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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】粒状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220518BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20220518BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20220518BHJP
   A23L 21/15 20160101ALI20220518BHJP
   C12J 1/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L29/256
A23L29/281
A23L21/15
C12J1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021013620
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2021-01-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月9日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社札幌営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社仙台営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月9日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社仙台営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社東京営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社名古屋営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社大阪営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社広島営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月9日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社福岡営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社白鳥工場に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月7日(配達希望日 令和2年7月8日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社三河工場に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年8月21日(配達希望日 令和2年8月24日)、光和デリカ株式会社が、株式会社桑宗に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月24日(配達希望日 令和2年9月25日)、光和デリカ株式会社が、株式会社ナガキュウ長野営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年8月27日(配達希望日 令和2年8月28日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社大阪営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月3日(配達希望日 令和2年9月5日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社札幌営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」及び「バルサミコドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年10月16日(配達希望日 令和2年10月19日)、光和デリカ株式会社が、天狗缶詰株式会社名古屋営業所に、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「ゆずドロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年11月20日、光和デリカ株式会社が、マルハニチロ株式会社東京開発センターにて、営業活動のため、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「レモンロップス」を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年12月18日(配達希望日 令和2年12月21日)、光和デリカ株式会社が、マルハニチロ株式会社東京開発センターに、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「レモンロップス」を発送した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年1月22日(配達希望日 令和3年1月25日)、光和デリカ株式会社が、マルハニチロ株式会社東京開発センターに、石田陽子及び塩谷健仁が発明した製造方法で製造された粒状食品である「レモンロップス」を発送した。
(73)【特許権者】
【識別番号】500458974
【氏名又は名称】光和デリカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 健仁
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-205463(JP,A)
【文献】特開平06-239370(JP,A)
【文献】特開昭60-027347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 29/00-29/30
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内包部と、前記内包部を覆う、アルギン酸カルシウムを含む被膜と、を有する粒状食品の製造方法であって、
水溶性カルシウム塩を含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下することにより、アルギン酸カルシウムを含む前記被膜を有する粒体を形成する工程を有し、
前記造粒液のpHが1.5以上3.7以下であり、
前記造粒液が果汁又は酢を含む、粒状食品の製造方法。
【請求項2】
前記造粒液中のナトリウムの含有量が2質量%以下である、請求項1に記載の粒状食品の製造方法。
【請求項3】
前記被膜がゼラチンを含む、請求項1又は請求項2記載の粒状食品の製造方法。
【請求項4】
前記粒体を形成する工程の後に、果汁及び酢以外の調味成分を含む調味液に前記粒体を浸漬する工程を有する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の粒状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粒状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸カルシウムを含む皮膜の内部に、調味成分を封じ込めた粒状食品がある。その代表的なものとしては、天然のイクラを模した人工イクラ等が挙げられる。
粒状食品の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、塩化カルシウムを含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下することにより、アルギン酸カルシウム被膜を有する粒体を形成した後、粒体を調味液に浸漬する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-215536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、粒状食品の内部に封じ込める調味成分として、果汁又は酢を検討した。その結果、果汁又は酢を含む調味液を粒体に浸漬しても、得られた粒状食品を口に含んだ時に、果汁又は酢が有する風味を感じにくい場合があることが判明した。
【0005】
一方、あらかじめ、果汁又は酢を造粒液に入れてしまうと、得られた粒体がつぶれやすい場合があることが判明した。
本開示の一局面は、つぶれにくい粒体を形成することができるとともに、果汁又は酢が有する風味が感じられる粒状食品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内包部と、内包部を覆う、アルギン酸カルシウムを含む被膜と、を有する粒状食品の製造方法であって、水溶性カルシウム塩を含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下することにより、アルギン酸カルシウムを含む被膜を有する粒体を形成する工程を有する。造粒液のpHが1.5以上5.5以下である。造粒液が果汁又は酢を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、つぶれにくい粒体を形成することができるとともに、果汁又は酢が有する独特の風味が感じられる粒状食品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一態様の製造方法は、内包部と、内包部を覆う、アルギン酸カルシウムを含む被膜と、を有する粒状食品の製造方法であって、水溶性カルシウム塩を含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下することにより、アルギン酸カルシウムを含む被膜を有する粒体を形成する工程を有する。そして、造粒液のpHが1.5以上5.5以下であり、造粒液が果汁又は酢を含む。
【0009】
本発明者らの検討によれば、人工イクラを製造する場合には、粒体を形成した後に粒体を調味液に浸漬することにより、粒体の内部に調味液を浸透させることが好ましい。人工イクラでは、とろりとした口溶け感を得るために、調味液に比較的分子量が大きい糖類、例えば4糖以上のオリゴ糖等が併せて添加される。しかし、これらを含む溶液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下すると、粘稠性の制御が難しいためか、安定した形状の粒体が形成できにくくなってしまうためである。
【0010】
そして、人工イクラでは、調味成分、例えば、食塩等の塩分、グルタミン酸ナトリウム等の旨味成分等が、粒体の内部に浸透しやすい性質を有する。そのため、調味液を粒体の内部に後から浸透させても、これらの調味成分が粒体の内部に十分に浸透することから、風味が損なわれにくい。
【0011】
これに対し、本発明者らの検討によれば、果汁又は酢を含む調味液に粒体を浸漬させた場合に、果汁及び酢の風味をもたらす成分が粒体の内部に浸透しにくいためか、果汁又は酢が有する独特の風味が感じられにくいことが判明した。すなわち、果汁又は酢を含む内包部を有する粒状食品を製造するには、あらかじめ、粒体を形成するための造粒液に果汁又は酢を添加することが重要である。
【0012】
一方で、果汁又は酢を造粒液に添加した場合には、得られた粒体がつぶれやすい場合があった。本発明者の詳細な検討の結果、つぶれにくい粒体を形成するためには、pHを1.5以上5.5以下の範囲に調整することが重要であることが判明した。
【0013】
以下、本開示の一態様の粒状食品の製造方法について詳細に説明する。
粒状食品の製造方法は、水溶性カルシウム塩を含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下することにより、アルギン酸カルシウムを含む被膜を有する粒体を形成する工程(以下、「造粒工程」ともいう。)を有する。
【0014】
造粒液は、塩化カルシウム等の水溶性カルシウム塩と、水と、果汁又は酢と、を含む。
造粒液中の塩化カルシウムの含有量は、例えば、0.1%以上5.0%以下が好ましく、0.5%以上3.0%以下がより好ましい。なお、ここでいう、「%」は、「質量%」を意味する。以下同様である。
【0015】
果汁としては、酸味のある果汁が好ましい。果汁としては、例えば、パイナップル果汁、リンゴ果汁、グレープ果汁、オレンジ果汁、モモ果汁、グレープフルーツ果汁、柚子果汁、レモン果汁等が挙げられる。
【0016】
酢としては、例えば、醸造酢、合成酢等が挙げられる。醸造酢としては、例えば、米酢等の穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢(白ワインビネガー、バルサミコ酢等を含む)等の果実酢等が挙げられる。
【0017】
造粒液中の果汁又は酢の含有量は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
造粒液は、比重を調整するために糖類を含んでもよい。造粒液の比重を調整することにより、造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液中に沈下させることができる。糖類としては、例えば、グルコース等の単糖類、ショ糖等の二糖類、プルラン等の多糖類等が挙げられる。造粒液中の糖類の含有量は、例えば、0.1%以上10%以下が好ましく、3.0%以上7.0%以下がより好ましい。また、糖度を表すBrix値は、例えば、1以上30以下が好ましく、1以上10以下がより好ましい。なお、Brix値は、糖用屈折計を用いて常温で測定された造粒液の屈折率を、温度補正表を用いて、20℃における純ショ糖溶液の質量/質量%に換算した値である。
【0018】
造粒液は、粘性を調整するために増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、澱粉、化工澱粉、湿熱処理澱粉、ゼラチン等が挙げられる。造粒液中の増粘剤の含有量は、例えば、0.1%以上10%以下が好ましく、0.3%以上5.0%以下がより好ましい。
【0019】
造粒液は、泡立ちを抑制するために消泡剤を含んでもよい。消泡剤としては、例えば、シリコーン等が挙げられる。造粒液中の消泡剤の含有量は、例えば、0.0001%以上0.001%以下が好ましい。
【0020】
造粒液は、これらの成分の溶解性を向上するために油性成分を含んでもよい。油性成分としては、例えば、大豆油、サラダ油等が挙げられる。なお、造粒液が油性成分を含む場合は、撹拌することにより乳化状にすることが好ましい。
【0021】
造粒液は、調味成分として食塩等を含んでもよい。造粒液中のナトリウムの含有量は、8%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。造粒液中のナトリウムの含有量が多すぎると、アルギン酸カルシウムを含む皮膜が弱くなる可能性があるためである。ナトリウムの含有量は、原子吸光光度法により測定した値である。
【0022】
造粒液のpHは、1.5以上5.5以下である。造粒液のpHがこの範囲であると、つぶれにくい粒体を形成することができる。造粒液のpHは、1.6以上3.7以下がより好ましい。造粒液のpHは、常温(例えば、25℃)で、ガラス電極のpHメータを用いて測定した値である。
【0023】
アルギン酸ナトリウム水溶液は、アルギン酸ナトリウムと、水と、を含む。アルギン酸ナトリウム水溶液中のアルギン酸ナトリウムの含有量は、例えば、0.1%以上5.0%以下が好ましく、0.5%以上3.0%以下がより好ましい。
アルギン酸ナトリウム水溶液は、ゼラチンを含むことが好ましい。ゼラチンを含むことにより、アルギン酸カルシウムを含む皮膜が強化され、粒体がよりつぶれにくくなる。アルギン酸ナトリウム水溶液中のゼラチンの含有量は、例えば、0.01%以上2.0%以下が好ましく、0.05%以上1.0%以下がより好ましい。
【0024】
粒状食品の製造方法は、上述の造粒工程の後、粒体を調味液に浸漬する工程(以下、「浸漬工程」ともいう。)を有してもよい。
調味液には、粒体を調味するための調味成分が含まれる。ここでいう調味成分は、造粒液に含まれる果汁及び酢以外の調味成分である。調味成分としては、例えば、食塩等の塩分、砂糖等の糖類、酸味料、香辛料等が挙げられる。また、調味液は、カロチノイド色素、カラメル色素、ベニコウジ色素等の着色料等を含んでもよい。
【0025】
造粒工程と、粒体の調味液への浸漬工程とを切り分けることにより、粒体に含有させる果汁又は酢の種類、含有量、求める味等に応じて、調味成分の種類、量等を自在に調節できる。調味成分をあらかじめ造粒液に入れることにより粒体の形成と併せて粒体を調味する場合、調味成分の種類、含有量等を変更することにより粒体の形成条件が大幅に変わる可能性があり、粒体の形成制御が複雑になる。よって、粒体の形成条件を気にせずに、調味成分の種類、量等を自在に調節できるように、粒体の形成後に、粒体の内部に調味成分を浸透させることが好ましい。
【0026】
粒体と、粒体を浸漬する調味液との割合は、9:1~5:5が好ましく、8:2~6:4がより好ましい。この割合の範囲内であると、粒体を均一に調味液中に分散させることができる。
浸漬工程は、加熱しながら行うことが好ましい。加熱することにより、短時間で調味成分を浸透させることができる。また、同時に加熱殺菌することもできる。加熱温度は、例えば、40℃以上90℃以下が好ましい。加熱殺菌を同時にする場合は、加熱温度は70℃以上90℃以下が好ましい。
【0027】
浸漬時間は、特に限定されないが、例えば、15分~1時間程度が好ましい。
粒状食品の製造方法は、上述の造粒工程の後又は浸漬工程の後、並びに両方の工程の後に、粒体を洗浄する工程を有してもよい。粒体は、水又は湯によって洗浄することができる。
【実施例
【0028】
以下に、本開示の一態様について実施例を挙げて説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<粒体の製造>
上白糖5.0%、塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、プルラン(「プルラン PF-20」、株式会社林原製)1.5%、清水2.0%、パイナップル果汁(「セブンプレミアム 果汁100% パイナップル」、株式会社セブン&アイ・ホールディングス製)89.3%を混合し、造粒液を調製した。造粒液のpHは3.35であった。pHの測定には、ガラス電極のpHメータ(株式会社堀場製作所製、「D-51」)を使用した。以下、pHの測定方法は同様である。
【0029】
また、アルギン酸ナトリウム1.0%、ゼラチン(「ゼラチン AP200」、株式会社ニッピ製)0.15%、清水98.85%を混合し、アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0030】
造粒液を内径5mmのノズルを通して直径約6mmの水滴とし、毎分100個の速さでアルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下した。そのままアルギン酸ナトリウム水溶液中で3分間撹拌することにより、粒体を形成した。得られた粒体をアルギン酸ナトリウム水溶液から取り出し、流水で洗浄した。
【0031】
また、上白糖30.0%、清水70.0%を混合し、調味液を調製した。
得られた粒体と、調味液とを、質量比で7:3の割合でパウチに充填した後、パウチを密封した。加熱殺菌機を用いて、温度85℃、時間30分、圧力0.05MPaの条件でパウチを加熱殺菌した。
【0032】
<粒体のつぶれ具合の評価>
加熱殺菌前(すなわち、造粒後)及び加熱殺菌後の粒体をそれぞれメスシリンダーに100mLの目盛りまで入れた後、メスシリンダーの下部にある粒体のつぶれ具合を目視で確認し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0033】
〇:粒体がつぶれていない。
△:一部の粒体がつぶれている。又は、粒体はつぶれていないが、粒体が柔らかいため取り扱いにやや注意を払う必要がある。
×:粒体が形成できない。
【0034】
<粒体の硬さの評価>
専門の評価者が加熱殺菌後の粒体を口の中に含み、粒体の硬さを評価した。評価結果を表1に示す。
【0035】
〇:皮膜が硬くはじける食感である。
△:皮膜が柔らかく舌で押せばつぶれる硬さである。
×:口に含むと溶けるように崩れる。
【0036】
<粒体の風味の評価>
専門の評価者が加熱殺菌後の粒体を口の中に含み、果汁又は酢の風味が感じられるか評価した。評価結果を表1に示す。
【0037】
〇:果汁又は酢の風味が感じられる。
×:果汁又は酢の風味があまり感じられない。
(実施例2)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、リンゴ果汁(「フルーツフェスタ アップル」、スジャータめいらく株式会社製)98.0%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粒体を製造し評価した。
【0038】
(実施例3)
果汁をグレープ果汁(「フルーツフェスタ グレープ」、スジャータめいらく株式会社製)に変えたこと以外は実施例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0039】
(実施例4)
果汁をオレンジ果汁(「フルーツフェスタ オレンジ」、スジャータめいらく株式会社製)に変えたこと以外は実施例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0040】
(実施例5)
果汁を柚子果汁(「柚子果汁」、株式会社いのすや製)に変えたこと以外は実施例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0041】
(実施例6)
果汁の代わりにリンゴ酢(「リンゴ酢」、株式会社Mizkan製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0042】
(実施例7)
果汁の代わりに白ワインビネガー(「芳醇白ワインビネガー」、キユーピー醸造株式会社製)を用いたこと以外は実施例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0043】
(実施例8)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、レモン果汁(「凍結レモン濃縮果汁」、アヲハタ株式会社製)9.8%、清水88.2%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例1と同様にして粒体を製造し評価した。なお、実施例8については、加熱殺菌後のつぶれ具合の評価を行っていない。
【0044】
(実施例9)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁4.9%、清水93.1%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例8と同様にして粒体を製造し評価した。
【0045】
(実施例10)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、クエン酸1.7%、清水94.3%を混合し、造粒液を調製した。造粒液のナトリウム含有量は0.02であった。なお、ナトリウム含有量は、原子吸光光度法により測定した。この造粒液を用いたこと以外は実施例8と同様にして粒体を製造し評価した。
【0046】
(実施例11)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、クエン酸4.2%、清水91.8%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例8と同様にして粒体を製造し評価した。
【0047】
(実施例12)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、クエン酸8.5%、清水87.5%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例8と同様にして粒体を製造し評価した。
【0048】
(比較例1)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、クエン酸14.9%、清水81.1%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例1と同様に粒体を製造した。なお、比較例1においては、粒体が形成できなかったため、その後の評価を行っていない。
【0049】
(比較例2)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、清水98.0%を混合し、造粒液を調製した。
【0050】
また、アルギン酸ナトリウム1.0%、ゼラチン(「ゼラチン AP200」、株式会社ニッピ製)0.15%、清水98.85%を混合し、アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0051】
造粒液を内径5mmのノズルを通して直径約6mmの水滴とし、毎分100個の速さでアルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下した。そのままアルギン酸ナトリウム水溶液中で3分間撹拌することにより、粒体を形成した。得られた粒体をアルギン酸ナトリウム水溶液から取り出し、流水で洗浄した。
【0052】
また、上白糖30.0%、実施例8と同様のレモン果汁0.04%、清水69.96%を混合し、調味液を調製した。調味液のBrix値は、29.4であった。Brix値は、手持屈折計(アズワン株式会社製、「IN-2E」又は「MASTER-A1T」)により測定した測定値を、手持屈折計に添付の温度補正表を用いて補正することにより算出した。以下、Brix値の測定方法は同様である。
得られた粒体と、調味液とを、質量比で7:3の割合でパウチに充填した後、パウチを密封した。加熱殺菌機を用いて、温度85℃、時間30分、圧力0.05MPaの条件でパウチを加熱殺菌した。
その後、得られた加熱殺菌後の粒体について、実施例1における「粒体の硬さの評価」及び「風味粒体の風味の評価」と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0053】
(比較例3)
上白糖30.0%、実施例8と同様のレモン果汁0.1%、清水69.9%を混合し、調味液を調製した。この調味液を用いたこと以外は比較例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0054】
(比較例4)
上白糖30.0%、実施例8と同様のレモン果汁0.4%、清水69.6%を混合し、調味液を調製した。この調味液を用いたこと以外は比較例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0055】
(比較例5)
上白糖30.0%、実施例8と同様のレモン果汁70.0%を混合し、調味液を調製した。この調味液を用いたこと以外は比較例2と同様にして粒体を製造し評価した。
【0056】
(実施例13)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、清水96.0%を混合し、造粒液を調製した。その後、得られた加熱殺菌前(すなわち、造粒後)の粒体及び加熱殺菌後の粒体について、実施例1における「粒体の硬さの評価」及び「風味粒体の風味の評価」と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0057】
(実施例14)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、食塩20.0%、清水76.0%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例13と同様にして粒体を製造し評価した。
【0058】
(実施例15)
塩化カルシウム1.0%、キサンタンガム1.0%、実施例8と同様のレモン果汁2.0%、食塩25.0%、清水71.0%を混合し、造粒液を調製した。この造粒液を用いたこと以外は実施例13と同様にして粒体を製造し評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
(考察)
実施例1~実施例15に示すように、様々な果汁及び酢において、つぶれにくい粒体を形成することができた。また、得られた粒体を口に含むと果汁又は酢の風味が感じられた。
【0063】
また、実施例1~実施例15に示すように、造粒液のpHが1.5以上5.5以下の範囲であるとつぶれにくい粒体を形成することができるが、比較例1に示すように、pHが1.5を下回ると粒体が上手く形成できなかった。
【0064】
また、比較例2~比較例5に示すように、造粒液ではなく、粒体を浸漬する調味液の方に果汁又は酢を加えて製造すると、得られる粒体において果汁又は酢の風味があまり感じられなかった。
【0065】
また、実施例13~実施例15に示すように、造粒液中のナトリウムの含有量を2%以下に抑えた方が、よりつぶれにくい粒体を形成できた。
【要約】
【課題】つぶれにくい粒体を形成することができるとともに、果汁又は酢が有する風味が感じられる粒状食品の製造方法を提供する。
【解決手段】内包部と、内包部を覆う、アルギン酸カルシウムを含む被膜と、を有する粒状食品の製造方法は、水溶性カルシウム塩を含む造粒液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下することにより、アルギン酸カルシウムを含む被膜を有する粒体を形成する工程を有する。造粒液のpHが1.5以上5.5以下である。造粒液が果汁又は酢を含む。
【選択図】なし