IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7075155カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/48 20060101AFI20220518BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20220518BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 55/02 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 43/80 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20220518BHJP
   A01N 55/10 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20220518BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 31/055 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20220518BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
C11D3/48
A01P1/00
A01N25/04
A01P3/00
A01N31/08
A01N43/40 101L
A01N55/02 150
A01N43/80 102
A01N33/12 101
A01N55/10
C11D7/26
C11D7/50
C11D1/62
C11D3/20
C11D3/43
C11D17/08
A61K31/055
A61K31/155
A61K31/695
A61P31/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021193073
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2021-12-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、令和3年4月6日の出願人による販売
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106701335(CN,A)
【文献】特開2017-226766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系化合物、ビグアナイド系化合物、シラン系化合物から選ばれる少なくとも 1種である抗ウイルス剤と、アルコール性有機溶剤と、第4級アンモニウム塩と、シク ロデキストリン系化合物を含有する消臭剤を含有することを特徴とするカーエアコンデ ィショナー用洗浄剤組成物。
【請求項2】
ピリチオン塩を含有することを特徴とする請求項1に記載のカーエアコンディショナー 用洗浄剤組成物。
【請求項3】
両性イオン型界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカ ーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項4】
有機系防錆剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載 カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記抗ウイルス剤0.0001~50.0質量%、前記アルコール性有機溶剤20 ~99質量%、前記第4級アンモニウム塩を0.1~5.0質量%、前記シクロデキス トリン系化合物を含有する消臭剤0.01~5.0質量%含有することを特徴とす る請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組 成物。
【請求項6】
前記ピリチオン塩が、ピリチオンナトリウム、ピリチオン亜鉛から選ばれる少なくとも 1種であることを特徴とする請求項2に記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成 物。
【請求項7】
前記消臭剤が、ポリフェノール化合物を含有する植物抽出物を含有していることを特徴 とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のカーエアコンディショナー用洗浄 剤組成物。
【請求項8】
前記有機系防錆剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、アンモニウム塩系化合物、脂肪酸 系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のカーエ アコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項9】
前記アルコール性有機溶剤が、炭素数2~5の低級アルコールであることを特徴とする 請求項から請求項のいずれか1項に記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成 物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成 物、および、噴射剤を含有してなることを特徴とするカーエアコンディショナー洗浄用 エアゾール組成物。
【請求項11】
前記噴射剤が、窒素ガスである請求項10に記載のカーエアコンディショナー洗浄用 アゾール組成物。
【請求項12】
エアゾール容器に加圧充填された請求項10又は請求項11に記載のカーエアコンディ ショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項13】
前記エアゾール容器の噴射圧が、0.6~0.9MPaである請求項12に記載のカー エアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項14】
前記エアゾール容器の噴出口の孔径が、0.4mm以下である請求項13に記載のカー エアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項15】
前記エアゾール容器の噴出口に、孔径が0.4mm以下である可撓性細管を付設した請 求項12から請求項14のいずれか一つに記載のカーエアコンディショナー洗浄用エア ゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物に関し、詳しくは、カーエアコンディショナー内のウイルスを除去するもので、エバポレーターフィン表面の親水性が持続されることで、結露水によるフィンの目詰まりや、水滴飛散を防止することができ、エアコンディショナー効率の改善につなげることが可能なカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエアコンディショナー(以下、「カーエアコンディショナー」と称する)の内部に発生する細菌や黴などの微生物を死滅させたり、タバコ臭などの悪臭を消臭させたりするために、カーエアコンディショナー用洗浄剤が用いられている。
【0003】
カーエアコンディショナー用洗浄剤に用いられる洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献1において、有機系抗菌防黴剤、有機カルボン酸またはその塩と天然抽出物との混合物からなる消臭剤、防錆剤、界面活性剤を含有してなる洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献2において、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムカルボン酸塩、植物抽出エキス、ハロゲン原子を有しない有機系防錆剤、ハロゲン原子を有しない非イオン性界面活性剤、残部アルコール性有機溶剤からなる洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-261900号公報
【文献】特開2010-138295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物では、カーエアコンディショナー内のウイルスを除去することができないという課題があった。さらには、抗菌性、防黴性、及び消臭性の諸性能を維持したまま、とりわけ消臭性を持続させ、さらに組成物が分離しないという安定性を維持することは困難であるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、カーエアコンディショナー内のウイルスを除去することができるカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物を提供することにある。さらには、抗菌性、防黴性、及び消臭性の諸性能を維持したまま、とりわけ消臭性を持続させ、さらに組成物が分離しないという安定性を維持することができるカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の有機系抗菌防黴剤、特定の消臭剤などを配合することで前記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物は、フェノール系化合 物、ビグアナイド系化合物、シラン系化合物から選ばれる少なくとも1種である抗ウイ ルス剤と、アルコール性有機溶剤と、第4級アンモニウム塩と、シクロデキストリン系 化合物を含有する消臭剤などを含有してなるものである。
【0009】
また、本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物、および、噴射剤を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、カーエアコンディショナー内のウイルス除去することができる。さらには、抗菌性、防黴性、及び消臭性の諸性能を維持したまま、とりわけ消臭性を持続させ、さらに組成物が析出しないという安定性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物は、抗ウイルス剤0.0001~50.0質量%と、アルコール性有機溶剤20~99質量%と、第4級アンモニウム塩0.1~5.0質量%と、ピリチオン塩0.01~5.0質量%と、シクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤0.01~5.0質量%と、両性イオン型界面活性剤0.1~10質量%と、有機系防錆剤0.1~5.0質量%を含有してなるものである。なお、説明中における範囲を示す表記「~」は、上限と下限を含むものである。
【0012】
ここで本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物においては、抗ウイルス剤を配合することによって、カーエアコンディショナー内のウイルスを除去する効果を発揮させることができる。
【0013】
本発明の抗ウイルス剤としては、フェノール系化合物、ビグアナイド系化合物、シラン系化合物などが好ましい。これらの抗ウイルス剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0014】
本発明の抗ウイルス剤の具体例としては、オイゲノール誘導体やパラクロロメタキシレノールなどのフェノール系化合物、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系化合物、シラン系化合物、長鎖スペース型抗菌性シランなどのシラン系化合物などが好ましい。
【0015】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物中の抗ウイルス剤の混合割合は、当該洗浄剤組成物全量に基づき0.0001~50.0質量%であることが好ましく、0.0001~10.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.001~5.0質量%の範囲であることが最も好ましい。抗ウイルス剤の混合割合が当該範囲内であると、主にエンベロープ型ウイルスを十分除去することができ、上記の抗菌防黴剤配合時の抗菌スペクトルをさらにウイルスにまで拡充することが可能となる。また洗浄剤組成物自体も安定性の確保が可能となることから、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位にも悪影響を与えない。
【0016】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、アルコール性有機溶剤が配合される。アルコール性有機溶剤が配合されることにより、上述した各種成分が溶解し分散される。
【0017】
アルコール性有機溶剤としては、アルコールおよびグリコールエーテルの中から選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素数2~5の低級アルコールであることが好ましい。炭素数2~5の低級アルコール性有機溶剤の具体例としては、エチルアルコール、n‐プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのような低級アルコールや、エチレングリコールメチルエーテルなどのような低級グリコールエーテルが好ましく、人体に対する毒性が少なく、揮発しやすいという点でエタノールが特に好ましい。
【0018】
本発明のアルコール性有機溶剤の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき20~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることがより好ましい。アルコール性有機溶剤の混合割合が当該範囲内であると、洗浄剤組成物の乾燥性が失われず、エアコンディショナー電子部材への影響もなく、洗浄剤組成物自体が不安定にならないことから固形分が析出せず、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位に悪影響を与えない。
【0019】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、第4級アンモニウム塩が、有機系の抗菌抗黴剤として含有される。第4級アンモニウム塩も、ピリチオン塩と同様に、真菌、グラム陰性菌、グラム陽性菌と幅広い抗菌スペクトルを有しているので、カーエアコンディショナーという種々の菌や黴の繁殖の可能性がある用途においては特に好ましい。
【0020】
本発明の第4級アンモニウム塩としては、長短のアルキル鎖を有するアンモニウムイオンとのメトサルフェート塩やエトサルフェート塩のようなスルホン酸塩や、炭酸塩などであることが好ましい。これらの第4級アンモニウム塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0021】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物中の第4級アンモニウム塩の混合割合は、当該洗浄剤組成物全量に基づき0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.2~4.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.3~3.0質量%の範囲であることが最も好ましい。第4級アンモニウム塩の混合割合が当該範囲内であると、抗菌抗黴効果が十分であり、洗浄剤組成物自体が不安定にならず、固形分が析出せずに、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位に悪影響を与えない。
【0022】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、ピリチオン塩が、有機系の抗菌抗黴剤として含有される。ピリチオン塩は、ピリジンの誘導体の一種であり、真菌、グラム陰性菌、グラム陽性菌と幅広い抗菌スペクトルを有しているので、カーエアコンディショナーという種々の菌や黴の繁殖の可能性がある用途においては特に好ましい。
【0023】
本発明のピリチオン塩としては、ピリチオンナトリウムのような塩や、ピリチオン亜鉛のような錯塩などが好ましい。これらのピリチオン塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0024】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物中のピリチオン塩の混合割合は、当該洗浄剤組成物全量に基づき0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.03~3.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.04~1.0質量%の範囲であることが最も好ましい。ピリチオン塩の混合割合が当該範囲内であると、抗菌抗黴効果が十分であり、洗浄剤組成物自体が不安定にならないことから固形分が析出せず、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位に悪影響を与えない。
【0025】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物においては、洗浄剤組成物の適用時の除菌効果を増強するために、イソチアゾリン系化合物、例えばイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどの抗菌抗黴剤が併用されていてもよい。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0026】
イソチアゾリン系化合物をさらに配合する場合、その混合割合は当該洗浄剤組成物全量に基づき0.01~1.5質量%であることが好ましく、0.02~1.0質量%であることがより好ましい。
【0027】
次に、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、シクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤が配合される。シクロデキストリン系化合物が含有されていることにより、消臭性を持続させることができる。シクロデキストリン系化合物とは、D-グルコースがα-1,4グリコシド結合により結合して環状構造となったシクロデキストリンや、そのシクロデキストリの水酸基の一部がメチルエーテル、エチルエーテルのようにエーテル化された化合物や、エステル化された化合物も含んでいる。
【0028】
さらに、消臭剤には、ポリフェノール化合物を含有する植物抽出物が含有されていてもよく、シクロデキストリン系化合物と併用することでより効率的に消臭することができる。ポリフェノール化合物を含有する植物抽出物としては、例えば柿、茶や竹のようなポリフェノールを含む植物から抽出されたものがより好ましい。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0029】
本発明のシクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~3.0質量%であることがより好ましく、0.5~2.0質量%であることが最も好ましい。さらに、消臭剤に対するシクロデキストリン系化合物の混合割合は、5~95質量%であることが好ましい。シクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤の混合割合が当該範囲内であると、消臭効果が十分であり、洗浄剤組成物自体が不安定にならないことから固形分が析出せず、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位に悪影響を与えない。
【0030】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、両性イオン界面活性剤が配合される。両性イオン界面活性剤が配合されることにより、ピリチオン塩、第4級アンモニウム塩、さらにはシクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤と相溶して溶媒である水とより均一に溶解して、析出物等を発生させないという安定性がより向上するとともに、抗菌性を発現することもできる。
【0031】
本発明の両性イオン界面活性剤としては、デシルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシドなどが好ましい。これらの両性イオン界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
本発明の両性イオン界面活性剤の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~5.0質量%であることがより好ましい。両性イオン界面活性剤の混合割合が当該範囲内であると、洗浄剤組成物が安定して分離や析出などがなく、エアコンディショナーの基材に悪影響を与えるおそれがない。
【0033】
さらに、必要に応じて、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤が配合されてもよい。
【0034】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物においては、防錆性を保つために、各成分にハロゲンを含まないものを用いるのが好ましい。
【0035】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において、有機化合物を少なくとも一部に含む有機系防錆剤が配合される。有機系防錆剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、アンモニウムニトライトのようなアンモニウム塩系化合物、ラウリン酸やパルミチン酸などの肪酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの有機系防錆材は、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0036】
本発明の有機系防錆剤の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.1~5.0質量%であることが好ましく、0.2~2.0質量%であることがより好ましく、0.3~1.0質量%であることが最も好ましい。有機系防錆剤の混合割合が当該範囲内であると、防錆効果が十分であり、エアコンディショナーの基材が十分保護され、洗浄剤組成物自体が不安定にならないことから固形分が析出せず、エアゾールで使用されても、噴射において不具合が生じず、エアコンディショナー部位に悪影響を与えない。
【0037】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を使用する場合、噴射剤を混合してエアゾール組成物を調製し、これを噴射して用いることができる。
【0038】
本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物、および、噴射剤を含有してなるものである。
【0039】
噴射剤は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を噴射させるために含有されており、気体、あるいは使用に際し気体となるもの、例えば、エアー、ジメチルエーテル、LPG、LNG、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等が好ましいが、アルコール性有機溶剤との溶解性や安全性の点から、窒素ガスがより好ましい。
【0040】
本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、エアゾール容器、好ましくはミストタイプのエアゾール容器に加圧充填することによって用いられる。エアゾール容器の噴射圧は適宜調整されるが、0.6~0.9MPaであることが好ましい。噴射圧が当該範囲内であると、微細なミストの形成がされ、エアゾール容器が破裂するおそれがない。
【0041】
本発明に用いられるエアゾール容器の噴出口の孔径は、0.4mm以下であることが好ましく、0.1~0.3mmであることがより好ましい。また、当該噴出口に可撓性細管を付設することにより、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を噴射する際のミストをより細かくすることができる。この場合の細管の噴出口の孔径は、0.4mm以下、好ましくは0.1~0.3mmであることがより好ましい。
【0042】
本発明に用いられるエアゾール容器のバルブには、ベーパータップ搭載型のバルブを使用することができる。これにより本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を噴射する際のミストをより細かくすることができる。
【0043】
次に、本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、例えば以下のように作製させる。まず、アルコール性有機溶剤に、ピリチオン塩、第4級アンモニウム塩、シクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤、有機系防錆剤、両性イオン型界面活性剤などを溶解させて、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を調製する。そして、このようにして調製された洗浄剤組成物に対し、噴射剤を圧入し、噴射圧を好ましくは0.6~0.9MPaに調整し、エアゾール容器に充填する。このようにして、噴射するミストをエアコンディショナーの送風によりエバポレーターに到着させることができる。
【実施例
【0044】
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1~8および比較例1~5)
表1に示す処方(質量%)の洗浄剤組成物を調製して、以下の(1)~(8)についてそれらの物性を評価した。
【0046】
(1)抗ウイルス性
A型インフルエンザウイルスを分散させたウイルス液を、ナイロン板(50×50mm)に0.1ml塗布しデシケーターにて1時間乾燥させ、ウイルス付着試験担体を作成した。
試験担体に各エアゾール組成物を4.0ml滴下後5分間ウイルスに作用させた。
その後SCDLP培地20mlでウイルスを洗い出し、ウイルス感染価を測定した。得られたウイルス感染価を、各エアゾール組成物を作用させていない場合のウイルス感染価と比較し、感染価対数減少値を算出した。
○: 感染価対数値2.0以上
×: 感染価対数値2.0未満
【0047】
(2)抗菌性
アルミニウム試験板(10×40mm)に各洗浄剤組成物を塗布・乾燥させた。その後、その板を、直径90mmのシャーレに用意した普通寒天培地(予め枯草菌を塗布)の中央に置き、29℃で1日間培養した際の、阻止円を計測した。なお、抗菌性の評価は以下のように判断した。
○: 阻止円の直径が2.0cm以上である
△: 阻止円の直径が1.0cm以上2.0cm未満である
×: 阻止円の直径が1.0cm未満である
【0048】
(3)防黴性
直径8mmの紙製ディスクに各洗浄剤組成物を処理し、直径90mmのシャーレ中に用意したポテトデキストロース寒天培地(予め黒麹黴を塗布)の中央に置き、29℃で3日間培養した際の、阻止円を計測した。なお、防黴性の評価は以下のように判断した。
○: 阻止円の直径が2.0cm以上である
△: 阻止円の直径が1.0cm以上2.0cm未満である
×: 阻止円の直径が1.0cm未満である
【0049】
(4)洗浄性
人工汚染油として、JIS 試験用粉体5種および7種、油脂、カーボンブラックを混合調製したものをアルミニウム試験板に塗布し、各エアゾール組成物を試験容器に充填して全量噴射洗浄後、試験板に塗布した最初の質量と残存分の質量との差を測定することにより洗浄率を求めた。なお、洗浄性の評価は以下のように判断した。
○: 洗浄率40%以上
△: 洗浄率20%以上40%未満
×: 洗浄率20%未満
【0050】
(5)消臭性
臭気源として0.5%酢酸/エタノール溶液0.2ccを5Lデシケータ内の容器に入れ、60分放置後、ガステック社製ガス検知管で濃度測定を行い、コントロールとした。次に、デシケータ内に各洗浄剤組成物0.5ccを染み込ませたネル布(50×50mm)を入れ、同様に臭気濃度測定を行い、コントロールとの差から消臭率を算出した。なお、消臭性の評価は以下のように判断した。
○: 消臭率80%以上
△: 消臭率30%以上80%未満
×: 消臭率30%未満
【0051】
(6)消臭持続性
上述した消臭性に関する試験を終えた後に、各洗浄剤組成物を染み込ませたネル布を残したまま、再度0.5%酢酸/エタノール溶液0.2ccを5Lデシケータ内の容器に入れ、60分放置後、同様に臭気濃度測定を行い、コントロールとの差から消臭率を算出した。消臭率が10%未満となるまで同様の操作を複数回行った。最初の試験を1回目として、消臭率が10%未満となるまでの回数を数えた。当該回数が多いほど消臭持続性を有していることを示している。なお、消臭持続性の評価は以下のように判断した。
○: 試験回数が6回以上
△: 試験回数が3回以上6回未満
×: 試験回数が3回未満
【0052】
(7)防錆性
各洗浄剤組成物中に、研磨した鉄板を全体の半分が漬かるように浸漬し、1週間50℃の恒温槽中に放置した後での錆の有無を目視にて観察した。なお、防錆性の評価は以下のように判断した。
○: 錆発生なし
△: 部分的に錆発生
×: 板全体に錆発生
【0053】
(8)液安定性
100mlスクリュー管瓶に各洗浄剤組成物90mlを入れて蓋をして、2週間50℃の恒温槽中に放置し、そして、4時間50℃~-15℃の間で昇温及び降温(それぞれ、降温:-0.81℃/min、昇温:1.6℃/minの変化速度)を繰り返す温度変化をさせて、最後に、2週間5℃の恒温槽中に放置した後での分離や析出物の有無を目視にて観察した。なお、液安定性の評価は以下のように判断した。
○: 分離や析出物が一切見られない
△: 少し分離する又は析出物が浮遊する
×: 完全に分離する又は瓶底に析出物が沈殿する
【0054】
得られた各種処理剤の評価結果も表1に示す。上記(1)~(8)の評価において、すべて○評価、○評価及び△評価となる処方を良好であると判断し、一つでも×評価となる処方は不良であると判断した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、実施例1から実施例8の洗浄剤組成物により作成された塗膜において、ウイルスを除去することができ、さらには、抗菌性、防黴性、及び消臭性の諸性能を維持したまま、とりわけ消臭性を持続させ、さらに組成物が分離しないという安定性を維持できることが分かった。
【要約】      (修正有)
【課題】抗ウイルス効果を有するもので、抗菌性、防黴性、及び消臭性の諸性能を維持したまま、とりわけ消臭性を持続させ、さらに組成物が分離しないという安定性を維持することができるカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】抗ウイルス剤0.0001~50.0質量%と、アルコール性有機溶剤20~99質量%、第4級アンモニウム塩0.1~5.0質量%と、ピリチオン塩0.01~5.0質量%と、シクロデキストリン系化合物を含有する消臭剤0.01~5.0質量%と、両性イオン型界面活性剤0.1~10質量%と、有機系防錆剤0.1~5.0質量%を含有する洗浄剤組成物などにより解決することができた。
【選択図】なし