(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)組成物ならびにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220518BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220518BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220518BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220518BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220518BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220518BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220518BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220518BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220518BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220518BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20220518BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220518BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220518BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220518BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220518BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220518BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220518BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/00
C07K7/06
C07K14/47
C07K14/78
C12N15/62 Z
C12N15/12
A61P37/06
A61P7/04
A61K39/395 Y
A61K9/08
A61K9/10
(21)【出願番号】P 2019503393
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(86)【国際出願番号】 US2017024650
(87)【国際公開番号】W WO2017172853
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-09
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518346661
【氏名又は名称】エービー バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュー, イェン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジェン-シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シウ-チン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138595(JP,A)
【文献】特表2015-527366(JP,A)
【文献】特表2010-528588(JP,A)
【文献】長島弘明ら,タンデムFc化による抗体依存性細胞傷害活性の増強,Yakugaku Zasshi,2010年,vol.130, no.1,pp. 49-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CLドメインと、CH1ドメインと、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと、(b)オリゴマー化ペプチドドメインを含む、組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)ポリペプチド
であって、前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインであり、前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されており、前記CLドメインのC末端が、短いリンカー配列によって前記CH1ドメインのN末端に連結されており、そして、前記オリゴマー化ペプチドドメインが、
(i)前記ポリペプチドのN末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に連結されており、あるいは
(ii)前記ポリペプチドのC末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が最後のCH3ドメインのC末端に連結されている、
前記rIVIGポリペプチド。
【請求項2】
前記フレキシブルリンカーがアミノ酸配列G-G-G-G-S(配列番号9)の2~6つの反復配列を含む、請求項
1に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項3】
前記フレキシブルリンカーがアミノ酸配列G-G-G-G-S(配列番号9)の5つの反復配列を含む、請求項
1に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項4】
前記
オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が、前記CLドメインのN末端に連結されている、請求項
3に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項5】
前記オリゴマー化ペプチドドメインが、配列番号6のアミノ酸番号1~79を含む、請求項
4に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項6】
前記
オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が、前記一本鎖FcペプチドのC末端に連結されている、請求項
3に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項7】
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号4のアミノ酸番号712~768を含む、請求項
6に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項8】
請求項
2~
7のいずれかに記載のrIVIGポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項9】
請求項
8に記載の核酸を含む、組換えベクター。
【請求項10】
請求項
9に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
【請求項11】
細胞は、α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している(FUT8
-/-)、請求項1
0に記載の組換え細胞。
【請求項12】
組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む、免疫異常の治療のための組成物であって、前記rIVIGタンパク質は、CLドメインと、CH1ドメインと、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと、主に三量体一本鎖Fcペプチドを含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインとを含
み、前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインであり、前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されており、前記CLドメインのC末端が、短いリンカー配列によって前記CH1ドメインのN末端に連結されており、そして、前記オリゴマー化ペプチドドメインが、
(i)前記ポリペプチドのN末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に連結されており、あるいは
(ii)前記ポリペプチドのC末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が最後のCH3ドメインのC末端に連結されている、前記組成物。
【請求項13】
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号6のアミノ酸番号1~79を含む、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項14】
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号4のアミノ酸配列番号712~768を含む、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が主にホモ三量体Fc二量体を含む、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項16】
前記rIVIGタンパク質が、配列番号6のアミノ酸組成を有する、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項17】
前記rIVIGタンパク質が、配列番号4のアミノ酸組成を有する、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項18】
前記rIVIGタンパク質がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から成る群から選択されるアイソタイプのFc領域を含む、請求項1
2~1
7のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記rIVIGタンパク質は主に非フコシル化されている、請求項1
2~
18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
自己免疫疾患に罹患している患者を治療するための組成物であって、組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、CLドメインと、CH1ドメインと、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインとを含
み、前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインであり、前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されており、前記CLドメインのC末端が、短いリンカー配列によって前記CH1ドメインのN末端に連結されており、そして、前記オリゴマー化ペプチドドメインが、
(i)前記ポリペプチドのN末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に連結されており、あるいは
(ii)前記ポリペプチドのC末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が最後のCH3ドメインのC末端に連結されている、前記組成物。
【請求項21】
臓器移植を受けた患者の免疫拒絶反応を低減するための組成物であって、組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、CLドメインと、CH1ドメインと、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインとを含
み、前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインであり、前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されており、前記CLドメインのC末端が、短いリンカー配列によって前記CH1ドメインのN末端に連結されており、そして、前記オリゴマー化ペプチドドメインが、
(i)前記ポリペプチドのN末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に連結されており、あるいは
(ii)前記ポリペプチドのC末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が最後のCH3ドメインのC末端に連結されている、前記組成物。
【請求項22】
前記患者が難治性の免疫性血小板減少症を罹患している、請求項2
0に記載の組成物。
【請求項23】
前記rIVIGタンパク質が、配列番号4及び配列番号6から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2
0~2
2のいずれかに記載される組成物。
【請求項24】
前記オリゴマー化ペプチドドメインは、配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、請求項
4に記載のrIVIGポリペプチド。
【請求項25】
請求項2
4に記載のrIVIGポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項26】
請求項2
5に記載の核酸を含む、組換えベクター。
【請求項27】
請求項2
6に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
【請求項28】
細胞は、α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している(FUT8
-/-)、請求項2
7に記載の組換え細胞。
【請求項29】
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、請求項1
2に記載の組成物。
【請求項30】
前記rIVIGタンパク質がIgG A、IgG B、IgG C及びIgG Dから成る群から選択されるアイソタイプのFc領域を含む、請求項
29に記載の組成物。
【請求項31】
前記rIVIGタンパク質が主に非フコシル化されている、請求項
29または3
0に記載の組成物。
【請求項32】
自己免疫疾患に罹患しているヒト以外の哺乳動物を治療する方法であって、前記ヒト以外の哺乳動物に組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む有効量の組成物を投与することを含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、CLドメインと、CH1ドメインと、2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインとを含み
、前記rIVIGタンパク質は、同種のヒト以外の哺乳動物に由来するアミノ酸配列を含
み、前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインであり、前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されており、前記CLドメインのC末端が、短いリンカー配列によって前記CH1ドメインのN末端に連結されており、そして、前記オリゴマー化ペプチドドメインが、
(i)前記ポリペプチドのN末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのC末端が前記CLドメインのN末端に連結されており、あるいは
(ii)前記ポリペプチドのC末端にある場合には、前記オリゴマー化ペプチドドメインのN末端が最後のCH3ドメインのC末端に連結されている、前記方法。
【請求項33】
前記ヒト以外の哺乳動物はイヌであり、前記rIVIGタンパク質は配列番号7及び配列番号8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3
2に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト以外の哺乳動物はイヌであり、前記オリゴマー化ペプチドドメインは、配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、請求項3
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の記載
本出願は2016年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/315,483号の一部継続出願であり、これに対する優先権を主張し、その全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、現在使用されているヒトIVIG(静注用免疫グロブリンの頭字語)製剤の代替品として使用可能である、組換えタンパク質の組成物及び製造方法に関する。本発明はさらに免疫性及びその他の障害ならびに疾患の治療のための、かかる組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
治療薬としての免疫グロブリンの臨床応用は、100年以上前にEmil Behringと同僚が毒素による疾患を免疫血清により寛解できることを発見した時に遡る(1)。Ogden Brutonが無ガンマグロブリン血症患者の免疫グロブリン置換のために、ヒト免疫グロブリンを静脈内に注入するまでに、62年が経過した(2)。それまでは、限られた量の免疫グロブリンしか筋肉内投与できず、製剤は精製された免疫グロブリンの凝集物を含有していたため、その投与によって補体カスケードを介した免疫応答活性化ゆえの痛みを伴った局部刺激や有害な全身反応が引き起こされた(3、4)。
【0004】
1960年代及び1970年代において、新しい精製プロセスの開発により、凝集物の除去が可能になり、より高用量での静脈内投与に適した組成物を調製することが可能となった(3~7)。頭字語「IVIG」は、かかる製剤が皮下投与など他の様式で投与することもできるとしても、かかる製剤に一般的に使用され続ける用語である。IVIG製剤に対する主な適応症は、免疫不全を伴う患者の主要な代用療法のままであった(8~10)。
【0005】
1981年において、過剰な免疫抑制治療による二次的な免疫不全を伴い、難治性免疫性血小板減少症(ITP)にも罹患している子供の治療中に、Paul Imbachは患者の血小板数が、IVIGで治療した後に予想外なことに増加していることを発見した(11)。血小板数を増加させるためのIVIG治療の効果は、免疫不全を伴わないITP患者で再現され、その免疫調節効果ゆえにIVIGを使用する道が開けた(12~15)。
【0006】
現在では、IVIGは多くの異なる疾患に対する治療選択肢であり、多くの自己免疫疾患に対する免疫調節剤としての第1選択薬として推奨されている。実際に、免疫不全症候群の代替免疫グロブリンとしてのIVIGの使用は重要な適応症のままであるが、IVIGはますます自己免疫疾患の治療に使用されるようになってきている。
【0007】
IVIG製剤は臨床治療において有効であるが、その持続可能性に劇的な影響を及ぼし得る、現行の治療に関連した多くの問題が存在する。第一に副作用は、IVIG投与後によく観察され、アナフィラキシー、腎臓病、血栓性合併症、糖尿病が含まれる。これらの問題に取り組むための活動には、IgA欠損症についての患者の事前スクリーニング、ならびにIgA、第XI因子、グルコース及びナトリウムの濃度の詳細なモニタリングが挙げられる。しかしながら、これらのステップのそれぞれは、供給能を制限する効果や、商品のコストに加えて投与のコストを増大させる効果を有し得る。さらに、これらの活動にもかかわらず、IVIGの使用により、完全に改善されていない副作用によって不利益を被り続けている。
【0008】
さらに、ほとんどの生物製剤とは対照的に、IVIGは通常、非常に高用量で、一般にkg体重あたり約0.5g~4gの範囲で投与される。有効性に必要とされる用量から判断すると、IVIGの治療効果のある化合物(複数可)は、製剤のごく一部しか占めていないようである。製品のコストが高騰し、IVIG製剤の品質を改善する必要性から生じる重大な課題には、これらの問題の1つまたは複数に対処する、改良された代替組成物及び/または方法に対する著しいニーズが存在する。
IVIG治療が呈する問題は、IVIGの作用機序が明確に決定されていないという事実に由来し、その影響は適応症ごとに異なる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Behring and Kitasato (1890)uber das Zustandekommen der Diphtherie-Immunidat und der Tetanus-Immunitat bei Thieren.Dtsch med Wochenschr 16:1113-1114
【文献】Bruton(1952)Agaqmmaglobulinemia.Pediatrics 9:722-728.
【文献】Barandun et al.(1962)Intravenous administration of human gamma-globulin.Vox Sang.7:157-174.
【文献】Schultze and Schwick(1962)On new possibilities of intravenous gamma globulin administration.Dtsch Med Wochenschr.87:1643-1644
【文献】Kornhuber(1971)Intravenose g-Globulin-Therapie.Erfahrungen mit einer neuartigen Praparation.Mschr Kinderheilk 119:528-530.
【文献】Morell and Skvaril(1980)Structure and biological properties of immunoglobulins and gamma-globulin preparations.II.Properties of gamma-globulin preparations.Schweiz Med Wochenschr.110(3):80-85.
【文献】Stephan(1975)Undegraded human immunoglobulin for intravenous use.Vox Sang.28:422-437.
【文献】Hansi et al.(1980)Clinical results with a new intravenous immunoglobulin preparation.Dtsch Med Wochenschr.105:1675-1680.
【文献】Luthardt(1980)Intravenous immunoglobulin administration for antibody deficiency.Dtsch Med Wochenschr.105:993-997.
【文献】Nolte et al.(1979)Intravenous immunoglobulin therapy for antibody deficiency.Clin Exp Immunol.36:237-243.
【文献】Imbach et al.(1981)Igh-dose intravenous gammaglobulin for idiopathic thrombocytopenic purpura in childhood.Lancet 317:1228-1231.
【文献】Noseworthy et al.(2000)IV immunoglobulin does not reverse established weakness in MS.Neurology.55:1135-1143.
【文献】Fehr et al.(1982)Transient reversal of thrombocytopenia in idiopathic thrombocytopenic purpura by high-dose intravenous gamma globulin.N Engl J Med.306:1254-1258.
【文献】Newland et al.(1983)High-dose intravenous IgG in adults with autoimmune thrombocytopenia.Lancet.1:84-87.
【文献】Bussel and Hilgartner(1984)The use and mechanism of action of intravenous immunoglobulin in the treatment of immune haematologic disease.Br J Haematol.56:1-7.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
上述したように、副作用を排除または低減し、より一貫した品質で製造することができ、有効性を維持しながらより低い投薬量を可能にし、及び/または商品のコストを低減することができる代替物(複数可)を含めた、IVIGの使用による改善された治療に対する著しいニーズが存在する。本発明者らは、免疫グロブリンの組換え操作により、一定の品質で製造することができ、より明確な分子の製造が可能になり、有効性を維持したままより低い投薬量が可能となり、そして製品のコストを低減することが可能となると仮定した。
【0011】
IVIGの作用機序は完全には明らかではないが、本発明者らは、少なくともいくつかの適応症が、それらの適応症においてIVIG治療の有効性に必要とされる抗体構造要素と、相関させることが可能であると仮定した。例えば、免疫不全の治療において、IVIGは血清Igのレベルを補い、感染性因子及び/またはその毒素から生命を守る保護作用をもたらす。したがって、プールされた免疫グロブリンの可変領域内に含まれる抗原特異性の多様性が、これらの適応症の治療有効性の要因であると考えられる。対照的に、研究では、免疫グロブリンFc領域が急性及び慢性自己免疫疾患の治療において、IVIGの免疫調節効果の要因であるという概念を支持する。
【0012】
インタクトなIVIG及びそのFcフラグメントは、ITPの治療及び動物モデルにおいて同等の抗炎症活性を有することが観察された(16)。これは、抗炎症機能におけるFc領域の役割を支持する。さらに、IVIGの免疫調節効果はFc受容体を介して媒介され、樹状細胞(DC)-マクロファージのクロストークに依存し、マウスITPモデルにおいてFcγRIIIaは活性化段階に対して、そしてFcγRIIbはエフェクター相に対して重要であることが観察された(17)。最後に、マウスITPモデルでは、高含量のIg二量体を含有するIVIGでの治療が、正常な単量体免疫グロブリンでの治療よりもはるかに効果的に血小板枯渇を反転することが観察された(18)。したがって、本発明者らは、通常、Fc領域に対して低い親和性結合を有する樹状DC表面FcγRIIIa及びFcγRIIbは、オリゴマーFcにより提供されるアビディティ(複数の相互作用)結合を通じてIVIG製剤に存在する少量のオリゴマー抗体と生産的に相互作用することができ、さらにIVIG製剤の免疫調節効果を改善するために利用することができると理論づけた。
【0013】
本発明は、上記の懸念に完全または部分的に対処する方法及び材料を提供する。したがって、その広範な態様において、本発明は(a)2つ以上のFcペプチドドメインを含む一本鎖Fcペプチド及び(b)オリゴマー化ペプチドドメインを含有する組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)ポリペプチドを含む。本発明の特定の態様において、オリゴマー化ペプチドドメインは三量体化ペプチドドメインである。特定の実施形態において、本発明のrIVIGポリペプチド(パン受容体相互作用分子(Pan Receptor Interacting Molecules)、または「PRIM」とも称される)は、(a)2つのFcペプチドドメイン及び(b)オリゴマー化ペプチドドメイン、特に、三量体化ペプチドドメインを含む一本鎖Fcペプチドを含む。本発明のrIVIGポリペプチド中の個々のFcペプチドドメインは、フレキシブルリンカーを介して連結され得る。本発明の特定の実施形態において、フレキシブルリンカーはアミノ酸配列G-G-G-G-S(配列番号9)の5回反復配列、すなわちG-G-G-G-S-G-G-G-G-S-G-G-G-G-S-G-G-G-G-S-G-G-G-G-S(配列番号10)を含む。本発明のその他の特定の実施形態において、オリゴマー化ペプチドドメインは、配列番号4のアミノ酸番号712~768を、または配列番号6のアミノ酸番号1~79を含む。ある特定の実施形態において、本発明のrIVIGポリペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
その他の実施形態において、本発明は(a)2つ以上のFcペプチドドメインを含む一本鎖Fcペプチド及び(b)オリゴマー化ペプチドドメインを含有する組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)ポリペプチドをコードするヌクレオチド分子を含む。本発明の特定の態様において、ヌクレオチド分子は三量体化ペプチドドメインをコードする。特定の実施形態において、本発明のヌクレオチド分子は、(a)2つのFcペプチドドメイン及び(b)三量体化ドメインを含有するrIVIGポリペプチドをコードする。特定の実施形態において、本発明はrIVIGポリペプチドをコードするヌクレオチド分子を含み、そのrIVIGポリペプチドは配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は免疫不全の治療のための組成物を提供し、上記組成物は組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含有しており、ここで上記rIVIGタンパク質は、3つの一本鎖Fcドメイン(scFc)を集めるための足場を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む。特定の実施形態において、オリゴマー化ペプチドドメインは配列番号6のアミノ酸1~79及び配列番号4のアミノ酸712~768を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む。本発明の特定の態様において、組成物は3つの一本鎖Fcペプチドを含有する、主に単一のタンパク質種を含む。上記の一本鎖Fcペプチドの個々のFcドメインは、機能的な一本鎖Fcペプチドを形成するために分子間で相互作用し得る。特定の実施形態において、本発明はrIVIGタンパク質を主に含有する組成物を提供し、そのrIVIGタンパク質は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は自己免疫疾患に罹患している患者を治療する方法を提供し、上記方法は、主に組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含有する有効量の組成物を上記患者に投与することを含み、ここで上記rIVIGタンパク質は一本鎖Fcペプチドの三量体の形成のための足場を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む。特定の実施形態において、患者は、難治性免疫性血小板減少症(ITP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLEまたは狼瘡)、グレーブス病、川崎病、皮膚筋炎、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血(IMHA)、悪性貧血、溶血性貧血、無形成貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、アジソン病、橋本病(慢性甲状腺炎)、橋本脳症、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、リウマチ性関節炎及び反応性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、シェーグレン症候群、CREST症候群、骨盤内炎症性疾患(PID)、強直性脊椎炎、ベーチェット病、血管炎、ライム病(慢性または末期)ならびにI型糖尿病から選択される免疫不全に罹患している。
【0017】
別の態様において、本発明は臓器移植、骨髄移植、輸血、または幹細胞移植を受けた患者の免疫拒絶反応を低減する方法を提供し、上記方法は、上記患者に組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含有する組成物の有効量を投与することを含み、ここで上記rIVIGタンパク質は、主に一本鎖Fcペプチドの三量体を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患に罹患しているヒト以外の哺乳動物を治療する方法を提供し、その方法は、上記ヒト以外の哺乳動物に、組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む有効量の組成物を投与することを含み、ここで上記rIVIGタンパク質は、主に一本鎖Fcペプチドの三量体を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含み、そして上記rIVIGタンパク質は、同じ種のヒト以外の哺乳動物に由来するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、ヒト以外の哺乳動物は、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)または関節リウマチから成る群から選択される自己免疫疾患に罹患している。例えば、AIHAに罹患しているイヌは、配列番号7及び配列番号8のアミノ酸配列などのイヌ由来のアミノ酸配列を含有する、主に三量体rIVIGタンパク質を含有する組成物で治療され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のある特定の実施形態の構築物の組成を示す。P7005Hは、CD40リガンドの細胞外ドメインの内因性の三量体化能を用いて、オリゴマー機能性Fcドメインを生成するための設計の原型である。最小の機能性オリゴマーは、N末端で3つの二量体Fcドメイン及びC末端で2つの三量体化CD40L ECDに組み立てられる、6つのポリペプチド鎖から成る。P7005Hの複雑なSECプロファイル(
図2)を踏まえて、機能的FcドメインがscFc形態を用いて生成され、CD40L ECDがコラーゲン三量体化ドメインによって置換されたP8001Zが作製された。SECプロファイル(
図2)はP7005Hのものよりも優れているが、P8001Zは依然として相当量の高次オリゴマーを含んでいる。同様の構築物の、さらにヒトIgG1重鎖ヒンジ領域(H)を有するP8004Zもまた、理想的でないSECプロファイルを示したので、ヒンジ領域のみを含むことは折り畳みの問題を解決しないようである。興味深いことに、さらなる定常領域(CL及びCH
1)が導入された場合、P8003Z及びP8020Zタンパク質は、はるかにより効率的に折り畳まれ、主に適切に折り畳まれた三量体を示した。(
図2)。(
図2)。P8020Z構築物は、融合タンパク質のC末端にオリゴマーFcを配置することを可能にする、三量体形成の足場を使用した。C末端のFc形態は、Fc受容体と相互作用するための通常の抗体の配向を細かに模倣することが期待される。重要なことに、P7005H、P8001Z、P8002ZまたはP8004Zとは異なり、三量体種の均質な組成物は、幸運にもP8003Z及びP8020Zの発現から得られた(
図5を参照)。
【
図2】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイルモデルにおける、本発明の組成物の効果を示す。本発明のrIVIG分子は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製し、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)に緩衝液交換した。各SEC分析は、Superdex 200 10/30 SECカラム(GE Healthcare)を用いて約100ulのrIVIG試料を0.5ml/分の速度で注入することによって行った。矢印は、適切に折り畳まれた三量体分子が溶出したことを示す。
図2は、P7005H、P8001Z、P8002Z及びP8004Zの約1/3未満が適切に折り畳まれた三量体型であることが判明したことを示している。対照的に、P8003Z及びP8020Zの少なくとも2/3超は、三量体として適切に折り畳まれている。これらの結果は、CL及びCH1ドメインの導入により三量体形態の折り畳みが非常に促進されることを示す。
【
図3】FcγR結合モデルにおける本発明の組成物の効果を示す。GSTと融合した個々のヒトFc受容体をELISAプレート上にコーティングした。塞がっていない領域をブロックした後、ヒトIgG1、P8003Z1、P8003Z3(α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8
-/-)を欠損した細胞株から産生されたP8003Zの非フコシル変異体)またはP8020Z1を、段階希釈濃度でプレートに添加した。結合したヒトIgG1及びrIVIG変異体は、ヤギ抗ヒト抗体を蛍光標識したF(ab)’
2フラグメントで定量した。
図3の上部パネルは、ヒトFcγRIIA(H131)に対するヒトIgG1とrIVIGの親和力の測定値の例を示す。曲線のあてはめ(SoftMax Pro 5.1、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)により、組換え可溶性Fc受容体に対するrIVIGのKDの評価が可能になる。下表は、これらの計算されたKDを示す。本発明の三量体rIVIGはヒトFcγRIを除いて、ヒトIgG1と比較して結合親和性の有意な増加を示すことが明らかである。ヒトFcγRIに対してヒトIgG1は既に1nM未満の親和性を示しており、rIVIGはわずかに高い親和性しか示さない。これらの結果より、アビディティの優位性のある本発明の三量体rIVIGは、非常により高い見かけの親和性でFc受容体に結合可能である。
【
図4】本発明の組成物の、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルにおける治療効果を示す。マウスを1日目にウシII型コラーゲン/CFAで初回免疫し、18日目にP8020Z(50mg/kg体重)で処置し、そして21日目に同一のコラーゲン/IFAで追加免疫した。1~4の臨床スコアでは、4が最も重篤であり、それぞれの足を一日おきに評価した。臨床スコアは各群で加算し、そしてマウスの数で正規化した。通常約2~3g/kg体重で使用され、試験期間にわたって複数回投与される従来のヒトIVIG調製物と比較すると、P8020Z1は50mg/kgの用量で1回投与され、投与量において40~60倍の減少を示した。
【
図5】抗コラーゲン抗体の受身伝達により誘導される自己免疫疾患における本発明の組成物の、治療効果を示す。マウスは、指示された投与量にて、抗コラーゲン抗体で、3日後にリポ多糖で、そして6日目に血漿由来のIVIG(pd.IVIG)または組換えIVIG(rIVIGもしくはPRIM)分子(PM 02、非フコシルP8003Z3とも名付けられる)の単回注射で処置した。pd.IVIG 1Kの投与量は、kg体重あたり1gm、pd.IVIG 2Kの投与量はkg体重あたり2gmである。PM02 15はkg体重あたり15mg、PM 02 50はkg体重あたり50mg、及びPM02 150はkg体重あたり150mgである。pd.IVIG 1K及びpd.IVIG 2Kはどちらも9日目と13日目の間でわずかに効果的である。PM 02 15は、両方の濃度のpd.IVIGと同等の治療効果を示す。PM 02 50及びPM02 150はどちらのpd.IVIG投与よりも非常に優れた有効性を示す。したがって、PM 02は、抗コラーゲン抗体の受身伝達によって誘導される自己免疫疾患の治療が可能であることが示される。
【
図6】P8003Z1及びP8020Z1のサイズ排除クロマトグラフィーのプロファイルを示す。ピークは本発明の三量体rIVIGタンパク質を示し、本発明のrIVIGペプチドが均質な形態で作成され得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、説明を目的として、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を記述する。しかしながら、本発明はこれらの具体的な詳細なしに実施することができ、本発明のより広い範囲から逸脱することなく、それに加えて様々な改変及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0021】
本明細書で引用された全ての刊行物は、引用されている教示について、参照により本開示に具体的に組み込まれる。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は哺乳動物及び哺乳動物以外を指す。哺乳動物にはヒト、チンパンジー及びその他の類人猿及びサル種などのヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタなどの家畜、ウサギ、イヌ、及びネコなどの愛玩動物、ラット、マウス及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物、等が挙げられるが、これらに限定されない哺乳網の任意のメンバーを指す。哺乳動物以外の例としては、鳥類、魚類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明は、組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質、かかるrIVIGを含む組成物、ならびに種々の免疫の障害及び病態の治療のためのrIVIGの組成物の製造、精製及び使用のための方法に関する。
【0024】
本発明において、組換え免疫グロブリン(rIVIG)の設計は、オリゴマー化rIVIG分子の形成を促進するドメインと共に、ヒトIgG1 Fcドメインの複数のコピーを含む核酸分子及びタンパク質分子の操作に焦点を置いている。いずれの理論にも拘束されることを望まないが、本発明のrIVIG分子は、高親和性FcγRIだけでなく低親和性Fc受容体、すなわちFcγRII及びFcγRIII受容体にも結合することができると期待される。低親和性受容体の増強された結合は、オリゴマーFcと細胞表面上に存在するFc受容体とのアビディティ相互作用に起因する可能性が最も高い。
【0025】
生化学的に、本発明は、適切に折り畳まれ、治療用製品としての使用に望ましい特性を示す融合タンパク質を生成するために、Fcドメインとオリゴマー化タンパク質の足場を一緒にするように設計された方法及び材料を提供する。治療的に、本発明のrIVIGタンパク質は、多数の免疫学的病態の治療に、そして多数の自己免疫疾患の免疫調節剤として有用である。さらに、様々な補体タンパク質が多くの自己免疫疾患に関与することを考慮すると、本発明は追加の構造要素、例えば補体活性化カスケードに沿って成分を除去することができる要素を任意に含んでもよい。
【0026】
本発明者らは、Fc構築物の変異体をオリゴマー化するため、様々なタンパク質の足場を用いて多数のrIVIG分子を設計し、発現させた。ある特定の好ましい実施形態では、本発明のrIVIG分子は、3つの一本鎖Fcペプチドまたは3つのFc二量体を優先的に一緒にして3つの機能的Fcドメインを形成する、オリゴマー足場ドメインを含む。
【0027】
本発明の方法及び材料は、自己免疫疾患、または免疫調節が望まれる任意の障害、疾患もしくは症候群を含むが、これらに限定されない免疫疾患の治療に有用である。本発明が使用され得る適応症には、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLEまたは狼瘡)、グレーブス病、川崎病、アジソン病、セリアック病・スプルー、皮膚筋炎、重症筋無力症、皮膚炎、橋本病(慢性甲状腺炎)、橋本脳症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血(IMHA)、悪性貧血、溶血性貧血、無形成貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性好中球減少症、リウマチ性関節炎及び反応性関節炎、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、シェーグレン症候群、CREST症候群、骨盤内炎症性疾患(PID)、強直性脊椎炎、ベーチェット病、血管炎、ライム病(慢性または末期)ならびにI型糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の方法及び材料は、自己抗体により引き起こされる障害、ならびに心筋炎、心筋梗塞後症候群腎炎、グッドパスチャー症候群、間質性膀胱炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び原発性硬化性胆管炎(PSC)、抗シンセターゼ症候群、円形脱毛症、自己免疫性血管浮腫、皮膚炎、乾癬、全身性強皮症、リンパ増殖性症候群、抗リン脂質症候群、自己免疫性網膜症、ブドウ膜炎及びメニエール病を含む臓器特異的自己免疫疾患の治療にも有用である。
【0029】
本発明の方法及び材料はまた、臓器移植、骨髄移植、輸血、または幹細胞移植を含む処置に対する免疫反応または抗体媒介性反応の予防、軽減及び/または治療に有用である。
【0030】
本発明の方法及び材料はまた、任意の市販の静注用免疫グロブリン(IVIG)が使用される任意の自己免疫適応症にも使用することができる。市販のIVIGには、Carimune(登録商標)、Flebogamma(登録商標)、Gammagard(登録商標)、Gammaked(商標)、Gammaplex、Gamunex(登録商標)-C、Octagam(登録商標)及びPrivigen(登録商標)がある。承認された市販IVIGの特定の用途及び自己免疫の適応症には、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、多病巣運動ニューロパチー(MMN)、ITPにおける出血の制御、小児患者における川崎病に伴う冠動脈瘤の予防が挙げられる。
【0031】
本発明は、3つの機能的scFcドメインを含む均質な種として発現及び精製され得る組換えIVIG(rIVIG)タンパク質を含む。この三量体Fcオリゴマーは、アビディティ(複数価)相互作用により、高親和性Fc受容体及び低親和性Fc受容体の両方に結合することができる。様々なFc受容体に対するこれらの増強された親和性は、ヒトIVIGの免疫調節効果に起因する、ヒトIVIG製剤中に存在する少量のオリゴマー化抗体を連想させる。Fc受容体との増強した相互作用を模倣するので、本発明のrIVIGは、従来のIVIGを受動的な免疫保護用途ではなく、免疫調節用途に置き換えることが期待される。
【0032】
免疫グロブリン
Fcフラグメント
本発明は、IgG(CH2-CH3)、好ましくはIgG1のヒト重鎖定常領域2(CH2)及び定常領域3(CH3)を含む、CH2-CH3ドメインを利用する。CH2-CH3ドメインなどの2つ以上のFcフラグメントが使用される場合、それらは一般に(GGGGS)5(=GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号10))などのフレキシブルペプチドリンカーを用いてCH2-CH3ドメインが連結された一本鎖Fcペプチドの形で合成または発現され、一本鎖Fcペプチドの個々のCH2-CH3ドメイン間の分子内相互作用を促進し、一本鎖Fcペプチドが三次元立体構造をとり、生物学的機能を最適化することを可能にする。ヒトIgG、好ましくはIgG1に由来するヒンジ領域(H)はまた、生物学的活性を最適化するための適切な立体構造を促進するために各CH2領域のN末端に存在してもよい。
【0033】
ある特定の実施形態において、本発明のrIVIGタンパク質は、Fc分子のさらなる領域を含む。例えば、rIVIGは、IgG、好ましくはIgG1の1つ以上の定常領域1(CH1)ドメイン、ならびに1つ以上のIgκまたは軽鎖定常領域(CL)ドメインを含むことができる。CLドメインのC末端は、(GGGGS)2などの短いリンカー配列を用いて、CH1ドメインのN末端に連結することができる。この構築物において、CH1ドメインは、分子間ジスルフィド結合よりも熱力学的にはるかに好ましい分子内ジスルフィド結合を介してCLドメインと相互作用することができる。さらに、CL/CH1ドメインは、補体成分を除去する役割を果たすことで、多くの自己免疫疾患に存在する補体免疫反応をさらに改善することができる。
【0034】
ヒト抗体アイソタイプ
異なる結合パターンを有する、いくつかの異なるアイソタイプの抗体が存在することで、体内で異なる機能的役割がもたらされることが知られている。各アイソタイプの結合親和性は一般的に知られており(Gillis et al.(2014)Frontier Immunology 5:1-13)、それらを以下の表1に示す。各抗体アイソタイプのFcは、異なるようにFc受容体に結合をする。例えば、FcγRIIIA(0.1マイクロモル(uM)のKD)に対するヒトIgG3の結合親和性は、同一受容体に対するヒトIgG1の結合親和性より少なくとも50倍高い(5~10uMのKD)。同様に、FcγRIIAへのヒトIgG1の結合は、ヒトIgG4の結合より15倍強い。したがって、本明細書の実施例はIgG1由来のFcフラグメントを使用するが、各アイソタイプ由来のFcフラグメントを本発明に使用することができる。例えば、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの定常領域を有するP8003ZまたはP8020Zの変異体は、IgG1アイソタイプの定常領域を有する親のP8003ZまたはP8020Zの親和性とは異なる親和性を示すことが期待される。多くの自己免疫疾患は、Fc受容体を特異的に組み合わせた発現に関連するので、各アイソタイプ変異体に由来する本発明のrIVIGは、異なる治療上の恩恵をもたらし得る。
表1 ヒト抗体アイソタイプのFc受容体への親和性
【表1】
【0035】
ヒト以外の哺乳動物の抗体サブクラス
ある特定のヒト以外の哺乳動物種には、ヒト抗体アイソタイプに類似する抗体のサブクラスを有することが知られている。例えば、サブクラスA、サブクラスB、サブクラスC及びサブクラスDの4つの公知のイヌ免疫グロブリンサブクラスがそれぞれ存在する。サブクラスは、4つのヒトIgGアイソタイプと機能的特性を共有する。イヌサブクラスA及びDはエフェクター機能陰性であると見られ、サブクラスB及びCはイヌFcγ受容体に結合し、ADCCに対して陽性であることが報告されている。全てのイヌサブクラスは、サブクラスCを除く新生児Fcレセプターに結合することがさらに報告されている(22)。
【0036】
免疫グロブリンFcドメインのグリコシル化ならびに非フコシル抗体とFcγRIII(ヒト)及びFcγRIVの増強した相互作用。
アイソタイプの違いに加えて、単一のグリコシル化部位(Asn-297)での特異なグリコシル化も、Fc-Fc受容体相互作用において重要な役割を担うことが知られている。実際、Asn-297残基でのグリコフォームの変化が生理的及び病的な条件下で生じることは明らかである(23)。さらに、特異なシアル酸付加はIgGの炎症特性に影響することが報告されており、抗炎症状態を誘発する分子スイッチのメカニズムとして提唱されている(24)。さらに、グリカンの除去によりFcは、新生児Fc受容体(FcRn)を除く全てのFc受容体と相互作用する能力を完全に損なう(25)。最も興味深いことに、N-グリカン複合体のコアフコースの除去により、FcγRIIIに対するFcの相互作用の選択的増強が、最大で100倍となることが見出されている(26)。非フコシル化形態の抗体は、α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8
-/-)が欠損している宿主細胞株において全く同じ抗体を発現させることによって産生することができる。P8003Z1及びP8003Z3は、P8003Z1がFUT8コンピテント細胞において産生され、P8003Z3がFUT8欠損細胞において産生される点で、コアフコシル糖鎖が異なる。非フコシル化P8003Z3は、期待通り、ヒトFcγRIII及びマウスFcγRIVへの結合が増強されている(
図3KDの表を参照)。
【0037】
したがって、当業者には明らかであるように、修飾されたグリコシル化を有するrIVIGタンパク質、修飾されたグリコシル化を有するrIVIGタンパク質を産生する細胞株及び及び培地は本発明において使用され得、ならびにrIVIG産生のためのそれらの使用及び免疫疾患の治療的処置における修飾されたグリコシル化を有するrIVIGタンパク質の使用は、本発明の一部を成す。
【0038】
オリゴマー化足場ドメイン
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴマー化ドメイン」「オリゴマー化足場ドメイン」及び「オリゴマー化タンパク質足場」は、特定の配列がオリゴマー構造を形成するように機能することを示すために互換的に使用される。本発明に有用なオリゴマー化足場ドメインには、一本鎖Fcペプチドなど、その融合相手の三量体化を誘導し、それにより三量体rIVIG分子を形成するものが含まれ、各rIVIG分子は、2つのH-CH2-CH3 Fcドメイン(ヒンジ領域-重鎖定常領域2-重鎖定常領域3)を含む。P8020Z(配列番号6)によって例示されるようなある特定の実施形態において、オリゴマー化足場ドメインが構築物のN末端にあり得る場合、オリゴマー化足場ドメインのC末端は、第1のヒンジ領域(H)もしくはCH2領域のN末端、またはCLドメインに、GGGGSなどの短いリンカー配列を介して直接的または間接的に連結され得る。P8003Z(配列番号4)によって例示されるようなその他の実施形態において、オリゴマー化足場ドメインが構築物のC末端にあり得る場合、オリゴマー化足場ドメインのN末端は、GGGGS(配列番号9)などの短いリンカー配列を介して直接的または間接的に最後のCH3ドメインのC末端に連結され得る。
【0039】
リンカー及びフレキシブルリンカー
本発明において有用なリンカー及びフレキシブルリンカーには、複数のグリシンまたはセリン残基を有し、ポリペプチドの長さが第1ドメインのC末端と第2ドメインのN末端の間の距離を橋渡しするのに十分であると定義される、グリシン及び/またはセリンリッチなポリペプチドリンカーが挙げられる。用語「フレキシブルリンカー」は、実質的に水溶液中で二次構造を有さない、柔軟で非構造的なポリペプチドの立体配置の形成を可能にするのに十分な長さのポリペプチド配列を定義するために使用され、キメラまたは融合タンパク質が単一の核酸構築物に由来する単一のポリペプチド分子として生成することができるように、2つのタンパク質ドメインを連結する手段を提供する。
【0040】
リンカーは、別々のドメイン間の分子内相互作用を可能にするように長さを変えることができ、それによって生物学的機能を最適化する三次元立体構造の形成を可能にする。本明細書中で使用される場合、用語「フレキシブルリンカー」は、一般に、10アミノ酸以上の長さを有するリンカーに適用される。適切なフレキシブルリンカーは、一般に、少なくとも10アミノ酸残基の長さであり、約10~約36アミノ酸残基を有するリンカーポリペプチドを含む。好ましいフレキシブルリンカーは、少なくとも約50%より多いグリシン残基及び約10から約30アミノ酸の長さを有するものであり、より好ましくは長さが約12~約25アミノ酸、または長さが約15~約25アミノ酸である。本発明において有用なフレキシブルリンカーとしては、例えば、(GGGGS)nのアミノ酸配列(nは2~7である)が挙げられる。用語「G4S」は、配列GGGGS(配列番号9)を指すために互換的に使用される。好ましいフレキシブルリンカーには、(GGGGS)nのアミノ酸配列が含まれ、式中nは2~6であり、より好ましくは、nは3~5である。このようなグリシンリッチ及び/またはセリンリッチペプチドリンカーはよく知られており、抗体ドメインを連結させて、完全抗体の結合部位を単一のポリペプチド鎖に組み込む一本鎖Fv(sFv)タンパク質を形成するために使用されている。12アミノ酸残基未満のセリンリッチ及び/またはグリシンリッチペプチドリンカーはまた、ペプチドドメインを連結させるためのリンカーとして使用することもできるが、隣接する融合ペプチドドメインが分子内で相互作用できる立体構造となるほどの十分な柔軟性を提供しない。本発明において使用することができる特定のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列(GGGGS)5(配列番号9)を含む。フレキシブルリンカーが望ましくない場合、本発明において有用なより短いリンカーには、アミノ酸GGGGS及び(GGGGS)2を含むリンカーが挙げられる。一般に、リンカーは、アラニン及びスレオニンなどの非反応性側鎖を有する他のアミノ酸残基を含んでもよい。しかしながら、リンカーは一般に、荷電アミノ酸残基を含まず、かつジスルフィド結合を形成可能なシステイン残基を含むべきでない。適切なフレキシブルペプチドリンカー及びそれらの製造に有用なDNA構築物は、米国特許第5,258,498号、米国特許第5,482,858号、及び米国特許第5,525,491号に記載されている。
【0041】
精製:
本発明はさらに、本発明の1つ以上のrIVIGタンパク質を主に含む組成物に関する。本明細書で使用されるように、組成物の重量に関して使用される場合、1つ以上のrIVIGタンパク質を「主に含有する」という用語は、全組成物重量のうち特定のrIVIGタンパク質を少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%含有する組成物であることを意味する。組成物のタンパク質の量に関して使用される場合、1つ以上のrIVIGタンパク質を「主に含有する」という用語は、組成物に存在する全タンパク質(モル%)のうち特定のrIVIGタンパク質(モル%)を少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、または少なくとも95モル%含有する組成物であることを意味する。
【0042】
本発明の1つ以上のrIVIGタンパク質を主に含有する組成物は、IgGのFab領域にも結合することができ、F(ab’)2の精製に有用である、IgGのFc部分に結合するプロテインA-アガロースまたはIgGのFc部分に優先的に結合するプロテインG-アガロースを使用する、従来のIgGの精製方法を使用して得てもよい。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を含む、当技術分野で公知のさらなる精製方法は、本発明によるrIVIGタンパク質組成物のさらなる精製に使用することができる。http://www.kpl.com/docs/techdocs/purifigg.pdf(2016年3月23日にアクセス)及びそこで引用されている以下の参考文献を参照されたい、Surolia et al.(1982)Trends Biochem.Sci.7:74-76、Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,NY),p.617-618、Langone(1982)J.Immunological Methods 55:277-296、Lindmark et al.(1983)J. Immunological Methods 62:1-13、及びThruston and Henley(1988)in Walker,ed. Methods in Molecular Biology,Vol.3-New Protein Techniques(Humana Press:Clifton,NJ)p.149-158。
【0043】
組成物
本発明はさらに、薬学的に許容されるアジュバントまたは担体と組み合わせたrIVIGタンパク質の組成物に関する。使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、薬学分野での使用に許容される、すなわち許容できないほど毒性ではないか、そうでなければ哺乳動物への投与に不適切でないことを意味する。薬学的に許容されるアジュバントの例には、希釈剤、賦形剤などが含まれるが、これらに限定されない。一般的に薬物製剤の手引きについては、“Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy”,21st Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005を参照してもよい。
【0044】
医薬組成物は、追加の成分、例えば防腐剤、緩衝剤、等張剤、抗酸化剤及び安定剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤などをさらに含んでもよい。
【0045】
溶液中での使用に適した防腐剤には、ポリクアテルニウム-1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、EDTA二ナトリウム、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウムなどが含まれる。典型的には(しかし必ずしもそうではないが)、このような防腐剤は、0.001重量%~1.0重量%のレベルで使用される。
【0046】
典型的には(しかし必ずしもではないが)緩衝剤は製剤を生理学的pHまたはそれに近い状態に維持するために使用される。適切な緩衝剤には、pHを約pH6とpH8との間、好ましくは、pH7とpH7.5の間に維持するのに十分な量のホウ酸、重炭酸ナトリウム及び重炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0047】
適切な等張剤には、注射溶液の塩化ナトリウム当量が0.9±0.2%の範囲になるような、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
適切な酸化防止剤及び安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオ尿素などが挙げられる。適切な湿潤剤及び清澄剤には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282及びチロキサポールが挙げられる。適切な増粘剤には、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0049】
アジュバントの選択は、組成物の意図する投与様式に依存し、意図された適応症及び患者を考慮に入れてもよい。本発明の1つの実施形態において、化合物は点滴によって、または皮下もしくは静脈内のいずれかへの注射によって投与するために製剤化され、したがって、滅菌及び発熱物質を含まない形態で、場合により緩衝化または等張化された水溶液として利用され得る。したがって、化合物は、蒸留水で、またはより望ましくは生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水もしくは5%デキストロース溶液中で投与してもよい。上記に加えて、本発明の製剤は、特定の投薬量及び投与様式に適した、追加の活性成分及び/または溶媒、希釈剤、懸濁助剤、増粘剤または乳化剤、結合剤、安定剤、滑沢剤などを含む不活性成分をさらに含んでよい。いずれかの従来の担体媒体が、任意の望ましくない効果をもたらす、またはそうでなければ製剤の他の成分(複数可)と有害な様式で相互作用することによって、本発明の成分と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0050】
投与の方法:
医薬組成物は、例えば、全身投与または局所投与を含む、本明細書に記載の様々な投与様式に好適であってよい。医薬組成物は、注射可能な溶液の形態であっても、経口投与に適した形態であってもよい。本明細書に記載の医薬組成物は、単回投与または複数投与形態で包装することができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、経口投与または静脈内注射を含む、本明細書に記載の任意の投与経路による個体、脊椎動物、哺乳動物またはヒトへの投与に適している。
【0051】
本明細書に記載の組成物は、静脈内(例えば、輸液ポンプによる)、腹腔内、眼内、動脈内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経皮、経肺、動脈内、局所、吸入(例えばスプレーの霧など)、粘膜(例えば、鼻腔粘膜を介して)、皮下、経皮、胃腸内、関節内、大槽内、心室内、直腸(すなわち、座薬を介して)、膣(すなわち、ペッサリーを介して)、頭蓋内、尿道内、肝内、及び腫瘍内を含むが、これらに限定されない任意の経路を介して個体に投与され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、全身的に(例えば、静脈内注射によって)投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的に(例えば、動脈内または眼内注射によって)投与される。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物は、静脈内または動脈内などの血管内に投与される。いくつかの実施形態(例えば、腎疾患の治療のための実施例について)において、組成物は、動脈(腎動脈など)に直接投与される。好ましい実施形態において、組成物は皮下投与される。
【0053】
いくつかの実施形態において、組成物は、眼または眼の組織に直接投与してもよい。いくつかの実施形態において、組成物は眼に局所的に、例えば点眼で投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、眼への注射(眼内注射)または眼に関連する組織に投与される。組成物は、例えば、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下注射(subconjectval injection)、結膜下注射(subconjuntival injection)、テノン嚢下、球後注射、球周囲注射、または後方近位強膜送達によって投与され得る。これらの方法は当技術分野で知られている。例えば、網膜薬物送達のための例示的な眼周囲経路の説明については、Periocular routes for retinal drug delivery,Raghava et al.(2004),Expert Opin.Drug Deliv.1(1):99-114を参照されたい。組成物は、例えば、硝子体、房水、強膜、結膜、強膜と結膜との間の領域、網膜脈絡膜組織、黄斑、または個体の眼の中もしくは近傍の他の領域に投与してもよい。
【0054】
組成物は、インプラントとして個体に投与することもできる。好ましいインプラントは、ある期間にわたって化合物を徐々に放出する生体適合性及び/または生分解性の持続放出製剤である。薬物送達のための眼内インプラントは当技術分野においてよく知られている。例えば、米国特許第5,501,856号、第5,476,511号及び第6,331,313号を参照されたい。組成物はまた、US4,454,151及びUS2003/0181531及び2004/0058313に記載されているイオン浸透的な方法を含むが、これに限定されないイオントフォレーシスを用いて個体に投与することもできる。
【0055】
用量:
組成物の最適な有効量は経験的に決定することができ、疾患の種類及び重症度、投与経路、疾患の進行及び健康、個体の体重及び体面積に依存する。かかる決定は、当業者の技術の範囲内である。有効量は、in vitroアッセイに基づいて決定することもできる。本明細書に記載の方法に用いることができる組成物の用量の例には、約0.01ug/kg~約300mg/kg、または約0.1ug/kg~約40mg/kgまたは約1ug/kg~約20mg/kg、または約1ug/kg~約10mg/kgの任意の用量の範囲内の有効量が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、皮下投与する場合、組成物は、例えば約0.1ug/kg以下、約0.05ug/kg以下、または0.01ug/kg以下を含む低マイクログラムの範囲での投与であってよい。いくつかの実施形態において、個体に投与される組成物の量は、例えば、1用量につき約10ug~約50ug、約50ug~約100ug、約100ug~約200ug、約200ug~約300ug、約300ug~約500ug、約500ug~約1mg、約1mg~約10mg、約10mg~約50mg、約50mg~約100mg、約100mg~約200mg、約200mg~約300mg、約300mg~約400mg、または約400mg~約500mgのいずれかを含む、1用量につき約10ug~約500mgである。
【0056】
組成物は、1日1回用量で投与してもよく、あるいは1日用量を1日2回、3回、または4回に分けて投与してもよい。組成物はまた、毎日よりも少ない頻度で、例えば週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、または6ヶ月に1回投与してもよい。組成物はまた、長い期間にわたって使用するために組成物を徐々に放出するインプラントなどの徐放性製剤で投与してもよく、組成物を1ヶ月に1回、2~6ヶ月に1回、1年に1回、あるいは1回の投与など、より少ない頻度での投与が可能になる。持続放出デバイス(ペレット、ナノ粒子、微粒子、ナノスフェア、マイクロスフェアなど)は、体内の様々な場所に注射または外科的に埋め込みにより投与されてもよい。
【0057】
同時投与
本発明は、免疫不全または免疫疾患の改善された治療のための方法を提供し、その方法は、予防的または治療的活性を有するか、またはかかる免疫不全または免疫疾患の治療への使用が承認されている1つ以上の追加の活性薬剤と本発明のrIVIG組成物を同時投与することを含む。かかる方法において、rIVIG組成物は、追加の活性薬剤の投与の前、同時または後に投与してもよい。例えば、関節リウマチ(RA)の治療において、本発明のrIVIG組成物は、RAでの使用が承認された治療用抗体であるHumira(登録商標)(アダリムマブ、AbbVie Inc.)を含む組成物と同時投与してもよい。rIVIG組成物は、RAに罹患している患者にさらなる軽減をもたらし、rIVIG組成物の効果がHumira(登録商標)の効果と相乗的であり得ることが期待される。
【0058】
本発明は、臓器移植、または幹細胞移植もしくは輸血などの他の処置を受けた患者の、改善された治療のための方法であって、かかる移植もしくはその他の処置の前、同時または後に本発明のrIVIG組成物を投与することを含む方法を提供する。本発明によるこのような治療は、移植臓器に対する抗体媒介性免疫応答(すなわち、免疫拒絶反応)を予防または軽減するための方法を提供する。rIVIG組成物は、そのような抗体媒介性免疫応答または移植臓器の拒絶に対して予防的または治療的活性を有する、1つ以上の追加の活性薬剤と同時投与してもよい。
【0059】
例えば、腎臓被移植者の治療において、本発明のrIVIG組成物は、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を含む組成物と同時投与してもよい。本発明の組成物と同時投与してもよい他の免疫抑制剤には、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤、シロリムスなどのmTOR阻害剤、ミコフェノール酸及びアザチオプリンなどの抗増殖剤、及びプレドニゾンなどのステロイドが含まれる。rIVIG組成物は、免疫拒絶に苦しむ患者にさらなる軽減をもたらし、rIVIG組成物の効果は免疫抑制剤の効果と相乗的であることが期待される。さらに本発明によるそのような治療により、そのような免疫抑制剤の量を減らすことが可能になる。
【0060】
コード化ヌクレオチド分子、組換えベクター及び組換え細胞株
本発明のrIVIGタンパク質をコードするヌクレオチド分子を合成する方法は、当技術分野で公知である。遺伝コードを用いて本発明のrIVIGタンパク質のアミノ酸配列は容易に逆翻訳され、オンラインツールを用いて、コドン最適化され得る(27)。コード化ヌクレオチド分子は、Kim et al.に記載の遺伝子合成の階層的手法などの戦略を用いて合成してもよい(28)。
【0061】
本発明のrIVIGタンパク質の発現については、コード化ヌクレオチド配列は組換えベクターを用いて宿主細胞中で発現することが知られており、ここで、rIVIGタンパク質をコードする核酸配列は、宿主細胞中でrIVIGタンパク質の発現を駆動する適切なプロモーターの制御下にある。適切な宿主細胞としては、例えば、哺乳動物CHO細胞、293T細胞が挙げられる(29)。
【0062】
遺伝子治療
分子は、in vivoでの融合タンパク質の発現によって送達することもでき、多くの場合、それは「遺伝子治療」と呼ばれる。例えば、ex vivoで融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を用いて細胞を操作してもよく、その後、その操作した細胞は、融合タンパク質で治療する個体に提供される。このような方法は当技術分野でよく知られている。例えば細胞は、当技術分野で公知の手順で、本発明の融合タンパク質をコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子の使用により操作してもよい。遺伝子治療を用いた本発明のrIVIGタンパク質の局所的送達により、局所的な標的領域に治療剤が提供され得る。
【0063】
遺伝子送達の方法は、当技術分野で公知である。これらの方法には、直接的なDNA転移(例えば、Wolff et al.(1990)Science 247:1465-1468を参照されたい)、2)リポソーム介在性DNA転移(例えばCaplen et al.(1995)Nature Med.3:39-46、Crystal(1995)Nature Med.1:15-17、Gao and Huang(1991)Biochem.Biophys.Res.Comm.179:280-285を参照されたい)、3)レトロウイルス介在性DNA転移(例えばKay et al.(1993)Science 262:117-119、Anderson(1992)Science 256:808-813を参照されたい)、4)DNAウイルス介在性DNA転移が含まれるが、これらに限定されない。そのようなDNAウイルスには、アデノウイルス(好ましくはAd2またはAdベースの5ベクター)、ヘルペスウイルス(好ましくは単純ヘルペスウイルスベースのベクター)、及びパルボウイルス(好ましくは「欠損」または非自律性パルボウイルスベースのベクター、より好ましくはアデノ随伴ウイルスベースのベクター、最も好ましくはAAV-2ベースのベクター)が挙げられる。例えば、Ali et al.(1994)Gene Therapy 1:367-384、米国特許第4,797,368号(参照により本明細書に組み込まれる)、及び米国特許第5,139,941号を参照されたい。
【0064】
前述したレトロウイルスプラスミドベクターが由来し得るレトロウイルスにはモロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルスなどのレトロウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、乳がんウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、レトロウイルスプラスミドベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスに由来する。
【0065】
アデノウイルスは、幅広い宿主を持ち、休止期または最終分化した細胞(例えば、ニューロンまたは肝細胞)に感染することができ、実質的に非発がん性であると思われるという利点を有している。例えば、Ali et al.(1994)(前掲、p.367)を参照されたい。アデノウイルスは宿主ゲノムに組み込まれていないように見える。それらは染色体外に存在するため、挿入変異誘発のリスクは大幅に低減される。Ali et al.(1994)(前掲、p.373)。
【0066】
アデノ随伴ウイルスは、アデノウイルスベクターと同様の利点を示す。しかしAAVはヒト19番染色体に部位特異的な組込みを示す(Ali et al.(1994)、前掲、p.377)。
【0067】
遺伝子治療ベクターは、1つ以上のプロモーターを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ベクターは複数の細胞型で発現を駆動するプロモーターを有する。いくつかの実施形態において、ベクターは特定の細胞型(網膜の細胞または腎臓の細胞など)で発現を駆動するプロモーターを有する。使用することができる適切なプロモーターには、レトロウイルスLTR、SV40プロモーター、及びMiller et al.(1989)Biotechniques 7(9):980-990に記載されるヒトサイトメガロウイルス(CVM)プロモーター、または任意の他のプロモーター(例えばヒストン、pol III及びβ-アクチンプロモーターを含むがこれらに限定されない真核生物細胞プロモーターなどの細胞プロモーター)が含まれるが、これらに限定されない。使用され得る他のウイルスプロモーターには、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、及びB19パルボウイルスプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロモーターの選択は、本明細書に含まれる教示から当業者には明らかであろう。
【0068】
rIVIGタンパク質をコードする核酸配列は、好ましくは適切なプロモーターの制御下にある。使用することができる適切なプロモーターには、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなどの異種プロモーター、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)プロモーター、MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーターなどの誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、アルブミンプロモーター、ApoA1プロモーター、ヒトグロビンプロモーター、単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーターなどのウイルス性チミジンキナーゼプロモーター、レトロウイルスLTR(前述の改変レトロウイルスLTRを含む)、β-アクチンプロモーター、及びヒト成長ホルモンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
レトロウイルスプラスミドベクターを用いて、パッケージング細胞株を形質導入して、プロデューサー細胞株を形成させることができる。トランスフェクションされ得るパッケージング細胞の例は、Miller(1990)Human Gene Therapy 1:5-14に記載されている。ベクターは、当技術分野で公知の任意の手段によってパッケージング細胞に形質導入することができる。そのような手段としては、エレクトロポレーション、リポソームの使用、及びCaPO4沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。1つの代替例において、レトロウイルスプラスミドベクターはリポソームに封入するか、または脂質に結合させた後に、宿主に投与してもよい。プロデューサー細胞株は、ポリペプチドをコードする核酸配列(複数可)を含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。このようなレトロウイルスベクター粒子は、in vitroまたはin vivoのいずれかで真核細胞を形質導入するために使用され得る。形質導入された真核細胞は、ポリペプチドをコードする核酸配列(複数可)を発現する。形質導入され得る真核細胞には、胚性幹細胞、胚性がん腫細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、及び気管支上皮細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
Ex Vivo投与
いくつかの実施形態において、rIVIGタンパク質の免疫調節効果は、体液を、分子が免疫応答を調節するように機能する条件下でex vivoで分子を含む組成物と接触させることによって達成され得る。適切な体液には、血液、血漿、またはリンパ液などの個体に戻すことができるものが含まれる。アフィニティー吸着アフェレーシスは、一般に、Nilsson et al.(1988)Blood 58(1):38-44、Christie et al.(1993)Transfusion 33:234-242、Richter et al.(1997)ASAIO J.43(1):53-59、Suzuki et al.(1994)Autoimmunity 19:105-112、米国特許第5,733,254号、Richter et al.(1993)Metabol.Clin.Exp.42:888-894、及びWallukat et al.(1996)Int’l J.Card.54:1910195に記載されている。
【0071】
したがって、本発明は個体において、個体の血液を体外的に(すなわち体の外側またはex vivoで)分子を含む組成物で、その分子が免疫応答を調節するように機能する条件下で処理し、その血液を個体に戻すことを含む、本明細書に記載の1つ以上の疾患を治療する方法を含む。
【0072】
単位剤形、製造品、及びキット
単回投与形態の組成物もまた提供され、各用量は約0.01mg~約50mgを含有し、例えば約0.1mg~約50mg、約1mg~約50mg、約5mg~約40mg、約10mg~約20mg、または約15mgのいずれかの分子を含む。いくつかの実施形態において、分子組成物の単回投与形態は、約0.01mg~0.1mg、0.1mg~0.2mg、0.2mg~0.25mg、0.25mg~0.3mg、0.3mg~0.35mg、0.35mg~0.4mg、0.4mg~0.5mg、0.5mg~1.0mg、10mg~20mg、20mg~50mg、50mg~80mg、80mg~100mg、100mg~150mg、150mg~200mg、200mg~250mg、250mg~300mg、300mg~400mg、または400mg~500mgのいずれかの分子を含む。いくつかの実施形態において、単回投与形態は約0.25mgの分子を含む。「単位投与形態」という用語は、個体の単位投与量として適切な、物理的に分離した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、適切な薬学的担体、希釈剤または賦形剤と共に含む。これらの単位投与形態は、1回または複数回の単位投与量で適切な包装の中に保存することができ、さらに滅菌及び密封することもできる。
【0073】
適切な包装の、本明細書に記載の組成物を含む製品も提供される。本明細書に記載される組成物(眼科用組成物など)の適切な包装は、当技術分野で公知であり、例えばバイアル(密封バイアルなど)、容器、アンプル、瓶、広口瓶、フレキシブル包装(例えば密封マイラーまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製品は、さらに滅菌及び/または密封されていてもよい。
【0074】
本発明はまた、本明細書に記載の使用など、組成物の使用方法に関する説明書(複数可)をさらに含み得る、本明細書に記載の組成物(または単位投与形態及び/または製品)を含むキットも提供する。本明細書に記載のキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び本明細書に記載の任意の方法を実施するための説明書を付け加えた、添付文書を含む、商業的及びユーザーの観点から望ましいその他のものをさらに含み得る。
【0075】
本発明の組成物及び製剤は、免疫応答の調節に関連する病態の治療に有用である。
【0076】
動物用途
上記に加えて、本発明は、免疫不全及び免疫疾患のためのヒト以外の哺乳動物の治療を含む、動物の適応症に有用な方法及び材料をさらに提供する。特定の実施形態において、動物の使用に有用な本発明の方法及び材料は、動物宿主/患者と同じ種に由来するペプチドドメインを含む。ヒト以外の哺乳動物は、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、関節リウマチまたは反応性関節炎を含むいずれかの免疫異常または免疫疾患に罹患していることがある。ヒト以外の哺乳動物は任意の種であってよく、特定の品種のイヌは特に自己免疫疾患になりやすいことが知られている。例えば、イヌの治療のために、各々がイヌ起源の1つ以上のFcペプチドドメイン及びオリゴマー化ペプチドドメインを使用することができる。特にイヌは、イヌ自身の免疫系がイヌの赤血球に結合して破壊する、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)などの免疫不全になりやすいことが知られている。従来の療法に応答しないAIHAもしくは免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、または致命的な出血のリスクがかなり高いと思われる重症のITPを有するイヌにおいて、ヒト起源のIVIGが治療に利用されている。例えば、Kellerman et al.(1997)J Vet Int Med,11:327-332を参照されたい。しかし、ヒトIVIGで治療されたイヌは、ヒトIVIGの反復使用時にアナフィラキシーを引き起こし得るイヌ抗ヒト抗体(DAHA)を一貫して産生する。そのため、現在利用可能なIVIG組成物での動物患者の治療は厳しく制限されている。したがって、本発明の方法及び材料は、イヌ起源のrIVIG組成物、ならびにAIHA及びITPなどのイヌ免疫不全を示すイヌの治療方法を提供する。
【0077】
動物の適応症において、本発明は、動物宿主/患者と同じ種に由来するペプチドドメインを含むrIVIGポリペプチドを含む。したがって、イヌの治療のために、本発明は、1つ以上のイヌFcペプチドドメイン及びイヌオリゴマー化ペプチドドメインを含むrIVIGポリペプチドを含む。ヒトの治療のように、本発明の好ましい実施形態は、分子内相互作用を可能にするためにフレキシブルリンカーによって連結された、2つ以上のFc部分、及び三量体化ペプチドドメインを含む。イヌ起源のオリゴマー化ペプチドドメインを含むrIVIGポリペプチドは、イヌ免疫不全を示すイヌの治療に有用であり得る。
【0078】
組換え免疫グロブリン融合タンパク質
P7005Hは、ヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域、ならびにヒトCD40Lの細胞外ドメイン(ECD)を含むヒトFc部分から成る融合タンパク質である。ヒトFc部分は二量体化することができ、CD40L ECDは三量体化することができる。したがって、融合タンパク質が、3つの二量体Fcと2つの三量体CD40Lを含む、六量体を形成することが期待される。成熟P7005Hは、ヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含む、3つの二量体Fc部分を含有し、そして優れたIVIGに類似した活性を示す。しかし、それぞれの機能性Fcドメインは別々のペプチド鎖上にあるため、二量体Fcの形成は均質ではない。さらに、発現ペプチド鎖間のジスルフィド結合は著しく変動し得、分子内と同様に分子間相互作用が生じることで、六量体よりもかなり大きな「ジッパー」オリゴマーが生じる。したがって、P7005Hにより形成される組成物は、所望よりも著しく不均質であり、適切に折り畳まれない凝集タンパク質を含むため、活性にはならない。したがってP7005Hを含有するタンパク質組成物がさらに受け入れられるためには、最も活性が期待される六量体を単離するために、さらなる精製工程が必要である。均質な組成物の製剤にはさらなる精製工程が必要となるため、かかる精製の必要性はP7005Hの商業的利用可能性を低下させる。
【0079】
本発明のrIVIG組成物の均質性の問題に取り組むために、本発明者らは一連の一本鎖ヒトFc融合ペプチドを開発した。
【0080】
P8001Zは、一本鎖ヒトFcを含む融合タンパク質であり、2つの直列型のヒトCH2-CH3 Fcドメインを含み、各CH2-CH3 FcドメインはヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含有し、そしてヒトコラーゲン21由来のGXYトリプレット反復配列及びNC1ドメインを含む。一本鎖Fcペプチドは2つのCH2-CH3 Fcドメイン間にフレキシブルリンカー(GGGGS)5を含み、熱力学的に好ましい分子内相互作用を可能にし、一本鎖の機能的Fcペプチドの形成を促進する。この分子内相互作用は、分子間ジスルフィド結合の形成を最小限に抑え、機能的一本鎖Fcペプチドの単一種の形成を最大にすることが期待される。GXYトリプレット反復配列はコラーゲンの三量体化を担い、3つのFc領域を一緒にすることが期待され、その各々において、フレキシブルリンカーによって連結された2つの直列型CH2-CH3 Fcドメインが相互作用し得る。したがって、P8001Zの生成物は、P7005H構築物の生成物よりも均質であると期待される。
【0081】
P8003Zは一本鎖ヒトIgGκまたは軽鎖定常領域(CL)、完全なIgG定常領域(CH1、CH2、及びCH3)を含む第1のFcドメインと、フレキシブルリンカー(好ましくは(G4S)5リンカー)を介して第1Fc領域のC末端に直列に連結された第2のFcドメイン(CH2及びCH3を含む)を含む融合タンパク質である。フレキシブルリンカーは、構築物の第1及び第2のFcドメインが分子内で相互作用する立体構造をとることを可能にする。第2のFcドメインのC末端は、コラーゲンGXYトリプレット反復配列及びNC1ドメイン(三量体化ドメイン)に直列に接続される。P8001Zと同様に、コラーゲンGXY反復配列及びNC1ドメインは、3つの一本鎖Fcペプチドをまとめる内因性の三量体化活性を示し、それぞれ第1及び第2のCH2-CH3 Fcドメインが相互作用し得る立体構造で、フレキシブルリンカーを介して第2のCH2-CH3 Fcドメインに接続される、第1のCH2-CH3 Fcドメインを含んでいる。CLドメインがCH1ドメインとヘテロ二量体化することも言及されるべきである。CL/CH1ドメインは、補体成分を除去する役割を果たすことで、多くの自己免疫疾患に存在する補体免疫反応をさらに減らすことができる。
【0082】
P8020Zは、N末端部分のヒトマンノース結合タンパク質(MBP)と、P8003Zのものと同様の一本鎖Fcペプチドとから成る融合タンパク質であり、N末端からC末端の方向に、CL-CH1-CH2-CH3-フレキシブルリンカー-CH2-CH3を含有している。ヒトMBPのN末端部分は、内因性の三量体化能力を有し、融合タンパク質のオリゴマー化を担っている。P8003Zの設計とは対照的に、P8020Zのオリゴマー化ドメインは融合タンパク質のN末端に位置し、Ig Fc領域は天然の免疫グロブリン分子に見られるようにC末端に位置する。融合タンパク質のC末端に位置する一本鎖Fcペプチドを有するP8020Zの構造は、Fc受容体とのその相互作用のための規則抗体の配向を厳密に模倣すると期待される。
【0083】
上記の組換えrIVIG構築物を作製し、293T細胞で発現させ、そして産生されたタンパク質は、当技術分野で公知の精製技術を用いて精製することができる。
【0084】
rIVIGタンパク質が、主に六量体Fc構造を含むように適切に折り畳まれているかどうかを決定するために、精製タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイリングによって解析する。
図2は各タンパク質産物のSECプロファイルを示す。
【0085】
これらのrIVIGタンパク質のFcγR結合活性を分析し、精製した単量体ヒトIgG1抗体のそれと比較した(
図3)。
【0086】
P8003Z及びP8020Z構築物は、マウスコラーゲン誘導性関節炎モデルを用いた治療効果についても検討した。
【0087】
マウスは完全フロイントアジュバント(CFA)を含むウシII型コラーゲンで初回免疫し、21日目に不完全フロイントアジュバント(IFA)を含む同じコラーゲンで追加免疫した。P8020Zは18日目に腹腔内投与した。炎症を起こした足は、26日目から評価した。
図4は、P8020で処置したマウスが、PBSで処置した対照マウスより非常に減弱した炎症を示したことを示す。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、様々な実施形態における本発明の実施を例示するが、実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。その他の実施形態は、本明細書及び実施例の考察から当業者に明らかとなるであろう。
実施例1:
P7005Hの構成
P7005Hタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で395アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpMEhFcN1-7005により発現する。N末端から、ヒトIgG1ヒンジ、CH2及びCH3領域から成るコード産物は、ヒトCD40Lの細胞外ドメインに連結される。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(375アミノ酸)のコード配列である(配列番号1)。
P7005Hのタンパク質配列(375アミノ酸)(配列番号1):
【化1】
表2
【表2】
【0089】
実施例2:
P8001Zの構成
P8001Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で539アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V1により発現する。コード産物は、N末端からヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含む第1のCH2-CH3 Fcドメイン、続いて5回反復配列のG4Sリンカー(GGGGS)
5を含むフレキシブルリンカー、続いてヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含む第2のCH2-CH3 Fcドメイン、続いてヒトコラーゲン21 A1に由来するGXYトリプレットの11コピー及びNC1ドメイン((GXY)11-NC1)から成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(519アミノ酸)のコード配列である(配列番号2)。
P8001Zのタンパク質配列(519アミノ酸)(配列番号2):
【化2】
【化3】
表3
【表3】
【0090】
実施例3:
P8002Zの構成
P8002Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で529アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V2により発現する。コード産物は、N末端からヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含む第1のCH2-CH3 Fcドメイン、続いて3回反復配列のG4Sリンカー(GGGGS)
3、続いてヒトIgG1重鎖CH2及びCH3領域を含む第2のCH2-CH3 Fcドメイン、続いてGGGGSリンカー、続いてヒトコラーゲン21 A1に由来するGXYトリプレットの11コピー及びNC1ドメイン((GXY)11-NC1)から成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(509アミノ酸)のコード配列である(配列番号3)。
P8002Zのタンパク質配列(509アミノ酸)(配列番号3):
【化4】
表4
【表4】
【0091】
実施例4:
P8003Zの構成
P8003Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で788アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V3により発現する。コード産物は、N末端からヒトκ軽鎖定常領域(CL)、続いてG4Sリンカーの2回反復配列(G4S)
2、続いてヒトIgG1重鎖定常領域を含むCH1-ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)、続いてG4Sリンカーの5回反復配列を含むフレキシブルリンカー(GGGGS)
5、続いてヒトIgG1重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン、続いてヒトコラーゲン21 A1に由来するGXYトリプレットの11コピー及びNC1ドメイン((GXY)11-NC1)から成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(768アミノ酸)の配列である(配列番号4)。
P8003Zのタンパク質配列(768アミノ酸)(配列番号4):
【化5】
表5
【表5】
【0092】
実施例5:
P8004Zの構成
P8004Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で569アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V4により発現する。コード産物は、N末端からヒトIgG1重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む第1のヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン(ヒンジ-CH2-CH3)、続いてフレキシブルリンカー(GGGGS)
5、続いてヒトIgG1重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む第2のヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン、続いてヒトコラーゲン21 A1に由来するGXYトリプレットの11コピー及びNC1ドメイン(GXY11-NC1)から成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(549アミノ酸)のコード配列である(配列番号5)。
P8004Zのタンパク質配列(549アミノ酸)(配列番号5):
【化6】
表6
【表6】
【0093】
実施例6:
P8020Zの構成
P8020Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で816アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V20により発現する。コード産物はN末端から、ヒトマンノース結合タンパク質(hMBP)N末端ペプチド-hMBPコラーゲン三重らせんドメイン、続いてG4Sリンカーの3回反復配列(GGGGS)
3、続いてヒトκ軽鎖定常領域(CL)、続いてG4Sリンカーの2回反復配列(G4S)
2、続いてヒトIgG1重鎖定常領域を含む第1の CH1-ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)、続いてGGGGSリンカーの5回反復配列を含むフレキシブルリンカー(GGGGS)
5、続いてヒトIgG1重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインから成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(796アミノ酸)の配列である。
P8020Zのタンパク質配列(796アミノ酸)(配列番号6):
【化7】
表7
【表7】
【0094】
実施例7:
K8020Zの構成
K8020Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で822アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V40により発現する。コード産物は、N末端からイヌマンノース結合タンパク質(MBP)N末端ペプチド-イヌMBPコラーゲン三重らせんドメイン、続いてG4Sリンカーの3回反復配列(GGGGS)
3、続いてイヌκ軽鎖定常領域(CL)、続いてG4Sリンカーの2回反復配列(GGGGS)
2、続いてIgGサブクラスB重鎖定常領域を含むイヌCH1-ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)、続いてG4Sの5回反復配列を含むフレキシブルリンカー(GGGGS)
5、続いてイヌIgGサブクラスB重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むイヌヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインから成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(802アミノ酸)のコード配列である(配列番号7)。
K8020Zのタンパク質配列(802アミノ酸)(配列番号7):
【化8】
表8
【表8】
【0095】
実施例8:
K8003Zの構成
K8003Zタンパク質は、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子プロモーターの制御下で779アミノ酸のタンパク質をコードする、哺乳動物の発現プラスミドpHCM-rIVIG V42により発現する。コード産物は、N末端からイヌκ軽鎖定常領域(CL)、続いてG4Sリンカーの2回反復配列(GGGGS)
2、続いてIgGサブクラスB重鎖定常領域を含むイヌCH1-ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)、続いてG4Sの5回反復配列を含むフレキシブルリンカー(GGGGS)
5、続いてイヌIgGサブクラスB重鎖ヒンジ、CH2及びCH3領域を含むイヌヒンジ-CH2-CH3 Fcドメイン、続いてイヌコラーゲン21 A1に由来するGXYトリプレットの11コピー及びNC1ドメイン((GXY)11-NC1)から成る。以下は、産生系から生成された成熟タンパク質産物(779アミノ酸)の配列である(配列番号8)。
K8003Zのタンパク質配列(779アミノ酸)(配列番号8):
【化9】
表9
【表9】
【0096】
参考文献
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本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)2つのCH2-CH3 Fcドメインを含む一本鎖Fcペプチドと(b)オリゴマー化ペプチドドメインを含む、組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)ポリペプチド。
(項目2)
前記オリゴマー化ペプチドドメインが三量体化ドメインである、項目1に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目3)
前記2つのCH2-CH3 Fcドメインが、フレキシブルリンカーを介して連結されている、項目2に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目4)
前記フレキシブルリンカーがアミノ酸配列G-G-G-G-S(配列番号8)の2~6つの反復配列から成る、項目3に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目5)
前記フレキシブルリンカーがアミノ酸配列G-G-G-G-S(配列番号8)の5つの反復配列を含む、項目3に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目6)
前記三量体化ドメインのC末端が、前記一本鎖FcペプチドのN末端に連結されている、項目5に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目7)
前記オリゴマー化ペプチドドメインが、配列番号6のアミノ酸番号1~79を含む、項目6に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目8)
前記三量体化ドメインのN末端が、前記一本鎖FcペプチドのC末端に連結されている、項目5に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目9)
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号4のアミノ酸番号712~768を含む、項目8に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目10)
項目3~9に記載のrIVIGポリペプチドをコードする、ヌクレオチド分子。
(項目11)
項目10に記載のヌクレオチド配列を含む、組換えベクター。
(項目12)
項目11に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
(項目13)
細胞株は、α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している(FUT8
-/-
)、項目12に記載の組換え細胞。
(項目14)
組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む、免疫異常の治療のための組成物であって、前記rIVIGタンパク質は、主に三量体一本鎖Fcペプチドを含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む、前記組成物。
(項目15)
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号6のアミノ酸番号1~79を含む、項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記オリゴマー化ペプチドドメインが配列番号4のアミノ酸配列番号712~768を含む、項目14に記載の組成物。
(項目17)
前記組成物が主にホモ三量体Fc二量体を含む、項目14に記載の組成物。
(項目18)
前記rIVIGタンパク質が、配列番号6のアミノ酸組成を有する、項目14に記載の組成物。
(項目19)
前記rIVIGタンパク質が、配列番号4のアミノ酸組成を有する、項目14に記載の組成物。
(項目20)
前記rIVIGタンパク質がIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から成る群から選択されるアイソタイプのFc領域を含む、項目14~19に記載の組成物。
(項目21)
前記rIVIGタンパク質は主に非フコシル化されている、項目14~20に記載の組成物。
(項目22)
自己免疫疾患に罹患している患者を治療する方法であって、前記患者に組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む有効量の組成物を投与することを含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む、前記方法。
(項目23)
臓器移植を受けた患者の免疫拒絶反応を低減する方法であって、前記患者に組換え免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む有効量の組成物を投与することを含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含む、前記方法。
(項目24)
前記患者が難治性の免疫性血小板減少症を罹患している、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記rIVIGタンパク質が、配列番号4及び配列番号6から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目22~24のいずれかに記載される方法。
(項目26)
前記オリゴマー化ペプチドドメインは、配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、項目6に記載のrIVIGポリペプチド。
(項目27)
項目26に記載のrIVIGポリペプチドをコードする、ヌクレオチド分子。
(項目28)
項目27に記載のヌクレオチド配列を含む、組換えベクター。
(項目29)
項目28に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
(項目30)
細胞株は、α-1,6フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠損している(FUT8
-/-
)、項目29に記載の組換え細胞。
(項目31)
前記オリゴマーペプチドドメインが配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、項目13に記載の組成物。
(項目32)
前記rIVIGタンパク質がIgG A、IgG B、IgG C及びIgG Dから成る群から選択されるアイソタイプのFc領域を含む、項目31に記載の組成物。
(項目33)
前記rIVIGタンパク質が主に非フコシル化されている、項目31または32に記載の組成物。
(項目34)
自己免疫疾患に罹患しているヒト以外の哺乳動物を治療する方法であって、前記ヒト以外の哺乳動物に組換え静注用免疫グロブリン(rIVIG)タンパク質を含む有効量の組成物を投与することを含み、ここで前記rIVIGタンパク質は、主に三量体一本鎖Fc分子を含む組成物を提供するオリゴマー化ペプチドドメインを含み、及び前記rIVIGタンパク質は、同種のヒト以外の哺乳動物に由来するアミノ酸配列を含む、前記方法。
(項目35)
前記ヒト以外の哺乳動物はイヌであり、前記rIVIGタンパク質は配列番号7及び配列番号8から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記ヒト以外の哺乳動物はイヌであり、前記オリゴマー化ペプチドドメインは、配列番号7のアミノ酸番号1~72または配列番号8のアミノ酸番号721~779を含む、項目34に記載の組成物。
【配列表】