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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20220518BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A47J27/00 109A
H04M11/00 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017233967
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019098004
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 裕一
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-310431(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045706(WO,A1)
【文献】特開2008-146196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段と、
通信ネットワークとの接続を中継するルータと通信可能な通信手段と、を備え、
前記制御手段は、前記通信ネットワークに接続されたサーバーに蓄積された設定データに基づく炊飯条件により前記加熱手段を制御し、前記設定データは、同じ型の炊飯器を使用した他の使用者の共有設定データに基づいて設定される構成とし
前記炊飯条件は、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定に基づいて設定可能である構成とし、
少なくとも前記炊飯条件の情報、および、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定の値を示す炊き上げ設定表の情報を保存する記憶手段と、
前記炊き上げ設定表を、前記ルータと通信可能な携帯型情報端末装置に表示される設定画面に表示させることができるように、前記記憶手段に保存された前記炊き上げ設定表の情報を前記通信手段に出力する出力手段と、をさらに備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記共有設定データのうち使用者が指定した米の銘柄に関する共有設定データから、使用頻度の高い炊飯条件の設定領域を抽出して、前記設定領域の範囲内で前記設定データが設定される構成としたことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記設定領域の範囲内で、使用者が任意の炊飯条件をさらに設定可能である構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯条件は、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定に加え、炊飯行程の設定に基づいて設定可能である構成とし、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定と、前記炊飯行程の設定との間に所定の相関関係がある構成としたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
使用者が、前記他の使用者の特定の一人がおすすめする前記設定データを選択することができる構成としたことを特徴とする請求項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記出力手段が、前記サーバーに蓄積可能な前記設定データの情報を、使用者の評価の情報とともに前記通信手段に出力し、前記設定データの情報および前記使用者の評価の情報を前記通信ネットワークにアップロードするように構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物をご飯に炊き上げる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米の銘柄に応じて炊き分けを行う炊飯器が提案されている。例えば、特許文献1に開示される電気炊飯器では、予め米の銘柄を登録しておき、銘柄選択手段で選択された米の銘柄に応じて、炊き上げ工程において付与する熱量(電力)を設定し、設定された熱量に基づいて、制御手段で炊飯手段を制御することにより、銘柄ごとの炊き分けを行うようにしている。
【0003】
特許文献2に開示される炊飯器では、無線通信端末から使用者が毎年の米の出来栄えに適した所望の炊飯プログラムを選択して、炊飯器を買い替えることなく、毎年最新のシーケンスで炊飯できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-77352号公報
【文献】特開2015-66065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米は、米の銘柄によって食味や組織の硬さ等の物性が異なる上に、同じ銘柄であっても、産地や収穫時期、精米時期等によって水分含有率や硬さ、粘度等の特性が変わる。さらに、炊き上がり状態でのご飯のかたさと食感の好みは、年齢や各人の嗜好により多種多様である。したがって、炊飯器には多くの炊飯条件を設定可能なことが益々求められており、特に自分の好みに合わせてより細かく炊飯条件を設定したいという使用者の要望にも応えなければならない。
【0006】
上記特許文献1および特許文献2に開示された構成では、米の銘柄や出来栄えに応じた炊飯条件は固定されており、使用者の好みに合うよう炊飯条件を細かく設定変更することができない。さらに、炊き分けの炊飯条件が固定されていて予め炊飯器に登録する必要があるため、使用者の炊飯条件を選択する手間を考えると、実用化される製品においては、炊飯条件はせいぜい150通り程度とするのが限界であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、炊飯器をインターネット網等の通信ネットワークに接続し、他の使用者との共有設定データに基づいて抽出されたおすすめの設定領域の範囲内で、使用者の好みに応じた炊飯条件を設定することができ、また他の使用者と同じ炊飯条件を試すことができる炊飯器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するため、被調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、通信ネットワークとの接続を中継するルータと通信可能な通信手段と、を備え、前記制御手段は、前記通信ネットワークに接続されたサーバーに蓄積された設定データに基づく炊飯条件により前記加熱手段を制御し、前記設定データは、同じ型の炊飯器を使用した他の使用者の共有設定データに基づいて設定される構成とし、前記炊飯条件は、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定に基づいて設定可能である構成とし、少なくとも前記炊飯条件の情報、および、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定の値を示す炊き上げ設定表の情報を保存する記憶手段と、前記炊き上げ設定表を、前記ルータと通信可能な携帯型情報端末装置に表示される設定画面に表示させることができるように、前記記憶手段に保存された前記炊き上げ設定表の情報を前記通信手段に出力する出力手段と、をさらに備えたことを特徴とする炊飯器を提供する。
【0009】
前記炊飯器は、前記共有設定データのうち使用者が指定した米の銘柄に関する共有設定データから、使用頻度の高い炊飯条件の設定領域を抽出して、前記設定領域の範囲内で前記設定データが設定される構成とする場合がある。
【0010】
前記炊飯器は、前記設定領域の範囲内で、使用者が任意の炊飯条件をさらに設定可能である構成とする場合がある。
【0011】
前記炊飯器は、前記炊飯条件は、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定に加え飯行程の設定に基づいて設定可能である構成とし、前記炊き上がり状態でのかたさと食感の設定と、前記炊飯行程の設定との間に所定の相関関係がある構成とする場合がある。
【0012】
使用者が、前記他の使用者の特定の一人がおすすめする前記設定データを選択することができる構成とする場合がある。
【0013】
前記炊飯器は、前記出力手段が、前記サーバーに蓄積可能な前記設定データの情報を、使用者の評価の情報とともに前記通信手段に出力し、前記設定データの情報および前記使用者の評価の情報を前記通信ネットワークにアップロードするように構成される場合がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炊飯器によれば、炊飯器をインターネット網等の通信ネットワークに接続し、他の使用者と設定データおよび評価を共有する構成とすることで、従来に比べて非常に多くの炊飯条件の中から、米の銘柄および自分の好みに合う炊飯条件を設定することができ、また例えば有名な料理家等が提案する最新の炊飯条件を試すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の縦断面図である。
図2】同上、炊飯器の構成を示すブロック図である。
図3】同上、炊飯器の使用例を示す概念図である。
図4】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した炊飯器の炊飯メニューの選択画面を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1に係る炊飯器において、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した「銘柄別おすすめ炊飯」メニューの設定画面を示す図である。
図6】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した米の銘柄選択およびかたさと食感選択画面を示す図である。
図7】同上、米の銘柄毎の設定領域の一例を示す図である。
図8】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した炊飯行程の条件設定画面を示す図である。
図9】同上、炊飯器の表示部の表示例を示す図である。
図10】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した炊飯器の炊飯キーを押す指示の画面を示す図である。
図11】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した炊飯終了までの残り時間を表示する画面を示す図である。
図12】同上、炊飯器の表示部の表示例を示す図である。
図13】同上、炊飯器の使用例を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施の形態2に係る炊飯器において、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した他の使用者がおすすめする設定条件についてのコメントを含む評価を示す図である。
図15】同上、携帯型情報端末装置の表示画面に表示した他の使用者Aの設定データとその設定変更画面を示す図である。
図16】同上、炊飯器の使用例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の炊飯器の好ましい実施の形態について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
炊飯器全体の構成を図1に基づいて説明する。1は、有底状の本体、2は本体1の上面開口を開閉自在に覆う蓋であり、当該本体1と蓋2とにより炊飯器の外郭が形成される。蓋2の後部には本体1との連結部となるヒンジ3が設けられる。蓋2の前部上面に設けたフックボタン4を押動操作することで、蓋2と本体1との係合が解除され、蓋2がヒンジ3を回転中心として自動的に開く。
【0018】
本体1には、有底筒状で非磁性材料等からなる鍋収容体5が形成される。当該鍋収容体5には、米や水等の被調理物を収容する有底筒状の鍋としての内釜6が着脱自在に設けられる。内釜6は、その側面がR状に湾曲し、且つ上端開口よりも中央胴部が広い面積を有するいわゆる丸釜形状となっている。内釜6の上端周囲には、外周側に延出する円環状のフランジ部7が形成される。フランジ部7は、鍋収容体5に内釜6を収容したときに鍋収容体5の上面に載置され、鍋収容体5と内釜6との間に隙間を形成した状態で、内釜6が鍋収容体5に吊設されるようになっている。ここでの内釜6は、熱伝導性の良いアルミニウムを主材料とした母材8の外面に、フェライト系ステンレス等の磁性金属材料からなる発熱体9を接合して構成される。
【0019】
11は、内釜6の発熱体9を電磁誘導加熱する加熱コイルである。加熱手段としての加熱コイル11は、内釜6の発熱体8に対向して、導体であるリッツ線を螺旋状に巻回して構成され、鍋収容体5の外面底部に配置された第1コイル部11Aと、鍋収容体5の外面下側部に配置された第2コイル部11Bとにより構成される。これにより、加熱コイル11に高周波電流を供給すると、加熱コイル11から発生する交番磁界によって内釜6の発熱体9が発熱し、炊飯時や保温時に内釜6ひいては内釜6内の被調理物が加熱される。
【0020】
鍋収容体5の底部中央に設けた開口部には、内釜6の外面底部と弾発的に接触するように、内釜温度検出手段としての内釜温度センサ12が配置される。内釜温度センサ12は、内釜6の温度を検知するもので、加熱コイル11による内釜6の底部の加熱温度を主に温度管理する構成となっている。
【0021】
蓋2の上面には、蓋開操作体としてのフックボタン4の他に、表示部15や操作部16を含むパネルとしての操作パネル17や、被調理物への加熱に伴い内釜6内部で発生した蒸気を、炊飯器の外部に放出するための蒸気口19等が配設される。また、蓋2の下側には、蓋2の下部部材としての内蓋組立体21が配設される。また、内蓋組立体21は、内釜6の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有する金属材料からなる内蓋22と、内釜6と内蓋22との間をシールするために、当該内蓋22の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン23と、内釜6の内圧力を調整する調圧部24とを備えている。環状に形成された蓋パッキン23は、蓋2を閉じた際に、内釜6のフランジ部7上面に当接して、この内釜6と内蓋22との間の隙間を塞ぎ、内釜6から発生する蒸気を密閉する。また、蒸気口19と調圧部24は蓋2の内部で連通しており、これらの蒸気口19や調圧部24により、内釜6内で発生した蒸気を蒸気口19から外部へ放出する蒸気排出機構が形成される。
【0022】
調圧部24は、内釜6の内部と蒸気口19との間の蒸気通路25を開閉する調圧弁26が設けられる。この調圧弁26は、ボール状で、蓋2の内部に設けたソレノイド27と連動して作動する。すなわち、内釜6内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気通路25を開放し、内釜6内を加圧または減圧状態にする場合には蒸気通路25を閉塞するように、ソレノイド27が調圧弁26を転動させる。
【0023】
28は、蓋2を本体1に閉じた状態で、内釜6内を通常の大気圧よりも低くするために設けた減圧手段である。この減圧手段28は、蓋2の後部に設けた減圧駆動源としての減圧ポンプ29の他に、蓋2の内部において、減圧ポンプ29と内釜6の内部との間を連通する管状の経路(図示せず)と、その経路を開閉する電磁弁30(図3を参照)とにより構成される。本実施の形態では、2個の減圧ポンプ29を蓋2の内部に設けているが、減圧ポンプ29を本体1の内部に設けてもよく、またその個数も2個に限定されない。
【0024】
本実施の形態では、内釜6を鍋収容体5に収容し、蓋2を閉じた状態から減圧ポンプ29を起動させると、電磁弁30により経路を開放する。内釜6内部の空気が開放された経路および減圧ポンプ29を通って本体1の外部に排出され、密閉した内釜6内部の圧力が低下する。また、内釜6内部の圧力が常圧である大気圧よりも一定値だけ下がった場合には、減圧ポンプ29の動作を停止し、電磁弁30により経路を閉塞して、内釜6内部を減圧状態に保つ。さらに、内釜6内部を減圧状態から大気圧に戻す場合には、減圧ポンプ29の動作を停止し、電磁弁30により経路を開放する。つまり、本実施の形態における減圧手段28は、内釜6内部を減圧状態から常圧に戻す圧力戻し手段31としての構成を兼用している。
【0025】
内釜6への加熱を行う加熱手段10として、前述した内釜6の主に側面下部から底部を加熱する加熱コイル11の他に、内釜6の側面上部を主に加熱する側部ヒータ33が、鍋収容体5の外面上側部に配置される。蓋2の内部には、内蓋22を加熱する加熱手段10としての蓋ヒータ34と、蓋ヒータ34による内蓋22の温度管理を行うためのサーミスタ式の蓋温度センサ35がそれぞれ設けられる。
【0026】
41は、本体1の内部後方に設けられ、マイクロコンピュータ(マイコン)等を基板に搭載して構成される制御手段である。制御手段41は、加熱コイル11を駆動させるための発熱素子42等を備える。
【0027】
本実施形態の炊飯器の構成を図2に示すブロック図に基づいて説明する。
【0028】
制御手段41の制御系統について、同図を参照しながら説明する。同図において、制御手段41は加熱手段10を制御する。すなわち、制御手段41は、内釜温度センサ12や蓋温度センサ35からの各温度検知信号と、操作部16からの操作信号を受けて、炊飯時および保温時に内釜6を加熱する加熱手段10としての加熱コイル11や側部ヒータ33と、蓋2を加熱する加熱手段10としての蓋ヒータ34を各々制御する。制御手段41はまた、前述したソレノイド27や減圧ポンプ29、電磁弁30の動作を各々制御し、さらには表示部15の表示を制御する。特に本実施の形態の制御手段41は、内釜温度センサ12の検知温度に基づいて主に加熱コイル11を制御して内釜6の底部を温度管理し、蓋温度センサ35の検知温度に基づいて主に蓋ヒータ34を制御して内蓋22を温度管理するようになっている。
【0029】
制御手段41は、記憶手段44に記憶された設定データの炊飯条件に基づくプログラムの制御シーケンス上の機能として、操作部16からの炊飯開始の指示を受けて、内釜6に投入した米の吸水を促進させるひたしと、被調理物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる加熱と、被調理物の沸騰状態を継続させる沸騰継続と、被調理物をドライアップ状態のご飯に炊き上げる炊き上げと、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらしの各行程を順に実行して、内釜6内部の被調理物に対する加熱を制御する炊飯制御手段81を備える。制御手段41はさらに、内釜6内部のご飯を所定の保温温度に保つように制御する保温制御手段82を備える。
【0030】
本実施の形態の炊飯制御手段81は、ひたし行程の期間中に、内釜6内部の圧力が常圧未満の減圧と常圧とを繰り返すように、減圧手段28と圧力戻し手段31を兼用する減圧ポンプ29や開閉弁30の動作を制御する圧力制御手段としての機能を備えている。また保温制御手段82は、保温温度が安定した状態で、内釜6内部が常圧未満の圧力に維持されるように、減圧ポンプ29や開閉弁30の動作を制御する減圧制御手段としての機能を備えている。
【0031】
図2において、炊飯器は、図3に示すインターネット網等の通信ネットワーク54との接続を中継するルータ53と通信可能な通信手段47を備える。使用者51の携帯型情報端末装置52とルータ53との間は、無線プロトコルを使用して連結されればよい。携帯型情報端末装置52は、例えば、Wi-Fi(登録商標)ルータ53と信号を送受信して、通信ネットワーク54に設定データ等の情報をアップロードおよびダウンロードしたり、炊飯器100に情報を送信したりすることができる。また、携帯型情報端末装置52は、後述する設定画面等を表示し、使用者51が炊飯条件等の設定の操作を行うことができる。
【0032】
55は通信ネットワーク54に情報をアップロードおよびダウンロードできるように接続されたサーバーである。サーバー55には、使用者52がWi-Fiルータ53を介して通信ネットワーク54にアップロードした設定データ等の情報をダウンロードして保存することができる。同様にして、炊飯器100と同じ型の炊飯器を使用している複数の他の使用者A,B,C,・・・によって通信ネットワーク54にアップロードされた設定データがサーバー55にダウンロードされて蓄積され、共有設定データが形成される。
【0033】
45は、通信手段47からの炊飯条件等の情報を入力する入力手段であり、入力された情報は記憶手段44に一旦保存される。46は、記憶手段44に保存された炊飯条件等の情報を通信手段47に出力する出力手段である。
【0034】
炊飯器100の具体的な動作の一例について説明する。
【0035】
携帯型情報端末装置52としてタブレット端末を使用した場合の表示画面71の一例と、その表示画面71を使用した炊飯条件の設定方法について、図4~10を参照しながら説明する。
【0036】
図4は携帯型情報端末装置52の表示画面71に表示されたメニュー画面である。72は炊飯条件を任意に設定可能な「わたしのこだわり炊飯」、73は米の銘柄別に炊飯条件を設定可能な「銘柄別おすすめ炊飯」、74は他の使用者の共有設定データに基づいて炊飯条件を設定可能な「みんなのこだわり炊飯」のメニューを示すものである。本実施の形態1では「銘柄別おすすめ炊飯」について説明し、「みんなのこだわり炊飯」については実施の形態2において説明する。
【0037】
メニュー画面で「銘柄別おすすめ炊飯」73を選択すると、図5の設定画面に移る。当該設定画面では、まずお米の銘柄76を選択する。米の銘柄選択ボタン77を押すと、例えば図6に示すような銘柄選択一覧表85が表示され、この表から調理する米の銘柄を選択する。銘柄選択一覧表85は、新種の銘柄が出た場合であっても、通信ネットワーク54を介してダウンロードして、常に最新の状態になるよう更新することができるようにしてもよい。
【0038】
図5では、「コシヒカリ」を選択することで、サーバー55に蓄積された共有設定データに基づいて設定された設定データが表示されている。共有設定データは、同じ型の炊飯器を使用した他の使用者A,B,C,・・・の設定データである。本実施の形態では、上記設定データに基づく炊飯条件は、一例として、炊き上がり状態でのかたさ(「お好みのかたさ」78)と食感(「お好みの食感」80)の設定に基づいて設定される。61は、この炊き上がり状態でのかたさと食感の設定値を示す炊き上げ設定表であり、横軸にかたさ、縦軸に食感を表示している。83は選択されている炊飯条件による炊き上がりの設定位置を示すものであり、本実施の形態では、左から右にいくほどかたさはかためになり、上にいくほど食感がもちもち、下にいくほど食感がしゃっきりとする設定としている。
【0039】
設定データは、共有設定データのうち使用者51が指定した米の銘柄に関する共有設定データから、AI処理により使用頻度の高い炊飯条件の設定領域を抽出して、設定領域の範囲内で設定される。設定領域の一例を図7に示す。例えば、コシヒカリの設定領域62は、かたさおよび食感ともに中央付近に位置し、ゆめぴりかの設定領域63は、かたさはやわらかめ、食感はもちもちの付近に位置し、ななつぼしの設定領域64は、かたさはかため、食感はしゃっきりの付近に位置するなどとして抽出される。図5に戻り、米の銘柄を「コシヒカリ」と選択したことで、設定データは、コシヒカリの設定領域62内で設定されることから、79のかたさは「ふつう」、81の食感も「ふつう」と設定される。
【0040】
サーバー55に蓄積可能な設定データは、通信ネットワーク54にアップロードすることができる。このアップロードは、記憶手段44に保存された情報を出力手段45によって出力し、通信手段47を介して行われる。この際、使用者51や他の使用者A,B,C,・・・の評価も一緒にアップロードすることもできる。さらに、アップロードする際には、各使用者51、A,B,C,・・・の年齢や家族構成等を一緒にアップロードするようにしてもよい。これらのアップロードは、携帯型情報端末装置52の表示画面71に表示される設定画面において、「設定を提案」等のボタン(図示せず)を設け、当該ボタンを押すことで、Wi-Fiルータ53を介して通信ネットワーク54に接続し、サーバー55に保存されるようにすることで、実行される。
【0041】
上記設定領域の範囲内で、使用者51が任意の炊飯条件をさらに設定することもできる。例えば、「お好みのかたさ」78の設定ボタン79を押すと、「やわらかめ」や「やややわらかめ」、「ややかため」、「かため」等と表示が変わり、好みのかたさを設定することが可能である。「お好みの食感」80も設定ボタン81を押すことにより設定変更が可能である。これらの設定変更に連動して、炊き上げ設定表61の設定位置83も、上記のコシヒカリの設定領域62内で移動する。
【0042】
図5において決定ボタン82を押すと、図8の設定画面に移る。ここでは、必要に応じて炊飯行程の設定に基づいて炊飯条件を設定することができる。図8の例では、「ひたし」行程91において、「火力」94および「時間」95を任意に設定可能である。さらに、「加熱」行程92および「むらし」行程93では、「火力」94、「時間」95および「圧力」96を任意に設定可能である。「火力」94では加熱手段10による加熱の強弱を、「時間」95では各行程の処理時間の長短を設定することができる。「圧力」96では、「あり」または「なし」を選択可能であり、「あり」を選択した場合には、内釜6内を通常の大気圧よりも高くして各行程が実行される。これらの炊飯行程の設定の変更に連動して、炊き上げ設定表61の設定位置83も、上記のコシヒカリの設定領域62内で移動する。
【0043】
炊き上がり状態でのかたさと食感の設定と、炊飯行程の設定との間には所定の相関関係を設けることができる。この相関関係に基づき、炊き上げ設定表61の設定位置83も、上記のコシヒカリの設定領域62内で移動し、具体的な炊飯条件が設定される。すなわち、好みの炊き上がり状態でのかたさと食感の設定を変更することで当該変更に基づき炊飯行程が適切に変更され、また逆に、炊飯行程の設定を変更することで、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定が適切に変更されるので、目標とする炊き上がりを確実に精度よく実現することができる。相関関係は例えば、ひたし行程での火力および時間の強弱および長短と炊き上がり状態でのご飯のかたさおよび食感との関係、加熱行程での火力時間の強弱および長短ならびに減圧の有無と炊き上がり状態でのご飯のかたさおよび食感との関係、むらし行程での火力時間の強弱および長短ならびに圧力の有無と炊き上がり状態でのご飯のかたさおよび食感との関係等である。
【0044】
図8の表示画面71における97は設定中の設定データの設定番号であり、炊飯器への送信ボタン98を押すと、当該設定データに基づく炊飯条件がWi-Fiルータ53を介して炊飯器100に送信される。炊飯器100の表示部15には、図10に示すように、携帯型情報端末装置52で設定した設定データの設定番号が表示され、当該設定データが間違いなく炊飯器100に送信されたことを確認することができる。
【0045】
その後、携帯型情報端末装置52の表示画面71の送信ボタン98には、例えば「炊飯器の炊飯キーを押してください」といったメッセージが表示される。炊飯器100の炊飯キー101を押すと、炊飯が開始され、図11および図12に示すように、携帯型情報端末装置52の表示画面71の送信ボタン98、および、炊飯器100の表示部15に、それぞれ炊飯終了までの残り時間が表示される。
【0046】
以上のような構成の本実施の形態1に係る炊飯器100の動作について、図13に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0047】
最初に、ステップS11において携帯型情報端末装置52で米の銘柄を選択する。ステップS12において、選択された米の銘柄について共有設定データに基づいて設定された設定データをダウンロードする。ダウンロードした設定データで問題ない場合には、その設定データに基づく炊飯条件で炊飯するよう、ステップS13で炊飯器100に炊飯条件を送信する。必要に応じて、ステップS15において、炊飯条件および/または評価コメントをアップロードする。アップロードされたデータは、サーバー55に共有設定データとして蓄積され、AI処理による各米の銘柄に応じた設定領域の導出に使用されることができる。
【0048】
ダウンロードした設定データから、使用者51の好みに合わせて炊飯条件を変更したい場合には、ステップS14で選択した米の銘柄毎に設定された設定領域の範囲内で炊飯条件を設定変更した後、その設定データに基づく炊飯条件で炊飯するよう、ステップS13で炊飯器100に炊飯条件を送信する。必要に応じて、ステップS15において、炊飯条件および/または評価コメントをアップロードする。アップロードされたデータは、サーバー55に共有設定データとして蓄積され、AI処理による各米の銘柄に応じた設定領域の導出に使用されることができる。
【0049】
尚、炊飯条件および/または評価コメントのアップロードは、炊飯器100へ炊飯条件を送信した後にも実行可能なようにしてもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、炊飯器100が、被調理物を加熱する加熱手段10と、加熱手段10を制御する制御手段41と、通信ネットワーク54との接続を中継するルータ53と通信可能な通信手段47と、を備え、制御手段は41、通信ネットワーク54に接続されたサーバー55に蓄積された設定データに基づく炊飯条件により加熱手段10を制御し、設定データは、同じ型の炊飯器を使用した他の使用者A,B,C,・・・の共有設定データに基づいて設定される構成となっている。
【0051】
この場合、炊飯器100をインターネット網等の通信ネットワーク54に接続し、他の使用者A,B,C,・・・と設定データおよび評価を共有する構成とすることで、従来に比べて非常に多くの炊飯条件(例えば約1,500通り)の中から、米の銘柄および自分の好みに合う炊飯条件を設定することができる。また、共有設定データを継続して更新することで、データの質および量をともにより充実させることができる。
【0052】
本実施の形態の炊飯器100は、共有設定データのうち使用者51が指定した米の銘柄に関する共有設定データから、使用頻度の高い炊飯条件の設定領域62、63、64を抽出して、設定領域62、63、64の範囲内で設定データが設定される構成とする場合がある。
【0053】
この場合、米の銘柄毎に適した炊飯条件を容易に試すことができる。
【0054】
本実施の形態の炊飯器100は、設定領域62、63、64の範囲内で、使用者51が任意の炊飯条件をさらに設定可能である構成とする場合がある。
【0055】
この場合、米の銘柄毎に適した炊飯条件の中から、使用者51が自分の好みに合わせた炊飯条件を設定することができる。
【0056】
本実施の形態の炊飯器100は、炊飯条件は、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定、および/または、炊飯行程の設定に基づいて設定可能である構成とする場合がある。
【0057】
この場合、使用者51が自分の好みの炊き上がりに合わせて炊飯条件を設定ことができる。
【0058】
本実施の形態の炊飯器100は、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定と、炊飯行程の設定との間に所定の相関関係がある構成とする場合がある。
【0059】
この場合、好みの炊き上がり状態でのかたさと食感を確実に精度よく実現する炊飯行程を設定することができる。また逆に、炊飯行程の設定を変更することで、炊き上がり状態でのかたさと食感の設定が適切に変更されるので、目標とする炊き上がりを確実に精度よく実現することができる。
【0060】
本実施の形態の炊飯器100は、サーバー55に蓄積可能な設定データを、使用者の評価とともに通信ネットワーク54にアップロードする出力手段46をさらに備えるとする場合がある。
【0061】
この場合、通信ネットワーク54に接続可能な使用者51が、設定データとその評価およびコメントを参考にして、より自分の好みに合った炊飯条件を設定することができるようになる。
【0062】
(実施の形態2)
【0063】
本実施の形態2では、図4の携帯型情報端末装置52の表示画面71のメニュー画面に表示されるメニューのうち、「みんなのこだわり炊飯」74について説明する。
【0064】
メニュー画面で「みんなのこだわり炊飯」74を選択すると、例えば図14に示すような共有設定データ選択画面に移る。当該選択画面には、他の使用者A,B,C,・・・が通信ネットワーク54を介してアップロードし、各使用者のおすすめの共有設定データとともにサーバー55に蓄積されたコメントを含む評価106、107、108が表示されている。
【0065】
使用者51は、これらの評価106、107、108を参考にして自分の好みに合いそうな設定データを選択することができる。例えば、図14においてAさんのコメント欄106にある設定ボタンを押すと、図15に示すようなAさんの設定画面に移る。この設定画面は、実施の形態1で説明した図8と同様の機能を有する設定画面であり、炊飯行程の設定変更を行うことができる。以降の設定画面とその操作および機能は、実施の形態1で説明した内容と同様であり、図9図12に示すものと同じ流れで設定から炊飯まで実行される。
【0066】
以上のような構成の本実施の形態2に係る炊飯器100の動作について、図16に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0067】
最初に、ステップS21において、サーバー55に蓄積された共有設定データから好みの設定データをダウンロードする。ダウンロードした設定データで問題ない場合には、その設定データに基づく炊飯条件で炊飯するよう、ステップS22で炊飯器100に炊飯条件を送信する。必要に応じて、ステップS24において、炊飯条件および/または評価コメントをアップロードする。アップロードされたデータは、サーバー55に共有設定データとして蓄積され、他の使用者A,B,C,・・・が通信ネットワーク54を介してサーバー55にアクセスし、ダウンロードすることができる。
【0068】
ダウンロードした設定データから、使用者51の好みに合わせて炊飯条件を変更したい場合には、ステップS23で選択した設定データから炊飯条件を微調整し、その変更後の炊飯条件で炊飯するよう、ステップS22で炊飯器100に炊飯条件を送信する。必要に応じて、ステップS24において、炊飯条件および/または評価コメントをアップロードする。アップロードされたデータは、サーバー55に共有設定データとして蓄積され、他の使用者A,B,C,・・・が通信ネットワーク54を介してサーバー55にアクセスし、ダウンロードすることができる。
【0069】
尚、炊飯条件および/または評価コメントのアップロードは、炊飯器100へ炊飯条件を送信した後にも実行可能なようにしてもよい。
【0070】
以上のように、本実施の形態では、炊飯器100が、被調理物を加熱する加熱手段10と、加熱手段10を制御する制御手段41と、通信ネットワーク54との接続を中継するルータ53と通信可能な通信手段47と、を備え、制御手段は41、通信ネットワーク54に接続されたサーバー55に蓄積された設定データに基づく炊飯条件により加熱手段10を制御し、設定データは、同じ型の炊飯器を使用した他の使用者A,B,C,・・・の共有設定データに基づいて設定される構成となっており、特に使用者51が、他の使用者A,B,C,・・・がおすすめする設定データを選択することができる構成となっている。
【0071】
この場合、例えば有名な料理家等が提案する最新の設定データを通信ネットワーク54にアップロードしておくことで、一般家庭で当該最新の設定データに基づく炊飯条件をそっくり試すことができるようになる。
【0072】
その他、本実施の形態2に係る炊飯器100は、実施の形態1と同様な構成をとることができ、実施の形態1の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。例えば、炊飯器100と携帯型情報端末装置41との間のデータの送受信方法は、Wi-Fiルータを介したものに限定されない。また、設定データのための選択肢として、米の銘柄以外にも、米の産地や収穫時期、精米時期等を選択することによって炊飯条件を設定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 加熱手段
41 制御手段
46 出力手段
47 通信手段
51 使用者
53 ルータ
54 通信ネットワーク
55 サーバー
62、63、64 設定領域
100 炊飯器
図1
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