(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/374 20110101AFI20220518BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220518BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220518BHJP
G01B 11/30 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
H04N5/374 300
H04N5/225 300
H04N5/225 600
H04N5/232 480
G01B11/30 A
(21)【出願番号】P 2018035886
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-02-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」事業、「レーザーを活用した高性能・非破壊劣化インフラ診断技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】緑川 克美
(72)【発明者】
【氏名】和田 智之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 徳人
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 究
(72)【発明者】
【氏名】道川 隆士
(72)【発明者】
【氏名】小町 祐一
(72)【発明者】
【氏名】村上 武晴
(72)【発明者】
【氏名】坂下 亨男
(72)【発明者】
【氏名】木暮 繁
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003404(JP,A)
【文献】特開2016-125949(JP,A)
【文献】特開2017-126498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/374
H04N 5/225
H04N 5/232
G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体と相対的に移動する移動体上に設けられる撮像装置であって、
前記被写体に照射光を照射する光源と、
前記被写体からの反射光に応じた電荷を蓄積し、前記移動体の移動量に応じて前記電荷を転送するTDI方式のセンサを含む撮像部と、
前記電荷の転送方向において、前記移動体の振動による前記撮像部の振動を検出する振動検出部と、
前記振動検出部が検出した前記電荷の転送方向の振動の検出結果に基づいて、前記電荷を転送するタイミングを制御する制御部と
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記振動検出部は、前記移動体の回転成分を検出するジャイロセンサを備える、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記振動検出部は、前記移動体の速度変化に応じた前記撮像部の速度変化を検出し、
前記制御部は、前記振動検出部が検出した、前記撮像部の前記振動および前記撮像部の前記速度変化に基づいて、前記電荷を転送するタイミングを制御する、
請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像部の振動を抑制する振動抑制部をさらに備え、
前記振動抑制部は、前記電荷の転送方向に対して垂直な方向の前記撮像部の撮像面の振動を抑制する、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記振動抑制部は、前記電荷の転送方向の、鉛直方向に対する傾斜の変動を抑制しない、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記振動抑制部は、前記撮像面の奥行き方向の振動を抑制しない、請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記被写体と前記撮像装置との距離を測定する測距部をさらに備え、
前記制御部は、前記測距部の測定結果を更に用いて、前記電荷を転送するタイミングの制御を行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記測距部は、前記被写体の上下方向における2以上の場所の距離を測定し、
前記制御部は、前記測距部の測定結果に応じて、前記被写体に対する前記撮像部のレンズの傾きを制御する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記測距部は、前記被写体の上下方向における2以上の場所の距離を測定し、
前記制御部は、前記測距部の測定結果に応じて、前記被写体に対する前記撮像部のレンズの高さ位置を制御する、請求項7または8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記測距部は、前記被写体上の各点の3次元情報を測定し、
前記制御部は、前記測距部が測定した前記被写体の3次元情報に応じて、前記各点に照射する前記照射光の波長を制御する、請求項7から9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
被写体に対して相対的に移動する移動体と、
請求項1から10のいずれか一項に記載の撮像装置と
を備える、撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、TDI方式のカメラを移動体上に設置し、道路、トンネル、ダム等の構造物を撮像する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2017―3404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のTDI方式のカメラを備える撮像装置においては、TDIセンサが振動し、振動の影響から撮像される画像にぶれを生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、被写体と相対的に移動する移動体上に設けられる撮像装置を提供する。撮像装置は、被写体に照射光を照射する光源と、被写体からの反射光に応じた電荷を蓄積し、移動体の移動量に応じて電荷を転送するTDI方式のセンサを含む撮像部と、電荷の転送方向において、移動体の振動による撮像部の振動を検出する振動検出部と、振動検出部が検出した電荷の転送方向の振動の検出結果に基づいて、電荷を転送するタイミングを制御する制御部とを備える。
【0005】
振動検出部は、移動体の回転成分を検出するジャイロセンサを備えてよい。
【0006】
振動検出部は、移動体の速度変化に応じた撮像部の速度変化を検出してよい。制御部は、振動検出部が検出した、撮像部の振動および撮像部の速度変化に基づいて、電荷を転送するタイミングを制御してよい。
【0007】
撮像装置は、撮像部の振動を抑制する振動抑制部をさらに備えてよい。振動抑制部は、電荷の転送方向に対して垂直な方向の撮像部の撮像面の振動を抑制してよい。
【0008】
振動抑制部は、電荷の転送方向の、鉛直方向に対する傾斜の変動を抑制しなくてよい。
【0009】
振動抑制部は、撮像面の奥行き方向の振動を抑制しなくてよい。
【0010】
撮像装置は、被写体と撮像装置との距離を測定する測距部をさらに備えてよい。制御部は、測距部の測定結果を更に用いて、電荷を転送するタイミングの制御を行ってよい。
【0011】
測距部は、被写体の上下方向における2以上の場所の距離を測定してよい。
制御部は、測距部の測定結果に応じて、被写体に対する撮像部のレンズの傾きを制御してよい。
【0012】
測距部は、被写体の上下方向における2以上の場所の距離を測定してよい。制御部は、測距部の測定結果に応じて、被写体に対する撮像部のレンズの高さ位置を制御してよい。
【0013】
測距部は、被写体上の各点の3次元情報を測定してよい。制御部は、測距部が測定した被写体の3次元情報に応じて、各点に照射する照射光の波長を制御してよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、被写体に対して相対的に移動する移動体と、第1の態様に記載された撮像装置とを備える、システムを提供する。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】撮像システム230のより具体的な構成例を示す。本例の移動体200は、トラックである。
【
図3】撮像装置100のより具体的な構成の一例を示す。
【
図5】移動体200と被写体101との間の距離Dと、グリッド510との関係を説明するための図である。
【
図6】斜面を移動体600が進行する場合において、被写体101を撮影したときに記録される撮像面610、612、および614を示す図である。
【
図7A】移動体200に与えられる振動成分および回転成分を説明するための図である。
【
図8A】レンズ812のシフトを説明するための図である。
【
図8B】レンズ812のシフトを説明するための図である。
【
図8C】レンズ812のシフトを説明するための図である。
【
図9A】レンズ930により結像面910に対象920を写す形態を図示した概念図である。
【
図9B】ティルトさせたレンズ932により結像面910に対象920を写す形態を示した概念図である。
【
図9C】逆ティルトさせたレンズ934により結像面910に対象920を写す形態を図示した概念図である。
【
図10】レンズの色収差について説明する概念図である。
【
図11】被写体101からの反射光に対して、センサが有する波長に応じた異なるセンサ感度を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、撮像システム230の概要の一例を示す。撮像システム230は、撮像装置100および移動体200を備える。一例において、撮像システム230は、被写体101を撮像することにより被写体101の欠陥を検査する。例えば、被写体101は、トンネルの内壁、道路およびダム等の構造物である。
【0019】
移動体200は、被写体101に対し相対的に移動する。一例において、移動体200は、トラック等の車両や、鉄道、ドローン等の飛翔体である。
【0020】
本明細書においては、移動体200の移動方向をx軸方向とする。y軸は、水平面においてx軸と垂直な方向である。z軸は、x軸およびy軸のそれぞれに垂直な軸であり、x軸、y軸、およびz軸が右手系をなす。なお、本例では、移動体200のみが移動する場合について説明するが、移動体200および被写体101の双方が移動してもよい。
【0021】
撮像装置100は、移動体200に設けられ、移動体200と同様に被写体101と相対的に移動する。撮像装置100は、被写体101と相対的に移動しながら被写体101を連続的に撮像する。これにより、撮像装置100は、被写体101の表面上の欠陥を検出することができる。撮像装置100は、光源110と、撮像部120と、速度検出部130と、振動検出部140と、振動抑制部141と、動作制御部150と、測距部160と、記録部170とを備える。
【0022】
光源110は、被写体101に照射光を照射する。一例において、光源110は、白熱電球、蛍光管、LED照明、レーザーを有する。限定するものではないが、光源110は、十分な光量の照射光を照射するために、レーザーを有することが好ましい。
【0023】
撮像部120は、照射光が照射された被写体101からの反射光を撮像する。撮像部120は、レンズ122と、調整部124と、TDIセンサ126とを有する。
【0024】
レンズ122は、被写体101からの反射光をTDIセンサ126の撮像面に結像する。調整部124は、レンズ122が受光した反射光がTDIセンサ126において鮮明に結像されるように、レンズ122のフォーカス位置を調整する。
【0025】
TDIセンサ126は、時間遅延積分(TDI)方式の撮像素子である。TDIセンサ126は、被写体101と相対的に移動しながら被写体101を撮像する。TDIセンサ126は、被写体101の相対速度に応じて電荷を転送することにより、画素毎に被写体101に対応した電荷を蓄積する。このように、TDIセンサ126は、被写体101の画像を積分していくことにより、被写体101を高解像度且つ高感度で撮像することができる。
【0026】
速度検出部130は、被写体101に対する撮像装置100の相対的な移動速度を検出する。一例において、速度検出部130は、移動体200が車両である場合、タイヤの回転数から移動体200の移動速度を検出することができる。但し、速度検出部130は、GPS等の他の方法を用いて移動体200の移動速度を検出してよい。
【0027】
振動検出部140は、撮像部120の振動に応じた信号を検出する。また、振動検出部140は、移動体200の速度変化を検出してもよい。本例の振動検出部140は、六軸センサとして作動する慣性計測ユニット(IMU)を有する。一例において、振動検出部140は、移動体200の三軸(x軸、y軸、およびz軸)周りの回転成分を検出するジャイロセンサを有する。また、振動検出部140は、移動体200の三軸(x軸、y軸、およびz軸)方向の速度変化および並進振動を検出する加速度検出部を備えてよい。振動検出部140は、六軸方向の累積的な測定結果を検出する。振動検出部140は、検出した信号を動作制御部150に出力する。
【0028】
振動抑制部141は、振動検出部140が検出した信号に基づいて、機械的に撮像部120の振動を抑制する。本例の振動抑制部141は、スタビライザ142およびダンパ144を有する。
【0029】
スタビライザ142は、撮像部120のx軸周りの回転成分を抑制する。ダンパ144は、撮像部120のz軸方向の並進振動を抑制する。
【0030】
動作制御部150は、光源110の動作を制御する。一例において、動作制御部150は、光源110の照射タイミングおよび照射光の波長の少なくとも1つを制御する。動作制御部150は、光源110がレーザー光源である場合、パルス照射および連続照射のいずれかで光源110の照射を制御する。例えば、動作制御部150は、光源110のパルス照射のタイミングを、撮像部120の露光タイミングに合わせる。これにより、撮像部120は、被写体101を撮像するための光量を確保しやすくなる。
【0031】
また、制御部150は、撮像部120の動作を制御する。一例において、動作制御部150は、振動検出部140が検出した信号に基づいて、撮像部120の振動を電子的に抑制する。本例の動作制御部150は、TDIセンサ126の露光タイミングおよび電荷転送のタイミングを制御することにより、撮像部120の振動を電子的に抑制する。
【0032】
測距部160は、撮像装置100と被写体101との距離Dを測定する。撮像装置100と被写体101との距離Dは、撮像部120の動作を制御するために用いられてよい。例えば、測距部160は、被写体101の3次元情報を取得するための3Dレーザープロファイラである。測距部160が取得する3次元情報には、被写体101の傾斜や凹凸等の撮像装置100からみた奥行方向の情報が含まれてよい。
【0033】
記録部170は、振動検出部140が検出した電気信号を記録する。記録部170は、動作制御部150に記録したデータを送信してよい。これにより、動作制御部150は、振動検出部140が検出したデータに基づいて、光源110および撮像部120の動作を制御する。
【0034】
ここで、撮像装置100は、予め定められた撮像環境において被写体101を撮像するために十分に高い解像度と、十分に広いダイナミックレンジを有することが好ましい。また、撮像装置100の撮像条件を満たすためには、十分な光量を確保することが好ましい。
【0035】
本例の撮像装置100は、TDIセンサ126を有するので、被写体101からの反射光の光量が小さい場合であっても、被写体101の画像を積算することにより、十分な感度を確保することができる。そのため、被写体101がトンネルの内壁である場合であっても、光量を確保しやすくなる。
【0036】
十分な光量を確保することは、TDIセンサ126の分解能を向上する上でも有用である。例えば、TDIセンサ126の分解能を2倍にするために、TDIセンサ126の一画素当たりのピクセル幅pを半分にした場合、TDIセンサ126の撮像面上の一画素当たりの面積(即ち、p2)は、元の面積の1/4となる。そのため、TDIセンサ126の一画素に入射する反射光の光量も1/4となる。
【0037】
また、撮像装置100は、被写体101の凹凸等に対応できる程度に、十分な被写界深度を有することが好ましい。被写体101は、必ずしも撮像装置100に正対しているとは限らず、その表面形状も凹凸などの変化を有する場合がある。そのため、レンズ122は、被写体101の表面形状の影響を吸収するだけの被写界深度を有することが好ましい。例えば、被写体101の欠陥検査の場合には、10cm以上の被写界深度を有することが好ましい。このように、レンズ122の焦点深度を拡張し、一定以上の被写界深度を確保しつつ、高い分解能を実現することが好ましい。
【0038】
本例の撮像装置100は、機械的な制御および電子的な制御の両方を組み合わせることにより、移動体200の移動により生じた振動を抑制する。撮像装置100は、移動体200の移動方向の振動を電子的に制御し、それ以外の方向の振動を機械的に制御する。これにより、移動体200の移動方向の振動を高い反応速度で抑制することができる。また、移動体200の移動方向において、機械的な振動の制御を不要にすることにより、撮像装置100の高剛性および低コストが実現される。したがって、本例の撮像装置100は、移動体200が高速に移動する場合であっても、感度良く被写体101を撮像することができる。
【0039】
図2は、撮像システム230のより具体的な構成例を示す。本例の移動体200は、トラックである。撮像装置100は、移動体200の荷台に載置されている。
【0040】
移動体200は、被写体101であるトンネルの内壁に沿って移動する。本例の撮像装置100は、TDI方式の撮像部120を三台備える。これにより、被写体101において、撮像範囲210を大きくすることができる。
【0041】
撮像範囲211a、211b、211cは三台の撮像部120の撮像範囲をそれぞれ示している。撮像部120は、所望の撮像範囲210に応じた台数だけ用意すれば良い。撮像部120の台数はこれに限定されない。撮像範囲210は、移動体200の移動とともに被写体101上を移動する。
【0042】
図3は、撮像装置100のより具体的な構成の一例を示す。本例の撮像装置100は、被写体101としてトンネルの内壁を撮像する。本例の撮像装置100は、マウント350上に配置され、照射範囲310に照射光を照射する2台の光源110を有する。撮像範囲312は、3台の撮像部120の内、中央の撮像部120による被写体101の撮像範囲である。
【0043】
撮像部120は、撮像範囲312上に微細なピクセルを割り当てて撮像する。調整部124により調整されたレンズ122を通してTDIセンサ126により撮像された画像は、記録部170へと送られて、記録される。
【0044】
動作制御部150は、撮像制御部341と、光源制御部342と、CPU343と、クロック344とを有する。撮像制御部341は、撮像部120の調整部124を制御する。撮像制御部341は、被写体101の傾斜に対応するレンズ122のシフトおよびティルトを制御してもよい。さらに、撮像制御部341は、TDIセンサ126の露光タイミングおよび電荷転送のタイミングを制御してもよい。
【0045】
光源制御部342は、光源110の照射光の照射タイミングを制御する。例えば、光源制御部342は、クロック344が計測した時間に応じて、撮像部120の動作のタイミングに対する光源110の動作のタイミングを制御する。また、光源制御部342は、光源110の照射波長等を制御してよい。
【0046】
CPU343は、速度検出部130および測距部160の測定結果、並びに記録部170に記録されたデータおよびクロック344の計時結果を用いて、計算を行う。CPU343は、制御情報に関わる計算結果を、撮像制御部341および光源制御部342に送信する。CPU343は、クロック344が測定した時間に基づいて、光源110の照射タイミングおよびTDIセンサ126の動作タイミングを計算する。
【0047】
測距部160は、撮像部120より移動体200の移動方向に対して前方方向にオフセットして配置される。本例の測距部160は、撮像部120から距離d0だけ、移動体200の移動方向にオフセットして配置される。本例の測距部160は、移動体200の移動方向に対して撮像部120より前方にオフセットして配置されることにより、撮像部120が撮像する被写体101までの距離を撮像部120が撮像する前に事前に計測することができる。動作制御部150は、測距部160により事前に計測されたデータに基づいて、光源110および撮像部120の動作を制御することができる。
【0048】
一例において、測距部160のオフセット距離d0は、動作制御部150が撮像部120の機械的制御に要する時間に基づく。例えば、機械的制御に要する時間とは、撮像部120のレンズ122の調整にかかる時間である。機械的制御に要する時間は、TDIセンサ126の電子的な制御に要する時間に比べてより長い時間を要する。このように、測距部160のオフセット距離d0は、次式を満たすことが好ましい。
[数1]
(オフセット距離d0)≧(機械的制御の反応時間)×(移動体200の移動速度)
【0049】
但し、測距部160のオフセット距離d0を大きくすると、移動体200が蛇行移動する場合、測距部160が計測した距離Dと、撮像部120が被写体101を撮像する際の被写体101と撮像部120との間の実際の距離Dとの間に誤差が生じやすくなる。そのため、測距部160のオフセット距離d0は、機械的制御に要する時間と移動体200の移動速度から得られるオフセット距離d0の範囲で小さく設定されることが好ましい。例えば、オフセット距離d0は、10cm以上、1m以下である。
【0050】
図4は、TDIセンサ126の動作を示した概念図である。本例のTDIセンサ126は、時刻t
1~t
4において、露光と読み出しを繰り返している。
【0051】
時刻t1は、露光タイミングに対応する時刻の一例である。時刻t1において、照射面420の欠陥422を有する被写体101からの反射光でTDIセンサ126上の撮像面430を露光する。露光の際、TDIセンサ126は、撮像面430上に欠陥422からのシグナル432を含む反射光を受光し、シグナル432に対応する電荷440がTDIセンサ126に蓄積される。本例のTDIセンサ126は、x軸方向およびz軸方向にそれぞれ予め定められた段数を有する。TDIセンサ126の段数とは、x軸方向又はz軸方向におけるピクセル数を指す。
【0052】
x軸方向において、本例のTDIセンサ126では、4段のみ図示されているものの、これに限られない。例えば、TDIセンサ126の段数は、128段であっても、256段であってもよい。
【0053】
z軸方向において、本例のTDIセンサ126では、8段のみ図示されているものの、これに限られない。撮像面430のz軸方向のピクセル数は、解像度に影響する。例えば、z軸方向に数千個から数万個のピクセル数を有するTDIセンサ126が利用出来るが、ピクセル数はこれらの値に限定されない。
【0054】
時刻t2は、読み出しタイミングに対応する時刻の一例である。時刻t2において電荷の転送431aが行われる。電荷の転送431aにより電荷440は、TDIセンサ126の撮像面430において、-x軸方向に1ピクセルだけ移動する。そして、撮像面430上の左端のシグナル433aに対応する電荷が電荷440から読み出される。
【0055】
時刻t3は、露光タイミングに対応する時刻の一例である。時刻t3において再度被写体101に照射光が照射され、再びTDIセンサ126上の撮像面430がシグナル432を含む反射光で露光される。シグナルに対応する電荷440がTDIセンサ126に設けられた容量性要素上に蓄積される。
【0056】
時刻t4は、読出しタイミングに対応する時刻の一例である。時刻t4において再度電荷の転送431bが行われ、電荷の転送431bにより電荷440は、TDIセンサ126の撮像面430において、-x軸方向に1ピクセルだけ移動する。そして、撮像面430上の左端のシグナル433bに対応する電荷が電荷440から読み出される。
【0057】
以上に記載したように、シグナル432に対して、t1、t3、…の奇数添え字のタイミングでの露光とt2、t4、…の偶数添え字のタイミングでの電荷の転送が繰り返され、電荷の転送と共に左端のシグナルの読み出しが行われる。したがって、撮像面430上の各ピクセルに対してTDIセンサ126の段数の回数の多段露光が行われ、多段露光により各ピクセルに十分な光量および分解能が確保される。
【0058】
動作制御部150は、TDIセンサ126の露光タイミングを制御する。露光タイミングt1およびt3間において、移動体200は、(移動体200の移動速度)×(t3-t1)の距離だけ移動する。動作制御部150は、t3-t1の期間にシグナル432が撮像面430上で一段電荷の転送431aおよび432bの方向に移動した状態で露光されるように、露光タイミングt3を調整する。
【0059】
即ち、動作制御部150は、移動体200の移動速度、速度変化および振動に応じて、時刻t1とt3およびt3以降の各露光の間の時間間隔を移動体200の移動速度、速度変化および振動に応じて調整する。したがって、移動体200のx軸方向の振動の影響は、x軸方向の振動を抑制する機構を設けることなくTDIセンサ126の露光タイミングの制御で取り除くことができる。
【0060】
動作制御部150が行うTDIセンサ126の露光のタイミングの電子的な調整のために、TDIセンサ126に特殊な半導体設計技術を用いた新たな設計を施す必要はない。露光タイミングの調整は、制御方式の変更のみで実現可能である。
【0061】
露光タイミングの制御は、機械的な制御でなく電子的な制御であるため、機械的な制御より速い反応速度を実現する。振動への対応を電子的な制御で行うことは撮像装置100全体から機械的な作動部分を減らすことにつながり、撮像装置100のマウント機構を高剛性かつ低コストにすることも実現する。
【0062】
図5は、移動体200と被写体101との間の距離Dと、グリッド510との関係を説明するための図である。グリッド510は、撮像部120で撮像される撮像面430に対応する被写体101の領域を指す。
【0063】
グリッド510は、移動体200と被写体101との間の距離Dが距離D1から距離D2に変化した場合、グリッド510aからグリッド510bに変化する。例えば、距離D1から距離D2に距離Dが長くなった場合、グリッド510aからグリッド510bにグリッド510の大きさが大きくなる。そのため、被写体101の各点に対応するピクセルが、距離Dの変化によってずれる場合がある。
【0064】
動作制御部150は、被写体101の各点に対応するピクセルが、移動体200の移動によってずれないように、光源110および撮像部120の動作を制御する。例えば、動作制御部150は、距離D1から距離D2に距離Dが長くなった場合であっても、被写体101の各点が対応する撮像面430のピクセルに露光されるように、光源110および撮像部120を制御する。これにより、撮像装置100は、距離Dが変化した場合であっても、被写体101の各点に対応する電荷を積算することができる。
【0065】
また、動作制御部150は、距離D、移動体200の移動速度V、移動体200の速度変化ΔVおよび撮像部120の振動成分とに基づいて、撮像部120に送信する駆動パルスの間隔ΔTを制御してよい。撮像装置100の振動の影響がない場合、駆動パルスの間隔ΔTは、次式で示される。
[数2]
ΔT=(p×D/f)/V
【0066】
ここで、pはセンサの撮像面430上のピクセルのピクセル幅、fはレンズ122の焦点距離、Dは撮像部120と被写体101との距離、Vは移動体200の移動速度である。なお、動作制御部150は、(数2)式に移動体200の速度変化ΔVおよび撮像部120の振動の影響をさらに考慮に入れてもよい。
【0067】
図6は、斜面を移動体200が移動する場合において、被写体101を撮影したときに記録される撮像面610、612、および614を示す図である。
図6では、移動体200としてトラックを用いる場合に、トラックに撮像部120および測距部160が備えられている図を示している。被写体101を撮影したときの撮像面610がピクセルとともに示されている。
【0068】
移動体200は、移動方向630に進行する。移動体200が斜面を登り降りするとき、撮像面610を傾ける方向640に撮像面610が回転し、撮像面610の傾斜が変動する。
【0069】
移動体200が水平な面を移動する場合、撮像面610における移動方向630の振動の影響は電子的に抑制される。一方、移動体200が斜面を登る場合、振動抑制部141は、方向640の回転は抑制せず、撮像面の傾斜の変動は抑制しない。したがって、斜面を登る移動体200の撮像面は撮像面612に示されるようになる。
【0070】
振動抑制部141は、方向640の傾斜の変動を抑制しない。仮に、振動抑制部141が方向640に対しても撮像面を安定化する場合、その撮像面は撮像面614のようになる。振動抑制部141が撮像面614のように撮像面を安定化すると、水平面走行時から斜面を登る間に時間的に連続的に撮像される画像はかえって電荷の転送方向に対し、垂直な方向にぶれを生じた画像となる。振動抑制部141は、方向640の傾斜の変動を抑制しないので、被写体101を安定して撮像することができる。
【0071】
図7Aは、移動体200に与えられる振動成分および回転成分を説明するための図である。移動体200には、x軸周りの回転成分711と、y軸周りの回転成分712と、z軸周りの回転成分713と、x軸振動成分721と、y軸振動成分722と、z軸振動成分723との6つの成分が与えられる。x軸周りの回転成分711は、ロールと呼ばれる。y軸周りの回転成分712はピッチと呼ばれる。z軸周りの回転成分713はヨーと呼ばれる。
【0072】
x軸振動成分721は、TDIセンサ126の露光タイミングの制御により抑制される。y軸振動成分722は、被写界深度に吸収される。但し、y軸振動成分722は、振動抑制部141には抑制されない。被写体101の表面形状には、元来凹凸があり得るので、表面の凹凸形状の影響と共に、y軸振動成分722の影響は、被写界深度で対応することが好適である。z軸振動成分723は、振動抑制部141により、機械的に抑制される。
【0073】
x軸周りの回転成分711は、z軸方向の並進運動と共に、振動抑制部141により機械的に抑制される。x軸周りの回転成分711およびz軸振動成分723は、撮像する画像のぶれにつながるので、適切に振動抑制部141により抑制することが好適である。
【0074】
z軸周りの回転成分713は、微小振動である場合、x軸振動成分721と同視できる。したがって、x軸振動成分721と同様に、この影響は、TDIセンサ126のタイミング制御により電子的に除去される。
【0075】
y軸周りの回転成分712は、センサの撮像面430の傾斜に影響する。センサの撮像面430の傾斜に関しては、機械的なスタビライザは設けない。水平面を移動する移動体200においては、このような振動は1%以下でしか生じない。
図6のように斜面を移動する場合には、移動体200全体の傾斜に応じて撮像部120も傾斜し、撮像される画像の連続性も保たれる。
【0076】
y軸周りの回転成分712およびz軸周りの回転成分713は、撮像部120を設ける場所によって、撮像部120に与える影響が異なり、撮像部120がy軸方向又はz軸方向以外の方向に向けられる場合には、互いの影響は混合する。TDIセンサ126のタイミングの制御においては、y軸周りの回転成分712およびz軸周りの回転成分713の影響に対して撮像部120を設けた場所それぞれで適切にタイミング制御が行われる。
【0077】
図7Bは、撮像装置100の構成の一例を示す。撮像装置100は、スタビライザ142上に六軸センサ752を備える。また、撮像装置100は、動作制御部150上に設けられた六軸センサ754を備える。
【0078】
六軸センサ752および六軸センサ754は、x軸周りの回転成分711と、y軸周りの回転成分712と、z軸周りの回転成分713と、x軸振動成分721と、y軸振動成分722と、z軸振動成分723との6つの成分を検出する。例えば、x軸振動成分721と、y軸振動成分722と、z軸振動成分723とが、加速度検出部で検出される。x軸周りの回転成分711と、y軸周りの回転成分712と、z軸周りの回転成分713とがジャイロセンサで検出される。
【0079】
六軸センサ752および六軸センサ754は、スタビライザ142およびマウント350のいずれに設けられていてもよい。本例の六軸センサ752および六軸センサ754は、スタビライザ142およびマウント350の両方に設けられている。ジャイロセンサは動きに応じて反応するため、スタビライザ142およびマウント350の両方に設けることで、振動をより精密かつ高速に検出することができる。
【0080】
スタビライザ142として、パッシブスタビライザおよびアクティブスタビライザのいずれを使用してもよい。パッシブスタビライザは、フリー回転のみにより回転成分を機械的に除去する。パッシブスタビライザは、スタビライザ142の回転軸が重力方向に垂直に設置され、剛体の重心を貫く。パッシブスタビライザは、回転軸の摩擦が無視出来る場合には、等速的な回転以外の回転運動を伝達しない性質がある。
【0081】
一方、アクティブスタビライザは、モータによる駆動力での制御を含む。アクティブスタビライザは、パッシブスタビライザと同様に重力による自発的な制御を含んでよい。アクティブスタビライザは、パッシブスタビライザの回転軸の摩擦、回転軸の重心からのずれ、等速回転運動などにより生じるパッシブ的な制御のみで取り除けない振動もより精密に取り除くことが可能である。
【0082】
図8Aは、レンズ812のシフトを説明するための図である。同図は、レンズ812を使用して被写体101を撮影する場合に結像面814に画像を結像する形態を図示する。
【0083】
被写体101の画像をレンズ812を通して結像面814上に結像させる。この場合、レンズ812の中心点を通る光軸に対し、伸びる結像面814に対応する被写体101は、レンズ812に対し上下に対称に伸びる。
【0084】
図8Bは、レンズ812のシフトを説明するための図である。本例のレンズ822は、被写体101に対して傾けて配置されている。レンズ822の光軸に対し被写体101よりさらに遠位に延伸する被写体101を撮影する場合に結像面824に画像を結像する形態である。
【0085】
レンズ822の光軸に対し被写体101よりさらに遠位に延伸する被写体101の画像を結像面824上に結像させた場合、被写体101全体をレンズ822の視野に収めるためには
図8Bのように仰角をつけた撮影が行われる。このとき結像面824は、
図8Bに示したように斜めに結像することになり、被写体101の上端に向かうにつれ、幅が先細りする画像826を結像させることとなる。
【0086】
図8Cは、レンズ812のシフトを説明するための図である。レンズ833に対してシフトさせたレンズ832を用いて、レンズ833の光軸に対し、被写体101より遠位に延伸する被写体101を撮影する場合に結像面834に画像を結像させる形態である。
【0087】
シフトさせたレンズ832は、レンズ833に対して光軸を図面上の上方向にシフトしている。このようなレンズにおいては、被写体面において光軸から図面上の上方向にシフトした被写体101と、図面上の下方向にシフトした結像面834が対応し、仰角をつけて被写体101を仰ぎ見ることなく、結像面834上に画像を結像させている。また、シフトさせたレンズ832は、被写体101全体を画像を歪ませることなく等幅の画像836として結像面834上に結像させる。
【0088】
このように、レンズ122は、シフト可能なレンズであってよい。一例において、動作制御部150は、撮像部120と被写体101との距離Dに応じて、レンズ122のシフト量を調整する。
【0089】
撮像部120を被写体101に正対して設置した状態のままで撮像範囲をシフトすることで、被写体101上の広い領域の撮影が可能となる。これにより、レンズの視野全体にわたり、1ピクセルに相当する壁面上の水平距離が一定であることが保証される。TDIセンサ126の撮像面430上の1ピクセルのピクセル幅pに対する被写体上のx軸方向距離が、z軸方向にわたって均一となる点好適である。
【0090】
図9Aは、レンズ930により結像面910に被写体101を写す形態を図示した概念図である。レンズ930の被写界深度が、被写界深度940である。
【0091】
結像面910上で、被写体101の像は、被写界深度940と被写体101とが交わる領域にフォーカスが合う。本例では、被写体101のうち、距離d1部分にのみフォーカスが合っている。
【0092】
図9Bは、ティルトさせたレンズ932により結像面910に被写体101を写す形態を示した概念図である。ティルトさせたレンズ932の被写界深度は、被写界深度942である。
【0093】
結像面910上で、被写体101が結像する画像は、被写界深度942と対象920とが交わる領域にフォーカスが合わされた画像となる。本例では、被写体101のうち、距離d2の領域にまでフォーカスが合っている。
【0094】
図9Cにおいては、逆ティルトさせたレンズ934により結像面910に被写体101を写す形態を図示した概念図である。逆ティルトさせたレンズ934の被写界深度が被写界深度944である。
【0095】
結像面910上で、被写体101の像は、被写界深度944と被写体101とが交わる領域にフォーカスが合うこととなる。したがって、被写体101のうち、距離d3の領域にまでフォーカスが合うこととなる。
【0096】
撮像装置100は、レンズ122としてティルト又は逆ティルト可能なレンズを採用することができる。測距部160は、動作制御部150に撮像部120と被写体101との距離Dを測定する。動作制御部150は、測距部160が測定した距離Dに応じて、レンズ122をティルト又は逆ティルトさせるように制御する。これにより、撮像装置100は、被写体101がz軸方向から大きく傾斜し、レンズのシフト動作では対応出来ない傾斜に対しても広い範囲にフォーカスを合わせることが可能となる。
【0097】
図10は、レンズの色収差について説明する概念図である。被写体101のうちの対象点1011から反射光が照射される。図面上、レンズ1020にレンズの中心点1022を通る光軸が示されている。反射光は、レンズ1020内をレンズの表面での屈折を伴いながら透過する。焦点距離は、光軸と交わる点上に波長毎に異なる。
【0098】
波長λ
Rを有する赤色光1012は、光軸上のレンズの中心点1022から遠位に焦点を有する。波長λ
Bを有する青色光1014は、光軸上のレンズの中心点1022から近位に焦点を有する。そのように波長による屈折率の差により、反射光の波長毎の焦点距離の差が生じる。したがって、対象点1011から照射された白色光の焦点距離には差が生じ、この現象は軸上色収差と呼ばれる。逆に、所望の焦点距離を得るためには、照射光の光を波長λ
Dにすることができる。波長λ
Dの反射光1016の光路が
図10に示されている。
【0099】
被写体101からの反射光が単色光である場合、凹凸を有する被写体101を撮影すると、凹凸に応じて、受光側で光軸上の異なる位置に結像位置を生じる。光源110が、レーザやプロジェクタ等の複数波長又は可変波長の光源である場合に、測距部160は、撮像装置100と被写体101との距離を信号として送り、当該信号に応じて、動作制御部150は、色収差を利用し、受光側の結像位置が光軸上で等距離になるように光源110の照射光の波長を制御する。
【0100】
上述の照射光の波長の制御により、壁面が平面ではなく複雑な凹凸を持つ場合にも対応した視野全体でのフォーカス位置を調整することができる。また、移動体200が高速に移動する移動体200である場合、移動体200の移動面上に段差があり、段差通過時に撮像装置100と被写体101との距離が変動し、機械的なフォーカス位置調整では間に合わない場合にも、被写体101に正確にフォーカスを合わせることができる。
【0101】
被写体101がトンネル内壁であるとき、トンネルの内壁は一般に撮像部120と向いている方向に対し平坦でなく、凹凸を有し精密な測定では撮像部120の視野内でフォーカスが合わない箇所を有する場合がある。測距部160は、視野内の中心付近の距離の測定から定めた代表値、又は、視野内の複数個所の測定からの平均値のいずれかの一自由度の値にフォーカス位置を定めるのではなく、視野全体をカバーするように被写体の上下方向に2以上の場所の距離を測定する。
【0102】
測距部160は、被写体101の3次元情報を取得する。測距部160は、取得した3次元情報を記録部170に保存してもよい。
【0103】
動作制御部150は、測距部160が取得した被写体101の3次元情報に応じて、光源110および調整部124を制御する。一例において、動作制御部150は、被写体101の各点に照射する照射光の波長を制御する。例えば、動作制御部150は、複数の波長または可変波長を有する光源110に対し、適切な波長の照射光を被写体101の各領域に分けて照射させる。また、動作制御部150は、レンズ122の高さ位置(シフト量)、およびレンズ122の傾き(ティルト量)を調整することにより、調整部124を制御してよい。
【0104】
図11は、被写体101からの反射光に対して、センサが有する波長に応じた異なるセンサ感度を図示するグラフである。TDIセンサ126は、モノクロセンサであってよい。モノクロセンサは、波長λ
1に対して感度f(λ
1)、波長λ
2に対して感度f(λ
2)を有する。
【0105】
このような場合に、f(λ)に応じて波長λの照射光の強度を調整することにより、f(λ)×(強度)を一定にすることができる。TDIセンサ126の感度における波長特性に応じて、光源110の照射光の各波長に対する強度を調整することにより、波長特性の影響を補償することができる。例えば、光源110は、TDIセンサ126の感度が低い波長λにおいて、TDIセンサ126の感度が高い波長λよりも、照射光の強度を強くする。
【0106】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0107】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0108】
100・・・撮像装置、101・・・被写体、110・・・光源、120・・・撮像部、122・・・レンズ、124・・・調整部、126・・・TDIセンサ、130・・・速度検出部、140・・・振動検出部、141・・・振動抑制部、142・・・スタビライザ、144・・・ダンパ、150・・・動作制御部、160・・・測距部、170・・・記録部、200・・・移動体、210・・・撮像範囲、211a、211b、211c・・・撮像範囲、230・・・システム、310・・・照射範囲、312・・・撮像範囲、341・・・撮像制御部、342・・・光源制御部、343・・・CPU、344・・・クロック、350・・・マウント、420・・・照射面、422・・・欠陥、430・・・撮像面、431a、431b・・・電荷の転送、432・・・シグナル、433a・・・左端のシグナル、433b・・・左端のシグナル、440・・・電荷、510a、510b・・・グリッド、610、612、614・・・撮像面、630・・・移動方向、640・・・方向、711・・・x軸周りの回転成分、712・・・y軸周りの回転成分、713・・・z軸周りの回転成分、721・・・x軸振動成分、722・・・y軸振動成分、723・・・z軸振動成分、752・・・六軸センサ、754・・・六軸センサ、812・・・レンズ、814・・・結像面、822・・・レンズ、824・・・結像面、826・・・先細りする画像、832・・・シフトさせたレンズ、833・・・レンズ、834・・・結像面、836・・・等幅の画像、910・・・結像面、920・・・対象、930・・・レンズ、932・・・ティルトさせたレンズ、934・・・逆ティルトさせたレンズ、940・・・被写界深度、942・・・被写界深度、944・・・被写界深度、1011・・・対象点、1012・・・赤色光、1014・・・青色光、1016・・・波長λDの反射光、1020・・・レンズ、1022・・・レンズの中心点