示すように、コマ部材22には、側壁14の外面側に配置される外側端面35の中心から内部に向けて連結用穴40が穿穴されている。この連結用穴40は、内側端面33側までは貫通されておらず、後述のようにコンクリート製品成形用の外型枠にピン部材42を介して支持させるための穴となる。
【0024】
図1図3図4に示すように、コマ部材22の第1テーパ側面34、第2テーパ側面36には、剥離剤塗布部24が設けられている。剥離剤塗布部24は、第1テーパ側面34と第2テーパ側面36の略全面に設けられている。剥離剤塗布部24は、例えば、従来周知のコンクリート用剥離剤をコマ部材22の第1、第2テーパ側面に刷毛塗りや噴霧、又は溝付け等の任意の方法で塗布して設けられる。これにより、コマ部材22とコンクリート製筐体18の側壁14との結合力が比較的弱くなり、必要に応じてコマ部材22を側壁14から離脱させて、スムーズかつ短時間で、きれいな予備孔20を開口させることができる。なお、剥離剤塗布部24は、コマ部材22のテーパ側面の全面に限らずテーパ側面の一部に周状に塗布されていてもよい。さらに、コマ部材22のテーパ側面34の一部には、止水材塗布部26が設けられている。止水材塗布部26は、例えば、従来周知のシリコン樹脂等コンクリート接着機能を有する止水材からなり、コマ部材22のテーパ側面の側壁の厚み方向の一部分のみに、周状に設けられている。本実施形態では、止水材塗布部26は、例えば、段差部32の段差壁部38及びその近傍にのみ周状に塗着されている。図3図4の網掛け部分は止水材塗布部26を示している。止水材塗布部26は、第1テーパ部28の第1テーパ側面34の段差部32側の近傍から凹状の段差壁部38を含み、該段差壁部38の突出端部となる第2テーパ部30の小径側端部までの部分に断面略三角形状に周方向に連続してリング状に設けられている。止水材塗布部26は、コマ部材22の離脱方向(コンクリート製筐体の内部空間16側から側壁の外面側に向けた方向)に対して段差部32の後方側となる部分に設けられている。止水塗布部44は、側壁14の一部を成すコマ部材22部分でコンクリート製筐体18の内外を確実に止水するとともに、コマ部材22と側壁14との接合力をある程度保持させる止水兼接着機能を作用する。コマ部材22のテーパ側面に剥離剤塗布部24と止水材塗布部26を設けたことにより、例えば、搬送中の振動等のかなり弱い力だけでは簡単にはコマ部材22は該側壁14から離脱することなく、閉鎖状態を保持することができる。一方、コンクリート製筐体18の側壁14に予備孔20を開口する必要がある場合には、コマ部材22をハンマ等で側壁14の内部空間側から外側に向けてある程度強く打撃等することにより、側壁のコマ部材の接着が一部分であることから簡単にコマ部材22が側壁14より離脱させて、予備孔20を開口することができる。すなわち、コマ部材22の側面に剥離剤塗布部24と止水材塗布部26を設けたことにより、予備孔20を開口させない側壁14については、コマ部材22による閉鎖状態の保持と止水性を確保できるとともに、必要に応じて予備孔20を開口させる際には側壁14からのコマ部材22の離脱させやすく、常時における側壁の閉鎖状態の保持と、必要時の予備孔20の開口作業性とを同時に実現している。止水材塗布部42を、例えば、テーパ側面全体に設けた場合には、コマ部材22をハンマ等の打撃で離脱させるのが困難となり、予備孔20をスムーズに開口できなくなる。よって、上述のようにコマ部材22のテーパ側面の一部、特に、段差部32の段差壁部及びその近傍にのみ周状に塗着すると、常時の閉鎖状態の保持と止水性と、必要の際の予備孔の開口作業の円滑な作業性と、を好適に実現できる。
【0025】
図6に示すように、ケーブル設置・分岐用コンクリート製品10を成形する際には、例えば、予めコマ部材22を型枠成形してコンクリート二次製品として形成しておき、コンクリート製筐体18の成形時に同時に埋込み成形させる。ケーブル設置・分岐用コンクリート製品10の製造方法の一例を説明する。まず、コマ部材22をコンクリートで型枠成形し、養生、固化させる。そしてコマ部材22の第1テーパ側面34、第2テーパ側面36に剥離剤塗布部24を設けるとともに、段差部32の近傍にのみ周状に止水材塗布部26を形成する。図6(a)に示すように、例えば、コンクリート製筐体18の底壁側が上方となるように底板100の上に箱型の内型枠104を組立て、その内型枠102の周囲に所定の間隔をあけて外型枠102を組み付ける。その際、側壁14の所定の予備孔20の開口位置に対応する位置にあわせて該外型枠102にピン部材106を介してコマ部材22を支持させる。この状態で、コマ部材22の内側端面33は、内型枠104に略接した状態で配置される。図6(b)に示すように、型枠100内に上方から生コンクリートを打設し、養生、固化させる。その後、図6(c)に示すように、ピン部材106を外して型枠106に対するコマ部材22の支持状態を解除して、型枠を取り外すと、側壁14の予備孔20にコマ部材22を嵌合させて、側壁にコマ部材を埋設状に一体化させたケーブル設置・分岐用コンクリート製品10が完成される。
【0026】
次に、本実施形態に係るケーブル設置・分岐用コンクリート製品10の作用について説明する。ケーブル設置・分岐用コンクリート製品10は、予め工場等で上記のような方法で型枠形成しておく。ケーブル設置・分岐用コンクリート製品10は、トラック等に載せて、例えば、地中配線化する現場等へ搬送され、所定位置への設置やコンクリート製筐体の内部空間へケーブル類の引き込み作業等を行って施工される。この際、コマ部材22のテーパ側面に周状に止水材塗布部26が設けられているので、その接着力により、搬送中の振動やケーブル引き込み作業等時にコマ部材等へ生じる弱い力では簡単にはコマ部材22は該側壁14から離脱することなく、閉鎖状態を保持することができる。例えば、ケーブル設置・分岐用コンクリート製品10を現場に設置して、コンクリート製筐体18の側壁14にケーブル類を引き込むための予備孔20を開口する必要がある場合には、図5に示すように、コマ部材22をハンマ等で側壁14の内部空間16側から外側に向けてある程度強く打撃等する(または外側から引き抜き状の力を作用させる)ことにより、止水材塗布部26による側壁14とコマ部材22との接着力に抗して、コマ部材22が側壁14より離脱され、予備孔20が形成される。なお、コマ部材22を離脱させた際に、止水材塗布部26を形成していた止水材26Rは予備孔20の内壁面に付着されていてもよい。また止水材塗布部はコマ部材22とともに離脱されてもよい。このように、簡単、省力かつ短時間でケーブル類を通係する側壁を貫通した予備孔20の形成をスムーズに形成することができる。一方で、貫通孔を形成しない側壁14については、コマ部材22が不意に離脱することがなく確実に閉鎖状態を保持できるとともに、外部から内部へ止水できる側壁構造を実現できる。図7(a)に示すように、予備孔20を開口した側壁14には、蛇腹管やコルゲート管等のケーブル保護用の保護管42を予備孔20内に挿通させ、保護管42の内側にはベルマウス44を係着し、予備孔20の内側と保護管42との間の隙間をモルタル46等で埋める。なお、コマ部材22の止水材塗布部の止水材が該コマ部材の離脱後に予備孔20に付着していてもそのまま埋設してもよい。保護管42の管内に通信線や電力線等のケーブルLを通して、コンクリート製筐体18の内部空間16に引き込み、収容、設置、接続、分岐等の配線作業が行われる。なお、図7(b)に示すように、開口した予備孔20には、例えば、ベルマウス状の分岐管部45と、該分岐管部45を一体化し外形形状が予備孔20に嵌合するように段差が無い略円錐台形状に設けられた嵌合ブロック部47と、を備えた分岐管ブロック49を装着して、該分岐管部45の外部17側突出端に、ケーブル保護管42を接続するようにしてもよい。分岐管ブロック49は、予め工場等で嵌合ブロック部がコンクリートやレジンコンクリート等で成型されて分岐管部と一体化されて製造されており、現場にてコマ部材22を離脱して側壁14を開口した予備孔20に装着するだけで分岐路を形成できる。予備孔20の段差によって形成される嵌合ブロック部47を嵌合した後の側壁14の外側の環状の隙間部分には、例えば、エポキシ樹脂50等の接着剤や止水剤を充填して分岐管ブロック49の固定や止水をすることとしてもよい。図7(b)の場合にも、通信線や電力線等のケーブルLを通して、コンクリート製筐体18の内部空間16に引き込み、収容、設置、接続、分岐等の配線作業が行われる。配線作業が終わったら、コンクリート製筐体18の外部を土で埋めて、上部を蓋で閉鎖する。なお、予備孔20を開口させないコマ部材22は、テーパ側面が内側から外側に次第に大きくなるテーパ状に形成されているので、外部からの土圧や水圧がかかっても側壁14に埋め込まれたコマ部材22が離脱することなく、確実に閉鎖状態を保持できる。
【0027】
なお、コマ部材22は、上記した実施形態の構造に限らない。例えば、コマ部材22は、コンクリート製筐体18の側壁14の内側から外側に向けて次第に断面が大きくなるテーパ状に形成されていればよく、例えば、角錐台形状、多角錐台形状、楕円錐台形状等、その他任意のテーパ側面を有した断面台形状の立体形状で形成されていてもよい。また、図8(a)に示すように、例えば、コマ部材22の止水材塗布部26は、段差部32の段差壁部38を含み第1テーパ側面と第2テーパ側面36に跨って設けられていてもよい。また、図8(b)~(f)に示すように、コマ部材22の段差部32の段差壁部38の断面形状は、例えば、中心軸に垂直な方向に直線状となる平面状(図8(b))、断面で傾斜した直線状となる傾斜平面状(図8(c))、断面円弧状に内部空間16側に向けて凸設された形状(図8(d))、断面三角形状に側壁の内側に向けて凸設された形状(図8(e))、断面円弧状に第2テーパ部30側に向けて凹設された形状(図8(f))等、その他任意の形状に設けられていてもよい。止水材塗布部26の止水材によるコマ部材22への接着力や止水、又はコマ部材を側壁から離脱させる際の簡便さ等に応じて、段差壁部の形状を設定することとしてもよい。
【0028】
次に、図9図10を参照しつつ、本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品の第2の実施形態について説明する。上記実施形態と同一部材には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施形態でもケーブル設置・分岐用コンクリート製品10-2は、上記実施形態同様に、コンクリート製筐体18と、コンクリート製筐体18の側壁14に設けられる予備孔20と、予備孔20を常時は閉鎖して側壁14の一部を成し必要に応じて離脱されるコマ部材22と、コマ部材22のテーパ側面に設けた剥離剤塗布部24と止水材塗布部26と、を備えている。本実施形態では、コンクリート製筐体18は、一方に長く形成された長方形状の底壁12と、該底壁12の対向する長辺から立設された側壁14と、を有するU字状ブロック48からなる。長手方向に対向する2個1対の側壁14の間に、一方に長い内部空間16が形成されている。U字状ブロック48は、長手方向に接続されて内部空間16を長手に接続させる。コンクリート製筐体18の内部空間16の開口された上部は、図示しない蓋で開閉可能に閉鎖される。
【0029】
図9図10に示すように、本実施形態では、側壁14に形成される予備孔20の形状、及び予備孔20に嵌合されるコマ部材22の形状は、側壁の長手方向に沿って長い形状となるように設けられている。コマ部材22は、例えば、側壁面に直交する縦断面では内部空間16側から外面側に向けて台形状に拡大し、側壁14の厚み方向に交差する面での断面形状が側壁の長手方向に沿って横長い横長丸錐台形状に設けられている。よって、コマ部材22は、内側端面35、外側端面37は略横長丸形状となっている。上記実施形態同様に、コマ部材22は、第1テーパ側面34を有する第1テーパ部28と、第2テーパ側面36を有する第2テーパ部30と、第1テーパ部28と第2テーパ部30との間に段差を形成する段差部32と、を含む。コマ部材22の縦断面形状、及びコマ部材22が埋設される側壁14の縦断面形状は、上記実施形態の図1と略同じ形状となる。剥離剤塗布部24は第1テーパ側面34と第2テーパ側面36の全面に設けられている。止水材塗布部26は、第1テーパ側面34の段差部32側近傍部分と段差部32の段差壁部34部分に周状に設けられている。本実施形態では、コマ部材22の外側端面37側には、横長方向に離隔して2個の連結孔40が穿穴されている。本実施形態でも、コンクリート製筐体18を型枠で成形する際には、予め製造された二次製品のコマ部材22に剥離塗布部24と止水材塗布部26を設けて、該コマ部材22に外型枠にピン部材で支持した状態で、型枠内にコンクリートを打設して、側壁14にコマ部材22を埋設させて一体的に形成される。本実施形態では、コマ部材22が横長く形成されているので、コマ部材22をハンマ等で打ち抜いて側壁14から離脱させると、側壁14には長手方向に沿って長い横長の予備孔20が開口される。該横長の予備孔20を形成させることにより、例えば、電力線のように径が大きく、曲げにくいケーブルを分岐する場合にも好適に利用できる。本実施形態でも上記実施形態同様に、コマ部材等に極めて弱い力が加わってもコマ部材が抜けて不意に予備孔20が開口されることなく閉鎖状態を保持できるとともにコマ部材22部分でも確実に止水することができるうえ、ケーブルを通線する必要がある際にはハンマ等による打撃によってコマ部材を比較的簡単に離脱させて側壁を貫通した予備孔を低労力かつ短時間で形成することができる。
【0030】
以上説明した本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のケーブル設置・分岐用コンクリート製品は、例えば、マンホール、ハンドホール、フィンガーホール等の作業用ボックスやU字溝、ケーブルトラフ等の通信線や電力線等のケーブル類、電線類を内部に収容するコンクリート製品に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 ケーブル設置・分岐用コンクリート製品
12 底壁
14 側壁
16 内部空間
18 コンクリート製筐体
20 予備孔
22 コマ部材
24 剥離剤塗布部
26 止水材塗布部
28 第1テーパ部
30 第2テーパ部
32 段差部
34 第1テーパ側面
36 第2テーパ側面
38 段差壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10