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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/39 20180101AFI20220518BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20220518BHJP
   F21S 41/27 20180101ALI20220518BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20220518BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20220518BHJP
   F21S 41/67 20180101ALI20220518BHJP
   F21V 29/505 20150101ALI20220518BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20220518BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20220518BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220518BHJP
【FI】
F21S41/39
F21S41/147
F21S41/27
F21S41/33
F21V7/00 590
F21S41/67
F21V29/505
F21S45/47
F21W102:13
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018132358
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020009715
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆芳
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-91976(JP,A)
【文献】特開2016-206685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 45/00
F21V 7/00
F21V 29/00
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射型の空間光変調器を備えた車両用灯具において、
上記空間光変調器よりも灯具後方側に、該空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続された制御基板が配置されており、
上記空間光変調器よりも灯具前方側に、該空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器を灯具後方へ向けて弾性的に押圧する押圧具が配置されており、
上記空間光変調器よりも灯具後方側に、上記空間光変調器の中央部に当接した状態で該空間光変調器を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するヒートシンクが配置されており、
上記制御基板よりも灯具後方側に、上記制御基板に当接した状態で該制御基板を支持する基板用ブラケットが配置されており、
上記基板用ブラケットに対して上記押圧具が灯具前方側から固定されるとともに上記ヒートシンクが灯具後方側から固定されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記押圧具の上記空間光変調器に対する弾性押圧力が、上記ヒートシンクの上記空間光変調器に対する弾性押圧力よりも大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記空間光変調器の周囲に、上記押圧具を上記基板用ブラケットに固定するための複数の第1段付きボルトが配置されており、
上記各第1段付きボルトは、該第1段付きボルトの大径部が上記押圧具のボルト挿通孔を挿通した状態で該大径部の先端面において上記制御基板に当接するとともに、該第1段付きボルトの小径部が上記制御基板に形成されたボルト挿通孔を挿通した状態で該小径部において上記基板用ブラケットに螺着されており、
上記各第1段付きボルトの大径部に、上記押圧具を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するための第1バネが取り付けられている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記空間光変調器の周囲に、上記ヒートシンクを上記基板用ブラケットに固定するための複数の第2段付きボルトが配置されており、
上記各第2段付きボルトは、該第2段付きボルトの大径部が上記ヒートシンクに形成されたボルト挿通孔を挿通した状態で該大径部の先端面において上記基板用ブラケットに当接するとともに該第2段付きボルトの小径部において上記基板用ブラケットに螺着されており、
上記各第2段付きボルトの大径部に、上記ヒートシンクを灯具前方へ向けて弾性的に押圧するための第2バネが取り付けられている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記ヒートシンクの左右両端部に、灯具前方へ向けて突出する突起片がそれぞれ形成されており、
上記基板用ブラケットの左右両端部に、上記突起片の上下両端面と係合するようにして灯具前後方向に延びるガイド溝部が形成されている、ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の車両用灯具。
【請求項6】
上記各突起片に灯具前後方向に延びる長孔が形成されるとともに上記各ガイド溝部にネジ穴が形成されており、
上記各長孔を介して上記各ネジ穴にネジが締め付けられることにより、上記ヒートシンクが上記基板用ブラケットに対して灯具前後方向に位置決めされた状態で該基板用ブラケットに固定されている、ことを特徴とする請求項5記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、反射型の空間光変調器を備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、例えば「特許文献1」に記載されているように、光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射型の空間光変調器を備えたものが知られている。
【0003】
また従来より、反射型の空間光変調器を備えた照明装置の構成として、空間光変調器よりも後方側に、該空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続された制御基板が配置されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-91976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、空間光変調器によって反射光の空間的な分布を制御することにより、種々の配光パターンを精度良く形成することが可能である。
【0006】
ところで、反射型の空間光変調器を備えた照明装置の構成として、空間光変調器よりも前方側に、その周縁部に前方側から当接するブラケットが配置されるとともに、空間光変調器よりも後方側に、その中央部に当接した状態で該空間光変調器を前方へ向けて弾性的に押圧するヒートシンクが配置された構成を採用すれば、空間光変調器に無理な荷重が作用しないようにした上で空間光変調器と制御基板との電気的接続を維持することが可能となる。
【0007】
しかしながら、このような構成をそのまま車両用灯具に適用した場合には、次のような問題が生じてしまうおそれがある。
【0008】
すなわち、車両用灯具には車両走行等によって振動荷重や衝撃荷重が作用するので、空間光変調器とヒートシンクとの位置関係がずれやすくなり、また、制御基板とブラケットやヒートシンクとの位置関係もずれやすくなる。
【0009】
そして、空間光変調器とヒートシンクとの位置関係がずれると、空間光変調器に無理な荷重が作用してしまうので、これにより空間光変調器が破損してしまうおそれがある。また、制御基板とブラケットやヒートシンクとの位置関係がずれると、空間光変調器と制御基板との接続部分に無理な荷重が作用してしまうので、これにより接続部分が破損してしまうおそれがある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、反射型の空間光変調器を備えた車両用灯具において、振動荷重等によって空間光変調器が破損したり空間光変調器と制御基板との接続部分が破損してしまうのを効果的に抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、空間光変調器の支持構造に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射型の空間光変調器を備えた車両用灯具において、
上記空間光変調器よりも灯具後方側に、該空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続された制御基板が配置されており、
上記空間光変調器よりも灯具前方側に、該空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器を灯具後方へ向けて弾性的に押圧する押圧具が配置されており、
上記空間光変調器よりも灯具後方側に、上記空間光変調器の中央部に当接した状態で該空間光変調器を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するヒートシンクが配置されており、
上記制御基板よりも灯具後方側に、上記制御基板に当接した状態で該制御基板を支持する基板用ブラケットが配置されており、
上記基板用ブラケットに対して上記押圧具が灯具前方側から固定されるとともに上記ヒートシンクが灯具後方側から固定されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「空間光変調器」は、投影レンズに到達する光の空間的な分布を制御することが可能なものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、デジタルマイクロミラーを用いたものや反射型液晶を用いたもの等が採用可能である。
【0014】
上記「制御基板」は、空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続されているが、その際、空間光変調器の周縁部に直接当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続されていてもよいし、空間光変調器の周縁部に他の部材を介して当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続されていてもよい。
【0015】
上記「押圧具」は、空間光変調器の周縁部に当接した状態で該空間光変調器を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するようになっているが、これを実現するための具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「ヒートシンク」は、空間光変調器の中央部に当接した状態で該空間光変調器を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するようになっているが、これを実現するための具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0017】
上記「基板用ブラケット」は、制御基板に当接した状態で該制御基板を支持する構成となっているが、その具体的な支持構造は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る車両用灯具は、光源からの光を灯具前方へ向けて反射させる反射型の空間光変調器を備えているので、この空間光変調器においてその反射光の空間的な分布を制御することにより、種々の配光パターンを精度良く形成することができる。
【0019】
その際、空間光変調器よりも灯具前方側には、その周縁部に当接した状態で該空間光変調器を灯具後方へ向けて弾性的に押圧する押圧具が配置されており、また、空間光変調器よりも灯具後方側には、その中央部に当接した状態で該空間光変調器を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するヒートシンクが配置されているので、車両用灯具に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、空間光変調器に無理な荷重が作用してしまわないようにすることができる。そしてこれにより、空間光変調器が破損してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0020】
また、空間光変調器よりも灯具後方側には、その周縁部に当接した状態で該空間光変調器と電気的に接続された制御基板が配置されているが、この制御基板よりも灯具後方側には、これに当接した状態で該制御基板を支持する基板用ブラケットが配置されており、そして、この基板用ブラケットに対して押圧具が灯具前方側から固定されるとともにヒートシンクが灯具後方側から固定されているので、車両用灯具に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、制御基板と基板用ブラケットやヒートシンクとの位置関係がずれてしまわないようにすることができ、これにより空間光変調器と制御基板との接続部分に無理な荷重が作用してしまわないようにすることができる。そしてこれにより、空間光変調器と制御基板との接続部分が破損しまうのを効果的に抑制することができる。
【0021】
このように本願発明によれば、反射型の空間光変調器を備えた車両用灯具において、振動荷重等によって空間光変調器が破損したり空間光変調器と制御基板との接続部分が破損してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0022】
上記構成において、さらに、押圧具の空間光変調器に対する弾性押圧力が、ヒートシンクの空間光変調器に対する弾性押圧力よりも大きい値に設定された構成とすれば、空間光変調器の周縁部が常に制御基板に押圧されている状態を維持することができ、これにより空間光変調器と制御基板との電気的な接続が一層確実に維持されるようにすることができる。
【0023】
その際、上記「押圧具の空間光変調器に対する弾性押圧力」は、押圧具が複数箇所において空間光変調器を弾性的に押圧している場合には、各箇所での弾性押圧力を合計した弾性押圧力を意味するものである。同様に、上記「ヒートシンクの空間光変調器に対する弾性押圧力」は、ヒートシンクが複数箇所において空間光変調器を弾性的に押圧している場合には、各箇所での弾性押圧力を合計した弾性押圧力を意味するものである。
【0024】
上記構成において、さらに、空間光変調器の周囲に、押圧具を基板用ブラケットに固定するための複数の第1段付きボルトが配置された構成とした上で、各第1段付きボルトの構成として、その大径部が押圧具のボルト挿通孔を挿通した状態で該大径部の先端面において制御基板に当接するとともに、その小径部が制御基板に形成されたボルト挿通孔を挿通した状態で該小径部において基板用ブラケットに螺着された構成とし、かつ、その大径部に、押圧具を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するための第1バネが取り付けられた構成とすれば、押圧具による空間光変調器の押圧が所定の弾性押圧力で安定的に行われるようにすることが容易に可能となる。
【0025】
しかも、このような構成を採用することにより、押圧具が基板用ブラケットに固定されるのと同時に基板用ブラケットによる制御基板の支持も行われることとなるので、車両用灯具の構成簡素化を図ることができる。なお、このような構成とする代わりに、押圧具の基板用ブラケットへの固定とは独立した状態で制御基板が基板用ブラケットに固定されることによって基板用ブラケットによる制御基板の支持が行われる構成とすることも可能である。
【0026】
上記構成において、さらに、空間光変調器の周囲に、ヒートシンクを基板用ブラケットに固定するための複数の第2段付きボルトが配置された構成とした上で、各第2段付きボルトの構成として、その大径部がヒートシンクに形成されたボルト挿通孔を挿通した状態でその先端面において基板用ブラケットに当接するとともにその小径部において基板用ブラケットに螺着された構成とし、かつ、その大径部に、ヒートシンクを灯具前方へ向けて弾性的に押圧するための第2バネが取り付けられた構成とすれば、ヒートシンクによる空間光変調器の押圧が所定の弾性押圧力で安定的に行われるようにすることが容易に可能となる。
【0027】
上記構成において、さらに、ヒートシンクの左右両端部に灯具前方へ向けて突出する突起片がそれぞれ形成されるとともに、基板用ブラケットの左右両端部に突起片の上下両端面と係合するようにして灯具前後方向に延びるガイド溝部が形成された構成とすれば、ヒートシンクが基板用ブラケットに対して上下方向に回動してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、空間光変調器の中央部がヒートシンクによって均一な圧力分布で押圧されるようにすることが容易に可能となる。
【0028】
その際、さらに、各突起片に灯具前後方向に延びる長孔が形成されるとともに各溝部にネジ穴が形成された構成とした上で、各長孔を介して各ネジ穴にネジが締め付けられることにより、ヒートシンクが基板用ブラケットに対して灯具前後方向に位置決めされた状態で該基板用ブラケットに固定された構成とすれば、空間光変調器が灯具前後方向両側から所定の弾性押圧力で押圧されている状態を維持したまま各部材の位置関係を固定することができる。そしてこれにより、車両用灯具に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、押圧具の弾性押圧力やヒートシンクの弾性押圧力以上の荷重が空間光変調器および該空間光変調器と制御基板との接続部分に作用してしまわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2図1のII方向矢視図
図3図1のIII-III線断面図
図4図1のIV-IV線断面図
図5図1のV-V線断面図
図6】上記車両用灯具の空間光変調器サブアッシーを取り出して示す正面図
図7図2の VII部詳細図
図8図3のVIII部詳細図
図9図4のIX部詳細図
図10】上記空間光変調器サブアッシーをその構成要素に分解して支持ブラケットと共に示す斜視図
図11】上記車両用灯具のレンズ側サブアッシーを支持ブラケットと共に分解して示す斜視図
図12】上記実施形態の変形例を示す、図5と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図であり、図2図1のII方向矢視図である。また、図3図1のIII-III線断面図であり、図4図1のIV-IV線断面図であり、図5図1のV-V線断面図である。なお、図1においては、構成要素の一部を破断した状態で示している。
【0032】
これらの図において、Xで示す方向が灯具としての「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「左方向」(車両としても「左方向」であるが灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0033】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、図示しないランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に組み込まれたプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されている。
【0034】
この車両用灯具10は、光源側サブアッシー20と、空間光変調器サブアッシー30と、レンズ側サブアッシー70と、これらを支持する支持ブラケット80とを備えた構成となっている。そして、この車両用灯具10は、その支持ブラケット80において、図示しない取付構造を介して上記ランプボディに支持されるようになっている。
【0035】
図3に示すように、光源側サブアッシー20は、光源22と、この光源22からの出射光を空間光変調器サブアッシー30へ向けて反射させるリフレクタ24と、これらを支持するベース部材26とを備えた構成となっている。
【0036】
空間光変調器サブアッシー30は、空間光変調器32と、この空間光変調器32よりも灯具後方側に配置された制御基板36と、この制御基板36よりも灯具後方側に配置された基板用ブラケット40と、この基板用ブラケット40よりも灯具後方側に配置されたヒートシンク50と、空間光変調器32よりも灯具前方側に配置された押圧具60とを備えた構成となっている。
【0037】
レンズ側サブアッシー70は、車両前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ72と、この投影レンズ72を支持するレンズホルダ74とを備えた構成となっている。
【0038】
そして、本実施形態に係る車両用灯具10は、リフレクタ24で反射した光源22からの光を空間光変調器32および投影レンズ72を介して灯具前方へ向けて照射することにより、種々の配光パターン(例えば、ロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターンあるいは車両走行状況に応じて変化する配光パターンさらには車両前方路面に文字や記号等を描画する配光パターン等)を精度良く形成し得る構成となっている。
【0039】
これを実現するため、車両用灯具10の組立工程においては、光源22を点灯させて配光パターンを形成した状態で、空間光変調器32と投影レンズ72との位置関係を微調整し、その位置関係精度を高めるようになっている。
【0040】
次に、光源側サブアッシー20、空間光変調器サブアッシー30、レンズ側サブアッシー70および支持ブラケット80の各々の具体的な構成について説明する。
【0041】
まず、光源側サブアッシー20の構成について説明する。
【0042】
光源22は、白色発光ダイオードであって、その発光面を斜め上前方へ向けた状態でベース部材26に固定支持されている。このベース部材26は、支持ブラケット80に固定支持されている。
【0043】
リフレクタ24は、光源22を灯具前方側から覆うようにして配置されており、その周縁部においてベース部材26に固定支持されている。このリフレクタ26は、光源22からの出射光を斜め上後方へ向けて反射させるようになっている。その際、このリフレクタ24の反射面24aは、光源22からの出射光を、投影レンズ72の後側焦点Fを含む後側焦点面の近傍に収束させるように形成されている。
【0044】
次に、空間光変調器サブアッシー30の構成について説明する。
【0045】
図6は、空間光変調器サブアッシー30を取り出して示す正面図である。また、図7は、図2の VII部詳細図であり、図8は、図3のVIII部詳細図であり、図9は、図4のIX部詳細図である。さらに、図10は、空間光変調器サブアッシー30をその構成要素に分解して支持ブラケット80と共に示す斜視図である。
【0046】
これらの図にも示すように、空間光変調器32は、反射型の空間光変調器であって、複数の(例えば数十万個の)微小ミラーがマトリクス状に配置されたデジタルマイクロミラーディバイス(DMD)で構成されている。
【0047】
この空間光変調器32は、複数の微小ミラーの各々の反射面の角度を制御することによって、該空間光変調器32に到達した光源22からの光の反射方向を選択的に切り換え得る構成となっている。具体的には、光源22からの光を投影レンズ72へ向けて反射させるモードとそれ以外の方向(すなわち配光パターンの形成に悪影響を及ぼさない方向)へ向けて反射させるモードとが選択されるようになっている。
【0048】
この空間光変調器32は、投影レンズ72の後側焦点Fの位置において光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置されており、その反射光制御領域32aは光軸Axを中心とする横長矩形状の外形形状を有している。
【0049】
この空間光変調器32は、その反射光制御領域32aを囲む周縁部32bの後面においてソケット34を介して制御基板36に支持されている。
【0050】
ソケット34は、空間光変調器32の周縁部32bに沿った横長矩形状のフレーム部材として構成されており、制御基板36に形成された導電パターン(図示せず)と電気的に接続された状態で該制御基板36に固定されている。この制御基板36には、ソケット34の内周縁形状と略同一形状の開口部36aが形成されている。
【0051】
図5および8に示すように、空間光変調器32の周縁部32bには、その後面から灯具後方へ向けて突出する複数の端子ピン32cが形成されている。一方、ソケット34には、複数の端子ピン32cと対応する位置においてその後面から灯具後方へ向けて突出する複数の端子ピン34aが形成されている。
【0052】
ソケット34の各端子ピン34aは、その基端部(すなわち該ソケット34に埋設された先端部分)が略筒状に形成されており、この基端部に空間光変調器32の各端子ピン32cの先端部が嵌め込まれることによって、空間光変調器32とソケット34とが電気的に接続されるようになっている。
【0053】
ソケット34の各端子ピン34aは、その先端部において制御基板36の導電パターンにハンダ付けされている。このため、ソケット34は、その後面が制御基板36の前面から僅かに浮いた状態で配置されている。
【0054】
空間光変調器32は、押圧具60とヒートシンク50とによって灯具前後方向両側から支持されている。
【0055】
押圧具60は、金属製(例えばアルミダイカスト製)の部材であって、光軸Axと直交する鉛直面に沿って平板状に延びる本体部60Aと、この本体部60Aの左右両側に位置する1対のフランジ部60Bとを備えた構成となっている。
【0056】
本体部60Aには、横長矩形状の開口部60Aaが光軸Axを中心として形成されている。この開口部60Aaは、空間光変調器32の外周縁形状よりも小さいがその反射光制御領域32aよりは大きい横長矩形状の開口形状を有している。
【0057】
左右1対のフランジ部60Bは、空間光変調器32の左右両側近傍において本体部60Aの側端縁から灯具後方側へ延びた後、光軸Axから離れる方向に直角に折れ曲がって平板状に延びるように形成されている。各フランジ部60Bには、該フランジ部60Bを灯具前後方向に貫通するボルト挿通孔60Baが形成されている。
【0058】
押圧具60は、その本体部60Aを空間光変調器32の周縁部32bに対して灯具前方側から当接させた状態で、その左右1対のフランジ部60Bにおいて左右1対の第1段付きボルト62によって基板用ブラケット40に固定されている。この固定は、押圧具60によって空間光変調器32を灯具後方へ向けて弾性的に押圧した状態で行われるようになっている。
【0059】
この押圧を行うための具体的な構成は以下のとおりである。
【0060】
すなわち、各第1段付きボルト62は、その大径部62bが押圧具60のボルト挿通孔60Baを挿通した状態でその先端面が制御基板36に当接するとともに、その小径部62aが制御基板36に形成されたボルト挿通孔36bを挿通した状態で該小径部62aにおいて基板用ブラケット40に形成されたネジ孔40aに螺着されている。
【0061】
その際、各第1段付きボルト62の大径部62bには、押圧具60を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するための第1バネ64が取り付けられている。各第1バネ64は、各第1段付きボルト62の頭部62cと押圧具60の各フランジ部60Bとの間に配置された圧縮コイルバネで構成されている。
【0062】
なお、押圧具60は、その本体部60Aが空間光変調器32の周縁部32bに当接した状態において、各フランジ部60Bが制御基板36から灯具前方側に離れた状態で配置されるように、各フランジ部60Bの本体部60Aからの後方変位量が設定されている。
【0063】
ヒートシンク50は、金属製(例えばアルミダイカスト製)の部材であって、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びるように配置されており、その後面には複数の放熱フィン50bが縦縞状に形成されている。
【0064】
このヒートシンク50の前面の中央部には、灯具前方へ向けて突出する角柱状の突起部50cが形成されている。この突起部50cは光軸Axを中心とする横長矩形状の断面形状を有しており、その大きさはソケット34の内周面形状よりも小さい値に設定されている。
【0065】
このヒートシンク50は、その突起部50cの前端面が空間光変調器32の中央部(すなわち反射光制御領域32aが位置する部分)に対して灯具後方側から当接した状態で、左右2対の第2段付きボルト52によって基板用ブラケット40に固定されている。この固定は、突起部50cによって空間光変調器32を灯具前方へ向けて弾性的に押圧した状態で行われるようになっている。
【0066】
この押圧を行うための具体的な構成は以下のとおりである。
【0067】
すなわち、左右2対の第2段付きボルト52は、空間光変調器32の左右両側の上下2箇所に位置するように配置されている。
【0068】
各第2段付きボルト52は、その大径部52bがヒートシンク50に形成されたボルト挿通孔50aを挿通した状態でその先端面が基板用ブラケット40に当接するとともにその小径部52aが基板用ブラケット40に形成されたボス部40bのネジ穴に螺着されている。
【0069】
その際、各第2段付きボルト52の大径部52bには、ヒートシンク50の突起部50cを灯具前方へ向けて弾性的に押圧するための第2バネ54が取り付けられている。各第2バネ54は、各第2段付きボルト52の頭部52cとヒートシンク50との間に配置された圧縮コイルバネで構成されている。
【0070】
なお、制御基板36には、ボス部40bとの干渉を防止するための左右2対のボス部挿通孔36cが、ボス部40bよりも大きい径で形成されている。
【0071】
このように本実施形態の空間光変調器サブアッシー30においては、押圧具60とヒートシンク50とによって空間光変調器32がソケット34と共に灯具前後方向両側から弾性的に押圧された構成とすることにより、空間光変調器32に無理な荷重を作用させないようにした状態で、空間光変調器32とソケット34との電気的接続が行われている状態を確実に維持するようになっている。
【0072】
本実施形態においては、押圧具60の空間光変調器32に対する弾性押圧力がヒートシンク50の空間光変調器32に対する弾性押圧力よりも大きい値に設定されており、これにより空間光変調器32の周縁部32bがソケット34を介して常に制御基板36に押圧されている状態を維持するようになっている。
【0073】
具体的には、各第1バネ64を構成する圧縮コイルバネは、各第2バネ54を構成する圧縮コイルバネよりも大きい線径(例えば2倍以上の線径)を有しており、これにより、2つの第1バネ64の各々の弾性押圧力を合計した弾性押圧力が4つの第2バネ54の各々の弾性押圧力を合計した弾性押圧力よりも大きい値となるように設定されている。
【0074】
ヒートシンク50の左右両端部には、灯具前方へ向けて突出する突起片50dがそれぞれ形成されている。一方、基板用ブラケット40の左右両端部には、左右1対の突起片50dの各々の上下両端面と係合するようにして灯具前後方向に延びるガイド溝部40dが形成されている。
【0075】
このように基板用ブラケット40の左右両側において突起片50dとガイド溝部40dとを係合させることにより、ヒートシンク50が基板用ブラケット40に対して上下方向に回動してしまわないようにしている。
【0076】
各突起片50dには、灯具前後方向に延びる長孔50eが形成されており、また、各ガイド溝部40dには、側方へ向けて開口するネジ穴40eが形成されている。
【0077】
そして、各長孔50eを介して各ネジ穴40eにネジ42が締め付けられることにより、ヒートシンク50が基板用ブラケット40に対して灯具前後方向に位置決めされた状態で該基板用ブラケット40に固定されるようになっている。
【0078】
基板用ブラケット40においてガイド溝部40dが形成されている部分は、ネジ穴40e周辺の強度を確保するため、他の部分よりも厚肉で形成されている。また、基板用ブラケット40においてガイド溝部40dを形成している上下1対の水平フランジ部40d1は、基板用ブラケット40の前後両側において光軸Ax寄りの方向へ回り込むように延長して形成されており、これによりガイド溝部40dとしての剛性を十分に確保するようになっている。
【0079】
次に、支持ブラケット80の構成について説明する。
【0080】
支持ブラケット80は、金属製(例えばアルミダイカスト製)の部材であって、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる鉛直面部80Aと、この鉛直面部80Aの下端縁から灯具前方へ向けて水平面に沿って延びる水平面部80Bとを備えた構成となっている。また、支持ブラケット80の左右両側部には、鉛直面部80Aと水平面部80Bとの接続部分を補強するための補強フランジ部80Cが形成されている。
【0081】
鉛直面部80Aには、横長矩形状の開口部80Aaが光軸Axを中心として形成されている。この開口部80Aaは、空間光変調器32の外周縁形状よりも小さいがその反射光制御領域32aよりは大きい横長矩形状の開口形状を有しており、その内周面の前端縁は全周にわたって面取りされている。
【0082】
この鉛直面部80Aの後面には、制御基板36の左右両側において灯具後方へ向けて延びる左右2対のボス部80Abが形成されている。これら左右2対のボス部80Abは、左右2対の第2段付きボルト52と略同じ高さに位置するように配置されている。
【0083】
一方、基板用ブラケット40には、左右2対のボス部80Abに対応する位置にネジ挿通孔40cが形成されている。
【0084】
そして、灯具後方側から基板用ブラケット40の各ネジ挿通孔40cを介して鉛直面部80Aの各ボス部80Abのネジ穴にネジ44が締め付けられることにより、空間光変調器サブアッシー30が支持ブラケット80に固定されるようになっている。
【0085】
その際、各ボス部80Abは、支持ブラケット80の鉛直面部80Aが押圧具60の本体部60Aよりも灯具前方側に位置するようにその長さが設定されている。
【0086】
また、支持ブラケット80の鉛直面部80Aには、左右1対の第1段付きボルト62との干渉を防止するための左右1対の開口部80Acが、第1段付きボルト62の頭部62cよりも大きい径で形成されている。
【0087】
水平面部80Bは、リフレクタ24よりも灯具前方側まで延びるように形成されており、この水平面部80Bにはリフレクタ24を挿通させるための横長矩形状の開口部80Baが形成されている。
【0088】
図6に示すように、空間光変調器32の周縁部32bの前面には、光軸Axに関して対角線上に位置する2箇所に円柱状の位置決め穴32b1が形成されている。また、押圧具60の本体部60Aには、空間光変調器32の位置決め穴32b1に対応する位置に、該本体部60Aを灯具前後方向に貫通するピン挿通孔60Ab、60Acが形成されている。さらに、支持ブラケット80の鉛直面部80Aには、空間光変調器32の位置決め穴32b1に対応する位置に、灯具後方へ向けて延びる円柱状の位置決めピン80Adが形成されている。
【0089】
そして、支持ブラケット80の各位置決めピン80Adが押圧具60の各ピン挿通孔60Ab、60Acを介して空間光変調器32の各位置決め穴32b1に挿入されることにより、空間光変調器サブアッシー30を支持ブラケット80に組み付ける際、光軸Axと直交する鉛直面内において位置決めがなされるとともに、その組付け後は空間光変調器32が上記鉛直面内において不用意に変位してしまうのを未然に防止するようになっている。
【0090】
なお、押圧具60の本体部60Aに形成された2つのピン挿通孔60Ab、60Acは、一方のピン挿通孔60Abが円形の孔として形成されるとともに他方のピン挿通孔60Acが上記対角線方向に延びる長孔として形成されている。
【0091】
次に、レンズ側サブアッシー70の構成について説明する。
【0092】
図3に示すように、投影レンズ72は、光軸Ax上において灯具前後方向に所要間隔をおいて配置された第1および第2レンズ72A、72Bで構成されている。
【0093】
灯具前方側に位置する第1レンズ72Aは、両凸レンズとして構成されており、灯具後方側に位置する第2レンズ72Bは、灯具後方へ向けて膨らんだ凹メニスカスレンズとして構成されている。その際、これら第1および第2レンズ72A、72Bは、その上端部が水平面に沿って僅かに切除されるとともにその下部部が水平面に沿って比較的大きく切除された構成となっている。
【0094】
そして、これら第1および第2レンズ72A、72Bは、その外周縁部において共通のレンズホルダ74に支持されている。
【0095】
このレンズホルダ74は、金属製(例えばアルミダイカスト製)の部材であって、投影レンズ72を筒状に囲むように形成されたホルダ本体74Aと、このホルダ本体74Aの外周面の下端部において水平面に沿って左右両側に張り出すように形成された1対のフランジ部74Bとを備えた構成となっている。
【0096】
ホルダ本体74Aの内周面には、第1および第2レンズ72A、72Bを位置決めするための突起部74Aaが形成されている。一方、左右1対のフランジ部74Bは、いずれも一定の左右幅でレンズホルダ74の全長にわたって灯具前後方向に延びるようにして平板状に形成されている。
【0097】
図11は、レンズ側サブアッシー70を支持ブラケット80と共に分解して示す斜視図である。
【0098】
同図にも示すように、レンズホルダ74は、その左右1対のフランジ部74Bにおいて、支持ブラケット80の水平面部80Bに対して機械的締結により固定されている。この機械的締結による固定はネジ締めによって行われている。
【0099】
これを実現するため、レンズホルダ74の各フランジ部74Bには、該フランジ部74Bを上下方向に貫通する前後1対のネジ挿通孔74Baが形成されている。また、支持ブラケット80の水平面部80Bには、ネジ穴を有する前後1対のボス部80Bbが下方へ突出するように形成されている。そして、各フランジ部74Bの上方からネジ76が各ネジ挿通孔74Baを介して各ボス部80Bbのネジ穴に螺着されるようになっている。
【0100】
その際、各ネジ挿通孔74Baは、各ネジ76のネジ径よりも大きい左右幅で灯具前後方向に延びる長孔として形成されており、これによりレンズホルダ74を支持ブラケット80に対する灯具前後方向の位置を調整した状態でネジ締めを行い得る構成となっている。
【0101】
レンズホルダ74の各フランジ部74Bの下面には、前後1対のネジ挿通孔74Baの前後方向の中央位置において鉛直下方へ向けて突出する位置決めピン74Bbが形成されている。各位置決めピン74Bbは、円柱状に形成されており、その先端部は凸曲面状に形成されている。また、各位置決めピン74Bbのフランジ部74Bからの下方突出量は、支持ブラケット80の水平面部80Bの板厚よりもやや大きい値に設定されている。
【0102】
一方、支持ブラケット80の水平面部80Bには、各位置決めピン74Bbに対応する位置に該水平面部80Bを上下方向に貫通する長孔80Bcが形成されている。各長孔80Bcは、位置決めピン74Bbの径よりも僅かに大きい左右幅で灯具前後方向に延びる長孔として形成されている。
【0103】
そして、レンズホルダ74を支持ブラケット80に対してネジ締めする際、予め位置決めピン74Bbを長孔80Bcに挿入しておくことにより、レンズホルダ74が支持ブラケット80に対して左右方向に変位するのを規制した上で、レンズホルダ74と支持ブラケット80との灯具前後方向の位置関係を微調整し得るようになっている。これにより、ネジ締め時に発生するトルクによってレンズホルダ74が支持ブラケット80に対して不用意に回転しまうのを未然に防止し、空間光変調器32と投影レンズ72との位置関係精度を高めるようになっている。
【0104】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0105】
本実施形態に係る車両用灯具10は、光源22からの光を空間光変調器32および投影レンズ72を介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているので、空間光変調器32において投影レンズ72に到達する光の空間的な分布を制御することにより、種々の配光パターンを精度良く形成することができる。
【0106】
その際、空間光変調器32よりも灯具前方側には、その周縁部32bに当接した状態で該空間光変調器32を灯具後方へ向けて弾性的に押圧する押圧具60が配置されており、また、空間光変調器32よりも灯具後方側には、その中央部(すなわち反射光制御領域32aが位置する部分)に当接した状態で該空間光変調器32を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するヒートシンク50が配置されているので、車両用灯具10に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、空間光変調器32に無理な荷重が作用してしまわないようにすることができる。そしてこれにより、空間光変調器32が破損してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0107】
また、空間光変調器32よりも灯具後方側には、その周縁部32bにソケット34を介して当接した状態で該空間光変調器32と電気的に接続された制御基板36が配置されているが、この制御基板36よりも灯具後方側には、これに当接した状態で該制御基板36を支持する基板用ブラケットが配置されており、そして、この基板用ブラケット40に対して押圧具60が灯具前方側から固定されるとともにヒートシンク50が灯具後方側から固定されているので、車両用灯具10に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、制御基板36と基板用ブラケット40やヒートシンク50との位置関係がずれてしまわないようにすることができ、これにより空間光変調器32と制御基板36との接続部分(すなわち空間光変調器32とソケット34との接続部分およびソケット34と制御基板36との接続部分)に無理な荷重が作用してしまわないようにすることができる。そしてこれにより、空間光変調器32と制御基板36との接続部分が破損しまうのを効果的に抑制することができる。
【0108】
このように本実施形態によれば、反射型の空間光変調器32を備えた車両用灯具10において、振動荷重等によって空間光変調器32が破損したり空間光変調器32と制御基板36との接続部分が破損してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0109】
しかも本実施形態においては、押圧具60の空間光変調器32に対する弾性押圧力が、ヒートシンク50の空間光変調器32に対する弾性押圧力よりも大きい値に設定されているので、空間光変調器32の周縁部32bが常に制御基板36に押圧されている状態を維持することができ、これにより空間光変調器32と制御基板36との電気的な接続が一層確実に維持されるようにすることができる。
【0110】
その際、本実施形態においては、空間光変調器32の周囲に、押圧具60を基板用ブラケット40に固定するための左右1対の第1段付きボルト62が配置されており、その上で、各第1段付きボルト62は、その大径部62bが押圧具60のボルト挿通孔60Baを挿通した状態でその先端面において制御基板36に当接するとともに、その小径部62aが制御基板36に形成されたボルト挿通孔36bを挿通した状態で該小径部62aにおいて基板用ブラケット40に形成されたネジ孔40aに螺着されており、かつ、その大径部62bには、押圧具60を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するための第1バネ64が取り付けられているので、押圧具60による空間光変調器32の押圧が所定の弾性押圧力で安定的に行われるようにすることが容易に可能となる。
【0111】
しかも、このような構成を採用することにより、押圧具60が基板用ブラケット40に固定されるのと同時に基板用ブラケット40による制御基板36の支持も行われるようにすることができ、これにより車両用灯具10の構成簡素化を図ることができる。
【0112】
また本実施形態においては、空間光変調器32の周囲に、ヒートシンク50を基板用ブラケット40に固定するための左右2対の第2段付きボルトが配置されており、その上で、各第2段付きボルト52は、その大径部52bがヒートシンク50に形成されたボルト挿通孔50aを挿通した状態でその先端面において基板用ブラケット40に当接するとともにその小径部52aにおいて基板用ブラケット40に螺着されており、かつ、その大径部52bには、ヒートシンク50を灯具前方へ向けて弾性的に押圧するための第2バネ54が取り付けられているので、ヒートシンク50による空間光変調器32の押圧が所定の弾性押圧力で安定的に行われるようにすることが容易に可能となる。
【0113】
さらに本実施形態においては、ヒートシンク50の左右両端部に灯具前方へ向けて突出する突起片50dがそれぞれ形成されるとともに、基板用ブラケット40の左右両端部に突起片50dの上下両端面と係合するようにして灯具前後方向に延びるガイド溝部40dが形成されているので、ヒートシンク50が基板用ブラケット40に対して上下方向に回動してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより、空間光変調器32の中央部がヒートシンク50によって均一な圧力分布で押圧されるようにすることが容易に可能となる。
【0114】
しかも、各突起片50dには灯具前後方向に延びる長孔50eが形成されるとともに各溝部40dにはネジ穴40eが形成されており、各長孔50eを介して各ネジ穴40eにネジ42が締め付けられることによりヒートシンク50が基板用ブラケット40に対して灯具前後方向に位置決めされた状態で該基板用ブラケット40に固定された構成となっているので、空間光変調器32が灯具前後方向両側から所定の弾性押圧力で押圧されている状態を維持したまま各部材の位置関係を固定することができる。そしてこれにより、車両用灯具10に振動荷重や衝撃荷重が作用した場合であっても、押圧具60の弾性押圧力やヒートシンク50の弾性押圧力以上の荷重が空間光変調器32および該空間光変調器32と制御基板36との接続部分に作用してしまわないようにすることができる。
【0115】
なお、各長孔50eを介して各ネジ穴40eにネジ42を締め付ける際には締付けトルクが発生するが、ヒートシンク50の各突起片50dと基板用ブラケット40のガイド溝部40dとが係合しているので、締付けトルクによってヒートシンク50が基板用ブラケット40に対して回転してしまうことはない。
【0116】
上記実施形態においては、制御基板36が、空間光変調器32の周縁部32bにソケット34を介して当接した状態で該空間光変調器32と電気的に接続されているものとして説明したが、制御基板36が、空間光変調器32の周縁部32bに直接当接した状態で該空間光変調器32と電気的に接続された構成とすることも可能である。
【0117】
上記実施形態においては、リフレクタ26で反射した光源22からの出射光を空間光変調器32で反射させる構成となっているが、レンズ等によって偏向制御した光源22からの出射光を空間光変調器32で反射させる構成や光源22からの出射光を直接空間光変調器32で反射させる構成を採用することも可能である。
【0118】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0119】
図12は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図5と同様の図である。
【0120】
同図に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、空間光変調器サブアッシー130の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0121】
すなわち、本変形例の空間光変調器サブアッシー130は、制御基板136と押圧具160とが個別に基板用ブラケット140に固定されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0122】
具体的には、本変形例の制御基板136は、上記実施形態の制御基板36よりも左右幅が小さくなっている。そして、この制御基板136には、ヒートシンク50の突起部50cを挿通させるための開口部136aの左右両側に1対のネジ挿通孔136dが形成されている。
【0123】
また、本変形例の基板用ブラケット140には、左右1対のネジ挿通孔136dに対応する位置にネジ孔140fが形成されている。そして、灯具前方側から制御基板136の各ネジ挿通孔136dを介して基板用ブラケット140の各ネジ孔140fにネジ146が締め付けられることにより、制御基板136が基板用ブラケット140に固定されるようになっている。
【0124】
なお、制御基板136の側端部には、基板用ブラケット140のボス部140bとの干渉を防止するための切欠き部136eが形成されている。
【0125】
本変形例の押圧具160は、上記実施形態の押圧具60に対して、本体部160Aの構成は同様であるが、左右1対のフランジ部160Bの構成が一部異なっている。すなわち、各フランジ部160Bは、本体部160Aからの後方変位量が上記実施形態の場合よりも小さい一方、本体部160Aから側方へ長く延びるように形成されており、そのボルト挿通孔160Baは制御基板136の側端面よりも光軸Axから離れた位置に形成されている。
【0126】
そして、この押圧具160は、その本体部160Aを空間光変調器32の周縁部32bに対して灯具前方側から当接させた状態で、その左右1対のフランジ部160Bにおいて左右1対の第1段付きボルト162によって基板用ブラケット140に固定されている。
【0127】
各第1段付きボルト162は、制御基板136の板厚分だけ、その大径部162bが上記実施形態の各第1段付きボルト62の大径部62bよりも長尺で形成されるとともに、その小径部162aが上記実施形態の各第1段付きボルト62の小径部62aよりも短尺で形成されているが、それ以外の構成については上記実施形態の場合と同様である。
【0128】
そして、各第1段付きボルト162は、その大径部162bが押圧具160のボルト挿通孔160Baを挿通した状態でその先端面が基板用ブラケット140に当接するとともに、その小径部162aが基板用ブラケット140に形成されたネジ孔140aに螺着されている。
【0129】
本変形例においても、各第1段付きボルト162の大径部162bには第1バネ64が取り付けられており、これにより押圧具160が空間光変調器32を灯具後方へ向けて弾性的に押圧するようになっている。
【0130】
なお、本変形例の支持ブラケット180は、上記実施形態の支持ブラケット80と同様の構成を有しているが、その鉛直面部180Aに形成された左右1対の開口部180Acが、左右1対の第1段付きボルト162の位置に対応して光軸Axからより離れた位置に形成されている。
【0131】
本変形例の構成を採用した場合においても、反射型の空間光変調器32を備えた車両用灯具において、振動荷重等によって空間光変調器32が破損したり空間光変調器32と制御基板136との接続部分が破損してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0132】
また、本変形例の構成を採用した場合には、制御基板136と押圧具160とを基板用ブラケット140に対して順次組み付けるようにすることができる。
【0133】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0134】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0135】
10 車両用灯具
20 光源側サブアッシー
22 光源
24 リフレクタ
24a 反射面
26 ベース部材
30、130 空間光変調器サブアッシー
32 空間光変調器
32a 反射光制御領域
32b 周縁部
32b1 位置決め穴
32c、34a 端子ピン
34 ソケット
36、136 制御基板
36a、136a 開口部
36b ボルト挿通孔
36c ボス部挿通孔
40、140 基板用ブラケット
40a、140a、140f ネジ孔
40b、140b ボス部
40c、136d ネジ挿通孔
40d ガイド溝部
40d1 水平フランジ部
40e ネジ穴
42、44、146 ネジ
50 ヒートシンク
50a ボルト挿通孔
50b 放熱フィン
50c 突起部
50d 突起片
50e 長孔
52 第2段付きボルト
52a、62a、162a 小径部
52b、62b、162b 大径部
52c、62c 頭部
54 第2バネ
60、160 押圧具
60A、160A 本体部
60Aa 開口部
60Ab、60Ac ピン挿通孔
60B、160B フランジ部
60Ba、160Ba ボルト挿通孔
62、162 第1段付きボルト
64 第1バネ
70 レンズ側サブアッシー
72 投影レンズ
72A 第1レンズ
72B 第2レンズ
74 レンズホルダ
74A ホルダ本体
74Aa 突起部
74B フランジ部
74Ba ネジ挿通孔
74Bb 位置決めピン
76 ネジ
80、180 支持ブラケット
80A、180A 鉛直面部
80Aa、80Ac、80Ba、180Ac 開口部
80Ab ボス部
80Ad 位置決めピン
80B 水平面部
80Bb ボス部
80Bc 長孔
80C 補強フランジ部
136e 切欠き部
Ax 光軸
F 後側焦点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12