(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】配管の余寿命評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2018061437
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 憩太
(72)【発明者】
【氏名】駒井 伸好
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】有末 紘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】今里 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 顕一
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-225292(JP,A)
【文献】特許第4435853(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第103760042(CN,A)
【文献】国際公開第2016/051558(WO,A1)
【文献】特開2000-055601(JP,A)
【文献】実開昭56-172704(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象配管の外周の周長を測定するステップと、
配管の外周の周長と前記配管の余寿命との相関に測定して得られた前記周長を入力することで前記評価対象配管の余寿命を評価するステップと、
を備え、
前記評価対象配管の外周の周長を測定するステップでは、前記配管の外周に巻き付け可能な線状又は帯状の測定冶具を前記評価対象配管の軸線方向にずれるように前記評価対象配管の外周に2周以上巻き付けて、前記測定冶具が前記評価対象配管の外周に巻き付いた長さと、前記測定冶具の前記軸線方向へのずれ量と、前記測定冶具を前記評価対象配管に巻き付けた周数とに基づいて前記評価対象配管の外周の周長を求める
配管の余寿命評価方法。
【請求項2】
前記評価対象配管の余寿命を評価するステップで評価した前記評価対象配管の余寿命が閾値以下である場合に、該評価対象配管の余寿命を再評価するステッ
プ、
を備える
請求項1に記載の配管の余寿命評価方法。
【請求項3】
前記評価対象配管の余寿命を再評価するステップは、前記評価対象配管を非破壊で検査する検査方法によって得られた検査結果に基づいて前記評価対象配管の余寿命を再評価する
請求項2に記載の配管の余寿命評価方法。
【請求項4】
前記相関を取得するステップをさらに備える
請求項1乃至3の何れか一項に記載の配管の余寿命評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管の余寿命評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の高熱機器に使用される配管には、ボイラの伝熱管のように、高温・高圧下で長時間使用されるものがある。この種の配管では、配管の健全性を確認するため、定期検査等において余寿命の評価が行われる。
例えば特許文献1に記載のクリープ寿命評価方法では、ボイラ伝熱管の外径を測定し、測定した外径が所定の基準値に達している場合には、当該ボイラ伝熱管が交換補修時期であると判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、ボイラ伝熱管の外径の具体的な測定方法については、言及されていない。
例えばボイラの伝熱管の周方向の位置のうち、燃焼ガスの流れの上流側となる位置と下流側となる位置とでは、伝熱管の温度が異なるおそれがあるため、伝熱管の周方向の一部が径方向外側に膨出する等、伝熱管の径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なることも考えられる。このように、伝熱管の径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なる場合、例えばノギスのような測定装置によって伝熱管の外径を測定すると、測定する周方向の位置によって外径の測定値が異なってしまうため、外径の測定値に伝熱管の径方向外側への変形状態が適切に反映されないおそれがある。そのため、伝熱管の径方向外側への変形状態を適切に把握できず、伝熱管の余寿命の評価精度が低下するおそれがある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、配管の余寿命評価の精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る配管の余寿命評価方法は、
評価対象配管の外周の周長を測定するステップと、
配管の外周の周長と前記配管の余寿命との相関に測定して得られた前記周長を入力することで前記評価対象配管の余寿命を評価するステップと、
を備える。
【0007】
上記(1)の方法によれば、評価対象配管の外周の周長を測定することにより、評価対象配管の径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なっていても、径方向外側への変形状態が反映された測定値を得ることができる。これにより、評価対象配管の径方向外側への変形状態を適切に把握でき、評価対象配管の余寿命の評価精度を向上できる。
また、一般的に、円形断面の部材において、径が変化した場合、径の変化量よりも周長の変化量の方が大きい。そのため、ノギスのような測定装置によって直径を直接計測する場合と比べて、評価対象配管の径の変化を把握し易くなる。この点からも、評価対象配管の余寿命の評価精度を向上できる。
さらに、評価対象配管の外周の周長を測定するという簡便な方法によって評価対象配管の余寿命を評価できるので、測定に要する時間を短縮できる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、前記評価対象配管の外周の周長を測定するステップでは、前記配管の外周に巻き付け可能な線状又は帯状の測定冶具を前記評価対象配管の外周に少なくとも1周巻き付けて、前記測定冶具が前記評価対象配管の外周に巻き付いた長さから前記評価対象配管の外周の周長を求める。
【0009】
上記(2)の方法によれば、配管の外周に巻き付け可能な線状又は帯状の測定冶具を用いることで、評価対象配管の外周の周長を容易に測定できる。また、複数の評価対象配管が近接して配置されている場合等のように、ノギスのような測定装置を用いることが困難であるような狭隘な場所であっても、評価対象配管の外周の周長を測定できる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、前記評価対象配管の外周の周長を測定するステップでは、前記測定冶具を前記評価対象配管の外周に2周以上巻き付けて、前記測定冶具が前記評価対象配管の外周に巻き付いた長さと、前記測定冶具を前記評価対象配管に巻き付けた周数とに基づいて前記評価対象配管の外周の周長を求める。
【0011】
上記(3)の方法によれば、測定冶具を評価対象配管の外周に2周以上巻き付けることで、評価対象配管の周長の測定範囲を軸線方向に拡大することができる。これにより、1回の測定による評価対象配管の周長の測定範囲を軸線方向に拡大できる。したがって、例えば評価対象配管の径方向外側への変形が軸線方向の一部で生じていた場合であっても、評価対象配管が径方向外側へ変形していることを把握し易くなる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、前記評価対象配管の外周の周長を測定するステップでは、前記測定冶具を前記評価対象配管の軸線方向にずれるように前記評価対象配管の外周に2周以上巻き付けて、前記測定冶具が前記評価対象配管の外周に巻き付いた長さと、前記測定冶具の前記軸線方向へのずれ量と、前記測定冶具を前記評価対象配管に巻き付けた周数とに基づいて前記評価対象配管の外周の周長を求める。
【0013】
上記(4)の方法によれば、測定冶具を評価対象配管の軸線方向にずれるように評価対象配管の外周に2周以上巻き付けることで、1回の測定による評価対象配管の周長の測定範囲を軸線方向にさらに拡大することができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、前記評価対象配管の余寿命を評価するステップで評価した前記評価対象配管の余寿命が閾値以下である場合に、該評価対象配管の余寿命を再評価するステップ
をさらに備える。
【0015】
上記(5)の方法によれば、評価対象配管の外周の周長を測定するという簡便な方法によって評価対象配管の余寿命を評価し、その評価結果に基づいて、より詳細な余寿命の評価が必要と判断される場合に評価対象配管の余寿命を再評価することができる。これにより、評価対象配管の余寿命評価のための測定時間の短縮化と余寿命評価の精度向上とを実現できる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の方法において、前記評価対象配管の余寿命を再評価するステップは、前記評価対象配管を非破壊で検査する検査方法によって得られた検査結果に基づいて前記評価対象配管の余寿命を再評価する。
【0017】
上記(6)の方法によれば、評価対象配管を備える機器において、検査のために評価対象配管の一部を抜管する等の必要がないので、検査に要する時間や費用を抑制できる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの方法において、前記相関を取得するステップをさらに備える。
【0019】
上記(7)の方法によれば、例えば評価対象配管と同種の金属材料を用いて上記の相関を取得することで、評価対象配管の余寿命の評価精度を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、配管の余寿命評価の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
【
図4】伝熱管の外周の周長の測定について説明するための図であり、(a)は測定冶具の一例を示す図であり、(b)は(a)に示した測定冶具を伝熱管の外周に巻き付ける様子を示す図である。
【
図5】測定冶具を用いた伝熱管の外周の周長の測定について説明するための図であり、(a)は伝熱管の巻き付けた測定冶具に印をつける様子を説明するための図であり、図(b)は(a)に示すように印をつけた後、伝熱管の周長を測定する様子を示す図であり、(c)は測定冶具の端部に予め付されている目盛から伝熱管の周長を読み取ることについて説明するための図である。
【
図6】幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法における、配管の周長測定の他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0023】
(ボイラの全体構成)
図1はボイラ10の概略構成を示す図である。
ボイラ10は、燃焼炉12と、燃焼炉12の上部に連なる煙道14とを有する。
燃焼炉12の火路壁16は水を加熱するための蒸発管を含み、燃焼炉12の上部には、蒸気を過熱するための過熱器18が配置されている。煙道14の下部には、水を予備加熱するための節炭器20が配置されている。また、煙道14の上部には、蒸気を再加熱するための再熱器22が配置されている。
【0024】
燃焼炉12には、バーナ24が取り付けられ、バーナ24には、燃料としての微粉炭及び空気が供給される。バーナ24から噴出する微粉炭が燃焼することにより生じた高温の排ガスは、燃焼炉12内を上昇し、煙道14に流入する。燃焼により生じた熱は、火路壁16の蒸発管に伝えられ、これにより水が加熱される。排ガスの熱は、過熱器18での蒸気の過熱、再熱器22での蒸気の再加熱、及び、節炭器20での水の予熱に利用される。低温になった排ガスは、例えばボイラ10の下流に設けられた脱硝装置に流入し、浄化される。
過熱器18で過熱された蒸気(主蒸気)は、例えば、蒸気タービン26に供給され、発電等に利用される。
【0025】
図2は、過熱器18の構成を模式的に示す図である。なお、再熱器22の構成も過熱器18の構成と同様であるので、説明を省略する。
過熱器18は、入口管寄せ18Aと、出口管寄せ18Cと、複数の過熱管(伝熱管)18Bとを備えている。
図2に示した過熱器18では、複数の伝熱管18Bが略U字状且つ平面状に配列された伝熱管パネル18Dが管寄せ18A,18Cの延在方向に複数並ぶように配置されている。
【0026】
過熱器18や再熱器22の伝熱管は、高温・高圧下で長時間使用されるので、伝熱管の健全性を確認するため、定期検査等において余寿命の評価が行われる。その際、伝熱管の余寿命の評価を非破壊かつ簡便に行うため、伝熱管の外径を測定し、測定した外径が所定の基準値に達している場合には、当該伝熱管が交換補修時期であると判定するようにしている。
すなわち、過熱器18や再熱器22等の伝熱管は、クリープの進行とともにクリープひずみが累積していくと、クリープ寿命の約8割、すなわち伝熱管の寿命消費率の約80%を経過した辺りから急激に膨張する特性を有する。そのため、伝熱管の外径が過熱器18や再熱器22等の使用開始前からどの程度大きくなったかを調べることで、伝熱管の寿命消費率を非破壊かつ簡便に推定することができる。
【0027】
しかし、例えば伝熱管の周方向の位置のうち、燃焼ガスの流れの上流側となる位置と下流側となる位置とでは、伝熱管の温度が異なるおそれがあるため、伝熱管の周方向の一部が径方向外側に膨出する等、伝熱管の径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なることも考えられる。このように、伝熱管の径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なる場合、例えばノギスのような測定装置によって伝熱管の外径を測定すると、測定する周方向の位置によって外径の測定値が異なってしまうため、外径の測定値に伝熱管の径方向外側への変形状態が適切に反映されないおそれがある。そのため、伝熱管の径方向外側への変形状態を適切に把握できず、伝熱管の余寿命の評価精度が低下するおそれがある。
【0028】
また、例えばボイラ10における燃焼ガスの温度や流速、流れの方向は、場所によって異なる。そのため、同じ伝熱管であっても、軸線方向の異なる位置では伝熱管の温度が大きく異なるおそれがある。
【0029】
そこで、以下で説明する幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法では、余寿命の評価対象の伝熱管である評価対象配管の外周の周長を測定することにより、径方向外側への変形状態を把握するようにしている。以下、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法について説明する。
【0030】
図3は、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
ここで、余寿命評価の対象の配管(評価対象配管)は、例えば、過熱器18の伝熱管18Bのように、過熱器18や再熱器22の伝熱管である。
幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法は、相関取得ステップS10と、周長測定ステップS20と、余寿命評価ステップS30と、余寿命再評価ステップS50とを備える。
【0031】
(相関取得ステップS10)
相関取得ステップS10は、配管の外周の周長と配管の余寿命との相関を取得するステップである。
配管の外周の周長と配管の余寿命との相関は、配管の材質、径、肉厚等によって異なる。そこで、相関取得ステップS10では、例えば実験データや文献を参照することで配管の外周の周長と配管の余寿命との相関を取得する。相関取得ステップS10で取得する配管の外周の周長と配管の余寿命との相関は、例えば、クリープによって配管が破断したときをクリープ寿命の寿命消費率を100%とするクリープ寿命の寿命消費率と、配管の外周の周長との関係である。
なお、相関取得ステップS10は、配管の外周の周長と配管の余寿命との相関が既に取得されていれば、その後の配管の余寿命を評価する際に、再び実施する必要はない。
相関取得ステップS10において、例えば評価対象配管となる伝熱管18Bと同種の金属材料を用いて上記の相関を取得することで、評価対象配管の余寿命の評価精度を向上できる。
【0032】
(周長測定ステップS20)
周長測定ステップS20は、評価対象配管である伝熱管の外周の周長を測定するステップである。周長測定ステップS20では、配管の外周に巻き付け可能な線状又は帯状の測定冶具を評価対象配管である伝熱管の外周に少なくとも1周巻き付ける。そして、測定冶具が伝熱管の外周に巻き付いた長さから伝熱管の外周の周長を求める。
【0033】
なお、周長の測定は、例えば、全ての伝熱管18Bに対して実施してもよく、過熱器18が使用されている期間や運転条件に応じて、熱的な負荷が大きな場所に配置された伝熱管18Bに限って実施してもよい。また、周長の測定は、1本の伝熱管18Bに対して、その全長にわたって所定の間隔で実施してもよく、熱的な負荷が大きな範囲に限って所定の間隔で実施してもよい。
【0034】
上述のようにして周長の測定箇所を設定した後、以下に述べる周長の測定の前に、伝熱管18Bの表面に付着している付着物を除去するためにショットブラストを実施したり、グラインダをかけたりする。このようにして表面から付着物が除去された伝熱管18Bに対し、周長の測定を実施する。
【0035】
図4は、伝熱管18Bの外周の周長Lの測定について説明するための図であり、
図4(a)は、測定冶具30の一例を示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示した測定冶具30を伝熱管18Bの外周に巻き付ける様子を示す図である。
図4(a)に示した測定冶具30は、例えば柔軟性を有する帯状の部材ある。なお、測定冶具30は、柔軟性を有する線状(紐状)の部材であってもよい。すなわち、測定冶具30は、評価対象配管である伝熱管18Bの外周に巻き付けることができ、以下で述べるように、伝熱管18Bの外周の周長Lを直接又は間接的に測定できるものであれば、その形態や形状は
図4(a)に例示したものに限定されない。
【0036】
例えば
図4(a)に示した測定冶具30のように、測定冶具30を
図4(b)に示すように伝熱管18Bの外周に巻き付けたときに、その端部31同士を伝熱管18Bの軸線方向にずらさなくても測定冶具30の厚さ方向に重ならないように、端部31において幅方向の一部が切り欠かれていてもよい。なお、伝熱管18Bの外周の周長の測定に、
図4(a)に示すような測定冶具30を用いるのではなく、一般的な巻き尺を用いてもよい。
【0037】
例えば、
図4(a)に示した測定冶具30を用いた場合、
図4(b)に示すように、測定冶具30を伝熱管18Bの外周に1周巻き付ける。そして、測定冶具30を伝熱管18Bの外周に1周巻き付けた状態で、
図5(a)に示すように、一方の端部31と他方の端部31の双方に対して、伝熱管18Bの周方向の同じ位置に、例えば油性のペン39などで印38をつける。そして、測定冶具30を伝熱管18Bから外して平らな場所で伸ばし、
図5(b)に示すように、一方の端部31につけた印38と他方の端部31につけた印38との間の長さを測定する。このように、一方の端部31につけた印38と他方の端部31につけた印38との間の長さを測定することで、伝熱管18Bの周長Lを間接的に測定できる。
【0038】
また、
図5(c)に示すように、測定冶具30の一方の端部31に例えばノギスの本尺に相当する目盛35を予め付しておき、他方の端部31に例えばノギスの副尺に相当する目盛36を予め付して付しておいてもよい。このように、測定冶具30の端部31に目盛を予め付しておくことで、測定冶具30を伝熱管18Bの外周に巻き付けた状態で周長Lを上記の目盛から直接読み取ることができるようにしてもよい。
【0039】
なお、
図5は、測定冶具30を用いた伝熱管18Bの外周の周長Lの測定について説明するための図である。
図5(a)は、伝熱管18Bの巻き付けた測定冶具30に印38をつける様子を説明するための図である。
図5(b)は、
図5(a)に示すように印38をつけた後、伝熱管18Bの周長Lを測定する様子を示す図である。
図5(c)は、測定冶具30の端部31に予め付されている目盛35,36から伝熱管18Bの周長Lを読み取ることについて説明するための図である。
【0040】
このように、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法では、評価対象配管である伝熱管18Bの外周の周長Lを測定することにより、伝熱管18Bの径方向外側への変形状態が周方向の位置によって異なっていても、径方向外側への変形状態が反映された測定値を得ることができる。これにより、伝熱管18Bの径方向外側への変形状態を適切に把握でき、伝熱管18Bの余寿命の評価精度を向上できる。
また、一般的に、円形断面の部材において、径が変化した場合、径の変化量よりも周長の変化量の方が大きい。そのため、ノギスのような測定装置によって直径を直接計測する場合と比べて、伝熱管18Bの径の変化を把握し易くなる。この点からも、伝熱管18Bの余寿命の評価精度を向上できる。
なお、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法は、フェライト鋼の他、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基の合金等、様々な材料の配管に対して適用できる。特に、オーステナイト系ステンレスやニッケル基の合金では、フェライト鋼よりもクリープ破断に至るまでのクリープひずみが小さいが、上述したように、ノギスのような測定装置によって直径を直接計測する場合と比べて、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法によれば配管の径の変化を把握し易い。したがって、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法は、オーステナイト系ステンレスやニッケル基の合金等の配管の余寿命評価に適している。
さらに、伝熱管18Bの外周の周長Lを測定するという簡便な方法によって伝熱管18Bの余寿命を評価できるので、測定に要する時間を短縮できる。
【0041】
幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法では、配管の外周に巻き付け可能な線状又は帯状の測定冶具30を用いることで、伝熱管18Bの外周の周長Lを容易に測定できる。また、過熱器18や再熱器22の伝熱管のように、複数の伝熱管が近接して配置されている場合等のように、ノギスのような測定装置を用いることが困難であるような狭隘な場所であっても、伝熱管の外周の周長Lを測定できる。
【0042】
図6は、幾つかの実施形態に係る配管の余寿命評価方法における、配管の周長測定の他の実施形態を説明する図である。
周長測定ステップS20において、
図6に示すように、測定冶具30を評価対象配管である伝熱管18Bの外周に2周以上巻き付けて、測定冶具30が伝熱管18Bの外周に巻き付いた長さと、測定冶具30を伝熱管18Bに巻き付けた周数とに基づいて伝熱管18Bの外周の周長Lを求めてもよい。なお、
図6は、伝熱管18Bに測定冶具30を2周巻き付けた状態を模式的に示している。
このように、測定冶具30を伝熱管18Bの外周に2周以上巻き付けることで、伝熱管18Bの周長Lの測定範囲を伝熱管18Bの軸線方向に拡大することができる。これにより、1回の測定による伝熱管18Bの周長Lの測定範囲を伝熱管18Bの軸線方向に拡大できる。したがって、例えば伝熱管18Bの径方向外側への変形が軸線方向の一部で生じていた場合であっても、伝熱管18Bが径方向外側へ変形していることを把握し易くなる。
【0043】
なお、周長測定ステップS20において、
図6に示すように、測定冶具30を伝熱管18Bの軸線方向にずれるように伝熱管18Bの外周に2周以上巻き付けて、測定冶具30が伝熱管18Bの外周に巻き付いた長さLaと、測定冶具30の軸線方向へのずれ量Zと、測定冶具30を伝熱管18Bに巻き付けた周数Nとに基づいて伝熱管18Bの外周の周長Lを求めてもよい。
この場合、周長Lは、次の(1)式によって求めることができる。
L={(La^2-N^2)^0.5}/N ・・・(1)
なお、ずれ量Zは、測定冶具30が伝熱管18Bの外周に巻き付いた長さLaを測定する始点と終点との軸線方向の離間距離である。
【0044】
このように、測定冶具30を伝熱管18Bの軸線方向にずれるように伝熱管18Bの外周に2周以上巻き付けることで、1回の測定による伝熱管18Bの周長Lの測定範囲を伝熱管18Bの軸線方向にさらに拡大することができる。したがって、伝熱管18Bが軸線方向で局所的に膨出している場合であっても、径方向外側への変形を検出し易い。
【0045】
(余寿命評価ステップS30)
上述した周長測定ステップS20で伝熱管18Bの外周の周長Lを測定した後、余寿命評価ステップS30において、伝熱管18Bの余寿命を評価する。余寿命評価ステップS30では、相関取得ステップS10で取得した配管の外周の周長と配管の余寿命との相関に、周長測定ステップS20で測定して得られた周長Lを入力することで伝熱管18Bの余寿命を評価する。
例えば、幾つかの実施形態に係る余寿命評価ステップS30では、相関取得ステップS10で取得したクリープ寿命の寿命消費率と周長との関係に、周長測定ステップS20で測定して得られた周長Lを入力することで、伝熱管18Bの寿命消費率を算出する。そして、算出された寿命消費率から伝熱管18Bの余寿命を評価することができる。
【0046】
次いで、ステップS40において、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命が閾値以下であるか否かを判断する。
【0047】
ここで、上記閾値について説明する。周長測定ステップS20を実施した今回のボイラ10の定期検査の時点から、次の定期検査(次回定期検査)までの期間をTa[時間]とする。今回のボイラ10の定期検査において伝熱管18Bの余寿命が上記Ta[時間]未満であれば、今回の定期検査で当該伝熱管18Bに補修等の対策を行わない場合、当該伝熱管18Bは、次回定期検査の前にクリープ破断するおそれがある。
しかし、今回のボイラ10の定期検査において伝熱管18Bの余寿命が上記Ta[時間]を超えていても、余寿命評価の精度を考慮すると、当該伝熱管18Bは、次回定期検査の時点よりも手前の時点でクリープ破断するおそれがある。
【0048】
そこで、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命の精度が、例えばいわゆる倍半分の精度である場合には、今回のボイラ10の定期検査における伝熱管18Bの余寿命が上記Ta[時間]の2倍をある程度のゆとりをもって超えていれば、当該伝熱管18Bは、次回定期検査の時点までクリープ破断しないと判断することができる。
そこで、幾つかの実施形態では、上記閾値は、例えば、次回定期検査までの期間であるTa[時間]の2倍の値(2・Ta)に、さらに裕度を持たせるための1以上の値となる係数c(c>1)を乗じた値(2・c・Ta)とする。
【0049】
すなわち、ステップS40では、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命が上述のようにして設定された閾値(2・c・Ta)以下であるか否かを判断する。
ステップS40において、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命が閾値(2・c・Ta)を超えていると判断される場合、当該伝熱管18Bが少なくとも次回定期検査までクリープ破断しないものと判断して、当該伝熱管18Bの余寿命の再評価や当該伝熱管18Bに対する補修等の対策は実施しない。
しかし、ステップS40において、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命が閾値(2・c・Ta)以下であると判断される場合、当該伝熱管18Bが次回定期検査までにクリープ破断するおそれがあると判断して、余寿命再評価ステップS50において当該伝熱管18Bの余寿命を再評価する。
【0050】
(余寿命再評価ステップS50)
余寿命再評価ステップS50は、上述したように、余寿命評価ステップS30で評価した伝熱管18Bの余寿命が上記閾値以下である場合に、当該伝熱管18Bの余寿命を再評価、すなわち、より詳細に余寿命を評価するステップである。
当該伝熱管18Bの余寿命を再評価する方法としては、例えば、当該伝熱管18Bの表面のレプリカを採取し、クリープボイドや析出物などの部材の微視的組織の変化からクリープ損傷を評価するレプリカ法や、超音波を用いる超音波法あるいは電気抵抗の変化により評価する電気抵抗法等の非破壊検査法を挙げることができる。
【0051】
余寿命再評価ステップS50では、上述した検査法によって当該伝熱管18Bの余寿命をより詳細に評価する。
そして、例えば、再評価した余寿命が上記Ta[時間]をある程度のゆとりをもって超えていれば、当該伝熱管18Bは、次回定期検査の時点までクリープ破断しないと判断することができる。この場合には、当該伝熱管18Bに対する補修等の対策は実施しない。
また、例えば、再評価した余寿命が上記Ta[時間]をある程度のゆとりをもって超えていなければ、当該伝熱管18Bに対する補修等を実施する。
なお、余寿命再評価ステップS50においても、再評価した伝熱管18Bの余寿命が上述したステップS40で設定された閾値(2・c・Ta)以下であるか否かによって、当該伝熱管18Bに対する補修等の対策の要否を判断するようにしてもよい。
【0052】
このように、上述した幾つかの実施形態では、評価対象配管である伝熱管18Bの外周の周長Lを測定するという簡便な方法によって伝熱管18Bの余寿命を評価し、その評価結果に基づいて、より詳細な余寿命の評価が必要と判断される場合に伝熱管18Bの余寿命を再評価することができる。これにより、伝熱管18Bの余寿命評価のための測定時間の短縮化と余寿命評価の精度向上とを実現できる。
【0053】
余寿命再評価ステップS50では、上述したように伝熱管18Bを非破壊で検査する検査方法によって得られた検査結果に基づいて伝熱管18Bの余寿命を再評価することができる。
これにより、過熱器18や再熱器22のように評価対象配管を備える機器において、検査のために評価対象配管の一部を抜管する等の必要がないので、検査に要する時間や費用を抑制できる。
【0054】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、余寿命再評価ステップS50において非破壊検査法によって伝熱管18Bを検査するようにしているが、余寿命再評価ステップS50において伝熱管18Bを抜管するなどして、伝熱管18Bを検査するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ボイラ
18 過熱器
18B 過熱管(伝熱管)
22 再熱器
30 測定冶具