(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】物品の開閉構造及びそれを用いた鞄
(51)【国際特許分類】
A45C 13/00 20060101AFI20220518BHJP
A45C 13/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A45C13/00 A
A45C13/10 J
(21)【出願番号】P 2021159231
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521426291
【氏名又は名称】江熊 香
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】江熊 香
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-224614(JP,A)
【文献】特開2007-209653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3228768(JP,U)
【文献】実開昭49-065408(JP,U)
【文献】実開昭54-138756(JP,U)
【文献】実公昭56-037603(JP,Y1)
【文献】特開平06-099995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/00-13/10
A45F 3/00-3/02
A44B 19/00
E04H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも
、下翼板側に取り付けられた背面側引手を介して前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造。
【請求項2】
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも
、下翼板から肩口の方向に突出する下翼突出板を有し、その下翼突出板が前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造。
【請求項3】
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも
、下翼板の背面において前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造。
【請求項4】
前記開閉部材が、布製又はフィルム製である
請求項1
~3のいずれか1項に記載の物品の開閉構造。
【請求項5】
前記移動部材が、前記2つのスライダーの間に延在するプレート部材である
請求項1
~4のいずれか1項に記載の物品の開閉構造。
【請求項6】
前記移動部材の両側縁部が、前記2本のスライドファスナーが有する
、前記開閉領域に対して外側のファスナーエレメントの背面側に配置される
請求項1~
5のいずれか1項に記載の物品の開閉構造。
【請求項7】
前記移動部材を閉じ側方向に移動させたときに、閉じ側方向から前記移動部材の少なくとも一部を覆えるように配置された庇部材
をさらに有する
請求項1~
6のいずれか1項に記載の物品の開閉構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の物品の開閉構造を有する鞄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の開閉構造及びそれを用いた鞄に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーを用いて開閉する構造を有する様々な物品がある。スライドファスナーは、一対のファスナーエレメントと、その一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを有することから、そのスライダーを動かして一対のファスナーエレメントを噛合・分離させることで、スライドファスナーを用いた物品をファスナーエレメントに垂直な方向に開閉することができる。また、物品に大きな開閉領域を形成したい場合には、2本のスライドファスナーを用いることもある。
【0003】
特許文献1には、テントの出入り口を形成し出入り口のドアに相当する部材となる出入り口生地と該出入り口生地と同一形状に形成された出入り口開口の全周縁にファスナーを設け、該ファスナーは下部ファスナーと上部ファスナーからなり、上記下部ファスナーに2個の下部スライダーを互いに尻合せに設け、上記上部ファスナーに尻合せに設けた2個のファスナーを2組設けたことを特徴とするテントの出入り口装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、取手、箱、蓋で構成され、蓋の両側と箱が接する部分を2本のファスナーで接続し、2本の該ファスナーの上下と接する箱の4点の固定部を補強部で補強し、2本の該ファスナーのスライダーを該取手で接続したことを特徴とする鞄が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3104260号公報
【文献】実用新案登録第3190461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載された開閉構造では、物品が「閉」の状態において大きな開閉領域を覆っていた開閉部材は、物品が「開」の状態になるとフリーな状態になるので、とても邪魔である。開閉部材を折り畳む等の方法も考えられるが面倒である。
【0007】
そこで、本発明は、物品の開閉領域をコンパクトに開閉することが可能な物品の開閉構造及びそれを用いた鞄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも、下翼板側に取り付けられた背面側引手を介して前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造である。
あるいは、本発明は、
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも、下翼板から肩口の方向に突出する下翼突出板を有し、その下翼突出板が前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造である。
あるいは、本発明は、
物品の開閉領域に配置される開閉部材と、
前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、
前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材と
を有し、
前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、
前記2つのスライダーは、いずれも、下翼板の背面において前記移動部材に連結されている
物品の開閉構造である。
また、本発明は、前記物品の開閉構造を有する鞄である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物品の開閉領域をコンパクトに開閉することが可能な物品の開閉構造及びそれを用いた鞄を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリュックの開閉領域を閉じた状態を示す模式的斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るリュックの開閉領域を開いた状態を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2のリュックにおける領域Aの構造を示す模式的拡大図であり、(a)はスライダーの下翼板側に取り付けられた背面側引手が移動部材と接続されている実施形態、(b)はスライダーの下翼突出板が前記移動部材と接続されている実施形態である。
【
図4】下翼突出板を有するスライダーの構造を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る物品の開閉構造を形成する物品としては、2本のスライドファスナーを用いて大きな開閉領域を形成できる物品であればよく、ハンドバッグ、ボストンバッグ、リュック、スーツケース、ポーチ、小物入れ等の鞄;ハンガーラック、ワードローブ等の収納用品;作業用つなぎ、防護服、宇宙服等の被服;寝袋、テント等のキャンプ用品;ブラインド、スクリーン等のサンシェード;筆箱、ファイル等の文房具;長財布、小銭入れ等の財布などが挙げられる。なかでも、本発明に係る物品の開閉構造は、鞄に適用することに適している。例えば、本発明に係る物品の開閉構造を防災リュックに適用し、その防災リュックの中に必要な防災用品を入れて棚などに納めておくことで、災害発生時にはこの防災リュックを背負って避難することができ、開閉領域が大きいことから防災用品の出し入れが容易となる。
【0012】
本発明に係る物品の開閉構造を有するリュック(鞄)を
図1及び
図2に示す。
図1は、リュック1の開閉領域5を閉じた状態を示し、
図2は、リュック1の開閉領域5を開いた状態を示す。
図1及び
図2に示すリュック1は、リュック1の開閉領域5に配置される開閉部材10と、開閉部材10の両側縁部(
図1及び
図2では左右側縁部)に接続された2本のスライドファスナー20と、開閉部材10の閉じ側縁部(
図1及び
図2では上側縁部)に位置する移動部材30とを有している。開閉部材10の開き側縁部(
図1及び
図2では下側縁部)は、内部に物を収納可能な本体2と接続されている。本体2の背面には、リュック1を背負うための肩ベルト3が設けられている。
【0013】
さらに、
図1のリュックにおける領域A(移動部材30の右端付近)の構造を
図3に示すように、スライドファスナー20は、一対のファスナーエレメント21a及び21bと、一対のファスナーエレメント21a及び21bを噛合・分離させるスライダー22とを備えている。なお、
図3には図示していないが、噛合した状態のファスナーエレメント20の外側(
図3における右側)及び分離した状態において外側に配置されたファスナーエレメント21aの外側には本体2が接続されており、噛合した状態のファスナーエレメント20の内側(
図3における左側)及び分離した状態において内側に配置されたファスナーエレメント21bの内側には開閉部材10が接続されている。また、
図1のリュックにおける移動部材30の左端付近の構造は、
図3に示す領域Aの構造と左右対称な構造になっている。
【0014】
そして、
図3に示すように、開閉部材10の両側縁部に接続された2本のスライドファスナー20が有するスライダー22は、いずれも連結部33において移動部材30(
図3では破線で表示)に接続されている。なお、
図3(a)は、スライダー22の下翼板側に取り付けられた背面側引手222が移動部材30と接続されている実施形態であり、
図3(b)は、スライダー22に設けられている下翼突出板226が移動部材30と接続されている実施形態である。なお、
図3(a)で使用しているスライダー22は、下翼板側に取り付けられた背面側引手222を有するものであり、いわゆるリバーシブルタイプのスライドファスナー用として市販されている。
図3(a)では、背面側引手222が上方に向いた状態で移動部材30と接続されているが、背面側引手222が下方に向いた状態でもよく、横に向いた状態でもよい。特に、後述するように、開閉部材10の一部(閉じ側縁部)を移動部材30とする場合には、背面側引手222が横に向いた状態で開閉部材10の閉じ側縁部に接続されていることが好ましい。また、
図3(b)で使用しているスライダー22は、例えば
図4に示すような構造であり、下翼板224から肩口225の方向に突出する下翼突出板226を有するものである。その他、スライダー22の下翼板224の背面に連結部33を形成して移動部材30と接続する実施形態も考えられる。このようにスライダー22が移動部材30に連結される構造のものであれば、その連結構造が上記以外のものを含めて物品(リュック)の開閉領域をコンパクトに開閉することが可能となる。
【0015】
より具体的には、まず、
図1に示すように、開閉部材10が開閉領域5を完全に覆った状態において、移動部材30は閉じ側の端部(
図1では上端部)に配置される。このとき、開閉部材10の両側縁部に接続された2本のスライドファスナー20は、一対のファスナーエレメント21a及び21bが噛合して閉じた状態である。この状態から、移動部材30を開き側方向(
図1及び
図2における下方)に向けて移動させると、移動部材30に連結されたスライダー22が下方に移動することで、一対のファスナーエレメント21a及び21bが分離される。このとき、分離した状態において外側に配置されたファスナーエレメント21aは、その外側に本体2が接続されているため動かない。
【0016】
一方、分離した状態において内側に配置されたファスナーエレメント21bは、その内側に開閉部材10が接続されているため、開閉部材10は本体2との接続が解かれてフリーな状態となる。ただし、開閉部材10の閉じ側の端部に位置する移動部材30はスライダー22に連結されていることから、開閉部材10は完全にフリーな状態にはならない。結局、開閉部材10は、
図2に示すように、開閉部材10の下端と移動部材30の間で前方にせり出して弛むことになることから、邪魔になりにくい。
【0017】
逆に、
図2に示すように、開閉部材10が完全に開いて開閉領域5が覆われていない状態において、移動部材30は開き側の端部(
図2では下端部)に配置される。2本のスライドファスナー20は、一対のファスナーエレメント21a及び21bが分離して開いた状態である。この状態から、移動部材30を閉じ側方向(
図1及び
図2における上方)に向けて移動させると、移動部材30に連結されたスライダー22が上方に移動することで、一対のファスナーエレメント21a及び21bが噛合される。このとき、弛んでいた開閉部材10は下から本体2と接続・固定されていく。そして、移動部材30が閉じ側の端部(
図1では上端部)まで移動させることで、開閉部材10が開閉領域5を完全に覆った状態になる。このようにして、リュック(物品)の開閉領域をコンパクトに開閉することが可能となる。
【0018】
なお、
図1及び
図2に示すように、本体2の正面側の上部には、移動部材30を閉じ側方向(
図1及び
図2における上方)に移動させたときに、閉じ側方向から移動部材30の少なくとも一部を覆えるように配置された庇部材4が設けられてることが好ましい。このような庇部材4が本体2に設けられていることで、移動部材30を閉じ側方向に移動させたときに、移動部材30が庇部材4の背面側に入り込む形となるため、移動部材30の上部と本体2との隙間を庇部材4で覆うことができ、雨などが本体2の内部に入ってしまうことを防止することができる。
【0019】
開閉部材10は、移動部材30を開き側方向(
図1及び
図2における下方)に向けて移動させることで、折り畳まれるようにコンパクトに弛むことができる素材で形成されていればよく、織布、編布、不織布等の布製;ビニール、繊維強化プラスチックシート、多層積層体等のフィルム製;本革、合成皮革等の革製が挙げられる。なかでも、柔軟性の観点から、布製又はフィルム製が適している。
【0020】
開閉部材10の両側縁部(
図1及び
図2では左右側縁部)に接続されたスライドファスナー20は、そのスライダー22を開き側方向(
図1及び
図2における下方)に移動させることで一対のファスナーエレメント21a及び21bを分離させることができ、スライダー22を閉じ側方向(
図1及び
図2における上方)に移動させることで一対のファスナーエレメント21a及び21bを噛合させることができるものであればよい。2本のスライドファスナー20は、移動部材30の移動により同時に開閉されることから、開閉部材10の両側縁部に略平行(平行を含む)に接続されていることが好ましい。
【0021】
開閉部材10の閉じ側縁部(
図1及び
図2では上側縁部)に位置する移動部材30は、閉じ側方向(
図1及び
図2における上方)又は開き側方向(
図1及び
図2における下方)に移動させることで、それに連結された2つのスライダー22を動かすことができるものであれば、例えば開閉部材10の一部(閉じ側縁部)であってもよく、開閉部材10の閉じ側縁部に別体として設置されたものでもよい。ただし、移動部材30の両端部に2つのスライダー22が連結されることから、移動部材30は、2つのスライダー22の間に延在するプレート部材31(板状物)であることが好ましい。さらに、開閉部材10、プレート部材31、又はスライダー22等には、プレート部材31を移動させる取手部材32が設けられていることが好ましい。このような構成の移動部材30とすることで、取手部材32を持って移動部材30を閉じ側方向又は開き側方向に容易に移動させることができる。なお、移動部材30が連結しているスライダー22は、一般に、上翼板223にスライダー22を動かすための正面側引手221を有していることから、2つの正面側引手221を移動させることで、移動部材30を閉じ側方向又は開き側方向に容易に移動させることもできる。
【0022】
さらに、
図1及び
図2に示すように、移動部材30の両側縁部(
図1及び
図2では左右側縁部)は、開閉部材10の両側縁部に接続された2本のスライドファスナー20が有する外側のファスナーエレメント21aの背面側に配置されることが好ましい。こうすることで、移動部材30を開き側方向に向けて移動させたときに、スライドファスナー20が分離しながら内側のファスナーエレメント21が手前側に出やすくなることで、開閉部材10が前方にせり出した状態で弛みやすくなる。
【符号の説明】
【0023】
1 リュック
2 本体
3 肩ベルト
4 庇部材
5 開閉領域
10 開閉部材
20 スライドファスナー
21a ファスナーエレメント(外側)
21b ファスナーエレメント(内側)
22 スライダー
221 正面側引手
222 背面側引手
223 上翼板
224 下翼板
225 肩口
226 下翼突出板
30 移動部材
31 プレート部材
32 取手部材
33 連結部
【要約】
【課題】物品の開閉領域をコンパクトに開閉することが可能な物品の開閉構造及びそれを用いた鞄を提供する。
【解決手段】本発明に係る物品の開閉構造は、物品の開閉領域に配置される開閉部材と、前記開閉部材の両側縁部に接続された2本のスライドファスナーと、前記開閉部材の閉じ側縁部に位置する移動部材とを有し、前記2本のスライドファスナーは、それぞれ、一対のファスナーエレメントと、前記一対のファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーとを備え、前記2つのスライダーは、いずれも前記移動部材に連結されている。
【選択図】
図1