(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】コンピュータシステム、病害虫検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
A01M7/00 H
(21)【出願番号】P 2021501481
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2019007762
(87)【国際公開番号】W WO2020174645
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500521522
【氏名又は名称】株式会社オプティム
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 俊二
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-235124(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003082(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130236(WO,A1)
【文献】特開2016-144990(JP,A)
【文献】特開平06-000424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病害虫の特徴点や特徴量と前記病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースを備え、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムであって、
圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得する取得手段と、
取得した前記撮影画像を画像解析し、抽出した特徴点や特徴量を病害虫データベースと比較することで病害虫を検出して前記病害虫の識別子を判断する検出手段と、
前記病害虫を検出した撮影画像における前記撮影地点の位置情報を出力する位置情報出力手段と、
前記判断した病害虫の識別子と、前記出力した位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥
を行う機器や装置を特定し、当該病害虫に対して有効な農薬散布又は施肥の指示を出力する指示出力手段と、
を備えることを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項2】
前記指示出力手段は、前記農薬散布又は施肥が複数である場合、農薬散布又は施肥を選択する、
ことを、特徴とする請求項1に記載のコンピュータシステム。
【請求項3】
取得した前記撮影画像はライブ画像に限らないことを特徴とする、
ことを、特徴とする請求項1に記載のコンピュータシステム。
【請求項4】
病害虫の特徴点や特徴量と前記病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースを備え、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムが実行する病害虫検出方法であって、
圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得するステップと、
取得した前記撮影画像を画像解析し、抽出した特徴点や特徴量を病害虫データベースと比較することで病害虫を検出して前記病害虫の識別子を判断するステップと、
前記病害虫を検出した撮影画像における前記撮影地点の位置情報を出力するステップと、
前記判断した病害虫の識別子と、前記出力した位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥
を行う機器や装置を特定し、当該病害虫に対して有効な農薬散布又は施肥の指示を出力するステップと、
を備えることを特徴とする病害虫検出方法。
【請求項5】
病害虫の特徴点や特徴量と前記病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースを備え、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムに、
圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得するステップ、
取得した前記撮影画像を画像解析し、抽出した特徴点や特徴量を病害虫データベースと比較することで病害虫を検出して前記病害虫の識別子を判断ステップ、
前記病害虫を検出した撮影画像における前記撮影地点の位置情報を出力するステップ、
前記判断した病害虫の識別子と、前記出力した位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥
を行う機器や装置を特定し、当該病害虫に対して有効な農薬散布又は施肥の指示を出力するステップ、
を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステム、病害虫検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に発生した病害虫をドローン等により駆除することが行われている。このような駆除方法として、圃場における病害虫の位置をリアルタイムに特定し、この特定した位置にドローンを移動させ、駆除を行う構成がある。
【0003】
このような技術の例として、ドローンにより圃場をリアルタイムに撮影したライブ画像に基づいて、病害虫を駆除するシステムが開示されている(特許文献1参照)。このシステムは、このライブ画像と、このライブ画像の撮影地点の位置情報とを取得し、予め病害虫等を撮影した特定画像とライブ画像とを比較することにより、病害虫の有無を検出する。システムは、病害虫を検出した際、このライブ画像を撮影した撮影地点の位置情報を、ドローン等に出力し、病害虫の駆除を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、病害虫の検出は、リアルタイムに撮影したライブ画像に限定されてしまっており、このようなライブ画像以外の撮影画像に対して有効でないおそれがあった。
【0006】
本発明は、ライブ画像に限定されず、撮影画像に基づいた病害虫の検出及び駆除が容易なコンピュータシステム、病害虫検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0008】
本発明は、病害虫の特徴点や特徴量と前記病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースを備え、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムであって、
圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得する取得手段と、
取得した前記撮影画像を画像解析し、抽出した特徴点や特徴量を病害虫データベースと比較することで病害虫を検出して前記病害虫の識別子を判断する検出手段と、
前記病害虫を検出した撮影画像における前記撮影地点の位置情報を出力する位置情報出力手段と、
前記判断した病害虫の識別子と、前記出力した位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥を行う機器や装置を特定し、当該病害虫に対して有効な農薬散布又は施肥の指示を出力する指示出力手段と、
を備えることを特徴とするコンピュータシステムを提供する。
【0009】
病害虫の特徴点や特徴量と前記病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースを備え、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムは、圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得し、取得した前記撮影画像を画像解析し、抽出した特徴点や特徴量を病害虫データベースと比較することで病害虫を検出して前記病害虫の識別子を判断し、前記病害虫を検出した撮影画像における前記撮影地点の位置情報を出力し、前記判断した病害虫の識別子と、前記出力した位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥を行う機器や装置を特定し、当該病害虫に対して有効な農薬散布又は施肥の指示を出力する。
【0010】
本発明は、システムのカテゴリであるが、方法及びプログラム等の他のカテゴリにおいても、そのカテゴリに応じた同様の作用・効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ライブ画像に限定されず、撮影画像に基づいた病害虫の検出及び駆除が容易なコンピュータシステム、病害虫検出方法及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、病害虫検出システム1の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、病害虫検出システム1の全体構成図である。
【
図3】
図3は、コンピュータ10が実行する位置情報出力処理のフローチャートを示す図である。
【
図4】
図4は、コンピュータ10が実行する指示出力処理のフローチャートを示す図である。
【
図5】
図5は、コンピュータ10が作成する病害虫マップの一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0014】
[病害虫検出システム1の概要]
本発明の好適な実施形態の概要について、
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態である病害虫検出システム1の概要を説明するための図である。病害虫検出システム1は、コンピュータ10から構成され、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムである。
【0015】
なお、病害虫検出システム1は、ドローン、農機具、高性能農業機械、作物を栽培する作業者が所持する作業者端末(例えば、スマートフォンやタブレット端末やパーソナルコンピュータ)、その他のコンピュータ等のその他の端末や装置類が含まれていてもよい。また、病害虫検出システム1は、例えば、コンピュータ10等の1台のコンピュータで実現されてもよいし、クラウドコンピュータのように、複数のコンピュータで実現されてもよい。
【0016】
コンピュータ10は、ドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等と、公衆回線網等を介して、データ通信可能に接続されており、必要なデータの送受信を実行する。
【0017】
コンピュータ10は、圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得する。コンピュータ10は、例えば、ドローンにより圃場の各地点を撮影した撮影画像を取得する。コンピュータ10は、例えば、ドローンが撮影画像を撮影した撮影地点の位置情報を、ドローンから取得する。
【0018】
コンピュータ10は、取得した撮影画像を画像解析し、この撮影画像に写っている病害虫を検出する。ンピュータ10は、例えば、画像解析として、撮影画像の特徴点(例えば、形状、輪郭、色相)や特徴量(例えば、画素値の平均、分散、ヒストグラム等の統計的な数値)を抽出する。コンピュータ10は、抽出した特徴点や特徴量に基づいて、この撮影画像に写っている病害虫を検出する。
【0019】
コンピュータ10は、検出した病害虫の位置情報を、取得した撮影地点の位置情報に基づいて特定する。例えば、コンピュータ10は、検出した病害虫の位置情報が、撮影地点の位置情報に一致するものとして、この病害虫の位置情報を特定する。その結果、コンピュータ10は、圃場における検出した病害虫の位置を特定することになる。
【0020】
コンピュータ10は、特定した病害虫の位置情報を出力する。このとき、コンピュータ10は、上述したドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等に、この位置情報を出力する。
【0021】
なお、コンピュータ10は、この位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥の指示を出力する構成も可能である。例えば、コンピュータ10は、この位置情報に基づいて、病害虫の位置にドローンを移動させ、このドローンが有する農薬散布装置又は施肥装置により、農薬又は肥料を散布させる指示を、コマンドとしてドローンに送信する。ドローンは、このコマンドを受信し、病害虫に対して、農薬又は肥料を散布する。その結果、コンピュータ10は、この位置情報に基づいて、農薬散布又は施肥の指示を出力することになる。
【0022】
次に、病害虫検出システム1が実行する処理の概要について説明する。
【0023】
コンピュータ10は、圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を撮影データとして取得する(ステップS01)。コンピュータ10は、例えば、ドローンが圃場の各地点を撮影した撮影画像を取得する。コンピュータ10は、例えば、ドローンが撮影画像を撮影した撮影地点の位置情報を、ドローンから取得する。コンピュータ10は、このような撮影画像及び撮影地点の位置情報を撮影データとして取得する。
【0024】
コンピュータ10は、撮影画像を画像解析し、この撮影画像に写っている病害虫を検出する(ステップS02)。コンピュータ10は、例えば、画像解析として、撮影画像の特徴点や特徴量を抽出する。コンピュータ10は、抽出した特徴点や特徴量に基づいて、この撮影画像に写っている病害虫を検出する。
【0025】
コンピュータ10は、検出した病害虫の位置情報を、取得した撮影地点の位置情報に基づいて特定する(ステップS03)。コンピュータ10は、検出した病害虫の位置情報が、撮影地点の位置情報に一致するものとして、この病害虫の位置情報を特定する。その結果、コンピュータ10は、圃場における検出した病害虫の位置を特定することになる。
【0026】
コンピュータ10は、特定した病害虫の位置情報を出力する(ステップS04)。コンピュータ10は、例えば、上述したドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等に、この位置情報を出力する。
【0027】
以上が、病害虫検出システム1が実行する処理の概要である。
【0028】
[病害虫検出システム1のシステム構成]
図2に基づいて、本発明の好適な実施形態である病害虫検出システム1のシステム構成について説明する。
図2は、本発明の好適な実施形態である病害虫検出システム1のシステム構成を示す図である。
図2において、病害虫検出システム1は、コンピュータ10から構成され、画像解析により病害虫を検出するコンピュータシステムである。
【0029】
コンピュータ10は、ドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等と公衆回線網等を介してデータ通信可能に接続されており、必要なデータの送受信を実行する。
【0030】
なお、病害虫検出システム1は、図示していないドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等やその他の端末や装置類が含まれていてもよい。また、病害虫検出システム1は、例えば、コンピュータ10等の1台のコンピュータで実現されてもよいし、クラウドコンピュータのように、複数のコンピュータで実現されてもよい。
【0031】
コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部として、他の端末や装置等と通信可能にするためのデバイス、例えば、IEEE802.11に準拠したWi―Fi(Wireless―Fidelity)対応デバイス等を備える。また、コンピュータ10は、記録部として、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等によるデータのストレージ部を備える。また、コンピュータ10は、処理部として、各種処理を実行する各種デバイス等を備える。
【0032】
コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、通信部と協働して、撮影データ取得モジュール20、病害虫データ出力モジュール21、コマンド出力モジュール22を実現する。また、コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、記録部と協働して、記録モジュール30を実現する。また、コンピュータ10において、制御部が所定のプログラムを読み込むことにより、処理部と協働して、画像解析モジュール40、位置特定モジュール41、対策データ特定モジュール42、病害虫マップ作成モジュール43、コマンド作成モジュール44を実現する。
【0033】
[位置情報出力処理]
図3に基づいて、病害虫検出システム1が実行する位置情報出力処理について説明する。
図3は、コンピュータ10が実行する位置情報出力処理のフローチャートを示す図である。上述した各モジュールが実行する処理について、本処理に併せて説明する。
【0034】
撮影データ取得モジュール20は、圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を、撮影データとして取得する(ステップS10)。ステップS10において、撮影データ取得モジュール20は、例えば、ドローンが圃場の予め設定された複数の撮影地点の其々において撮影した撮影画像と、ドローンが撮影画像を撮影した其々の撮影地点の位置情報とを撮影データとして取得する。ドローンは、自身の直下を、撮影画像として撮影する。すなわち、ドローンは、圃場に対して垂直な位置から撮影画像を撮影することになる。ドローンは、撮影地点において、撮影画像を撮影するとともに、自身の位置情報をGPS等から取得する。ドローンは、この取得した自身の位置情報を撮影地点の位置情報として扱う。ドローンは、この撮影画像と、撮影地点の位置情報とを撮影データとして、コンピュータ10に送信する。撮影データ取得モジュール20は、ドローンが送信した撮影データを受信することにより、撮影データを取得する。その結果、コンピュータ10は、圃場を撮影した撮影画像及び撮影地点の位置情報を取得することになる。
【0035】
画像解析モジュール40は、撮影データに基づいて、撮影画像を画像解析する(ステップS11)。ステップS11において、画像解析モジュール40は、この撮影画像における特徴点や特徴量を抽出する。画像解析モジュール40は、例えば、画像解析として、撮影画像に存在する物体の形状、色相等を抽出する。
【0036】
画像解析モジュール40は、画像解析の結果に基づいて、病害虫が検出できたか否かを判断する(ステップS12)。ステップS12において、画像解析モジュール40は、抽出した特徴点や特徴量と、予め病害虫の特徴点や特徴量と病害虫の識別子とを対応付けて登録した病害虫データベースとを比較することにより、撮影画像に病害虫が存在するか否かを判断する。画像解析モジュール40は、今回抽出した特徴点や特徴量と、病害虫データベースに登録された特徴点や特徴量とが一致する場合、病害虫が検出できたと判断し、一致しない場合、病害虫が検出できなかったと判断することになる。画像解析モジュール40は、病害虫が検出できた場合、この病害虫の特徴点や特徴量と、病害虫データベースとに基づいて、この病害虫の識別子を併せて判断する。
【0037】
ステップS12において、画像解析モジュール40は、画像解析の結果、病害虫が検出できなかったと判断した場合(ステップS12 NO)、コンピュータ10は、本処理を終了する。なお、コンピュータ10は、この場合、上述したステップS10の処理を実行し、今回画像解析を行った撮影データとは異なる撮影データを取得する構成であってもよい。
【0038】
一方、ステップS12において、画像解析モジュール40は、画像解析の結果、病害虫が検出できたと判断した場合(ステップS12 YES)、位置特定モジュール41は、この撮影データにおける位置情報に基づいて、検出した病害虫の位置情報を特定する(ステップS13)。ステップS13において、位置特定モジュール41は、今回画像解析を行った撮影画像に対応する撮影地点の位置情報を、撮影データに基づいて特定する。位置特定モジュール41は、撮影地点の位置情報を、この病害虫の位置情報として特定する。さらに、位置特定モジュール41は、この病害虫の位置情報と、撮影画像における座標とに基づいて、この病害虫の詳細な位置を特定する。例えば、位置特定モジュール41は、撮影画像に対して、直交座標系を設定し、この病害虫を検出した撮影画像における位置を、この撮影画像におけるX座標及びY座標として特定する。位置特定モジュール41は、撮影地点における位置情報と、このX座標及びY座標とに基づいて、実際の圃場における病害虫の位置情報を特定する。このとき、位置特定モジュール41は、撮影画像の中心の位置が、撮影地点における位置情報に該当し、X座標及びY座標がこの中心の位置に対する位置として特定する。その結果、位置特定モジュール41は、圃場におけるこの病害虫の位置を特定することになる。
【0039】
対策データ特定モジュール42は、今回特定した病害虫に対して有効な農薬又は肥料の識別子と、この農薬又は肥料の散布量又は施肥量とを、対策データとして特定する(ステップS14)。ステップS14において、対策データ特定モジュール42は、予め病害虫の識別子と、有効な農薬又は肥料の識別子とを対応付けて登録した病害虫対策データベースを参照し、今回検出した病害虫に有効な農薬又は肥料を特定する。さらに、対策データ特定モジュール42は、抽出した特徴点や特徴量に基づいて、この農薬又は肥料の散布量又は施肥量を特定する。例えば、対策データ特定モジュール42は、抽出した病害虫の大きさや形状に応じて、必要な農薬の散布量や肥料の施肥量を特定する。
【0040】
記録モジュール30は、特定した病害虫の識別子と、この病害虫の位置情報と、対策データとを病害虫データとして記録する(ステップS15)。
【0041】
コンピュータ10は、上述したステップS10-S14の処理を繰り返し、圃場全体に対して、検出した病害虫の其々の識別子と位置情報と対策データとを記録する。
【0042】
なお、コンピュータ10は、圃場全体に対して、病害虫データを記録せずに、後述する処理を実行する構成であってもよい。例えば、コンピュータ10は、一の病害虫データを特定した際、この一の病害虫データを記録し、この一の病害虫データを後述する処理で用いる構成であってもよい。
【0043】
病害虫マップ作成モジュール43は、記録した病害虫データに基づいて、この圃場における検出した病害虫の識別子及び位置を示す病害虫マップを作成する(ステップS16)。ステップS16において、病害虫マップ作成モジュール43は、予め設定された領域又は圃場全体の全体マップを作成する。この全体マップは、予め設定された領域又は圃場全体の位置情報に基づいて作成する。例えば矩形の領域が設定されている場合、この矩形の各頂点の位置情報に基づいて、全体マップを作成する。病害虫マップ作成モジュール43は、全体マップにおいて、特定した病害虫の位置情報に該当する位置に、病害虫アイコンを重畳させたものを病害虫マップとして作成する。この病害虫アイコンは、例えば、丸や四角や星等の記号、病害虫の識別子を示すテキスト、病害虫のイラストである。この病害虫アイコンは、その形状や大きさ等により、この場所における病害虫の種類や被害状況の程度を併せて示すことも可能である。
【0044】
さらに、病害虫マップ作成モジュール43は、この病害虫マップに、記録した病害虫データに基づいて、この病害虫の対策として有効な薬の識別子及び散布量や肥料の識別子及び施肥量を示す対策アイコンを重畳又は近傍に配置することも可能である。この対策アイコンは、例えば、「農薬A 1リットル散布」といった必要な農薬又は肥料の識別子と、散布量又は施肥量とを示すテキスト、これらを示すイラストである。
【0045】
なお、病害虫マップ作成モジュール43は、この全体マップに、栽培する作物の位置をアイコン、テキスト、イラスト等により示すことも可能である。
【0046】
図5に基づいて、病害虫マップ作成モジュール43が作成する病害虫マップについて説明する。
図5は、病害虫マップの一例を模式的に示したものである。
図5において、病害虫マップ100は、病害虫アイコン110、対策アイコン120が全体マップに重畳されている。病害虫アイコン110は、全体マップにおいて、上述した病害虫データに基づいた位置に配置されたものである。病害虫アイコン110は、この病害虫の識別子を示すテキストをあわせて表示するものである。また、この病害虫アイコン110は、アイコン自体の大きさにより、病害虫の被害の状況を模式的に示すものでもある。また、この病害虫アイコン110は、アイコンの形状により、病害虫の種類を模式的に示すものである。対策アイコン120は、この病害虫アイコン110の近傍の位置に配置されたものである。対策アイコン120は、必要な農薬又は肥料の識別子と、散布量又は施肥量とを示すテキストを表示するものである。
【0047】
なお、病害虫アイコン110の表示態様等は、上述したものに限らず、適宜変更可能である。また、対策アイコン120の位置や表示態様等は、上述したものに限らず、適宜変更可能である。
【0048】
病害虫データ出力モジュール21は、記録した圃場における病害虫データを、出力する(ステップS17)。ステップS17において、病害虫データ出力モジュール21は、上述した病害虫マップを出力することにより、病害虫データを出力することになる。病害虫データ出力モジュール21は、この病害虫マップを、ドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等に出力する。このとき、病害虫データ出力モジュール21は、この病害虫マップをドローン、農機具、高性能農業機械、作業者端末、その他のコンピュータ等に送信する。
【0049】
なお、病害虫データ出力モジュール21は、病害虫マップを出力するのではなく、病害虫データを出力する構成であってもよい。この場合、病害虫データ出力モジュール21は、上述したステップS16の処理を省略し、記録した病害虫データを、出力する構成とすればよい。
【0050】
病害虫データ出力モジュール21が、作業者端末にこの病害虫マップを出力する場合について説明する。
【0051】
コンピュータ10は、病害虫マップを作業者端末に送信し、この病害虫マップを作業者端末に表示させることにより、作業者端末にこの病害虫マップを出力させることになる。
【0052】
病害虫データ出力モジュール21は、病害虫マップを、作業者端末に送信する。作業者端末は、この病害虫マップを受信する。作業者端末は、受信したこの病害虫マップを自身の表示部に表示する。作業者は、この病害虫マップを閲覧することにより、農薬散布又は施肥が必要な圃場の位置及びその量を把握することが容易となる。
【0053】
また、作業者端末は、この受信した病害虫マップを自身の記録部等に記録し、作業者からの入力を受け付けることにより、表示する。その結果、作業者は、自身が作業する時点で、この病害虫マップを閲覧することが容易となり、リアルタイムなライブ画像によらずとも、農薬散布又は施肥を行うことが容易となる。
【0054】
病害虫データ出力モジュール21が、ドローンにこの病害虫マップを出力する場合について説明する。
【0055】
コンピュータ10は、病害虫マップをドローンに送信することにより、ドローンにこの病害虫マップを出力させることになる。
【0056】
病害虫データ出力モジュール21は、病害虫マップを、ドローンに送信する。ドローンは、この病害虫マップを受信する。ドローンは、この病害虫マップを自身の記録部等に記録することにより、このドローンの操作者等からの操作入力等に基づいて、病害虫の位置への飛行や移動等を行うことが容易となる。さらに、予め農薬の散布又は肥料の施肥を行う設定がされている場合、記録した病害虫マップに基づいて農薬散布又は施肥を行うことにより、リアルタイムなライブ画像によらずとも、農薬散布又は施肥を行うことが容易となる。
【0057】
なお、病害虫データ出力モジュール21は、この病害虫マップを、記録モジュール30が病害虫データを記録した時点から所定時間経過した後、出力する構成であってもよい。所定時間としては、例えば、数時間後、一日後、数日後である。
【0058】
以上が、位置情報出力処理である。
【0059】
[指示出力処理]
図4に基づいて、病害虫検出システム1が実行する指示出力処理について説明する。
図4は、コンピュータ10が実行する指示出力処理のフローチャートを示す図である。上述した各モジュールが実行する処理について、本処理に併せて説明する。なお、上述した処理と同様の処理については、その詳細な説明は省略する。
【0060】
コマンド作成モジュール44は、記録した病害虫データに基づいて、検出した病害虫の対策となる農薬又は肥料を散布又は施肥させる指示をコマンドとして作成する(ステップS20)。ステップS20において、コマンド作成モジュール44は、出力先の機器や装置に応じたこのコマンドを作成する。例えば、出力先が予め設定された農薬又は肥料を散布又は施肥する機器や装置である場合、コマンド作成モジュール44は、対策データにおける農薬又は肥料を散布又は施肥する機器や装置を特定し、この機器や装置が散布又は施肥するために必要なコマンドを作成する。この場合におけるコマンドは、この機器や装置が、農薬又は肥料を散布又は施肥するためのコマンド、この農薬の散布量又は肥料の施肥量を指定するためのコマンド及びこの病害虫の位置へ飛行や移動するためのコマンドである。また、出力先が複数の農薬又は肥料を散布又は施肥する機器や装置である場合、コマンド作成モジュール44は、対策データにおける農薬又は肥料を散布又は施肥する機器や装置を特定し、この農薬又は肥料を選択し、この農薬又は肥料を散布又は施肥する必要なコマンドを作成する。この場合におけるコマンドは、この機器や装置が、この農薬又は肥料を選択するためのコマンド、この農薬又は肥料を散布又は施肥するためのコマンド、この農薬の散布量又は肥料の施肥量を指定するためのコマンド及びこの病害虫の位置へ飛行や移動するためのコマンドである。
【0061】
なお、出力先の機器や装置が単独で移動可能なものでない場合、コマンド作成モジュール44が作成するコマンドとして、病害虫の位置へ飛行や移動するためのコマンドを作成する必要はなく、それ以外のものを作成する構成であればよい。
【0062】
コマンド作成モジュール44が複数の農薬又は肥料を散布又は施肥可能なドローンに対してコマンドを作成する場合を例として説明する。コマンド作成モジュール44は、病害虫データにおける対策データに基づいて、対策データにおける農薬又は肥料を散布又は施肥可能なドローンを特定する。コマンド作成モジュール44は、このドローンが農薬又は肥料を散布又は施肥するためのコマンドを作成する。また、コマンド作成モジュール44は、このドローンがこの農薬の散布量又は肥料の施肥量を指定するためのコマンドを作成する。また、コマンド作成モジュール44は、対策データにおける病害虫の位置に基づいて、この位置へ飛行又は走行するためのコマンドを作成する。
【0063】
コマンド作成モジュール44は、病害虫マップにおける各病害虫の位置の其々に対して、このコマンドを作成する。
【0064】
コマンド出力モジュール22は、作成したコマンドを出力する(ステップS21)。ステップS21において、コマンド出力モジュール22は、特定した機器や装置に、作成したコマンドを出力する。その結果、コンピュータ10は、農薬散布又は施肥の指示を、機器や装置に出力する。すなわち、コンピュータ10は、コマンドを機器や装置に出力することにより、農薬散布又は施肥を、この機器や装置に実行させることになる。
【0065】
コマンド出力モジュール22がドローンに対してコマンドを出力する場合を例として説明する。
【0066】
コマンド出力モジュール22は、作成したコマンドをドローンに出力する。このとき、コマンド出力モジュール22は、コマンド作成時に特定したドローンに、作成したコマンドを送信する。ドローンは、このコマンドを受信する。ドローンは、このコマンドに基づいて、農薬又は肥料の選択、散布量又は施肥量の特定及び病害虫の位置への飛行又は走行を実行する。ドローンは、病害虫の位置へ飛行又は走行し、この病害虫の位置へ移動後、この病害虫に対して、選択した農薬の散布量又は肥料の施肥量に基づいて、散布又は施肥する。すなわち、コンピュータ10は、コマンドをドローンに出力することにより、農薬散布又は施肥を、このドローンに実行させることになる。
【0067】
コンピュータ10は、上述したステップS20及びS21の処理を、上述したステップS17の処理と同時又はステップS17の処理を実行後に実行する。すなわち、コンピュータ10は、病害虫データの出力と、このコマンドの出力とを同時に実行する又は病害虫データの出力後に、このコマンドの出力を実行するものである。
【0068】
なお、コマンド出力モジュール22は、このコマンドを、記録モジュール30が病害虫データを記録した時点から所定時間経過した後、出力する構成であってもよい。所定時間としては、例えば、数時間後、一日後、数日後である。
【0069】
以上が、指示出力処理である。
【0070】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU、情報処理装置、各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、コンピュータからネットワーク経由で提供される(SaaS:ソフトウェア・アズ・ア・サービス)形態で提供される。また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD-ROMなど)、DVD(DVD-ROM、DVD-RAMなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記録装置又は外部記録装置に転送し記録して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記録装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記録装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 病害虫検出システム、10 コンピュータ