IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エアフィルタ、及びフィルタパック 図1
  • 特許-エアフィルタ、及びフィルタパック 図2
  • 特許-エアフィルタ、及びフィルタパック 図3
  • 特許-エアフィルタ、及びフィルタパック 図4
  • 特許-エアフィルタ、及びフィルタパック 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】エアフィルタ、及びフィルタパック
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20220518BHJP
   B01D 39/16 20060101ALN20220518BHJP
   B01D 39/20 20060101ALN20220518BHJP
【FI】
B01D46/52 A
B01D39/16 A
B01D39/20 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017177034
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019051476
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 宏一
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣郎
(72)【発明者】
【氏名】北山 治
(72)【発明者】
【氏名】内木場 あやの
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-229509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0139544(US,A1)
【文献】特開2008-212781(JP,A)
【文献】特開2004-321937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-20、46/00-52
F02M 35/024
F24F 7/003、8/10-108
D06J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の微粒子を捕集し、山折り及び谷折りが交互に繰り返されるようプリーツ加工された濾材と、前記濾材のプリーツ間隔を保持する間隔保持材と、を有するフィルタパックと、
前記濾材の折り目が気流方向の上流側及び下流側に配置されるよう前記フィルタパックを取り囲む枠体と、を備え、
前記濾材は、前記プリーツ間隔が狭まる方向に力を加えられており、
前記間隔保持材は、前記折り目と直交する方向に沿って前記濾材の表面に形成され、前記折り目を境として一方の側に延在する前記濾材の第1の延在部に形成された第1の突状部と、他方の側に延在する前記濾材の第2の延在部に形成された第2の突状部とを有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第1の突状部の長さは、第2の突状部の長さよりも短く、
谷折りされた前記濾材の部分において、谷折りされた折り目に向かって延びる前記第2の突状部の先端部は、前記濾材の第1の延在部と当接し、前記第2の突状部は、前記第2の突状部の延在方向の途中の位置で前記第1の突状部と当接しており、
前記先端部は、山折りされた折り目から、前記第2の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目の間隔の80%以下の長さの範囲内に位置しており
前記第1の突状部は、前記第1の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目を結ぶ線分の中点よりも、山折りされた折り目の側に位置し、かつ、山折りされた折り目及び前記中点の間において、谷折りされた折り目の側に位置している、ことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記第2の突状部と前記第1の突状部が当接する位置は、谷折りされた折り目よりも、山折りされた折り目に近い位置にある、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記間隔保持材は、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が配置された前記濾材の第1の側の面と反対側の第2の側の面に、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が位置する前記折り目が延びる方向の位置と同じ位置で前記折り目と直交するよう形成された第3の突状部及び第4の突状部をさらに有し、
前記第3の突状部は、前記第2の突状部の前記先端部との間に前記第1の延在部を挟む位置に形成され、前記第4の突状部は、前記第2の突状部との間に前記第2の延在部を挟む位置に形成されている、請求項1または2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記間隔保持材は、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が配置された前記濾材の第1の側の面と反対側の第2の側の面に、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が位置する前記折り目が延びる方向の位置と同じ位置で前記折り目と直交するよう形成された第3の突状部及び第4の突状部をさらに有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第3の突状部の長さは、前記第4の突状部の長さよりも短い、請求項1から3のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
気体中の微粒子を捕集し、山折り及び谷折りが交互に繰り返されるようプリーツ加工された濾材と、
前記濾材のプリーツ間隔を保持する間隔保持材と、を有し、
前記間隔保持材は、前記折り目と直交する方向に沿って前記濾材の表面に形成され、前記折り目を境として一方の側に延在する前記濾材の第1の延在部に形成された第1の突状部と、他方の側に延在する前記濾材の第2の延在部に形成された第2の突状部とを有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第1の突状部の長さは、第2の突状部の長さよりも短く、
前記濾材が折り畳まれた状態で、谷折りされた前記濾材の部分において、谷折りされた折り目に向かって延びる前記第2の突状部の先端部は、前記第1の延在部と当接し、前記第2の突状部は、前記第2の突状部の延在方向の途中の位置で前記第1の突状部と当接しており、
前記先端部は、山折りされた折り目から、前記第2の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目の間隔の80%以下の長さの範囲内に位置しており
前記第1の突状部は、前記第1の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目を結ぶ線分の中点よりも、山折りされた折り目の側に位置し、かつ、山折りされた折り目及び前記中点の間において、谷折りされた折り目の側に位置している、ことを特徴とするフィルタパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ、及びフィルタパックに関する。
【背景技術】
【0002】
エアフィルタは、空気中に浮遊する塵埃等の微粒子を捕集する濾材を備えている。不織布などのシート状の繊維材料からなる濾材は、一般に、プリーツ加工され、ジグザグ形状をなすよう折り畳まれた状態で枠体に保持される。
このようなエアフィルタでは、気体の流路を確保して圧力損失の上昇を抑えるために、プリーツ間隔を一定に保つための種々の工夫がなされている。例えば、プリーツの折り目と直交する方向に線状に設けられた間隔保持材(スペーサ)を用いて、プリーツ間隔を一定に保つことが行われている(特許文献1、2)。この技術では、濾材の谷折りされた部分をなす2つの平面状の部分(延在部)に、互いに向かい合う位置に間隔保持材が設けられており、濾材を折り畳んだときに、プリーツ間隔が保持されるよう間隔保持材同士が当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/137085号公報
【文献】特許第5214893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエアフィルタを風が通過するとき、濾材の谷折りされた部分が風圧を受けて、2つの延在部が平行に向かい合うように変形する場合がある。このように濾材が変形すると、風が流れ難く、圧力損失が増大することが明らかにされた。圧力損失が増大すると、エアフィルタを通過させる気流を形成するために多くの電力が必要となる。
【0005】
一方、特許文献2には、下流側の折り目の両側に延びる間隔保持材のうち、一方の側に延びる部分の先端部を、上流側の折り目付近に配置したエアフィルタが記載されている。特許文献2には、このような形態の間隔保持材を用いて、濾材のプリーツの断面形状をV字形状に保持できることが記載されている。
しかし、特許文献2のエアフィルタでは、下流側の折り目から上流側の折り目付近まで延びる間隔保持材の先端部は、一方の側の延在部に設けられていて、他方の側の延在部に当接していない。一般に、プリーツ加工された濾材は、枠体に組み付けられ、エアフィルタとされるときに、プリーツ間隔が均一に保たれるよう、プリーツ間隔が狭まる方向に力を加えられる。このため、上記力を加えられたときに、間隔保持材の先端部と他方の側の延在部との間の隙間が閉じるように、山折りされた部分が変形して、プリーツ間隔が不均一になる場合がある。プリーツ間隔が不均一になると、局所的に気流が流れ難い部分が発生して、圧力損失が増大する。
本発明は、濾材のプリーツ間隔を保持しつつ、圧力損失を低減することのできるエアフィルタ、及びフィルタパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、エアフィルタであって、
気体中の微粒子を捕集し、山折り及び谷折りが交互に繰り返されるようプリーツ加工された濾材と、前記濾材のプリーツ間隔を保持する間隔保持材と、を有するフィルタパックと、
前記濾材の折り目が気流方向の上流側及び下流側に配置されるよう前記フィルタパックを取り囲む枠体と、を備え、
前記濾材は、前記プリーツ間隔が狭まる方向に力を加えられており、
前記間隔保持材は、前記折り目と直交する方向に沿って前記濾材の表面に形成され、前記折り目を境として一方の側に延在する前記濾材の第1の延在部に形成された第1の突状部と、他方の側に延在する前記濾材の第2の延在部に形成された第2の突状部とを有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第1の突状部の長さは、第2の突状部の長さよりも短く、
谷折りされた前記濾材の部分において、谷折りされた折り目に向かって延びる前記第2の突状部の先端部は、前記濾材の第1の延在部と当接し、前記第2の突状部は、前記第2の突状部の延在方向の途中の位置で前記第1の突状部と当接しており、
前記先端部は、山折りされた折り目から、前記第2の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目の間隔の80%以下の長さの範囲内に位置しており
前記第1の突状部は、前記第1の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目を結ぶ線分の中点よりも、山折りされた折り目の側に位置し、かつ、山折りされた折り目及び前記中点の間において、谷折りされた折り目の側に位置している、ことを特徴とする。
【0007】
前記第2の突状部と前記第1の突状部が当接する位置は、谷折りされた折り目よりも、山折りされた折り目に近い位置にあることが好ましい。
【0008】
前記間隔保持材は、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が配置された前記濾材の第1の側の面と反対側の第2の側の面に、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が位置する前記折り目が延びる方向の位置と同じ位置で前記折り目と直交するよう形成された第3の突状部及び第4の突状部をさらに有し、
前記第3の突状部は、前記第2の突状部の前記先端部との間に前記第1の延在部を挟む位置に形成され、前記第4の突状部は、前記第2の突状部との間に前記第2の延在部を挟む位置に形成されていることが好ましい。
【0009】
前記間隔保持材は、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が配置された前記濾材の第1の側の面と反対側の第2の側の面に、前記第1の突状部及び前記第2の突状部が位置する前記折り目が延びる方向の位置と同じ位置で前記折り目と直交するよう形成された第3の突状部及び第4の突状部をさらに有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第3の突状部の長さは、前記第4の突状部の長さよりも短いことが好ましい。
【0010】
本発明の別の一態様は、フィルタパックであって、
気体中の微粒子を捕集し、山折り及び谷折りが交互に繰り返されるようプリーツ加工された濾材と、
前記濾材のプリーツ間隔を保持する間隔保持材と、を有し、
前記間隔保持材は、前記折り目と直交する方向に沿って前記濾材の表面に形成され、前記折り目を境として一方の側に延在する前記濾材の第1の延在部に形成された第1の突状部と、他方の側に延在する前記濾材の第2の延在部に形成された第2の突状部とを有し、
前記折り目と直交する方向に沿った前記第1の突状部の長さは、第2の突状部の長さよりも短く、
前記濾材が折り畳まれた状態で、谷折りされた前記濾材の部分において、谷折りされた折り目に向かって延びる前記第2の突状部の先端部は、前記第1の延在部と当接し、前記第2の突状部は、前記第2の突状部の延在方向の途中の位置で前記第1の突状部と当接しており、
前記先端部は、山折りされた折り目から、前記第2の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目の間隔の80%以下の長さの範囲内に位置しており
前記第1の突状部は、前記第1の延在部を挟んで隣り合う2つの折り目を結ぶ線分の中点よりも、山折りされた折り目の側に位置し、かつ、山折りされた折り目及び前記中点の間において、谷折りされた折り目の側に位置している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濾材のプリーツ間隔を保持しつつ、圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の一例によるエアフィルタを示す外観斜視図である。
図2】(a)は、従来のフィルタパックの断面を示す図であり、(b)は、本実施形態のフィルタパックの断面を示す図である。
図3】変形例によるフィルタパックの断面を示す図である。
図4】変形例によるフィルタパックの断面を示す図である。
図5図2(b)に示すフィルタパックを展開した断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態のエアフィルタ及びフィルタパックについて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の一例によるエアフィルタ1を示す外観斜視図である。
エアフィルタ1は、フィルタパック3と、枠体5と、を備えている。
【0015】
図2(b)は、フィルタパック3の断面を示す図である。
フィルタパック3は、濾材11と、間隔保持材13と、を有している。
【0016】
濾材11は、気体中の微粒子を捕集し、山折り及び谷折りが交互に繰り返されるようプリーツ加工されている。濾材11は、例えば、粒径2.5μm以下、濃度が0.3mg/m以下の粉塵の除去に用いられ、計数法による捕集効率が80%以上、圧力損失が79~493Pa、粉塵保持容量(保塵量)が200~800g/mのものが用いられる計数法では、粒径0.3μmの、大気塵、ポリアルファオレフィン(PAO)、シリカのいずれかの粒子が用いられる。粉塵保持容量は、フィルタが所定の最終圧力損失に達するまでに捕集した粉塵量である。また、濾材11は、例えば、HEPAフィルタ用の濾材、ULPAフィルタ用の濾材、あるいはガス除去フィルタ用の濾材であってもよい。
濾材11は、例えば、ガラス繊維、有機繊維、あるいは、これらの繊維の混合繊維からなる繊維体であり、例えば、不織布、あるいはフェルトである。ガラス繊維からなる濾材11は、例えば、湿式法又は乾式法によって抄紙することにより作製される。有機繊維からなる濾材11は、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等によって作製される。また、濾材11は、例えば、捕集効率の異なる複数の不織布を積層したものであってもよい。
【0017】
濾材11は、プリーツ加工されていることで、互いに平行な、山折りされた折り目10a及び谷折りされた折り目10bをそれぞれ複数有している。濾材11は、折り目10bを境として一方の側に延在する第1の延在部11aと、他方の側に延在する第2の延在部11bと、を有している。第1の延在部11aと第2の延在部11bは、プリーツが並ぶ方向に交互に配置されている。プリーツ加工は、レシプロ式またはロータリー式の折り機を用いて行われる。
【0018】
間隔保持材13は、濾材11のプリーツ間隔を保持する部材である。間隔保持材13は、例えば、ホットメルト樹脂と呼ばれる熱可塑性樹脂を材質とする。ホットメルト樹脂として、例えば、ポリアミド系、ウレタン系、オレフィン系、またはポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0019】
間隔保持材13は、濾材11の折り目10aと直交する方向(Y方向)に沿って濾材11の表面に形成されている。間隔保持材13は、第1の突状部14と、第2の突状部15と、を有している。第1の突状部14は、第1の延在部11aに形成されている。第2の突状部15は、第2の延在部11bに形成されている。突状部14、15はそれぞれ、濾材11の表面から離れる方向に突出している。
【0020】
折り目10aと直交する方向に沿った第1の突状部14の長さL1は、第2の突状部15の長さL2よりも短い。そして、濾材11が折り畳まれた状態で、谷折りされた濾材11の部分において、谷折りされた折り目10bに向かって延びる第2の突状部15の先端部15aは、第1の延在部11aと当接し、第2の突状部15は、第2の突状部15の延在方向の途中の位置15bで第1の突状部14と当接している。
このように、2つの突状部14、15が当接していることで、濾材11のプリーツ間隔が保持される。そして、折り目10b側(谷側)において、第2の突状部15の先端部15aが、濾材11の谷折りされた部分(谷折り部)をなす延在部11a、11bの両方に接し、かつ、折り目10a側(山側)において、突状部14、15同士が当接していることで、延在部11a、11b同士の間隔は、山側において谷側より広くなっている。このような形態を有していることで、谷折り部をなす延在部11a、11bは、濾材11を通過する気流によって、平行に向かい合い難く、谷側から山側に開いたV字形状を維持しやすい。V字形状を維持した濾材11によれば、気流が流れやすく、圧力損失の上昇が抑制されることがわかった。特に、第2の突状部15の先端部15aが、延在部11a、11bの両方に接していることで、プリーツ間隔が狭まる方向に力を加えられても、向かい合う2つの延在部の間隔は保持され、プリーツ間隔は一定に保たれる。このため、気流が流れ難い部分が発生し難く、圧力損失の低下が抑制される。
【0021】
一方、従来のフィルタパック23では、図2(a)に示されるように、谷折り部をなす延在部31a、31bに設けられた間隔保持材33同士が当接することで、濾材31のプリーツ間隔が保持される。図2(a)は、従来のフィルタパック23の断面を示す図である。そして、図2(a)に示す例では、折り目30a、30bの両側に延びる間隔保持材33の長さが等しく、濾材31を通過する気流によって、間隔保持材33同士が、気流の方向(X方向)にわたって広い範囲で接触して、延在部31a、31bはU字形状を形成しやすい。このため、濾材31を気流が流れ難く、圧力損失が増大することがわかった。ここで、図2(a)に示す例において、間隔保持材33のうち谷側の一部を省略し、間隔保持材33の長さを短くすると、間隔保持材33が省略された延在部31a、31bの部分は、間隔保持材によって支持されないために、気流の通過によって、下流側に膨らむように撓み易くなる。このため、気流が流れ難く、圧力損失が上昇し易い。
なお、図2(a)及び図2(b)に示す例において、気流は、上方から下方に向かって流れる。
【0022】
また、本実施形態では、第1の突状部14が、上述したように、第2の突状部15よりも短く、間隔保持材13が濾材11と接する面積が低減されている。すなわち、気流が通過せず、微粒子の捕集に寄与しない濾材11の面積が低減されている。このため、本実施形態によれば、圧力損失を低減する効果が得られる。
【0023】
さらに、本実施形態では、上述したように、濾材11のV字形状が維持されやすいため、プリーツ間隔を、突状部14、15の突出高さの合計より大きくすることが容易である。このため、本実施形態では、プリーツ間隔を広げやすく、エアフィルタ1においてプリーツの数を減らすことができ、エアフィルタ1に用いられる濾材の量を低減できる。
一方、従来のフィルタパック23では、上述したように、濾材31がU字形状を形成しやすいため、プリーツ間隔は、互いに当接した間隔保持材33の突出高さの合計と同程度になる。このため、プリーツ間隔を大きくすることは難しく、エアフィルタに用いられる濾材の量を低減することは困難である。
一般に、フィルタパックは、枠体5に組み付けられるときに、プリーツ間隔が均一に保たれるよう、プリーツ間隔が狭まる方向に力を加えられる。この力を受けたときにも、従来のフィルタパック23では、間隔保持材33同士が気流の方向に広い範囲で接触して、濾材31はU字形状を形成しやすい。これに対し、本実施形態では、谷側では、第1の突状部14が存在せず、第2の突状部15だけが存在していることで、濾材11が折り畳まれ、プリーツ間隔が狭まる方向に力が加えられても、突状部14、15同士は、第2の突状部15の途中の部分15bで点接触し、プリーツ間隔が広がりやすい。
【0024】
突状部14、15は、図2(b)に示す例において、折り目10aと直交する方向に沿って線状に延びている。
第1の突状部14の長さL1は、例えば、隣り合う折り目10a、10bの間の長さ(以降、折り幅ともいう)の10~40%の長さである。なお、第1の突状部14は、線状に延びずに、点状に突出する突起であってもよい。
第2の突状部15の長さL2は、例えば、濾材11の折り幅の50~80%の長さである。また、第2の突状部15の先端部15aは、折り目10aから、濾材11の折り幅の90%以下の範囲、好ましくは80%以下の範囲内に位置していることが好ましい。このように、先端部15aの先端位置が、折り目10bから離れていることで、気流が通過しない濾材11の面積を低減できる。本実施形態のフィルタパック3は、プリーツの頂部(谷折りされた部分、及び山折りされた部分)に折り目が1本だけ存在した、エッジを有するV字形状をなしていることで、プリーツの頂部に折り目が2本存在する断面形状のフィルタパックと比べ、向かい合う2つの延在部11a、11bのなす角を大きくしやすく、上述したプリーツ間隔を広げる効果が増している。そして、このようにプリーツの頂部に折り目が1本だけ存在したV字形状を有するフィルタパック3では、先端部15aは、折り目15bから離れた位置に配置されていても、延在部11a、11bの両方に接することができる。
L1とL2の比L1/L2は、0.1~0.5であることが好ましい。これにより、第2の突状部15が延在部11aと接する位置と、突状部14,15同士が接する位置との間隔を大きくでき、濾材11のV字形状を安定して維持しやすくなる。
【0025】
突状部14、15は、折り目10a、10bを挟んで互いに離間していることが好ましい。突状部14、15が一体の部材であると、プリーツの折り目付近において、向かい合う2つの延在部11a、11bが互いに離れるような変形(膨らみ)が生じて、気流の流路を狭める場合がある。特に、プリーツの頂部に折り目が1本だけ存在したV字形状をなすフィルタパックでは、このような変形が生じやすい。また、突状部14、15が一体の部材であると、突出高さが高い場合に、向かい合う2つの延在部が互いに離れるような力を発生させやすい。これに対し、突状部14、15が互いに離間していると、プリーツの折り目付近の濾材11の部分の変形を効果的に抑制できる。一方で、突状部14、15は、折り目10a、10bを跨ぐように一体的に形成されていてもよい。
【0026】
枠体5は、濾材11の折り目10a、10bが気流方向の上流側及び下流側に配置されるようフィルタパック3を取り囲む部材である。図1に示す例では、濾材11の折り目10aが上流側(X方向と反対側の方向)に配置されている。枠体5は、例えば、矩形状の部材である。枠体5は、例えば、亜鉛鉄板、ステンレス板、樹脂等の枠材を組み合わせて作られる。エアフィルタ1は、フィルタパック3を、枠体5に対し、例えば、ウレタン樹脂などのシール剤を用いてZ方向の両端を固定し、Z方向に線状に延びる接着剤を用いてY方向の両端を固定することで、フィルタパック3と枠体5との隙間をなくすように組み立てられる。
【0027】
本実施形態において、突状部14、15が当接する位置15bは、谷折りされた折り目10bよりも、山折りされた折り目10aに近い位置にあることが好ましい。突状部14、15の接触位置が、山側に位置していることで、安定してV字形状を維持することができる。また、第1の突状部14の先端が山側に位置していることで、第1の突状部14の先端が谷側に位置している場合と比べ、気流が通過しない濾材11の面積を低減でき、圧力損失を低減する効果が増す。また、安定してV字形状が維持されるので、広くなったプリーツ間隔を安定して保つことができる。なお、プリーツ間隔を広げる効果が増す点で、第1突状部14は、山側に位置しつつ、その中でも谷側に位置することが好ましい。また、第2の突状部15の先端部15aは、谷側に位置することが好ましい。なお、山側とは、折り目10a、10bを結ぶ線分の中点よりも折り目10a側をいう。谷側とは、その中点よりも折り目10b側をいう。
【0028】
第1の突状部14は、折り目10aから、例えば、濾材11の折り幅の10~40%の長さの範囲内に位置しており、好ましくは10~30%未満の長さの範囲内に位置し、より好ましくは20~30%未満の長さの範囲内に位置している。
また、第2の突状部15は、折り目10aから、例えば、濾材11の折り幅の10~80%の長さの範囲内に位置しており、好ましくは10~70%未満の長さの範囲内に位置している。
【0029】
本実施形態では、下記説明するように、突状部14、15の延在方向と直交する方向の断面に関する寸法等が調整されていることが好ましい。そのような寸法等として、例えば、突出高さ、幅(高さ方向と直交する方向の最大長さ)、幅に対する突出高さの比、断面形状が挙げられる。
【0030】
突状部14、15の突出高さは、例えば、プリーツ間隔の20~40%である。突状部14、15の突出高さは、互いに、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0031】
突状部14、15は、例えば、あらかじめ成形した樹脂を濾材11上に載置し、接着させることや、ガンなどを用いて濾材11上で樹脂を成形することによって、作製することができる。
【0032】
突状部14、15の断面に関する上記寸法等は、延在方向に一定であってもよく、変化していてもよい。
【0033】
図3は、変形例によるフィルタパックの断面を示す図である。
間隔保持材13は、図1図3に示されるように、折り目10aを挟んで離間した突状部14、15と接する連結部16をさらに有していてもよい。連結部16は、折り目10aと直交する方向(Y方向)に沿って、折り目10aと交差するように形成される。連結部16は、折り目10aの両側の延在部11b、11aが互いに離間し、濾材11の山折りされた部分が膨らむように変形することを抑制し、気流の流路が狭まることを抑制する効果を発揮する。図示される例の連結部16は、さらに、折り目10aの間に架け渡されるよう形成されており、プリーツ間隔を安定して保持する効果も発揮する。
気流の方向に沿った連結部16の長さ(厚み)は、突状部14、15の突出高さより小さいことが好ましい。
【0034】
図3に示す例の連結部16は、具体的には、突状部14、15を濾材11の表面に形成した後、濾材11を折り畳んだ状態で、上述した要領で、治具の溝内に塗布したホットメルト樹脂を、治具を上下反転させて、折り目10aに載置し、接着させることで作製される。このように、濾材11を折り畳んだ後に設けられた連結部16によって、濾材11の山折りされた部分が膨らむような変形を効果的に抑制できる。
これに対して、図2(a)に示す例のように、折り目を跨ぐように一体的に形成される間隔保持材33は、例えば、濾材31を広げた状態で、ガンを用いてホットメルト樹脂を塗布することで形成されるため、濾材31を折り畳んだ状態では、濾材31の山折りされた部分が膨らむように変形しやすく、圧力損失を上昇させる一因となっている。また、膨らむような変形が生じやすいことによっても、濾材の谷折り部がU字形状を形成しやすく、また、それによって、プリーツ間隔を広げることが難しい。
なお、本実施形態では、連結部16は、ガンを用いてホットメルト樹脂を塗布すること、あるいは、あらかじめ樹脂を成形し載置すること等の方法で作製されてもよい。
【0035】
間隔保持材13は、図2(a)、図3図4に示されるように、突状部14、15が配置された濾材11の第1の側(上流側)の面と反対側の第2の側(下流側)の面に、突状部14、15が位置する折り目10aが延びる方向(Z方向)の位置と同じ位置で折り目10bと直交するよう形成された第3の突状部18及び第4の突状部19をさらに有していることが好ましい。図4は、変形例によるフィルタパックの断面を示す図である。第3の突状部18の延在方向の長さL3は、図2(a)に示されるように、第4の突状部19の延在方向の長さL4より短くてもよく、図4に示されるように、長くてもよい。
この場合において、第3の突状部18は、第2の突状部15の先端部15aとの間に第1の延在部11aを挟む位置に形成され、第4の突状部19は、第2の突状部15との間に第2の延在部11bを挟む位置に形成されていることが好ましい。このように、第3の突状部18が、第2の突状部15の先端部15aに対して配置されていると、気流が通過するときに、第1の延在部11aが下流側から支持される。このため、谷折り部が下流側に膨らむように変形し、U字形状が形成されることを抑制できる。
また、第2の突状部15の先端部15aが、第3の突状部18及び第4の突状部19の間に挟まれ拘束されていることで、第2の突状部15の先端部15aがV字形状の中心位置に安定して位置するため、V字形状を維持しやすくする効果が増し、また、プリーツ間隔を広げやすくする効果が増す。
【0036】
上述したように、間隔保持材13が突状部18、19をさらに有している場合に、折り目10a、10bと直交する方向に沿った第3の突状部18の長さL3は、第4の突状部19の長さL4よりも短いことが好ましい。
図5は、図2(b)に示すフィルタパック3を展開した断面を示す図である。延在方向長さが短い突状部14、18がいずれも延在部11aに配置され、延在方向長さが長い突状部15、19がいずれも延在部11bに配置されていると、図5に示されるように、濾材11の両面に突状部が重なって位置する面積が増える。このため、気流が通過しない濾材11の面積の増加を抑制できる。突状部は濾材の片面にだけ形成されていても、気流が通過できないため、このように、濾材11の両面で突状部が重なるように位置していることは好ましい。第1の延在部11aの両面に位置する第1の突状部14及び第3の突状部18は、折り目10a、10bと直交する方向に、互いに離間していることが好ましく、例えば、濾材11の折り幅の10~30%互いに離間している。
【0037】
(実施例、比較例)
ガラス繊維を抄紙してなる捕集効率90%の濾材を、ロータリー式折り機を用いて、120mm毎に山折り、谷折りを交互に行ってプリーツ加工を行った。濾材の山折りされた折り目ごとに、折り目が延びる方向に間隔をあけて複数の位置で、折り目と直交する方向に沿って、あらかじめ樹脂を成形し濾材に載置し、接着させることで第1の突状部及び第2の突状部を設けた。濾材の反対側の面に、同じ要領で、第3の突状部及び第4の突状部を設け、図2(b)に示すようなフィルタパックを作製した。突状部の寸法は下記表1の通りとした。突状部の断面の寸法等はいずれも、延在方向に一定とした。
【0038】
【表1】
【0039】
次いで、折り畳んだ濾材を、アルミニウム製枠材で囲み、シール材及び接着剤を用いて濾材との間を封止して枠体を組み立て、エアフィルタを作製した(実施例)。
【0040】
一方、上記突状部の代わりに、図2(a)に示す形態の間隔保持材を、ガンを用いて塗布して形成した点を除いて、実施例と同様のフィルタパックを作製した。間隔保持材は、山折りされた折り目から谷側の端までの長さ72mm、幅2.0mm、突出高さ1.0mm、断面形状は半円形状であった。折り目の両側に延在する部分の長さは等しかった。次いで、実施例と同じ要領で枠体を組み立て、実施例と同じ外寸のエアフィルタを作製した(比較例)。
なお、濾材を折り畳むときに、プリーツ間隔が狭まる方向に濾材に加える力の大きさは、実施例と比較例とで同じであった。
【0041】
作製したエアフィルタを用いて、56m3/分の風量で通風した時の圧力損失を、差圧計を用いて測定したところ、実施例は104Pa、比較例は122Paであった。この結果から、第2の突状部の先端部が濾材の第1の延在部に当接し、第2の突状部の延在方向の途中の位置で第1の突状部と当接するよう、突状部を設けることで、圧力損失を低減できることがわかる。
【0042】
また、作製したエアフィルタにおいて、プリーツの数は、実施例が25、比較例が60であった。また、濾材の面積は、実施例が1.788m2、比較例が4.290m2であった。この結果から、第2の突状部の先端部が濾材の第1の延在部に当接し、第2の突状部の延在方向の途中の位置で第1の突状部と当接するよう、突状部を設けることで、プリーツ間隔を広げることができ、その結果、濾材面積を低減できることがわかる。
【0043】
以上、本発明のエアフィルタ及びフィルタパックについて詳細に説明したが、本発明のエアフィルタ及びフィルタパックは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
1 エアフィルタ
3 フィルタパック
5 枠体
11 濾材
13 間隔保持材
14 第1の突状部
15 第2の突状部
15a 第2の突状部の先端部
15b 第2の突状部の途中の位置
16 連結部
18 第3の突状部
19 第4の突状部
図1
図2
図3
図4
図5