(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】美爪料セット及び美爪方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20220518BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20220518BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220518BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61K8/21
A61K8/89
A61Q3/02
A61K8/73
(21)【出願番号】P 2018034615
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 義一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-300834(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも爪に直接塗布される粉体含有組成物と、粉体含有組成物を含浸又は被覆するようにして爪に固化定着する液状定着用組成物からなる、美爪料セットであり、
前記粉体含有組成物が、少なくとも意匠用粉体及び樹脂粉体を含み、
前記意匠用粉体は、フッ素処理又はシリコーン処理の表面処理を施した無機顔料を含有し、その無機顔料の含有割合が前記粉体含有組成物に対して60重量%以上であり、
前記粉体含有組成物をPETフィルム上に2g/m
2
となるように塗布し、塗布後の粉体含有組成物表面の接触角をθ/2法にて測定したときの純水に対する接触角が135°以下である、
前記液状定着用組成物が、少なくともバインダー成分と有機溶剤を含む、
美爪料セット。
【請求項2】
前記液状定着用組成物のバインダー成分として、少なくともニトロセルロースを含み、
前記液状定着用組成物の有機溶剤として、下記の(1)及び(2)を含む請求項
1に記載の美爪料セット。
(1)酢酸エステル類、乳酸エステル類、ケトン類及び炭化水素から選択される少なくとも一種。
(2)炭素数1~4個のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコール。
【請求項3】
前記粉体含有組成物の顔料成分として、干渉色を発現する金属顔料を含む、請求項1
又は2に記載の美爪料セット。
【請求項4】
少なくとも意匠用粉体及び樹脂粉体を含む粉体含有組成物
であり、この意匠用粉体として、フッ素処理又はシリコーン処理の表面処理を施した無機顔料を含有し、その無機顔料の含有割合が前記粉体含有組成物に対して60重量%以上であり、この粉体含有組成物をPETフィルム上に2g/m
2
となるように塗布し、塗布後の粉体含有組成物表面の接触角をθ/2法にて測定したときの純水に対する接触角が135°以下である粉体含有組成物を、爪の表面に直接塗布し、
次いで、少なくともバインダー成分及び有機溶剤を含む液状定着用組成物を、爪の表面に塗布された前記粉体含有組成物に含浸させる、又はこの粉体含有組成物を被覆するように塗布し、固化させることにより、爪の表面に装飾を施す美爪方法。
【請求項5】
前記粉体含有組成物の爪表面への塗布を、塗布材として柔軟性のある多孔性材料を用いた塗布具を用いる請求項
4に記載の美爪方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪に意匠性を与える為の美爪料セット、及び美爪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、爪を装飾する材料として、特許文献1に示すような、顔料や樹脂等を混ぜ込んだ、溶剤系又は水系の組成物を爪に塗布し、乾燥させることにより硬化させるいわゆるポリッシュ(マニキュア)や、顔料を混ぜ込んだ無溶剤樹脂を爪に塗布し、UV(紫外線)光で硬化させるいわゆるジェルネイル等が知られている。特許文献1においては、さらに装飾効果をだすため、光輝性を有するアルミニウム粉末が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のポリッシュやジェルネイルは、刷毛で粘性の高い原料液を塗布するため、塗りムラが生じやすく、意匠性の低下につながる。さらに、色のグラデーションを付けたいときには色を濃くしたい部分に同じ色を重ね塗りする必要があり、塗布と乾燥を繰り返すことになるため非常に手間がかかる。
また、爪に塗工する際、爪から原料液がはみ出すことがある。このはみ出しが生じると、意匠性が低下するため、除光液で全体をリムーブ(剥離)させ、再度、塗布する必要が生じる。この場合、手間が生じると共に、何度も溶剤を爪に塗布することとなり、爪への負担が高くなり、二枚爪の原因につながる可能性がある。
【0005】
そこで、この発明は、爪に意匠性を付与する際に、塗りムラが生じにくく、きれいに塗布することができ、かつ、爪からのはみ出しが生じても、はみ出した部分のみの拭き取りが容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本願にかかる発明を見出した。この発明は、以下を要旨とする。
[1]少なくとも爪に直接塗布される粉体含有組成物と、粉体含有組成物を含浸又は被覆するようにして爪に固化定着する液状定着用組成物からなる、美爪料セットであり、前記粉体含有組成物が、少なくとも意匠用粉体及び樹脂粉体を含み、前記液状定着用組成物が、少なくともバインダー成分と有機溶剤を含む、美爪料セット。
[2]前記粉体含有組成物をPETフィルム上に2g/m2となるように塗布し、塗布後の粉体含有組成物表面の接触角をθ/2法にて測定したときの純水に対する接触角が135°以下である、[1]に記載の美爪料セット。
[3]前記液状定着用組成物のバインダー成分として、少なくともニトロセルロースを含み、前記液状定着用組成物の有機溶剤として、下記の(1)及び(2)を含む[1]又は[2]に記載の美爪料セット。
(1)酢酸エステル類、乳酸エステル類、ケトン類及び炭化水素から選択される少なくとも一種。
(2)炭素数1~4個のアルコールから選択される少なくとも一種のアルコール。
[4]前記粉体含有組成物の顔料成分として、干渉色を発現する金属顔料を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の美爪料セット。
[5]少なくとも意匠用粉体及び樹脂粉体を含む粉体含有組成物を、爪の表面に直接塗布し、次いで、少なくともバインダー成分及び有機溶剤を含む液状定着用組成物を、爪の表面に塗布された前記粉体含有組成物に含浸させる、又はこの粉体含有組成物を被覆するように塗布し、固化させることにより、爪の表面に装飾を施す美爪方法。
[6]前記粉体含有組成物の爪表面への塗布を、塗布材として柔軟性のある多孔性材料を用いた塗布具を用いる[5]に記載の美爪方法。
【発明の効果】
【0007】
この発明で用いられる所定の粉体含有組成物が意匠性を発揮し、所定の液状定着用組成物がこの粉体含有組成物を爪に固化定着させるので、粉体含有組成物を爪に塗布した段階では、粉体含有組成物は爪に固化定着していない。このため、粉体含有組成物を爪に塗布する際に塗りムラが生じても、修正が容易であり、結果的に塗りムラを抑制することができる。さらに、前記粉体含有組成物の塗布量を調整することが可能であるので、グラデーションに塗布することが可能となる。また、前記粉体含有組成物が爪からはみ出したとしても、粉体含有組成物に液状定着用組成物を含浸又は塗布前であれば爪に固着していないので、除光液を使用しなくても容易にふき取ることができ、爪への悪影響を抑えることができる。
【0008】
さらに、前記粉体含有組成物の濡れ性、具体的には、特定の測定方法による接触角を所定値以下とした場合は、前記液状定着用組成物の前記粉体含有組成物への染み込みがより容易となり、爪への固着をより確実に行うことができる。
さらにまた、前記粉体含有組成物を爪に塗布する際に、柔軟性のある多孔性材料からなる塗布材を用いると、前記粉体含有組成物の塗布量をコントロールすることが可能となり、塗りムラを減らし、均一に塗布することが可能となり、また、部分的に塗布量を適宜調整することで一回の塗布でグラデーションに塗布することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
この発明にかかる美爪料セットは、少なくとも爪に直接塗布される粉体含有組成物と、粉体含有組成物を含浸又は被覆するようにして爪に固化定着する液状定着用組成物からなる。
【0010】
[粉体含有組成物]
前記粉体含有組成物は、少なくとも意匠用粉体、樹脂粉体及び油性成分を含む組成物であり、その主成分が粉体で構成されるものである。この点で有機溶剤や液状樹脂を主成分として顔料等の粉体を含有する一般的なマニキュアやジェルネイルとは異なるものである。また、粉体含有組成物に含まれる意匠用粉体は、爪に塗布・固化したときに、意匠性を表現する材料であり、顔料等の色剤、無機粒子、有機粒子、光輝性を発揮させる光輝材等があげられる。
【0011】
<意匠用粉体>
意匠用粉体は、この発明にかかる美爪料セットを爪に塗布して得られる皮膜(以下、単に「皮膜」と称する場合がある。)に色を付与し、意匠性を付与する役割を有する。この意匠用粉体としては、有機顔料、無機顔料、染料、光輝性顔料等があげられるが、これらに限定されることなく、人体に塗布することが許容されるものであれば、他の色を表出する材料を使用することができる。
【0012】
(有機顔料、無機顔料、染料)
このような有機顔料の例としては、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色305号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号及び青色404号や、更に赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号又は青色1号等や、これら有機顔料のジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、又はアルミニウムレーキ等があげられる。
【0013】
また、前記無機顔料の例としては、シリカ、タルク、マイカ、セラミック、粘土鉱物、亜鉛華、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、ゼオライト、リン酸カルシウム、ガラス粉末、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等があげられる。これらは、フッ素処理やシリコーン処理等の表面処理を行ってもよい。特に、フッ素処理やシリコーン処理等の表面処理されていることにより疎水性になり(すなわち親油性となり)、無処理の場合よりも液状定着用組成物の浸透性が向上する。なお、平均粒子径が1μm以上140μm以下の範囲のものを用いることが、液状定着用組成物の浸透性がよく、色相をより明確にするので好ましい。また、好適には、この範囲は30μm以上がよく、35μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、45μm以上が更に好ましい。30μmより小さくてもよいが、使用量が増大してしまい、効率的でない場合が生じることがある。一方、この平均粒子径の上限は、140μmがよく、130μmが好ましく、120μmが更に好ましい。120μmより大きくてもよいが、意匠性の発現に影響を与える場合がある。
【0014】
さらに、これらは別にフッ素処理やシリコーン処理等の表面処理を行った微粒子状の無機顔料も用いることもできる。この場合、無機顔料自身が微粒子状であるため粉体含有組成物を爪に塗布した際に他の粒子径の大きな意匠用粉体の隙間をほどよく埋めるので、色相をより明確するとともに、無機顔料表面がフッ素処理やシリコーン処理等の表面処理されていることにより疎水性になり(すなわち親油性となり)、無処理の場合よりも微粒子状であっても液状定着用組成物の浸透性に影響を与えにくくなる。なお、微粒子状の無機顔料の平均一次粒子径は5~100nmの範囲の微粒子状のものが、前述の効果を発揮しやすくなるので好ましい。
【0015】
さらに、染料の例としては、スーダンレッド、D&Cレッド17番、D&Cグリーン6番、βカロチン、大豆油、スーダンブラウン、D&Cイエロー11番、D&Cバイオレット2番、D&Cオレンジ5番、キノリンイエロー、アナットー、臭素酸等の脂溶性染料、ビートジュース、メチレンブルー、カラメル等の水溶性染料等があげられる。
【0016】
(光輝性顔料)
光輝性顔料は、光輝感を与える等の意匠性の向上や、爪表面の隠ぺい性の向上等を図ることができる。光輝性顔料としては、パール顔料、ラメ感を奏するラメ顔料、金属顔料などが挙げられる。
パール顔料としては、限定されるものではないが、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母、ベンガラ・酸化チタン被覆合成金雲母、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆アルミナフレーク、酸化チタン被覆シリカフレーク、シリカ被覆アルミニウム、酸化鉄・シリカ被覆アルミニウム、シリカ被覆鉄を挙げることができる。
また、ラメ顔料としては、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、エポキシ樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、ウレタン樹脂被覆アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。
【0017】
パール顔料やラメ顔料の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。5μmより小さいと、爪に塗布したとき、十分な輝きが生じない場合がある。一方、平均粒子径の上限は、1000μmが好ましく、500μmがより好ましく、300μmが更に好ましい。1000μmより大きいと、爪から剥がれやすくなるおそれがある。
【0018】
金属顔料の例としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、鉄、ニッケル、クロム及びこれらの合金、あるいは金属被覆フレーク状ガラス等が好ましく例示でき、このうちアルミニウム顔料が意匠性の点で特に好ましく用いられる。また、これらの金属顔料の表面には樹脂層や無機物層が形成されていてもよい。さらに、アルミニウム顔料を用いる場合、アルミニウム顔料表面に非晶質酸化珪素膜層を形成し、さらに金属粒子を重ねた干渉色を呈する被覆アルミニウム顔料(本発明においては、着色金属顔料とも言う)も用いることができる。
【0019】
金属顔料を用いる場合の好ましい平均粒子径としては2~300μmの範囲内が例示できる。平均粒子径が2μm以上である場合、皮膜に良好な仕上がり外観や良好な隠蔽力を与えることができ、300μm以下である場合、金属顔料が皮膜から突き出すなどの仕上がり外観の低下等を抑制できる。この平均粒径は、5~100μmの範囲内とされることがさらに好ましい。
【0020】
前記金属顔料の好ましい厚み(平均厚み)としては、0.01μm以上がよく、0.02μm以上が好ましい。厚みが0.01μm以上だと、仕上がり外観を良好に維持することが可能となる。一方、厚みの上限は、5μmがよく、1μmが好ましい。5μm以下だと、皮膜に良好な意匠性を与える金属顔料を得ることができる傾向がある。
このような厚みは、水面拡散面積法(アルミニウム顔料の場合であれば、水面拡散面積=Scm2/gとすると、厚み=4000/Sμm)により測定することができる。
【0021】
前記金属顔料は、たとえばアトマイズ法粉末や、金属薄片を湿式ボールミル法(すなわちホール法)又は乾式ボールミル法で粉砕した粉末等として得られる。又は、フィルム等に金属薄膜を蒸着した後剥離及び粉砕することによっても得られる。また、金属被覆フレーク状ガラスやその他の金属被覆顔料は、フレーク状ガラス、マイカ、アルミナ、シリカ、酸化チタン等のフレーク状あるいは粒状の無機基材に無電解めっき、蒸着、スパッタリング等の手法により、Ag、Cu、Ni、Fe、Co、Cr、Snなどの単体あるいは合金を層状に形成することによって得られる。
【0022】
なお、本明細書における意匠用粉体の平均粒子径は、レーザー回折法により測定された体積累積粒度分布において、累積度50%の粒子径を算出することにより求めることができる。また、平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡による画像解析によりランダムに抜き出した50個の粒子の平均値を算出することにより求めることができる。
【0023】
(意匠用粉体の含有割合)
本発明における粉体含有組成物中の意匠用粉体の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、5重量%以上90重量%以下が好ましく、さらには20重量%以上85重量%以下が好ましく、特に60重量%以上80重量%以下がより好ましい。この範囲内であれば皮膜に所望の意匠性を付与することできる。
【0024】
(フッ素処理やシリコーン処理等の表面処理無機顔料の含有割合)
本発明における粉体含有組成物中のフッ素処理やシリコーン処理等の表面処理を施した無機顔料の含有量は特に限定されないが、この含有量が10重量%以上、より好ましくは60重量%以上であること、及び73重量%以下であると液状定着用組成物の粉体含有組成物の液状定着用組成物に対する浸透性が好適となる。本発明においては、粉体含有組成物と液状定着用組成物の浸透性のバランスが本発明の効果との関係で重要である。粉体含有組成物中のフッ素処理やシリコーン処理等の表面処理を施した無機顔料の含有量が73重量%以下であれば、後述する接触角が135°以下となり、粉体含有組成物への液状定着用組成物の浸透性が好適となるので、爪に形成される皮膜の爪への密着力が十分に発揮される。他方、73重量%超となると、粉体含有組成物への液状定着用組成物の浸透性が低下するため、皮膜の爪への密着力が低下する。また、10重量%未満であると後述する接触角が50°未満となる傾向にあり、また60重量%未満であると後述する接触角が100°未満となる傾向にあり、その場合は、液状定着用組成物を塗布した際に、液状定着用組成物の表面張力の影響により、爪上にのせた粉体含有組成物が流動化し、意匠性が悪くなるおそれがある。
また、粉体含有組成物を爪に塗布した際、滑らかに爪上に広がらなくなり、意匠性が悪くなるおそれがある。
なお、前記で挙げた意匠用粉体は、所望の意匠性に応じて、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<樹脂粉体>
前記樹脂粉体は、前記意匠用粉体の補助材として用いられる。樹脂粉体を含有することで、粉体含有組成物の塗布時の滑らかさを付与したり、形成された皮膜に柔軟性を付与したり、液状定着用組成物の浸透性を調整したりすることができる。この樹脂粉体としては、ナイロン樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体等のアクリル系又はメタクリル系樹脂、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、オルガノポリシロキサンエラストマー等のシリコーン樹脂、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ウール、シルク、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等のパウダーや球状又は非球状の小球等があげられる。これら樹脂粉体は、フッ素処理等の疎水化処理されているものや、微粒子酸化チタン、フッ素処理された微粒子酸化チタン等の被覆材で被覆されたものでもよい。
この樹脂粉体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、平均粒子径も特に限定されないが5μm以上100μm以下の範囲のものが使用できる。
【0026】
粉体含有組成物中の樹脂粉体の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、2重量%以上30重量%以下が好ましく、10重量%以上25
重量%以下がより好ましい。また、前記樹脂粉体の前記意匠用粉体に対する含有割合は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、0.023倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、0.15倍以上がより好ましく、0.2倍以上がより好ましく、0.3倍以上が更に好ましい。一方含有割合の上限は、6.0倍がよく、1.0倍が好ましく、0.35倍がより好ましい。これらの範囲を逸脱すると、爪に塗布したときの滑らかさや液状定着用組成物を塗布したときの浸透性に影響を与えたり、高い意匠性を発現しなくなったりする場合がある。
【0027】
<油性成分>
前記油性成分は、前記の意匠用粉体及び樹脂粉体のバインダーとしての役割を持ち、前記粉体含有組成物を爪に塗布した際、爪の上に一時的に保持させる役割を有する。油性成分の主な機能としては、前記粉体含有組成物の成形性、爪への一時的付着、粉体粒子同士の結合等があげられ、次の工程で液状定着用組成物を使用しやすくすることができる。更に、前記色剤の発色、紫外線吸収等の他の機能を発揮する場合もある。
【0028】
前記油性成分としては、通常化粧料に使用するものをあげることができる。例えば、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、スクワラン、ワセリン等を用いることができる。
【0029】
この油性成分の含有量は、前記粉体含有組成物に対し、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、4重量%以上が更に好ましい。一方、含有量の上限は、25重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、7重量%がより好ましく、5重量%が更に好ましい。この範囲内とすることで、成型性、塗布時の爪への一次保持性が良好になる。また、過剰ではない適度な崩壊性を確保しつつ、色つきのよさを向上させることができ、また粉ちり等を回避することもできる。更にはむら付き、化粧料のケーキング、化粧膜のよれ等が防止される。また油性成分の含有量は、前記色剤の配合量との兼ね合いからも、前記範囲内であることが好ましい。
【0030】
(その他の成分)
この発明にかかる粉体含有組成物には、前記の各成分以外に、必要に応じて、可塑剤、沈降防止剤等を加えてもよい。さらに、これらに加えて、前記以外の樹脂、香料、薬剤、保湿剤、紫外線吸収剤、つや消し剤、充填剤、界面活性剤、金属石鹸等を配合することができる。
【0031】
(可塑剤)
前記可塑剤は、爪に塗布した美爪料セットの皮膜に、柔軟性を付与することができる。この可塑剤としては、安息香酸エステル(例えば、安息香酸スクロース)、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル)、カンフル、フタル酸エステル、又は多価アルコール(例えば1,3-ブタンジオール)を挙げることができる。
この可塑剤の前記粉体含有組成物における含有量は、目的に応じて適宜決定することができるが、1~10重量%程度が好ましい。
【0032】
(濡れ性)
前記液状定着用組成物は、所定範囲の濡れ性、具体的には接触角を有することが好ましい。この接触角は、前記粉体含有組成物をPETフィルム(2軸延伸したもの。本明細書において同じ。)上に2g/m2となるように塗布し、塗布後の粉体含有組成物表面の接触角をθ/2法にて測定したときの純水に対する接触角をいう。
【0033】
この接触角は、135°以下が好ましい。接触角の下限値は特に限定されないが、より好ましくは50°以上であり、さらにより好ましくは100°以上であればよい。135°より大きいと、前記液状定着用組成物が前記粉体含有組成物に浸透しにくくなり、爪に塗布して皮膜化したときの、皮膜の爪への密着力が不十分となるおそれがある。
なお、この濡れ性は、この発明にかかる美爪料セットに使用される個々の材料に影響するので、濡れ性を検討するときは、個々の材料について検討することが必要となる。
【0034】
[液状定着用組成物]
前記液状定着用組成物は、前記粉体含有組成物を含浸又は被覆するようにして爪に固化定着させる組成物であり、少なくともバインダー成分と有機溶剤とを含む。
【0035】
(バインダー成分)
前記バインダー成分とは、前記粉体含有組成物を爪に固化定着させる成分であり、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロースなどのセルロース系樹脂やセルロース系樹脂以外の樹脂を用いることができる。セルロース系樹脂とそれ以外の樹脂は、どちらか1種のみを用いてもよいし、これらを併用してもよい。この中でもニトロセルロースを用いることが液状定着用組成物の乾燥性や皮膜の平滑性の点で好ましい。
前記ニトロセルロースは、濃硝酸と濃硫酸の混液にセルロースを加えることによって得られるセルロース誘導体であり、窒素量によりその性質は異なる。
本発明で用いられるニトロセルロースは窒素含有量によって分類され、JIS K-6703にHタイプ:11.5~12.2%、Lタイプ:10.7~11.5%と規定されているが、いずれのタイプも使用が可能である。
【0036】
セルロース系樹脂以外の樹脂としては、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、トルエンスルホンアミド系樹脂、シュークローズ系樹脂等があげられ、具体的には、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体、フタル酸系アルキッド樹脂、イソフタル酸系アルキッド樹脂、コハク酸系アルキッド樹脂、トルエンスルホンアミド/ホルムアルデヒド樹脂、トルエンスルホンアミド/エポキシ樹脂、シュークローズベンゾエート、シュークローズアセテートイソブチレート等があげられる。
これらは1種のみを用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0037】
(有機溶剤)
前記有機溶剤としては、酢酸エステル系、乳酸エステル系、ケトン類、炭化水素系、アルコール類のものがあげられる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。中でも揮発性が高く、ニトロセルロースの溶解性に優れる、酢酸エチル及び酢酸ブチルを用いることが好ましい。
【0038】
また、前記アルコール類としては、炭素数1~4個のアルコール、すなわち、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等があげられるが、中でも臭いや刺激が少なく入手が容易なエタノールを用いることが好ましい。
【0039】
(液状定着用組成物の配合割合)
液状定着用組成物中におけるバインダー成分の含有割合は、5重量%以上がよく、15重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。5重量%より少ないと、爪への密着力が不十分となる場合がある。一方、含有比の上限は、40重量%がよく、35重量%が好ましく、30重量%がより好ましい。40重量%より多いと、前記粉体含有組成物への浸透が不十分となるおそれがある。
【0040】
また、液状定着用組成物中の前記有機溶剤の含有割合は、60重量%以上がよく、65重量%以上が好ましい。60重量%より少ないと、有機溶剤へのバインダー成分の溶解性が不十分となる場合があり、また粉体含有組成物の浸透が不十分となるおそれがある。一方、含有比の上限は、95重量%以下がよく、85重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。95重量%より多いと、前記粉体含有組成物への浸透するバインダー成分の量が不十分となり密着力が低下するおそれがある。
【0041】
(その他の成分)
前記液状定着用組成物には、前記した各成分以外に、必要に応じて香料や可塑剤、紫外線吸収剤等を加えてもよい。
前記紫外線吸収剤は、この発明にかかる美爪料セットの黄変及び色素の退色、変色を防止することを目的として加えることができる。
【0042】
この紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2´4,4´-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸ナトリウム、2,2´-ジヒドロキシ-4,4´-ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル-4´-メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
これらの紫外線吸収剤の中で、特に有効なものとしては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及びパラメトキシケイ皮酸エチルヘキシルがあげられる。
【0043】
これらの紫外線吸収剤は、前記液状定着用組成物において、0.01~0.5重量%の範囲で使用されることが好ましい。0.01重量%未満では十分な色素退色防止効果が得られないことがあり、0.5重量%を超えると黄変を防止することできないことがある。
【0044】
また、前記可塑剤として、安息香酸エステル、カンフル及びクエン酸エステル系等をあげることができる。この可塑剤は、ニトロセルロース皮膜のひび割れを防止する目的で使用することができる。この可塑剤の具体例としては、安息香酸スクロース、カンフルクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができ、液状定着用組成物中において、1.0~10.0重量%の範囲で使用することが好ましい。
この可塑剤が1.0重量%未満では、十分な皮膜のひび割れを防止することができないことがあり、10.0重量%を超えると皮膜の乾燥が遅くなり、十分な強度の皮膜を得ることができないことがある。
【0045】
[美爪料セットの使用方法]
次に、この発明に係る美爪料セットを使用し、爪を美しく見せる美爪方法について説明する。
まず、少なくとも前記の意匠用粉体及び樹脂粉体を含む粉体含有組成物を、爪の表面に直接塗布する。粉体含有組成物は使用者の指の腹で直接塗布したり、化粧用筆で直接塗布してもよいが、指の汚れを抑制したり、塗りムラを抑制するためには、この塗布において、塗布材として、塗布部に発泡ウレタン樹脂などの柔軟性のある多孔性材料を用いた塗布具を用いると、前記粉体含有組成物を均一に塗布することが容易となる。
この塗布の仕方は、爪全体に前記粉体含有組成物を均一に塗布してもよく、爪の一方から他方に向けて、塗布量を変えて色がグラデーションになるように塗布してもよい。
また、塗布時に爪からはみ出したときには、適宜拭き取りすることで所望の範囲に塗布が可能となる。
【0046】
次いで、少なくともバインダー成分及び有機溶剤を含む液状定着用組成物を、爪の表面に塗布された前記粉体含有組成物に含浸させるか、又はこの粉体含有組成物を被覆するように塗布する。次いで、この液状定着用組成物を、自然乾燥等により固化させる。これにより、爪の表面に皮膜を形成させ、装飾を施すことができる。
なお、上記塗布具としては、プラスチックで棒状に成形された軸部の先端に柔軟性のある多孔性材料で形成された楕円形状の塗布部を備えた塗布具のようなものが例としてあげることができるが、この態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
<評価方法>
[接触角]
実施例の粉体含有組成物をPETフィルム上に2g/m2となるように塗布し、塗布後の粉体含有組成物表面に1μl(マイクロリットル)の純水液滴を接触させ、10秒後の接触角を、下記の機器及び使用方法を用いて測定した。10回測定し、その平均値を取った。なお、測定雰囲気は、温度25℃、湿度40%である。
使用した機器及び、使用方法で下記の通りである。
・機器:CA-X150:協和界面化学(株)製
・ソフトウエア:FAMAS ver.2.2.0
・手法:液滴法
・方法:θ/2法
【0049】
[評価試験]
被験者の右手親指の爪の表面に、各実施例の粉体含有組成物を塗布量が2g/m2となるように直接塗布する。次いで、下記の液状定着用組成物を、爪の表面に塗布された前記粉体含有組成物に含浸させるように塗布量(乾燥後重量)が3g/m2となるように塗布し、10分間、乾燥・固化させ、皮膜を形成させた(すなわち、皮膜は乾燥後重量として5g/m2となる)。また、比較例では、被験者の右手親指の爪の表面に従来の液体マニキュアを塗布量(乾燥後重量)が5g/m2となるように直接塗布し、乾燥・固化させて皮膜を形成させた。
そして、次の評価を行った。
【0050】
1.密着力評価
被験者10名の右手親指の爪に、前記評価試験の方法で爪の表面に皮膜を形成させ、セロハンテープ(ニチバン製「セロテープ15mm幅」)を、皮膜を形成した爪の表面に貼付けして10分経過後に剥がした。
剥がれの具合を目視で評価し、平均値をとった。評価基準は次の通りである。
3点…全く剥がれなかった。
2点…剥がれた面積半分以下であった。
1点…剥がれた面積半分以上であった。
0点…全て剥がれた。
なお、塗布の際に用いたチップは、多孔性材料を用いた、アイシャドーチップショートシングル6P(商品名)(貝印(株)製:HC-3717)である。
【0051】
2.外観評価
被験者10名の右手親指の爪に、前記評価試験の方法で爪の表面に皮膜を形成させ、色ムラの有無を確認し、下記の平均を取った。
3点…色ムラ無し。
1点…若干色ムラ有。
0点…色ムラ有。
【0052】
<原材料>
[粉体含有組成物]
(意匠用粉体)
・無機顔料1…フッ素処理微粒子酸化チタン、テイカ(株)製:MT-500B、:一次粒径:35nm、微粒子酸化チタンを(C6F13CH2CH2O)PO(OH)2 3重量%で被覆したもの。
・無機顔料2…フッ素処理微粒子酸化チタン被覆ナイロンパウダー、(株)KOBOディスパテック製:CM3K50XZ4J、平均粒子径:10μm、ナイロンパウダーを無機顔料1で被覆したもの。
・着色金属顔料1…干渉色アルミニウムパウダー、東洋アルミニウム(株)製:COSMICOLOR CHERRY PINK、平均粒子径:20μm、アルミニウム顔料表面に非晶質酸化珪素膜層と金属粒子層を形成したもの。
・無機顔料3…フッ素処理板状硫酸バリウム…堺化学工業(株)製:HG-LFP
・無機顔料4…フッ素処理マイカ…大東化成工業(株)製:FHS-3A MICA Y-2300
・無機顔料5…フッ素処理酸化チタン…大東化成工業(株)製:FHS-3A TiO2 CR-50
・無機顔料6…シリコーン処理マイカ…大東化成工業(株)製:SIS MICA SX
・無機顔料7…シリコーン処理タルク…大東化成工業(株)製:SIS TALC S
【0053】
(樹脂粉体)
・樹脂粉体1…フッ素処理微粒子酸化チタン被覆ナイロンパウダー、宇部興産(株)製:POMP605
・樹脂粉体2…アクリル樹脂形状小球、松本油脂製薬(株)製:M-100
【0054】
(油性成分)
・油性成分1…スクワラン、SOPHIM社製:フィトスクワラン
・油性成分2…ワセリン、日本精化(株)製:白色ワセリン
(界面活性剤)
・界面活性剤1…ステアリン酸グリセリン、日本エマルジョン(株)製:EMALEX GMS-195
【0055】
[液状定着用組成物]
下記の各化合物を混合し、液状定着用組成物を製造した。
・ニトロセルロース(H1/4)…14重量部
・酢酸ブチル…34重量部
・酢酸エチル…35重量部
・安息香酸スクロース…3重量部
・アクリル樹脂(アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル共重合体)の酢酸ブチル溶液(固形分:75重量%)…3重量部
・クエン酸アセチルトリブチル…5重量部
・メタノール…6重量部
【0056】
(実施例1~2、比較例1~2)
表1に示す各成分を混合し、それぞれ粉体含有組成物を調製した。
この粉体含有組成物を用い、前記の各評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例3)
マニキュア((株)テクノラボ製:アナスイ ネイルカラーM801)を被験者の右手親指の爪に塗布し、前記の各評価を行った。その結果を表1に示す。なお、粉体含有組成物を使用していないので、接触角は測定していない。
【0058】
【0059】
(結果)
実施例1~2、比較例1~2のいずれも外観評価は比較例3の従来の液体マニキュアよりも非常に良い結果であった。すなわち、本発明の美爪料セットを用いれば従来の液体マニキュアに比して塗りムラの発生が抑制できることがわかった。
実施例1~2、比較例1~2の評価結果を検討すると、実施例1及び実施例2について粉体含有組成物中に含有するフッ素処理やシリコーン処理等の表面処理無機顔料の割合を比較例1及び比較例2より小さくすると、実施例1及び実施例2の密着力評価は比較例1及び比較例2よりも高くなることがわかった。実施例1~2、比較例1~2の接触角を測定したところ、実施例1及び実施例2の接触角は、それぞれ113°及び135°と比較例1及び比較例2のそれぞれ140°よりも小さくなることがわかった。
特に、実施例1は密着力評価及び外観評価が各実施例中で最も良い結果となった。
実施例1及び実施例2が比較例1及び比較例2に比して密着力評価と外観評価で良好な結果となった理由は定かではないが、実施例1及び実施例2の方が粉体含有組成物と液状定着用組成物の浸透性のバランスが接触角との関係で、比較例1及び比較例2よりも良好であるためと推察される。
なお、市販のポリッシュ(マニキュア)を使用した比較例3の場合は、密着力評価はよかったものの、外観評価は好ましくない結果が得られた。