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特許7075173ユーザ群の行動変化を判定するプログラム、装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ユーザ群の行動変化を判定するプログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20220518BHJP
【FI】
G06Q10/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019156168
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021033884
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木村 塁
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106910(JP,A)
【文献】特開2016-177448(JP,A)
【文献】特開2016-207020(JP,A)
【文献】特開2007-102668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ群の行動変化を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
ユーザ群は、企業の従業員群であり、
ユーザ群の行動変化の発生は、当該企業の経済状況の変化の発生を意味する
ようにコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
総予想支払金額算出手段は、当該ユーザが所定時間以上滞在した地域のみを、滞在地域として抽出する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
ユーザ行動変化判定手段は、前の所定期間の総予想支払金額が、後の所定期間の総予想支払金額よりも、所定金額以上に変化したか否かを判定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
予想支払金額データベースは、地域毎に、予想支払金額として平均金額及び標準偏差を対応付けており、
総予想支払金額算出手段は、各ユーザについて、予想支払金額の平均金額を加算した総予想支払金額と、標準偏差の二乗(分散)の加算値の平方根となる総予想標準偏差とを算出し、
ユーザ行動変化判定手段は、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
ユーザ行動変化判定手段は、2標本t検定に基づくものであり、
母分散の比のF検定によって、等分散の帰無仮説が棄却されないか又は棄却されるかを判定し、
等分散の帰無仮説が棄却されない場合、分散が類似することを仮定したt検定によって、有意差の有無を判定し、
等分散の帰無仮説が棄却される場合、分散が異なることを仮定したウェルチのt検定によって、有意差の有無を判定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
ユーザ位置データベースについて、時系列の位置は、ユーザに所持された携帯端末によって測位された端末測位位置、及び/又は、基地局に接続した携帯端末の滞在範囲に基づく基地局測位位置である
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
企業の経済状況の変化を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
ユーザ群の行動変化を判定する装置であって、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
を有することを特徴とする装置。
【請求項10】
企業の経済状況の変化を判定する装置であって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
装置のユーザ群行動変化判定方法であって、
装置は、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
を有し、
装置は、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する第1のステップと、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップによって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群の行動変化が発生したことを発動する第3のステップと
を実行することを特徴とするユーザ群行動変化判定方法。
【請求項12】
装置の企業経済変化判定方法であって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する第1のステップと、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップによって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、企業の経済状況の変化が発生したことを発動する第3のステップと
を実行することを特徴とする企業経済変化判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ群の行動変化を判定する技術に関する。例えば企業の従業員群の行動変化から、その企業の経済状況を判定する用途に適する。
【背景技術】
【0002】
企業の経営者は、オーナーである株主のために、経営資源のヒト、モノ、カネを活用して、利益の最大化、即ち、株式配当の増配や株価価値の上昇を試みている。一方で、外部の取引先企業との間のリスク管理も重要であって、取引先企業の決算書から、その経営状況を収集しようとする。
企業にとって、良い噂は、既存の取引先企業と関係性を強固にしつつ、新しい取引先企業を呼び込む。一方で、悪い噂は、瞬く間に広がり、取引先企業を遠ざける。これは、企業として、リスク管理活動の一環であって、取引先企業の倒産による損失を避けるためである。
個人と店舗との間の商取引では、物品の納入と同時に、現金で物品代金の支払いがなされる。これに対し、一般的な企業間の商取引では、物品の納入後、請求書を発行し、その支払いは例えば3か月後になる。即ち、物品を納入した企業は、代金が支払われるまで、納入先企業に「与信」することとなり、倒産リスク(クレジットリスク)を抱える状態となる。与信とは、相手が将来に代金を支払うものと信じることを意味する。
【0003】
企業は、取引先企業の倒産の兆候を予測するために、その取引先企業が定期的に発行する「決算書」を用いる。例えば、過去に倒産した企業の財務情報と、倒産していない企業の財務情報とを機械学習させて、ロジスティック回帰モデルなどの判別モデルを構築して、事前に倒産確率を算出することもできる。このような手法は、特に銀行などで用いられている。これは、画一的(支店間で統一した与信判定)な与信管理(貸出金額や金利の設定、担保設定、債権保全や回収率予測、信用リスク管理全般)や、審査時間の短縮に寄与する。これらは「スコアリングモデル」と称されており、周知手法として、アルトマンのZスコアや株価を用いたマートンモデルがある。
【0004】
企業が倒産・破綻するケースとして、大きく2つに区分される。
(ケース1)長い期間で徐々に衰退して、倒産・破綻に至るケース
(ケース2)短い期間で突然業績が悪化して、倒産・破綻に至るケース
【0005】
ケース1の場合、決算書の財務指標から、危険な兆候を読み取れる可能性が高い。徐々に破綻に向かう場合、徐々に決算書にその兆候が反映されるからである。機械学習の場合には、モデル構築器が統計的に有益な兆候を抽出する。従来のスコアリングモデルは、徐々に破綻に向かうケース1のような場合に、特に有効となる。
【0006】
他の従来技術として、個人に対する与信取引としては、各ユーザの信用度を推定する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、各ユーザについて、与信取引の需要を推定し、推定された信用度及び需要に基づいて、複数のユーザを複数のユーザ層に分類する。
また、個人を対象とした信用情報を判定するために、ユーザが利用する端末装置の位置情報と、当該ユーザが過去に所定の金融サービスに登録したユーザ情報に関する位置情報とを比較して、その位置情報の変化に基づいて、ユーザ情報の変化を判定する技術もある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6472915号公報
【文献】特開2019-049993号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「給与の減額は違法?従業員の給料を下げる際3つの注意ポイント」、[online]、[令和1年8月12日検索]、インターネット<URL:https://kigyosapo.com/sdown>
【文献】「未払賃金の立替払事業」、[online]、[令和1年8月12日検索]、インターネット<URL:https://www.johas.go.jp/tabid/417/Default.aspx>
【文献】「2標本t検定とは」、[online]、[令和1年8月12日検索]、インターネット<URL:https://bellcurve.jp/statistics/course/9427.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
企業の経済状況を公表にする決算書は、上場企業の四半期決算書の場合、1年にわずか4回しか発行されていない。また、決算書は、基準日から2か月程度遅れて発行される。そのために、前述したケース2のように、短い期間で突然業績が悪化した場合、決算書が遅れて公開されるという致命的な結果となる。
【0010】
企業評価における他の分析方法として、例えば銀行口座の入出金情報から、倒産を予測することもできる。しかしながら、企業としては、経済状況の悪化を隠すために、入出金情報を操作することもできる。簡単には、銀行Aの口座aは、提出用で入出金が正常と見なせるように繕う。一方で、銀行Bの口座bは、実際の企業の状況を反映した資金の流れとする。この場合、企業が保有する全ての銀行口座の入出金情報を把握しなければならない。
【0011】
企業の経済状況が悪化している場合、ケース1及び2のいずれの場合であっても、その企業の経営者はまず、他の取引先企業に対してその経済状況を隠しながら、事態を改善しようとする。即ち、金融機関に借入を申し込む前に、別の方法を模索する。
企業は、経済状況が危機的であっても、取引先企業に経済支援を要請するのは最終手段と考える。なぜなら、取引先企業は交渉相手であって、弱みを握られかねないためである。金融機関としての銀行が即座に支援できればよいが、銀行の審査は常に、ネガティブな面を叩き出そうとする。企業の経営者が、銀行に対して経済支援を要請した場合、銀行は最初に、既存の融資の金利を上げ、保有不動産などあらゆる担保の提出を求めるであろう。そのために、企業の経営者は、経済状況が危機的であっても、最初に考えるのは、自らの企業内だけで経済状況を改善しようとする。
【0012】
企業の経営者は、最初に、経費削減などの対処を試みる。次に、一方的に負担を強いることができる対処として、他の取引先企業に情報が洩れないという制約条件下で、従業員への給与支払い条件を変更しようとする。
給与支払いの条件の変更には、給与の減額と、支払期日の遅延とがある。経済状況の悪化などの合理的な理由によって給与を減額する場合、10%程度を限度に合法であると言われている。
労働基準法第91条によれば、就業規則に労働者の給与を制裁により減額する旨を定める場合は、減額は1回の額が平均賃金の1日の半分を超え、総額が1賃金支払い期における賃金の1/10を超えてはならない、と規定されている。事務手続としては、給与削減案を従業員に周知し、次に就業規則を変更し、更に従業員から同意書の提出を受ける。これによって、合法的に給与の諸条件を変更する。ここで、重要なことは、企業は、経済状況の変化の悪化を、対外的に公表することなく、このような措置を合法的に取り得るということにある(例えば非特許文献1参照)。
【0013】
加えて、労働者健康安全機構(厚生労働省の外郭団体)によれば、平成28年における企業の未払い賃金の立て替え払いの件数は、21,941人で84億円という数値もある(例えば非特許文献2参照)。即ち、倒産の前に、従業員への給与支払いが滞っているという事実が確認できる。
【0014】
給与の支払い条件が変更された従業員らは、給与の減額や支払遅延に適応した生活をする必要がある。具体的には、給与が立て替えられるまで、費用の係る行動を慎み、生活費を削減すると共に、自らの貯蓄を切り崩して対応する場合もある。従業員らは、衣食住などの費用は簡単に削れないものの、最初に、遠出のレジャーなど、コストのかかる場所への訪問を取りやめるという行動をとるであろう。一方で、遠出であっても、コストのかからない目的地であれば、訪問しやすいかもしれなない。
【0015】
これに対し、本願の発明者らは、企業の従業員(ユーザ)群全体としての行動変化を判定することができれば、その企業の経済状況の変化を判定することができるのではないか、と考えた。特に従業員らは、企業からの給与の減額や支払遅延が生じた場合、最初に、無駄な出費を伴う移動や、高コストな場所への訪問を、避けようとするであろう、と考えた。
【0016】
そこで、本発明は、ユーザ群の行動変化を判定するプログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、ユーザ群の行動変化を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
ユーザ群は、企業の従業員群であり、
ユーザ群の行動変化の発生は、当該企業の経済状況の変化の発生を意味する
ようにコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【0019】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
総予想支払金額算出手段は、当該ユーザが所定時間以上滞在した地域のみを、滞在地域として抽出する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0020】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
ユーザ行動変化判定手段は、前の所定期間の総予想支払金額が、後の所定期間の総予想支払金額よりも、所定金額以上に変化したか否かを判定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0021】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
予想支払金額データベースは、地域毎に、予想支払金額として平均金額及び標準偏差を対応付けており、
総予想支払金額算出手段は、各ユーザについて、予想支払金額の平均金額を加算した総予想支払金額と、標準偏差の二乗(分散)の加算値の平方根となる総予想標準偏差とを算出し、
ユーザ行動変化判定手段は、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0022】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
ユーザ行動変化判定手段は、2標本t検定に基づくものであり、
母分散の比のF検定によって、等分散の帰無仮説が棄却されないか又は棄却されるかを判定し、
等分散の帰無仮説が棄却されない場合、分散が類似することを仮定したt検定によって、有意差の有無を判定し、
等分散の帰無仮説が棄却される場合、分散が異なることを仮定したウェルチのt検定によって、有意差の有無を判定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0023】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
ユーザ位置データベースについて、時系列の位置は、ユーザに所持された携帯端末によって測位された端末測位位置、及び/又は、基地局に接続した携帯端末の滞在範囲に基づく基地局測位位置である
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0024】
本発明によれば、企業の経済状況の変化を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、ユーザ群の行動変化を判定する装置であって、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
を有することを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、企業の経済状況の変化を判定する装置であって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する総予想支払金額算出手段と、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定するユーザ行動変化判定手段と、
ユーザ行動変化判定手段によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動するユーザ群行動変化判定手段と
を有することを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、装置のユーザ群行動変化判定方法であって、
装置は、
ユーザ群の各ユーザに所持された携帯端末における時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶した予想支払金額データベースと、
を有し、
装置は、
各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベースを用いて1つ以上の滞在地域を特定し、予想支払金額データベースを用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額を算出する第1のステップと、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップによって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群の行動変化が発生したことを発動する第3のステップと
を実行することを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、装置の企業経済変化判定方法であって、
当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、各予想支払金額を加算した総予想支払金額と、予想支払金額の分散の平方根となる総予想標準偏差とを算出する第1のステップと、
ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを判定する第2のステップと、
第2のステップによって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、企業の経済状況の変化が発生したことを発動する第3のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明のプログラム、装置及び方法によれば、ユーザ群の行動変化を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明におけるユーザの行動変化を表す説明図である。
図2】本発明における推定装置の機能構成図である。
図3】地域毎に予想支払金額を対応付けた説明図である。
図4】メッシュ状に隣接する地域毎に予想支払金額を対応付けた説明図である。
図5】ユーザの総予想支払金額を算出する第1の説明図である。
図6】ユーザの総予想支払金額を算出する第2の説明図である。
図7】ユーザ行動変化判定部の処理を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明におけるユーザの行動変化を表す説明図である。
【0033】
図1(a)によれば、ユーザが、住所圏の自宅から訪れた複数の地域M1~M5が表されている。一般的に、ユーザがいずれかの地域へ移動した場合、その都度、何らかの支払料金が発生する訪問するであろう。
図1(a)によれば、地域毎に、以下のように平均支払金額が対応付けられている。
地域M1:平均金額1,000円
地域M2:平均金額200円
地域M3:平均金額5,000円
地域M4:平均金額20,000円
地域M5:平均金額50,000円
【0034】
ユーザが企業の従業員である場合、毎月の給与額に応じた生活をする必要がある。そのために、ユーザにとって、必然的に、給与額と、支払料金が発生する訪問場所及びその回数との間で、何らかの相関性があることが想定される。図1(a)のように、例えば給与額が比較的高いユーザは、支払料金が比較的高い地域M4やM5へも訪問している。
【0035】
一方で、そのユーザにとって企業からの給与が減額や支払遅延が生じた場合、当然に、支出を減らざるを得ない。ユーザは、最初に、衣食住以外の無駄な出費を伴う移動や、高コストな場所への訪問を、避けようとするであろう。図1(b)によれば、ユーザは、支払料金が比較的高い地域M4やM5への訪問を控えている。このように、給与の減額は、ユーザの行動に間接的な変化を生じさせることが想定できる。
【0036】
これに対し、本願の発明者らは、企業の経済状況の悪化が、従業員の給与の減額につながった場合、間接的に、従業員全体について何らかの行動に変化が生じる割合が多くなるのではないか、と考えた。このユーザ行動変化の割合が、所定割合以上となった場合、その企業について経済状況の悪化を想定することができる。結果的に、その企業の経済状況の悪化を、取引先企業や、金融機関、投資家、信用調査企業(東京商工リサーチや帝国データバンク)が予め認識することができるのではないか、と考えた。
企業の組織をピラミッドで例えた場合、社長をピラミッドの頂点とし、土台を支えているのは従業員である。実は、頂点にいる企業経営者しか知り得ない経営状況は、ボトムにある従業員の行動として変化すると考えられる(「ボトムアップアプローチ」と称する)。
【0037】
図2は、本発明における推定装置の機能構成図である。
【0038】
推定装置1は、ユーザ群の行動変化を判定するものである。具体的には、推定装置1は、企業の従業員(ユーザ)群の行動変化が生じた際に、その企業の経済状況に何らかの変化が生じた可能性があるとする判定する。
【0039】
推定装置1は、ユーザ位置データベース11と、予想支払金額データベース12と、総予想支払金額算出部13と、ユーザ行動変化判定部14と、ユーザ群行動変化判定部15とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムとして実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、ユーザ群の行動変化判定方法としても理解できる。
【0040】
[ユーザ位置データベース11]
ユーザ位置データベース11は、位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したものである。ここで、対象となるユーザ群は、企業の従業員群である。
図2によれば、ユーザ位置データベース11は、特定の通信事業者によって運用管理されており、加入者ID(ユーザID)毎に、時刻と位置情報とを対応付けて蓄積している。
ここで、重要な点として、ユーザ位置データベース11は、特定の通信事業者の通信事業設備による捕捉ユーザであって、現実のユーザ全てではなくてもよい。勿論、母集団の数は多いほどよいが、特定の通信事業者と契約した携帯端末2を保持するユーザについてのみ、位置情報が収集されたものであってもよい。
【0041】
尚、ユーザ位置データベース11は、ユーザ群として、企業の従業員を予め特定しておくことも好ましいが、それに限られるものではない。例えば、その企業に毎日訪問するユーザであれば、非正規社員やアルバイト、外注先社員であっても、ユーザ群として含めてもよい。本発明は、ユーザの行動によって訪問先で発生する支払金額の高低が問題ではなく、それらユーザ群全体で行動変化が生じた時点を判断するものである。
【0042】
ユーザ位置データベース11に蓄積された位置とは、例えば以下のようなものである。
(1)ユーザに所持された携帯端末2によって測位された端末測位位置
携帯端末2が自ら、GPS(Global Positioning System)によって測位した緯度経度情報である。
(2)通信事業者の基地局やアクセスポイントに接続した携帯端末の基地局測位位置
携帯端末2を配下とする基地局やアクセスポイントの位置情報から、携帯端末2の位置を推定したものであってもよい。但し、この位置情報は、空間的粒度が粗いものとなる。
これら位置情報は、緯度経度又は地図座標によって表記されるものであってもよいし、住所名や地図メッシュ番号に変換されたものであってもよい。
【0043】
[予想支払金額データベース12]
予想支払金額データベース12は、地域毎に、予想支払金額を対応付けて記憶したものである。
地域Miが店舗である場合、予想支払金額は、POS(販売時点情報管理(Point Of Sale))情報やキャッシュレス決済情報から、ユーザ単位で収集される。
尚、単位時間当たりの予想支払金額であってもよい。その場合、そのユーザの滞在時間によって、実際の予想支払金額を予想することができる。
【0044】
また、地域毎に、予想支払金額として「平均金額」及び「標準偏差」を対応付けることも好ましい。
「地域」とは、地図上の平面的なメッシュを細かく区分するほど、ビルや施設を特定することができる。また、「地域」とは、そのビルや施設の階数のように、多次元空間に区分されたものであってもよい。例えば3次元で区切る場合、その空間を「キューブ」と称すこともできる。
「平均金額」とは、その地域で、過去に多くのユーザが支払った支払金額の平均値を表す。
「標準偏差」とは、その地域で、過去に多くのユーザが支払った支払金額のばらつきを表す。
【0045】
図3は、地域毎に予想支払金額を対応付けた説明図である。
【0046】
図3によれば、地域Mi毎に、予想支払金額の正規分布グラフが対応付けられている。正規分布(normal distribution)によって、過去の支払金額を統計的に、平均金額付近に集積する支払金額の分布を表した連続的な変数に関する確率分布として表現できる。
【0047】
図4は、メッシュ状に隣接する地域毎に予想支払金額を対応付けた説明図である。
【0048】
図4によれば、地域M1、M2、M3は、隣接している。また、地域M1、M2、M3に対して、地域M4やM5から遠方にある。このように、地図上に、予想支払金額の正規分布を表現しておくものであってもよい。一般的に、比較的高額な支払金額が生じる地域範囲もあれば、比較的低額な支払金額が生じる地域範囲もある。
【0049】
所定時間帯毎に、地域毎に、支払金額に応じて色合いの階調を濃く(又は薄く)表示した支払金額マップを作成することも好ましい。これによって、支払金額マップの色合いを見るだけで支払金額を認識することができる。
【0050】
[総予想支払金額算出部13]
総予想支払金額算出部13は、各ユーザについて、所定期間毎に、ユーザ位置データベース11を用いて1つ以上の滞在地域を特定する。そして、各ユーザについて、予想支払金額の平均金額を加算した総予想支払金額と、標準偏差の二乗(分散)の加算値の平方根となる総予想標準偏差とを算出する。
【0051】
図5は、ユーザの総予想支払金額を算出する第1の説明図である。
【0052】
図5によれば、ユーザ毎に、所定期間(例えば1週間)に検出された「滞在地域」を導出する。このとき、総予想支払金額算出部13は、当該ユーザが所定時間(例えば1時間)以上滞在した地域のみを、「滞在地域」として抽出する。ユーザが、例えばその地域(店舗)に1時間以上滞在すれば、その地域に対応する予想支払金額を支払ったものと予想する。
図5によれば、ユーザID1は、所定期間(8月18日~24日の1週間)に、地域M2を2回、地域M3を1回だけ訪問している。
【0053】
前述した図1図5によれば、当該企業の従業員となる各ユーザについて、所定期間毎に、総予想支払金額と総予想標準偏差とを算出するためのものである。
ユーザの位置に限らず、当該ユーザの銀行口座の入出金状況から、所定期間毎に、総予想支払金額と総予想標準偏差とを算出することができる場合、ユーザ位置データベース11及び予想支払金額データベース12を必須の構成要素とするものではない。
その場合、当該ユーザについて、各滞在地域における各支払金額は、当該ユーザの銀行口座における各出金額として考えることができる。
【0054】
図6は、ユーザの総予想支払金額を算出する第2の説明図である。
【0055】
図6によれば、総予想支払金額算出部13は、ユーザ毎に、予想支払金額データベース12を用いて所定期間内における全ての滞在地域の予想支払金額を加算した総予想支払金額(金額及び標準偏差)を算出する。
地域M2:平均金額100円、標準偏差30
地域M3:平均金額8,000円、標準偏差500
【0056】
総予想支払金額算出部13は、ユーザ毎に、全ての滞在地域で加算した総予想支払金額を算出する。
ユーザID1、所定期間8/19~8/23
滞在地域M2,M3,M2
総予想支払金額・平均値の加算 =8,000円×1回+100円×2回=8,200円
総予想支払金額・標準偏差の加算=√(5002×1回+302×2回)=√251800=502
分布の独立性を仮定し、支払金額の分散は、訪問場所の分散の和とする。
【0057】
[ユーザ行動変化判定部14]
ユーザ行動変化判定部14は、ユーザ毎に、所定期間の経過に応じて、総予想支払金額が所定金額以上に変化したか否かを判定する。
ここで、「所定金額以上に変化」の判定は、前の所定期間の総予想支払金額が、後の所定期間の総予想支払金額よりも、所定金額以上に変化したか否かを判定するものであってもよい。
また、ユーザ行動変化判定部14は、総予想支払金額が所定金額以上に変化し、又は、総予想標準偏差が所定標準偏差以上に変化したか否かを、別々に判定する。
【0058】
図7は、ユーザ行動変化判定部の処理を表す説明図である。
【0059】
図7によれば、ユーザ行動変化判定部14は、2標本t検定に基づいて判定している。
「2標本t検定」とは、2つの独立した母集団があり、それぞれの母集団から抽出した標本の平均に差があるかどうかを検定することをいう(例えば非特許文献3参照)。本発明によれば、2つの母集団とは、行動に変化があったユーザと、行動に変化がなかったユーザとを意味することとなる。
【0060】
(S1)母分散の比のF検定によって、等分散の帰無仮説が棄却されないか又は棄却されるかを判定する。
過去の所定期間Tnの分散と、現在の所定期間Tmの分散とが、それぞれ自由度n-1とm-1のカイ二乗分布に従うものとして、分散の比率を算出する。この分散比は、自由度n-1、m-1のF分布に従う。有意水準をαとするとき、分散比がF(n-1,m-1,α/2)より大きいか、F(n-1,m-1,1-α/2)より小さいとき、等分散の仮定が棄却される。
【0061】
(S21)等分散の帰無仮説が棄却されない場合(等分散の場合)、分散が類似することを仮定したt検定によって、有意差の有無を判定する。ここでは、不変分散を算出した後、tを検定する。
n 2=Σi=1 n(xi-x -)2/(n-1)
m 2=Σi=1 m(xi-xm -)2/(m-1)
2={(n-1)×sn 2+(m-1)×sm 2}/(n+m-2)
t=(x --xm -)/s√(1/n+1/m)
t検定によって有意差有りと判定された場合、ユーザ行動変化有りとして、フラグ"1"を立てる。
一方で、t検定によって有意差無しと判定された場合、ユーザ行動変化無しとして、フラグ"0"とする。
【0062】
(S22)等分散の帰無仮説が棄却される場合、分散が異なることを仮定したウェルチのt検定によって、有意差の有無を判定する。
t=(x --xm -)/s√(1/n+1/m)
自由度vは、以下のとおりの近似を用いて、tを検定する。
v=(sn 2/n+sm 2/m)2/{sn 2/(n2(n-1)+sm 2/(m2(m-1)}
ウェルチのt検定によって有意差有りと判定された場合、ユーザ行動変化有りとして、フラグ"1"を立てる。
一方で、ウェルチのt検定によって有意差無しと判定された場合、ユーザ行動変化無しとして、フラグ"0"とする。
【0063】
そして、ユーザ行動変化判定部14は、ユーザ毎のフラグを、ユーザ群行動変化判定部15へ出力する。
【0064】
[ユーザ群行動変化判定部15]
ユーザ群行動変化判定部15は、ユーザ行動変化判定部14によって真と判定されたユーザの割合が、所定割合以上となった際に、ユーザ群に行動変化が発生したことを発動する。
具体的には、企業の従業員群の所定割合α%以上で行動変化が発生した場合、その企業には何らかのアラームが付与される。
【0065】
他の実施形態として、対象企業の従業員群について行動変化が発生した際、他の企業の従業員群についても行動変化が発生していないことを判定することも好ましい。特に、国や世界の急激な景況悪化が発生した場合、対象企業のみならず、他の企業の従業員群にも行動変化が発生することとなる。即ち、対象企業の従業員群について行動変化が、急激な景況悪化に基づくものではないことを判定する。
特に、企業を全体的に見渡した場合、従業員群の行動変化が発生した企業の数が相当数あるとき、景況悪化がその企業の経済状況に悪影響を与えたのであって、その対象企業単独の経済状況の悪化とは異なる。
【0066】
以上、詳細に説明したように、本発明のプログラム、装置及び方法によれば、ユーザ群の行動変化を判定することができる。
【0067】
本発明によれば、対象企業の従業員群における移動履歴のみが、観察対象となる。従業員となるユーザの行動変化は、一般的に、収入の急減によって発生する。特に、レジャーコストとなる場所への訪問回数は、顕著に低減すると思われる。勿論、家族構成の変化や突然的に節約志向になるユーザもいるために、従業員群全体として行動変化を観察する。従業員群全体として所定割合以上の行動変化が発生した場合、その対象企業の経済状況に原因があると推定することができる。
【0068】
対象企業は、自らの経営状況に対して従業員に対して給与の減額及び支払遅延をした場合、従業員群の行動変化の有無を予め知ることができる。対象企業としても、自らの経営状況を公表する前であっても、従業員に対する対策を検討することができる。
対象企業の経営者の視点からは、従業員の声なき声を拾い上げ、従業員の利益や権利を守ることにもつながる。従業員に対してどのような施策をとり、それによってどの部分にどのような影響が生じ得るのかを検討することもできる。
【0069】
一方で、対象企業の銀行や投資家、取引先企業は、対象企業の経営状況が決算書によって公表される前に、その経済状況の悪化を予め予測することができる。
銀行等の視点から、その企業の経済状況の変化を、決算書で公表されていない従業員群の行動変化の有無を知ることは、その企業の信用力を判断する上で極めて有益となる。従業員群に行動変化が生じた場合、対象企業に対して、保全強化や商品回収、条件見直しなどの交渉に、予め着手することもできる。
【0070】
尚、本発明によれば、スコアリングモデルの1つとして分類されるが、対象企業の財務情報などは必要としない。また、対象企業が経営状況の悪化に至るまでの経過時間が、長期でも短期でも有効となる。
【0071】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0072】
1 推定装置
11 ユーザ位置データベース
12 予想支払金額データベース
13 総予想支払金額算出部
14 ユーザ行動変化判定部
15 ユーザ群行動変化判定部
2 携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7