(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】水頭症の治療方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20220518BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M25/00 690
(21)【出願番号】P 2019116178
(22)【出願日】2019-06-24
(62)【分割の表示】P 2017542811の分割
【原出願日】2015-10-30
【審査請求日】2019-07-24
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517149726
【氏名又は名称】セレバスク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハイルマン,カール
(72)【発明者】
【氏名】マレック,アデル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】バンダリ,アヤン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】セリエ,ジェフリー,シー.
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,アモス,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,トーマス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ,ジョナサン,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】レザック,デイヴィッド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シウィンスキ,シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ティン,ジョーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】トジャノヴァ,ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】ヅィーグラー,アンドリュー
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0191168(US,A1)
【文献】特開2006-289086(JP,A)
【文献】米国特許第03894541(US,A)
【文献】米国特許第03492996(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療するためのシステムにおいて、
患者の静脈系を通して展開するように構成されたインプラントであって、近位部と、遠位固着機構を有する遠位部と、前記近位部と前記遠位部の1以上の遠位開口との間の流体連通を提供するルーメンとを具えるインプラントと、
患者の下錐体静脈洞とくも膜下腔との間に吻合を形成し、前記インプラントの遠位部がくも膜下腔に配置された状態で前記インプラントを前記吻合に配置するように構成された送達システムとを具え、前記インプラントが前記吻合に配置されたときに、前記インプラントのルーメンが、当該インプラントの近位部と前記患者のくも膜下腔との間に流体連通経路を提供し、
前記遠位固着機構は、前記インプラントの遠位部がくも膜下腔内に導入された後、折り畳まれた送達構成から拡張した展開構成に自己拡張することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記遠位固着機構は、前記くも膜下腔内に前記インプラントの遠位部を固定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遠位固着機構は、前記1以上の遠位開口を、前記くも膜下腔のクモ膜層から分離し、離し、および/または離れる方へ向けて維持するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
患者を治療するためのシステムにおいて、
患者の静脈系を通して展開するように構成されたインプラントであって、近位部と、遠位固着機構を有する遠位部と、前記近位部と前記遠位部の1以上の遠位開口との間の流体連通を提供するルーメンとを具えるインプラントと、
患者の下錐体静脈洞とくも膜下腔との間に吻合を形成し、前記インプラントの遠位部がくも膜下腔に配置された状態で前記インプラントを前記吻合に配置するように構成された送達システムとを具え、前記インプラントが前記吻合に配置されたときに、前記インプラントのルーメンが、当該インプラントの近位部と前記患者のくも膜下腔との間に流体連通経路を提供し、
前記送達システム
が、組織貫通遠位先端と、送達カテーテルルーメンと、当該送達カテーテルルーメンに通じる開遠位端とを有する送達カテーテルを備え、前記送達カテーテルルーメンは前記インプラントを前記吻合内に配備するために前記患者の静脈系の通路を通して搬送するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
前記組織貫通遠位先端がくも膜下腔内に遠位に前進しうる距離を制限するために、前記送達カテーテルの遠位部に連結された貫通止めをさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
患者を治療するためのシステムにおいて、
患者の静脈系を通して展開するように構成されたインプラントであって、近位部と、遠位固着機構を有する遠位部と、前記近位部と前記遠位部の1以上の遠位開口との間の流体連通を提供するルーメンとを具えるインプラントと、
患者の下錐体静脈洞とくも膜下腔との間に吻合を形成し、前記インプラントの遠位部がくも膜下腔に配置された状態で前記インプラントを前記吻合に配置するように構成された送達システムとを具え、前記インプラントが前記吻合に配置されたときに、前記インプラントのルーメンが、当該インプラントの近位部と前記患者のくも膜下腔との間に流体連通経路を提供し、
前記送達システム
が、組織貫通遠位先端と、送達カテーテルルーメンと、当該送達カテーテルルーメンに通じる開遠位端とを有する送達カテーテルを備え、前記送達カテーテルルーメンは前記インプラントを前記吻合内に配備するために前記患者の静脈系の通路を通して搬送するように構成され、
前記送達カテーテルが、くも膜下腔への前記組織貫通先端の軌跡を示すように配置および寸法決めされた複数のX線不透過性マーカをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
患者の下錐体静脈洞(IPS)に配備されるように構成されたインプラントにおいて、
前記IPSを介して前記患者の小脳橋(CP)角槽に導入されて配置されるように構成された遠位部と、
前記患者の静脈系内に配置されるか、そうでなければ患者の静脈系と連通するように構成される近位部と、
前記遠位部から近位部まで延びるルーメンとを備え、当該ルーメンは前記遠位部の1以上の開口と流体連通し、前記インプラントの遠位部がCP角槽内部に配置され、かつ前記インプラントの近位部が前記患者の静脈系に配置されるか、そうでなければ前記患者の静脈系に連通した状態で前記インプラントがIPSに配備されたときに、前記インプラントのルーメンが、当該インプラントの近位部と前記患者のくも膜下腔との間に流体連通経路を提供し、
前記インプラントの遠位部は、前記CP角槽に導入された後、折り畳まれた送達構成から拡張した展開構成へと自己拡張し、
前記インプラントの遠位部が、当該インプラントの遠位部を前記CP角槽内に固定するように構成された遠位固着機構を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項8】
前記遠位固着機構が、前記1つ以上の流体開口を、前記CP角槽のくも膜層から分離し、離し、および/または離れる方へ向けて維持するように構成される、請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
請求項7に記載のインプラントを含むシステムであって、前記システムは、静脈アクセスポイントを通して患者の体に前記インプラントを導入し、前記インプラントを前記IPSに誘導するように構成される送達システムをさらに備えるシステム。
【請求項10】
前記送達システムは、組織貫通遠位先端を有する送達カテーテルを備え、前記送達カテーテルは、送達カテーテルルーメンと、当該送達カテーテルルーメンと連通する開遠位端とを有し、前記送達カテーテルルーメンは、前記インプラントをIPSに配備するために搬送するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本出願は、2014年10月31日出願の米国仮出願第62/073,766号、2015年4月3日出願の第62/142,895号、2015年5月1日出願の第62/156,152号について、米国特許法第119条に基づく利益を主張する。前述の出願は、ここに、参照によりその全体が本出願に組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して、血管内アプローチにより、脳槽にアクセスし、脳脊髄液(CSF)を排出するシステムおよび方法(例えば、高い頭蓋内圧を緩和するため)に関する。特に、本開示は、水頭症、偽脳腫瘍および/または頭蓋内圧亢進の治療システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水頭症は、小児および大人の双方に影響を及ぼす、最も有名かつ重要な神経外科的状態のひとつである。「脳水腫」を意味する水頭症(Hydrocephalus)とは、脳内での異常なCSFの蓄積を指す。水頭症による過度な頭蓋内圧は、頭痛から神経機能障害、昏睡、死にまで及ぶいくつかの重要な症状につながる可能性がある。
【0004】
脳脊髄液は、脳および脊髄を含む神経系全体を浸す透明な、生理液である。脳室内に存在する脈絡叢の細胞が、CSFを産出する。正常な患者は、くも膜顆粒内の細胞が、脈絡叢内で産出されたCSFを再吸収する。くも膜顆粒は、脳の頭蓋内静脈ドレナージ系の表面に広がり、くも膜下腔内に存在するCSFを静脈系へ再吸収する。1日に約450mLから500mLのCSFが産出および再吸収されて、頭蓋区画内において約8から16cmH2Oの定常状態の体積および圧力を可能にしている。この再吸収経路は、その重要性から、生体恒常性の中枢神経系に対して「第三循環」と呼ばれている。
【0005】
水頭症は、CSF再吸収の機能障害から生じることが最も多いが、稀に産出過剰により生じる場合がある。再吸収の機能障害の状態は、交通性水頭症と呼ばれる。水頭症はまた、シルヴィウスの中脳水道などであるCSF経路のひとつの部分的または完全な閉塞の結果生じることがあり、閉塞性水頭症と呼ばれる状態を導く。
【0006】
くも膜下腔の頭蓋内圧および静脈系の血圧間の陽圧勾配が、くも膜顆粒を介したCSFの自然な吸収に寄与しうる。例えば、水頭症でない個人では、ICPは、約6cmH2Oから約20cmH2Oの範囲でありうる。ある形態の疾患で、ICPが20cmH2Oより低いことがあるが、20cmH2Oより高いICPが水頭症の病態であると考えられる。水頭症でない患者では、頭蓋洞および頸静脈球および静脈内の静脈圧は、約4cmH2Oから約11cmH2Oの範囲でありうるが、罹患患者では、わずかに高いことがある。例えば仰向けから直立するといった患者の姿勢の変化がICPおよび静脈圧に影響するが、ICPおよび静脈圧間の陽圧勾配は相対的に不変のままである。しかしながら、ICPより大きいものである静脈圧の瞬間的な増加により、例えば、咳、緊張またはバルサルバといったエピソード中に、この勾配が一時的に妨げられうる。
【0007】
正常圧水頭症(NPH)は、交通性水頭症の一形態である。NPH患者は、歩行障害、痴呆、尿失禁のうちの1つまたは複数の症状を典型的に示し、それが疾患の誤診を導くことがある。交通性水頭症の他の形態と異なり、NPH患者は、ICPの増加をほとんど示さないか全く示さないものでありうる。くも膜下腔内のCSFの増加量を受け入れるために、NPH患者のCSFで満たされた脳室は拡大していると考えられている。例えば、水頭症でない患者は、典型的に、約6cmH2Oから約20cmH2Oの範囲のICPを有する一方、NPH患者のICPは、約6cmH2Oから約27cmH2Oの範囲でありうる。NPHは、典型的に、日中は正常の頭蓋内圧で、夜間は断続的に増加する頭蓋内圧に関連しているということが示唆されてきた。
【0008】
高い頭蓋内圧によって特徴付けられる他の状態には、偽脳腫瘍(良性頭蓋内圧亢進)が含まれる。偽脳腫瘍の高いICPは、脳腫瘍ではないが脳腫瘍に似た症状を引き起こす。そうした症状とは、頭痛、耳鳴、めまい、視朦または視力喪失、および吐き気を含みうる。偽脳腫瘍は、20から40代の肥満の女性に最も多いが、全ての年齢層の患者に影響を及ぼしうる。
【0009】
交通性水頭症(およびある場合では偽脳腫瘍)の治療に関する先行技術は、60年以上前に医療機器設計が導入された、脳室腹腔短絡術(「VPS」または「VPシャント」設置)に依存する。VPS設置は、全身麻酔下で行われる侵襲的な外科的処置を伴い、典型的には2から4日間に及ぶ入院期間となる。該外科的処置は、典型的には、頭蓋骨の穿頭孔を通した、脳の側脳室前角におけるシリコーンカテーテルの設置を伴う。側室から出たカテーテルの遠位部はその後、頭皮下に配置される圧力または流量の調整バルブに接続される。その後、別の切開が、管留置カテーテル(tubing catheter)の遠位部が配置される腹腔内へ、腹部を介してなされる。その後カテーテル/バルブ組立体が、頸部から腹部まで皮下に埋め込まれる管留置カテーテルに接続される。
【0010】
VPS設置は、非常によく見られる神経外科的処置であり、米国では年間55,000から60,000のVPS設置が行われているとの見積もりである。VPシャントの設置は、典型的に、患者にとってはあまり痛みを感じず、外科医にとっては技術的に率直であるが、VPシャントは、治療患者における不成功率が高くなりやすい。VPシャント設置の合併症は、一年不成功率が約40%、報告されている二年シャント不成功率が50%という高さであることが知られている。よくある合併症には、カテーテル閉塞、感染、CSFのオーバードレナージおよび脳室内出血が含まれる。これら合併症のうち、大人における感染率が1.6%と16.7%との間で報告されていることから、感染が最も深刻なもののうちのひとつである。これらVPS不成功は、VPシャントシステムの一部または全体を修復/再配置するために「シャント再建」手術を必要とし、これら各再建手術は全身麻酔、術後感染の同様の危険性、初期VPS設置と同様の入院関連費用を伴うが、しかしながらシャント感染はしばしば、有意に多くの、例えば初期VPシャント設置費用よりも約3から5倍以上の費用がかかるということをもたらす。これら感染はしばしば、VPSの近位が外部に出されて、長期間の抗生物質治療が開始される、さらなる入院を必要とする。臨床医がVPS設置の候補となりうる患者を評価するとき、不成功率は、臨床医にとって不変の考慮事項である。初期VPシャント設置以降最初の4から5年の間に事実上確実であるVPシャント不成功の可能性を踏まえて、年齢、共存症の有無および患者固有の他の因子が熟考される。
【0011】
生物医学技術、器械使用、医療装置において大きく進歩しているにもかかわらず、1952年に導入されて以来基本のVPS設計とほとんど変化がない。
【発明の概要】
【0012】
開示される発明の実施形態は、正常圧水頭症を含む水頭症および/または高い頭蓋内圧の治療システムを含む。例となる実施形態において、上記システムは、患者の下錐体静脈洞(IPS)に配備されるように構成されたシャントが、上記IPSを経由して上記患者の小脳橋(CP)角槽へ導入されて固定されるように構成されて、該CP角槽が脳脊髄液(CSF)を含んでいる遠位部であって、1つまたは複数のCSF取り入れ開口を含むものである上記遠位部と、上記患者の頸静脈(JV)内かまたは頸静脈(JV)に対して近位に固定されるように構成された近位部と、上記遠位部から上記近位部まで延びる本体部であって、上記遠位部内の上記1つまたは複数のCSF取り入れ開口と上記近位部内に配置されるかまたはそうでなければ上記近位部に連結されるバルブとに通じるルーメンを、上記シャントが上記シャントの上記遠位部を上記CP角槽内に固定して上記シャントの上記近位部を上記JV内または上記JVに対して近位に固定するように上記IPS内に配備されるときに、CSFが上記1つまたは複数のCSF取り入れ開口、シャントのルーメンおよび上記バルブをそれぞれ通って上記CP角槽から上記JVに流れて、上記患者のくも膜下腔および静脈系間の正常差圧を維持するように備える上記本体部と、を備えるものである上記シャントを含む。上記例であるシステムはまた、組織貫通部材と、上記シャントおよび上記組織貫通部材を大腿静脈アクセスポイントを介して上記患者の体内に導入して、上記患者の体内において上記JVを介して上記IPSへ上記シャントおよび上記組織貫通部材を移動させるように構成される送達システムとを含む。上記シャントの上記近位部はまた、選択的に、上記患者の上大静脈(SVC)および右心房(RA)の交差部に対して近位に固定されるように構成されてもよい。
【0013】
様々な実施形態で、上記シャントのルーメンの長さおよび内径はそれぞれ、上記シャントが配備された後で、上記患者の上記CP角槽および上記静脈系間における正常差圧状態下で、上記シャントのルーメンを介して毎時約5mlのCSFから毎時約15mlのCSFである目標流速を達成するように寸法される。
【0014】
様々な実施形態で、上記バルブは、上記シャントが配備された後で、3mmHgから5mmHgの範囲の上記CP角槽およびJV間の差圧で開くように構成される。
【0015】
様々な実施形態で、上記シャントのルーメンは、0.02cm(0.008インチ)から0.03cm(0.012インチ)の範囲の内径を有する。
【0016】
一実施形態において、上記シャントの上記本体部は、上記シャントの上記遠位部および上記シャントの上記近位部間の少なくとも一部に延びて上記シャントのルーメンの内径の少なくとも一部を規定する内部高分子ライナーを備え、該ライナーは、タンパク質および/または細胞の付着を最小にするように選択された材料を含む。上記内部高分子ライナーは、例えば、HDPE、PET、PTFEおよびシリコーンのうちの1つまたは複数より作られうる。上記シャントの上記本体部は、複数の切り込み部を有するフレームを備え、該切り込み部は上記フレームの柔軟性を増すように構成されるものであって、上記フレームが上記シャントのルーメンを規定して該内部ライナーを受け入れるように構成される。上記シャントの上記本体部は、上記シャント本体に付される外部高分子(例えば、シリコーン)層を有し、上記外部高分子層は、上記シャントの上記本体において上記切り込み部を介して上記内部ライナーの外側表面に接着され、それによって上記内部ライナーを上記シャントに固定する。
【0017】
様々な実施形態で、上記組織貫通部材は、好ましくは、貫通するときに、くも膜組織物質の引裂きを最小にするように構成される。非限定的な例として、上記組織貫通部材は、斜面状またはクインケ状の先端構成を備えてよい。一実施形態で、上記組織貫通部材は、高周波エネルギーを用いて、上記患者の硬膜およびくも膜組織層を貫通するように構成されたスタイレットを備える。
【0018】
例となる実施形態で、上記送達システムは、送達カテーテルを含むものであって、上記組織貫通部材が上記送達カテーテルの組織貫通遠位先端を備え、上記送達カテーテルは、送達カテーテルルーメンと、上記送達カテーテルルーメンに通じる開遠位端とを有するものであって、上記送達カテーテルルーメンが、上記患者のIPSにおける上記シャントの配備に関して上記シャントを搬送するように構成される。任意に、上記送達カテーテルの遠位部に対して貫通止めを連結して、上記組織貫通遠位先端が上記患者のCP角槽へ遠位に前進しうる距離を制限してよい。上記送達カテーテルは、好ましくは、上記組織貫通先端を硬脳膜組織に対して30度から90度の範囲の角度での硬脳膜組織との接触に誘導する、上記IPS内で湾曲構成をとるように構成された遠位部を含む。
【0019】
非限定的な例として、上記送達カテーテルの上記遠位部は、拡張して上記送達カテーテルの上記遠位部に対して上記湾曲構成をとらせる、例えば可膨張バルーンである拡張可能要素または壁部を提供しうる。そうした実施形態では、上記バルーンは、上記IPS内で第1の拡張状態に膨張して、上記組織貫通先端を上記患者の硬膜組織層と係合させて、その後第2の拡張状態に膨張して、上記組織貫通先端に対して上記硬膜およびくも膜組織層をそれぞれ通って上記CP角槽へ貫通させるように構成されうる。上記送達カテーテルは、好ましくは、上記湾曲構成にあるときに、上記送達カテーテルの上記遠位部の位置および向きを示すように設けられて寸法される1つまたは複数のX線不透過性マーカを備える。
【0020】
例となる別の実施形態では、上記組織貫通部材は、組織貫通遠位先端を有する細長推進部材を備え、上記細長推進部材は、上記シャントの上記バルブ、ルーメンおよび遠位開口をそれぞれ通って延びるように構成されるものであって、上記細長推進部材は、上記組織貫通遠位先端が上記シャントのルーメンと通じる上記シャントの遠位開口から出て前進し、かつ、上記シャントの遠位開口内に後退しうるように上記シャントに対して移動可能であるため、上記組織貫通部材で上記シャントの上記遠位部の搬送をしながら、上記組織貫通遠位先端が上記IPSの硬脳膜組織壁およびくも膜組織層をそれぞれ通って上記CP角槽へ貫通するように上記細長推進部材を前進させることによって、上記シャントの上記遠位部が上記IPSから上記CP角槽へ前進しうる。任意に、貫通止めを上記細長推進部材の遠位部に連結して、上記組織貫通遠位先端が上記患者のCP角槽へ遠位に前進しうる距離を制限する。この実施形態の一実装では、上記シャント本体は、上記シャント本体の内壁から半径方向に内側に突出および/または延びる第1の係合部材を有し、上記細長推進部材は、上記細長推進部材が上記シャント本体内に配置されるときに該シャント内壁に対して半径方向に外側に突出および/または延びる第2の係合部材を有するため、上記第2の係合部材が上記第1の係合部材に係合して、それによって、上記組織貫通部材が上記CP角槽に前進しながら上記シャントの上記遠位部が上記組織貫通部材上を上記CP角槽へ前進する。送達カテーテルは、上記IPSにおける上記シャントの配備に関して、上記シャントおよび上記組織貫通部材をそれぞれ搬送するように構成されうる。
【0021】
様々な実施形態で、上記シャントの上記遠位部は、上記患者のCP角槽内に配備された後、折り畳まれた送達構成から拡張した展開構成に自己拡張する。好ましくは、上記シャントの上記遠位部は、自己拡張中に4mm以下で上記CP槽へ遠位に拡張するように構成される。
【0022】
例となる実施形態では、上記シャントの上記遠位部は、上記1つまたは複数のCSF取り入れ開口を上記CP角槽のくも膜層と分離し、別にし、および/または離れる方へ向けて維持するように、配備された上記シャントの上記遠位部を位置させるように構成される遠位固着機構を有する。同様に、上記シャントの上記近位部は、上記配備されたシャントの上記近位部を位置させ、それによって上記シャントの上記近位部に配置されるCSF流出部および/またはバルブ開口を上記JVの壁と分離し、別にし、および/または離れる方へ向けて維持するように構成される近位固着機構を有する。
【0023】
開示される発明の別の態様により、水頭症の治療に用いられるシャントの開通性の判断方法が本明細書で提供される。一実施形態では、該方法は、シャントの第1の端部が患者の脳脊髄液系(CSFS)と流体連通であって上記CSFSは脳脊髄液(CSF)を含み、かつ、上記シャントの第2の端部が上記患者の静脈もしくは他の体内管腔(body lumen)もしくは空洞内かまたは上記患者の静脈もしくは他の体内管腔もしくは空洞に対して近位に少なくとも部分的に配置されるように、上記患者の体内に上記シャントを配備することと、上記患者のCSFSに検出可能物質を導入することであって、上記検出可能物質が、上記CSF内を、上記シャントの上記第1の端部へおよび上記シャントのルーメン内にそれぞれに移動することとなるように導入することと、CSFが上記シャントを通って上記患者の上記静脈もしくは他の体内管腔もしくは空洞のそれぞれに流れているか否かを、上記患者に上記検出可能物質を導入した後10分から15分の範囲に、上記シャントの上記ルーメンにおける上記検出可能物質の存在を検出することによって検証することとを含む。
【0024】
一実施形態では、上記シャントの上記第1の端部は、上記患者の頭蓋内くも膜下腔内、例えば、上記患者の小脳橋(CP)角槽内に少なくとも部分的に配置される。一実施形態では、上記シャントの上記第2の端部は、上記患者の頸静脈内または上記患者の頸静脈の近位に少なくとも部分的に配置される。あるいは、上記シャントの上記第2の端部は、上記患者の上大静脈および右心房の交差部内または上記患者の上大静脈および右心房の交差部の近位に少なくとも部分的に配置されてよい。一実施形態では、上記検出可能物質は、上記患者の腰椎の包膜嚢(lumbar thecal sac)への注射によって、または、上記患者の頭蓋骨内の硬膜下腔にアクセスすることによって、上記患者のCSFSに導入する。様々な実施形態では、上記シャントの上記ルーメン内の上記検出可能物質の存在は、画像処理システムを用いて検出され、この場合、例えば上記検出可能物質はヨード造影剤を含む。
【0025】
一実施形態では、上記検出可能物質は、放射性または中性子放射化された微小球を含み、上記シャントの上記第2の端部に設けられる上記CSF流出部またはバルブから流出する該微小球の存在が、上記患者から採取された静脈血液サンプルまたは肺組織サンプルから検出される。上記微小球は、好ましくは、0.1mmから2mmの範囲の直径を有し、様々な時点での上記患者の静脈または肺組織のサンプリングを経て得られる微小球数は、上記シャントを通るCSFの流量およびCSFSへ導入される微小球数に対応するかそうでなければ上記シャントを通るCSFの流量およびCSFSへ導入される微小球数を反映する。
【0026】
上記患者の静脈血液サンプルは、上記シャントの配備に関して用いられる誘導または送達カテーテルから得られうる。上記方法は、上記患者の頭蓋内圧を測定することをさらに含む。
【0027】
実施形態の他のさらなる態様および特徴は、添付の図面を考慮して、続く詳細な説明から明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図2は、ヒト患者の頭部の一部の断面図である。
【
図3】
図3Aは、開示される発明の実施形態による配備された血管内シャントの断面図である。
図3Bは、開示される発明の実施形態による送達組立体の側面図である。
【
図4】
図4A-Dは、開示される発明の実施形態による血管内シャントの配備の断面図である。
【
図5】
図5A-Jは、開示される発明の別の実施形態による血管内シャントの配備の側面および断面図である。
【
図6】
図6は、開示される発明の実施形態による血管内シャントの断面図である。
図6A-Tは、開示される発明の実施形態による
図6の血管内シャントの特徴の側面および断面図である。
【
図7】
図7は、開示される発明の実施形態による血管内シャントおよびカテーテルのインタフェースの断面図である。
【
図8】
図8は、開示される発明の実施形態による血管内シャントの断面図である。
【
図9】
図9は、開示される発明の別の実施形態による血管内シャントの断面図である。
【
図10】
図10は、開示される発明の実施形態による送達カテーテルの断面図である。
【
図11】
図11A-Cは、開示される発明の実施形態による、実験データを含む、血管内および/またはカテーテルの遠位部の断面図である。
【
図12】
図12は、開示される発明の実施形態による配備された血管内シャントおよび/または導管の断面図である。
【
図13】
図13A-Cは、先行技術である自己拡張するステントグラフトの側面図である。
【
図14】
図14A-Hは、開示される発明のさらに別の実施形態による導管および血管内シャントの配備の側面および断面図である。
【
図15】
図15A-Dは、開示される発明の一実施形態による血管内シャントの配備の断面および側面図である。
【
図16】
図16は、開示される発明の別の実施形態による配備された血管内シャントの側面図である。
【
図17】
図17A-Bは、開示される発明の一実施形態による湾曲構成を有する血管内シャントの断面図である。
【
図18】
図18A-Bは、開示される発明の別の実施形態による選択的溝を有する血管内シャントの断面図である。
【
図19】
図19A-Bは、開示される発明のさらに別の実施形態による細長部材を有する血管内シャントの断面図である。
【
図20】
図20A-Fは、開示される発明の実施形態によるエンドキャップおよび安定化部材を有する血管内シャントの送達組立体の断面図である。
【
図21】
図21A-Eは、開示される発明の実施形態による偏向要素および安定化部材を有する別の血管内シャントの送達組立体の断面図である。
【
図22】
図22は、開示される発明の一実施形態による配備された血管内シャントの側面図である。
【
図23】
図23A-Eは、開示される発明の別の実施形態による配備された血管内シャントの側面および断面図である。
【
図24】
図24A-Eは、開示される発明の他の実施形態による配備された血管内シャントの側面図である。
【
図25】
図25A-Gは、開示される発明のさらに別の実施形態による配備された血管内シャントの側面および断面図である。
【
図26】
図26A-Gは、開示される発明の別の実施形態による配備された血管内シャントの側面および断面図である。
【
図27】
図27A-Eは、開示される発明の別の実施形態による配備された血管内シャントの側面および断面図である。
【
図28】
図28は、開示される発明の一実施形態による配備された血管内シャントの側面図である。
【
図29】
図29A-Gは、開示される発明の
図12および
図14AからHの実施形態により構成されて埋め込まれたシャントの代替となる実施形態の側面および断面図である。
【
図30】
図30A-Fは、開示される発明の別の実施形態による配備された血管内シャントの側面および断面図である。
【
図31】
図31は、開示される発明の
図22の実施形態により構成されて埋め込まれたシャントの、代替となる実施形態の側面図である。
【
図32】
図32は、開示される発明の
図21Eの実施形態により構成されて埋め込まれたシャントの、代替となる実施形態の側面図である。
【
図33】
図33A-Cは、開示される発明の実施形態による手術用器具および血管内シャントのインタフェースの断面図である。
【
図34】
図34A-Bは、開示される発明の別の実施形態による血管内シャントの断面図である。
【
図35】
図35は、開示される発明の実施形態による血管内シャントの送達組立体の貫通構成要素を試験するためのシステムの斜視図である。
【
図39】
図39は、開示される発明の実施形態による実験データの表である。
【
図40】
図40は、開示される発明による埋め込まれたシャントの開通性を評価する、例である方法の概略フロー図である。
【
図41】
図41は、開示される発明による埋め込まれたシャントの開通性を評価する、別の例である方法の概略フロー図である。
【
図42】
図42A-Bは、開示される発明の実施形態による配備された血管内シャントの断面図である。
【
図43】
図43A-Dは、開示される発明の一実施形態による送達カテーテルの斜視、側面および断面図である。
【
図45】
図45A-Dは、開示される発明の一実施形態により構成された穿孔要素の側面および断面図である。
【
図46】
図46A-Gは、開示される発明の別の実施形態により構成された穿孔要素の側面および断面図である。
【
図47】
図47A-Dは、開示される発明の様々な実施形態により構成された拡張可能なバルーンの斜視、側面および断面図である。
【
図48】
図48A-Dは、開示される発明の様々な実施形態により構成された拡張可能なバルーンの斜視、側面および断面図である。
【
図49】
図49A-Dは、開示される発明の様々な実施形態により構成された拡張可能なバルーンの斜視、側面および断面図である。
【
図50】
図50A-Bは、開示される発明の様々な実施形態により構成された拡張可能なバルーンの斜視、側面および断面図である。
【
図51】
図51A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成された穿孔要素の斜視、側面および断面図である。
【
図52】
図52A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成された穿孔要素の斜視、側面および断面図である。
【
図53】
図53A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成された穿孔要素の斜視、側面および断面図である。
【
図54】
図54A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成された穿孔要素の斜視、側面および断面図である。
【
図55】
図55A-Dは、開示される発明の一実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みの斜視、側面および断面図である。
【
図56】
図56A-Bは、開示される発明の様々な実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みのパターンの斜視および側面図である。
【
図57】
図57A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みのパターンの斜視および側面図である。
【
図58】
図58A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みのパターンの斜視および側面図である。
【
図59】
図59A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みのパターンの斜視および側面図である。
【
図60】
図60A-Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成されたシャントの細長本体内における切り込みのパターンの斜視および側面図である。
【
図61】
図61A-Dは、開示される発明の一実施形態により構成された穿孔要素のカバーを有するシャントの、代替である実施形態の側面および断面図である。
【
図62】
図62A-Dは、開示される発明の実施形態による、シャントの送達中に穿孔要素を覆うためのシャトル要素の断面図である。
【
図63】
図63A-Gは、開示される発明のさらに別の実施形態による血管内シャントの斜視および断面図である。
【
図64】
図64A-Cは、開示される発明の実施形態による血管内シャントの遠位固着機構の断面図である。
【
図65】
図65A-Eは、開示される発明の別の実施形態による送達カテーテルの斜視、側面および断面図である。
【
図66】
図66は、開示される発明の一実施形態によるガイドワイヤの斜視図である。
【
図67】
図67A-Dは、開示される発明の別の実施形態による送達カテーテルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下で規定する用語に関して、特許請求の範囲または本明細書中の他の箇所で異なる規定がなされていなければ、これら規定が適用されるであろう。
【0030】
全ての数値は、本明細書において、明確に示されるか否かにかかわらず、用語「約」によって変形されるものとする。用語「約」は概して、当業者が、列挙された値と同等(例えば、同じ機能または結果を有する)と考えるであろう数の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有意な数字に丸めた数を含みうる。
【0031】
エンドポイントでの数字範囲の列挙には、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5が含まれる)。
【0032】
この明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、明確に別を指示する内容がなければ、単数形である“a”、“an”および“the”は複数の指示対象を含む。この明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語“or(または)”は概して、明確に別を指示する内容がなければ、“and/or(および/または)”を含む意味で用いられる。
【0033】
以下に、様々な実施形態が、図面を参照して説明される。図面は、必ずしも縮尺を合わせて描かれているものではなく、選ばれた要素の相対的な縮尺が、明確のために誇張されていることがあり、かつ、類似の構造または機能の要素は、図面を通して同様の参照符号により表される。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることを意図しているにすぎず、発明の網羅的な説明または添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定される発明の範囲の限定を意図していないことを理解されたい。さらに、説明した実施形態は、示した全ての態様または利点を必ずしも有しない。特定の実施形態と組み合わせて説明された態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように説明されていなかったとしてもその他の実施形態において実施可能である。
【0034】
本明細書での、例えば血管内シャントまたは血管内アプローチなどである用語「血管内」への言及は、概して、大規模な切開や開腹処置なしに、小規模なアクセスデバイス(例えば、針または導入シース)による患者の脈管構造への導入ならびに患者の脈管構造(例えば、頭蓋内静脈洞)内または該脈管構造周辺に配置される標的処置位置へ様々なカテーテル、シャントおよび本明細書で説明される他のシステムの要素を経皮的に誘導するために脈管構造を用いるために構成された最小限に侵襲的な装置、システムおよび処置を指す。埋め込みおよび/または配備という用語ならびに埋め込まれたおよび/または配備されたという用語は、本明細書において交換可能に用いられることを認識されたい。加えて、部材、要素という用語が、本明細書において交換可能である。
【0035】
図1は、ヒト患者の頭部100を示す概略図である。患者頭部の各側内で、下錐体静脈洞(IPS)102が、海綿静脈洞(CS)104を頸静脈106および/または頸静脈球108と接続する。明確のため、本明細書において略語“IPS”は、概して下錐体静脈洞、特に下錐体静脈洞の内部空間(または管腔)を指すために用いる。IPS102は、頸静脈106への静脈血のドレナージを容易にする。ある患者は、IPS102と頸静脈106との接合が頸静脈球108内で生じる。しかしながら、他の患者では、該接合が頸静脈106内の他の場所で生じることがある。さらに、
図1に示すIPS102は、単一の洞の通路であるが、ある患者においては、IPSは、CSを頸静脈106(図示せず)および/または頸静脈球108と接続する分離チャネルの叢であることがある。
【0036】
開示する発明の実施形態は、CSFで満たされた小脳橋(CP)角槽138にアクセスするためのIPS102内の標的貫通部位に関して説明し、CSFがくも膜下腔116から頸静脈球108、頸静脈106および/または上大静脈-右心房接合部105(
図1、2および42B)へ流れる導管を提供する。本明細書で説明される送達組立体およびシャントは、患者の静脈アクセス位置を介して、IPS102内の標的貫通部位にアクセス可能である。本明細書で説明される送達組立体およびシャントは、標的部位におけるシャントの送達および埋め込みのために、硬脳膜IPS壁114およびくも膜層115を貫通して、上錐体静脈洞(SPS)122(
図1および2)内からCP角槽138にアクセスすることができる。硬脳膜IPS壁114は、硬膜IPS壁114、または単にIPS壁114とも称する。SPSは、S状静脈洞(頸静脈球108に対して遠位に位置する)から海綿静脈洞104を接続する小径静脈洞である(
図1)。また、本明細書で説明される送達組立体およびシャントは、上記標的部位におけるシャントの埋め込みのために、海綿静脈洞104の上方部または蓋に吻合(図示せず)が生成されて、
図1に示すCSFで満たされた鞍上槽148にアクセスすることが可能であるように、IPS102を通って海綿静脈洞104へ前進することが可能である。標的部位へアクセスする貫通、シャントの配備および埋め込みが、くも膜下腔内のCSFにアクセスするSPSの管腔から生じるか、海綿静脈洞から生じるかにかかわらず、本明細書で説明される発明の実施形態は、CSFが、くも膜下腔から、頸静脈球108、頸静脈106および/または上大静脈-右心房接合部105へ流れる導管を提供する。
【0037】
図2は、IPS102、頸静脈106および頸静脈球108を含む頭部100の一部の断面図を示す。さらに、
図2には、脳底動脈110、脳幹112、軟膜112aおよびIPS壁114もまた示す。IPSは、頸静脈への脳静脈血のドレナージを容易にする相対的に小径の頭蓋内静脈洞であって、IPSは、それを血液が流れる中空の管腔を作る、
図2に示すIPS壁114の一部においては典型的には約0.9mmから1.1mmの厚さの硬脳膜である円筒状層により形成される。
図2の断面図においては、中空の管腔のIPSは、同様に硬脳膜から成る上方IPS壁114および下方IPS壁117間に存在するものであって、IPS自体は、
図2のIPS壁117下の斜台の骨(図示せず)内の骨溝またはチャネル内に位置する。
【0038】
図2を示した平面に対して直角であるIPS102の断面は、IPS102を形成する硬脳膜の円筒状層が、その円周のうちの約270度を骨に囲まれ、IPS円周の残りの部分(すなわち、
図2に示すIPS壁114)がくも膜物質115により覆われてCP角槽138に面しているということを示すだろう。くも膜115(本明細書ではくも膜組織層またはくも膜層とも称する)は、繊細かつ無血管の層であり、典型的には約0.05mmから0.15mmの厚さで、IPS壁114の外側を含む硬脳膜と直接接触するように位置するものであって、くも膜層115は、CSFで満たされたくも膜下腔116(例えば、CP角槽138)によって脳幹112を囲む軟膜から分離される。IPS壁114と対向するIPS102の下方部は、斜台の骨(図示せず)内のチャネルに位置する、硬脳膜で形成されたIPS壁117である。
【0039】
開示される発明の実施形態に関して、方法および装置は、IPS壁の硬膜114を貫通して、CSFで満たされたくも膜下腔116(例えば、CP角槽138)に到達するまでくも膜層115の貫通を継続するように、中空のIPS102内からの穿孔または貫通による血管内アプローチを介して吻合を作るように構成されることを認識されたい。IPS壁114を覆うくも膜物質115が存在しているが、簡単のため、特定の図面には示していないということを認識されたい。
【0040】
IPS102の直径d
1は、約3mmであるが、約1mmから約6mmの範囲を取ることがある。
図2に示すように、IPS102と頸静脈球108および/または頸静脈106との間の接合118において、IPS102の直径d
2は狭くなることがある。例えば、d
2は約2mmであるが、約0.5mm程度に小さいことがある。頸静脈106を伴う接合118から海綿静脈洞104(
図1に示す)までのIPS102の長さは、約3.5cmから4cmの間の範囲である。
【0041】
図1に示すように、大部分の患者は、2つのIPS102および2つの頸静脈106を有する(左方および右方)。ごくわずかな割合の患者(例えば、1%未満)では、一方のIPSと対応する頸静脈との間に接続がない。しかしながら、任意の所与の患者で、左右のIPS双方で、対応する頸静脈への接続がないということはほとんど考えられない。
【0042】
くも膜下腔は、そこにCSFを貯留する、軟膜およびくも膜層間の分離を自然に生じている。典型的に、CSFは、大脳半球にわたるくも膜下腔に入り、その後くも膜顆粒により静脈系に入る。
図2に示すくも膜下腔116が、CSF貯留の機能を果たす小脳橋(CP)角槽138に相当する。水頭症患者においては、例えば適切に機能するくも膜顆粒が患者に不足していると、CP角槽138(他の槽に加えて)内でCSFの増加が発生する可能性がある。過剰なCSFは除去しなければ、結果として過剰になった頭蓋内圧が、例えば頭痛、神経機能障害、昏睡および死をも含む症状を導くことがある。
【0043】
図3Aは、開示される発明の実施形態による、IPS102に埋め込まれた、例である血管内シャント200を示す。シャント200は、患者の頭蓋骨への穿孔、全身麻酔または他の開腹手術技術を必要とすることなく、針穴(例えば、大腿または頸静脈において)を介して、体の静脈系に挿入されるカテーテルを経由して経皮的に患者に送達されて埋め込まれる。シャント200は、近位部204、細長本体203、遠位部202およびその間に延びる内部ルーメン207を有する管状構成を含む。シャント200が、患者の標的部位(例えば、下錐体静脈洞)に埋め込まれる場合、シャント200の本体203がIPS102内に配置され、近位部204が、少なくとも部分的に頸静脈球108および/または頸静脈106内に配置されるように、シャントの遠位部202が、CSFで満たされたCP角槽138にアクセスして、該CP角槽138内に少なくとも部分的に配置される。CSFが、シャント200のルーメン207を通って、くも膜下腔116から静脈系(例えば、頸静脈106)へ排出されるように、埋め込まれたシャント200は、CP角槽138と頸静脈球108および/または頸静脈106との間に流体連通をもたらす。シャント200が標的部位に配備されると、CSFが遠位取り入れ開口251(
図6)に入り、ルーメン207を通って流れて、シャント200の近位開口205(
図6)から出る。
【0044】
シャント200は、くも膜下腔116および静脈系(例えば、頸静脈106)間の好適な圧力勾配を利用してルーメン207を介してCSFを押し流す。水頭症でない患者では、くも膜下腔116(例えば、CP角槽)の頭蓋内圧および静脈系(例えば、IPSまたは頸静脈)の血圧間の正常な差圧は、約5から12cmH2Oであるが、水頭症患者では、くも膜下腔および静脈系間のこの差圧が、有意に高いことがある。シャント200が配備されて埋め込まれると、CP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へのCSFの一方向の流れを容易にして、正常に機能するくも膜顆粒がCSFを静脈系へ排出する方法と同様に、CSFが静脈の循環によって運び出される。シャント200は、本明細書で説明する1つまたは複数の一方向バルブまたは他の流量調整機構により、内部ルーメン207を通ってくも膜下腔116へ入る静脈血の逆流を防ぐ。シャント200は、CSFを大脳静脈系へ方向付けることによるCSFのより生理的なドレナージであって、水頭症でない人々においては自然に生じるプロセスを可能にする。このように、くも膜下腔116内の過剰なCSFによって生じる圧が緩和されて、それによって水頭症に起因する患者の症状を、改善またはなくすことが可能である。シャント200はまた、シャントルーメン207を通って流れる液体を調整するように構成される流量調整機構209を含みうる。
【0045】
IPS102は、水頭症を治療するための血管内シャントの配備に関して潜在的に好適である他の場所と比較して、シャント200の長期的な安定性を解剖学的に支持する。特に、IPS102の比較的長い長さと狭い径(他の静脈洞と比べて)が、シャント200に対して自然のハウジングとなる。IPS円周の約3分の2を囲む斜台の骨の溝状部によって提供される土台が、シャント200の長期的な安定性をさらに支持し、本明細書で開示される送達システムがシャント埋め込み処置中に活用可能である安定した台をもたらす。例えばCP角槽138である、CSFで満たされた確立した槽への近接性が、他の血管内短絡化技術と比較して好ましい埋め込み場所としてのIPS102をさらに支持する。さらに、例えば矢状静脈洞、S状静脈洞、直静脈洞および横静脈洞であるより大きな径の硬膜静脈洞とは異なり、IPS102の役割は、頭蓋内の静脈血循環体系全体の中で比較的重要でないため、シャント200設置によるIPS102の閉塞が患者にとっての危険性を表すことは、皆無かほとんどない。
【0046】
接合118から頸静脈球108および/または頸静脈106へ延びる、配備されたシャント200の近位部204は、1mmから5mm(例えば、2から3mm)の範囲でありうるか、または、接合118から頸静脈球108および/または頸静脈106へ延びるように構成されたその他の好適な長さでありうる。配備されたシャント200の近位部204は、頸静脈球108に隣接して配置される。頸静脈球108および/または頸静脈106内に配置されるシャント200の近位部204周辺に流れる静脈血の循環が、近位部204を絶えず穏やかに攪拌し、シャント200の近位部204において血管内皮細胞の成長とルーメン207の開口205の詰まりとを最小限にし、妨げ、または回避する。頸静脈106内の静脈血の流量は、より大きな径の硬膜静脈洞(すなわち、矢状、S状、直、横の)の血流量よりも有意に大きいものでありえ、開示される実施形態の長期的なシャントの開通性を支持する。
【0047】
あるいは、
図42AからBに示すように、開示される発明の1つまたは複数の実施形態では、シャント200の近位部204は、頸静脈106および/または頸静脈球108から上大静脈-右心房接合部105へさらに延びる。そうした実施形態では、埋め込まれたシャント200は、CP角槽138からIPS102および頸静脈106を通って心臓109の右心房107へ延びるように構成され(
図42A)、特にシャント200のルーメン207と通じる近位開口205を有する近位部204および/またはバルブ209が、右心房107まで延びることを防止または回避しながら上大静脈101と心臓109の右心房107との間の接合部105に配置される(
図42B)。あるいは、または加えて、近位部204が上大静脈-右心房接合部105へさらに延びるように、シャント200は、頸静脈106および/または頸静脈球108内に配置されたシャント200の近位部204に連結する管状延長部204’(例えば、シリコーンまたは他の生体適合性材料のカテーテル等)を含むことが可能である。この実施形態では、配備されたシャント200の近位部204は、患者の上大静脈および右心房の交差部内またはその近位に少なくとも部分的に配置される。そうした実施形態では、シャント200の延びた近位部204、204’は、上大静脈-右心房接合部105に近い乱流の血流を利用して、シャント200の延びた近位部204、204’の開通性を維持して詰まり(例えば、血管内皮細胞の成長による)を防止する。この実施形態では、バルブ209を、上大静脈-右心房接合部105内の延びた近位部204、204’内に配置することが可能である。
【0048】
埋め込まれたシャント200は、例えばシャント200の直径がIPS102の直径よりも小さい場合、IPS102を閉塞しえないため、静脈血流は、IPS102を通って頸静脈106へ入り続ける。あるいは、埋め込まれたシャント200がIPS102を閉塞して、海綿静脈洞から頸静脈106への静脈血流を阻害しうる。しかしながら、外科的処置による結果かまたは血栓形成による結果かにかかわらず、閉塞したIPSは典型的に、患者の静脈循環機能への影響を有さないということが観測されている。
【0049】
図3Bは、開示される発明の実施形態に基づいて構成される、シャント200を患者の標的部位に送達するための送達組立体300の側面図である。
送達組立体300は、送達組立体300と着脱可能に連結するシャント200を含む。送達組立体300およびシャント200は、好適な生体適合性材料より成りうる。送達組立体300は、脈管構造の遠隔位置に到達するように寸法され、シャント200を経皮的に標的位置(例えば、下錐体静脈洞)に送達するように構成される。送達組立体300は、外部管状部材320(すなわち、誘導カテーテル)と、外部管状部材320内に同軸上に配置され、かつ、外部管状部材320に対して移動可能である内部管状部材304(すなわち、送達カテーテル/マイクロカテーテル)とを有する管状部材インタフェースを含む。送達組立体300は、誘導カテーテル320および/または送達カテーテル304内に同軸上に配置されるガイドワイヤ302を含みうる。ガイドワイヤ302は、直径が例えば0.035インチ(0.889mm)とすることが可能である。送達組立体300は、ガイドワイヤ302に加えて、送達カテーテル304内に配置される送達ガイドワイヤ308を含みうる。送達ガイドワイヤ308は、ガイドワイヤ302と比べて小さい直径(例えば、約0.010インチ(0.254mm)から0.018インチ(0.4572mm)を有する。
【0050】
誘導カテーテル320、送達カテーテル304およびガイドワイヤ302/308は、好適な生体適合性材料から形成されうるものであって、画像処理目的の標識(例えば、X線不透過性材料より成るマーカ)を含みうる。また、送達カテーテル304は、シャント200の配備中に、IPS102内のカテーテル304の一時的な固着を許容する、カテーテル本体に沿って配置される1つまたは複数の固着機構を含みうる。固着機構の構成および駆動は、以下でさらに詳細に説明されるシャント200の固着機構と同様でありうる。例えば、送達カテーテル304の固着機構は、ガイドワイヤを用いて駆動(例えば、IPS102内での係合および離脱)されうる。
【0051】
X線検査下で遠位部の位置の観測を可能にする、例えば誘導カテーテル320の遠位部324における1つまたは複数のX線不透過性マーカ帯13ならびにガイドワイヤおよび/または流体アクセスのためのルーアー(Luer)組立体17である、送達組立体300の公知でしばしば必要である様々なアクセサリを、
図3Bに示す。
【0052】
送達組立体300は、送達カテーテル304および/または誘導カテーテル320および/またはシャント200内に同軸上に配置される、組織貫通要素306を含みうる。組織貫通要素306は、シャント200の実装のために、IPS壁114およびくも膜層115に穿孔してCP角槽138にアクセスするように構成される。あるいは、シャント200は、シャント200’の遠位部202上に組織貫通部材250を含めば(例えば、
図5CからIおよび
図14FからH)、シャント200’内に組み込まれた組織貫通部材250が、IPS壁114およびくも膜層115に穿孔するように構成されるため、送達組立体300に組織貫通要素306は必要ない。(簡単のため、本明細書に開示されて説明されるシャントの様々な実施形態は、符号200または200’として与えられるが、該実施形態は、ある態様および特徴では互いに異なりうる。)
【0053】
図4Aから4Dは、開示される発明の実施形態に基づいて、くも膜下腔116(例えば、CP角槽138)内の槽からCSFを排出するためにシャント200を標的部位(例えば、下錐体静脈洞)に送達する、例である方法を示す。患者の脈管構造へのアクセスを得た後(例えば、大腿静脈または頸静脈106を経由して)、送達組立体300の誘導カテーテル320および/またはガイドワイヤ302は、脈管構造を通ってIPS102へ、またはIPS102およびIPS壁114に対して近位である場所へ、前進しうる。標的部位への送達組立体300の移動のためにガイドワイヤ302を用いる場合、ガイドワイヤ302をさらに前進させて、それに沿って送達組立体300が前進しうる経路を確立する。ガイドワイヤ302が所望の場所に位置した後、誘導カテーテル320の遠位部324がIPS102および頸静脈106間の接合118近傍の頸静脈球108内となるように、誘導カテーテル320がガイドワイヤ302上を前進しうる。あるいは、誘導カテーテル320は接合118近傍の位置に前進してよく、ガイドワイヤ302がIPS102内にさらに進められる。さらに代替的な方法では、誘導カテーテル320は、ガイドワイヤ302を使用せずに、接合118近傍の所望の場所に前進する。
【0054】
図4Bに示すように、頸静脈106およびIPS102間の接合118に位置または周辺に位置した誘導カテーテル320により、送達カテーテル304および送達カテーテル304内に配置された送達ガイドワイヤ308が、誘導カテーテル320内を前進する。送達カテーテル304および送達ガイドワイヤ308は、頸静脈106内に設けられる誘導カテーテル320の遠位部324までさらに前進する。送達ガイドワイヤ308はその後、頸静脈106およびIPS102間の接合118を通過して、頸動脈ドームの内壁内におけるIPS102の開口に入る。送達ガイドワイヤ308はその後、海綿静脈洞の背面までIPS102内をさらに前進する。送達ガイドワイヤ308の遠位部334は、頸静脈106からIPS102へおよび海綿静脈洞への移動を容易にするために、送達ガイドワイヤ308の他の部分よりも柔軟でありうる。
【0055】
次に、送達カテーテル304は、送達ガイドワイヤ308上を前進してIPS102に入る。送達カテーテル304の前進は、送達カテーテル304の遠位部344が、IPS壁114上のシャント200が挿入されてCP角槽138およびIPS102の管腔間の吻合を形成するところである所望の点に対して隣接または近位に位置するまで継続する。あるいは、送達ガイドワイヤ308および送達カテーテル304が、接合118でIPS102の開口に入ってIPS102の1つまたは複数の部分を通って徐々に順次前進しうる。
【0056】
シャント配備のために、送達ガイドワイヤ308および送達カテーテル304が、IPS102内の所望の場所に位置すると、送達ガイドワイヤ308は、海綿静脈洞の背面まで前進することが可能である。送達ガイドワイヤ308は、IPS102内の送達カテーテル304のためおよびシャント200の配備のための支持としての役割を果たすことが可能である。
【0057】
上記したシャント200、誘導カテーテル320、ガイドワイヤ302、送達カテーテル304および/または送達ガイドワイヤ308の正確な位置を保証するために、種々の異なる画像処理方法を用いることが可能である。好適な画像処理方法の例としては、2方向透視、ロードマッピング技術をともなうデジタルサブトラクション血管造影法、ロードマッピング技術をともなう静脈血管造影法、三次元回転血管造影法または三次元回転静脈造影法(3DRAまたは3DRV)およびコーンビームCT血管造影法またはコーンビームCT静脈造影法(CBCTAまたはCBCTV)を含む。3DRA/VおよびCBCTA/Vはいずれも、骨解剖学的、静脈解剖学的ならびに放射線不透過性のシャント配備に用いられるカテーテルおよびガイドワイヤ間の関係を示す三次元の(volumetric)再構成を可能にする。シャント200の配備方法は、患者にシャント200を配備しながら、シャント200を画像処理することを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、送達カテーテル304をIPS102内に位置させることはまた、シャント200の配備前または送達カテーテル304の遠位部344へのシャント200導入前に、送達カテーテル304を適切な方へ向けるために送達カテーテル304をその中心軸を中心に回転させることを含む。
図4Dに示すように(以下にさらに詳細に説明する)、或る実施形態では、送達ガイドワイヤ308および/またはシャント200が、送達カテーテル304を通って前進する際に、それらがIPS102の中心軸103に対してある角度でIPS壁114に接近および到達するように(
図4BからC)、送達カテーテル304は、カテーテルの遠位部344近傍が湾曲している(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な、もしくは制御ワイヤを介して駆動可能な遠位部等またはそれらの組み合わせ)。ガイドワイヤが送達カテーテル304に接続されていれば、送達カテーテル304は、例えば送達カテーテル304の本体に対して直接、または、送達ガイドワイヤ308に対して回転力が加えられることによって回転可能である。送達カテーテル304の湾曲した遠位部344をIPS壁114に隣接する所望の向きで位置させることで、CP角槽138にアクセスするためにIPS壁114およびくも膜層115に小穴をあけることを容易にすることが可能である。シャント200を配備する場合、配備方法は、シャント200を送達カテーテル304内に少なくとも部分的に配置しながら患者の体内にシャント200を導入することを含むものであって、送達カテーテル304が、送達カテーテル304の遠位部がIPS102内に位置するまで、シャント200が少なくとも部分的に配置されているルーメンと同じであっても異なっていてもよい送達カテーテル304のルーメンを通って延びるガイドワイヤ上を前進する(
図4B)。
【0059】
図4Cを参照すると、シャント200の導入前に、貫通部材306を有する細長推進部材310(例えば、穿孔マイクロワイヤ)の遠位部354に位置する組織貫通要素306を、IPS壁114およびくも膜層115に穿孔するために用いて、吻合140(例えば、後にシャント200がそこに送達されて埋め込まれる接続チャネル、孔、空間)を作ることが可能である。細長推進部材310は、誘導カテーテル320または送達カテーテル304のいずれかを通って前進しうる。細長推進部材310に好適な機械力を加えることによって、貫通部材306を、くも膜下腔116(
図2)をIPS102の管腔と隔てているIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を貫通して前進させ、シャント200の配備のために吻合140を作ることが可能である。例えば、貫通要素306は、丸めたまたは弾丸様の構成をもつ針先を含んでよい。丸めたまたは弾丸様の先端である貫通要素306は、細長推進部材310がIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を貫通してCP角槽138へ入るのに十分な堅さを有しつつ、傷つけることなく硬膜繊維を分離する。
【0060】
あるいは貫通要素306は、シャント200の配備のため、吻合140を作るためにIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を切り開く鋭利な先端または套管針を含む。或る実施形態では、貫通要素306は、CSFで満たされたCP角槽138の空間にアクセスするためにIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を貫通する吻合140を作る、制御可能な高周波アブレーションデバイスを含む。
【0061】
また、共同的に吻合140を作るように、貫通要素306およびシャント200間のインタフェースが提供されるものであって、
図33AからCにおいてさらに詳細に説明することとする。
【0062】
IPS壁114に対する貫通要素306の位置は、上記した画像処理技術のいずれかを用いて監視可能であり、および/または、細長推進部材310を介して伝わる触覚フィードバックに基づいて検出可能である。例えば、臨床医は、貫通要素306がIPS壁114を貫通して吻合140を作るときの短い「クリック音」または「弾撥音」(例えば、触覚フィードバック)を感じ取ることが可能である。細長推進部材310および/または貫通要素306は、臨床医がシャント配備のために吻合140を作る間、生体内での撮像および誘導を補助する1つまたは複数のX線不透過性マーカ356、366を含むことが可能である。例えば、好適なマーカは、臨床医によって容易に/視覚的に認識されるパターンでの、貫通要素306および/または細長推進部材310の外側表面への含有(例えば、埋め込まれる)または塗布(例えば、コーティング)が可能である。好適なマーキングの塗布に用いることが可能なX線不透過性材料の例としては、硫酸バリウムがある。
【0063】
IPS壁114およびくも膜層115を穿孔して吻合140が作られると、細長推進部材310および貫通要素306は後退する。次に、
図4Dに示すように、シャント200が送達カテーテル304を介して(すなわち、送達カテーテル304の内部ルーメン305)、IPS壁114およびくも膜層115の穿孔により形成された吻合チャネル140へ前進する。あるいは、穿孔要素を含むシャント200’を送達組立体300内で用いる場合には、シャント200’がIPS壁114およびくも膜層115を穿孔して吻合を作るため、穿孔要素、細長推進部材310または貫通要素306を後退させる必要なく、シャント200’の遠位部202は吻合チャネル140内に配置される。穿孔要素を有するシャント200’を用いた代替方法は、
図5AからIおよび
図14FからHでさらに詳細に説明することとする。さらなる代替としては、埋め込み処置における貫通ステップとシャント配備ステップとの間の送達システムの構成要素を交換または除くことなく、シャント200は、IPS壁の硬膜114およびくも膜115を通る貫通要素を伴うことが可能であるか(例えば、
図20AからFに示すように)、またはシャント200は、貫通要素のルーメンを介して送達可能である(例えば、
図43、44、47に関して示すように)。
【0064】
図4Dに戻って参照すると、シャント200は、送達ガイドワイヤ308上を前進することによって、送達カテーテル304を介して送達可能である。配備されたシャント200の遠位部202は、例えば
図22Aに示すように、1つまたは複数のCSF取り入れ開口201を、CP角槽138のくも膜層115と分離し、別にし、または離れる方へ向けて維持するようにシャントの遠位部202を位置させる遠位固着機構229を備える。配備されたシャント200の近位部204は、例えば
図22Aに示すように、シャントの近位部204を位置させ、それによってシャント200の近位部に配置されるCSF流出部および/またはバルブ209の開口を、頸静脈106の壁と分離し、別にし、および/または離れる方へ向けて維持する近位固着機構227を備える。ガイドワイヤを用いたシャント200の設置を容易にするために、シャント200の本体は、CSFを通すために用いられるルーメン215と隔てられる内部ルーメン217(
図8)であって、送達ガイドワイヤ308または送達ガイドワイヤ308の対応する構造的特徴に対して相補的な方式で嵌合する溝もしくは軌道(例えば、シャント本体の内側表面または外側表面上の)上に受け入れられるまたは滑るように寸法された内部ルーメン217を含むことが可能である。シャント200が送達カテーテル304に対して前方へ進行することに加えて、送達ガイドワイヤ308およびシャント200間の接続インタフェース213および313(
図7)が、シャント本体203の中心軸を中心としてシャント200を回転させて(例えば、ガイドワイヤ308の回転による)、シャント200の遠位部202をCP角槽138内の配備部位の方へ辿るように適切に配向することを保証する。
【0065】
IPS102内に配置される送達カテーテル304および、存在する場合には、送達カテーテル304の湾曲した端部の遠位部344は、シャント200の本体部203がIPS102内に配置されて、かつ、シャント200の近位部204が接合118を通って頸静脈球108および/または頸静脈106に延びることを可能にしながら、シャント200の遠位部202が、吻合チャネル140へ送達されてCP角槽138へ延びることを可能にする。シャント200が適切に配置されると、送達カテーテル304および送達組立体300の任意の残りの要素(例えば、送達ガイドワイヤ308、ガイドワイヤ302および誘導カテーテル320)は、
図3Aに示すように、埋め込まれたシャント200を本来の位置に残したまま後退する。埋め込まれたシャント200が、CP角槽138と頸静脈106との間の流体連通をもたらすことにより、CSFは、シャント200のルーメン207(または、シャント200が複数のルーメンを含む場合は符号215)を介して排出される。CP角槽138内のCSFは、シャント200の遠位部202におけるルーメン207の開口に入り、本体203のルーメン207を流れて、シャント200の近位部204におけるルーメン207の開口から出るため、CSFはその後頸静脈球108および/または頸静脈106内の静脈循環によって運び出される。
【0066】
誘導カテーテル320および送達カテーテル304に関して上記したように、CP角槽138およびIPS102内におけるシャント200の適切なまたは望ましい配備を確実にするために種々の異なる画像処理技術を用いることが可能である。シャント200を配備する臨床医はまた、送達ガイドワイヤ308または送達カテーテル304を通して伝わる触覚フィードバックを頼りにして、シャント200の適切な配置を確実にすることが可能である。典型的には、適切に配備されると、シャント200の遠位先端および脳幹112間に好適な間隙を残しつつ、シャント200の遠位部202が、1mmから5mmの間の距離(例えば、2から3mm)またはCP角槽138内へ延びるように構成されたその他の好適な長さで、くも膜層115より上にCP角槽138内へ延びる。
【0067】
いくつかの実施形態では、シャント200および/または送達システムの貫通部材は、CP角槽138内での適切な設置を確認する測定機能を含む(例えば、硬脳膜とCSFとを区別するように構成された電気抵抗検出器、血液とCSFとを区別するように構成された流体成分検出器ならびに/または反射光に基づいて硬脳膜と血液とCSFとを区別するように構成された光源およびセンサ)。また、いくつかの実施形態では、貫通要素306および/またはシャント200/200’が好適な遠位長さを超えてCP角槽138内に配置されることを防止し、脳幹112に接することまたは傷つけることを回避しながら、シャント200/200’の遠位先端および脳幹112間の好適な間隙を許容する、停止部材を貫通要素306(手術用器具またはその他の穿孔要素)に対して近位に配置する。いくつかの実施形態では、シャント200’の配備後に組織貫通部材250を覆うために、シャント200’の組織貫通部材250上に摺動可能に配置されるカバー260を設けられ、
図61AからDでさらに詳細に説明することとする。
【0068】
シャント200配備の前または後で、CP角槽138およびIPS102間に吻合140が作られたことの確認を実行してよい。例えば、送達組立体300のルーアー組立体17(
図3B)に接続されるシリンジを用いることによって、送達カテーテル320を介してCSFが除去可能であることから、壁114およびくも膜115が貫通されて、CP角槽138へのアクセスがなされて、および/または吻合140が作られたということが確認される。いくつかの実施形態では、送達カテーテル320は、吻合140がCP角槽138で作られたということを確認する測定機能を含む(例えば、硬脳膜とCSFとを区別するように構成された電気抵抗検出器、血液とCSFとを区別するように構成された流体成分検出器ならびに/または反射光に基づいて硬脳膜と血液とCSFとを区別するように構成された光源およびセンサ)。
【0069】
図4AからDは、一例である、水頭症を治療するシャント200を配備するための方法を開示する。開示される発明によれば、ステップ、ステップの順序、ステップを実行するシャントおよび送達組立体300の要素は、種々の方法で変形可能である。例えば、代替方法においては、シャント200は、送達カテーテル304を用いることなく配備される。つまり、シャント200は、CP角槽138およびIPS102内に適切に配置されるまで誘導カテーテル320を通って前進するように、送達ガイドワイヤ308に着脱可能に連結される。その後、送達ガイドワイヤ308をシャント200から取り外すことが可能であり、シャント200が本来の位置に残り、かつ、CP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へのCSFの流れを促すことを可能にしながら、ガイドワイヤ308および誘導カテーテル320は後退する。
【0070】
さらなる代替方法においては、IPS壁114に穿孔するために送達カテーテル304を用いて、吻合140の全てまたは一部を作ることが可能である。例えば、送達カテーテル304の遠位部344は、カテーテル本体の中心軸とある角度を成して切断されて、鋭利で、先細り状で、カニューレ様の端部を形成しうるものであって、以下にさらに詳細に説明することとする。送達カテーテル304に対して好適な力を加えることにより、遠位部344がIPS壁114を通って推進されて、IPS壁114に穿孔して、吻合140の全てまたは一部を作ることが可能である。この方法は、IPS102の管腔およびCP角槽138間の連結を完成するために、細長推進部材310に接続した貫通要素306の使用とともに、または、その代わりに用いることが可能である。
【0071】
複数のシャント200を標的部位に埋め込むことが可能である、ということを認識されたい。例えば、埋め込まれたシャント200がIPS102を完全に占有していない場合、臨床医はIPS102内に第2のシャントを配備するための十分な空間を有している可能性がある。第2のシャントは、先に埋め込まれたシャント200に対して隣接または近位にIPS102内に埋め込まれうる。
【0072】
図5AからJは、開示される発明の実施形態に基づく、脳槽からCSFを排出するためにシャント200を標的部位に送達および埋め込む代替方法を示す。簡単のため、
図4AからDの組立体300と同様である送達組立体300’の特徴、機能および構成は、同様の参照符号で示される。
図5AからJの送達組立体300’は、組立体300の誘導カテーテル320、送達カテーテル304、送達ガイドワイヤ308を含む。送達組立体300’は、シャント200’の遠位部202上に配置された組織貫通部材250を有する、着脱可能に連結されたシャント200’をさらに含む。あるいは、組織貫通部材250は、角度をもった、鋭利な、カニューレ様の端部を形成するか、または、先端針等を含む、シャント200’の遠位部202における切り口でありうる。さらに、組織貫通部材250はシャント200’に着脱可能に連結されうるため、吻合が作られると、および/または標的部位にシャント200’が埋め込まれると、組織貫通部材250は、シャント200’から取り外して除去される(例えば、
図5HからJに示すように)。
【0073】
上記で説明したいずれかの方法を用いて、シャント200’を搬送する送達カテーテル304が前進して、シャント200’が埋め込まれる場所であるIPS壁114上の所望の点に対して隣接または近位に配置されると(
図5B)、ガイドワイヤ308は後退してよく、シャント200’が前進する(
図5C)。臨床医は、上記したいずれかの方法(例えば、X線検査)により組織貫通部材250の向きを確認しながらシャント200’の向きを変更できる(
図5D)。方法は、IPS壁114およびくも膜層115に小穴を開けることを容易にし、かつ、CP角槽138へアクセスするために、IPS壁114に対して適切な向きで(例えば、送達カテーテル304の開口遠位端部がIPS壁114に直面するかおよび/または隣接するように)送達カテーテル304の遠位部344(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な、もしくは制御ワイヤを介して駆動可能な遠位部等またはそれらの組み合わせ)を位置させることを含む(
図5E)。送達カテーテル304の遠位部344を位置させることには、送達カテーテル304の回転方向を調節することを含みうるため、シャント200’の遠位部202’で搬送された組織貫通部材250が、IPS壁114およびくも膜層115に穿孔して、標的貫通部位において吻合140を作る。いくつかの実施形態では、送達カテーテル304は、カテーテル本体304の軸方向位置上に(例えば、
図5Eに示す参照線304の位置に)、送達カテーテル304の遠位端部344から近位に間隔を空けた第2の開口を含有する。第2の開口は、送達ガイドワイヤ308が送達カテーテル304から出ることを可能にし、かつ、IPS102を通ってシャント200の配備部位を越えて延びる(例えば、海綿静脈洞の後方側面へ)ように構成される。送達カテーテル304および送達ガイドワイヤ308のこの構成は、臨床医がIPS102内のシャント200’の提案された配備位置周辺に送達カテーテル304を向けることを可能にして、IPS壁114の貫通中に吻合140を作るために送達組立体および穿孔組立体を支持する。
【0074】
シャント200’、組織貫通部材250および/または送達カテーテル304に対して好適な機械力を加えることによって、組織貫通部材250が、IPS102の管腔をくも膜下腔116(
図2)と隔てるIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を通って前進し、吻合140を作ることが可能である(
図5F)。あるいは、送達ガイドワイヤ308はCP角槽138へ前進してよい(
図5G)。シャント200’の遠位部202’が、CP角槽138へさらに前進し(
図5H)、シャント200’が所望の位置となると、遠位部202’が、くも膜層115に対して、CP角槽138内で固定される(
図5I)。いくつかの実施形態では、シャント200’を配備することには、組織貫通部材250を用いて、シャント200’の遠位部202’がIPS102からCP角槽138へ前進することを含む。組織貫通部材250がシャント200の遠位部202’に連結されるため、シャント200’の遠位部202’がIPS102からCP角槽138へ前進することには、組織貫通部材250およびシャント200’の遠位部202’が、それぞれIPSの硬脳膜の組織壁114を通ってくも膜組織層115を通ってCP角槽138へ前進することを含む。シャント200’の遠位部202’端部の所望の位置の検証は、上記で説明したいずれかの方法により実行されうる。
【0075】
シャント200’の遠位部202’は、遠位部202’から延びるかまたは遠位部202’に隣接する固着機構225を含んでよい。固着機構225は、送達構成および展開構成を有する。送達構成では、固着機構225は、送達組立体300(例えば、送達カテーテル304)を介して前進し、吻合チャネル140を通過するように構成される。展開構成では、固着機構225は、くも膜層115上でおよび/またはCP角槽138内でシャント200の遠位部202’を固定して、CP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へのCSFの流体連通を許容するように構成される。
図5Iに示す方法は、くも膜層115に対して、CP角槽138内でシャント200’を固定するために、固着機構225を展開構成へ駆動することを含む。あるいは、固着機構225は、その展開した、拡張した構成に偏っており(例えば、熱固定ニチノールをマレコー(malecot)形状にすることによって)、配備部位まで送達カテーテル304を通過する送達構成に抑制される。固着機構225が、送達カテーテル304および吻合140を通ってCSFを貯留するCP角槽138へ前進すると、固着機構225は、くも膜下腔116内にシャント200’を固着するためにその偏った展開構成を再開する。上記方法は、シャント200’の配置、固定および埋め込みの間、シャント200’を画像処理することを含んでよい。
【0076】
シャント200’の遠位部202’および/またはシャント200の遠位部202は、シャント200’のルーメン207への流体連通を可能にする1つまたは複数の開口219(例えば、孔、穿孔、網目、多孔質材料等、またはそれらの組み合わせ)を含みうるため、CP角槽138内のCSFは、埋め込まれたシャント200’を介して頸静脈球138および/または頸静脈106へ流れる。開口219はシャント200の遠位端部の最も近くに配置されるため、配備されると、開口219は、くも膜がシャントルーメン207へ潜行すること、またはそうでなければくも膜がシャントルーメン207へ流れるCSFを閉塞することを防止するために、くも膜層から十分に間隔が空けられる(約2mmから3mm)。
【0077】
あるいは、組織貫通部材250が着脱可能にシャント200’に連結されている場合、吻合が作られると、
図5Jに示すように組織貫通部材250は埋め込まれたシャント200’から外されて除去される(例えば、ガイドワイヤ、細長推進部材310等を介して)。この実施形態では、シャント200’のルーメン207、特にシャント200’の遠位部202におけるルーメン207の開口は、CSFドレナージのためにCP角槽138と流体連通のままである。この実施形態では、CSFは、シャント200’の遠位先端および開口219を介してシャントルーメン207に入る。
【0078】
図5AからJに開示する方法は、必要に応じて任意の組合せで、異なる実施形態に関して開示されたステップおよび特徴を含む、本明細書に開示されるあらゆるステップおよび特徴を含んでよいということを認識されたい。
【0079】
図6は、開示される発明の実施形態に基づいて構成されたシャント200の断面図を示す。上記したように、シャント200は、近位部204、遠位部202および近位部204と遠位部202との間に延びる細長本体203を含む。ルーメン207は、本体203内を近位部204の近位端部204’’から遠位部202の遠位端部202’’まで延びて、CSFがシャント200の本体を通過することを可能にする。シャント200は、ルーメン207と流体連通で、近位端部204’’および/または近位部204内に近位開口205を含む。シャント200は、ルーメン207と流体連通で、遠位端部202’’および/または遠位部202内に遠位CSF取り入れ開口201をさらに含む。近位開口205および遠位CSF取り入れ開口201は、1つ又は複数の開口を含みうる。シャント200は、シャント200の細長中心軸231に沿って測定され、シャント200がCP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へ延びるように選択された、長さL
2を有する。一実施形態では、L
2は15mmから30mmの範囲である。さらなる実施形態では、細長本体203は、前記15mmから30mmの範囲内の可変のL
2を有してよく、細長本体203は、例えば次の拡張可能部材であって(
図6Aは圧縮した構成、
図6Bは拡張した構成)、折り畳みの(
図6Cは折り畳んだ構成、
図6Dは展開した/拡張した構成)、摺動可能に同心で配置される管状の要素(
図6Eは、
図6Fの長いL
2と比べて短いL
2)、バネ様、コイル様(
図6Gは、
図6Hよりも、よりきつく巻回されたコイルで短いL
2)の構成等またはそれらの組み合わせである拡張可能部材を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、シャント202の遠位部202はCP角槽138へ前進したときに、または前進した後に、折り畳まれた送達構成から拡張した展開構成に拡張されるかまたは自己拡張する。
【0081】
シャントルーメン207は、
図6に示す軸231に直交する方向に測定される内径L
1を有する。径L
1は、異なる実施形態では0.1mm(0.004インチ)から5mm(0.2インチ)の範囲であることが可能であり、約0.2mm(0.008インチ)から約0.36mm(0.014インチ)の範囲にあることが好ましい。また、L
1および/またはL
2は、標的部位(例えば、IPS、CP角槽等)内でのシャント200の埋め込みに好適な任意の寸法を有してよい。
【0082】
この発明のいくつかの実施形態では、くも膜下腔116および静脈系間で約5cmH2Oから約12cmH2Oの範囲であると定義される正常な差圧でシャント200を通るCSFの標的流量(毎時約5mlから毎時約15mlの範囲内)をシャント200が提供できるようにするために、特定の長さL
2のシャントルーメン207の内径L
1における圧縮を、以下のハーゲンポアズイユの式に基づいて算出する。
【0083】
例えば、シャントルーメン207の長さL2が8mmであることに対して、内径L1を0.19mmに圧縮することで、差圧6.6cmH2OでCSFの流量10mL/時を維持することとなる。内部ルーメンの圧縮がないシャントの実施形態では、所与の差圧(または範囲)に対する標的流量(または範囲)を達成するようにシャント本体203の全長に沿うシャントルーメンの内径を構成するために、同様の式およびアプローチを用いることが可能である。
【0084】
いくつかの実施形態では、シャント200は、一方向のみへの、すなわち、シャント200の遠位部202から近位部204への、CSFの流れを可能にしながら、シャント200内のCSFの流量を調整するための1つまたは複数のバルブを含みうる。
図6は、シャント200のルーメン207と流体連通である、シャント本体203内に配置されるバルブ209を示す。バルブ209は、本体203内の任意の好適な場所、例えば、近位部204に対して近位に、もしくは近位部204に配置、遠位部202に対して近位に配置、および/または前記部分202、204の間に配置されうる。或る実施形態では、複数のバルブが、シャント200内の様々な場所に配置可能である。
【0085】
バルブ209は、くも膜下腔および静脈系間の陽圧勾配により満たされるときまたは上回るときにバルブを開き、それによってCP角槽から頸静脈へのCSFの流れを促進する、特定のクラッキング圧を含むことが可能である。例えば、バルブ209のクラッキング圧は、約3mmHgから約5mmHgで設定可能であるか、および/または、くも膜下腔および静脈系間の差圧が約3mmHgから約5mmHgに到達するときとすることが可能であるが、しかしながら、患者の特定の臨床的なニーズに応じて、他のクラッキング圧をバルブ209内に設定可能である。
【0086】
バルブ209は、様々な好適な特徴を有しうる。例えば、バルブ209は、
図6および
図6Iに示すように、例えばダックビルバルブである一方向バルブである。他の好適なバルブ209、例えばアンブレラバルブ、ピンホイールバルブ、ボールアンドスプリングバルブ(
図6JからK)、同心円筒(concentric tube)バルブ(
図6L)、スリットバルブ、チェックバルブ、フラッパ弁(
図6NからO)等またはそれらの組み合わせを、シャント200内に用いることが可能である。さらに、一方向バルブは、ある期間にバルブに電流を加えることで、バルブを通る流量を設定するために選択的に侵食することが可能である電解的に侵食可能な材料で形成可能である。そうした侵食可能なバルブを構成するために用いることが可能な好適な材料、システムおよび方法は、米国特許第5,976,131号にさらに説明されており、その内容の全体は参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0087】
図6Pから6Tは、開示される発明の一実施形態により構成されるバルブ209を示す。
図6Pに示すように、バルブ209は、シャント200の近位部204上に被せるように構成される成形したシリコーン要素を備える。シャント200の近位部204は、シャント200の本体203の外径L
3と比べて狭めた外径L
4(例えば、
図6Pの破線部分)を有し、近位部204上でバルブ209を支持するように構成される(
図6R)。シャント200の近位部204は、シャント200の近位端部204’’(例えば、先端)を末端とする斜面エッジを含む(
図6QからT)。
図6Rに示すように、バルブ209はバルブ209の内側表面299から延びる凸部239を含む。凸部239は、シャント200の近位部204の外側表面206に形成される凹部238と係合するように寸法されて構成される。バルブ209がシャント200の近位部204上に挿入されると、凸部239および凹部238が係合し、それによってシャント200の近位部204上にバルブ209が固定される。バルブ209は、互いに間隔を空けて(または、例えば、
図6Rのバルブ209の内側表面299の対向する側上に)、2つ以上の連動する凸部239を含むことが可能であり、シャント200は、バルブ209の各凸部239と係合するように構成される外側表面206内の対応する凹部238を含む。バルブ209は、第1の部分249をさらに含み、該第1の部分249は、ルーメン207と通じるシャント200の斜面エッジおよび近位開口205を、部分249が固定および/または覆って、ルーメン207から流出する流体を止める閉構成(
図6PからR)と、該部分249が、揺動動作またはヒンジ様の方式でルーメン207と通じるシャント200の斜面エッジおよび近位開口205から離れて、流体をルーメン207から流出させる開構成(
図6S)とを有する。バルブ209は、
図6RからTに示すように、シャント200の外側表面206の一部を覆うように構成される第2の部分259を含む。バルブ209の第1の(249)および第2の(259)部分は、バルブ209の成形されたシリコーン要素に切り込みまたはスリット269を作ることによって形成されうる。
【0088】
図6PからTのバルブ209を有するシャント200が、先に説明したように患者の標的部位に埋め込まれる場合、くも膜下腔116(例えば、CP角槽138)および静脈系(例えば、頸静脈106)間が正差圧状態下で、第1の部分249が閉構成(
図6PからR)から開構成(
図6S)に開くことが可能である。第1の部分249が比較的大きい面積であることで、バルブ209が開くときに相当な揺動動作がもたらされて、シャント200内側のあらゆる凝集物質(例えば、CSFたんぱく質、くも膜層細胞)を一掃することを促進し、かつ、比較的低い開口圧またはクラッキング圧(例えば、約3mmHgから約5mmHg)で幅広い流量に適用することが可能である。第1の部分249はまた、
図6Tに示すように、ガイドワイヤ308を受け入れるために開き、本明細書で説明されるようなシャント200の移動および配備を補助することが可能である。負差圧状態下では(例えば、くしゃみまたは咳事象の間などに、くも膜下腔116内で静脈圧が頭蓋内圧を超える場合)、第1の部分249が、バルブ209を封止し、閉じておよび/または塞ぐ(
図6R)ために閉じて、静脈血がシャント200を通ってくも膜下腔116に逆流することを防止する。第1の部分249が大きい表面積であることで、陰圧(-P)に対して相当な面積を提供して、バルブ209が押し付けられて封止され、シャント200を通って物質が逆流することを防止するために塞がれる(
図6R)。
【0089】
くも膜下腔から静脈系へのCSFの流れを制御することに加えて、シャント200が、頸静脈球108および静脈106からシャントルーメン207を通ってくも膜下腔116へ血液が逆流することを防止することが好ましい。シャント200内に一方向バルブを有することは、一方向バルブが、くも膜下腔116(例えば、CP角槽138)への静脈血の逆流を防止しながら、CSFに対して、CP角槽138から静脈循環系(例えば、頸静脈球108、頸静脈106)へ流体連通であることを可能にするため、特に有利である。
【0090】
いくつかの実施形態では、シャント200内の1つまたは複数のバルブは、シャント200から着脱可能でありうる。例えば、
図6を参照すると、バルブ209は、バルブ209をシャント200の本体203と接続する取り付け機構211を含む。バルブ209は、シャント200が埋め込まれているときであっても、機構211を有効にすることによって(例えば、シャント200に挿入されたガイドワイヤを用いて機構211を駆動することによって)、シャント200から取り外して除去されることが可能である。いくつかの実施形態では、シャント200は、複数の異なるバルブ209を含み、各バルブは異なる流量での流れを可能にする。臨床医は、例えば1つまたは複数の好適なバルブをシャント200に選択的に接続することによって、CSFをCP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へ排出する速度を制御することが可能である。
【0091】
バルブ209(またはバルブの組み合わせ)および/または別の種類の流量調整デバイス(例えば、先に説明したようにシャント本体203を圧縮してルーメン207を狭める、特定の長さに対するシャント200の内径の圧縮(
図6M))が、CP角槽138から頸静脈球108および/または頸静脈106へのCSFの所望の流量を達成するように構成される。例えば、ダックビル、スリットおよびウィンドソック(windsock)型のバルブ構成は、典型的に、バルブのクラッキング圧のみに基づいて流れを調整することができず、そうしたバルブは、一度開くと、流体が浸出し続けるため、CSFの流れをさらに調整するために、先に説明したように特定の長さに対するシャント200の内径の圧縮と組み合わせることが可能である。所望の流量は、毎時5mlから毎時20mlの範囲であり、より望ましくは毎時10mlから毎時18mlの間である。いくつかの実施形態では、CSFの所望の流量は、毎時約10mlである。24時間の間にシャント200を通るCSFの流れは、200mlから300mlの間とすることが可能である(例えば、200、225、250、275または300cm
3)。
【0092】
いくつかの実施形態では、シャント200は、シャント200の配備によって引き起こされる血栓症を防止するために抗血栓性コーティングを含むことが可能である。例えばシャント200は、シャント本体203の長さに沿って施される抗血栓性コーティング221を含んでよい。抗血栓性コーティング221は、概して、シャント200の内側表面および/または外側表面のうち任意の1つまたは複数に対して塗布可能である。さらに、抗血栓性コーティング221は、シャント200の全長に沿って塗布するか、あるいは、シャント200の内側および/または外側表面の選択された部分のみに対して(例えば、シャント200の端部に対して近位に、またはシャント200の端部近傍に)塗布することが可能である。抗血栓性コーティング221を形成するために用いることが可能な好適な材料としては、例えばパリレン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体およびヘパリンが挙げられる。
【0093】
シャント200は、生体適合性材料から成る。好適な材料としては、例えば白金、ニチノール(登録商標)、金もしくは他の生体適合性金属および/または例えばケイ素である高分子材料またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、シャント200は、磁気共鳴画像法と互換性があり、かつ、上記において開示した様々な技術を用いた画像処理を可能にするのに十分なX線不透過性を有する材料を含みうる。例えば、送達および配備(すなわち、標的部位における埋め込み)中に生体内でシャント200の画像処理を補助するために、X線不透過性材料により形成される1つまたは複数の標識がシャント200の表面に塗布されうる。好適なマーカは、臨床医によって容易に認識されるようなパターンで、シャント200の外側表面206に含まれてよく(例えば、埋め込まれる)、または該外側表面206に塗布されてよい(例えば、コーティング)。標識のために塗布可能であるX線不透過性材料の例としては、硫酸バリウムがある。そうしたマーカはまた、シャント200の送達および配備中に生体内で様々なシステム構成要素の画像処理を補助するために、シャント処置で用いられるカテーテルおよび/またはガイドワイヤに塗布されうる。
【0094】
いくつかの実施形態では、シャント200の部分は柔軟な材料から成りうるか、または、シャント200は様々な柔軟度である部分を有しうる。例えば遠位部202は、遠位部202がシャント200の本体203より柔軟であるように、柔軟な材料から成る(
図6)。好適な材料によりシャント200の遠位部202を構成できるものであって、シリコーンまたはニチノールなどの柔軟な弾性材料を含みうる(例えば、壁厚を減じたニチノールハイポチューブ、または蛇行状構造を移動するために柔軟性を増すような格子状構成もしくはリリーフカット構成をもつePTFEで裏打ちしたニチノールハイポチューブ)。シャント200が、IPS102に対して好適な角度で、吻合チャネル140を作る、および/またはアクセスしてCP角槽138に入るように、柔軟なシャント200、特に柔軟な遠位部202が、送達カテーテル304内でのシャント200の屈曲を容易にする(例えば、
図4D)。
図6に戻って参照すると、柔軟な材料から成る遠位部202は、遠位部202が角度“A”で吻合チャネル140を経由してCP角槽138にアクセスするように構成されるように、軸233内での部分202の屈曲を可能にする。シャント200の遠位部202は、吻合チャネル140を通るシャント200の貫通および/または埋め込みのためにIPS102の中心軸103に対して好適な角度を形成するために、本体203の軸231に対してある角度で予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な、制御ワイヤを介して屈曲可能である等、またはそれらの組み合わせでありうる。角度“A”は、軸231と233との間を、5度から80度の範囲としうる。
【0095】
いくつかの実施形態では、シャント200の遠位部202は、穿孔要素(例えば、鋭利で、先細り状で、カニューレ様の端部、または、斜面状、ペンシル状もしくはクインケ状の先端)を形成するために、ある角度で切断されて、IPS壁114およびくも膜層115の穿孔を可能とすることができる。
図6に示すように、軸233に対する遠位部202の角度“C”は、穿孔要素のある「鋭利さ」に関して要望通りに選択可能である。いくつかの実施形態では、角度“C”は、軸233に対して5度から80度の間である。
【0096】
シャント200は、
図6に示すように、シャント200の本体203に沿って位置する1つまたは複数の固着機構225を含むことが可能である。固着機構225は、埋め込まれたシャント200を、標的部位に固定することを可能にし、かつ、シャント200を埋め込み場所に残すことを可能にする(例えば、
図3A)。固着機構225は、例えばフック、返し(barb)、拡張可能アーム、花弁様、コイル様、マレコー、elliptecot、T形の特徴等またはそれらの組み合わせである1つまたは複数の構成を含むことが可能である。固着機構225は、シャント200の1つまたは複数の部分に配置可能である。固着機構225は、機構225が半径方向に抑制される送達構成と、機構225が半径方向に拡張される展開構成とを含む。固着機構225は、シャント200が送達カテーテル304および/または誘導カテーテル320から出て配備されるときに該機構が半径方向に拡張するように、自己拡張特徴を含みうる。加えて、またはあるいは、固着機構225は、例えばシャント200に挿入されるガイドワイヤ(例えば、ガイドワイヤ302、送達ガイドワイヤ308)の使用により、選択的に展開構成に駆動されてよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、シャント200が、IPS102において生体内に埋め込まれたシャント200を固定、特にCP角槽138内に遠位部202を固定する、シャント200の遠位部202に配置される1つまたは複数の固着機構225を含みうる。いくつかの実施形態では、シャント200が、IPS102において生体内に埋め込まれたシャント200を固定、特に接合部118、頸静脈球108および/または頸静脈106内に近位部204を固定する、シャント200の近位部204に配置される1つまたは複数の固着機構225をさらに含みうる。固着機構225は、シャントの修正および/または置換えを可能とするために折り畳み可能でありうる。異なる固着機構の組み合わせが、シャント200の近位部204および/または遠位部202において用いられうることが認識されるだろう。
【0098】
いくつかの実施形態では、シャント200は、特にシャント200が頸静脈球108または頸静脈106から、接合118を通ってIPS102へ、および/または吻合チャネル140へ通過する際に、シャント200の正確な誘導、移動および/または制御を可能にする1つまたは複数の特徴を含むことが可能である。
図7は、開示される発明の一実施形態による、シャント200の断面図を示す。シャント200は、シャント200の外側表面206に沿って延びる突出リブ213を含む。リブ213は、送達カテーテル304内の協働する凹部313と係合するように寸法されて構成される。凹部313は、送達カテーテル304の内側表面316内に形成される。シャント200が、送達カテーテル304に挿入されるとき、リブ213および凹部313が摺動可能に係合し、シャント200が送達カテーテル304内で所望の向きでの誘導が可能となる。
図7に示す実施形態は、シャント200と接続して実装可能である、例である制御特徴である。いくつかの実施形態では、シャント200および送達カテーテル304は、複数のそうした特徴を含むことが可能である(例えば、複数の凹部と係合する複数のリブ)。
図7では、シャント200がリブ213を含むが、代替的な実施形態では、送達カテーテル304がリブを含むことが可能であり、シャント200が送達カテーテル304と摺動可能に係合するように寸法されて構成される凹部を含んでよい。
【0099】
加えて、またはあるいは、誘導カテーテル320は、シャント200の制御特徴(例えば、1つまたは複数の軌道または凹部)および/または送達カテーテル304と係合する特徴を含むことが可能である。例えば送達カテーテル304および誘導カテーテル320は、シャント200の制御特徴と係合する1つまたは複数の特徴をそれぞれ含むことが可能である。さらに、送達カテーテル304および誘導カテーテル320は、制御される方向でカテーテル304、320が互いに対して移動することを許容する、協働的に係合する制御特徴(例えば、1つまたは複数のリブまたは凹部)を含むことが可能である。協働的に係合する特徴はまた、送達ガイドワイヤ308と送達カテーテル304との間、ならびに、細長推進部材310と送達カテーテル304および/または誘導カテーテル320との間に用いることが可能である。そうした特徴の例としては、シャント200および送達カテーテル304とに関する上記で論じた特徴のいずれかが挙げられる。
【0100】
図8は、開示される発明の実施形態に基づいて構成された第1のルーメン215および第2のルーメン217を有するシャント200の断面図を示す。第1のルーメン215は、上記で論じたように、CP角槽138から頸静脈球139および/または頸静脈106へのCSFの流れを可能とするように構成される。第2のルーメン217は、ガイドワイヤ(例えば、ガイドワイヤ302、送達ガイドワイヤ308、細長推進部材310、組織貫通部材250、組織貫通部材250、駆動ガイドワイヤ等)が、シャント200内へ挿入されて、シャント200を通って摺動可能に配置されることを可能とするように構成される。ガイドワイヤは、標的部位でのシャント200の移動および配備を補助するために、臨床医が用いることが可能である。また、臨床医は、シャント構成要素(例えば、バルブ、固着機構)にアクセスするために第2のルーメン217内でガイドワイヤを用いることが可能である。いくつかの実施形態では、臨床医は、IPS壁114を穿孔してCP角槽138にアクセスするために第2のルーメン217を通過するガイドワイヤに装着される貫通要素(例えば、組織貫通部材306、250、350)を用いることが可能である。加えて、臨床医は、CP角槽138ならびに頸静脈球108および/もしくは頸静脈106間のCSF流路が開のままであるということを確認し、ならびに/または、ルーメン215および/もしくは217のいずれかにおける何らかの閉塞を除去することが可能である。いくつかの実施形態では、IPS壁114が貫通されて、CP角槽138がアクセスされ、吻合140が作られたということを確認しながら、シャント200のルーメン215または217のいずれかを介して、臨床医によりCSFを除去することが可能である。他の実施形態では、シャント200は、例えば2つのルーメン215および217より多い複数のルーメンを含んでよい。
【0101】
加えて、シャント200の断面構成は、IPS102内のシャント埋め込みに好適な任意の構成であってよい。例えばシャント200の断面構成は、円形(
図8)、非円形(例えば、楕円(elliptical))またはその他の規則的または不規則的構成を有しうる。
図9は、開示される発明の実施形態による、シャント200の楕円断面構成を示す。シャント200の楕円断面構成は、円形断面構成よりも、シャント200の遠位部202の鋭利で、先細り状で、カニューレ様の端部をより良好に支持しうる。
【0102】
図10は、開示される発明の実施形態によって構成される送達カテーテル304を示す。カテーテル304は、延長軸331に沿って延びる細長本体345を含む。送達カテーテル304は、近位部342、細長本体345、遠位部344およびそれらの間に延びるルーメン341を含む。送達カテーテル304は、ルーメン341と流体連通である近位部342内に近位開口348を含む。送達カテーテル304は、ルーメン341と流体連通である遠位部344内に遠位開口346をさらに含む。カテーテル304の遠位部344は、カテーテル本体345および/または軸331に対して湾曲される(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な、制御ワイヤを介して駆動可能な遠位部等またはそれらの組み合わせ)。遠位部344は軸333における屈曲を許容するため、遠位部344は、シャント200の配備のために、角度“B”でシャント配備中に作られる吻合チャネル140を介してCP角槽138にアクセスするように構成される。角度“B”は、軸331と333との間を5度から80度の範囲としうる。
【0103】
開示される発明に基づいて、シャント200、誘導カテーテル320および/または送達カテーテル304のいずれかの遠位部202、324、344は、湾曲および/または屈曲するように構成される。2mmから4mmの範囲の直径を有するIPS102に関して、最大および最小の直角度の一部ならびにいくつかの最大および最小曲げ角について、例であるバリエーションを
図11AからCに示す。そうした角度はまた、本明細書に開示される送達システム組立体300および貫通要素250または350の構成が、所与のIPSの直径に対して、IPS壁114への所望の貫通角度を達成することが可能か否かを評価するために用いることが可能である。
図11AからCに示す角度のバリエーションは例であり、
図11AからCの実施形態を制限することを意図していないということを認識されたい。
【0104】
図12は、開示される発明に基づいて構成されたシャント200の一実施形態を示す。シャント200は、複数の固着機構225を含む。固着機構227は、シャント200の近位部204から延びて、および/または該近位部204上に配置されてよく、かつ、固着機構229は、シャント200の遠位部202から延びて、および/または該遠位部202上に配置されてよい。固着機構227は、固着機構225について上記で説明したように、送達構成および展開構成を有する。あるいは、または加えて、固着機構227および229は、導管400上に配置されうる(例えば、
図12に示す折り畳み可能な返し425)。
【0105】
固着機構227は、例えばバネ付きプラグ、ステント、網目状、マレコー等の、近位部202と連結する任意の好適な固着構成を含みうる。固着機構227は、例えばニチノール(登録商標)などの形状記憶材料、例えば膨潤性高分子発泡体などである拡張可能材料等、またはそれらの組み合わせから成りうる。固着機構227は、IPS102が頸静脈球108および/または頸静脈106に入る場所である接合118と係合するように構成され、および/または、頸静脈球108または頸静脈106と係合するように構成されて、埋め込みの際にシャント200を固定して動きを防止し、特に生体内でシャント200の近位部204を固定する。例えばシャント200の配備の前には、固着機構227は半径方向に抑制されて、IPS102における接合118を通してシャント200を通過させる。シャント200が配備されると、固着機構227は、接合118内で半径方向に拡張(例えば、自己拡張、流体の吸収および/または温度上昇による膨潤)して、
図12に示すように近位部204においてシャント200を固着する。固着機構227のさらなる実施形態を、以下でさらに詳細に説明することとする。
【0106】
シャント200の遠位部202から延びる固着機構229は、シャント200が標的部位(例えば、IPS102、吻合チャネル140、CP角槽138)に埋め込まれたときに、くも膜層115および/またはIPS壁114の外側部分と係合するように構成される。固着機構229は、固着機構227について上記で説明したように、送達構成と展開構成とを有する。固着機構229は、任意の好適な固着構成を含みうる。例えば、固着機構229は、シャント200の軸にほぼ沿って配列される複数のワイヤを有する傘形構成を含む。シャント200がCP角槽138にアクセスすると、機構229が半径方向に拡張して生体内でシャント200の遠位部202を固定するように、固着機構229が駆動する。機構229は、シャントルーメン207の閉塞(例えば、くも膜による)を防止するために、IPS壁114の外側部分を含む硬脳膜に対向する、くも膜下腔116内の貫通部位周辺のくも膜層115を、有利に圧縮または押さえつける。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤを引き込むことでシャント200の軸から半径方向外側に機構ワイヤを押し、それによってシャント200を固着するように、シャント200へ挿入されて機構229に連結されるガイドワイヤを用いて固着機構229を駆動しうる。あるいは、固着機構229は、送達カテーテル304および/または誘導カテーテル320内にある間は半径方向に抑制したままにして、該カテーテルからCP角槽138へ配備されると半径方向に拡張するような、折り畳み可能で自己拡張する傘形機構であることが可能である。いくつかの実施形態では、固着機構229は、複数の折り畳み可能な歯をもつ、および/またはマルチフィラメントの球状である、自己拡張する円形の籠を含みうる。
【0107】
固着機構229は、展開構成において、吻合チャネル140の直径よりも大きい直径(例えば、3mmから5mm)を有することで、固着を形成する。従って、展開状態の固着機構229は、吻合チャネル140の通過を回避するのに十分な幅であり、それによってCP角槽138内にシャント200を固定する。加えて、固着機構229は、吻合チャネル140での封止を形成するように構成されて、CP角槽138への血流を防止する。固着機構229により形成される封止は、IPS102からのCP角槽138への血液のアクセスを回避することによって、遠位部202におけるシャントルーメン207の閉塞または詰まりをさらに防止する。
【0108】
いくつかの実施形態では、固着機構227および229は、シャントの修正および/または置換えを容易にするために折り畳み可能とすることが可能である。シャント200とともに用いる好適な固着機構のさらなる態様および特徴は、例えば米国特許出願公開第2015/0196741号、PCT出願国際公開第2015/108917号に開示され、いずれも2015年1月14日に出願され、その全ての内容全体は参照することにより組み入れられるものとする。異なる固着機構の組み合わせが、シャント200/200’の近位部204および/または遠位部202に用いられうるということが認識されるだろう。
【0109】
いくつかの実施形態では、IPS102内に配備する際にシャント200を収納するために導管400を用いることが可能である(
図12)。導管400は、シャント200の配備前にIPS102内に配置されるように構成される生体適合性材料から成る(
図14AからF)。シャント200は、導管400内へ配備されるように構成される。導管400は、近位部404、遠位部402およびその間に延びるルーメン407を有する管状構成を含む。配備された導管400は、IPS壁114内の標的貫通部位から、または隣接するCP角槽138内から、IPS102を介して頸静脈球108および/または頸静脈106へ近位に延びる。導管400は、IPS102内で導管400を固定する1つまたは複数の固着機構425を含みうる。固着機構425は、導管400が配備されるときにIPS壁114を係合する、例えばフック、返し等である任意の好適な構成を有しうる。導管400の遠位部402は、所望の角度でのCP角槽138へのシャント200の導入を容易にするために、シャント200の遠位部202および/または送達カテーテル304と同様のやり方で湾曲されうる。導管400は、例えば加温の際(すなわち、IPS102に配備すると)に拡張するような生体適合性高分子材料である、好適な拡張材料から成る。
【0110】
導管400は、拡張可能なステントグラフト構成を含みうる。
図13AからCは、導管400を構成するために用いられうる、この技術で公知の拡張可能なステントグラフトである。
図13Aは、折り畳まれた状態のステントグラフトを示し、
図13Bは、部分的に拡張した状態であり、
図13Cは拡張状態である。また、導管400は、自己拡張可能または折り畳み可能な、金属ステントもしくは骨格を覆う生体適合性で加温拡張可能な織物を支持するものである金属の網目様骨格を含みうる。
【0111】
図14AからHは、開示される発明の実施形態による、導管400内にシャント200’を送達する、例となる方法を示す。
図14AからHの配備方法を説明するために、穿孔要素を組み込んでいるシャント200’を用いるが、この配備方法においては任意の構成のシャント200を用いてよいということを認識されたい。導管400は、半径方向に抑制された構成で、カテーテル(例えば、送達カテーテル304)を介して配備される(
図14A)。導管400が自力で、または導管400を加温することによって等、またはそれらの組み合わせで拡張する場合、例えば送達カテーテル304を後退させた後で、導管400がIPS102内で半径方向に拡張する(
図14B)。IPS102内で拡張して埋め込まれた導管400を
図14Cに示す。
図14Dは、
図14Cの挿入部であり、吻合チャネル140を作るために、IPS壁114およびくも膜層115を通るCP角槽138へのシャント200’の誘導を容易にする、導管400の湾曲した遠位部402のさらなる詳細を示す。
図14Eでは、シャント200’が、送達カテーテル304を介して、IPS102に埋め込まれた導管400内に前進する。シャント200’の移動および前進は、先に開示したように、ガイドワイヤの使用により補助されうる。
図14Fに示すように、シャント200’が導管400の湾曲した遠位部402に到達すると、シャント200’の遠位部202は屈曲して導管400の湾曲した側面に従う。シャント200’が導管400内を前進するにつれて、シャント200’はIPS壁114の方へ向けられる。シャント200’がIPS壁114に到達すると、臨床医がシャント200’に対して好適な力を加えて(例えば、シャント200’と連結したガイドワイヤを介して)、シャント200に組み込まれた組織貫通部材250が、IPS壁114を貫通および穿孔して吻合チャネル140を作ることにより、シャント200’の遠位部202がCP角槽138にアクセスする(
図14G)。吻合140を作ることはまた、上記
図5EからGにおいて説明されている。シャント200’は固着機構229を含み、特に
図14GからHに示す固着機構は、複数の変形可能な要素229a(例えば、アーム)および網目229bを含む遠位部の固着機構229である。変形可能な要素/アーム229は、例えば屈曲可能または変形可能な材料(例えば、ニチノール(登録商標))から成る部材である、外側に半径方向に拡張することを可能とする任意の好適な構成を含みうる拡張可能部材である。網目229bが、シャント200’のルーメン207との流体連通を可能にすることにより、CP角槽138内のCSFが、埋め込まれたシャント200’を通って頸静脈球108および/または頸静脈106へ流れる。
図5Iに示すように、網目229bは、シャント200’の遠位開口219として機能して、任意の他の好適な構成(例えば、穿孔、多孔質材料等)を備えうる。逆方向の力229cが加えられたときに(例えば、ガイドワイヤを介して)、組織貫通部材250が後退し、
図14Hに示すように、半径方向の外側方向229dにアーム229aを屈曲、拡張または変形させて、CP角槽138内にシャント200’の遠位部202を固着するように、アーム229aは組織貫通部材250と連結する。
【0112】
あるいは、組織貫通部材250を、
図5Jに示すように埋め込まれたシャント200’から取り外して除去できるように、アーム229aは組織貫通部材250と着脱可能に連結する。
【0113】
図15AからDは、固着機構229の代替の実施形態の詳細な断面図と、開示される発明の実施形態による標的部位におけるシャント200の送達についての例である方法とを示している。
図15Aに示すように、固着機構229は、内部シース229f、変形可能要素229eならびに内部シース229fおよび要素229e上に摺動可能に配置される外部シース229gを含む。変形可能要素229e(例えば、アーム、ワイヤ、輪、層等)は、半径方向に抑制される送達構成(例えば、
図15AからBに示すように、要素229e上に配置される外部シース229g)および半径方向に拡張した展開構成(例えば、
図15Dに示すように後退した外部シース229g)を含む。変形可能要素229eは、任意の好適な生体適合性の金属、合金、高分子材料またはそれらの組み合わせの、例えばニチノール(登録商標)である形状記憶材料から成る。要素229eは、例えば粘着性の、熱性の結合、溶接等もしくはそれらの組み合わせによって、またはその他の好適な方法によって、内部シース229fと連結する。変形可能要素229eの展開構成は、CP角槽138内のIPS壁114において、シャント200の遠位部202を拡張、固着および固定するように構成される。固着機構229内に配置される組織貫通部材250は、シャント200が標的部位に送達および埋め込まれたときに、組織貫通部材250は取り外されて除去されるように、固着機構229および/またはシャント200に着脱可能に連結される。
【0114】
組織貫通部材250がIPS壁114に吻合チャネル140を作った後、遠位方向(
図15Bの上方左部の矢印で示す)に好適な力を加えることによって、固着機構229を含むシャント200の遠位部202は前進する。内部シース229fおよび外部シース229gの部分が、吻合チャネル140を介してCP角槽138へ延びる。CP角槽138に入ると、近位方向(
図15Bの上方右部の矢印で示す)に好適な力を加えることによって、組織貫通部材250はシャント200から取り外されて後退する。外部シース229gもまた後退するため、展開構成状態の変形可能要素229eが現れ、
図15Bに示すようにシャント200のルーメン207を規定する内部シース229fがさらに現れる。
図15CからDに示す変形可能要素229eは、展開構成の際に半径方向に拡張する複数のニチノール(登録商標)ワイヤを含み、くも膜層115および/またはIPS壁114(すなわち、硬脳膜)外側に対して、かつ、CP角槽138内で、シャント200の遠位部202を固着および固定するように構成される。
【0115】
図16は、開示される発明の実施形態に基づく、代替的な遠位の固着機構229の側面図を示す。固着機構229は、形状記憶材料(例えば、ニチノール(登録商標))もしくは他の変形可能材料またはそれらの組み合わせから成る本体251(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な、制御ワイヤを介して駆動可能な遠位部等またはそれらの組み合わせ)を含む。固着機構229は、送達構成(例えば、送達組立体300および/または導管400を介して前進するために細長く伸ばされる)および展開構成(例えば、180度から340度の間で湾曲または弧状にされる)を備える。固着機構229は、IPS102の管腔内からCP角槽138への入口となる第1の点でIPS壁114およびくも膜層の穿孔を容易にするように構成される角度をもつ組織貫通部材250をさらに含み、第1の吻合チャネル140aを作り、CP角槽138からIPS102の管腔に戻る入口となる第2の点で第2の吻合チャネル140bを作る。特に、第1の吻合チャネル140aを作った後に本体251が湾曲してさらに前進するため、組織貫通部材250は、入口となる第2の点においてIPS壁114と再度接触して穿孔し、第2の吻合140bを作る。従って、シャント200の遠位部202は、吻合チャネル140aおよび140b双方を貫通して配置される固着機構229の本体251の部分を含むことによって生体内に固着および固定されて、埋め込まれたシャント200の外れが防止される。
【0116】
開示される発明の実施形態によれば、シャント200が埋め込まれたときにCP角槽138にあるCSFが排出されるように、固着機構229の本体251は、シャント200のルーメン207との流体連通を可能にする開口253(すなわち、孔、多孔性の、穿孔等またはそれらの組み合わせ)を含む。開口253は、シャント200が埋め込まれたときにCP角槽138内に配置されるものとして構成される、固着機構229の本体251内に形成される。吻合チャネル140aおよび140bにおけるIPS壁114内ならびに/またはIPS102内に配置されるものとして構成される、固着機構229の本体251の部分(例えば、遠位および近位部の固着機構229)には、シャント200を介した血液の流出を防止または回避するために、いずれの開口253も含まないことを認識されたい。開口253の大きさおよび位置は、本体251の物理的性質を変える、例えば、固着機構229の本体251の湾曲の程度および堅さを変えるために選択することが可能である。
【0117】
図17AからB、18AからBおよび19AからBは、シャント200’の埋め込みのためにIPS壁114およびくも膜層115を穿孔し、かつ、CP角槽138への吻合チャネル140を作るために好適な角度を達成するように構成された組織貫通部材250を有するシャント200’の遠位部202の、例である実施形態を説明する。
図17AからB、18AからBおよび19AからBで説明される実施形態の態様および特徴は、開示した実施形態による、穿孔および/または埋め込みのためにIPS壁114に対して適切な角度および向きで配置されるものとして構成された、シャント200の遠位部202、送達カテーテル304の遠位部344、誘導カテーテル320の遠位部324、ガイドワイヤ(308、304、310)の遠位部および/または送達組立体300のその他の要素に組み込むことが可能であるということを認識されたい。
【0118】
図17AからBは、開示される発明の実施形態による、例であるシャント200’の遠位部202を示す。シャント200’の遠位部202は、遠位部202が予め湾曲される、または傾斜して湾曲される構成を有するように(
図17B)、例えばニチノール(登録商標)として公知の超弾性ニッケル・チタン合金である形状記憶材料、または、他の好適な変形可能材料から成る。シャント200’の遠位部202は、送達カテーテル304(
図17A)もしくは送達組立体300および/または導管400を介して前進するために遠位部202を細長く伸ばした送達構成と、送達カテーテル304が後退するとき(
図17B)またはシャント200の遠位部202を半径方向に抑制できる送達組立体300のその他の要素が後退するときに、遠位部202はその湾曲構造をとるものである展開構成とを備える。シャント200の遠位端部202は、IPS壁114に向けて好適な角度で傾斜して湾曲するか、および/または、IPS壁114に向かうものとするように構成されるため、組織貫通部材250を有する遠位端部202が、IPS壁114およびくも膜層115を穿孔し、吻合140を作り、および/または、CP角槽138へシャント200’を埋め込むように構成される。
【0119】
図18AからBは、開示される発明の実施形態による、別の例であるシャント200’の遠位部202を示す。シャント200’の遠位部202は、開示される発明による柔軟な細長管状構造を含み、管状構造内に形成される複数の溝254(例えば、切り込み、開口、穿孔等またはそれらの組み合わせ)をさらに備える(
図18A)。溝254は、管状構造の軸方向強さおよび曲げ強さを選択的に弱めるように構成されており、遠位部202に外力が与えられるとき、例えば、遠位端部202が
図12および14AからFの導管400などの物体と接触するときに、遠位部202が曲げや折り畳みの影響をより受けるようにさせる。
図18Bに示すように、溝254は、埋め込まれたシャント200’の遠位部202の曲げに起因して閉じたままになるように構成されるため、シャント200’を介した血液の流出を防止および回避する。
【0120】
図19AからBは、開示される発明の実施形態による、さらに別の例であるシャント200’の遠位部202を示す。遠位部202は、IPS壁114に対して適切な角度および向きでシャント200’の遠位部202を位置させるように構成された細長部材280(例えば、脚、キックスタンド等)を含む。細長部材または脚280は、ヒンジ様の構成でシャント200’の遠位部202に連結された第1の端部281と、プルワイヤ288に連結された第2の端部282とを含む。脚280は、IPS102内の所望の位置において、シャント200’の遠位端部202を補助して安定させるように構成されたスタンドまたは足283を第2の端部282にさらに含む(
図19B)。脚280は、開示される発明により、任意の好適な生体適合性材料から成る。脚280は、第1の端部281において、シャント200’の遠位部202に装着されてよく(例えば、ヒンジ、接着された、溶接されたまたは他の移動可能な装着)、または、シャント200’を切り欠いた管状構造であってよい。脚280は、送達カテーテル304またはその他の送達組立体300の要素を介して前進するための送達構成と(
図19A)、IPS102内の所望の位置において脚280がシャント200’の遠位端部202を補助して安定させるものである展開構成(
図19B)とを備える。脚280の第2の端部282に連結されるプルワイヤ288に好適な逆方向の力を加えることにより、脚280は、足280がIPS102の下方部と接触するように(例えば、IPS壁114と対向するIPS壁117上に「立つ」ように)逆方向に動いて、
図19Bに示すようにシャント200’の遠位端部202を支持して安定させる。
【0121】
図20AからFは、開示される発明の一実施形態に基づく、送達組立体300を示す。送達組立体300は、送達カテーテル304、送達カテーテル304内に同軸に配置されたシャント200およびシャント200内に同軸に配置された細長推進部材310 310を含む。組織貫通部材306(例えば、手術用器具)が、細長推進部材310(例えば、穿孔マイクロワイヤ)の遠位部354に配置される。細長推進部材310は、細長推進部材310の外部表面311上に配置される1つまたは複数の係合部材312を含み、シャント200は、細長推進部材310の1つまたは複数の係合部材312と機械的な相互作用を形成するために、シャント200の内壁表面208上に配置される1つまたは複数の係合部材242を含む(
図20A)。シャント200の係合部材242(すなわち、第1の係合部材)は、シャント200の内壁208から半径方向内側に突出および/または延びて、細長推進部材310の係合部材312(すなわち、第2の係合部材)は、内部シャント壁208に対して半径方向外側に突出および/または延びる。第2の係合部材が第1の係合部材と係合することによって、シャント200の遠位部202を、組織貫通部材306上でIPS102からCP角槽138へ前進させる(
図20E)。係合部材312および242は、突出、球、環(collar)等もしくはそれらの組み合わせまたはその他の好適な構成を含んでよい。開示の発明によれば、細長推進部材310の係合部材312およびシャント200の係合部材241が互いに接して係合するとき(
図20Bおよび20E)、細長推進部材310および貫通要素306の前進が、標的または標的貫通部位へシャント200を同時に前進させる。係合部材312および242は、一方向で(すなわち、IPS壁114の貫通部位の方向において前方、くも膜下腔116に対して遠位に(
図20B、20Dおよび20E))係合するものであるように構成されるため、係合部材312および242は、貫通要素306を有する細長推進部材310が送達カテーテル304から後退するとき、または近位に移動するときに係合が解除される(
図20F)。
【0122】
組織貫通部材306は、細長推進部材310および組織貫通遠位先端を備え、細長推進部材310は、シャント200のバルブ209、ルーメン207および遠位開口201をそれぞれ通って延びるものであって、細長推進部材310は、組織貫通306の遠位先端がルーメン207と通じるシャント200の遠位開口201から出て前進し、かつ、該遠位開口201内に後退しうるようにシャント200に対して移動可能であって、シャント200の遠位部202をIPS102からCP角槽138へ前進させることには、組織貫通部材306でシャント200の遠位部202の搬送をしながら、組織貫通306の遠位先端がIPSの硬脳膜組織壁114およびくも膜組織層115をそれぞれ通ってCP角槽138へ貫通するように、細長推進部材310を前進させることが含まれる(
図20AからE)。シャント200を配備する場合、方法は、シャントの遠位部をCP角槽へ前進させた後で、シャント200の遠位開口202、ルーメン207およびバルブをそれぞれ介して組織貫通部材306を後退させることをさらに含むものであって、組織貫通部材206を後退させた後、CSFが、シャント200の遠位開口201、ルーメン207およびバルブ209をそれぞれ通って流れる(
図20F)。シャント200を配備する場合、方法は、送達カテーテル304を前進させることであって、送達カテーテル304の送達ルーメン305内に少なくとも部分的に配置されるシャント200および組織貫通部材306を伴う送達カテーテル304をIPS102へ前進させることをさらに含み、送達カテーテル304は、それを介して組織貫通部材306およびシャント200それぞれがCP角槽138へ前進しうる送達ルーメン305と通じる遠位開口を有する。シャントを配備する方法は、送達カテーテル304の軸を中心に送達カテーテル304の回転向きを調節することをさらに含むことにより、組織貫通部材306の組織貫通遠位先端はその後、組織貫通部材306がCP角槽138へ前進する前に、送達カテーテル304の遠位開口から出て、それに対して30度から90度の範囲の角度で、硬膜IPS壁114と接触するように前進する。該方法は、患者にシャントを配備しながらシャントを画像処理することをさらに含む。
【0123】
図20AからBで説明される、細長推進部材310の係合部材312およびシャント200の係合部材241の態様、特徴および機能は、ガイドワイヤに連結される組織貫通部材250が標的部位へのシャント200’の前進を補助し(
図5EからI)、埋め込まれたシャント200’から係合を解除されて除去されるように構成されるように(
図5J)、送達組立体300’に組み込まれてよいということを認識されたい。
【0124】
図20AからFに戻って参照すると、送達カテーテル304は、送達カテーテル304の遠位部344に連結されるまたは遠位部344上に配置される偏向要素370を含む。偏向要素370は、角度のついた内部傾斜375および側部開口377を有する管状構成を含む。偏向要素370は、好適な生体適合性金属、合金、高分子等またはそれらの組み合わせより形成される。偏向要素370、特に傾斜375は、比較的堅い非変形可能材料で形成されうるか、または、比較的堅い高分子のコーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン“PTFE”、ポリエチレンテレフタレート“PET”)で覆われうる。偏向要素370は、開示される発明により、X線不透過材料をさらに含みうるか、または、画像処理目的のための標識をさらに含みうる。開示される発明により、偏向要素370および傾斜375は、組織貫通要素306、細長推進部材310および細長推進部材310と係合するシャント200を開口377に向けて偏向するように構成されるため、標的部位へのシャント200の埋め込みに関して、組織貫通要素306、細長推進部材310およびシャント200は、IPS壁114およびくも膜層115を穿孔するために好適な角度で、送達カテーテル304の遠位部344から出て前進する(
図20B)。
【0125】
吻合を作る、およびCP角槽138にアクセスするためのIPS壁114穿孔の前に、送達カテーテル304の遠位部344の適切な向き、特に偏向要素370および/または開口377の適切な向きを、先に開示した画像処理方法によって検証することができる。必要な場合、送達カテーテル304の遠位部344上に配置される偏向要素370の位置および向きは、例えば、送達カテーテル304の本体に対して、または部材310が送達カテーテル304に係合されていれば細長推進部材310に対して、回転力を直接加えることによって調節することができる。
【0126】
あるいは、
図20CからDに示すように、IPS102内で、送達カテーテル304の遠位端部344および/または偏向要素370の開口377を位置させる、配向させるおよび/または安定させるために安定化要素380を用いることができる。送達組立体300の安定化要素380は、誘導カテーテル320と同軸に配置されてよく、IPS102の壁114、117(すなわち、
図2に示すように直径d
1)を半径方向に拡げて係合するように構成される遠位部382を含むものであり、安定化要素380が誘導カテーテル320の遠位部324から出て前進するときか、および/または、誘導カテーテル320が退けられるときに、安定化要素380の遠位部382が現れる。安定化要素380は、開示される発明による、任意の好適な生体適合性形状記憶のおよび/または拡張可能な材料から成る。
【0127】
図20CからDの実施形態では、安定化要素380の遠位部382は、らせん構成を含む。他の実施形態では、安定化要素380の遠位部382は、IPS102の壁114、117と係合するように構成される、例えばコイル、ステント、拡張可能な発泡体、バルーンまたはそれらの組み合わせである任意の好適な構成を含み、かつ、IPS102内で、送達カテーテル304の遠位端部344および/または偏向要素370の開口377の位置、向きおよび/または安定を補助することができる。配備される場合、安定化要素380は、送達カテーテル304の遠位端部344および/または偏向要素370の開口377の位置を安定化して、IPS壁114を穿孔している間の、IPS102内でのカテーテルの遠位端部344および偏向要素370の動きを防止する(
図20D)。
【0128】
図20Eは、送達カテーテル304を後退させること(図示せず)に加えて、
図20AからDの実施形態の細長推進部材310の前進による(すなわち、各係合部材312および242の係合を介して)、標的部位へのシャント200のさらなる前進を示す。シャント200が標的部位に配備されると、
図20Fに示すように、組織貫通要素306を有する細長推進部材310が後退する(すなわち、各係合部材312および242の係合の解除)。加えて、開示される発明により、シャント200の固着機構229が配備されて、標的部位でシャント200の遠位部202を固定する。
【0129】
図21AからDは、開示される発明の一実施形態に基づく、1つまたは複数の安定化要素380を有する送達組立体300’を示す。送達組立体300’は、誘導カテーテル320、送達カテーテル304および送達ガイドワイヤ308を含む。送達組立体300’の送達カテーテル304は、送達カテーテル304の遠位部344から延びるかまたは送達カテーテル304の遠位部344上に配置される安定化要素380と、送達カテーテル304の遠位部344に配置される偏向要素370とを含む。
図21Aに示すように、安定化要素380は、第1の安定化要素380a、第2の安定化要素380bならびに安定化要素380aおよび380b間に配置される偏向要素370を備える。安定化要素380aおよび380bは、開示される発明による画像処理の提案のために造影剤で膨張させることができる可膨張性バルーンを含む。いくつかの実施形態では、安定化要素380aおよび380bは、拡張可能コイル、ステント、発泡体等またはそれらの組み合わせを含みうる。偏向要素370は、開示される発明による内部角度傾斜375および側部開口377を含む(
図20AからD)。
【0130】
図21Aに示すように、安定化要素380aおよび380bは、IPS102内で送達構成に収縮されおよび/または半径方向に抑制されている。開示される発明の方法により、送達カテーテル304の遠位部344および/または開口377について適切な位置および向きが達成されると、
図21Bに示すように安定化要素380aおよび380bを膨張させて、および/または半径方向に拡張させて、IPS102内で送達カテーテル304および/または開口377を安定化させる。
図21CからDに示すように、組織貫通部材250を組み込むシャント200’は送達カテーテル304を介して前進して、偏向要素370の傾斜375と接するため、シャント200’が開口377の方へ偏向されて、組織貫通部材250が、開示される発明により、標的部位への吻合140を作ることおよびシャント200’の埋め込みに好適な角度でIPS壁114およびくも膜層115に接触および穿孔する(
図21E)。
図21Eに示すように、シャント200’に組み込まれる遠位固着機構229は、拡張してCP角槽138内でシャント200’を固着して、さらにシャント200’を通してCSFドレナージを可能とする。
図21CからEの実施形態では、シャント200’は、さらに以下に詳細に説明することとするelliptecot構成を備える。
図21AからEに開示される実施形態および方法は、異なる実施形態に関して開示した特徴およびステップ(例えば、シャント200、送達組立体300)を含む、本明細書に開示したあらゆる特徴およびステップを、適宜任意の組合せで含むことが可能であるということを認識されたい。
【0131】
図22AからGは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、例であるシャント200を示す。シャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビルバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。固着機構227および229は、展開構成(
図22Aおよび22FおよびG)において半径方向外側に配置される、各変形可能要素227aおよび229a(例えば、アーム)を複数有するマレコー構成を含む。固着機構227および229は、アーム227aおよび229aを形成する、同心で平行かまたは半径方向に間隔を空けた、シャント200の近位204および遠位202それぞれの部分の長さに沿った切り込み222により形成される(
図22BからD)。
図22CからDは、近位204(
図22C)および遠位202(
図22D)それぞれの部分における切り込み222の、例であるパターンおよび寸法を示す。近位部204における切り込み222のパターンおよび寸法は、遠位部202における切り込み222のパターンおよび寸法と、類似または非類似でありうるということを認識されたい。各変形可能要素227aおよび229aは、ヒンジ様の点227bおよび229b(例えば、一体ヒンジ、ジョイント等)をそれぞれ有する。
図22Aに示すように、ヒンジ様の点227bおよび229bは、ヒンジ様の方式でシャント200の軸から半径方向外側に移動するように構成されて、アーム227aおよび229aを外側に配置させることを可能にするため、シャント200が標的部位で固着される。固着機構は、例えばニチノールなどの超弾性材料から成る場合に、予め形成された拡張または展開構成(例えば
図22A、
図22FからGの構成)を有することが可能である。展開した固着機構227は、頸静脈球108、IPS壁117および/またはIPS102の別の部分と係合して、バルブ209が頸静脈106内に配置されるように、頸静脈106内でシャント200の近位部204を固着する。あるいは、固着機構227は、接合118(図示せず)において、IPS壁114および117と係合してよい。展開した固着機構229は、埋め込まれたシャント200を通ってCSFが頸静脈106へ流れるように、CP角槽138内でシャント200の遠位部202を固定する(
図5HからJ)。
【0132】
加えて、シャント200は、シャント200の近位部204と連結される連動要素294(例えば、クラスプ)を含みうる(
図22Bおよび22E)。連動要素294は、標的部位におけるシャント200の配備のために、送達組立体の遠位部に連結される連動要素(図示せず)と係合および係合解除されるように構成される。
図22Eは、連動要素294の実施形態を形成するために超弾性材料の管状部分のレーザによる切断に用いる、例であるパターンを示す。
【0133】
図22Bで参照する寸法は、インチで提供されている。
図22Bに示す寸法はシャント200の例となる寸法であり、
図22AからGの実施形態を限定することを意図していないということを認識されたい。
【0134】
図23AからEは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。
図23Aに示すように、シャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビルバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。シャント200の本体203は、患者の解剖学的構造(すなわち、シャント200埋め込みの標的部位に従って、シャントの長さL
2(
図6)の選択的な伸長および/または調節のための、
図6EからFに示すような摺動可能に配置される同軸の管状要素を備える。固着機構227および229は、展開構成において半径方向外側に配置される、各変形可能要素227aおよび229aを複数有する花様構成(例えば、花弁)を含む。変形可能な花弁227aおよび229aは、
図23Bに示すように、同心で平行かおよび/または半径方向に間隔を空けた、シャント200の近位204および遠位202それぞれの部分の長さに沿った切り込み230によって形成される。花弁227aおよび229aの数は、各近位部204および遠位部202に形成される切り込み230の数に応じる。花弁227aおよび229aは、
図23Aおよび23CからDに示すように、シャント200を埋め込んだときに、その展開構成に反転され、折り畳まれおよび/または拡張されるように構成される。
図23CからDに示すように、遠位固着機構229は、花弁229aが反転され、折り畳まれおよび/または拡張されるように、シャント200の前進によって、および/または送達カテーテル304の後退によって配備され、
図23Dに示すようにくも膜層115に係合し、かつ、CP角槽138内にシャント200の遠位部202を固定する。
【0135】
図24AからEは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、さらに別の例であるシャント200を示す。シャント200は、近位部204に固着機構227および連動バルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。シャント200の本体203は、患者の解剖学的構造に従って(すなわち、シャント200埋め込みの標的部位)、シャントの長さL
2(
図6)の選択的な伸長および/または調節のための、
図6GHに示すようなバネ/コイル様本体を備える。また、シャント200のバネ/コイル様本体203は、少なくとも、シャント200の近位部204および遠位部202間に、張力を与えるように構成され、埋め込まれたシャント200が標的部位に適切に固着することを維持する(例えば、シャントが動くことまたはシャントの緩い固着を防止する)。固着機構227を形成する近位部204および固着機構229を形成する遠位部202は、配備されるときに、
図24AからCに示すようにらせんコイルまたはバネ様構成を備えるように、シャント200は、例えばニチノール(登録商標)として公知の超弾性のニッケル・チタン合金などの形状記憶材料または他の好適な材料から成る。シャント200は、送達構成(
図3B)においては、送達組立体300を介して前進するために細長く伸ばされ、シャント200を半径方向に抑制する送達組立体300が後退するか、および/またはシャント200が送達組立体300から出て前進するときに展開構成をとることにより(
図24AからC)、固着機構227(
図24Aおよび24C)および229(
図24AからB)が展開して、埋め込まれたシャント200を標的部位に固定する。CSFは、CP角槽138から、埋め込まれたシャント200を介してシャントの遠位部202からシャントのルーメン207に入り(
図24B)、シャントの近位部204におけるバルブ209から出て(
図24D)頸静脈106へ流れる。
図24Dに示すように、バルブ209は、
図6Lにも示すように、バルブの開口をさらすスリットを伴う、シャント200の近位部204に収納される同心のグランドシールを備える。
図24Eは、
図24Aのシャント200の代替の実施形態を示すものであって、シャント200は、展開構成で、シャント200の長さL
2の実質的に全体(すなわち、近位部204から遠位部202で、本体203を含む)にバネ/コイル様構成を備える。
【0136】
図25AからGは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、さらに別の例であるシャント200を示す。
図25Aに示すように、シャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビルバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。シャント200の本体203は、患者の解剖学的構造に従って(すなわち、シャント220埋め込みの標的部位)、シャントの長さL
2(
図6)の選択的な伸長および/または調節のための、
図6EからFに示すような摺動可能に配置される同軸の管状要素を備える。シャント200の近位部204に配置される展開した固着機構227は、ダックビルバルブ209が頸静脈106内に配置されるように(
図25G)、頸静脈球108、IPS壁117およびIPS102の別の部分に係合することによって、頸静脈106内にシャント200の近位部204を固着するらせん構成を備える。あるいは、固着機構227は、接合118(図示せず)において、IPS壁114および117と係合してよい。固着機構229が送達構成のときは、係合カニューレを形成する組織貫通部材250がシャント200の遠位部202の部分202’’上で折り畳まれ(例えば、送達カテーテル304によって半径方向に抑制される(
図25BからC))、固着機構229が展開構成のときは、組織貫通部材250が部分202’’からヒンジ様の方式で展開または拡張されるように(
図25Aおよび
図25EからF)、シャント200の遠位部202の固着機構229は、逆方向の返し構成を備える(
図25AからF)。遠位部202の部分202’’は、展開構造において半径方向に拡張して、IPS102内でシャント200の遠位端部202を支持して安定化するように構成される(
図25Aおよび25EからF)。
図25BからCに示すように、固着機構229は、送達カテーテル304を介してIPS102内の標的部位へ前進する(例えば、頸静脈球108または頸静脈結節(図示せず)に近接する場所において)。固着機構229がIPS102内をさらに前進し、および/または、送達カテーテル304が後退することにより(
図25C)、組織貫通部材250が展開する(
図25D)。シャント200へ好適な逆方向の力を加えることによって、IPS壁114と接触する展開した組織貫通部材250が、IPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を穿孔して、CP角槽138への吻合140を作る(
図25EからF)。固着機構229の拡張部分202’’が、
図25Aおよび25EからFに示すように、配備されたシャント200の遠位端部202を支持して安定化させる(例えば、IPS壁117と接触する/IPS壁117「上に固定される」)。
【0137】
図26AからGは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。
図26Aに示すように、シャント200は、近位部204に固着機構227およびバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。
図26Aに示すように、シャント200の本体203および遠位部202は、導管400に関して
図12および13AからCに示すように、弾性の/高分子のカバー/ライナーおよび/またはステントグラフト構成を有する自己拡張ステントを備える。シャント200は、送達構成(
図26B)では送達カテーテル304を介して前進するために細長く伸ばされ、シャント200を半径方向に抑制する送達カテーテル304が後退するか、および/またはシャント200が送達カテーテル304の遠位部344(例えば、遠位端開口346)から出て前進するときに展開/拡張構成をとることにより(
図26A、26CからE)、固着機構229(
図26Aおよび26CからE)が自己拡張して、埋め込まれたシャント200を標的部位に固定する。固着機構227は、バルブ209が頸静脈106内に配置されるように、頸静脈球108および/または頸静脈106、IPS壁117ならびにIPS102の別の部分に係合することによって、頸静脈106内でシャント200の近位部204を固定する(
図26Aおよび26H)。CSFは、CP角槽138から、埋め込まれたシャント200を介してシャントの遠位部202からシャントのルーメン207に入り(
図26Aおよび26C)、シャントの近位部204におけるバルブ209から出て(
図26A)頸静脈106へ流れる。
図26Aおよび26FからGに示すようにバルブ209は、
図6Lにも示すように、バルブの開口をさらすスリットを伴うシャント200の近位部204に収納される同心のグランドシールを備える。送達組立体300は、
図26Fに示すように、シャント200を送達カテーテル304に着脱可能に連結するように構成される連動機構290をさらに備える。連動機構290は、送達組立体300に連結された(例えば、プッシュワイヤを介して)第1の連動要素292(例えば、クラスプ)と、シャント200の近位部204に連結された(例えば、バルブ209に装着された)第2の連動要素294(例えば、クラスプ)とを含む。シャント200が標的部位に適切に配置されると、送達カテーテル304が後退することにより、連動機構290を連結解除させる(
図26G)。シャント200の近位部204に連結された連動要素294はまた、次に、埋め込まれたシャント200を捕捉する、復帰させる、および/または後退させることを可能とする(例えば、スネアカテーテル)。
【0138】
図27AからEは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。
図27Aに示すように、シャント200は、近位部204に固着機構227およびバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。
図27AからBに示すように、シャント200の本体203は、
図12、13AからCおよび26AからEに示すように、弾性の/高分子のカバー/ライナーおよび/またはステントグラフト構成を有する自己拡張ステントを備える。シャント200の展開した固着機構227および229は、標的部位においてシャント200を固着するため、半径方向に拡張する構成(例えば、網目もしくはワイヤを張った球、楕円、ワイヤを張ったフレームもしくは籠等またはそれらの組み合わせ)を備える(
図27AからB)。シャント200が埋め込まれるとき、固着機構227および229(
図27AからD)が自己拡張し、それによって埋め込まれたシャント200を標的部位に固定する。シャントの近位部204の固着機構227は、バルブ209を組み込む。バルブ209は、弾性の/高分子のライナーで部分的に覆われたワイヤフレームを備えることにより、CSFの流れが、ワイヤフレーム上を覆っているライナーの割合によって調整される(
図27Aおよび27C)。例えば、
図27Cに示すように、ワイヤフレームがライナーによって実質的に覆われている場合流量は小さく、
図27Aに示すように、ワイヤフレームに対するライナーのカバー率が小さい場合流量は大きい。
図27CからEに示すように、送達組立体300は、シャント200を送達カテーテル304に着脱可能に連結するように構成される連動機構290をさらに備える。連動機構290は、送達カテーテル304に連結された第1の連動要素292(例えば、鉤爪)と、シャント200の近位部204に連結された(例えば、バルブ209に装着された)第2の連動要素294(例えば、輪)とを含む。シャント200が標的部位に適切に配置されると、送達カテーテル304を後退すること、および連動機構290の連結解除により(例えば、
図27Eに示すように鉤爪の係合を解除)、シャント200の配備が可能となる(
図27D)。シャント200の近位部204に連結される連動要素294(例えば、輪)はまた、次に、埋め込まれたシャント200を捕捉する、復帰させるおよび/もしくは後退させること(例えば、鉤爪器具/カテーテル)または近位部204のバルブ209の再建が可能となる。
【0139】
あるいは、
図27AからEに示すシャント200の実施形態は、2ステップの手順を用いてIPS102に配備するように構成することが可能である。第1に、自己拡張可能な弾性の/高分子のカバー/ライナーおよび/またはステントグラフト構成を備えるシャント200の本体203を、IPS102内に配備しうる。いくつかの実施形態では、カバー/ライナーまたはステントグラフト要素は、IPS102内にのみ存在するが、他の実施形態では、カバー/ライナーまたはステントグラフト要素を配備することには、IPS102とCSFで満たされたCP角槽138のくも膜下腔との間の吻合接続を作るステップを含む(例えば、
図26BからE)。第2のステップでは、自己拡張するワイヤ形状(例えば、近位および遠位の固着機構227および229をそれぞれと、カバーライナーまたはステントグラフト内に存在するように構成されたステント様本体部分とを備える)を、予め配備されたカバー/ライナーおよび/またはスタントグラフトを介して送達しうる(例えば、
図27B)。固着機構227および229(
図27BからD)は、ワイヤ形状がCP角槽138内(すなわち、機構229)および頸静脈106内(すなわち、機構227)においてカバー/ライナーおよび/またはステントグラフトを出て配備されると自己拡張し、それによって埋め込まれたシャント200を標的部位に固定する。近位固着機構227を備える部分的に覆われたワイヤフレームは、先に開示したように、カバー/ライナーおよび/またはステントグラフトとともにバルブ209を形成する。
【0140】
図28は、開示される発明の実施形態により構成された、例であるシャント200を示す。シャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビルバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含み、固着機構223をさらに含む。固着機構223、227および229は、展開構成において半径方向外側に配置される、各変形可能要素223a、227aおよび229a(例えば、ワイヤ、ループ)を複数含む。変形可能要素223a、227aおよび229aは自己拡張しており(すなわち、送達構成から展開構成へ拡張している)、シャント200の軸から半径方向外側に移動するように構成されて、本体203を含むシャント200が標的部位に固着することを可能にする。固着機構227は、バルブ209が頸静脈106内に配置されるように、頸静脈球108、頸静脈106、IPS壁117および/またはIPS102の別の部分と係合するように構成されて、頸静脈106内でシャント200の近位部204を固着する。固着機構223は、IPS壁114および117と係合するように構成されてIPS102内で本体203を固着し、固着機構229は、くも膜層115と係合するように構成されてCP角槽138内でシャント200の遠位部202を固着する。
【0141】
図29AからGは、開示される発明の
図12および
図14AからHの実施形態により構成されて埋め込まれたシャント200の代替となる実施形態を示す。
図29AからGの実施形態では、シャント200は導管400に連結されて、シャント200は近位部204にバルブ209をさらに含む。2つの円錐形ニチノールコイル229aは、送達カテーテル304および導管400により抑制されているとき穿孔錐(図示せず)を形成し、穿孔錐のコイル229a(例えば、ペンシル先端構成)は、抑制された送達構成でIPS102に送達され、それによってIPS壁の硬膜114およびくも膜層115を貫通する鋭利な貫通部材を提供する。コイル229aは、硬膜114およびくも膜115を貫通後、CP角槽138内で貫通したくも膜層115を圧縮または押さえつけるように、穿孔錐形状から離れてくも膜下腔内で拡張するために、自己拡張することが可能である。あるいは、コイル229aは、先に開示した固着機構229の実施形態により、貫通錐から展開構成に機械的に駆動することが可能である。
図29A、29CからDおよび29FからGに示すように、固着機構227および229は、導管400上に組み込まれるまたは配置される。導管400は、
図12に示すように、弾性の/高分子のカバー/ライナーおよび/またはステントグラフト構成を有する自己拡張可能なステントを備える。固着機構229は、複数の変形可能要素229a(例えば、コイル)と、管状ネック229bとを備える(
図29A、29CからD)。複数の変形可能要素229aは、シャント200および/または導管400の軸から半径方向外側に移動するように構成されて、あるいは、要素229aはまた、下方側に移動するように構成される(
図29A、29CからD)。ネック229bは、展開構成で吻合チャネル140内に配置されるように構成される(
図29A、29CからD)。加えて、固着機構229は、管状ネック229bと連結する係合部材229k(例えば、バネワイヤ、バルーン、鉤爪、返し等またはそれらの組み合わせ)を含み、半径方向外側および上方側に移動するように構成される(
図29D)。また、ネック229bおよび/または係合部材229kは、貫通部材(例えば、306、250、350、貫通錐)および/またはシャント200/200’が好適な遠位長さを超えてCP角槽138内に配備されることを防止する貫通止めを備え、脳幹112に接することまたは傷つけることを回避しながら、シャント200/200’の遠位先端および脳幹112間の好適な間隙を許容する。
【0142】
図29Dに示すように、固着機構229は、シャントのルーメン207の閉塞(例えば、くも膜による)を防止するために、硬脳膜のIPS壁114を展開した部材229kで、対してくも膜層115を展開した要素229aで、圧縮または押さえつけるように構成される。展開した固着機構227は、バルブ209が頸静脈106内に配置されるように、頸静脈球108、頸静脈106、IPS壁117および/またはIPS102の別の部分と係合して、頸静脈106内でシャント200の近位部204および/または導管400を固着する(
図29A、29FからG)。バルブ209は、生体適合性高分子材料(例えば、PTFE、ePTFE(すなわち、延伸ポリテトラフルオロエチレン)、PET)の折り畳み可能で、網目様の骨格より形成されたウィンドソック様構成を有することが可能である。その開形状において(例えば、くも膜下腔および静脈系間の正常差圧下で)、CSFは、CP角槽138からシャントのルーメン207を介して、ウィンドソックバルブ209の細孔から出て頸静脈106へ流れる。ウィンドソックバルブ209は、シャント200を介したくも膜下腔116への血液の逆流を防ぐために、それ自体を折り畳むことが可能である(例えば、咳やくしゃみ事象中など、静脈圧がくも膜下腔内の頭蓋内圧を超える場合)。
図29Gに示すように、シャント200の近位部204周辺の静脈血流の循環が、バルブ209を攪拌し、シャント200の近位部204における内皮細胞の成長およびルーメン207の開口の詰まりを最小限にし、妨げ、または回避する。
図27に示すシャント200の先に開示した実施形態のように、
図29に示すシャント200の実施形態は、2ステップの手順で配備可能である(例えば、第1のステップでの少なくともIPS102内への導管400の配備、第2の展開ステップでの近位および遠位固着機構227および229、ステント様本体部ならびにバルブ209を備える自己拡張するワイヤ形状の展開)。
【0143】
図30AからFは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。シャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビル209、遠位部202に固着機構229および組織貫通部材250ならびにその間に延びる細長本体203を含む。シャント200の本体203は、患者の解剖学的構造に従って(すなわち、シャント220埋め込みのための標的部位)、シャントの長さL
2(
図6)の選択的な伸長および/または調節のための
図6GHに示すようなバネ/コイル様本体を備える。また、シャント200のバネ/コイル様本体203は、少なくとも、シャント200の近位部204および遠位部202間に、張力を与えるように構成され、埋め込まれたシャントが標的部位に適切に固着することを維持する(例えば、シャントが動くことまたは緩く固着されるシャントを制限する)。シャント200は、熱可塑性エラストマー(TPE)から成りうるものであり、固着機構227および229は、ニチノール(登録商標)として公知の超弾性ニッケル・チタン合金などの形状記憶材料または他の好適な材料から成りうる。シャント200は、送達カテーテル304を介して前進するために細長く伸ばされている(
図30B)。固着機構227および229は、
図30AからFに示すように、T形管状構成を備える。固着機構229は、CP角槽138内に配置されるように構成された第1の固着要素229aを含み、シャント200が配備されたときに、組織貫通部材250がくも膜層115に隣接して配置および保持されるように、くも膜層115に対してシャント200の遠位部202を固着および/または保持させる(
図30Aおよび30C)。固着機構229は、IPS壁114と接触しながらIPS102内に配置されるように構成された第2の固着要素229bをさらに含み、
図30Aおよび30Cに示すように、さらに第1の固着要素229aと協調するときに、シャント200の遠位部202が固着および保持される。展開した固着機構227は、
図30Aおよび30DからFに示すように、バルブ209が頸静脈106内に配置されるように、頸静脈球108、頸静脈106、IPS壁117および/またはIPS102の別の部分と係合して、頸静脈106内でシャント200の近位部204を固着する。送達組立体300は、
図30DからFに示すように、シャント200を送達カテーテル304に着脱可能に連結するように構成される連動機構290をさらに備える。連動機構290は、送達組立体300に連結された第1の連動要素292(例えば、二重クラスプ、鉤爪)と、シャント200の近位部204に連結された第2の連動要素294(例えば、環状窪み)とを含む。シャント200が標的部位に適切に配置されると、送達カテーテル304の後退および連動機構290の連結解除により(例えば、
図30Eに示すように、鉤爪292の凹部294との係合を解除)、シャント200の配備が可能となる(
図30Aおよび30F)。シャント200の近位部204に配置された連動要素294(例えば、環状窪み)はまた、次に、埋め込まれたシャント200を捕捉する、検証する、修復する、復帰させるおよび/または後退させることが可能となる(例えば、鉤爪器具/カテーテル)。
【0144】
図31は、
図22の実施形態により構成されて埋め込まれたシャント200の、代替となる実施形態を示す。
図31に示す埋め込まれたシャント200は、近位部204に固着機構227およびダックビルバルブ209、遠位部202に固着機構229ならびにその間に延びる細長本体203を含む。固着機構227は、予め湾曲される構成を含み(例えば、“S”様形状)、かつ、シャント200の近位部204に取り付けられうる、頸静脈106内に配置されるステントをさらに含んでよい。固着機構227のステント部分は、バルブ209の閉塞を防止するために、頸静脈の比較的高い血流の領域にシャント200の近位部およびダックビルバルブ209を維持する。そうしたステント部分は、シャントの詰まりおよびシャント不成功を導く可能性がある、血管内皮細胞が過成長するシャント200の近位部204によって、近位部204およびバルブ209が頸静脈球および血管の壁に組み込まれることを防止する。
【0145】
図32は、
図21Eの実施形態により構成されて埋め込まれたシャント200の、代替となる実施形態を示す。埋め込まれたシャント200は、シャント200の遠位部202に、固着機構229および組織貫通部材250を含む。固着機構229は、先に開示したようにelliptecot構成を備える。
【0146】
図33Aから33Cは、開示される発明の実施形態により構成された、組織貫通要素306およびシャント200間のインタフェースの一実施形態を示す。組織貫通要素306は、シャント200のルーメン207内に同軸で配置されるように構成された中空の管状套管針を含む。組織貫通要素306は、IPS壁114およびくも膜層115を貫通するように構成された鋭利で斜面状の先端をもつ、湾曲した遠位部(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲された熱固定ニチノール、柔軟な、制御ワイヤを介して駆動可能な遠位部等またはそれらの組み合わせ)を含む。シャント200もまた、湾曲した遠位部202(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲された熱固定ニチノール、柔軟な等またはそれらの組み合わせ)を含む。
図33Aに示す場合、組織貫通要素306およびシャント200の湾曲した遠位部はそれぞれ反対向きで表されている。シャント200のルーメン207は、
図33Bに示すように、該ルーメン207において組織貫通要素306を通過させるように構成される。組織貫通要素306およびシャント200が弱め合う干渉で配置されている場合には(例えば、湾曲した遠位部がそれぞれ反対に向けられる)、組織貫通要素306およびシャント200は、
図33Bに示すような直線状にした構成を作る。この直線構成で、組織貫通要素306およびシャント200は、IPS壁114に沿った所望の配備場所に到達するまで、送達カテーテル304を経由して脈管構造を介して移動可能である。そうした場所において、
図33Cに示すように、組織貫通要素306およびシャント200の湾曲した遠位部それぞれがIPS壁114の方へ一致して屈曲する構成上のインタフェースを有する同じ弓状経路に沿って配列するように、組織貫通要素306を、シャント200に相対的に回転可能である。組織貫通要素306は、先に説明したように、IPS壁114およびくも膜層115を通ってくも膜下腔116へ貫通するために、シャント200から遠位に前進することが可能である。シャント200はその後、組織貫通要素306を超えて前進して、CP角槽138内に固着されることが可能である(例えば、組織貫通要素306を、送達組立体300から後退する前、後退するとき、または後退した後で)。
図33Aから33Cの組織貫通要素306およびシャント200の構成は、有利に、IPS102へ脈管構造を介して辿りながら、組織貫通要素306およびシャント200に対して、直線構成で送達させて、その後IPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115を貫通するために、合わせた強度を有する組織貫通要素306およびシャント200の干渉により強め合う湾曲した遠位部に回転させることを可能とする。
【0147】
図34Aから34Bは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。
図34AからBは、シャント200の近位部204から延び、展開構成でシェパードのフックまたは“J”様形状を備える固着機構227と、シャント200の遠位部202から延び、展開構成で同様にシェパードのフックまたは“J”様形状を備える固着機構229とを有するシャント200の側面図を表す。固着機構227および229は、シャント200のそれぞれ湾曲した(例えば、予め湾曲される、傾斜して湾曲される、柔軟な等またはそれらの組み合わせ)近位204および遠位202部分を含み、展開構成で、それらのシェパードのフックまたは“J”様形状をそれぞれ形成する。
図34Bは、IPS102に配備されて埋め込まれるシャント200の断面図を表し、CSFがCP角槽138から頸静脈106へ一方向へ流れる導管を提供する。固着機構227および229は、先に説明したように、CP角槽138および頸静脈106内の組織とそれぞれ係合することにより、シャント200を所望の場所に固定および固着するように構成される。固着機構227および229のシェパードのフックまたは“J”様形状は、展開構成で、遠位部202のシャント200のルーメン207への開口(例えば、CSF流入部分)をくも膜層115と分離し、別にし、または離れるように(
図34B)、かつ、近位部204のシャント200のルーメン207からの開口(例えば、CSF流出部分、バルブ209)を頸静脈106の壁と分離し、別にし、または離れるように(
図34B)維持することによって、シャントの閉塞および詰まりを最小限にし、および/または防止する。シャント200は、患者の解剖学的構造に従って(すなわち、シャント200埋め込みのための標的部位)、シャント200の長さL
2の選択的な伸長および/または調節のための
図34Aおよび34B(破線)に示すようなバネ/コイル様本体203を備える。また、シャント200のバネ/コイル様本体203は、少なくともシャント200の近位部204および遠位部202間に、張力を与えるように構成され、埋め込まれたシャント200が標的部位に適切に固着することを維持する。
【0148】
貫通要素(例えば、細長推進部材310、送達カテーテル304/304’/304’’、穿孔要素306/250/350、シャント200’および/またはシステム300’)によるIPS壁の硬脳膜114およびくも膜層115の貫通に関して、シャント200および/または送達システム300のいくつかの実施形態を先に説明した。システム300の貫通要素の実施形態、態様および構成を決定するように、ファクター(例えば、設計的および臨床的側面)を検討することができるということを認識されたい。例えば、(a)組織を貫通(すなわち、IPS102内からのIPS壁114の硬脳膜、およびCP角槽138へのくも膜層115)するために必要なピーク力であって、例えば大腿静脈に挿入される送達カテーテルなどの末端アクセスポイント(例えば、送達ガイドワイヤ、カテーテルまたは器具の近位部)から、送達システム300を介して力が変換されるものであるピーク力、(b)IPS壁114の硬脳膜およびくも膜層115への貫通/穿孔ステップまたはIPS壁114の硬脳膜およびくも膜層115に加えられた力(a)により引き起こされた傷の組織損傷および重症度、(c)配備されたシャント周辺を侵入部位が封止する程度または吻合140からの血液もしくはCSFの漏出の可能性を有する程度、(d)IPS壁114の硬脳膜およびくも膜層115への貫通/穿孔ステップ中またはIPS壁114の硬脳膜およびくも膜層115に力(a)を加えている間の組織変形の程度(例えば、貫通要素が組織を貫通する前に、脳幹116方向へIPS壁114の硬脳膜および/またはくも膜層115が拡張する程度)、ならびに(e)組織を貫通する間、貫通要素が屈曲または歪みに耐える程度および/またはそうした貫通要素が組織貫通に必要な力を変換するためにさらなる支持(例えば、外部シース)を要求する程度である。
【0149】
図35は、開示される発明の実施形態による、システム300の貫通要素についての前述の設計的および臨床的検討を評価する試験システム400を示す。試験システム400は、荷重移動装置410と、該荷重移動装置410のクロスヘッドに適合した荷重計420とを含む。荷重計420は、
図35、36および38に示すように、貫通要素425(例えば、細長推進部材310、送達カテーテル304、組織貫通部材306/250/350、シャント200’)を固定するコネクタ420Aを含む。コネクタ420Aは、種々の貫通要素425に適合して把持するようにサイズ決定および構成される。槽固定具430が、加温ステージ473に連結または搭載され、該加温ステージ473が、ステージ部材463Aおよび463Bに連結または搭載されるものであって、該ステージ部材463Aおよび463Bは、X(463A)およびY(463B)平面における荷重移動装置410に対して該槽固定具430の位置を制御する。組織ブロック490が、槽固定具430内に配置されて、かつ、
図35から38に示すように、貫通要素425の試験のために該組織ブロック490に狭持される組織サンプル486(例えば、ヒト脳硬膜、ブタ脳硬膜、例えばミネソタ州セントポールのSynovis Surgical InnovationsのDura-Guard(登録商標)脳硬膜修復パッチなどの脳硬膜代替物)を含む。あるいは、または加えて、くも膜組織またはくも膜層115に好適な代替物(例えば、ヒトくも膜、ブタくも膜、ブタ腸間膜)を、貫通要素425の試験のために組織ブロック490で狭持することもできる。荷重移動装置410は、貫通要素425が組織サンプル486に向かって進む速度を制御して変更することが可能である。荷重計420は、組織サンプル486を穿孔する貫通要素425から生じる力だけでなく、穿孔された組織サンプル486から貫通要素425を後退させる際に生じる力も測定する。
【0150】
図36に示すように、組織ブロック490は、槽固定具430内に配置されるブロックスタンド474に連結される。組織ブロック490とブロックスタンド474とは回転可能に連結され、操作者が、ブロックスタンド474に対して相対的に、ゆえに穿孔要素425に対して相対的に、組織ブロック490の向きを時計回り方向および反時計周り方向で調節することを可能とする。組織ブロック490とブロックスタンド474とが相対的に回転することにより、荷重移動装置410が狭持される組織サンプル486に向けて(
図36の矢印425Aで表す穿孔方向)穿孔要素425を動かす際に、操作者が組織ブロック490に狭持された組織サンプル486を穿孔または貫通するために穿孔要素425の所望の角度を調節および設定することを可能とする。
【0151】
組織ブロック490は、複数のチャネル484を有する上方板481を含み、該板481は下方支持ブロック487と連結して、該下方支持ブロック487が連結部483を含む(
図36および37)。組織サンプル486は、
図36および37に示すように上方板481の下、かつ、下方支持ブロック487の上に狭持されて、サンプル486および支持ブロック487間にチャンバ488を作る。下方支持ブロック487は、試験中、貫通要素425を観察するために(例えば、組織変形の程度または穿孔前に硬膜代替物の上でくも膜層が「テント」のようになるか否かを観察する)、透明材料を用いて構成可能である。槽固定具430は、温度管理された溶液(例えば、食塩水)で満たすことが可能であり、および/または槽固定具430内の溶液温度を制御するために加温ブロック473を用いることが可能である。槽固定具430内に配置される組織ブロック490のチャンバ488は、チャンバ488が、試験中に貫通要素425がそこへ穿孔することとなるくも膜下腔を表現するように、上記部483を介して温度制御された溶液(または他のCSF代替物)で加圧されることが可能である。チャンバ488内のCSF代替物の圧は、CSF代替物溶液および槽固定具430内の温度制御されている溶液間の差圧であって、患者のくも膜下腔および静脈系間の差圧(例えば、水頭症でない患者の5から12cmH2O)に似せた差圧を作るために制御することが可能である。
【0152】
図37は、開示される発明による、組織ブロック490の上方板481および下方支持ブロック487間に狭持される組織サンプル486を示す。ネジ485(または他の好適な締め具)が、上方板481および下方支持ブロック487間に組織サンプル486を狭持しながら上方板481を下方支持ブロック487に固定して、チャンバ488を作る。組織サンプル486が、システム300の貫通要素425の試験のためのIPS壁114を表現するように、上方板481のチャネル484がIPS102(すなわち、管腔)を真似ている。チャネル484は、狭持される組織サンプル486を曝露して、穿孔方向425A(
図36)に荷重移動装置410が動かす貫通要素425と接触させるように構成される。例えば
図38は、組織サンプル486と、10度の貫通角度A
1で該組織サンプル486を貫通するように穿孔方向425Aに向けた貫通要素425(例えば、斜面状針)とを示す。
【0153】
或る構成、例えば形状(例えば、斜面状にされた穿孔先端、針等の形状)、サイズ(すなわち、ゲージ数)および材料(例えば、ステンレススチール、ニチノール等)などを有する貫通要素425の、先に説明した試験システム400を用いての0.1mm/sから5mm/sの範囲での様々な貫通速度および様々な範囲の貫通角度での試験により、
図39にまとめた例であるデータを得た。貫通要素425の試験のデータは概して、(1)平滑状針は、硬脳膜を貫通するためにより大きな力を必要とし、穿刺前に組織をより大きく変形させ、かつ、硬脳膜穿孔中に組織のコアリングの危険性を示し、(2)ペンシル状先端および斜面状針は、IPS102およびCP角槽138間の吻合接続の最良の封止に変わる一貫した後退力を示し(例えば、チャンバ488および槽固定具430間でのCSF代替物の漏出は、差圧100cmH2Oまでなかった)、かつ、(3)クインケ状およびペンシル状先端針は、硬脳膜を穿刺するために必要な力が最少量である、ということを示した。試験システム400により他の貫通要素425を評価および試験したが、試験データは、硬脳膜穿孔に組織貫通力が比較的小さいこと、組織穿孔中に起こる組織の損傷が最小限であること、組織を貫通する貫通域の封止特性、貫通中における組織変形が最小限であること、および、貫通中の歪みまたは屈曲を防止するための貫通要素425の付加的な支持要求が最小限であることに基づいて、開示した発明の実施形態に関しては、クインケ状、ペンシル状および斜面形状の貫通要素425が好ましいものでありうるということを示した。
【0154】
開示した発明の実施形態により、シャント200または200’の配備および埋め込み後に、シャント200または200’の開通性(例えば、ルーメン207およびバルブ209の)を評価するための方法を用いることが可能である。埋め込まれたシャント200または200’の開通性にアクセスする一例である方法では、
図40を参照すると、臨床医が、腰椎穿刺または脊椎穿刺により、患者の腰椎の包膜嚢へヨード造影剤を注射しうる(500)。注射ステップ500後(例えば、500の後、約5から10分)、造影剤が、腰椎くも膜下腔から、くも膜下腔内のCSF循環からの脳幹周辺の頭蓋内くも膜下腔におけるCSFに分散することとなる。本明細書において先に説明した画像処理方法のうちの1つまたは複数を用いて、CSF内の造影剤の存在が臨床医により明らかになる(例えば、画像処理システムにおけるハイライト部分)こととなる(510)。画像処理ステップ510で、シャントルーメン207の隅々および/またはシャント200の近位部204に直近の静脈系に造影剤の存在が検出されれば(520)、シャント200を通ってCP角槽内のCSFの流れから分散する造影剤によって証明されるように、シャント200は開通している(すなわち、閉塞していない)(530)。画像処理ステップ530で、シャントルーメン207の隅々および/またはシャント200の近位部204に直近の静脈系に造影剤の存在が検出されなければ、そのときシャント200は開通していない(すなわち、閉塞している)(540)。加えて、腰椎穿刺ステップ500中に、CSFの圧力測定値を得ることができる(550)。正常範囲内の圧力測定値から、配備されたシャント200が頭蓋内くも膜下腔から静脈系へCSFを排出していることがさらに確認され、正常範囲より高い圧力測定値から、配備されたシャント200が閉塞しているか、または閉塞のおそれがあるということがさらに確認される。
【0155】
埋め込まれたシャント200または200’の開通性を評価する別の例である方法では、
図41を参照して、臨床医は、腰椎穿刺を介してまたは頭蓋骨内の硬膜下腔にアクセスすることによってCSFへ放射性または中性子放射化微小球(例えば、マサチューセッツ州ウースターのBioPALよりの微小球)を注射することによって(600)、配備されたシャント200または200’を通るCSFの流れを評価することが可能である。微小球は、くも膜下腔から静脈系へCSFを吸収するくも膜顆粒を通過することがない直径15ミクロンまたはそれ以上とし、さらに微小球は、配備されたシャントのルーメン207を通過可能であるように選択されるべきである(例えば、0.1mmから2mmの範囲の直径を有する)。開示された発明により配備されたシャント200が適切に機能しているものとすれば、CSF内の微小球の存在は、開通しているシャント200を介して血流内に入るのみであろうものであり、静脈血サンプルまたは肺からの組織サンプルを採取して微小球の存在を評価することができる(610)。様々な時点での静脈サンプリングを経て得られる微小球数は、シャント200を通る流量およびCSFに注射された微小球数を反映する(620)。肺組織の生検を経て得られるサンプルはまた、シャントを通る微小球の全流量およびCSFに注入された微小球数に比例する。微小球を何も含んでいない採取サンプルからは、CSFは配備されたシャント200を通過していないこと、シャント200が閉塞していることが示唆される(630)。例えば静脈血サンプルは、CSFへ微小球を注射して15から20分以内に、シャント配備のための脈管構造内の誘導または送達カテーテルから得ることが可能である。このサンプリング技術は、放射性または中性子放射化微小球によって評価されれば、シャント200を流れるCSFの高感度の測定を提供することが可能であるが、それはシャント200を流れる微小球の採取を最大にするからである。中性子放射化微小球アッセイは、検出限界がほぼ1微小球となる極めて感度の高いものである。静脈血または肺組織サンプルは、サンプルの微小球量を測定するために中性子放射化技術を用いるような例えばBioPALなどの商業的な試験サービスへ送ることが可能である。
【0156】
図43AからDは、開示される発明の実施形態に基づいて構成される、シャント200を患者の標的部位へ送達する代替的な送達カテーテル304’を示す。簡単のため、
図3Bおよび4AからDの組立体300と同様である、および/または
図5AからJの組立体300’と同様である送達カテーテル304’の特徴、機能および構成は、同様の参照符号で示される。送達カテーテル304’は、脈管構造の遠隔位置に到達するように寸法され、シャント200を経皮的に標的位置(例えば、下錐体静脈洞)に送達するように構成される。送達カテーテル304’は、カテーテル304’に対して、脈管構造内に挿入、前進、および/または回転させることを可能にしてIPS102内の標的部位にカテーテルの遠位部344を配置するために十分な「推進可能性」および「回転可能性」を提供するのに好適な可変剛性部(例えば、ブレード状、コイル状等の選択的な強化を含む、材料の割合を変化させること)を備えうる。また、遠位部344は、それが標的部位へ辿りかつうまく移動可能であるように十分な柔軟性を有するべきである。カテーテル304’における可変剛性とは、例えば、製造工程中に、使用される材料の特性または分布を局所的に変化させること、および/または、材料の硬度(durometer)または厚さを変化させることによって達成される。非限定的な例としては、カテーテル304’の製造に用いられる材料には、ポリエーテルブロックアミド(ぺバックス(登録商標))およびナイロンを含みうる。カテーテル304’を作るために考えらうる他の好適な材料には、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、フッ素重合体(例えば、FEP、TFE、PTFE、ETFE)、ポリカーボネート、ポリエーテル、PEEK、PVCを含む、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドおよびカテーテルの製造に使用されることが公知の他のポリマー樹脂を含む。送達カテーテル304’は、適切な場合、先に説明した送達組立体300/300’と組み合わせて用いてよいということを認識されたい。
【0157】
送達カテーテル304’は、カテーテル304’の遠位部344と連結される組織貫通部材350を備える。組織貫通部材350は、吻合チャネル140を作るときに(図示せず)シャント200(すなわち、カテーテル304’のルーメン305内に摺動可能に配置される)を標的部位に配備することを可能にする、送達カテーテル304’のルーメン305と流体的に連結されるルーメン355を有する管状構成を備える(
図43C)。組織貫通部材350は、穿孔エッジ351および穿孔先端352(
図43A、43CからD)を備え、以下にさらに詳細に説明することとする。標的部位にシャント200を送達および配備するために送達カテーテル304’を用いる場合には、送達組立体300の組織貫通要素306および/またはシャント200’に組み込んだ組織貫通部材250を必要としなくてよいということを認識されたい。
【0158】
送達カテーテル304’は、送達カテーテル304’の遠位部344と連結する、または該遠位部344上に配置される拡張可能要素390をさらに備える。拡張可能要素390は、組織貫通部材350をIPS壁114へ動かすか、および/または前進させてIPS102およびCP角槽138間に吻合を作るように、組織貫通部材350の穿孔先端352に対して近位に配置される(
図44C)。拡張可能要素390は、拡張可能なバルーン、発泡体、ステントまたはそれらの組み合わせを含みうる。
図43Aから44Cの実施形態では、拡張可能要素390は、拡張可能なバルーンである。拡張可能要素390は、折り畳み構成(すなわち、
図43AからDおよび44Aに示すように収縮させた)、第1の拡張構成(例えば、
図44Bに示すように部分的に膨張させた、すなわち第1の拡張状態)および第2の拡張構成(すなわち、
図44Cに示すように膨張させた、すなわち第2の拡張状態)を備える。拡張可能要素390は、軸外拡張構成を提供する(
図44BからC)ということが認識されるであろう。他の実施形態では、拡張可能要素390は、例えば円錐状、先細り状の、蛇腹様の、角度をもった構成、またはそれらの組み合わせである任意の好適な拡張構造を含みうる。
【0159】
図44BからEに示すように、拡張可能要素390が第1の拡張状態に拡張/膨張するとき、拡張可能要素390は、組織貫通要素350の先端がIPS壁の硬脳膜114と係合するようにさせて、その後第2の拡張状態への膨張で、組織貫通要素350および先端がIPS壁114およびくも膜層115をそれぞれ通ってCP角槽138へ貫通するようにさせる。また、拡張可能要素390が第1の拡張状態に拡張/膨張するとき、要素390が、
図44Bに示すように組織貫通部材350をIPS壁114の方へ向かせて、組織との係合を開始させ、それによってIPS壁114の標的貫通部位に対して、IPS102内で送達カテーテル304’を固定する。例として、
図44Bに示すその第1の拡張状態における拡張可能要素390拡張可能要素390の球部分の高さ(例えば、拡張可能要素390拡張可能要素390の内部空洞391の膨張/体積)は、IPS壁117からの測定で、0.5mmから2.5mmの間(例えば、1.5mm)とすることが可能である。その第1の拡張構造からその第2の拡張構造への拡張可能要素390拡張可能要素390のさらなる拡張/膨張により、
図44Cに示すように組織貫通部材350がIPS壁114を通って前進する。再び例として、
図44Cに示すその第2の拡張状態における拡張可能要素390拡張可能要素390の球部分の高さ(例えば、バルーン内部391の膨張/体積)は、IPS壁117からの測定で、2.5mmから4.0mmの間(例えば、3.0mm)とすることが可能である。拡張可能要素390の球部分の高さはまた、より小さい直径のIPS102をもつ患者においては2.5mmより小さくてもよく、または、より大きい直径のIPS102をもつ患者においては4.0mmより大きくてもよいということを認識されたい。
【0160】
加えて、拡張可能要素390は、収縮した構成(
図44A)から部分的に膨張した構成(
図44B)へ、そして完全に膨張した構成(
図44C)へ移行するように拡張/膨張する一方で、組織貫通部材350が、IPS壁114に対して実質的に平行に配置される状態から(
図44A)、IPS壁114に対して相互作用する角度で配置される状態(
図44BからC)に移行する。組織貫通部材350の相互作用角度は、送達構成から、IPS壁114に対して約0度から約150度まで変動してよく、好ましくは、約5度から約90度である。
【0161】
送達カテーテル304’は、拡張可能要素390を選択的に膨張して収縮するために、拡張可能要素390の内部391と(
図43BからC)、ならびに、液体および/または気体を供給するための膨張媒体源(図示せず)と流体的に連結する膨張ルーメン309をさらに備える。例えば膨張媒体源は、IPS壁114へ組織貫通部材350を前進させながら、拡張可能要素390が適切に膨張する所定の体積の液体/気体を有しうる。加えて、膨張媒体源は、拡張可能要素390から液体/気体を除去することによって拡張可能要素390が収縮する吸引手段を含みうる。膨張媒体源は、任意に、拡張可能要素390を過膨張させることなく適切な膨張を保証するために膨張圧を測定する圧力センサを含みうる。拡張可能要素390は、1つまたは複数の液体(例えば、食塩水、造影剤等)で、または、気体(例えば、空気)で、および/またはそれらの組み合わせで膨張させてよい。例えば拡張可能要素390は、開示された発明により、画像処理目的で食塩水および造影剤の混合物(すなわち、X線不透過材料を含有する液体)で膨張させることができる(例えば、50%の食塩水と50%の造影剤とを含む混合物)。
【0162】
送達カテーテル304’に連結される拡張可能要素390は、例えばシリコーン、ウレタンポリマー、熱可塑性エラストマーゴム、サントプレーン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン“PTFE”、ポリエチレンテレフタラート“PET”および他の好適な材料もしくはそれらの組み合わせなどである、コンプライアント、セミコンプライアントもしくはノンコンプライアントの高分子材料より作られうるか、そうでなければ該高分子材料を含みうる。コンプライアント材料を含む実施形態では、拡張可能要素390は、ウレタンから成ることが好ましい(例えば、ペレタン(Pellethane)またはクロノプレン(Chronoprene))。
【0163】
別の実施形態では、拡張可能要素390は、例えばポリウレタンテレフタラート“PET”であるノンコンプライアント材料から成り、所定の体積の液体/気体で満たされた膨張媒体源によって、拡張可能要素390の膨張を可能にして容易にする。所定の体積の液体/気体は、例えば拡張可能要素390の予め定められた体積に対応しうるものであり、以下でさらに詳細に説明することとする。拡張可能要素390のノンコンプライアント材料を膨張するために、所定の体積の液体で満たされた膨張媒体源を有することにより、その展開構成における拡張可能要素390の過膨張および過拡張の危険性を軽減する。加えて、ノンコンプライアント材料から成る拡張可能要素390は、コンプライアント材料から成るバルーンに比べて、変形または過拡張することなく、より高い膨張圧に絶えるように構成される。
【0164】
図44AからCは、開示される発明の実施形態に基づいて、送達カテーテル304’を用いて標的部位へシャント200を送達および埋め込むために血管内アプローチを経て吻合を作る方法を示す。送達方向に組織貫通部材350を有する送達カテーテル304’の遠位部344および折り畳み構成である拡張可能要素390を、
図44Aに示すようにIPS102内の標的部位へ前進させる。吻合を作る、およびCP角槽138にアクセスするためにIPS壁114およびくも膜層115を穿孔する前に、送達カテーテル304’の遠位部344の適切な向き、特に組織貫通部材350および拡張可能要素390の適切な向きを、先に開示した画像処理方法により、駆動する前に検証することができる。例えば、送達カテーテル304’の遠位部344を位置させて配向するためにマーカを用いてよい。必要な場合、送達カテーテル304’の遠位部344上に配置される組織貫通部材350および拡張可能要素390の位置および向きは、例えば送達カテーテル304’の本体に対して回転力を直接加えることによって調節してよい。
【0165】
送達カテーテル304’の遠位部344の適切な位置および向きが達成されると、
図44Bに示すように、拡張可能要素390を膨張させて、その部分的に拡張した構成に移行させ、組織貫通部材350を好適な角度でIPS壁114に向けるように、IPS壁117から離れる方へ送達カテーテル304’の遠位部344を屈曲させる。拡張可能要素390を、その完全に拡張した構成に到達するまで膨張を継続することで、組織貫通部材350が前進し、
図44Cに示すように、CSFで満たされたくも膜下腔116および/またはCP角槽138に到達するまで、IPS壁114への穿孔および貫通、くも膜層115の貫通を引き起こし、吻合チャネル140を作る。吻合チャネル140を作るのと同時または続けて、先に説明したように、シャント200を前進させて、標的部位に配備し埋め込む。シャント200が埋め込まれると、バルーン290を収縮させて-好ましくはシャント200の遠位固着機構229の配備後に-、送達カテーテル304’を患者から除去する(図示せず)。
図44AからCに示すように、IPS102の管腔内部での拡張可能要素390の拡張が、CP角槽138への組織貫通部材350の貫通深さを制限する、つまり、拡張可能要素390の構成とIPS102の管腔およびIPS壁114による解剖学上の包囲とが、その拡張した構成にある拡張可能要素390に対して、連結した組織貫通部材350をさらに遠位にくも膜下腔116および/またはCP角槽138へ前進させうるさらなる拡張を妨げる。また、
図44Cおよび44Eに示す貫通深さの制限は、解剖学的構造上の重大な損傷なしにくも膜下腔へ配備するために、くも膜層115および脳幹112(図示せず)間のCP角槽138に適切な空間を、またはシャントの遠位部および/もしくは遠位固着機構のための拡張エンベロープを維持する。
【0166】
図44AからCは、その送達方向(すなわち、送達カテーテル304’およびIPS管腔102の長手方向軸と同軸)から90度回転により(例えば、30度から90度の範囲で)、拡張可能要素390を完全に拡張した構成に移行させながら完全に貫通する向き(すなわち、IPS壁114に直交する)へ移行する組織貫通部材350を示す。説明のため、
図44DからEは、それぞれ
図44BからCの斜視図であり、CP角槽138へのIPS壁114およびくも膜層115の完全な貫通を促進する拡張構成へ移行する組織貫通部材350の上側面図を示す。IPS管腔の狭い直径および/または蛇行状経路は、全ての患者において組織貫通部材350がIPS壁114に直交して貫通することを可能とせず、それゆえに、組織貫通部材350は、IPS壁114へ完全に貫通する前に拡張可能要素390が拡張する一方で、約30度回転から70度回転に移行するのみでありうる。例えば臨床医は、
図44Bに示すように、CP角槽138へ完全に貫通させることなく、貫通要素350をIPS壁の硬膜114に約45度以下の角度で係合させるものである第1の拡張状態に、拡張可能要素390を拡張させることができる。このステップで、臨床医は貫通ステップの処置の完了前に貫通要素350の軌道を確認することが可能である(例えば、本明細書で説明した画像処理方法の1つまたは複数を用いて)。存在する軌道が満足でない場合、臨床医は、IPS壁を通してCP角槽138へまた貫通させるために、拡張可能要素390をその折り畳み構成または送達構成に収縮させて、送達カテーテル304’の位置または向きを調節して、かつ、好適な軌道で貫通要素350がIPS壁114と係合するものである第1の拡張構成に拡張可能要素390を再拡張することが可能である。その後臨床医は、その先にCP角槽138があるIPS壁114およびくも膜層115に貫通要素305が完全に貫通するまで、拡張可能要素390をさらに拡張させることが可能である(例えば、約70度の角度で)。
【0167】
図44AからCの血管内アプローチを経て吻合140を作るための方法に加えて、臨床医は、送達カテーテル304’に対して拡張可能要素390により駆動される組織貫通部材350のIPS壁114への前進をさらに補助する好適な機械力を加えてよい。
【0168】
上記で開示した拡張可能要素390に加えて、送達カテーテル304’は、カテーテルの遠位端部から近位に位置する(例えば、カテーテルの遠位端部から約1cmから約3cm)、第2の拡張可能なバルーン、発泡体、ステント、またはそれらの組み合わせを含みうる。第2の拡張可能部材(図示せず)が、折り畳み構成から拡張した構成へ拡張するとき、IPS壁114における標的貫通部位周辺で送達カテーテル304’をさらに固定する。第2の拡張可能部材がバルーンである実施形態では、該バルーンは、ノンコンプライアントまたはコンプライアント材料から成り、かつ、膨張ルーメン309またはまだ流体的に区別されている同様のルーメンと流体連通することが可能である。また第2のバルーンは、拡張可能要素390に関して先に開示した寸法範囲内で構成可能である。第2の拡張可能部材は、送達カテーテル外側の円周上に延びることが可能であるか、または、送達カテーテル円周のより小さい部分(例えば、約25%、約50%、約75%)を含むことができる。第2の拡張可能部材が送達カテーテル円周のより小さい部分を含む実施形態では、そうした拡張可能部材は、拡張可能要素390と比べた際の反対側の送達カテーテル304’上かあるいは拡張可能要素390と同じ側の送達カテーテル304’上に、または、完全に並んだ方向と完全に対向する方向との間のある相対的なクロッキング(clocking)で設けることが可能である。
【0169】
いくつかの実施形態では、シャント200を配備させることに、組織貫通部材350を用いて、シャント200の遠位部202をIPS102からCP角槽138へ前進させることを含む。組織貫通部材350はシャント200の遠位部202と連結することができるため、シャント200の遠位部202をIPS102からCP角槽138へ前進させることは、IPSの硬脳膜の組織壁114と、くも膜組織層115とをそれぞれ通ってCP角槽138に入るように組織貫通部材350およびシャント200’の遠位部202を前進させることを含む。シャント200の遠位部202が前進する間、シャント200の遠位部202は、少なくとも部分的に送達カテーテル304’の送達ルーメン305に配置されて、組織貫通部材350が送達カテーテル304’の組織貫通先端を備えるものであり、IPS102からCP角槽138へのシャント200の遠位部202の前進は、組織貫通先端がIPSの硬脳膜の組織壁114と、くも膜組織層115とをそれぞれ通ってCP角槽138へ貫通するように送達カテーテル304を前進させることを含む。送達カテーテル304’の遠位部344は、
図44BからCに示すように、組織貫通先端を30度から90度の範囲の角度でIPSの硬脳膜114との接触に誘導する湾曲構成をとる。
図44AからEに示すように、送達カテーテル304’の遠位部344は、送達カテーテル304’の遠位部に対して湾曲構成をとらせる拡張可能要素390(または拡張する壁部)を備える。送達カテーテル304’は、湾曲構成にあるときに、送達カテーテルの遠位部344の位置および向きを示すために設けられて寸法される1つまたは複数のX線不透過性マーカを含む。シャント200を配備させることは、シャント200の遠位部202が少なくとも部分的にCP角槽138内に配置されることを維持しながら、送達カテーテル304’の遠位部をCP角槽138から後退させることをさらに含む。
【0170】
図45AからDは、開示される発明の実施形態により構成される、例である組織貫通部材350を示す。組織貫通部材350は、近位端部353および遠位端部357と、その間に延びるルーメン355とを有する管状構成を備える(
図45B)。組織貫通部材350の遠位端部357は、穿孔先端352を末端とする先細り状/斜面状の穿孔エッジ351を備える(
図45AからB)。
図45Dおよび46Gには、組織貫通部材350の、例である寸法(インチ単位)、角度および特徴を示しており、
図45AからCの実施形態を限定することを意図しない。
【0171】
図46AからGは、開示される発明の実施形態により構成される、別の例である穿孔要素350を示す。組織貫通部材350の近位端部353は、さらに延ばされるか(
図46EからF)、または細長管状部材359に連結される(
図46AからD)。細長管状部材359は、組織貫通部材350の近位端部353の外径および側面よりも小さい外径および側面を備える(
図46AからD)。
図46AからDの細長管状部材359ならびに
図46EからFの延ばされた近位端部353は、送達カテーテル304’の遠位部344のルーメン305内に配置されるように形成されて寸法される。
図46EからFに示す組織貫通部材350の実施形態は、管状部材359の長さ方向に沿った切り込み部を含み、
図46EからFでは螺旋切り込みパターンとして示される。切り込み部は、硬膜およびくも膜組織を貫通するために組織貫通部材350の十分な円柱強度を維持しながら、
図43、44および47に示す拡張可能要素390に組み込まれる場合には、例えば送達構成から拡張した構成へ屈曲する、十分な柔軟性を貫通要素に対して有利に与える。
図46AからDの実施形態では、組織貫通部材350の外径及び側面は、送達カテーテル304’の遠位部344の外径および側面と適合しうる。
【0172】
図45Aから46Dの組織貫通部材350の寸法、角度および特徴は、送達組立体300の組織貫通要素306および/またはシャント200’の組織貫通部材250に組み込まれうるということを認識されたい。
【0173】
図47Aから49Cは、開示される発明の様々な実施形態により構成される、拡張可能な拡張可能要素390を示す。拡張可能な拡張可能要素390は、送達カテーテル304’の遠位部344上に搭載または連結される前においては、予め形成された成形構成(
図47A、48Aおよび49A)を示す。拡張可能要素390は、送達カテーテル304’または他の種類の細長構造がそれを通って延びる拡張可能要素390の内部391を全体として規定する、第1の端部392(例えば、近位)と、中央本体部393(例えば、拡張可能)と、第2の端部394(例えば、遠位)とを含む。拡張可能要素390の第1の端部392および第2の端部394は、粘着性の、熱性の結合等、連動する幾何学的、機械的に固定された縫合またはそれらの組み合わせにより、送達カテーテル304’の遠位部344と連結される管状または他の好適な構成をそれぞれ含みうる。
【0174】
拡張可能要素390のルーメンを介してシャントが送達されるものである
図47AからCの拡張可能な拡張可能要素390の実施形態と比べて、
図48AからD、49AからDのバルーンの実施形態は、
図20AからFに関して説明した送達カテーテル304の遠位部344に連結または配置される偏向要素370と同様に、拡張した構成にあるとき、細長推進部材310の貫通要素306、シャント200’の貫通要素250または送達カテーテル304’の貫通要素350をIPS壁114の方へ偏向する傾斜を与える。拡張した構成では、
図48AからD、49AからDの拡張可能要素390の第1の端部392から中央本体部393への移行が、穿孔要素を送達カテーテルの中心軸から離れる方へ偏向してIPS壁114を貫通する。つまり、穿孔要素または穿孔要素を収納するシースは、バルーンの第1の端部392に対して近位である場所において送達カテーテル304から出ることが可能であり、穿孔要素が遠位に前進するときに、膨張バルーンの移行した部分が穿孔要素をIPS壁114の組織へ向けて方向付ける(
図48Dおよび49D)。本明細書で説明するように、
図48AからD、49AからDのバルーンの実施形態で用いられる穿孔要素は、シャントが穿孔要素のルーメンを介して送達されるように、または、CP角槽内にシャントの遠位端部(例えば、固着部229)を配備するために、穿孔要素がシャントのルーメンを介して延びるように構成することが可能である。
【0175】
拡張可能要素390は、40Aから90Aの間のショアー押込硬度範囲および/または25Aから100Aの間のショアー押込硬度範囲を有しうる、先に説明した材料から成りうる。例えば拡張可能要素390は、中央拡張可能部分393が約0.00025インチ(0.00635mm)から0.003インチ(0.0762mm)の間の壁厚を有する成形バルーンを得るために標準的な加工装置により製造されうる。また、拡張可能要素390の壁厚は、少なくとも第1の端部392とその周辺および第2の端部394とその周辺ではより厚く、中央本体部393とその周辺ではより薄く、場所により変動してよい。例えば第1の端部392は、中央本体部393の壁厚より厚い壁厚を有してよい。
【0176】
拡張可能要素390の部分392、393および/または394は、不均一な厚さを有することが可能である。
図43、44、47に示す拡張可能要素390の実施形態に関しては、
図47を参照して、中央部393の中心領域は、中央部393の両端の領域よりも厚い壁厚を備え、中央部393の端部領域では拡張可能要素390が局所的に薄いことにより、
図43から44に示す拡張可能要素390の偏心した拡張が提供される。拡張可能要素390のいくつかの実施形態では、中央部393の中心領域には、拡張可能要素390の最も厚い部分を含む。
【0177】
この発明の実施形態では、標準的な押出および/または浸漬成形の原理を用いて、角度をもつ(
図47AからC)、軸外の(
図44AからE、48AからC)または円錐成形の構成(
図49AからC)である拡張可能要素390を製造することができる。例として、拡張可能要素390は、先に説明したように、吻合チャネル140を作るためにIPS壁114およびくも膜層115へ組織貫通部材350を配向して前進させるように構成されるものである、成形され、搭載され、または膨張する構成であって、限定するものではないが、ダイヤモンド状、円形状、楕円状、多面状もしくは不規則な形状および/または角度を含む、様々な形状を有することが可能である。例えば、
図50AからBは拡張可能要素390の直線状に搭載される構成を示し、
図50Aでは拡張可能要素390の折り畳み構成を示し、
図50Bでは拡張可能要素390の拡張した構成を示す。さらに、貫通要素350は、貫通要素350の先端が、折り畳みまたは送達構成にある拡張可能要素390の遠位端部を過ぎて延びない、または該遠位端部から出ないように、拡張可能要素390の長さ方向に沿って近位に、
図50Aに示すよりもさらに内側に折り畳むことが可能である。バルーンが膨張するとき、拡張可能要素390の長さが拡張し、貫通要素350に対して、畳まれたバルーンから
図50Bに示すその拡張した構成が現れるようにさせる。
【0178】
図47Aから50Bは、拡張可能要素390の例である寸法、角度および特徴を示しているが、拡張可能要素390の実施形態を限定することを意図しない。
図47Dは、47AからCに示す拡張可能要素390の材料特性の例である一覧を示しているが、
図47AからCの実施形態を限定することを意図しない。
【0179】
図51Aから54Cは、開示される発明の実施形態に基づいて構成される、血管内アプローチを介して吻合を作るための、さらなる例である穿孔要素を示す。該組織貫通部材250は、
図51Aから54Cに示すように、スタイレット(すなわち、穿孔遠位先端を伴う中実の細長要素)を備える。あるいは、該組織貫通部材250は、
図45Aから46Dに示すような、先に説明したシャント200’に組み込まれうるおよび/または着脱可能に連結されうる針(すなわち、穿孔遠位先端をもつ中空管状要素)を備えうる。該組織貫通部材250は、近位部258、細長本体部252および遠位先端255’を末端とする遠位部255をさらに備える。遠位端部先端255は、例えば
図5CからJに示すように、IPS壁114およびくも膜層114を穿孔し、かつ、吻合チャネル140を作るように構成される。
図51Aから54Cの組織貫通部材250の実施形態を、本明細書に開示される様々な送達組立体300または送達カテーテル304の遠位端部の実施形態に組み込むことが可能である。
【0180】
図51Aおよび
図53Aの組織貫通部材250の遠位部255は、ストレートな先端の遠位先端255’を末端とする。
図51B、52B、53Bおよび54Bは、組織貫通部材250の一部の
図51A、52A、53Aおよび54Aに示す各B-B軸に沿った断面図である。遠位部255および/または細長本体252に沿う組織貫通部材250の直径は、およそ0.006インチ(0.1524mm)から0.030インチ(0.762mm)の範囲とすることが可能である。シャント200および送達組立体300が組織貫通部材250の寸法を受け入れられるものであれば、組織貫通部材250の他の好適な直径が与えられてよいということを認識されたい。
図51Cおよび
図53Cは、ストレートな先端の遠位先端255’を有する組織貫通部材250の遠位部255の斜視図を示す。あるいは、
図52Aおよび
図54Aの組織貫通部材250の遠位部255は、丸めた遠位先端255’(例えば、弾丸状先端、長円状断面、平滑状構成)を末端とする。
図52Cおよび
図54Cの組織貫通部材250の断面は、例である丸めた遠位先端255’の長円状の湾曲を描く。
【0181】
また、組織貫通部材250は、
図53A、53Cおよび
図54A、54Cに示すように、遠位部255に対して近位に配置されるネック部257を備えうる。ネック部257は、組織貫通部材250の細長本体252および遠位部255に対してより小さい外径を備える。ネック部257の外径は、例えば組織貫通部材250の細長本体252および遠位部255の外径よりも約25%から75%小さくすることが可能である。ネック部257は、シャント200/200’の遠位部202および/または遠位固着機構229のために組織貫通部材250内で窪みを提供して、組織貫通部材250がIPS壁114を貫通するときに送達構成となる。遠位部のシャント200は、組織貫通部材250、200’のネック部257に着脱可能に連結され、吻合チャネル140が作られると、シャント200’は標的部位に埋め込まれる(例えば、
図5HからJに示すように)。
【0182】
いくつかの実施形態では、組織貫通部材250では、
図53Aおよび54Aに示すように、組織貫通部材250の細長本体部252からネック部257の移行に比べて、組織貫通部材250の遠位部255からネック部257間の移行はより急でありうる。ネック部257のこれらの移行または湾曲した側面が(例えば、
図53A、53C、54Aおよび54Cに示すように)、折り畳んだまたは送達構成において、IPS壁114を貫通するシャント200の送達を容易にする。任意に、組織貫通部材250およびシャント200が患者の脈管構造を通って前進するときに、送達構成において組織貫通部材250上にシャント200を保持するために外側シース(図示せず)を用いることが可能である。例えば、穿孔要素上に配置されるシャントを覆うシースの遠位端部は、IPS壁114の標的貫通部位まで前進することが可能であるため、組織貫通部材250およびシャント200がIPS壁114およびくも膜層115を貫通してCP角槽138へ入るときに、シースの遠位端部はIPS壁114に接するが貫通はしない。
【0183】
他の実施形態では、組織貫通部材250の近位部258および/または細長本体部252は、組織貫通部材250の遠位部255よりも大きい外径を有することが可能である(例えば、穿孔要素の本体または遠位部の外径よりも約25%から75%大きい外径)。組織貫通部材250の近位部258および/または細長本体部252の外径を増すことが、患者の脈管構造を介した移動中および貫通ステップ中に、シャント200が組織貫通部材250上を近位方向に滑ることを防止して、組織貫通部材250がIPS壁114およびくも膜層115を超えてくも膜下腔116へ進むことを防止すること(および送達システムを付随させること)によって貫通止めの役割を果たす。シャント200の遠位部および/または遠位固着機構229のCP角槽138への配備がなされると、組織貫通部材250を、シャントルーメン207、送達組立体300から後退させることが可能である。
【0184】
いくつかの実施形態では、IPS102のルーメンをくも膜下腔116/CP角槽138と隔てるIPS壁114およびくも膜層115を通る穿孔および/または前進を容易にするために、組織貫通部材250をエネルギー源(図示せず)に接続することができる。エネルギー源は、限定するものではないが、高周波エネルギー(RF)、熱エネルギー、音響エネルギー等を含む1つまたは複数のエネルギータイプを提供することが可能である。例えば、IPS102およびCP角槽138間に吻合140を作るためにIPS壁114およびくも膜層115通る前進を補助する高周波RFエネルギー源に、
図51Aから54Cの穿孔要素250、特に
図52A、52Cおよび
図54A、54Cの弾丸状先端255’を有する穿孔要素250を接続することができる。穿孔要素250におけるRFエネルギーの使用により、吻合チャネル140を作る間に組織が凝固し、それによってくも膜下腔内での出血をなくし、または軽減し、かつ、IPS壁114およびくも膜層115を通ってCP角槽138へ貫通した後に鋭利な貫通要素が脳幹112に向けられる必要をなくすことが可能である。
【0185】
非限定的な例として、
図51A、51Cの組織貫通部材250は、IPS壁114およびくも膜層115を貫通するために、RFエネルギーを送達するストレートな先端の遠位先端255’を含む。ストレートな先端の遠位先端255’は、組織貫通部材250の遠位部の最も先端にRFエネルギーを集中させて、近くの組織または構造に電流を分散することなく、IPS壁114およびくも膜層115への貫通を容易にすることが可能である。組織貫通部材250のストレートな先端の遠位先端255’から遠位部255へのなだらかな移行は、貫通ステップ中にはIPS壁の組織114を穏やかに広げて、標的部位におけるシャントの送達および配備中には組織の損傷を最小限にする。いくつかの実施形態では、
図51Aから54Cの組織貫通部材250は、組織貫通部材250がIPS壁114およびくも膜層115を通ってCP角槽138へ貫通しながら、シャントがIPS壁114を通って送達されることが可能であるように、本明細書で開示される様々な実施形態のシャント200のシャントルーメン207を通過するように構成される。
【0186】
図51Aから54Cの組織貫通部材250は、ニチノールまたは他の導電性材料から作ることが可能である。組織貫通部材250は、送達カテーテル304の遠位端部または送達組立体300の他の要素に組み込まれる、直線状、剛性の材料であることが可能である。あるいは、組織貫通部材250は、本技術で公知の柔軟なマイクロガイドワイヤと同様に、主として柔軟でありうる。柔軟な組織貫通部材250上に配置されるシャント200は、患者の脈管構造を介してIPS壁114の標的貫通部位およびCP角槽138への移動を可能にする、シャント/穿孔要素の組み合わせに対して十分な円柱強度を提供することが可能である。組織貫通部材250の柔軟な構成は、組織貫通部材250が槽138へさらに遠位に前進し過ぎる場合にさらなる安全性を提供し、また柔軟なガイドワイヤ様構成により、組織貫通部材250が脳幹または脳神経などの局所的に重要な構造を損傷することとなるような危険性を軽減する。
【0187】
図51Aから54Cの組織貫通部材250および送達組立体300は、組織貫通部材250の遠位先端に対してRFエネルギーを生成および供給する電気手術器を用いるように構成することが可能である。開示される発明の実施形態に用いて好適な電気手術器が、いくつかの製造業者および卸売業者により提供されている(例えば、フロリダ州クリアウォーターのボビーメディカルコーポレーション(Bovie Medical Corporation)製、Aaron(登録商標) Product Line)。当業者により認識されるように、組織貫通部材250の遠位先端255’または遠位部255のみがIPS壁114にRFエネルギーを送達するように(送達組立体300および/または送達カテーテル304ではなく)、組織貫通部材250の最も遠位部(例えば、最も遠位の1mmから15mm)以外の全ては、絶縁されてよい。標準的な電気手術器は、開示される実施形態で用いられるそうしたシステムの使用を最適化することが可能である複数の設定を提供する。例えば、バイポーラに対してモノポーラの操作により、近くの組織または構造を損傷することなく、IPS壁114において組織貫通部材250の遠位先端255’および/または遠位部255から針先ほどの貫通部位周辺にRFエネルギーを集中する。また、純切開(pure cut)に対するものである凝固設定および/または混合(blended)設定により、過剰な熱および細胞蒸発を生成することなく、組織貫通部材250の遠位先端255’および/または遠位部255とIPS壁114との間の接触点に、RFエネルギーを正確に照準することが可能である。そうした凝固設定または混合設定は、IPS壁114からの局所的な出血を防止するために組織の凝固も行いながら、RFエネルギーを周辺細胞に分散させることなく、標的貫通部位へ組織貫通部材250を貫通させるために、制御されたRFエネルギーの送達を有利に提供する。調節可能な出力設定が、開示される実施形態で用いる電気手術器のさらなる最適化を可能にする。例えば凝固設定では、出力設定を約5ワットから約20ワット、好ましくは約8ワットから約12ワットとして、IPS102からCP角槽138へ貫通する組織貫通部材250に用いることが可能である。さらに電気手術器は、インピーダンスの変化を検出すると、組織貫通部材250へのRFエネルギーの送達を停止するように構成することが可能であって、組織貫通部材250上の検出部は、組織貫通部材250の遠位先端255’がIPS壁114およびくも膜層114から出てCSFで満たされたくも膜下腔116および/またはCP角槽138へ入るときに、硬脳膜およびCSF間を区別するために、電気手術器に対してインピーダンスフィードバックを提供可能である。
【0188】
図55AからEは、開示される発明の実施形態による、例であるシャント200の細長部203を示す。上記したように、シャント200は、近位部204、遠位部202およびその間に延びる細長本体203を含む。シャント200は、シャント200の近位開口205から遠位開口201へ延びるルーメン207をさらに含む。
図55A、55Dの実施形態では、シャント200の細長い中心軸231に沿って測定される長さL
2は、送達構成で約0.5インチ(1.27cm)である。他の実施形態では、L
2は、送達構成で10mmから30mmの間の範囲としうる。また、
図55Dの実施形態では、軸231に直交する方向で測定されたシャント200の内径(ID)は(例えば、ルーメン207)、およそ0.0144インチ(0.3657mm)である。他の実施形態では、シャント200のIDは0.002インチ(0.0508mm)から0.020インチ(0.508mm)の間の範囲としうる。ID、L
2およびその他の長さ、幅または厚さは、標的部位(例えば、IPS、CP角槽等)におけるシャント200の埋め込みに好適な任意の寸法を有しうるということを認識されたい。
【0189】
先に説明したように、シャント200は、例えばステンレススチール、タンタル、またはニチノールとして公知の超弾性ニッケル・チタン合金などであるニッケル・チタン合金の、高分子材料、金属および合金を含む、生体適合性の、圧縮性の、弾性の材料またはそれらの組み合わせをいくらでも用いて構成されてよい。シャント200、特に
図55AからEの細長本体203は、ニチノールから成る。シャント200は、細長本体203に沿って1つまたは複数の切り込み210(例えば、切り溝、溝、キー溝、窪み等)をさらに備える。細長本体203の切り込み210は、
図55Aから60Cに示すように様々な好適なパターンを有しうる。切り込み210は、好ましくは、シャント200の細長本体203をレーザで切り欠くことにより製造される。あるいは、切り込み210およびそれらのパターンは、エッチングまたは他の好適な技術により製造されうる。
図55Cの実施形態では、各切り込み210は、0.001インチ(0.0254mm)の幅を有しうる。シャント200の細長本体203の各切り込み210およびパターンの幅、長さおよび深さは、任意の好適な寸法を含みうる。細長本体203の切り込み210は、送達中に蛇行状構造を移動するためにシャント200の柔軟性を増すおよび/または標的部位に配備および埋め込む際の予め規定された構成(例えば、
図6GからH、24A、24E、34AからBの螺旋/コイル形状である、例えば二次的な形状)をとるように構成される。
【0190】
加えて、シャント200は、
図55Eにおいて良好にわかるように、内部ライナー212および外側カバー214を備える。内部ライナー212および外側カバー214は、例えばポリテトラフルオロエチレン“PTFE”、ポリエチレンテレフタレート“PET”、高密度ポリエチレン“HDPE”、延伸ポリテトラフルオロエチレン“ePTFE”、ウレタン、シリコーン等の好適な埋め込み可能な高分子材料から成る。好ましくは、内部ライナー212は、シャントルーメン207を流れるCSFタンパク質および細胞の凝集を抑えて長期間シャントルーメンの開通性を維持する、例えばHDPE、PET、PTFEまたはシリコーンなどの材料から成る。内部ライナー212および外側カバー214は、シャントルーメン207内およびシャント本体203上それぞれから、細長本体203の切り込み210を-完全にまたは部分的に-覆うように構成されて、そうした構成では、細長本体203は内部ライナー212および外側カバー214を支持するフレームになる。その内部ライナー212、シャント本体フレーム203および外側カバー214を伴うシャント200は、静脈および静脈洞の血流に対して不透過であって、ライナー-フレーム-カバーの一体構成が、切り込み210がシャント200に対して提供するものである柔軟で予め規定された構成を維持する。
【0191】
内部ライナー212は、シャントルーメン207内に平滑表面を提供して、くも膜下腔116および槽138間の正常差圧下(5から12cmH2O)でシャントに流れるCSFに対して層流特性を維持する。先に説明したライナー212の材料選択基準に加えて、シャントルーメン207内に層流を維持することが、タンパク質の蓄積および細胞の凝集による閉塞の危険性をさらになくす、または軽減する。ライナー212は、押し出し加工を用いてシャント本体203の内側を裏打ちするように構成可能である。あるいは、ライナー材料は、マンドレル(例えば、ニッケル被覆銅)上に堆積(例えば、分散技術を用いて)させることが可能であり、その後ライナー被覆したマンドレルを、外側カバー214の付加および内部ライナー212のシャント本体203への接着のためにシャント本体203内に配置可能であり、その後シャントルーメン207内の適所に内部ライナー212を残したままシャント200からマンドレルを後退させることが可能である。内部ライナー212なしでは、ルーメン207内の切り込み210が、タンパク質および細胞が蓄積する面となる可能性があり、それがルーメン207を閉塞してCSFのくも膜下腔から静脈系への流れを妨げることになりうる。
【0192】
外側カバー214は、シャント200に対して、シャント本体203外面上に切り込み210をもつシャント200と比べてIPS102内での血栓形成の危険性を軽減する平滑外面を提供する。上記したように、外側カバー214は、限定するものではないが、ポリウレタンまたはシリコーン-ポリウレタンブレンドを含む1つまたは複数のインプラントグレードのポリマーを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、ポリマー分散気体または液体をシャント本体203および内部ライナー212に対して塗布し、外側カバー214を形成して、かつ、例えば
図55Eに示すようなシャント200の一体構成に内部ライナー212、シャント本体203および外側カバー214をともに結合する。
【0193】
外側カバー214は、シャント本体203の外面を完全に覆うことが可能であるが、しかしながら他の実施形態では、外側カバーは、内部ライナー212をシャント本体203と接着させるためにシャント本体203の一部に沿って選択的に配置可能である。非限定的な例として、ポリマー分散液体またはエポキシベースの接着剤を、シャント本体203の長さに沿って連続しない場所に配置させることが可能である(例えば、シャント本体203の近位部、中央部および/または遠位部)。あるいは、内部ライナー212の外面は、ポリマーまたは接着剤で被覆されて、その後シャント本体203内に配置することが可能で、該ポリマーまたは接着剤は切り込み210に浸透しうるものであり、シャント本体203に沿った切り込み210の一部または全てが完全にまたは部分的に満たされる。これら実施形態では、シャント本体203の材料の外側部分は、患者の埋め込み部位に曝露される。
【0194】
図55Eの実施形態では、内部ライナー212は、0.0007インチ(0.01778mm)の薄さを有してよく、細長本体203の壁は、0.0018インチ(0.04572mm)の薄さを有してよく、かつ、外側カバー214は、0.0005インチ(0.0127mm)の薄さを有してよい。内部ライナー212、細長本体203および外側カバー214は、任意の好適な寸法を含みうるということを認識されたい。
【0195】
図56Aから60Cは、開示される発明の実施形態による、シャント200の細長本体203の切り込み210の例であるパターンを示す。
図56Aから60Cに示すように、シャント200の細長本体203は、切り込み210の様々な例であるパターンを含む。これらの実施形態では、切り込み210のパターンは、レーザと本体とを互いに動かしながら選択された角度で本体を回転しながら細長本体203をレーザで切り欠くことにより得られる。例えば、本体203の長手方向軸に直交して向けられるレーザ、および、固定具に対して該本体を回転および前進させながら本体203を保持できるレーザを用いて、レーザを活性化および非活性化してシャント本体203に特定の切り込みパターンを形成することが可能である。
図56B、57C、58C、59Cおよび60Cは、
図56A、57A、58A、59Aおよび60Aのそれらの各管状細長本体203について二次元図で示した、例である切り込みパターンを示す。
図56Aから58Cの実施形態では、レーザをオンにして約210度回転させ、その後レーザをオフにして30度回転させるカットバランスで、細長本体203をレーザで切り欠くことにより、該本体の1回転につき1.5の切り込み210を作る。
図59AからCの実施形態では、レーザをオンにして約116度回転させ、続いてレーザをオフにして28度回転させるカットバランスで、細長本体203をレーザで切り欠くことにより、1回転につき2.5の切り込み210を作る。
図60AからCの実施形態では、オンで約116度、オフで28度のカットバランスで、細長本体203をレーザで切り欠くことにより、1回転につき2.5の切り込み210を作る。また、
図56Aから59Cの実施形態では、切り込みパターンのピッチを約0.0070インチ(0.1778mm)とする一方で、各切り込み210は様々な幅、例えば、0.0010インチ(0.0254mm)(
図56AからB)、0.0022インチ(0.05588mm)(
図57AからC)、0.0049インチ(0.12446mm)(
図58AからC)または0.0039(0.09906mm)(
図60AからC)を有しうる。
図60AからCの実施形態では、各切り込み210は、0.00399インチ(0.10134mm)の幅を有し、管の長手軸に対して直交して配向されて、ゼロピッチパターンを示す。上記で開示した構成単位(unit)は、切り込み210およびそれらのパターンの例である寸法、角度および特徴であり、
図56Aから60Cの実施形態を限定することを意図しないということを認識されたい。
【0196】
図61AからDは、開示される発明の実施形態により構成された、例であるシャント200’を示す。これら実施形態では、組織貫通部材250が、シャント200’の遠位部202に固定的に連結される。シャント200’は、組織貫通部材250およびシャント200’の遠位部202上に配置されて組織貫通部材250およびシャント200’の遠位部202に摺動可能に連結されるカバー260をさらに備える。カバー260は、カバー260が後退して、シャント200’の組織貫通部材250が現れる、第1の構成を備える(
図61AからB)。カバー260は、カバー260が前進して、組織貫通部材250が覆われるかまたは隠される、第2の構成をさらに備える(
図61CからD)。カバー260は、標的部位へシャント200’が配備されることにより、第1から第2の構成に駆動されうる。例えば、カバー260は、先に説明したように組織貫通部材250がIPS壁114およびくも膜層115を穿孔して吻合チャネル140を作る間は(例えば、
図5EからI)、第1の構成で配置される(
図61AからB)。組織貫通部材250およびカバー260を含むシャント200’の遠位部202は、カバー260もまたCP角槽内に配置されるまで、該槽内へさらに前進する(図示せず)。その後、好適な後退力がシャント200’に加えられることで、くも膜層115とカバー260との間に協調(interface)が生じて、カバー260を第2の構成(
図61CからD)に駆動するため、シャント200’が標的部位に配備および埋め込まれるとき、組織貫通部材250はカバー260によって覆われて隠される(図示せず)。あるいは、カバー260は、カバー260に連結される駆動部材(例えば、テザー261等)またはその他の好適な方法を用いて第1から第2の構成へ駆動されうる。さらに代替として、貫通要素250は、経時的に分解して患者体内に鋭利な要素を埋め込んだままにする危険性を緩和する生体吸収性の(bioresorbable)/生体吸収可能な材料(例えば、マグネシウムまたは亜鉛から成る)から作ることが可能である。
【0197】
図62AからDは、開示される発明の実施形態に基づいて、標的部位へのシャント送達中に穿孔要素を保護するためのシャトル要素570を示す。
図62Aに示すように、シャトル要素570は、近位端開口575およびルーメン576を有する近位部574と、バンパー573を有する遠位部572とを備える。近位部574は、穿刺要素250との入れ子状の協調に好適なカバーまたはスリーブ様構成を形成する。シャトル570は、先に説明した任意の好適な生体適合性材料から成る。また、バンパー573は、早期に穿孔、引裂き、および/または損傷することがないように、穿孔要素との接触および係合に耐久するように構成された任意の好適な材料から成る。また、バンパー573は、バンパー373に対して穿孔要素との係合の耐久を補助しうる(例えば、ポリウレタン、シリコーン、ePTFE)、および/または、脈管構造を通るバンパー373の前進を補助しうる(例えば、親水性コーティング等)、好適な高分子材料で覆われ、または被覆されうる。
【0198】
シャトル570は、標的部位へのシャント200送達中に穿孔要素を覆って保護するように構成されて、患者の静脈アクセスポイントからIPS壁114の標的貫通部位へ送達中に意図しない引裂きまたは穿刺から患者の脈管構造を守る。シャトル570は、任意の穿孔要素と、例えばシャント200’の組織貫通部材250、送達システム300の組織貫通要素306、および/または送達カテーテル304’の組織貫通部材350と組み合わせて用いてよい。加えて、シャトル570は、シャトル570が標的部位へのシャント送達中に収縮した拡張可能要素390(図示せず)を覆いうるように、例えば
図43Aから44Eおよび47Aから50Bの実施形態とともに用いられてよい。
図44Aおよび62BからCから、シャトルを拡張可能バルーンに関与する実施形態へ組み込みことにより、脈管構造を介して辿る間、さらに、バルーンの折り畳みを支援して実効断面(effective crossing profile)を低減しうるということが認識可能である。
【0199】
図62BからDは、シャトル570とシャント200’および組織貫通部材250との例であるインタフェースを示す。
図62Bに示すように、組織貫通部材250は、シャント200’が送達カテーテル304を介して前進する間、シャトル570のルーメン576内に配置される。シャトル570の近位部は、標的部位への前進中、組織貫通部材250を覆って保護する。組織貫通部材250は、シャント200’送達中、シャトル570のバンパー573と接して係合しうる。シャトル570は、組織貫通部材250の係合および前進(例えば、シャトルを推進すること)により、送達ガイドワイヤ308に連結されること(例えば、ガイドワイヤの軸方向並進)により、プランジャーまたは推進要素(図示せず)で前進されることにより、または、その他の好適な駆動機構および方法により前進される。例えばシャトル570は、
図62Dに示すように、第1のストッパー308’および第2のストッパー308’’を備えるガイドワイヤ308に摺動可能に連結されうる。シャトル570が
図62Dの例であるガイドワイヤ308上に摺動可能に配置される実施形態では、ガイドワイヤ308の前進が、第1のストッパー308’をバンパー573と係合させることによって、シャトル570が前進し(
図62D)、かつ、ガイドワイヤ308が後退することが第2のストッパー308’’をバンパー573と係合させ、その結果シャトル570が取り除かれるように(図示せず)、バンパー573を第1の308’および第2の308’’ストッパー間に配置する。第1のストッパー308’および第2のストッパー308’’は、バンパー573との干渉度合いを変えるように構成されうるため、所与の処置の工程全体にわたって、所定量の張力または圧縮力により、バンパー573が第1のストッパー308’または第2のストッパー308’’を選択的に回避することを可能にすることとなる。
図62Bに示すようにシャント200’がIPS102内に配置されると、送達カテーテル340および/またはシャント200’が後退して組織貫通部材250が現れるか、またはシャトル570が前進して組織貫通部材250が現れる。あるいは、送達カテーテル340および/またはシャント200’の後退ならびにシャトル570の前進と同時に、または続いて、組織貫通部材250の出現が引き起こされる。加えて、シャトル570は、その長手方向軸に沿った溝を伴って構成されうるものであり、軸方向へのおよび/または屈曲させる十分な負荷を加えることで組織貫通部材250の側方への排出を容易にする。組織貫通部材250はその後、本明細書に記載の方法のいずれかにより、IPS壁114の方へ向けられて前進し、IPS壁114およびくも膜層115を穿孔して吻合チャネル140を作る(
図62D)。
【0200】
図63AからGは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャント200を示す。シャント200は、近位部204に固着機構227、遠位部202に固着機構229およびその間に延びる細長本体203を含む。固着機構227および229は、フレアバスク状(flared-basked)構成を含む(
図63AからC)。フレアバスク状の固着機構227および229は、任意の好適な切断方法を用いて(例えば、レーザ切断)、シャント200の近位204および遠位202の部分それぞれを選択的に切ることによって製造する複数の各要素227aおよび229aを含む(
図63DからF)。
図63EからFは、シャント200の近位204および遠位202の部分それぞれの切り込みの詳細な例であるパターンを示す。複数の要素227aおよび229aそれぞれは、配備に関しては半径方向外側への構成に偏らせ(例えば、
図63Gに示すように)、シャント200の配備までは送達構成に圧縮可能である。
図63Gに示すように、複数の要素227aおよび229aそれぞれがライナーまたは外側カバーを組み込まない場合、代替的な実施形態では、複数の要素227aおよび229aそれぞれと、シャント200の細長本体203とが、例えば
図55Eで説明されるライナー214のようなコーティングおよび/またはライナーにより覆われる。ライナーは、要素227aおよび229aそれぞれに対して、シャント200の配備構成においては、半径方向外側に拡張することを可能とするように構成され、例えば
図63AからC、63Gに示すような固着機構227および229のフレアバスク状構成をとる。あるいは、または裏打ちされる固着機構227および229に加えて、内部ライナー212が、シャント本体203の近位および/または遠位端部においてシャント本体203の長手方向軸から、1から数ミリメートルの間の範囲である所定の距離だけ延びる。例えば、シャントの遠位端部203上で、ライナーを、くも膜層115の上に置かれる固着機構229の部分よりも上に約3mm延ばすことが可能であり、それによってシャントルーメン207がくも膜細胞と分離して、またはくも膜細胞から離れるように維持される。さらなる例として、シャントの近位端部204において、近位固着機構227を裏打ちせずに、ライナーを、シャント本体203からバルブ209内へ、またはバルブ209上に延ばすことが可能である。
【0201】
図63Aに示すように、近位部204のバルブ(図示せず)が頸静脈106内に配置されるように、展開した固着機構227が頸静脈球108、IPS壁117および/またはIPS102の別の部分と係合して、頸静脈106内でシャント200の近位部204を固着する。あるいは、固着機構227は、接合118(図示せず)において、IPS壁114および117と係合してよい。展開した固着機構229は、CSFが埋め込まれたシャント200を通って頸静脈106へ流れるように、CP角槽138内でシャント200の遠位部202を固定する。
図63BからCは、シャント200のさらなる斜視図を示す。
【0202】
図64AからCは、開示される発明の実施形態により構成されて埋め込まれた、別の例であるシャントの遠位固着を示す。
図65Aに示すように、組織貫通部材250は、IPS102から前進して、IPS壁114およびくも膜層115を穿孔し、CP角槽138への吻合チャネル140を作る。シャント200’の遠位部202は、遠位固着機構229が展開して、標的部位でシャント200’の遠位部202を固定するように、CP角槽へ前進する。展開した固着機構229は、
図64Bに示すように、シャント200’の遠位部202を拡張して、シャント200’の細長本体203の内径ID
2よりも大きい内径ID
1をとるように構成される。固着機構229は、展開構成において内向きになる、および/または半径方向内側に配置されるように構成される遠位エッジ229’を備える(
図64B)。あるいは、固着機構の遠位エッジ229’は、展開構造において裏返る、および/または半径方向外側に配置されるように構成されうる(
図64C)。
図64BからCの固着機構229は、適宜、本明細書に開示されるシャントのいずれかの実施形態とともに用いられうるということを認識されたい。
【0203】
図65AからDは、開示される発明の実施形態に基づいて構成される、シャント200を患者の標的部位に送達する、例である送達カテーテル304’’を示す。簡単のため、
図3Bおよび4AからDの組立体300、
図5AからJの組立体300’、および/または
図43AからDの組立体304’と同様である送達カテーテル304’’の特徴、機能および構成は、同様の参照符号で示される。送達カテーテル304’’は、脈管構造の遠隔位置に到達するように寸法され、シャント200を経皮的に標的位置(例えば、下錐体静脈洞)に送達するように構成される。送達カテーテル304’’は、該カテーテル304’’に対して、IPS102内の標的部位において該カテーテルの遠位部344を位置させるために脈管構造内に挿入、前進および/または回転することを可能とするのに十分な「推進可能性」および「回転可能性」を提供するのに好適な可変剛性部(例えば、ブレード状、コイル状等の選択的な強化を含む、材料の割合を変化させること)を備えうる。また、遠位部344は、それが標的部位へ辿りかつうまく移動可能であるように十分な柔軟性を有するべきである。カテーテル304’’における可変剛性とは、例えば製造工程中に使用される材料の特性および/もしくは分布を局所的に変えること、ならびに/または、材料の硬度もしくは厚さを変えることによって達成される。非限定的な例として、カテーテル304’’の製造に用いる材料としては、ポリエーテルブロックアミド(ぺバックス(登録商標))およびナイロン、例えばカテーテル304’の製造に関して先に説明した材料であるその他の好適な材料を含みうる。送達カテーテル304’’は、適切な場合、同様に先に説明した送達組立体300/300’と組み合わせて用いてよいということを認識されたい。
【0204】
送達カテーテル304’’の遠位部344は、送達カテーテル304’’のルーメン305と流体的に連結するルーメン355を有する組織貫通部材350を備える(
図65C)。シャント200は、吻合チャネル140が作られるときに(図示せず)、ルーメン305、355を経由して標的部位に配備されるように構成される。送達カテーテル304’’を用いてシャント200を標的部位へ送達および配備する場合、送達組立体300の組織貫通要素306および/またはシャント200’に組み込まれる組織貫通部材250を必要としなくてよいということを認識されたい。
【0205】
送達カテーテル304’’は、ガイドワイヤ318の前進、脈管構造へ流体を供給および/もしくは取り除く、ならびに/またはその他の好適な機能のために構成されるルーメン314をさらに備える(
図65BからE)。細長ガイドワイヤ318は、
図65Bおよび
図66のワイヤ318の断面図でわかるように扁平な側面を含み、かつ、ワイヤ318はニチノールで形成される。他の実施形態では、ワイヤ318は、任意の好適な側面および材料を含みうる。送達カテーテル304’’は、ルーメン314を介して延びるワイヤ318上を、送達カテーテル304の遠位端部344がIPS102内に位置されるまで前進しうる(図示せず)。
【0206】
図67AからDは、開示される発明の実施形態に基づいて構成される、シャント200を患者の標的部位に送達する送達カテーテルの例である断面図を示す。
図67Aは、外側管状部材364および外側管状部材364内に同軸上に配置される内側管状部材365を有する管状インタフェースを備える送達カテーテル304の断面図を示す。カテーテル304の同軸の管状インタフェースは、シャント200を標的部位へ送達するように構成されるルーメン305と、ガイドワイヤの前進、拡張可能部材(例えば、バルーン等)もしくは脈管構造へ流体を供給および/もしくは取り除く、ならびに/またはその他の好適な機能のために構成されるルーメン314とを備える。
図67Bは、先に説明した
図65AからEの送達カテーテル304’’の断面図を示す。
図67CからDは、標的部位へシャント200を送達するように構成されるルーメン305と、2つの付加的なルーメン、ガイドワイヤルーメン315および膨張ルーメン317とを備える、送達カテーテル304’’の断面図を示す。標的部位へシャント200を送達するのに好適な、送達カテーテルおよびルーメンのその他の構成が用いられうるということを認識されたい。
【0207】
図65Aから67Dに示すカテーテルのルーメンの実施形態は、そうしたカテーテルを用いる様々な送達組立体300の要素に従うように構成可能である。
図65Bに示す送達カテーテル304’’のルーメン314は、ワイヤ318の扁平な側面とは異なる、三日月形状の側面を含む。他の実施形態では、ルーメン314の全てまたは一部の側面は、ワイヤ318の外側側面とより密接に適合するように構成可能である。例えば、
図65Dに示すルーメン314の左右の底部は、ワイヤ318底部のストレートで角度をもつエッジと適合するように形成可能である。別の例としては、ルーメン314は、
図66に示すワイヤ318の側面に適合することが可能である。一致したカテーテルルーメンは、通過する要素が、シャント埋め込み処置中にカテーテル内の配向または軌道を不注意に変更するという危険性をなくすことが可能である。さらに、一致したルーメンの任意の組み合わせを、
図67AからDに示す円形および三日月状のルーメン314の実施形態とともに、または代わりに用いることが可能である。しかしながら、或るルーメン314の構成(例えば、同じ大きさの長方形ルーメンに対して三日月状ルーメン)では、他のルーメンおよび構成部品を収納するためにカテーテルの断面積をより多く保つことが可能であるということが当業者により認識されるであろう。
【0208】
図65Aから67Dに示される、およびこの出願の他の箇所(例えば、送達カテーテル304、誘導カテーテル320)に開示されるカテーテルのルーメンの実施形態は、送達組立体300の円滑性を増すライナーを含み、そうしたルーメンを介して送達される特定のカテーテルルーメンおよび送達システムの構成要素間の摩擦を低減することが可能である。カテーテルのライナーは、ポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、フッ素重合体(例えば、FEP、TFE、PTFE、ETFE)、ポリカーボネート、ポリエーテル、PEEK、PVCおよび他のポリマー樹脂を含む、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドを含みうる。ライナーの厚さは、約0.0005インチから0.003インチの範囲とすることが可能である。さらに、カテーテルの実施形態は、この技術で広く公知の親水性コーティングを含み、患者体内での送達組立体300の構成要素の円滑性および誘導性をさらに増すことが可能である。
【0209】
開示される発明の実施形態では、患者にシャント200/200’を埋め込むことによって患者の高い頭蓋内圧を緩和する方法を提供する。シャント200/200’は、シャント200/200’の遠位部202に1つまたは複数の脳脊髄液(CSF)取り入れ開口201と、上記シャント200/200’の近位部204に配置されるバルブ209と、該1つまたは複数のCSF取り入れ開口201および上記バルブ209間に延びるルーメン207とを備える(例えば、
図6に示すように)。上記方法は、患者の静脈アクセス位置から組織貫通要素306/250/350および該シャント200を含む配備システム300/300’を導入することと、上記患者の頸静脈(JV)106を経由して上記患者の静脈アクセス位置からIPS102内の標的貫通部位へ該貫通要素306/250/350および上記シャント200/200’を含む上記配備システム300/300’を移動することと、上記標的貫通部位において上記患者の上記IPS102から角槽138への上記組織貫通要素306/250/350の軌道を評価することと、上記標的貫通部位において硬膜IPS壁114およびくも膜組織層115を介して該CP角槽138へ上記組織貫通要素306/250/350を前進させることと、上記組織貫通要素306/250/350により作られる上記硬膜IPS壁114および上記くも膜組織層115それぞれにおける開口(例えば、吻合チャネル140)を通って上記CP角槽138へ上記シャント200/200’の上記遠位部202を前進させることと、上記CP角槽138において上記シャント200/200’の遠位固着機構229を配備することと、該送達システム300/300’を上記標的貫通部位から該JV106の方へ後退させることであって、上記シャント200/200’が、上記送達システム300/300’から放出されることによって上記送達システム300/300’を上記JV106の方へ後退させながら上記IPS102内に配備されることと、上記シャント200/200’の上記近位部204が上記JV106の内壁から離れる方へ向けられるように、上記JV106および上記IPS102の接合118周辺に上記シャント200/200’の近位固着機構227を配備することと、上記患者から上記送達システム300/300’を後退させることであって、上記患者のくも膜下腔および静脈系間の正常な差圧を維持するために、該配備されたシャント200/200’が一方向の流路を提供してCSFがシャントルーメン207を経由して上記CP角槽から上記JV106へ流れることとを含む。上記方法は、患者から送達システム300/300’を後退させる前に、CP角槽138から送達システム300/300’を介してCSFを取り除くことによって、組織貫通要素306/250/350がCP角槽138にアクセスしているということを確認することをさらに含みうる。
【0210】
開示される発明の実施形態では、シャント200/200’を用いて正常圧水頭症(NPH)を治療するための方法が提供される。シャント200/200’は、該シャント200の遠位部202に1つまたは複数の脳脊髄液(CSF)取り入れ開口201と、上記シャント200/200’の近位部204に配置されるバルブ209と、該1つまたは複数のCSF取り入れ開口201および上記バルブ209間に延びるルーメン207とを備え、上記ルーメン207は、0.008インチから0.014インチの範囲の内径を有する。上記方法は、上記シャント200/200’の上記遠位部202が患者のCP角槽138内に少なくとも部分的に配置され、上記シャント200/200’の本体203が上記患者のIPS102内に少なくとも部分的に配置され、かつ、上記シャントの上記近位部204が上記患者の頸静脈(JV)106内に、または該頸静脈(JV)106に対して近位に少なくとも部分的に配置されるようにNPH患者の体内に上記シャント200/200’を配備することであって、上記シャント200/200’の配備後にCSFがシャントルーメン207を経由して上記CP角槽138から該JV106へ流れるように、上記シャントのバルブ209を、上記CP角槽138および上記JV106間の差圧が3mmHgから5mmHgの範囲で開くことを含む。
【0211】
上記シャント200/200’が配備されるとき、上記シャント200/200’の上記近位部204は頸静脈球108に隣接して配置されうる。
【0212】
本明細書において開示する方法および装置は、水頭症を治療することまたは高いICPの緩和することを意図した他の方法およびシステムに対して、いくつかの有意な利点を提供する。
【0213】
従来のVPシャント設置手術は、全身麻酔下で行われる侵襲的処置であり、典型的には、約3から5日の入院が必要である。処置の間、医師は、患者の頭蓋骨に穿孔を行い、その後カテーテルはそうした孔を、さらに脳組織(例えば、大脳皮質の灰白質、大脳白質、脳室)を通過して脳室内のCSFへアクセスする。脳室カテーテル設置は、典型的に、脳の皮質を凝固させること、ならびに、大脳皮質および大脳皮質下の白質に1回または数回カテーテルを通過させることが必要である。その後脳室カテーテルは、医師により患者の頭皮下、しばしば耳の後方に埋め込まれる、バルブ機構の流入部分に装着される。バルブ機構の流出部分には、患者の皮下に埋め込まれて頸部を通って腹部へ縦断するシリコーンカテーテルが装着される。埋め込まれたシャントが一方向流路を提供して、CSFが患者の室から腹腔内へ移動する。
【0214】
VPシャントは、詰まりが起こりやすく、特に脳室カテーテルおよび腹膜の管留置で起こりやすい。カテーテルを介して脳室から過剰なCSFが除去されると、脳室が小さくなる。しばしば、脳室の縮小に伴い、カテーテルのCSF流入口辺りで脈絡膜および周辺の室の他の細胞が縮み、VPシャントへのCSFの流れを遮断する。腹膜の管留置はしばしば、細胞成長(例えば、血管内皮細胞)により詰まる、および/または腹壁へ組み込むことにより詰まる。VPシャント設置手術は、特に侵襲性を最小限にした血管内処置と比較した場合、感染率が相対的に高い。VPシャントは、埋め込まれたシャントのCSF流入(すなわち、脳室)箇所および流出(すなわち、腹膜)箇所間に生じるその長い静水圧柱に起因する吸い上げ効果の影響を受けやすい。脳室からのCSFの急速過ぎる排出または過剰排出は、患者に対して、例えば脳室虚脱または硬膜下血腫による重大な危険性をもたらす。VPシャント内における吸い上げ効果を和らげるために、複雑な吸い上げ止めのバルブが開発されている。
【0215】
対照的に、血管内配備方法を用いて、CSFを頸静脈球または静脈に排出するようにIPS102内からCP角槽138へシャント200を配備することにより、侵襲的手術、周辺脳組織、感染および吸い上げ効果に起因する危険性および詰まりの合併症をなくすことまたは有意に和らげることが可能である。多くの患者では、特に70歳未満の患者で、IPS102以外の静脈洞内で、血管内シャントを収納するくも膜下腔内のくも膜層および脳実質間の空間がほとんどない、またはない。そうした場合、シャント配備技術およびシャントの特徴により、脳実質を移動するか、および/または、シャントへの流入用にCSFを貯留するためにくも膜下腔内に槽を作る、または増やす。そうした技術は、脳組織損傷の危険性を増し、続いて周辺脳組織からの近位端におけるシャント詰まりの危険性を増す。本明細書に開示した上記方法、システムおよび装置は、これらの危険性を有意に低減し、またはなくす。
【0216】
標的部位(例えば、下錐体静脈洞)へカテーテルを移動することと、血管内シャントを配置し、脳槽(例えば、小脳橋(CP)角槽)からCSFを排出して、NPHおよび偽脳腫瘍を含む交通性水頭症を治療することとに関する血管内アクセスシステムおよび方法のいくつかの利点を本明細書に開示しており、それによってこれまでのVPS設置の望まない効果を最小限にし、患者の頭蓋骨に穴を開けること、脳の皮質を凝固させること、大脳皮質および大脳皮質下の白質に1回または数回シャントカテーテルを通過させること、ならびに現在の水頭症治療に用いられる他の侵襲的手術技術を回避する。
【0217】
CP角槽138およびそのIPS102の近位の解剖学的構造により、S状静脈洞または他の頭蓋内静脈洞(例えば、横静脈洞、海綿静脈洞、矢状静脈洞および/または直静脈洞)と比べて、血管内CSFシャントを配備するのに好ましい場所となっている。CP角槽138は典型的に、大きなCSF含有空間であることと、静脈導管からアクセス可能なその他のCSF槽よりも、くも膜層および最も近い周辺脳実質間がより大きく分離していることとを特徴とする。従って、CP角槽138内にシャント200を配置することは、その他の槽内にシャントを配置するよりも容易で、かつ、より欠陥耐性があって、CP角槽138内でより多くのCSFを貯留するという理由から、CSFが静脈の循環と通じることができる割合がより高い。
【0218】
頸静脈106内の静脈血の流量は、より大きな径をもつ硬膜静脈洞(すなわち、矢状、S状、直および横の)内の血流量よりも有意に高いものであり得、他の埋め込み場所と比べて開示される実施形態の長期的なシャントの開通性を支持する。
【0219】
さらに、IPS102の解剖学的構造により、シャント200の長期的な安定性を促進する。IPS102の比較的長い長さおよび狭い径が、その長さに沿ってシャント200を収納する自然のハウジングとなる。IPS円周の約3分の2を囲む斜台の骨の溝状部によって提供される土台が、シャント200の長期的な安定性をさらに支持し、本明細書で開示される送達システムがシャント埋め込み処置中に活用可能である安定した台をもたらす。他の静脈洞とは状況が異なり、同様にシャントを自然に収容するようには構成されていない。また、IPS102がシャント200の占有により閉塞し、それによってIPS102への血流が制限または妨害される場合、頭蓋内静脈血循環系全体において比較的重要でない役割であるIPS102が患者に対して与える危険性は、皆無かほとんどない。一方、より大きな径の静脈洞(例えば、矢状、S状、直および横の)の閉塞は、患者にとって深刻な危険性を引き起こす。
【0220】
また、開示される発明によるシャントを送達および埋め込む血管内アプローチの利点にかかわらず、例えば開腹および/または侵襲的な外科的処置を用いるなど、本明細書で説明されたシャントを送達および埋め込むために他の送達方法を用いることができるということを認識されたい。
【0221】
開示される発明の実施形態は、ヒトに用いる前に、ヒトのIPSおよびCP角槽に似ているかまたはほぼ同じ静脈血管および頭蓋内くも膜下機能を有する好適な代替動物において配備および試験することが可能であるということを認識されたい。ブタ(例えば、ヨークシャーブタまたはユカタンミニブタは、開示された発明の実施形態を試験するために好適な配備部位を有する。ブタモデルでは、システムは、試験のために、シャントを脳底静脈洞へ移動して(例えば、内頸静脈または静脈椎骨動脈神経叢を経由して)、CSFで満たされたくも膜下腔(例えば、頭蓋底槽、脳橋槽)にアクセスするために該シャントを硬膜およびくも膜組織を貫通して配備することが可能である。ヒトのIPSおよびCP角槽に好適な代替としては、他の動物モデルで実行可能である(例えば、イヌおよび霊長類)。
【0222】
本明細書において特定の実施形態を示して説明したが、それらは本発明を限定する意図ではないということが当業者により理解されることとなり、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ規定されることとなる開示した発明の範囲から逸脱することなく様々な変更、並べ替えおよび変形(例えば、様々な部分の寸法、部分の組み合わせ)がなされてよいということが当業者にとって明らかであろう。従って、明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると考えられる。本明細書に示して説明した様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれうる、開示された発明の代替物、変形物および均等物をカバーすることを意図している。