(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】モータ駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20220518BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H02P27/06
B25F5/00 C
B25F5/00 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016193414
(22)【出願日】2016-09-30
【審査請求日】2019-07-29
(31)【優先権主張番号】201510641142.0
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ユク トゥン ロ
(72)【発明者】
【氏名】ハイ ボ マ
(72)【発明者】
【氏名】ソン チェン
(72)【発明者】
【氏名】シウ チュン イプ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン シェン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シュン ゾウ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-236029(JP,A)
【文献】特開2013-075349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0059000(US,A1)
【文献】特開2008-068359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチ要素を含む電源に結合され、かつ該電源によって供給される電圧を交流電力に変換して電気モータに給電するように構成されたインバータと、
前記インバータ内の前記半導体スイッチ要素の電力モードを制御する駆動信号を出力するように構成されたモータ駆動制御回路と、
トリガスイッチと、
前記電源と前記モータ駆動制御回路の間に接続された第1の電子スイッチと、
第2の電子スイッチを含むスイッチ制御回路であって、前記第2の電子スイッチの制御端子は前記トリガスイッチに結合され、前記第2の電子スイッチの第1の端子は第1の抵抗を通して前記第1の電子スイッチの制御端子に結合され、前記第2の電子スイッチの前記第1の端子は前記第1の抵抗及び第2の抵抗を通して前記電源に結合され、前記トリガスイッチの状態に基づいて前記第1の電子スイッチをオン及びオフにするように構成されたスイッチ制御回路と、
を含
み、
前記スイッチ制御回路は、前記第2の電子スイッチの制御端子と前記トリガスイッチの間に接続され、かつ該トリガスイッチがオフにされてからの遅延時間にわたって前記第1の電子スイッチをオフにするのを遅延させるように構成された遅延ユニットを含むことを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項2】
前記モータ駆動制御回路は、前記トリガスイッチの状態を検出するとともに、前記遅延時間中に制動するように前記モータを制御するように構成されたマイクロコントローラを含むことを特徴とする請求項
1に記載のモータ駆動システム。
【請求項3】
前記スイッチ制御回路はダイオードを更に含み、該ダイオードのカソードは前記遅延ユニットを通して前記第2の電子スイッチの制御端子に結合され、該ダイオードのアノードは前記トリガスイッチを通して前記電源に結合され、前記第1の電子スイッチの第1の端子は該電源に結合され、該第1の電子スイッチの第2の端子は前記モータ駆動制御回路に結合され、該第2の電子スイッチの該制御端子は、第3の抵抗器を通して該第2の電子スイッチの第2の端子に結合されていることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載のモータ駆動システム。
【請求項4】
前記モータ駆動制御回路は、前記トリガスイッチの作動を検出して、該トリガスイッチがオフにされたことを知った後に制動作動を実行するように前記モータを制御するように構成され、かつ該モータの該制動作動が完了した後で前記第1の電子スイッチをオフにする制御信号を前記スイッチ制御回路に送るように構成されているマイクロコントローラを含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動システム。
【請求項5】
前記スイッチ制御回路は、第1のダイオード、及び第2のダイオードを含み、
前記第2の電子スイッチの制御端子は、第3の抵抗器を通して前記第1のダイオードのカソードに結合され、該第1のダイオードのアノードは、前記トリガスイッチを通して前記電源に結合され、前記第1の電子スイッチの第1の端子は、該電源に結合され、該第1の電子スイッチの第2の端子、は前記モータ駆動制御回路に結合され、前記第2の電子スイッチの第2の端子は接地に結合され、該第2の電子スイッチの該制御端子は、第4の抵抗器を通して該第2の電子スイッチの該第2の端子に結合され、前記第2のダイオードのカソードは該第1のダイオードの該カソードに結合され、該第2のダイオードのアノードは前記マイクロコントローラに結合されている、
ことを特徴とする請求項
4に記載のモータ駆動システム。
【請求項6】
トリガスイッチと、電子スイッチと、該トリガスイッチと該電子スイッチの間に接続されたスイッチ制御回路とを含むモータ駆動システムであって、
前記トリガスイッチは、電源に直列に接続され、
前記電子スイッチは、給電がオン又はオフにされるようにモータを制御するように構成され、
前記スイッチ制御回路は、前記トリガスイッチの状態に基づいて前記電子スイッチを制御するように構成され、該電子スイッチは、該トリガスイッチがオフにされた後でオフにされるのを遅延されて該トリガスイッチがオフにされた時間よりも後で給電がオフにされるように前記モータを制御する、
ことを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項7】
前記トリガスイッチ及び前記モータは、それぞれ2つの異なる電流分岐に配列され、該トリガスイッチを通って流れる電流が、モータ駆動システムが給電されて作動する間の該モータの作動電流よりも低いことを特徴とする請求項6に記載のモータ駆動システム。
【請求項8】
前記トリガスイッチを通って流れる前記電流は、モータ駆動システムが給電されて作動する間の前記モータの前記作動電流の1パーセントよりも低いことを特徴とする請求項
7に記載のモータ駆動システム。
【請求項9】
マイクロコントローラを更に含み、
前記電子スイッチは、前記電源と前記マイクロコントローラの間に直列に接続される、 ことを特徴とする請求項7、又は請求項
7又は請求項
8に記載のモータ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、電気ツールに適用可能なモータ駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の生産活動及び生活において、通常、様々なタスクを完了するのに異なる電気ツールが必要である。例えば、チェーンソーは、森林伐採、のこぎり引き、枝分け、及び木材切削のようなタスクを実行するのに使用され、電気ドリルは、穴を穿孔するのに使用され、電気ねじ回しは、ネジを締めるか又は取り外すのに使用され、ハンドミルは、ガラス及び樹脂上の縁取り、切り落とし、及び研磨を実行するのに使用される。電気ツールは、作動させるのが容易であり、かつ労力を節約する。
【0003】
図1は、従来技術における電気ツールのための駆動回路を示している。従来技術における電気ツールでは、電気ツールを作動させるか又はしないように制御するのにトリガスイッチ90が必要である。トリガスイッチ90は、電源92と電気ツールのインバータ94の間に接続される。トリガスイッチ90がオンにされた時に、電気ツールは、作動状態になり、駆動制御回路93は、位置センサ99によって検出された回転子の磁場の位置に基づいて駆動信号を出力し、モータ95が電気ツールの加工ヘッドを駆動して作動させるように、電源92の電力をモータ95に供給される交流電力に変換するようにインバータ94を制御する。トリガスイッチ90は、電源92と電気ツールのインバータ94の間に接続されるので、トリガスイッチ90は、非常に高い定格電流を有することを必要とする。例えば、電気ドリルでは、定格電流は、約10アンペアまでである場合がある。実際には、高電流に耐えることができるトリガスイッチは高価であり、これは、電気ツールの費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
費用を抑制する電気ツールのためのモータ駆動システムを本発明の開示によって提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
モータ駆動システムを本発明の開示における実施形態によって提供する。モータ駆動システムは、複数の半導体スイッチ要素を含む電源に結合され、かつ電源によって供給される電圧を電気モータに給電する交流電力に変換するように構成されたインバータと、インバータ内の半導体スイッチ要素の電力モードを制御する駆動信号を出力するように構成されたモータ駆動制御回路と、トリガスイッチと、電源とモータ駆動制御回路の間に接続された電子スイッチと、トリガスイッチ及び電子スイッチに結合され、かつトリガスイッチの状態に基づいて電子スイッチをオン及びオフにするように構成されたスイッチ制御回路とを含む。
【0006】
好ましくは、スイッチ制御回路は、電子スイッチとトリガスイッチの間に接続され、かつトリガスイッチがオフにされた時から遅延時間にわたって電子スイッチをオフにするのを遅延させるように構成された遅延ユニットを含む。
【0007】
好ましくは、モータ駆動制御回路は、トリガスイッチの状態を検出し、かつ遅延時間中に制動するようにモータを制御するように構成されたマイクロコントローラを含む。
【0008】
好ましくは、電子スイッチは、第1の電子スイッチであり、スイッチ制御回路は、第2の電子スイッチ及びダイオードを更に含み、第2の電子スイッチの制御端子は、遅延ユニットを通してダイオードのカソードに結合され、ダイオードのアノードは、トリガスイッチを通して電源に結合され、第2の電子スイッチの第1の端子は、第1の抵抗器を通して第1の電子スイッチの制御端子に結合され、第1の電子スイッチの制御端子は、第2の抵抗器を通して電源に結合され、第1の電子スイッチの第1の端子は、電源に結合され、第1の電子スイッチの第2の端子は、モータ駆動制御回路に結合され、第2の電子スイッチの制御端子は、第3の抵抗器を通して第2の電子スイッチの第2の端子に結合される。
【0009】
好ましくは、遅延ユニットは、コンデンサ及び第4の抵抗器を含み、第4の抵抗器は、ダイオードのカソードと第2の電子スイッチの制御端子の間に接続され、コンデンサは、ダイオードのカソードと接地の間に接続される。
【0010】
好ましくは、トリガスイッチの定格電流は、100ミリアンペアよりも低い。
【0011】
好ましくは、モータ駆動制御回路は、トリガスイッチの作動を検出し、かつトリガスイッチがオフにされたことを知った後に制動作動を実行するようにモータを制御するように構成され、かつモータの制動作動が完了した後に電子スイッチをオフにする制御信号をスイッチ制御回路に送るように構成されたマイクロコントローラを含む。
【0012】
好ましくは、電子スイッチは、第1の電子スイッチであり、スイッチ制御回路は、第2のスイッチ、第1のダイオード、及び第2のダイオードを含み、第2の電子スイッチの制御端子は、第1の抵抗器を通して第1のダイオードのカソードに結合され、第1のダイオードのアノードは、トリガスイッチを通して電源に結合され、第2の電子スイッチの第1の端子は、第2の抵抗器を通して第1の電子スイッチの制御端子に結合され、第1の電子スイッチの制御端子は、第3の抵抗器を通して第1の電子スイッチの第1の端子に結合され、第1の電子スイッチの第1の端子は、電源に結合され、第1の電子スイッチの第2の端子は、モータ駆動制御回路に結合され、第2の電子スイッチの第2の端子は、接地に結合され、第2の電子スイッチの制御端子は、第4の抵抗器を通して第2の電子スイッチの第2の端子に結合され、第2のダイオードのカソードは、第1のダイオードのカソードに結合され、第2のダイオードのアノードは、マイクロコントローラに結合される。
【0013】
好ましくは、スイッチ制御回路は、第2の電子スイッチの制御端子と接地の間に接続されたコンデンサを含む。
【0014】
好ましくは、マイクロコントローラは、トリガスイッチがオンにされた後に第1の電子スイッチをオンにされた状態に維持するようにスイッチ制御回路を制御する高レベル制御信号を第2のダイオードのアノードに送り、トリガスイッチがオフにされたことを知った後に高レベル制御信号を第2のダイオードのアノードに送り続け、かつモータの制動作動が完了した後に第1の電子スイッチをオフにするようにスイッチ制御回路を制御する低レベル制御信号を第2のダイオードのアノードに送るように構成される。
【0015】
トリガスイッチと、電子スイッチと、トリガスイッチと電子スイッチの間に接続されたスイッチ制御回路とを含むモータ駆動システムを本発明の開示における実施形態によって更に提供する。トリガスイッチは、電源に直列に接続される。電子スイッチは、給電がオン又はオフにされるようにモータを制御するように構成され、スイッチ制御回路は、トリガスイッチの状態に基づいて電子スイッチを制御するように構成され、電子スイッチは、トリガスイッチがオフにされた後にオフにされるのを遅延され、トリガスイッチがオフにされた時間よりも後で給電がオフにされるようにモータを制御する。
【0016】
好ましくは、トリガスイッチ及びモータは、それぞれ2つの異なる電流分岐に配列され、トリガスイッチを通って流れる電流は、モータ駆動システムが給電されて作動する間のモータの作動電流よりも低い。
【0017】
好ましくは、トリガスイッチを通って流れる電流は、モータ駆動システムが給電されて作動する間のモータの作動電流の1パーセントよりも低い。
【0018】
好ましくは、モータ駆動システムは、マイクロコントローラを更に含み、電子スイッチは、電源とマイクロコントローラの間に直列に接続される。
【0019】
好ましくは、トリガスイッチは、ユーザによって手動で作動可能なスイッチである。
【0020】
上述の電気ツールでは、トリガスイッチ及びモータは、それぞれ2つの異なる電流スイッチに配列され、トリガスイッチは、電源とインバータの間に接続されない。このようにして、トリガスイッチを通って流れる電流は、大きく低減され、電気ツールは、費用が抑制されるように高価な高電流トリガスイッチを含む必要がない。これに加えて、電源とモータ駆動制御回路の間の供給経路は、トリガスイッチがオフにされた時間からの遅延時間にわたって遅延した後で遮断され、制動作動は、遅延時間内にモータによって完了され、これは、モータを実質的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術における電気ツールのための駆動回路の概略図である。
【
図2】本発明の開示における実施形態によるモータ駆動システムの概略図である。
【
図3】
図2に示されているマイクロコントローラ、電源、及び電圧調整器に接続されたスイッチ制御回路の具体的な回路図である。
【
図4】本発明の開示における別の実施形態によるモータ駆動システムの概略図である。
【
図5】
図4に示されているマイクロコントローラ、電源、及び電圧調整器に接続されたスイッチ制御回路の具体的な回路図である。
【
図6】上述のモータ駆動システムを有する電気ドリルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の開示における技術的解決法及び他の有利な効果をより明確にするために、本発明の開示における実施形態について図面と共に以下に詳細に説明する。図面は、本発明の開示を限定することなく参照及び例示するためにのみ提供されることを理解することができる。図面の中で示されている大きさは、単に説明を明確にするためのものであり、スケーリング関係を限定するものではない。
【0023】
図2に示すように、本発明の開示によるモータ駆動システムは、モータ70を駆動して作動させるように構成される。実施形態において、モータ70は、固定子と固定子に対して回転可能な回転子とを含むブラシレス直流モータ(BLDC)である。固定子は、固定子コアと固定子コアに巻かれた固定子巻線とを含む。固定子コアは、純鉄、鋳鉄、鋳鋼、電気鋼、シリコン鋼のような軟磁性材料から製作することができる。回転子は、永久磁石及び冷却ファンを含む。
【0024】
電源10は、モータ70のための電力を提供する。実施形態において、電源10は、リチウムイオンバッテリである。他の実施形態において、電源は、ニッケル水素バッテリ、リチウムポリマーバッテリ、燃料電池、及び太陽電池のような他のタイプのバッテリとすることができる。電源10はまた、再充電可能バッテリとすることができる。電源は、モータ70が設けられた電気ツール内に取外し可能に配列される。
【0025】
モータ駆動システムは、トリガスイッチ20、スイッチ制御回路30、電子スイッチ40、モータ駆動制御回路、インバータ60、及び位置センサ80を含む。モータ駆動制御回路は、電圧調整器50、マイクロコントローラ55、及びドライバ58を含み、かつインバータ60の電力モードを制御する駆動信号を出力するように構成される。
【0026】
トリガスイッチ20は、電源10とスイッチ制御回路30の間に接続される。トリガスイッチ20は、モータ70が作動する必要がある場合にオンにされ、トリガスイッチ20は、モータ70が作動停止する必要がある場合にオフにされる。
【0027】
電子スイッチ40は、電源10と電圧調整器50の間に接続され、かつ電源10と電圧調整器50の間の供給経路をオン又はオンにするように制御するように構成される。電圧調整器50は、マイクロコントローラ55及びドライバ58に接続され、かつ電源10によって供給される電圧を5ボルトの電圧及び12ボルトの電圧に低減するように構成される。5ボルトの電圧は、マイクロコントローラ55に供給され、12ボルトの電圧は、ドライバ58に供給される。他の実施形態において、電圧調整器50は、異なるモータ内の電子要素の要件に基づいて、電源10の電圧を調整して異なる大きさの他の電圧にすることができる。電源10によって供給される電圧がマイクロコントローラ55及びドライバ58を直接に駆動することができる場合に、電圧調整器50は提供されない場合がある。
【0028】
ドライバ58は、マイクロコントローラ55によって出力される駆動信号に対して電圧ブースト又は電流増幅を実行するように構成され、次に、処理された信号をインバータ60に送信する。ドライバ58は、ゲートドライバとすることができる。マイクロコントローラ55によって出力される駆動信号が、インバータ60の半導体スイッチ要素を駆動する程に大きい場合に、ドライバ58は提供されない場合があることを理解しなければならない。
【0029】
ドライバ58は、マイクロコントローラ55とインバータ60の間に接続される。インバータ60は、電源10にわたって直接に接続され、かつモータ70に接続される。インバータ60は、複数、例えば、6個の半導体スイッチ要素を含む3相インバータとすることができる。位置センサ80は、好ましくは、固定子上に配列されるか又は回転子の近くの位置に配列され、かつ回転子の磁極の位置を検出するように構成されたホール効果センサである場合がある。代替例として、回転子の磁極の位置は、センサレス方式で検出される場合があることを理解しなければならない。マイクロコントローラ55は、モータと通信する及び/又はモータの速度を制御するモータ70の電力モードを制御するために、位置センサ80によって検出された回転子の磁極の位置に基づいてインバータ60内の半導体スイッチ要素をオン又はオフにするように制御するPWM駆動信号を出力する。
【0030】
インバータ60は、常に電源10にわたって接続されるので、モータ70は、モータ駆動制御回路と電源10の間の供給経路を単にオン又はオフにするように制御することによってオン又はオフにすることができることを以上の説明から見ることができる。駆動制御回路の電圧調整器50が給電されて作動する時に、モータ駆動システムは、モータ70を駆動して作動させ、モータ70は、モータを収容する電気ツールの加工ヘッドを駆動して作動させる。スイッチ制御回路30は、トリガスイッチ20を通して電源10に接続され、かつトリガスイッチ20のオン又はオフアクションに基づいて電子スイッチ40をオン又はオフにするように制御し、それによってモータ駆動システム全体の作動状態を制御する。
【0031】
図3に示すように、スイッチ制御回路30は、トライオードQ2、抵抗器R1からR4、及びダイオードD1を含む。ダイオードD1のアノードは、トリガスイッチ20を通して電源10に接続され、ダイオードD1のカソードは、コンデンサC1を通して接地に接続され、かつ抵抗器R4を通してトライオードQ2のベースにも接続される。トライオードQ2のベースはまた、抵抗器R3を通してトライオードQ2のエミッタに接続される。トライオードQ2のコレクターは、直列に接続された抵抗器R1及び抵抗器R2を通して電源10に接続され、抵抗器R1と抵抗器R2の間のノードは、電子スイッチ40の制御端子に接続される。実施形態において、電子スイッチ40は、電子スイッチ40の制御端子として機能して抵抗器R1と抵抗器R2の間のノードに接続されたゲートと、電子スイッチ40の第1の端子として機能して電源10に接続されたソースと、電子スイッチ40の第2の端子として機能して電圧調整器50に接続されたドレインとを有するpチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)Q1である。他の実施形態において、第1の電子スイッチ40は、それぞれ、電子スイッチ40の制御端子、第1の端子、及び第2の端子として機能するベース、エミッタ、及びコレクターを有するPNPトライオードQ2である場合がある。実施形態において、トライオードQ2は、電子スイッチ要素としても機能する。他の実施形態において、トライオードQ2は、MOSFET要素で置換することができる。
【0032】
マイクロコントローラ55の外部スイッチピン550は、トリガスイッチ20に接続される。マイクロコントローラ55が給電されて作動する時に、トリガスイッチ20の作動は、リアルタイム方式で読み取られる。一例では、トリガスイッチ20がオンにされた場合に、外部スイッチピン550は、高レベル信号を受け入れ、トリガスイッチ20がオフにされた場合に、外部スイッチピン550は、低レベル信号を受け入れる。マイクロコントローラ55は、トリガスイッチ20がオフにされたことを知った後で、制動作動を実行するようにモータ70を制御する。
【0033】
モータ駆動システムの作動原理について以下に説明する。
【0034】
トリガスイッチ20が押される前、すなわち、トリガスイッチ20がオフ状態にある時に、トライオードQ2は、オフ状態にあり、抵抗器R1と抵抗器R2の間のノードでの電圧は、電源10の電圧に等しく、MOSFET Q1は、オフ状態にあり、電源が電圧調整器50に供給されず、モータ70は作動しない。
【0035】
トリガスイッチ20が押された時に、電源10によって供給される電流は、スイッチ制御回路30内のコンデンサC1を充電することになる。コンデンサC1にわたる電圧がトライオードQ2のためのオン電圧に達した時に、トライオードQ2は、オンにされ、電源10によって供給される電流は、抵抗器R1及び抵抗器R2を通って流れ、抵抗器R2と抵抗器R1の間のノードにおける電圧降下を発生させる。従って、MOSFET Q1が、オンにされ、電源10は、MOSFET Q1を通して電圧調整器50のために給電する。上述のように、モータ駆動システムは、作動状態にあり、モータ70は、マイクロコントローラ55の駆動下で電気ツールの加工ヘッドを駆動して作動させる。この場合に、マイクロコントローラ55の外部スイッチピン550は、リアルタイム方式でトリガスイッチ20の作動を読み取る。
【0036】
トリガスイッチ20がオフにされた時に、コンデンサC1は放電することになり、コンデンサC1にわたる電圧は、トリガスイッチ20がオフにされた時から遅延時間の後で0.7ボルトのような事前に設定された値を下回って降下することになるので、MOSFET Q1は、即座にオフにされるのではなく、コンデンサC1にわたる電圧が事前に設定された値よりも大きい期間中はオン状態を維持する。マイクロコントローラ55は、トリガスイッチ20のオフ作動を知った時に、制動作動を実行するようにモータ70を制御する駆動信号をドライバ58を通してインバータ60に送る。制動中、モータ自体は、モータの回転方向と反対の方向を有する電磁トルクを生成し、モータは、加工ヘッドからの力学的エネルギを吸収し、この力学的エネルギを電気的エネルギに変換し、電気的エネルギをモータ内部で消費して可能な限り早急にモータの回転を停止する。一例では、モータ70が制動するのに0.3秒のみを要する。コンデンサC1及び抵抗器R4は、遅延回路を構成する。遅延回路の遅延時間は、抵抗器R4の抵抗値及びコンデンサC1のキャパシタンス値に関連している。すなわち、コンデンサC1及び抵抗器R4の値を調節することにより、MOSFET Q1は、トリガスイッチ20がオフにされた時間から0.3秒の遅延時間にわたって遅延した後でオフにすることができ、マイクロコントローラ55は、この遅延時間内にモータの制動作動を完了することを保証される。他の実施形態において、遅延回路の遅延時間は、モータが適用される製品の異なる要件に基づいて相応に調節することができる。コンデンサC1にわたる電圧がトライオードQ2のオン電圧よりも低い時に、トライオードQ2は、オフにされ、次に、電圧調整器50と電源10の間の接続経路がオフにされ、従って、モータ70が作動停止するように、MOSFET Q1をオフにするように制御する。
【0037】
実施形態において、ダイオードD1は、マイクロコントローラ55を保護するために、コンデンサC1が放電している時にトリガスイッチ20を通ってマイクロコントローラ55に流れる放電電流を回避することができる一方向要素である。
【0038】
この実施形態が電気ドリルに適用される場合に、トリガスイッチ20がオフにされた時に、モータは、遅延時間中に制動作動を完了し、これは、モータを実質的に保護する。これに加えて、トリガスイッチ20は、電源10とインバータ60の間に接続されないので、モータがオン又はオフにされた時にトリガスイッチ20を通って流れる電流は、数十ミリアンペアまで大きく低減され、その一方、モータの作動電流は、数十アンペアに達する。すなわち、トリガスイッチ20を通って流れる電流は、モータの作動電流の1/100よりも小さい。従って、高価な高電流トリガスイッチを使用する必要がなく、その代りに、100ミリアンペアよりも低い定格電流を有して費用が低いトリガスイッチを選択することができる。
【0039】
図4及び
図5は、本発明の開示における別の実施形態によるモータ駆動システムの回路図である。トリガスイッチ20、電子スイッチ40、電圧調整器50、ドライバ58、インバータ60、及び位置センサ80の機能及び接続関係は、上述の実施形態におけるものと同様である。上述の実施形態との相違点は、スイッチ制御回路30が、ダイオードD2及び抵抗器R5を更に含む点にある。ダイオードD2のアノードは、マイクロコントローラ55のトリガ信号ピン552に接続される。ダイオードD2のアノードは、抵抗器R5を通して電圧V3P3Dにも接続される。ダイオードD2のカソードは、ダイオードD1のカソードに接続される。
【0040】
実施形態において、トリガスイッチ20がオフにされた後でモータの制動作動が完了した時に電源10と電圧調整器50の間の供給経路を遮断する機能は、マイクロコントローラ55のプログラムによって達成される。マイクロコントローラ55は、モータ制動プログラムを格納する。マイクロコントローラ55が通常に作動している時に、マイクロコントローラ55のトリガ信号ピン552は、高レベル信号をスイッチ制御回路30に出力する。マイクロコントローラ55の外部スイッチピン550が、トリガスイッチ20がオフにされたことを示す信号を受け入れた後で、マイクロコントローラ55は、トリガ信号ピンでの高レベル信号を維持することによってモータ制動プログラムを実行し、モータの制動作動が完了した後で高レベル信号を低レベル信号に変化させる。
【0041】
この実施形態によるモータ駆動システムの作動工程について以下に説明する。
【0042】
トリガスイッチ20が押される前、すなわち、トリガスイッチ20がオフ状態にある時に、トライオードQ2は、オフ状態にあり、抵抗器R1と抵抗器R2の間のノードでの電圧は、電源10の電圧に等しく、MOSFET Q1は、オフにされ、電源が電圧調整器50に供給されず、モータ70は作動しない。
【0043】
トリガスイッチ20が押された時に、電源10によって供給される電流は、抵抗器R4及び抵抗器R3を通って流れ、トライオードQ2は、抵抗器R3及び抵抗器R4によって生成された分割電圧がトライオードQ2のためのオン電圧に達した時にオンにされ、電源10によって供給される電流は、抵抗器R2及び抵抗器R1を通って流れ、抵抗器R2と抵抗器R1の間のノードにおいて電源10に対する電圧降下を発生させる。従って、MOSFET Q1は、オンにされ、電源10は、MOSFET Q1を通して電圧調整器50のために給電する。上述のように、モータ駆動システムは、作動状態にあり、モータ70は、マイクロコントローラ55の駆動下で電気ツールの加工ヘッドを駆動して作動させる。この場合に、マイクロコントローラ55は、マイクロコントローラのトリガ信号ピン552においてダイオードD2への高レベル信号を出力し、マイクロコントローラ55はまた、マイクロコントローラ55の外部スイッチピン550を通してリアルタイム方式でトリガスイッチ20の作動をモニタする。
【0044】
トリガスイッチ20がオフにされた時に、マイクロコントローラ55の外部スイッチピン550は、トリガスイッチ20のオフアクションを知り、マイクロコントローラ55のトリガ信号ピン552は、高レベル信号を出力し続け、制動プログラムを実行して、制動作動を実行するようにモータ70を制御する駆動信号をドライバ58を通してインバータ60に送る。モータの制動作動中に、トライオードQ2及びMOSFET Q1は、オン状態のままであり、すなわち、電源は、電圧調整器50に給電し続ける。モータの制動作動が完了した時に、マイクロコントローラ55のトリガ信号ピン552は、低レベル信号を出力する。ダイオードD1のアノード及びダイオードD2のアノードの両方が低レベル信号を受け入れるので、ダイオードD1及びD2の両方がオフにされ、トライオードQ2がオフにされ、次に、MOSFET Q1がオフにされて電源10と電圧調整器50の間の供給経路がオフにされ、モータ70が作動停止する。
【0045】
実施形態において、100ナノファラッドのような小さいキャパシタンス値を有するコンデンサをコンデンサC1として選択することができる。実施形態において、コンデンサC1のフィルタリング機能が主として適用される。トリガスイッチ20がオフにされた時に、トライオードQ2のベースでの電圧は変動する場合がある。コンデンサC1は、トリガスイッチ20の作動に起因して発生した電圧ノイズをフィルタで除去し、トライオードQ2の誤作動を回避する。抵抗器R5は、マイクロコントローラ55のトリガ信号ピン552の出力レベルを安定化するプルアップ抵抗器である。
【0046】
上述の実施形態において、トリガスイッチがオフにされてからMOSFET Q1がオフにされるまでの遅延時間は、マイクロコントローラ55によって制御される。マイクロコントローラ55はまた、モータの状態を示すのに使用されるLEDを点滅後にオフにするように制御することのような遅延時間中の他の作動を実行することができる。
【0047】
図6は、上述のモータ駆動システムを使用した電気ドリルのような電気ツールの概略図である。電気ドリル100は、ハウジング110と、ハウジングから外側に延びる加工ヘッド120と、ハウジング110内に配列される上述のモータ70及びモータ駆動システムとを含む。トリガスイッチ20は、ハウジング110の下側部分にあるハンドル上に配列され、かつ電気ツールをオン又はオフにするように制御するのにユーザによって手動で作動可能である。上述のモータ駆動システムは、電気ねじ回し、ハンドミル、及びチェーンソーのような他の電気ツールにも適用可能である。
【0048】
上述の電気ツールでは、トリガスイッチ20は、電源10とインバータ60の間に接続されていないので、トリガスイッチ20を通って流れる電流は、大きく低減され、20ミリアンペアよりも低い場合がある。従って、20ミリアンペアの定格電流を有するスイッチをトリガスイッチ20として選択することができ、低い費用がもたらされる。これに加えて、電源と電圧調整器の間の供給経路は、トリガスイッチがオフにされた時間からある期間にわたって遅延した後で遮断することができ、制動作動は、遅延時間中にモータによって完了され、これは、モータを実質的に保護することができる。
【0049】
説明した実施形態は、単に本発明の開示における好ましい実施形態であり、本発明の開示を限定するように意図していない。本発明の開示における精神及び原理の範囲内で行われる様々な変更、同等な置換及び修正は、本発明の開示の保護範囲に含まれるべきである。例えば、本発明の開示によるモータ駆動システムは、ブラシレス直流モータを駆動することに適用可能であるだけでなく、他のタイプのモータを駆動することにも適用可能である。トリガスイッチが電源に直列に接続され、かつ電子スイッチが電源とマイクロコントローラの間に接続された状態で、それぞれ2つの異なる電流分岐にトリガスイッチ及びモータを配列することにより、かつトリガスイッチのオン状態及びオフ状態を含む状態に基づいて電子スイッチの状態を制御するようにスイッチ制御回路を構成することにより、トリガスイッチを通って流れる電流は、モータ駆動システムが給電されて作動する間のモータの作動電流よりも低く、電子スイッチは、トリガスイッチがオフにされた後でオフにされるのを遅延され、トリガスイッチがオフにされた時間よりも後で給電をオフにするようにモータを制御することを当業者は理解することができる。このようにして、モータが設けられた電気ツールの作動状態は、廉価で小電流のトリガスイッチを使用して制御することができるだけでなく、モータは、安全に制動されることを保証される。
【符号の説明】
【0050】
10 電源
20 トリガスイッチ
30 スイッチ制御回路
55 マイクロコントローラ
70 モータ