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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20220518BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20220518BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J37/06 316
F24C3/12 G
H05B6/12 335
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018033286
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019146754
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敬彦
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107766(JP,A)
【文献】特開2002-051907(JP,A)
【文献】特開2016-054929(JP,A)
【文献】特開2017-225580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/07
F24C 3/00-3/14
F24C 7/00;7/04-7/06
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋が装着自在な調理容器を上方から加熱する上部バーナ及び下方から加熱する下部バーナと、前記調理容器の温度を検知する温度センサと、前記上部バーナ及び下部バーナを制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部は、前記温度センサで検知された前記調理容器の検知温度に基づいて、前記調理容器に載置された食材の量を判定し、判定した食材の量及び前記調理容器の前記検知温度に基づいて、前記調理容器への前記蓋の装着の有無を判別する、
ことを特徴とするグリル。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記下部バーナのみによって前記調理容器を加熱すると共に、前記調理容器の前記検知温度に基づいて、前記食材の量を判定する、
請求項1に記載のグリル。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記上部バーナによる前記調理容器の加熱を開始すると共に、前記調理容器の前記検知温度及び前記判定した食材の量に基づいて、前記蓋の装着の有無を判別する、
請求項2に記載のグリル。
【請求項4】
前記運転制御部は、設定時間に亘って、前記調理容器の前記検知温度が目標温度になるように、前記下部バーナによる加熱を制御するものであり、
前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記設定時間を長くする、
請求項1ないし3のいずれかに記載のグリル。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記目標温度を低くする、
請求項4に記載のグリル。
【請求項6】
前記運転制御部は、設定時間に亘って、前記調理容器の前記検知温度が目標温度になるように、前記下部バーナによる加熱を制御するものであり、
前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記上部バーナの火力を強くする、
請求項1ないし3のいずれかに記載のグリル。
【請求項7】
調理メニューを選択する設定操作部と、
前記運転制御部によって制御される報知部とを備え、
前記運転制御部は、前記設定操作部で選択された調理メニュー及び前記蓋の装着の有無の判別の結果に基づいて、前記報知部を制御するものであり、
前記運転制御部は、選択された前記調理メニューが、前記調理容器に前記蓋を装着した方が好ましい調理メニューであるのに対して、蓋の「装着無し」と判別された場合、あるいは、選択された前記調理メニューが、前記調理容器に前記蓋を装着しない方が好ましい調理メニューであるのに対して、蓋の「装着有り」と判別された場合に、前記報知部を制御して、選択された調理メニューに、蓋の装着の有無が対応するように報知する、
請求項1ないしのいずれか一項に記載のグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋が装着自在な調理容器を装填できるグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記グリルとしては、例えば、特許文献1に示されているように、グリル庫に装填された調理容器に蓋が装着されているか否かを専用のセンサで検知し、蓋が装着されていないことが認識されると報知するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-22073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構造では、蓋の存否を検知する専用のセンサを配備するために、部品点数が多くなってコストアップを招くのみならず、グリル庫の内部にセンサや配線の設置スペースを確保する必要が生じ、設計の自由度を低下させるものであった。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、専用のセンサを要することなく、既存の検知手段を用いて蓋装着の有無を検知することができるグリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0007】
(1)本発明に係るグリルは、蓋が装着自在な調理容器を上方から加熱する上部バーナ及び下方から加熱する下部バーナと、前記調理容器の温度を検知する温度センサと、前記上部バーナ及び下部バーナを制御する運転制御部とを備え、前記運転制御部は、前記温度センサで検知された前記調理容器の検知温度に基づいて、前記調理容器に載置された食材の量を判定し、判定した食材の量及び前記調理容器の前記検知温度に基づいて、前記調理容器への前記蓋の装着の有無を判別する。
【0008】
本発明によると、加熱制御を行うために設けられている、調理容器の温度を検知する温度センサからの検知温度に基づいて、調理容器への蓋の装着の有無を判別するので、蓋の装着の有無を検知するための専用のセンサが不要であり、部品点数少なく安価に実施することができる。
更に、調理容器の温度を検知する温度センサからの検知温度に基づいて、調理容器に載置されている食材の量を判定し、判定した食材の量及び調理容器の温度を検知する温度センサからの検知温度に基づいて、蓋の装着の有無を判別するので、食材の量に多少に拘わらず、蓋の装着の有無を判別することができる。
【0011】
)本発明の一実施態様では、前記運転制御部は、前記下部バーナのみによって前記調理容器を加熱すると共に、前記調理容器の前記検知温度に基づいて、前記食材の量を判定する。
【0012】
食材を載置した調理容器を下部バーナのみで加熱すると、上部バーナで加熱する場合のような蓋の装着の有無による影響は殆ど無い一方、食材量が多くなるほど食材に吸収される熱量が大きくなり、調理容器の温度上昇が緩慢になる。従って、この実施態様によると、調理容器を下部バーナのみで加熱したときの調理容器の温度上昇勾配(一定時間における温度差)に基づいて、食材の量を判定することができる。
【0013】
)本発明の他の実施態様では、前記運転制御部は、前記上部バーナによる前記調理容器の加熱を開始すると共に、前記調理容器の前記検知温度及び前記判定した食材の量に基づいて、前記蓋の装着の有無を判別する。
【0014】
調理容器を下部バーナのみで加熱して食材の量を判定した後、上部バーナによる加熱を開始すると、蓋が装着されているときには、上部バーナからの熱が蓋に吸収されることで、調理容器の温度上昇が、蓋が装着されていないときに比べて、緩慢になる。従って、この実施態様によると、上部バーナによる加熱を開始した後の調理容器の温度上昇勾配に基づいて、蓋の装着の有無を判別することができる。
【0015】
)本発明の更に他の実施態様では、前記運転制御部は、設定時間に亘って、前記調理容器の前記検知温度が目標温度になるように、前記下部バーナによる加熱を制御するものであり、前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記設定時間を長くする。
【0016】
この実施態様によると、運転制御部は、設定時間に亘って、前記調理容器の前記検知温度が目標温度になるように、前記下部バーナによる加熱を制御するので、自動調理を行うことができる。この自動調理において、蓋が装着されている場合には、上部バーナからの熱が食材に伝わり難くなるが、その分、蓋が装着されていない場合に比べて、設定時間を長くする、すなわち、加熱時間を長くするので、食材を十分に加熱して、良好な自動調理が可能となる。
【0017】
)本発明の他の実施態様では、前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記目標温度を低くする。
【0018】
蓋が装着されている場合には、蓋が装着されていない場合に比べて、設定時間を長くするが、この実施態様によると、下部バーナによる加熱が長く行われることにより生じる焼き過ぎを、目標温度を低く抑えることで防止することができ、一層良好な自動調理が可能となる。
【0019】
)本発明の更に他の実施態様では、前記運転制御部は、設定時間に亘って、前記調理容器の前記検知温度が目標温度になるように、前記下部バーナによる加熱を制御するものであり、前記運転制御部は、前記蓋の装着の有無の前記判別の結果に基づいて、前記蓋の「装着有り」と判別されたときには、「装着無し」と判別されたときに比べて、前記上部バーナの火力を強くする。
【0020】
この実施態様によると、蓋が装着されている場合には、上部バーナの火力を強くして、蓋が装着されていない場合と同一の設定時間に亘って加熱する。これによって、食材を上下から十分加熱することができ、設定時間を長くすることなく、良好な自動調理が可能となる。
【0021】
)本発明の他の実施態様では、調理メニューを選択する設定操作部と、前記運転制御部によって制御される報知部とを備え、前記運転制御部は、前記設定操作部で選択された調理メニュー及び前記蓋の装着の有無の判別の結果に基づいて、前記報知部を制御するものであり、前記運転制御部は、選択された前記調理メニューが、前記調理容器に前記蓋を装着した方が好ましい調理メニューであるのに対して、蓋の「装着無し」と判別された場合、あるいは、選択された前記調理メニューが、前記調理容器に前記蓋を装着しない方が好ましい調理メニューであるのに対して、蓋の「装着有り」と判別された場合に、前記報知部を制御して、選択された調理メニューに、蓋の装着の有無が対応するように報知する。
【0022】
この実施態様によると、調理容器に蓋を装着した方が好ましい調理メニュー、例えば、「魚の姿焼き」などの油分の多い食材の調理メニューを選択して、調理容器に蓋を装着することなく調理を開始した場合、あるいは、調理容器に蓋を装着しない方が好ましい調理メニュー、例えば、「トースト」を選択して、調理容器に蓋を装着して調理を開始した場合には、蓋を装着するように、あるいは、蓋を取り外すように、それぞれ報知されることになる。これによって、グリルの油分による汚れを低減し、あるいは、自動調理が良好に行われる。
【発明の効果】
【0023】
このように、本発明によれば、専用のセンサを必要とすることなく。既存の検知手段を用いて蓋の装着の有無を検知することができ、好適な加熱調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本発明の一実施形態に係るガスコンロの全体斜視図である。
図2図2図1のグリルの概略構成を示す縦断正面図である。
図3図3は蓋の斜視図である。
図4図4はグリルパンの斜視図である。
図5図5はグリル関連の制御構成を示すブロック図である。
図6図6は加熱に伴う調理容器の温度変化を示す図である。
図7図7は食材重量判定用の閾値及び蓋の装着の有無判別用の閾値の近似直線を示す図である。
図8図8は加熱処理形態を示すタイムチャートである。
図9図9は別実施形態の加熱処理形態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、ガスコンロに備えられたグリルに適用して、添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、ビルトイン型に構成されたガスコンロ1の上面左右には、それぞれ火力の異なった周知構造の2つコンロ部2が設置されている。このガスコンロ1の左右中央部位には、前方から開閉可能なグリル3が設けられ、かつ、ガスコンロ1の上面奥部には、グリル3で発生した燃焼ガスを排出する排気口4が設けられている。
【0027】
なお、本実施形態は、グリル3にのみ特徴を備えるものであるので、以下の説明では、コンロ部2に関する説明は省略する。
【0028】
図2に、前記グリル3を縦断した概略正面図が示されている。このグリル3は、ガスコンロ1の本体内の中央部に設けられるグリル庫5、このグリル庫5に前後にスライド出退可能に組み込まれた支持枠6、庫内上部に配備された上部バーナ7、及び、庫内下部に配備された下部バーナ8等を備えている。グリル庫5の前端開口は、図1に示すように、格納された支持枠6の前端壁に係合するグリル扉6aによって閉塞されるようになっている。
【0029】
なお、詳細には図示されていないが、前記支持枠6は、上下に開放された中抜き構造となっている。この支持枠6に、調理容器としてのグリルパン10を位置決め載置してグリル庫5に挿入することで、グリルパン10の上面及び下面が全面的に上部バーナ7及び下部バーナ8に臨むようになっている。
【0030】
下部バーナ8は、コンロ部2のバーナと同様な円形バーナが用いられ、その中央には、熱電対を利用した温度センサ11が、下方にスライド後退変位可能、かつ、上方にスライド復帰付勢して配備されている。この温度センサ11が、グリル庫内に装填されたグリルパン10の底面に弾性押圧されて、加熱に伴うグリルパン10の温度変化が検知されるようになっている。
【0031】
図4(a),(b)に示すように、グリルパン10として、底面が平坦なプレートパン10(A)と、底面が波型に形成された波型プレートパン10(B)とを使用することができる。食材wの種類や調理メニューに応じて選択したグリルパン10に、図3に示す蓋12を任意に載置装着してグリル庫5に装填することができるようになっている。
【0032】
蓋12は、鋼板を打抜きプレス加工して製造されたものであり、グリルパン10の周縁に載置されることで、食材から跳ね飛んだ油などの庫内への飛散を阻止する。また、蓋12の上面には、グリルパン10に載置された食材wに上部バーナ7からの輻射熱を直接に照射するための複数の開口12aが形成されている。
【0033】
図5に、グリル3に関連する制御構成を示すブロック図が示されている。マイクロコンピュータ等によって構成される運転制御部15には、グリルパン(調理容器)10の温度を検知する前記温度センサ11、グリル用設定操作部16、前記上部バーナ7及び下部バーナ8へのガス供給元を開閉する元ガス弁17、上部バーナ用ガス量調整弁18、下部バーナ用ガス量調整弁19、上部バーナ7での点火と着火確認を行う点火プラグ20と着火センサ21、下部バーナ8での点火と着火確認を行う点火プラグ22と着火センサ23、及び、各種の報知を電子音やモニターランプ表示、等で行う報知装置24が接続されている。
【0034】
運転制御部15は、グリル用設定操作部16での調理メニュー等の設定情報と調理容器用の温度センサ11からの検知温度に基づいて、上部バーナ7及び下部バーナ8の作動を制御すると共に、温度センサ11からの検知温度に基づいて、後述のように、グリル庫5に挿入されたグリルパン10に蓋12が装着されているか否かを判別する。
【0035】
なお、グリル用設定操作部16は、図1の仮想線で示すように、コンロ前面の右側に、前方への倒し込みによって突出して、操作面が露出されるよう装備されている。このグリル用設定操作部16によって、グリル3を用いた調理メニューの選択や各種設定をユーザーが任意に選択操作することができるようになっている。
【0036】
次に、温度センサ11からの検知温度に基づいて、グリル庫5に挿入されたグリルパン10に蓋12が装着されているか否かを判別する処理について説明する。
【0037】
図6は、食材負荷(食材の量)の判定及び蓋の装着の有無を判別するための閾値を取得するために予め計測したデータを示す図である。この図6において、横軸が加熱時間を示し、縦軸が温度センサ11で検知される調理容器温度(プレート下センサ温度と表記)を示している。
【0038】
この計測データは、調理メニユー毎に予め計測され、この計測データに基づいて、後述の閾値が、調理メニュー毎にそれぞれ決定される。
【0039】
この例は、調理メニューの「魚の姿焼き」に対応するものであり、食材wとして、秋刀魚を用いて計測したものである。
【0040】
図6では、蓋12の装着の有(あり)無(なし)、及び、食材wの量を変えた6つの計測モード(a、a´、b、b´、c、c´)で、グリルパン10を上部バーナ7と下部バーナ8とで加熱したものである。食材wの量は、食材なし(0g)、食材少量、具体的には秋刀魚一匹(140g)、食材多量、具体的には秋刀魚四匹(560g)とした。
【0041】
ここで、加熱開始から一定時間(この例では500秒)の領域、すなわち、食材負荷(食材の量)を判定するための食材負荷判定領域では、上部バーナ7を切り、下部バーナ8のみを火力「弱」として加熱した。また、その後の領域、すなわち、蓋の有無を判別するための蓋有無判別領域では、上部バーナ7の火力を「強」にして加熱を開始し、下部バーナ8は火力「弱」のままで加熱を継続した。
【0042】
各計測モード(a、a´、b、b´、c、c´)における調理容器温度の変化から判るように、下部バーナ8のみで加熱する前半の食材負荷判定領域においては、蓋12の装着の有無による調理容器温度の差は殆ど無いのに対して、食材wの量(食材負荷)が大きいほど調理容器温度は低く、かつ、食材wの量(食材負荷)が大きいほど調理容器温度の上昇勾配が小さくなる。
【0043】
また、上部バーナ7による加熱を開始して、上下の両バーナ7,8によって加熱する後半の蓋有無判別領域においては、蓋12の有無によって調理容器温度に差が現れる。すなわち、蓋12が装着されている場合(a´、b´、c´)の温度勾配が、蓋12が装着されていない場合(a、b、c、)の温度勾配より小さいものとなり、蓋12の装着の有無が、食材負荷ごとに温度差として明瞭に現れる。
【0044】
本実施形態では、食材負荷の大きさ(食材の量)及び蓋12の装着の有無に応じて温度変化に明瞭な差が生じることを利用して、食材負荷の判定及び蓋の装着の有無判別を行うものである。食材負荷の判定を行うための閾値と、蓋の装着の有無判別を行うための閾値を、予め計測した図6の計測データに基づいて以下のように決定する。
【0045】
図6において、前半の食材負荷判定領域における、下部バーナ8による加熱が開始されてから30秒後の調理容器温度と400秒後の調理容器温度との温度差は、詳細には、計測モードごとに次の通りである。
a モード(蓋なし、食材なし)での温度差は72℃
a´モード(蓋あり、食材なし)での温度差は70℃
b モード(蓋なし、食材少)での温度差は65℃
b´モード(蓋あり、食材少)での温度差は65℃
c モード(蓋なし、食材多)での温度差は58℃
c´モード(蓋あり、食材多)での温度差は57℃
ここで、食材なし(0g)の計測モードa,a´の温度差を、72℃と70℃とからその平均値である71℃とし、食材少(140g)の計測モードb,b´の温度差を、65℃と65℃とからその平均値である65℃とし、食材多(560g)の加熱モードc,c´の温度差を、58℃と57℃とからその平均値である57.5℃を切り下げて57℃とし、これらを、食材負荷判定のための閾値とする。
【0046】
また、図6において、蓋有無判別領域における、上部バーナ7による加熱が開始されてから30秒後(下部バーナ8の加熱開始から530秒後)の調理容器温度と300秒後(下部バーナ8の加熱開始から800秒後)の調理容器温度との温度差は、詳細には、計測モードごとに次の通りである。
a モード(蓋なし、食材なし)での温度差は67℃、
a´モード(蓋あり、食材なし)での温度差は57℃、
b モード(蓋なし、食材少)での温度差は52℃
b´モード(蓋あり、食材少)での温度差は45℃
c モード(蓋なし、食材多)での温度差は30℃
c´モード(蓋あり、食材多)での温度差は21℃
ここで、蓋なしのa モードでの温度差67℃と蓋ありのa´モードでの温度差57℃との中間値である62℃を、「食材なし」の場合における蓋の有無判別の閾値とし、蓋なしのb モードでの温度差52℃と蓋ありのb´モードでの温度差45℃との中間値である49℃を、「食材少」の場合における蓋の有無判別の閾値とし、さらに、蓋なしのc モードでの温度差30℃と蓋ありのc´モードでの温度差21℃との中間値である26℃を、「食材少」の場合における蓋の有無判別の閾値とする。
【0047】
上記のように決定した複数の食材負荷判定の閾値(●)と、蓋の装着の有無判別の閾値(▲)を、食材重量に対してプロットして求めた近似直線が図7に示されている。これらの閾値の近似直線と実際の加熱調理時の所定タイミングで検知された調理容器温度の差とを対比することで、食材負荷(食材量)の判定と、蓋の装着機の有無の判別とを、以下のように行うのである。
【0048】
[食材負荷(食材量)の判定]
下部バーナ8を点火して、30秒後と400秒後の調理容器温度の差が、図7に示される57℃~71℃の範囲、例えば、63℃であるとすると、食材負荷判定の閾値の近似直線から、63℃に対応する300gが食材の量となる。すなわち、これによって食材量を判定することができる。なお、通常、30秒後と400秒後の調理容器温度の差は、上記57℃~71℃の範囲にあるが、この範囲を外れる場合には、例えば、判別不能エラーとして報知する。
【0049】
[蓋の装着の有無判別]
次に、上バーナ7を点火してから30秒後と300秒後の調理容器温度の差が、例えば、50℃とすると、判定された300gの食材量においては、温度差50℃は、蓋の装着の有無判別の閾値の近似直線よりも、温度が高いので、蓋の「装着無し」と判別されることになる。また、上バーナ7を点火してから30秒後と300秒後の調理容器温度の差が、例えば、30℃とすると、判定された300gの食材量においては、温度差30℃は、蓋の装着の有無判別の閾値の近似直線よりも、温度が低いので、蓋の「装着有り」と判別されることになる。
【0050】
以上のようにして、調理メニュー毎に、予め食材の量及び蓋の装着の有無を異ならせた計測モードで計測を行って、食材の量を判定するための閾値の近似直線及び蓋の装着の有無を判別するための閾値の近似直線を求めておき、実際の調理メニューに応じた自動調理においては、前記各近似直線に基づいて、食材の量を判定すると共に、蓋の装着の有無を判別する。
【0051】
図8は、食材の量が判定され、蓋の装着の有無が判別された後の自動調理の加熱形態の一例が示されている。すなわち、食材負荷が小さく蓋12が装着されていないと判別された場合は、選択された調理メニューに対応する設定時間t1に亘って、上部バーナ7の火力を「弱」とし、調理容器温度が、選択された調理メニューに対応する目標温度θ1(例えば180℃)に維持されるように下部バーナ8が制御される。
【0052】
また、食材負荷が小さく蓋12が装着されていると判別された場合は、前記設定時間t1よりも長い設定時間t2に亘って上部バーナ7の火力を「弱」とし、調理容器温度が前記目標温度θ1より低い目標温度θ2(例えば160℃)に維持されるように下部バーナ8を制御する。つまり、蓋12が装着されている場合は、設定時間(加熱時間)を長くすることで上部バーナ7によって食材を十分加熱するとともに、目標温度を低くして下部バーナ8による加熱を抑制することによって下部バーナ8で長く加熱することによる焼き過ぎを防止する。これによって、調理メニューに応じた良好な自動調理が可能となる。
【0053】
また、食材負荷が大きく蓋12が装着されていないと判別された場合は、前記設定時間t1より長い設定時間t3に亘って上部バーナ7の火力を「弱」とし、調理容器温度が設定温度θ1(例えば180℃)に維持されるように下部バーナ8を制御する。また、食材負荷が大きく蓋12が装着されている判別された場合は、前記設定時間t2よりも長い設定時間t4に亘って上部バーナ7の火力を「弱」とし、容器温度が前記目標温度θ1より低い目標温度θ2(例えば160℃)に維持されるように下部バーナ8を制御する。
【0054】
なお、グリル用設定操作部16において任意に選択設定される調理メニューには、蓋12を装着した調理が好ましい調理メニュー、例えば、加熱によって膨らんだ食材が上部バーナ7にくっつく虞のある「もち」、油分が多い食材を調理する「魚の姿焼き」、「鶏もも焼き」等の調理メニユーと、蓋を取り外した調理が好ましいメニュー、例えば、「トースト」、「ホイル焼き」等の調理メニューとが含まれている。
【0055】
したがって、蓋を装着した方が好ましい調理メニューが選択設定された状態で、蓋が装着されていないと判別された場合には、蓋の装着を促すよう報知装置24によって報知する。あるいは、蓋を取り外した調理が好ましい調理メニューが選択設定された状態で、蓋が装着されていると判別された場合には、蓋の取り外しを促すよう報知装置24によって報知する。
【0056】
[他の実施形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0057】
(1)蓋の装着の有無の判別結果に基づいて、加熱形態を以下のようにしてもよい。例えば、図9に示すように、食材負荷が小さく蓋12が装着されていないと判別された場合は、選択された調理メニューに対応する設定時間t1に亘って上部バーナ7の火力を「弱」とし、調理容器温度が、選択された調理メニューに対応する目標温度θ1(例えば180℃)に維持されるように下部バーナ8を制御する。また、食材負荷が小さく蓋12が装着されていると判別された場合は、前記設定時間t1と同じ時間に亘って上部バーナ7の火力を「強」とし、調理容器温度が前記目標温度θ1に維持されるように下部バーナ8を制御する。つまり、蓋12がある場合は、上部バーナ7の火力を大きくして食材を十分加熱するのである。
【0058】
また、食材負荷が大きく蓋12が装着されていないと判別された場合は、前記設定時間t1より長い設定時間t5に亘って上部バーナ7の火力を「弱」とし、調理容器温度が目標温度θ1(例えば180℃)に維持されるように下部バーナ8を制御する。また、食材負荷が大きく蓋12が装着されていると判別された場合は、前記設定時間t1よりも長い設定時間t5に亘って上部バーナ7の火力を「強」とし、調理容器温度が前記目標温度θ1に維持されるように下部バーナ8を制御する。
【0059】
(2)図8及び図9に示す加熱形態では、上部バーナ7をと下部バーナ8の加熱時間とを同一にしているが、下部バーナ8の温調制御された加熱時間と上部バーナ8の加熱時間とを異ならせる形態で実施することも可能である。
【0060】
(3)上記実施形態では、ガスコンロ1に備えられたグリル3について説明したが、専用のグリルに適用することもできる。
【0061】
(4)上記実施形態では、蓋12が装着される調理容器としてのグリルパン10の一例を例示したが、蓋や調理容器の具体形状は各種変更できる。
【符号の説明】
【0062】
3 グリル
7 上部バーナ
8 下部バーナ
10 調理容器(グリルパン)
11 調理容器用の温度センサ
12 蓋
15 運転制御部
16 グリル用設定操作部
24 報知装置(報知部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9