(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220518BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220518BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/52 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/41 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20220518BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20220518BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220518BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K36/52
A61K36/41
A61K36/23
A61K36/48
A61K36/185
A61K36/45
A61K36/73
A61P17/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018127924
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 美和
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136452(JP,A)
【文献】特開2008-74758(JP,A)
【文献】特開2006-265120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イワベンケイ抽出物、ツボクサ抽出物、ダイズ抽出物、ホホバ抽出物、ビルベリー抽出物
及びセイヨウナシ抽出物から選択される1種又は2種以上と、ノグルミ抽出物を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノグルミ抽出物と特定の成分を併用して含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解ノグルミ抽出物を含有する皮膚外用剤がコラーゲン合成促進作用を有することが知られている(特許文献1特開2012-136452号公報)。
イワベンケイ抽出物を皮膚外用剤に配合することにより、コラーゲンの産生を促進させることが知られている(特許文献2特開2003-26532号公報)
ツボクサ抽出物をメイラード反応阻害剤として配合する皮膚外用剤が知られている(特許文献3特開2004-189663号公報)。
加水分解大豆抽出物を水中油型乳化化粧料に配合することが知られている(特許文献4特開平2-90936号公報)。
ホホバ葉抽出物を含有する皮膚外用剤が活性酸素抑制作用を発揮することが知られている(特許文献5特開2000-154135号公報)
ビルベリー抽出物を含有する皮膚外用剤が紫外線照射による皮膚の障害を抑制又は改善することが知られている(特許文献6特開2005-306850号公報)。
セイヨウナシ抽出物を含有する皮膚外用剤が美白作用を有することが知られている。(特許文献7特開昭62-10006号公報)。
また、植物抽出物を併用して皮膚外用剤に配合することも数多く検討されている。しかしながら、植物抽出物は単に併用すれば効果が相乗的に向上するものではなく、相加的に効果が向上するもの、効果を相殺するものなど、その併用による効果は、予測不可能な効果であり、より少量で、より高い効果の得られる植物抽出物の併用に関するニーズは非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-136452号公報
【文献】特開2003-26532号公報
【文献】特開2004-189663号公報
【文献】特開平2-90936号公報
【文献】特開2000-154135号公報
【文献】特開2005-306850号公報
【文献】特開昭62-10006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノグルミ抽出物と、特定の成分を併用することにより、相乗的に高いシワの予防、改善効果を発揮する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
イワベンケイ抽出物、ツボクサ抽出物、ダイズ抽出物、ホホバ抽出物、ビルベリー抽出物、セイヨウナシ抽出物及びレチノール誘導体から選択される1種又は2種以上と、ノグルミ抽出物を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用剤は、ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、相乗的に高いシワの予防、改善効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
本発明の皮膚外用剤は、イワベンケイ抽出物、ツボクサ抽出物、ダイズ抽出物、ホホバ抽出物、ビルベリー抽出物及びセイヨウナシ抽出物から選択される1種又は2種以上の植物抽出物と、ノグルミ抽出物を含有する。
【0009】
本発明で使用するノグルミの抽出物を得る際の抽出部位としては特に限定されないが、果実を用いることが好ましい。
【0010】
抽出物を調製する際には、生の植物をそのまま、若しくは乾燥させて用いる。
【0011】
抽出溶媒としては、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。
【0012】
上記溶媒による抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、抽出物を酸、アルカリ、酵素などを用いて加水分解したものを用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0013】
本発明においてはノグルミの果実を水、低級アルコール、多価アルコールの1種または2種以上を抽出溶媒として用いて得られる抽出物を、グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて加水分解して得られる、加水分解ノグルミ抽出物を用いることが好ましい。かかる抽出物としては、市販の抽出物を用いることができ、例えばSK Bioland社製BIO-PSE(VI)が例示される。
【0014】
本発明で使用するイワベンケイ抽出物は、イワベンケイの根を用いる。抽出方法としては、ノグルミ抽出物を得る際と同様である。
【0015】
本発明のイワベンケイ抽出物は、50%エタノール水溶液を抽出溶媒として用いることが好ましい。
【0016】
本発明で使用するツボクサの抽出部位は花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草を用いるが、その他、同属種を用いることもできる。抽出方法としては、ノグルミ抽出物を得る際と同様である。本発明においては、ツボクサの葉及び茎を用いたエタノール抽出物を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で使用する大豆の抽出部位は特に限定されないが、種子を用いることが好ましい。また大豆の品種としては、黒大豆を用いることが好ましい。抽出方法としては、ノグルルミ抽出物を得る際と同様である。本発明においては、乾燥、粉砕した大豆種子を水で抽出、ろ過した溶液をプロテアーゼ処理したものを用いることが好ましい。
【0018】
本発明で使用するホホバの抽出部位は葉、花、実から選択される1種又は2種以上の部位を用いることが好ましく、さらに好ましくは葉である。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のノグルミ抽出物の場合と同様である。好ましい抽出溶媒としてはエタノール水溶液を挙げることができる。
【0019】
本発明で使用するビルベリーは、ビルベリー又はその近縁種を用いる。抽出部位は、葉、茎、花、実、根から選択される1種又は2種以上の部位を用いることができ、好ましくは葉を用いる。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のノグルミ抽出物の場合と同様である。好ましい抽出溶媒としては1,3-ブチレングリコール水溶液を挙げることができる。
【0020】
本発明で使用するセイヨウナシの抽出部位としては特に限定されないが、果汁を用いることが好ましい。抽出溶媒、抽出方法としては、上述のノグルミ抽出物の場合と同様である。本発明においては、セイヨウナシの果汁を乳酸桿菌(Lactobacillus plantarum)を用いて発酵させた後、不溶物をろ過除去したものに、30質量%となるように1,3-ブチレングリコールを添加したものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明において上記抽出物の配合量はそれぞれ、エキス純分として0.00001~5質量%が好ましい。
【0022】
本発明で使用するレチノール誘導体は、特に限定されないが、レチノールそのもの、レチノールと脂肪酸とのエステル、レチノールの酸化物、又は当該酸化物のエステル、レチノールの水素添加物等が含まれる。また、レチノイン酸又はそのエステルも包含する。さらに体内で代謝されてレチノールとなるα-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、β-クリプトキサンチン、エキネノンなどのプロビタミンAも包含する。
【0023】
レチノールと脂肪酸とのエステルについては、具体例として、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酪酸レチノール、オクチル酸レチノールステル、ラウリン酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ステアリン酸レチノール、ミリスチン酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、リノール酸レチノール等が挙げられる。これらのうち、好ましくはパルミチン酸レチノール、リノール酸レチノール、レチノールである。
【0024】
レチノールの酸化物としては、例えば、レチノイン酸(「トレチノイン」とも称する。)、レチナール等が挙げられる。また、レチノールの酸化物のエステルとしては、例えば、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロール(トコフェロールは、α、β、γ、δの構造を取り得る)等が挙げられる。これらのうち、レチノイン酸d-δ-トコフェロールを用いることが好ましい。
【0025】
レチノールの水素添加物としては、水添レチノールが挙げられる。
【0026】
プロビタミンAとしては、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、β-クリプトキサンチン、エキネノン等が挙げられ、特にα-カロテン、β-カロテンが好ましい。
【0027】
本発明におけるレチノール誘導体について、その原料、製造方法、精製方法等は特に限定されない。動物等から自ら単離及び精製したものを用いてもよく、或いは市販品を用いてもよい。レチノール誘導体の市販品としては、例えば、理研ビタミン株式会社、DSMニュートリションジャパン株式会社、小華薬品株式会社、BASFジャパン株式会社、日光ケミカルズ株式会社、Wacker Chemie AG,東京化成工業株式会社等で製造又は販売されている商品が挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤におけるレチノール誘導体の含有量は、特に限定されないが、レチノール誘導体の総量として0.0001~5質量%であり良い好ましくは0.0001~1質量%である。
【0029】
本発明の皮膚外用剤は、ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、相乗的に高いシワの予防、改善効果を発揮する。
【0030】
ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、MMP1(matrix metallopeptidase 1)の発現が相乗的に減少し、コラーゲンの分解を抑制することによりシワを改善する効果を発揮する。
【0031】
ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、HYAL2(hyaluronoglucosaminidase 2)の発現が相乗的に減少し、ヒアルロン酸の分解を抑制することによりシワを改善する効果を発揮する。
【0032】
ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、MME(membrane metalloendopeptidase)の発現が相乗的に減少し、エラスチンの分解を抑制することによりシワを改善する効果を発揮する。
【0033】
ノグルミ抽出物と特定の成分を配合することにより、IL1B(Interleukin 1 Beta)の発現が相乗的に減少し、炎症を抑制することにより、肌荒れの改善及びシワ形成を抑制する効果を発揮する。
【0034】
本発明の皮膚外用剤は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0039】
まず、実施例等に用いる植物抽出物の調製方法を示す。
【0040】
[ノグルミ抽出物]
ノグルミ抽出物として、SK Bioland社製BIO-PSE(VI)を用いた。
【0041】
[イワベンケイ抽出物]
乾燥させたイワベンケイの根を細切した。続いて20倍量の50容量%エタノール水溶液に24時間浸漬した。ろ過後ろ液を採取し、溶媒を留去したエキス末を得た。得られたエキス末を0.5質量%の濃度となるよう50質量%1,3-ブチレングリコール水溶液に溶解し、イワベンケイ抽出物とした。
【0042】
[ツボクサ抽出物]
乾燥させたツボクサの葉及び茎を細切した。続いて20倍量の無水エタノールに浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、溶媒を留去して得られたエキス末をツボクサ抽出物とした。
【0043】
[ダイズ抽出物]
乾燥させた黒ダイズの種子を粉砕し、20倍量の精製水を用いて抽出した、ろ過後ろ液をプロテアーゼで処理し、酵素を失活させた。ろ過後のろ液をダイズ抽出物とした。
【0044】
[ホホバ抽出物]
ホホバの葉を乾燥後細切し、10質量倍量の50質量%エタノール水溶液に浸漬し、ろ過後ろ液を採取し、溶媒を留去した。得られた抽出物を50質量%1,3-ブチレングリコール水溶液に溶解後熟成し、再度ろ過したものをホホバ抽出物とした。
【0045】
[ビルベリー抽出物]
乾燥させたビルベリーの果実を細切し、50容量%1,3-ブチレングリコール水溶液に浸漬した。ろ過後ろ液を採取し、ビルベリー抽出物とした。
【0046】
[セイヨウナシ抽出物]
セイヨウナシの果汁を乳酸桿菌(Lactobacillus plantarum)を用いて発酵させた後、不溶物をろ過除去したものに、30質量%となるように1,3-ブチレングリコールを添加したものをセイヨウナシ抽出物とした。
【0047】
[関連遺伝子発現促進作用]
ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞を5×105個/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、0.5%のFBSを含有するDMEM培地にて一晩培養した。植物抽出物を表2に示す量添加した培地に交換し、37℃、5%5% CO2インキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。なお内部標準としてGAPDHを使用した。プライマー情報を表1に、測定結果を表2~8に示す。測定結果は、植物エキスを添加しなかった場合の遺伝子発現量を1とした場合の相対値で示した。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表2~8に示したとおり、ノグルミ抽出物と特定の成分を併用することにより、それぞれの成分を単独で用いた場合と比較して、はるかに低濃度で高い老化関連遺伝子の発現を抑制し、高いシワ改善効果を発揮することが示された。
【0057】
[実施例8~20]美容液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)表9、表10に示す成分、配合量
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)~(12)を順次加え、均一に混合する。
【0058】
【0059】
【0060】
実施例8~20に示した美容液は使用感が良好で、シワ改善効果に優れていた。