(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
B60H1/00 102K
(21)【出願番号】P 2018061691
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】村岡 康伸
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-235914(JP,A)
【文献】特開2001-063346(JP,A)
【文献】特開2003-326946(JP,A)
【文献】特開2005-067271(JP,A)
【文献】特開2019-084840(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125731(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/004203(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第3037866(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流れる通路を有した空調ケースと、該空調ケースの内部に設けられる冷却器と、該冷却器の下流側に設けられる加熱器と、該加熱器が設けられる温風通路と、前記冷却器の下流側において前記加熱器を上下に迂回する一組の冷風通路と、前記加熱器の下流側に形成され前記冷風通路を流通する冷風と前記加熱器を通過した温風とが合流して温調され温調風となる合流部と、車両における前席の足元へ送風する前席用ヒート開口と、前記前席の顔近傍へと送風する前席用ベント開口と、前記車両における後席の足元へ送風する後席用ヒート開口と、前記後席の顔近傍へと送風する後席用ベント開口と、前記前席用ヒート開口及び前記後席用ヒート開口の上流側に形成されるヒート開口と、前記ヒート開口を開閉するヒート切替ドアとを備える車両用空調装置において、
前記空調ケースには、前記合流部に臨むように設けられ前記後席用ヒート開口及び前記後席用ベント開口からの空気を後席側へと送風する後席用送風ユニットを備え、
前記ヒート開口及び前記後席用ベント開口の少なくとも一部が、それぞれ前記加熱器と対向するように配置される
と共に、
前記後席用送風ユニットは、前記後席用ベント開口に接続される後席用ベント通路と、
前記後席用ヒート開口に接続される後席用ヒート通路と、
を備え、
前記後席用ベント通路と前記後席用ヒート通路とが、それぞれ車両の前後方向において後方に向けて延在することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記空調ケースの高さ方向において、前記ヒート開口と前記後席用ベント開口との少なくとも一部が重なるように配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記後席用送風ユニットは、前記空調ケースとは別部材から構成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記ヒート開口は、前記後席用ベント開口に対して上方に配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記後席用ベント開口は、
前記車両の
前記前後方向において少なくとも一部が前記冷風通路と重なるように配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内における前席側と後席側の空調を同時に行うことが可能な車両用空調装置が知られており、このような車両用空調装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、空調ケースの下流側上方に前席側の顔近傍へ送風する前席側ベントが開口し、ヒータコアの下流側下方に後席側の顔近傍へ送付する後席側ベントが開口すると共に、さらに空調ケースの下流側には、ヒータコアの上方で開口して下方に向かって延在するヒート通路が延在し、その下端には前席側の足元近傍へ送風する前席用フロアベントが開口している。
【0003】
そして、エバポレータで冷却されヒータコアの上方を迂回した冷風を前席側ベントから前席の乗員の顔近傍へと送風すると共に、該ヒータコアの下方を迂回した冷風を後席側ベントから後席側へと送風すると共に、ヒータコアを通過した温風を、空調ケースの下流側に沿って高さ方向に延在したヒート通路を通じて前席用フロアベントから前席における乗員の足元近傍へと送風する。また、前席用フロアベントへ送風される温風の一部を、後席における乗員の足元近傍へと供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した車両用空調装置では、温風を供給するためのヒート通路の開口がヒータコアよりも上方に設けられているため、下方に開口した前席用フロアベントまで温風を導くためにヒート通路を高さ方向に沿って延在するように設ける必要があり、このヒート通路の分だけ空調ケースが前後方向に大型化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、前席側及び後席側における乗員の足元近傍への送風温度を均一化しつつ、車両の前後方向において小型化を図ることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流れる通路を有した空調ケースと、空調ケースの内部に設けられる冷却器と、冷却器の下流側に設けられる加熱器と、加熱器が設けられる温風通路と、冷却器の下流側において加熱器を上下に迂回する一組の冷風通路と、加熱器の下流側に形成され冷風通路を流通する冷風と加熱器を通過した温風とが合流して温調され温調風となる合流部と、車両における前席の足元へ送風する前席用ヒート開口と、前席の顔近傍へと送風する前席用ベント開口と、車両における後席の足元へ送風する後席用ヒート開口と、後席の顔近傍へと送風する後席用ベント開口と、前席用ヒート開口及び後席用ヒート開口の上流側に形成されるヒート開口と、ヒート開口を開閉するヒート切替ドアとを備える車両用空調装置において、
空調ケースには、合流部に臨むように設けられ後席用ヒート開口及び後席用ベント開口からの空気を後席側へと送風する後席用送風ユニットを備え、
ヒート開口及び後席用ベント開口の少なくとも一部が、それぞれ加熱器と対向するように配置されると共に、
後席用送風ユニットは、後席用ベント開口に接続される後席用ベント通路と、
後席用ヒート開口に接続される後席用ヒート通路と、
を備え、
後席用ベント通路と後席用ヒート通路とが、それぞれ車両の前後方向において後方に向けて延在することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車室内の後席側へ送風可能な後席用送風ユニットを有した車両用空調装置において、この後席用送風ユニットは、冷風と温風とが合流して温調され温調風となる合流部に臨むように設けられ、前席用ヒート開口及び後席用ヒート開口の上流側にはヒート開口が形成され、車両後席の顔近傍へと送風する後席用ベント開口及びヒート開口の少なくとも一部が、加熱器にそれぞれ対向するように配置されている。
【0009】
従って、ヒート開口から取り込んだ温調風を、前席側の足元近傍へ送風する前席用ヒート開口と、後席側の足元近傍へ送風する後席用ヒート開口へとそれぞれ供給して車室内へと送風できるため、前席用ヒート開口から前席側の足元へ送風される温調風と、後席側ヒート開口から後席側の足元へ送風される温調風とを同一温度で送風することができる。また、空調ケースにおいて、ヒート開口と後席用ベント開口とを高さ方向において加熱器と重なるように配置することで、高さ方向に延在するヒート通路を有していた従来技術に係る車両用空調装置と比較し、空調ケースを車両の前後方向に小型化することが可能となる。
【0010】
さらに、空調ケースの高さ方向において、ヒート開口と後席用ベント開口との少なくとも一部が重なるように配置するとよい。
【0011】
さらにまた、後席用送風ユニットを、空調ケースとは別部材から構成するとよい。
【0012】
またさらに、ヒート開口を、後席用ベント開口に対して上方に配置するとよい。
【0013】
また、後席用ベント開口を、車両の前後方向において少なくとも一部が冷風通路と重なるように配置するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、車室内の後席側へ送風可能な後席用送風ユニットは、空調ケースに対して冷風と温風とが合流し温調され温調風となる合流部に臨むように設けられ、前席用ヒート開口及び後席用ヒート開口の上流側にヒート開口を設けることで、ヒート開口から取り込んだ温調風を、前席用ヒート開口と後席用ヒート開口にそれぞれ供給して車室内へと送風できるため、前席用ヒート開口から前席側の足元へ送風される温調風と、後席側ヒート開口から後席側の足元へ送風される温調風とを同一温度とすることができる。また、後席の顔へと送風する後席用ベント開口及びヒート開口の少なくとも一部を、それぞれ加熱器に対向するように配置することで、従来の車両用空調装置と比較して車両の前後方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。
【0018】
この車両用空調装置10は、
図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、該空調ケース12の内部に配設され空気を冷却するエバポレータ(冷却器)14と、前記空気を加熱する加熱ユニット(加熱器)16と、各通路内を流通する空気の流れを切り換えるドア機構18と、車両の後席側へ送風する後席用送風ユニット20とを含む。
【0019】
この空調ケース12は、車両の前後方向(矢印A、B方向)と直交する幅方向(
図2及び
図3中、矢印C方向)に分割可能な第1及び第2ケース部22、24からなり、その上方(矢印D1方向)には、車室内における前席の乗員の顔近傍に送風を行う前席用ベント送風口(前席用ベント開口)26と、該前席用ベント送風口26と隣接して車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うデフロスタ送風口28とが開口している。なお、デフロスタ送風口28が車両前方側(矢印A方向)、前席用ベント送風口26が車両後方側(矢印B方向)となるように隣接して形成される。
【0020】
また、空調ケース12における後方側(矢印B方向)となる壁部には、後席用送風ユニット20の接続される後席側開口30が形成され、車両の前後方向と直交する第1及び第2ケース部22、24の幅方向壁部には、車室内における前席の乗員の足元近傍に送風を行う前席用ヒート送風口(前席用ヒート開口)32(
図1及び
図3参照)がそれぞれ形成されている。
【0021】
一方、空調ケース12の内部には、空気の流通方向における上流側(矢印A方向)となる位置にエバポレータ14が設けられ、前記エバポレータ14に対して下流側(矢印B方向)となる位置に所定間隔離間して加熱ユニット16が設けられる。
【0022】
この加熱ユニット16は、例えば、内部に温水が循環することで空気を加熱するヒータコア34と、このヒータコア34の下流側(矢印B方向)に設けられ通電作用下に発熱する電気ヒータ36とからなり、この電気ヒータ36は、コントローラからの制御信号に基づいて発熱体が発熱することで、通過する空気を所定温度に加熱して下流側へと供給する。
【0023】
また、空調ケース12の内部には、エバポレータ14とヒータコア34との間に分割リブ38が設けられ、この分割リブ38は、例えば、ヒータコア34の高さ方向(矢印D1、D2方向)に沿った略中央部近傍に臨み、後述するドア機構18の第1エアミックスドア62と第2エアミックスドア64との間に設けられる。
【0024】
さらに、空調ケース12の内部には、エバポレータ14の配置される冷風通路40と、該冷風通路40の下流側に形成され加熱ユニット16の配置される温風通路42と、前記冷風通路40の下流側において前記加熱ユニット16を迂回する一組の第1及び第2バイパス通路(冷風通路)44、46とを有し、第1バイパス通路44がヒータコア34の上方(矢印D1方向)を迂回するように延在し、第2バイパス通路46が前記ヒータコア34の下方(矢印D2方向)を迂回するように延在し、それぞれ前記冷風通路40の下流側と連通している。
【0025】
すなわち、第1及び第2バイパス通路44、46は、それぞれ冷風の流通する冷風通路として機能している。
【0026】
また、空調ケース12における加熱ユニット16の後方には、第1及び第2バイパス通路44、46を流通する冷風と、温風通路42を流通する温風とが合流することで温調され温調風となる合流部47が形成される。
【0027】
この合流部47の後方には、温調風を前席用ヒート通路(図示しない)及び後席用送風ユニット20へと導くための一対のヒート開口48a、48bが形成される。
【0028】
このヒート開口48a、48bは、
図1及び
図2に示されるように、例えば、第1及び第2ケース部22、24にそれぞれ設けられ、電気ヒータ36の直後となる下流側(矢印B方向)に形成され、空調ケース12の幅方向(
図2中、矢印C方向)に沿って断面矩形状に形成された第1開口部50と、該第1開口部50の下部に設けられ幅方向外側に形成された第2開口部52とを有する。すなわち、第2開口部52は、第1開口部50に対して幅方向(矢印C方向)に幅狭状に形成され、且つ、その幅方向端部が、該第1開口部50の幅方向端部と一直線状となるように形成される。
【0029】
また、一対のヒート開口48a、48bは、第1ケース部22側のヒート開口48aと第2ケース部24側のヒート開口48bとが、空調ケース12の幅方向(矢印C方向)において対称形状となるように形成される。
【0030】
そして、ヒート開口48a、48bは、
図3に示される下流側において第1開口部50が車両後方側に向かって延在した第1後席用ヒート通路(後席用ヒート開口)54に接続され、第2開口部52が空調ケース12の幅方向壁部に開口した前席用ヒート送風口32と接続されている。
【0031】
また、第1後席用ヒート通路54は、幅方向(矢印C方向)に長尺となる扁平な断面長方形状に形成され、その下方には後述する第1後席用ベント通路60が隣接するように形成される。なお、第1後席用ヒート通路54と第1後席用ベント通路60とは非連通に形成される。
【0032】
一方、
図2に示される電気ヒータ36の下流側となる位置において、ヒート開口48a、48bの下方には、合流部47で温調された温調風を後席用送風ユニット20へと送風するための後席用ベント開口58が形成され、この後席用ベント開口58は、空調ケース12の幅方向中央で第2バイパス通路46に臨む位置に下方に開口すると共に(
図1参照)、上下方向に長尺となる断面長方形状に形成される(
図2参照)。また、後席用ベント開口58は、
図2に示されるように、ヒート開口48a、48bにおける第2開口部52の幅方向内側となるように形成される。
【0033】
すなわち、後席用ベント開口58が、ヒート開口48a、48bの第2開口部52と空調ケース12の高さ方向(矢印D1、D2方向)において重複するように配置されている。
【0034】
また、ヒート開口48a、48b及び後席用ベント開口58は、
図2に示される車両の前後方向から見て、ヒータコア34(加熱ユニット16)と重なり合う位置に配置される。
【0035】
そして、
図1に示されるように、後席用ベント開口58は、空調ケース12の後方側(矢印B方向)に向かって延在した第1後席用ベント通路60と接続され、この第1後席用ベント通路60が後席側開口30を介して後席用送風ユニット20と連通する。
【0036】
ドア機構18は、
図1に示されるように、エバポレータ14とヒータコア34との間に設けられ冷風と温風との混合割合を調節する第1エアミックスドア62と、前記エバポレータ14の下流側において第2バイパス通路46への冷風の流通状態を切り替える第2エアミックスドア64と、前席用ベント送風口26から車室内への送風状態を調整する第1ベント切替ドア66と、デフロスタ送風口28からフロントウィンドウへの送風状態を切り替えるデフロスタ切替ドア68と、ヒート開口48a、48bを開閉するヒート切替ドア70と、後述する後席用送風ユニット20に設けられる第2ベント切替ドア72とを含む。
【0037】
第1及び第2エアミックスドア62、64は、空調ケース12に対して回転自在に支持された第1及び第2シャフト74、76に対してラックギア78を介してそれぞれ噛合され、図示しない駆動手段からの駆動力によって第1及び第2シャフト74、76が回転することで、前記第1及び第2エアミックスドア62、64が上下方向(矢印D1、D2方向)にスライド変位する。
【0038】
そして、第1エアミックスドア62は、分割リブ38の上方となるように設けられ、上下方向にスライドすることで冷風通路40を流れる冷風の温風通路42側への流通割合を調節し、第2エアミックスドア64は、前記分割リブ38の下方となるように設けられ、上下方向にスライドすることで前記温風通路42とヒータコア34の下方となる第2バイパス通路46との流通割合を調節する。
【0039】
ヒート切替ドア70は、ヒート開口48a、48bに対してそれぞれ設けられ、空調ケース12の幅方向壁部に支持された回転軸80と、該回転軸80から径方向外側へと延在した遮蔽壁82とを有し、この遮蔽壁82は前記回転軸80を中心として両側に延在するように形成されている。また、ヒート切替ドア70の回転軸80は、
図2に示される車両の前後方向から見てヒータコア34と重なるように配置されている。
【0040】
そして、ヒート切替ドア70が回動することでヒート開口48a、48bが開閉され、ヒート開口48a、48bと連通した前席用ヒート送風口32と第1後席用ヒート通路54に対する温調風の送風状態が切り替えられる。換言すれば、単一のヒート切替ドア70によって前席側への温調風の送風状態と後席側への温調風の送風状態とをそれぞれ調整可能としている。
【0041】
後席用送風ユニット20は、その内部に第2後席用ベント通路84及び第2後席用ヒート通路86を有したダクト88からなり、空調ケース12の後方側壁部に開口した後席側開口30に接続される。このダクト88は、上方に第2後席用ヒート通路86が形成され、下方に第2後席用ベント通路84が形成され、空調ケース12側から下流側に向かって二層となるように延在している。
【0042】
そして、第2後席用ヒート通路86は、その上流側が空調ケース12の第1後席用ヒート通路54に接続され、下流側が車室内における後席側の乗員の足元近傍に臨む送風口(図示せず)へと接続される。また、第2後席用ベント通路84は、その上流側が空調ケース12の第1後席用ベント通路60(後席用ベント開口58)に接続され、下流側が車室内における後席側の乗員の顔近傍に臨む送風口(図示せず)と接続される。
【0043】
また、第2後席用ベント通路84には、その連通状態を切り替えるための第2ベント切替ドア72が開閉自在に設けられ、この第2ベント切替ドア72を開閉させることで後席側の顔近傍への送風状態が切り替えられる。
【0044】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0045】
先ず、車両用空調装置10において、乗員の足元近傍へ温調風を送風する暖房運転(ヒートモード)を行う場合には、ヒート切替ドア70を回転軸80を中心として回転させ開放状態とし、第2ベント切替ドア72は全閉状態としておく。
【0046】
そして、エバポレータ14を通過した冷風は、第1及び第2エアミックスドア62、64によって加熱ユニット16と第1及び第2バイパス通路44、46へ流入する割合を調整され、前記加熱ユニット16へ流入してヒータコア34及び電気ヒータ36を通過することで加熱された温風と、第1及び第2バイパス通路44、46へ流入して加熱ユニット16を迂回した冷風とが、合流部47で合流することで温調される。
【0047】
この温調された温調風は、ヒート開口48a、48bから後方側へと流れ、図示しない前席用ヒート通路と第1後席用ヒート通路54へと分流された後、この前席用ヒート通路から前席用ヒート送風口32を介して前席側における乗員の足元近傍へと送風される。また、第1後席用ヒート通路54を流れる温調風は、後席側開口30を介して後席用送風ユニット20の第2後席用ヒート通路86へと流れ、図示しない送風口から後席側における乗員の足元近傍へと送風される。
【0048】
次に、乗員の顔近傍へ温調風を送風する冷房運転(ベントモード)を行う場合には、第1ベント切替ドア66によって前席用ベント送風口26を開放させ、ヒート切替ドア70を回転させ全閉状態とすると共に、第2ベント切替ドア72を回転させ開放状態としておく。
【0049】
これにより、合流部47で温調された温調風は、前席用ベント送風口26を通じて前席における乗員の顔近傍へと送風される。
【0050】
また、温調風は、後席用ベント開口58から第1後席用ベント通路60に沿って後方へと流れた後、後席側開口30から後席用送風ユニット20の第2後席用ベント通路84へと流れて図示しない送風口から後席側の顔近傍へと送風される。
【0051】
次に、乗員の足元近傍と顔近傍へ同時に温調風を送風するバイレベルモードを行う場合には、第1及び第2ベント切替ドア66、72とヒート切替ドア70を開放状態としておく。これにより、合流部47で温調された温調風は、ヒート開口48a、48bと第1及び第2後席用ヒート通路54、86、前席用ベント送風口26、第1及び第2後席用ベント通路60、84へと流れてそれぞれ乗員の足元近傍と顔近傍へ同時に送風される。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、車室内の後席側へ送風可能な後席用送風ユニット20を有した車両用空調装置10において、その空調ケース12の内部には、加熱ユニット16の下流側にヒート開口48a、48bと、後席用ベント開口58とを備え、前記ヒート開口48a、48bを、前席側の足元近傍へ送風する前席用ヒート送風口32と、後席側の足元近傍へ送風する第1及び第2後席用ヒート通路54、86と接続すると共に、前記ヒート開口48a、48b及び前記後席用ベント開口58を、車両の前後方向から見て、加熱器ユニットと重なる位置に配置している。
【0053】
これにより、ヒート開口48a、48bから取り込んだ温調風を、前席用ヒート送風口32と、第1及び第2後席用ヒート通路54、86へとそれぞれ送風することができる。そのため、前席側の足元近傍へ送風される温調風と、後席側の足元近傍へ送風される温調風とを同一の温度として送風することができる。
【0054】
また、空調ケース12において、後席側へ温調風を送風するための後席用ベント開口58とヒート開口48a、48bとを隣接配置し、車両の前後方向(矢印A、B方向)から見て加熱ユニット16と重複するように配置することで、空調ケースの後方側に高さ方向に延在したヒート通路を備えていた従来の車両用空調装置と比較し、前記空調ケース12の上部を車両の前後方向に小型化することが可能となる。
【0055】
さらに、空調ケース12の高さ方向において、ヒート開口48a、48bにおける第2開口部52と後席用ベント開口58とが重なるように配置されているため、前記空調ケース12を前後方向にさらに小型化することができる。
【0056】
さらにまた、後席用送風ユニット20を、空調ケース12の後方側に着脱自在なダクト88から構成することにより、例えば、後席側における顔近傍への送風を行わない仕様の車両においても、後席側開口30の一部を塞いでダクト88を取り外すことで容易に対応可能となる。
【0057】
またさらに、顔近傍へ送風される温調風の温度は、足元近傍へ送風される温調風の温度よりも低温であることが望まれているため、空調ケース12において、ヒート開口48a、48bを後席用ベント開口58に対して上方(矢印D1方向)に配置し、冷風通路40を流れる冷風を好適に後席用ベント開口58へと導くことで、上方に配置されたヒート開口48a、48bから前席側及び後席側の足元近傍へと送風される温調風に対して良好な温度差を持たせて送風することが可能となる。
【0058】
また、後席用ベント開口58を、冷風の流れる第2バイパス通路46の下流側に臨むように配置することで、前記後席用ベント開口58から冷風を積極的に取り込むことができ、それに伴って、ヒート開口48a、48bから取り込まれる温風との温度差を十分に確保することができる。
【0059】
さらに、第2バイパス通路46を流れる冷風が、空調ケース12の底部に沿って流れることで、その流れ方向が偏向されることなく後席用ベント開口58へと導くことができる。そのため、冷風が第2バイパス通路46から後席用ベント開口58へと流れる際の送風抵抗を低減させ、より円滑に下流側へと流通させることができる。
【0060】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0061】
10…車両用空調装置 12…空調ケース
14…エバポレータ 16…加熱ユニット
20…後席用送風ユニット 30…後席側開口
32…前席用ヒート送風口 40…冷風通路
42…温風通路 47…合流部
48a、48b…ヒート開口 50…第1開口部
52…第2開口部 54…第1後席用ヒート通路
58…後席用ベント開口 60…第1後席用ベント通路
70…ヒート切替ドア 84…第2後席用ベント通路
86…第2後席用ヒート通路 88…ダクト