(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】プラント制御装置、プラント制御方法、および発電プラント
(51)【国際特許分類】
F01K 23/10 20060101AFI20220518BHJP
F01D 19/02 20060101ALI20220518BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20220518BHJP
F02C 7/36 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
F01K23/10 M
F01D19/02
F01D19/00 R
F02C7/36
(21)【出願番号】P 2018145385
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】永山 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】当房 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】金子 昇司
(72)【発明者】
【氏名】森 高裕
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-013709(JP,A)
【文献】特開平10-331610(JP,A)
【文献】特開2018-009491(JP,A)
【文献】特開2017-155739(JP,A)
【文献】特開平07-063010(JP,A)
【文献】特開平02-308903(JP,A)
【文献】特表2004-514817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00-27/02
F01D 17/00-21/20
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、
前記ガスタービンにより駆動される発電機と、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記第1蒸気により駆動される蒸気タービンと、
前記ガスタービンおよび前記発電機と接続された第1軸と、前記蒸気タービンと接続された第2軸とを結合するクラッチと、
を備える発電プラントを制御するプラント制御装置であって、
前記クラッチが離脱しているときに、前記蒸気タービンを停止させたまま前記ガスタービンおよび前記発電機を起動する起動部と、
前記クラッチが離脱しているときに、
前記ガスタービンの回転に伴う潤滑油の前記クラッチへの流入により回転する前記蒸気タービンの回転数が所定の回転数よりも小さいうちは、前記ガスタービンおよび前記発電機の起動と並行して、前記排熱回収ボイラと異なる設備からの第2蒸気を前記蒸気タービンに供給して前記蒸気タービンをウォーミングするウォーミング部と、
を備えるプラント制御装置。
【請求項2】
前記ウォーミング部は、前記蒸気タービンのメタル温度に基づいて、前記蒸気タービンのウォーミングを終了し、
前記起動部は、前記メタル温度に基づいて、前記ガスタービンの起動を開始する、
請求項1に記載のプラント制御装置。
【請求項3】
前記ウォーミング部は、前記メタル温度が所定温度に到達した場合、または前記所定温度に到達してから所定時間が経過した場合に、前記蒸気タービンのウォーミングを終了し、
前記起動部は、前記メタル温度が所定温度に到達した場合、または前記所定温度に到達してから前記所定時間が経過した場合に、前記ガスタービンの起動を開始する、
請求項2に記載のプラント制御装置。
【請求項4】
前記メタル温度は、前記蒸気タービンの第一段シェル内面メタルの温度である、請求項2または3に記載のプラント制御装置。
【請求項5】
前記排熱回収ボイラは、ドラムから供給された水から蒸気を発生させる蒸発器と、前記ドラムに前記水を供給するポンプとを備え、
前記起動部は、前記蒸気タービンを前記第2蒸気によりウォーミングしている間に、前記ポンプを起動して、前記ドラムの水位を所定値に到達させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
【請求項6】
前記起動部は、前記蒸気タービンのウォーミングが終了する時点と、前記蒸気タービンへの通気が可能な状態に前記第1蒸気が到達する時点とが一致するように、前記ガスタービンを起動する、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
【請求項7】
前記蒸気タービンへの通気が可能な状態に前記第1蒸気が到達する時点とは、前記第1蒸気の温度、圧力、および流量の全部または一部が、前記蒸気タービンを駆動可能な状態に到達する時点である、請求項6に記載のプラント制御装置。
【請求項8】
前記ウォーミング部は、前記ガスタービンおよび前記発電機が起動され、停止中の前記蒸気タービンが空回りで回転しているときに、前記蒸気タービンを前記第2蒸気によりウォーミングする、請求項1から7のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
【請求項9】
前記ウォーミング部は、前記蒸気タービンの回転数が所定の回転数以上のとき、前記第2蒸気による前記蒸気タービンのウォーミングを中断する、請求項1から8のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
【請求項10】
前記所定の回転数は、前記蒸気タービンに前記第2蒸気が流入したときに前記蒸気タービンに生じる摩擦熱に基づいて設定された回転数である、請求項9に記載のプラント制御装置。
【請求項11】
前記発電プラントはさらに、
前記排熱回収ボイラに設けられ、前記蒸気タービンからの排気蒸気を前記排ガスにより加熱して再熱蒸気を生成する再熱器と、
前記再熱蒸気により駆動される再熱タービンとを備え、
前記ウォーミング部は、前記蒸気タービンを前記第2蒸気によりウォーミングする第1ウォーミングと、前記再熱器を前記第2蒸気によりウォーミングする第2ウォーミングとを実行し、前記第1ウォーミングの実行中に前記ガスタービンの起動を開始し、前記ガスタービンが着火した場合に前記第2ウォーミングを開始する、請求項1から10のいずれか1項に記載のプラント制御装置。
【請求項12】
前記ウォーミング部は、前記蒸気タービンのメタル温度に基づいて、前記第1ウォーミングを終了し、
前記起動部は、前記メタル温度に基づいて、前記ガスタービンの起動を開始する、
請求項11に記載のプラント制御装置。
【請求項13】
ガスタービンと、
前記ガスタービンにより駆動される発電機と、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記第1蒸気により駆動される蒸気タービンと、
前記ガスタービンおよび前記発電機と接続された第1軸と、前記蒸気タービンと接続された第2軸とを結合するクラッチと、
を備える発電プラントを制御するプラント制御方法であって、
前記クラッチが離脱しているときに、前記蒸気タービンを停止させたまま前記ガスタービンおよび前記発電機を起動し、
前記クラッチが離脱しているときに、
前記ガスタービンの回転に伴う潤滑油の前記クラッチへの流入により回転する前記蒸気タービンの回転数が所定の回転数よりも小さいうちは、前記ガスタービンおよび前記発電機の起動と並行して、前記排熱回収ボイラと異なる設備からの第2蒸気を前記蒸気タービンに供給して前記蒸気タービンをウォーミングする、
ことを含むプラント制御方法。
【請求項14】
ガスタービンと、
前記ガスタービンにより駆動される発電機と、
前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、
前記第1蒸気により駆動される蒸気タービンと、
前記ガスタービンおよび前記発電機と接続された第1軸と、前記蒸気タービンと接続された第2軸とを結合するクラッチと、
前記クラッチが離脱しているときに、前記蒸気タービンを停止させたまま前記ガスタービンおよび前記発電機を起動する起動部と、
前記クラッチが離脱しているときに、
前記ガスタービンの回転に伴う潤滑油の前記クラッチへの流入により回転する前記蒸気タービンの回転数が所定の回転数よりも小さいうちは、前記ガスタービンおよび前記発電機の起動と並行して、前記排熱回収ボイラと異なる設備からの第2蒸気を前記蒸気タービンに供給して前記蒸気タービンをウォーミングするウォーミング部と、
を備える発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント制御装置、プラント制御方法、および発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンと、排熱回収ボイラと、蒸気タービンとを組み合わせて構成するコンバインドサイクル発電プラントが知られている。排熱回収ボイラは、ガスタービンの排ガスから熱回収して蒸気を生成する。蒸気タービンは、排熱回収ボイラが生成する蒸気により駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-148002号公報
【文献】特開平2-308903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、蒸気タービンのコールド起動を行うと、蒸気タービンのロータは極低温であるのに対し、これを駆動する蒸気は高温であるので大きな温度差を生じ、これに起因して起動中に大きな熱応力が発生する。この熱応力を軽減する手法として、プレウォーミングが知られている。伝統的なプレウォーミングは、蒸気タービンを起動する前のターニング運転中に、高圧タービン排気部より補助蒸気を送入して高圧ロータをウォーミングするものである。起動時の熱応力は、大容量で構成部材が肉厚となる大型蒸気タービンにとってより厳しいので、プレウォーミングは主に汽力発電プラントや多軸型コンバインド発電プラントなどに用いられる大容量蒸気タービンに適用されてきた。しかし昨今のガスタービンの大型化・高性能化に伴い、一軸型コンバインド発電プラントの蒸気タービンも大容量化されて、プレウォーミングが適用されるようになってきた。
【0005】
元来プレウォーミングは3時間から5時間ほどの長時間を要するものであり、プラント起動の早期化の観点から、長時間のプレウォーミングは問題であった。起動時間の遅さに比較的寛容な汽力発電プラントに対し、コンバインドサイクル発電プラントは、高効率と共に起動時間の早さを利点とするため、プレウォーミングにより起動時間が遅くなるのは好ましくない。プレウォーミング時間を短縮する試みもいろいろとなされているが、その短縮には限界がある。
【0006】
一方、クラッチ結合タイプの一軸型コンバインド発電プラントが昨今導入されるようになってきた。クラッチ結合タイプのプラントでは、ガスタービンと蒸気タービンが駆動されるときに、一方のタービンが他方のタービンから受けるスラスト力(軸方向に働く力)をクラッチが緩和することから、設計面で負担軽減がもたらされる等の様々なメリットが指摘されている。そのため、クラッチ結合タイプのプラントは、今後の一軸型コンバインド発電プラントの主流になるとも目されており、クラッチ結合タイプのプラントにも好適に適用可能なプレウォーミングのニーズが高まると考えられる。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、ガスタービンと蒸気タービンとを備える発電プラントのウォーミングと早期起動とを両立することが可能なプラント制御装置、プラント制御方法、および発電プラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一の実施形態によれば、プラント制御装置は、ガスタービンと、前記ガスタービンにより駆動される発電機と、前記ガスタービンからの排ガスの熱を用いて第1蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記第1蒸気により駆動される蒸気タービンと、前記ガスタービンおよび前記発電機と接続された第1軸と、前記蒸気タービンと接続された第2軸とを結合するクラッチと、を備える発電プラントを制御する。前記装置は、前記クラッチが離脱しているときに、前記蒸気タービンを停止させたまま前記ガスタービンおよび前記発電機を起動する起動部を備える。前記装置はさらに、前記クラッチが離脱しているときに、前記ガスタービンおよび前記発電機の起動と並行して、前記排熱回収ボイラと異なる設備からの第2蒸気を前記蒸気タービンに供給して前記蒸気タービンをウォーミングするウォーミング部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の発電プラントの構成を示す模式図である。
【
図2a】第1実施形態の発電プラントの動作を示すフローチャート(1/2)である。
【
図2b】第1実施形態の発電プラントの動作を示すフローチャート(2/2)である。
【
図3a】第2実施形態の発電プラントの動作を示すフローチャート(1/2)である。
【
図3b】第2実施形態の発電プラントの動作を示すフローチャート(2/2)である。
【
図4】第3実施形態の発電プラントの構成を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態と第1比較例とを比較するためのチャートである。
【
図6】第2実施形態と第4比較例とを比較するためのチャートである。
【
図7】第3実施形態と第5比較例とを比較するためのチャートである。
【
図8】第1比較例の発電プラントの構成を示す模式図である。
【
図9a】第1比較例の発電プラントの動作を示すフローチャート(1/2)である。
【
図9b】第1比較例の発電プラントの動作を示すフローチャート(2/2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図9bでは、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。本実施形態の説明の中で、第1から第3比較例についても説明する。
【0012】
(1)第1比較例のプラント構成
図8は、第1比較例の発電プラント100の構成を示す模式図である。
図8の発電プラント100は、一軸型コンバインドサイクル(C/C)発電プラントである。
【0013】
図8の発電プラント100は、発電プラント100の動作を制御するプラント制御装置101を備え、さらには、ガスタービン(GT)102と、蒸気タービン(ST)103と、排熱回収ボイラ104と、MCV弁(高圧加減弁)105と、燃料調節弁106と、圧縮機107と、燃焼器108と、蒸発器109と、ドラム110と、過熱器111と、再熱器112と、復水器113と、循環水ポンプ114と、海水115の取込部および排出部と、燃料116の供給部と、発電機117と、ICV弁(インターセプト弁)118と、高圧タービンバイパス調節弁119と、LPCV弁(低圧加減弁)120と、低温再熱管121と、高温再熱管122と、送気配管123と、補助ボイラ124と、ウォーミング弁125と、高圧タービン排気管126と、検出用歯車127と、再熱ドレン弁128および129と、ケーシングドレン弁130とを備えている。
【0014】
蒸気タービン103は、高圧タービン103aと、中圧/低圧タービン103bと、高圧ロータ103cとを備えている。発電プラント100はさらに、第1段内面メタル温度センサTS1と、ST回転数検出器SP1と、火炎検出器FD1とを備えている。
【0015】
燃料調節弁106は、燃料配管に設けられている。燃料調節弁106を開弁すると、燃料配管から燃焼器108に燃料116が供給される。圧縮機107は、その入口から空気を導入し、燃焼器108に圧縮空気を供給する。燃焼器108は、燃料116を圧縮空気中の酸素と共に燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。火炎検出器FD1は、燃焼器108内の火炎を検出し、火炎の検出結果をプラント制御装置101に出力する。
【0016】
本比較例では、ガスタービン102、蒸気タービン103、および発電機117が同じ回転軸(ロータ)に固定されている。ガスタービン102は、燃焼ガスにより回転駆動されることで、回転軸を回転させる。発電機117は、回転軸に接続されており、回転軸の回転を利用して発電を行う。このように、発電機117は、ガスタービン102により駆動される。ガスタービン102から排出されたガスタービン排ガスA1は、排熱回収ボイラ104に送られる。排熱回収ボイラ104は、後述するように、ガスタービン排ガスA1の熱を用いて主蒸気A2を生成する。
【0017】
蒸発器109、ドラム110、過熱器111、および再熱器112は、排熱回収ボイラ104内に設けられており、排熱回収ボイラ104の一部を構成している。ドラム110内の水は、蒸発器109に送られ、蒸発器109内でガスタービン排ガスA1により加熱されることで飽和蒸気となる。飽和蒸気は、過熱器111に送られ、過熱器111内でガスタービン排ガスA1により過熱されることで過熱蒸気となる。排熱回収ボイラ104により生成された過熱蒸気は、主蒸気A2として蒸気配管に排出される。
【0018】
蒸気配管は、主配管とバイパス配管とに分岐している。主配管は高圧タービン103aに接続されており、バイパス配管は復水器113に接続されている。MCV弁105は、主配管に設けられている。高圧タービンバイパス調節弁119は、バイパス配管に設けられている。
【0019】
MCV弁105を開弁すると、主配管からの主蒸気A2が高圧タービン103aに供給される。高圧タービン103aは、主蒸気A2により回転駆動されることで、ガスタービン102と共に回転軸を回転させる。その結果、発電機117は、ガスタービン102と高圧タービン103aにより駆動される。高圧ロータ103cは、回転軸における高圧タービン103a内の部分である。高圧タービン103aの排気口(高圧タービン排気部)から排出された主蒸気A2(排気蒸気)は、高圧タービン排気管126と低温再熱管121とを介して再熱器112に供給される。第1段内面メタル温度センサTS1は、高圧タービン103aの第1段内面のメタル温度を検出し、メタル温度の検出結果をプラント制御装置101に出力する。ケーシングドレン弁130は、高圧タービン103aに接続された配管に設けられており、高圧タービン103a内で発生したドレン水を排出するために使用される。
【0020】
一方、高圧タービンバイパス調節弁119を開弁すると、バイパス配管からの主蒸気A2が、高圧タービン103aや中圧/低圧タービン103bをバイパスして復水器113に送られる。
【0021】
再熱器112の一端(以下「第1端」と呼ぶ)は低温再熱管121に接続され、再熱器112の他端(以下「第2端」と呼ぶ)は高温再熱管122に接続されている。本比較例の再熱器112は、高圧タービン103aからの主蒸気A2(排気蒸気)を第1端から取り込み、この主蒸気A2を第2端から排出する。
【0022】
例えば、再熱器112は、高圧タービン103aからの主蒸気A2を第1端から取り込み、主蒸気A2をガスタービン排ガスA1により加熱して再熱蒸気A4を生成する。すなわち、主蒸気A2が加熱されて再熱蒸気A4となる。再熱器112は、この再熱蒸気A4を第2端から高温再熱管122へと排出する。再熱ドレン弁128は、第1端付近で低温再熱管121から分岐した管に設けられており、再熱器112で発生したドレン水を排出するために使用される。一方、再熱ドレン弁129は、第2端付近で高温再熱管122から分岐した管に設けられており、再熱器112で発生したドレン水を排出するために使用される。
【0023】
高温再熱管122はICV弁118に接続されている。ICV弁118を開弁すると、高温再熱管122からの再熱蒸気A4が中圧/低圧タービン103bに供給される。中圧/低圧タービン103bは、中圧タービンと低圧タービンとを含み、再熱蒸気A4により回転駆動されることで、ガスタービン102や高圧タービン103aと共に回転軸を回転させる。その結果、発電機117は、ガスタービン102、高圧タービン103a、および中圧/低圧タービン103bにより駆動される。中圧/低圧タービン103bから排出された再熱蒸気A4(排気蒸気)は、復水器113に送られる。
【0024】
復水器113は、再熱蒸気A4を海水115により冷却し、再熱蒸気A4を海水115へと戻す。循環水ポンプ114は、海水115を海から取り込み、復水器113へと供給する。
【0025】
検出用歯車127は、高圧タービン103aと中圧/低圧タービン103bとの間において回転軸に設けられている。ST回転数検出器SP1は、検出用歯車127を利用することで回転軸の回転数(回転速度)を検出し、回転数の検出結果をプラント制御装置101に出力する。
【0026】
補助ボイラ124は、排熱回収ボイラ104を用いずに蒸気(補助蒸気A3)を生成するために発電プラント100内に設置されている。補助ボイラ124により生成された補助蒸気A3は、ウォーミング弁125を開弁することで、高圧タービン排気管126を介して高圧タービン103aに供給することができる。これにより、高圧タービン103aを補助蒸気A3によりウォーミングすることができる。このウォーミングは、高圧タービン103aのプレウォーミングとして実施される。
【0027】
送気配管123は、中圧/低圧タービン103bと補助ボイラ124との間に設けられている。LPCV弁120は、送気配管123に設けられている。本実施形態の補助蒸気A3は、LPCV弁120を開弁することで、中圧/低圧タービン103bに供給することができる。
【0028】
プラント制御装置101は、発電プラント100の種々の動作を制御する。例えば、プラント制御装置101は、MCV弁105、燃料調節弁106、ICV弁118、高圧タービンバイパス調節弁119、LPCV弁120、ウォーミング弁125、再熱ドレン弁128および129、ケーシングドレン弁130の開閉や、排熱回収ボイラ104、圧縮機107、燃焼器108、復水器113、循環水ポンプ114、補助ボイラ124の動作などを制御する。
【0029】
本比較例の発電プラント100では、ガスタービン102と蒸気タービン103が同じ軸に固定されている。このタイプの発電プラントを「リジッド結合の一軸型コンバインドサイクル発電プラント」または簡略化して「リジッド結合C/C」と呼ぶことにする。以下、本比較例の発電プラント100(リジッド結合C/C)のプラント起動について説明する。
【0030】
(2)第1比較例のプレウォーミング
図8は、リジッド結合C/Cの発電プラント100のプレウォーミングを実施している状態を示している。本図中に示す各弁の開閉状態は全体黒で塗りつぶしてあるものは「全閉」、全体白で抜けているものは「全開」、半分黒で塗りつぶし半分白で抜けているものは「中間開度」にある。
【0031】
リジッド結合C/Cの発電プラント100のプレウォーミングは、ガスタービン102も蒸気タービン103も停止中であるときに、補助蒸気A3を高圧タービン103aに送気して高圧ロータ103cを所定の温度にウォーミングする操作である。このとき補助蒸気A3は、高圧タービン103aに加えて再熱器112にも送気されて再熱器112のウォーミングも実施する。換言すれば、高圧タービン103aのプレウォーミングと再熱器112のプレウォーミングは同時進行する。以下、このことを高圧タービンバイパス調節弁119の系統に関連して記載する。
【0032】
発電プラント100におけるタービンバイパス系統と再熱器の配置は、カスケードバイパス系統ではない。発電プラント100では、高圧タービンバイパス調節弁119は復水器113に接続されており、ドラム110より発生する主蒸気A2は、高圧タービンバイパス調節弁119を経由して再熱器112に流入することなく復水器113に直接排出される。以後、この構成のタービンバイパス系統を「パラレルバイパス系統」と呼ぶ。この呼称の由来は、高圧タービンバイパス調節弁119と図示されない中圧タービンバイパス調節弁(ドラム110とは別の図示されない中圧ドラムに接続)が、復水器113からみてパラレルに接続されていることによる。パラレルバイパス系統は、コンバインドサイクル発電プラントのみならず、ドラム型汽力発電プラントなどに用いられている。
【0033】
プレウォーミングの観点から見た両バイパス系統の違いを以下にまとめる。
【0034】
カスケードバイパス系統は、後述する第3実施形態でも採用されるもので、低温再熱管121上に主蒸気A2の逆流を防止する逆止弁133が存在する。そして、逆止弁133を強制的に閉弁(強制閉止)することで、高圧タービン103aと再熱器112のプレウォーミングを分離することが可能となる。また、最初は高圧タービン103a単独のウォーミングを進行させて、その後に高圧タービン103aと再熱器112のウォーミングを同時進行(並行ウォーミング)するように切替えることが可能となる。
【0035】
一方、パラレルバイパス系統では、そのような逆止弁は設置されない。よって、上述の如く、高圧タービン103aと再熱器112のプレウォーミングは常に同時進行(並行ウォーミング)となる。第1実施形態では、このようなパラレルバイパス系統について説明する。
【0036】
発電プラント100はリジッド結合C/Cなので、蒸気タービン103はガスタービン102の起動と同時に回転上昇し、このとき低圧タービン103bの動翼には風損が発生する。このため低圧タービン103bを冷却する必要があることから、補助ボイラ124の出口より送気配管123を分岐し、送気配管123を低圧タービン103bに接続している。そして、送気配管123にはLPCV弁120が設置されており、このLPCV弁120を開弁することで補助蒸気A3を低圧タービン103bに送気し、低圧タービン103bをクーリングする。以下、このクーリング操作を「低圧クーリング」と呼称する。
【0037】
(3)第1比較例の起動フローチャート
図9aと
図9bは、第1比較例の発電プラント100の動作を示すフローチャートである。このフローチャートを実現するのは、プラント制御装置101の内部に収納されるソフトウェアである。なお、以下の説明中に使用される具体的な数値は、容易な理解のために記載する一例である。
【0038】
発電プラント100の起動準備は、最初に蒸気タービン103のターニング運転より開始される(ステップS101)。蒸気タービン103は、ターニング運転により約4RPMから10RPM程度の極低回転に維持され、この運転状態で次の復水器真空上昇が可能となる。
【0039】
復水器113の真空上昇が行われると(ステップS102)、復水器113内はほぼ真空状態となる。これに加えて、パラレルバイパス系統の再熱器112は、再熱ドレン弁128および129を介して復水器113に接続されている。再熱器112内に残留する不凝縮性ガス(代表的には空気や窒素封入された場合は窒素ガス)は、復水器113内が真空になるにつれて復水器113に排出されて、再熱器112の内部もほぼ真空となる。この真空状態を保持することで、後ほど補助蒸気A3がプレウォーミングのため送気されたときに、高圧タービン103a内や再熱器112内で発生するドレン水がそれぞれのドレン弁から復水器113に適切に排水される。
【0040】
次にプレウォーミングを実施する。プレウォーミングでは先ず、ウォーミング弁125を開弁して(ステップS103)、補助ボイラ124が供給する補助蒸気A3を高圧タービン103aと再熱器112に送気する(ステップS104)。これにより、高圧タービン103aのウォーミング(暖気)が開始され、次第にロータ103cはウォーミングされていく。
【0041】
高圧タービン103a内では、補助蒸気A3の一部が凝縮してドレン水となる。このドレン水は、ケーシングドレン弁130により復水器113に排水される。この工程と並行して再熱器112のウォーミングが開始され、同様に再熱器112の内部では補助蒸気A3の一部が凝縮してドレン水となり、このドレン水は再熱ドレン弁128および129により復水器113に排水される。なお、
図8は、ドレン弁として、高圧タービン103a内のケーシングドレン弁130と、再熱器112周りの再熱ドレン弁128および129のみを代表的に示しているが、実際は図示されない多数のドレン弁が設置される。
【0042】
温度センサTS1は、ロータ103cの構成要素である第一段シェル内面メタルの温度を計測する(ステップS105)。この第一段シェル内面メタル温度は、ロータ103cの温度を代表する指標であり、ロータ103cが冷機状態なのかウォーミング状態なのかを判断する指標となる。送気された補助蒸気A3は、最初のうちは凝縮してドレン水となることに加えて、ロータ103cは非常に大きな熱容量を有するので、第一段シェル内面メタル温度は緩慢に上昇する。
【0043】
そしてプラント制御装置101は、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上となったか否か判定して(ステップS106)、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になったときウォーミング弁125を閉弁して(ステップS107)、プレウォーミングを終了する。なお説明の便宜上、第1実施形態と第1比較例は、ウォーミング弁125を開弁してから第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になるまでに3時間を要するプレウォーミングの起動例とする。このようにして、一旦150℃までウォーミングされた第一段シェル内面メタルはその後も冷えることなく、蒸気タービン103の通気開始(ステップS125)まで150℃またはその近傍の温度は保持される。
【0044】
プレウォーミングが終了した後、排熱回収ボイラ104のサービスイン(ステップS108)を行う。この排熱回収ボイラ104のサービスインでは、排熱回収ボイラ104に付属する給水ポンプ(図示されない)を起動することで、給水ポンプからドラム110に給水し、ドラム110の水位を所定の値に確立させる。このようにして、排熱回収ボイラ104がガスタービン排ガスA1を受け入れる準備が行われる。
【0045】
この給水ポンプは高圧のドラム110に多量の給水を供給するポンプなので、この給水ポンプを駆動するための補機動力は大きな電力を要する。よって、商用発電を行わない排熱回収ボイラ104のサービスインは、なるべく短時間で終了するように配慮される。例えばメンテナンスや清掃のために排熱回収ボイラ104の全缶ブローを行った場合は、発電プラント100の起動準備に入る前に、缶水水張り操作を終えておく等の処置がとられる。第1比較例や第1実施形態などは、排熱回収ボイラ104のサービスインに10分を要する起動例とする。
【0046】
排熱回収ボイラのサービスインが終了すると、ガスタービン102を起動する(ステップS109)。ガスタービン102を起動すると、まずパージ運転が10分間行われ(ステップS111)、その後、燃料調節弁106を開弁して着火および昇速の過程(ステップS112)を経て定格速度の3000RPMに到達し、FSNL(無負荷定格回転)に到達する(ステップS113)。
【0047】
蒸気タービン103は、ガスタービン102の起動(ステップS109)と同時に回転上昇を開始する(ステップS121)。プラント制御装置101は、ST回転数検出器SP1からの信号を計測して(ステップS122)、蒸気タービン103の回転数が1500RPM以上になったことを判断する(ステップS123 YES)と、LPCV弁120を開弁して低圧クーリングを開始する(ステップS124)。これにより、補助蒸気A3は低圧タービン103bに送気され、低圧タービン103bのクーリングが行われる。この低圧クーリングはその後、蒸気タービン103の通気開始(ステップS125)が行われるまで継続し、通気された後にLPCV弁120を閉弁する(ステップS127)。
【0048】
発電機117の並列許可条件が成立すると(ステップS114 YES)、発電機117が並列される(ステップS115)。並列許可条件の一例として、ガスタービン排ガスA1に含まれるNOx(窒素酸化物)をアンモニア注入で還元するための触媒の温度条件等がある。
【0049】
発電機117を並列した後、ガスタービン102の出力を20%負荷に上昇させる(ステップS116)。ガスタービン102の出力が20%負荷に到達すると(ステップS117 YES)、そこでガスタービン102は負荷保持運転に入る。なお、ガスタービン102の20%負荷は、蒸気タービン103の通気が開始される前に許容される最大出力の一例である。例えば、この最大出力は、復水器113の冷却水である海水の出入口温度差が7℃を超えない運転が可能な最大出力として与えられるものである。
【0050】
ステップS112でガスタービン102の着火が行われた以後は、排熱回収ボイラ104にガスタービン排ガスA1が流入して、蒸発器109では蒸発が開始されて主蒸気A2が生成される。ガスタービン102の出力が20%負荷に上昇するにつれて、ガスタービン排ガスA1の熱量(温度、流量)も増加し、蒸気タービン103の通気許可条件が成立する(ステップS118 YES)。この通気条件の主要な構成要素は、主蒸気A2の圧力条件、流量条件、および温度条件であり、これら全てが所定の値に到達したときに通気条件は成立する。所定の値の例は、主蒸気A2が高圧タービン103aを駆動可能な値である。なお説明の便宜上、第1比較例と第1実施形態は、ガスタービン102の起動開始から蒸気タービン103の通気許可条件が成立するまで40分を要する起動例とする。
【0051】
プラント制御装置101は、蒸気タービン103の通気許可条件が成立したこと(ステップS118 YES)を判断して、蒸気タービン103の通気を開始し(ステップS125)、MCV弁105とICV弁118は開弁を開始する。主蒸気A2は、MCV弁105を経由して高圧タービン103aに流入し、高圧タービン103aを駆動する。主蒸気A2はその後、高圧タービン103aから排気されて高圧タービン排気管126から低温再熱管121を経て再熱器112に流入し、再び加熱されて再熱蒸気A4となり、ICV弁118を経由して中圧タービン103bに流入し、中圧タービン103bを駆動する。なお、パラレルバイパス系統においては通気以後に再熱器112に蒸気が流入するが、既に再熱器112は高圧タービン103aと供にプレウォーミングを終了させているので、再熱器112に多量のドレン水が発生する問題はない。
【0052】
蒸気タービン103は、通気開始の時点で定格速度の3000RPMで回転中であり、昇速は必要としない。そこで、プラント制御装置101は、通気開始後にMCV弁105とICV弁118の開度を増して、初負荷ヒートソーク運転を開始する(ステップS126)。初負荷ヒートソーク運転中には、例えば圧縮器107の入口案内翼を制御する。その後、初負荷ヒートソーク終了後の起動工程が行われる。
【0053】
(4)第1実施形態のプラント構成
図1は、第1実施形態の発電プラント100aの構成を示す模式図である。
図1の発電プラント100aは、一軸型C/C発電プラントである。
【0054】
図1の発電プラント100aは、発電プラント100aの動作を制御するプラント制御装置101bを備え、さらには、
図8に示す構成要素に加えて、クラッチ131と、ギャップセンサ(クラッチ勘合検出器)GS1とを備えている。
【0055】
プラント制御装置101aは、上述のプラント制御装置101と同様の機能を有しているが、プラント制御装置101とは異なる機能も有している。例えば、プラント制御装置101aは、クラッチ131の動作を制御することや、クラッチ131の勘合の検出結果をギャップセンサGS1から受信することが可能である。プラント制御装置101aのその他の機能については、後述する。
【0056】
本実施形態の発電プラント100aでは、ガスタービン102と蒸気タービン103がクラッチ131により結合されている。このタイプの発電プラントを「クラッチ結合の一軸型コンバインドサイクル発電プラント」または簡略化して「クラッチ結合C/C」と呼ぶことにする。クラッチ131は、ガスタービン102および発電機117と接続された第1回転軸と、高圧蒸気タービン103aおよび中圧/低圧タービン103bと接続された第2回転軸とを結合することや、第1回転軸と第2回転軸とを切り離すことが可能である。検出用歯車127は、高圧タービン103aと中圧/低圧タービン103bとの間において第2回転軸に設けられており、ST回転数検出器SP1は、検出用歯車127を利用することで第2回転軸の回転数を検出する。
【0057】
図1の発電プラント100aと
図8の発電プラント100は、このクラッチ131の有無の点で相違している。クラッチ131の実際の構造は複雑であり、
図1はこれを模式化して図示している。発電プラント100aが起動を開始した時点では、クラッチ131は離脱状態であり、ガスタービン102と発電機117は先行起動が行われる。このとき、蒸気タービン103は停止状態にある。そして、蒸気タービン103の通気許可条件が成立したとき、蒸気タービン103は自力で昇速起動を行い、定格回転数の近傍にまで昇速したときクラッチ131は遠心力の作用で自動的に嵌合する。このようにクラッチ131が嵌合した後、すなわち、プラント起動工程の残り後半と通常運転中は、ガスタービン102と蒸気タービン103で発電機117を駆動して発電が行われる。これは、リジッド結合C/Cとである
図8の発電プラント100の場合と同じ発電様式である。
【0058】
クラッチ結合C/Cのメリットは以下のように考えられる。クラッチ結合C/Cでは、クラッチ131が離脱しているときにガスタービン102と発電機117が先行起動し、そのとき蒸気タービン103は停止または極低回転の状態なので、ガスタービン102の起動中のプレウォーミングが可能となる。この点を活用すれば、効率的で好適なプレウォーミングが実現できる。また蒸気タービン103は自力昇速なので、リジッド結合C/Cのように低圧タービンの風損発生はなく低圧クーリングも不要である。よって、プレウォーミングの際に、補助蒸気A3の使用の面で拘束を受けるという不便さを抑制することができる。
【0059】
このように、クラッチ結合C/Cではガスタービン102の起動後もプレウォーミングが可能である。そこで、第1実施形態では、長時間を要するプレウォーミングの途中で、プレウォーミングの終了を待たずにガスタービン102の起動を開始し、発電プラント100aの起動の早期化を図る。具体的には、第一段シェル内面メタル温度に応じてガスタービン102の起動を開始する。その際に、プレウォーミングの終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気条件成立のタイミングとを一致させるように第一段シェル内面メタル温度を選定して、ガスタービン102を起動する。プラント制御装置101aがプレウォーミングを制御する機能は、ウォーミング部の一例である。また、プラント制御装置101aがガスタービン102等の起動を制御する機能は、起動部の一例である。
【0060】
元来プレウォーミングは、高圧タービン103aが停止または極低回転状態のときだけに許容される操作である。しかし、クラッチ結合C/Cでは、ガスタービン102の起動後であってもプレウォーミングが可能である。これは、ガスタービン102の先行起動時に蒸気タービン103は停止状態という起動工程によりもたらされるものである。
【0061】
そして、蒸気タービン103の通気許可条件が成立したとき、蒸気タービン103は自力で昇速起動を行い、定格回転数の近傍にまで昇速したときクラッチ131は遠心力の作用で自動的に嵌合する。このように、蒸気タービン103は通気して自力昇速するので、リジッド結合C/Cのような低圧タービン103bの風損問題はなく、低圧クーリングも不要である。従って、低圧クーリングのために
図8の発電プラント100に設けられた送気配管123は、
図1の発電プラント100aでは存在しない。また、LPCV弁120は、本実施形態とは直接関連しないので
図1からは省略されている。それ以外の構成は、パラレルバイパスである系統上の特徴を含めて、
図1の発電プラント100aは
図8の発電プラント100と同じである。
【0062】
(5)第1実施形態の起動時間
第1実施形態と第1比較例は、プレウォーミングに3時間を要する起動例である。そして第1実施形態は、プレウォーミングの終了を待たずに、ガスタービン103の起動を前倒しで開始し、プレウォーミングとガスタービン103の起動とを並行的に進行させる。そしてその並行進行では、プレウォーミングの終了と蒸気タービン103の通気許可条件の成立の両タイミングを一致させるように、ガスタービン103の起動開始の時点を選定する。
【0063】
この詳細説明に入る前に、(i)蒸気タービンの通気条件成立に要する時間と、(ii)第一段シェル内面メタル温度の昇温レートを次のように整理する。
【0064】
先ず(i)に関し、比較例1と同じく、ガスタービン102の起動から蒸気タービン103の通気許可条件が成立するまで40分を要する起動例とする。ここで、本実施形態の通気許可条件とは、主蒸気A2の圧力、流量、および温度の全てが所定の値に到達する条件である。
【0065】
次に(ii)に関し、ロータ103cは非常に大きな熱容量を有する。よって、補助蒸気A3はロータ103cの表面をウォーミングするが、その熱はロータ103cの内部に熱伝達されてしまう。そのため、プレウォーミング中の第一段シェル内面メタル温度の昇温レートは緩慢である。説明の便宜上、第1実施形態は、この昇温レートが0.2℃/分であり、第一段シェル内面メタル温度はこの昇温レートで温度上昇するという起動例とする。因みにこの0.2℃/分は、同メタル温度が130℃から150℃近傍の帯域での昇温レートである。例えば、これより低い温度帯域では、補助蒸気A3の温度と同メタル温度との間の温度差(ΔT)が大きいので、この昇温レートは速くなる。また、プレウォーミングの開始直後等のさらに冷たい冷機状態では、補助蒸気A3は多量のドレン水に凝縮するので、この昇温レートは極端に遅くなる。
【0066】
このように、(ii)の昇温レートを想定することで、第一段シェル内面メタル温度の上昇をあたかも時間の経過と同じように取扱うことが可能となる。例えば、ガスタービン102の起動から蒸気タービン103の通気許可条件が成立するまでの40分を、第一段シェル内面メタル温度に換算することが可能となる。
【0067】
これを利用して、次のようにガスタービン102の起動開始の時点を選定する。すなわち、本実施形態では、第一段シェル内面メタル温度が142℃に上昇したときに、ガスタービン102を起動する(142℃=150℃-40分×0.2℃/分)。このようにすれば、第一段シェル内面メタル温度が150℃に昇温してプレウォーミング終了となる時点と、蒸気タービン103の通気許可条件が成立する時点とを一致させることができる。そしてガスタービン102が同メタル温度142℃で起動するためには、排熱回収ボイラ104のサービスインも前倒しで、第一段シェル内面メタル温度が140℃に上昇したときに開始する。
【0068】
(6)第1実施形態の起動フローチャート
図2aと
図2bは、第1実施形態の発電プラント100aの動作を示すフローチャートである。このフローチャートを実現するのは、プラント制御装置101aの内部に収納されるソフトウェアである。以下の説明中に使用される具体的な数値は、容易な理解のために記載する一例である。
【0069】
発電プラント100aの起動準備は、最初に蒸気タービン103のターニング運転より開始される(ステップS101)。蒸気タービン103は、ターニング運転により約4RPMから10RPM程度の極低回転に維持され、この運転状態で復水器113の真空上昇が可能となる。
【0070】
復水器113の真空上昇が行われると(ステップS102)、復水器113内はほぼ真空状態となる。これに加えて、パラレルバイパス系統の再熱器112は、再熱ドレン弁128および129を介して復水器113に接続されている。再熱器112内に残留する不凝縮性ガスは、復水器113内が真空になるにつれて復水器113に排出されて、再熱器112も真空となる。この真空状態を保持することで、後ほど補助蒸気A3がプレウォーミングのため送気されたときに、高圧タービン103a内や再熱器112内で発生するドレン水がそれぞれのドレン弁から復水器113に適切に排水される。即ち、これが終了しないとプレウォーミングができないので、後述する排熱回収ボイラ104のサービスインとは異なり、復水器113の真空上昇はプレウォーミングとの並行操作・進行が可能ではない。ここまでの起動工程は、第1比較例と同じである。
【0071】
次にプレウォーミングを実施する。プレウォーミングでは、先ずウォーミング弁125を開弁して(ステップS103)、補助ボイラ124が供給する補助蒸気A3を、高圧タービン103aと再熱器112の両方に送気する(ステップS104)。これにより、高圧タービン103aのウォーミング(暖気)が開始され、次第にロータ103cはウォーミングされていく。高圧タービン103aは蒸気タービンの一例であり、中圧/低圧タービン103bは再熱タービンの一例であり、補助ボイラ124は、排熱回収ボイラ104と異なる設備の一例である。また、主蒸気A2と補助蒸気A3はそれぞれ、第1蒸気と第2蒸気の例である。
【0072】
高圧タービン103a内では、補助蒸気A3の一部が凝縮してドレン水となる。このドレン水は、ケーシングドレン弁130により復水器113に排水される。この工程と並行して再熱器112のウォーミングが開始され、再熱器112内では補助蒸気A3の一部が凝縮してドレン水となり、このドレン水は再熱ドレン弁128および129により復水器113に排水される。なお、本実施形態は補助蒸気源として補助ボイラ124を使用する例としたが、発電プラント100a以外に他の発電プラントが隣接設置される場合では、当該他発電プラントが生成した蒸気の一部を発電プラント100aが受けてこれを補助蒸気源とする場合もある。
【0073】
温度センサTS1は、ロータ103cの構成要素である第一段シェル内面メタルの温度を計測する(ステップS105)。プラント制御装置101aは、計測された第一段シェル内面メタル温度が140℃以上となったか否か判定して、第一段シェル内面メタル温度が140℃以上になったとき(ステップS201 YES)に排熱回収ボイラ104のサービスイン(ステップS108)を行う。このサービスインでは、排熱回収ボイラ104に付属する給水ポンプを起動することで、給水ポンプからドラム110に給水し、ドラム110の水位を所定の値に確立させる。このようにして、排熱回収ボイラ104がガスタービン排ガスA1を受け入れる準備が行われる。排熱回収ボイラ104のサービスインは、10分を要する起動工程である。
【0074】
第1実施形態では、プレウォーミング終了を待たずに前倒しでガスタービン102の起動を開始することは既に述べた。これに加えて、排熱回収ボイラ104のサービスインもプレウォーミング終了を待たずに開始する。なぜなら、ガスタービン102の起動は、排熱回収ボイラ104のサービスインが終了しないと許容されないので、この前倒しがないとガスタービン102の起動の前倒しも叶わないからである。また、これが可能となるのは、排熱回収ボイラ104のサービスインの起動工程自体は補助蒸気A3を消費しないので、補助蒸気A3の使用の面での拘束がなくプレウォーミングとの並行操作が可能となるためである。
【0075】
ガスタービン102の起動は、第一段シェル内面メタル温度が142℃まで上昇したときに開始する予定となっている。これに排熱回収ボイラ104のサービスインに要する時間である10分を勘案すれば、第一段シェル内面メタル温度が140℃になったときに、排熱回収ボイラ104のサービスインを開始すればよい(140℃=142℃-10分×0.2℃/分)。これにより、第1比較例では第一段シェル内面メタル温度が150℃になったとき(プレウォーミングが終了したとき)にサービスインを開始するのに対し、本実施形態のサービスインは50分早く開始される。後述する
図5は、本実施形態と第1比較例の排熱回収ボイラ104のサービスインに50分の起動時刻の差があることを図示している。
【0076】
その後、10分が経過すると排熱回収ボイラ104のサービスインは終了する。これと同時に、第一段シェル内面メタル温度は142℃に到達する。プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が142℃以上になったことを確認して(ステップS202 YES)、念のためANDゲート処理(ステップS203)により排熱回収ボイラ104のサービスインも終了していることを確認して、ガスタービン102を起動する(ステップS109)。この142℃という温度は、所定温度の一例である。
【0077】
ガスタービン102を起動すると、まずパージ運転が10分間行われる(ステップS111)。その後、燃料調節弁106を開弁して着火および昇速の過程(ステップS112)を経て定格速度の3000RPMに到達し、FSNL(無負荷定格回転)に到達する(ステップS113)。この一連の起動工程においてクラッチ131は離脱状態なので、ガスタービン102および発電機117の起動後にも蒸気タービン103は停止状態にある。
【0078】
第1比較例では、ガスタービン102の起動と同時に、蒸気タービン103は回転上昇を開始するので、プレウォーミングを終了させてウォーミング弁125を全閉させた後にガスタービン102の起動を行う。一方、本実施形態では、上記のようにプレウォーミングを継続させながらガスタービン102の起動を行うことが可能である。
図5は、このガスタービン起動とプレウォーミングの並行進行により、第1比較例のガスタービン102の起動に対し、本実施形態のガスタービン102の起動が50分の早期化を実現していることを示している。また、第1比較例では蒸気タービン103の回転上昇に伴い必要となる低圧クーリング(補助蒸気A3を多量に消費する)も、本実施形態では不要である。このことも、本実施形態にて補助ボイラ124の負担面からガスタービン起動とプレウォーミングの並行進行を容易ならしめる要因である。
【0079】
その替わり、蒸気タービン103は、「つれ回り」 による100RPMから300RPM程度での空回り現象を起こすことが留意される。以下、この「つれ回り」について説明する。
【0080】
ガスタービン102の起動時にはクラッチ131は離脱状態であり、このとき蒸気タービン103は停止状態にあると既に説明した。しかし、厳密に蒸気タービン103の挙動を描写すると、停止状態(通気されていない状態)にありながらガスタービン102側で駆動された潤滑油がクラッチ131に流入することで、蒸気タービン103側へトルクが伝達される。よって、ガスタービン102が昇速起動すると、それにつられて蒸気タービン103も100RPMから300RPMの回転数で空回りする。この現象をつれ回りと呼ぶ。プレウォーミングは、高圧タービン103aが停止または低回転状態のときだけに許容される操作であるが、この観点からは、100RPMから300RPMの回転中に補助蒸気A3が送気されても、問題となるほどの深刻な摩擦熱は生じない。換言すれば300RPM程度の回転数はプレウォーミングを許容する充分に低回転の範疇であるので、つれ回りの状態でプレウォーミングを行っても問題は生じない。
【0081】
しかし何らかの原因により、蒸気タービン103の回転数が想定される300RPMを超える回転数になったときに備えて、プラント制御装置101aは、ST回転数検出器SP1からの信号を計測する(ステップS122)。そして、プラント制御装置101aは、計測された蒸気タービン103の回転数が350RPM以上であることを判断した場合には(ステップS204 YES)、ウォーミング弁125を閉弁し(ステップS205)、プレウォーミングを中断する。この350RPMという回転数は、上述の300RPMに対して50RPMのマージンを付与したものであり、所定の回転数の一例である。
【0082】
そして発電機117の並列許可条件が成立すると(ステップS114 YES)、発電機117が並列される(ステップS115)。並列許可条件の例として、ガスタービン排ガスA1に含まれるNOx(窒素酸化物)をアンモニア注入で還元するための触媒の温度条件等がある。
【0083】
発電機117を並列した後、ガスタービン102の出力を20%負荷に上昇させる(ステップS116)。ガスタービン102の出力が20%負荷に到達すると(ステップS117 YES)、ガスタービン102は負荷保持運転に入る。ガスタービン102の20%負荷は、蒸気タービン103の通気が開始される前に許容される最大出力の一例であり、例えば、復水器113の冷却水である海水の出入口温度差が7℃を超えない運転が可能な最大出力として与えられるものである。なお、クラッチ結合C/Cのガスタービン102を先行起動させて、ガスタービン102を定格出力(100%負荷)にした状態で蒸気タービン103を後発起動させることも考えられるが、環境保護の面から復水器113の出入口海水温度差に規制が設けられる発電プラント100aでは一般にこの起動法は採用しにくい。
【0084】
ステップS109でガスタービン102が起動した後、40分を経過した時点で蒸気タービン103の通気許可条件が成立する(ステップS118 YES)。本実施形態の通気条件の主要な構成要素は、主蒸気A2の圧力条件、流量条件、および温度条件であり、これら全てが所定の値に到達したときに通気条件は成立する。所定の値の例は、主蒸気A2が高圧タービン103aを駆動可能な値である。なお、本実施形態の通気条件は、主蒸気A2の圧力、流量、および温度の一部が所定の値に到達したときに成立するように設定することも考えられる。
【0085】
これと同時にガスタービン102が起動したときに142℃であった第一段シェル内面メタル温度は40分を経過した時点で150℃に到達する。プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になったことを確認して(ステップS106 YES)、ウォーミング弁125を閉弁して(ステップS107)、プレウォーミングを終了する。この150℃という温度は、所定温度の一例である。
【0086】
すなわち、本実施形態では、プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気条件が成立して蒸気タービン103への通気が可能となるタイミングとが一致する。よって、蒸気タービン103の通気(ステップS125)が、このタイミングで迅速に開始されることとなる。
【0087】
なお、発電プラント100aによっては、より確実なウォーミングを担保する目的で、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になった後、所定時間が経過した時点でプレウォーミングを終了する場合もある。後述する第2実施形態はこのケースを取り扱う起動法である。
【0088】
プラント制御装置101aは、ANDゲート処理(ステップS207)により、蒸気タービン103の通気許可条件が成立したこと(ステップS118 YES)と、ウォーミング弁125が全閉したこと(ステップS206 YES)の両方が成立したことを判断する。そして、プラント制御装置101aは、これらの両方が成立した場合に、蒸気タービン103の通気を開始し(ステップS125)、MCV弁105とICV弁118を開弁する。このようにして、蒸気タービン103が起動される。
図5に照らせば、第1比較例の蒸気タービン通気開始に対し、本実施形態の通気開始は50分の早期化を実現しているのが判る。
【0089】
通気が開始されると、主蒸気A2は、MCV弁105を経由して高圧タービン103aに流入し、高圧タービン103aを駆動する。主蒸気A2はその後、高圧タービン103aから排気されて、高圧タービン排気管126から低温再熱管121を経て再熱器112に流入し、再び加熱されて再熱蒸気A4となり、ICV弁118を経由して中圧タービン103bに流入し、中圧タービン103bを駆動する。プラント制御装置101aは、通気開始後にMCV弁105とICV弁118の開度を制御して蒸気タービン103を昇速し(ステップS211)、蒸気タービン103の回転数は定格速度(3000RPM)に向けて上昇する。
【0090】
蒸気タービン103の回転数がこの定格速度の近傍まで上昇したとき(ステップS212 YES)、クラッチ131は遠心力の作用で自動的に嵌合する(ステップS213)。この嵌合はあくまでもクラッチ131自体が有するメカニカルな機序により行われるもので、プラント制御装置101aによる制御の作用ではない。クラッチ131が嵌合した後は、ガスタービン102と蒸気タービン103で発電機117を駆動して発電が行われ、これ以後はリジッド結合C/Cと同じ発電様式となる。
【0091】
ギャップセンサGS1は、クラッチ131が勘合しているかどうかを検知する勘合検出器である。プラント制御装置101aは、ギャップセンサGS1からの信号を入力してクラッチ131が勘合したことを判断すると(ステップS214 YES)、MCV弁105とICV弁118の開度を増して、蒸気タービン103の初負荷ヒートソーク運転を開始する(ステップS126)。初負荷ヒートソーク運転中には、例えば圧縮器107の入口案内翼を制御する。その後、初負荷ヒートソーク終了後の起動工程が行われる。
【0092】
(7)第1実施形態の効果その1
第1実施形態では、排熱回収ボイラ104のサービスイン(ステップS108)、ガスタービン102の起動(ステップS109)、蒸気タービン103の通気開始(ステップS125)をそれぞれ、第一段シェル内面メタル温度の測定値が140℃、142℃、150℃に到達した時点で開始する。これにより、第1実施形態では、第1比較例に対していずれも50分の早期化を実現している。そしてこれら3つの早期化のうち、排熱回収ボイラ104のサービスインとガスタービン102の起動の早期化は、蒸気タービン103の通気開始を早期化するために必要となる要件であるとも言える。そのため、プラント起動早期化の観点からは、本実施形態の効果は蒸気タービン103の通気開始の早期化ということに集約できる。
【0093】
図5は、第1実施形態と第1比較例とを比較するためのチャートであり、以上に記載した蒸気タービン103の通気開始の早期化をより直截に可視化するために用意された図である。
【0094】
図5では、プレウォーミング(PW)が基準となって時間が整理されていることを念頭に置くのが理解の一助となる(符号S1を参照)。具体的には、第1比較例と第1実施形態においてプレウォーミングの開始時刻および終了時刻は同じ時刻であり、それ故に、蒸気タービン103の通気開始がプレウォーミング終了に対してどれだけ遅れるかという視点での比較が可能となる(符号S4を参照)。
【0095】
図5によれば、第1比較例ではプレウォーミング終了の50分後に蒸気タービン103の通気が開始されるのに対し、第1実施形態ではプレウォーミング終了と同時に蒸気タービン103の通気が開始される。すなわち、第1実施形態は、第1比較例に対して50分のプラント起動早期化を達成している。これが可能になるのは、本実施形態ではクラッチ結合C/Cのメリットを生かして、プレウォーミングと並行的にガスタービン102の起動と排熱回収ボイラ104のサービスインの工程を進行させるからである(符号S2、S3を参照)。
【0096】
さらに注目すべきことは、第1比較例に対する50分のプラント起動早期化とは、第1比較例において180分(3時間)を要していたプレウォーミングを、130分に短縮した場合の効果に等しい。前述したとおり、プレウォーミング時間を短縮する試みはいろいろと検討されているが、現実的には難しい。実際、
図5でも第1比較例と第1実施形態のプレウォーミング工程は同じ3時間を要し、プレウォーミング自体は両者で同様に実行されている。しかし本実施形態によれば、プレウォーミングと並行的にガスタービン102の起動と排熱回収ボイラ104のサービスインの工程を進行させることで、事実上プレウォーミングに関連する時間を72%に短縮することができる(72〔%〕=130分÷180分)。
【0097】
(8)第1実施形態の効果その2
さらに第1実施形態では、プレウォーミングとガスタービン102の起動とを並行的に進行させる際に、プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングとを一致させるように、ガスタービン102の起動開始の時点を選定する。以下、これにより得られる効果を考察する。
【0098】
その考察アプローチとして、本実施形態と同じ並行進行を行うが、上記の両タイミングが一致しない2つの起動法(第2および第3比較例)を本実施形態と比較する。なお、
図5でプレウォーミングの開始時刻と終了時刻が本実施形態と第1比較例との間で一致しているのと同様に、第2および第3比較例のプレウォーミングの開始時刻と終了時刻も本実施形態と同じであるとする。それ故に、蒸気タービン103の通気開始がプレウォーミング終了に対してどれだけ早いか遅いかという視点で、第1実施形態と第2および第3比較例とを比較することが可能となる。例えば、第1実施形態はプレウォーミング終了と同時に蒸気タービン103の通気開始が行われると記述できる。
【0099】
(9)第2比較例
第2比較例は、プレウォーミング終了よりも、蒸気タービン103の通気許可条件の成立(通気許可成立)が遅くなるようにした起動法である。説明上の便宜のため、第2比較例は、ステップS202において第一段シェル内面メタル温度の閾値を、第1実施形態の142℃から、より高い温度(例えば145℃)に替えた起動例とする。よって、第2比較例では、同メタル温度が145℃になったときに、ガスタービン102の起動(ステップS109)が開始される。
【0100】
これにより、第2比較例では、第1実施形態に対しガスタービン102の起動が15分遅れて開始されるので、通気許可成立も15分遅れる(15分=〔145℃-142℃〕÷0.2℃/分)。従って、第2比較例では、プレウォーミング終了の15分後に蒸気タービン103の通気開始が行われる。これは、第1実施形態に対しプラント起動が15分遅延することであり、第2比較例では、プラント起動早期化の利得が15分目減りしていることを意味する。
【0101】
(10)第3比較例
第3比較例は、プレウォーミング終了よりも、蒸気タービン103の通気許可条件の成立(通気許可成立)が早くなるようにした起動法である。説明上の便宜のため、第3比較例は、ステップS202において第一段シェル内面メタル温度の閾値を、第1実施形態の142℃から、より低い温度(例えば139℃)に替えた起動例とする。よって、第3比較例では、同メタル温度が139℃になったときに、ガスタービン102の起動(ステップS109)が開始される。
【0102】
これにより、第3比較例では、第1実施形態に対しガスタービン102の起動が15分早く開始されるので、通気許可成立も15分早くなる(15分=〔142℃-139℃〕÷0.2℃/分)。しかし、プレウォーミングが終了しないと蒸気タービン103の通気開始は可能とならないので、結局、第3比較例では、プレウォーミング終了と同時に蒸気タービン103の通気開始が行われる。これは、第1実施形態と同じプラント起動であり、プラント起動早期化の利得としては第1実施形態と同じである。
【0103】
しかし商用発電プラントとしての経済性の観点からは、第3比較例は推奨される起動法ではない。なぜなら、通気許可成立の後もガスタービン102の出力を20%負荷に保持しながらプレウォーミングが終了するのを15分間待つことになるからである。これは、プラント熱効率の悪いパーシャルロード(ガスタービン部分負荷運転)を、余計に15分長く強いられることを意味する。
【0104】
以上により、蒸気タービン103の通気許可条件の成立とプレウォーミング終了は、いずれが早くても遅くても最適な起動法とはならない。第1実施形態は、プラント起動早期化や商用機に求められる経済性の観点からみて、これらのタイミングを一致させることでクラッチ結合C/Cによる並行進行がもたらすメリットを最大限に享受する起動法であるといえる。
【0105】
(11)第1実施形態が適用可能なプラント
第1実施形態の発電プラント100aは、パラレルバイパスを有するクラッチ結合C/Cの一軸型コンバインド発電プラントであるが、本実施形態はその他方式のコンバインドサイクル発電プラントにも適用可能である。前述のとおり、プレウォーミングは、高圧タービン103aが停止しているときか、補助蒸気A3による摩擦熱が問題とならない低回転状態にあるときだけに許容される操作である。
【0106】
一方、多軸型コンバインドサイクル発電プラントは、互いに別の回転軸に設けられた複数台のガスタービンと、これらの回転軸と別の回転軸に設けられた1台の蒸気タービンとを備えている。このような構成から、これらのガスタービン起動後にも、蒸気タービンを停止中とすることができる。よって、本実施形態の起動処理は、多軸型コンバインドサイクル発電プラントにも適用することができる。
【0107】
また、互いに別の回転軸に設けられた1台のガスタービンと1台の蒸気タービンとを備える発電プラントも知られている。この発電プラントでも、ガスタービン起動後に蒸気タービンを停止中とすることができる。よって、本実施形態の起動処理は、この発電プラントにも適用することができる。
【0108】
また、本実施形態の起動処理は、リジッド結合C/Cに適用することも考えられる。例えば、プレウォーミングと並行的に排熱回収ボイラのサービスインのみを進行させる起動法が考えられる。そして、プレウォーミング終了とガスタービン起動開始のタイミングを一致させるように、排熱回収ボイラのサービスインを開始する時点を選定する。しかし、排熱回収ボイラのサービスインに要する時間は10分程度なので、この起動法を通じて得られるプラント起動早期化の利得は10分程度である。よって、10分程度であってもプラント起動早期化が望まれる場合には、本実施形態の起動処理をリジッド結合C/Cに適用することが望ましい。
【0109】
(12)第1実施形態とBOP設備
第1実施形態では、排熱回収ボイラ104のサービスインと、ガスタービン102の起動をそれぞれ、第一段シェル内面メタル温度が140℃および142℃に到達の時点で開始し、プレウォーミングとこれらの2工程とを並行的に進行させる。本実施形態ではさらに、その他の場合にこのような並行進行を適用してもよい。以下、このような並行進行の例を説明する。
【0110】
図1に示すガスタービン102や排熱回収ボイラ104は、発電プラント100aの代表的な構成要素である。しかしながら、実際のコンバインドサイクル発電プラントはさらに、BOP(Balance of Plant)設備と呼ばれる雑多な機器や設備を備えることが多い。そして、プラント制御装置101aは、ガスタービン102の起動前や起動後にBOP設備も起動(または操作)する必要がある。
【0111】
例えば、スタックダンパーは、煙突と排熱回収ボイラ104とを連通するために開操作される。また、発電機117の断路器は、発電機117が生成する電力を送電する送電ラインの準備のために閉路される。通常、これらのBOP設備は、ガスタービン102の起動や排熱回収ボイラ104のサービスインと連動させて起動される。例えば、親機に相当するガスタービン102が起動したことをプラント制御装置101aが判断して、子機のBOP設備を親機と連鎖(インターロック)するようにして起動する。
【0112】
代わりに、本実施形態では、第一段シェル内面メタル温度に応じてこれらのBOP設備を起動してもよい。ここではその一例として、EHC(Electric Hydraulic Control)制御油ポンプを取り挙げる。
【0113】
例えば、プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が138℃に到達したことを判断して、EHC制御油ポンプを起動する。この場合には、ガスタービン102の起動開始の20分前にEHC制御油ポンプが起動される(20分=〔142℃-138℃〕÷0.2℃/分)。この20分間に、EHC制御油ポンプは、制御油をタンク内で撹拌することで制御油の温度を適切な温度にまで昇温し、好適な粘度を確保しながらガスタービン102の起動を迎えることができる。制御油の温度や粘度をトリートメントするためには20分のポンプ運転で充分なので、20分以上運転しても同油ポンプのモータ動力は無駄であり、また機器寿命を損耗させるだけである。そこで、本実施形態の起動処理をEHC制御油ポンプの起動に適用すれば、メタル温度を指標にして未来の起動工程(ここではガスタービン102の起動がいつ開始されるのか)を予測できるので、EHC制御油の起動タイミングを最適化することが可能となる。
【0114】
(13)第1実施形態の効果と課題
以上のように、本実施形態では、高圧タービン103a等をプレウォーミングによってウォーミングしている間に、ガスタービン102等の起動を開始する。よって、本実施形態によれば、ガスタービン102と高圧タービン103aとを備える発電プラント100aのウォーミングと早期起動とを両立することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、第一段シェル内面メタル温度の昇温レートを想定する(例えば0.2℃/分)ことで、第一段シェル内面メタル温度に応じて発電プラント100aの諸設備を最適なタイミングで起動することが可能となる。
【0116】
第1実施形態では、この昇温レートの精度を高めることが望ましい。例えば、実際の昇温レートが想定していた0.2℃/分より速い場合には、第2比較例の如くプレウォーミング終了より通気許可成立が遅くなる。一方、実際の昇温レートが想定していた0.2℃/分より遅い場合には、第3比較例の如くプレウォーミング終了より蒸気タービンの通気許可条件成立が早くなる。この課題への対処は、例えば後述する第2実施形態により可能となる。
【0117】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。本実施形態の説明の中で、第4比較例についても説明する。
【0118】
(1)第2実施形態のプレウォーミング
第1実施形態と第1比較例のプレウォーミングは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になったときに終了する。一方、第2実施形態のプレウォーミングは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間だけ継続した時点で終了する。
【0119】
本実施形態で所定時間の待ち時間が経過した後にプレウォーミングを終了とするのは、次のような理由による。第一段シェル内面メタル温度は、温度センサTS1が計測する温度であるが、温度センサTS1が計測するのは、補助蒸気A3に接触するロータ103cの表面の温度であり、プレウォーミング中は比較的速やかに昇温する。一方で、補助蒸気A3に直接接触しないロータ103cの内部は表面からの熱伝達により緩慢に昇温するので、第一段シェル内面メタル温度(ロータ表面)が150℃に到達しても、いまだロータ内部は150℃未満の低温状態である。
【0120】
そして、上記の待ち時間は、ロータ内部までが150℃に到達するのを待つための時間である。この待ち時間は、プラント早期起動と背反の関係にあるが、ロータ内部まで充分にウォーミングして高圧タービン103aの起動に万全を期すという考え方が重視される場合の方が多い。よって、第1実施形態のように待ち時間なしでプレウォーミングを終了よりも、第2実施形態のように待ち時間を有してプレウォーミングを終了する方が多い。
【0121】
この待ち時間は、高圧タービン103aの大きさ(容量)や素材に応じて異なるが、一般的には1時間から3時間の間で選択されることが多い。説明の便宜上、第2実施形態では、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が1時間(60分)だけ継続した時点で、プレウォーミングを終了するものとする。
【0122】
(2)第2実施形態の起動時間
第2実施形態は、
図1の発電プラント100aに適用される。従って、プラント起動に要する時間は第1実施形態と同じであり、ガスタービン102の起動から蒸気タービン103の通気許可条件が成立するまで40分を要する起動例とする。
【0123】
ただし、第2実施形態はプレウォーミングに4時間を要する起動例である。その内訳はプレウォーミング開始から第一段シェル内面メタル温度が150℃に到達するまでに3時間を要し、そこから上述の待ち時間である1時間を待って、合計4時間となる。
【0124】
(3)第2実施形態の概要
第1実施形態から第2実施形態への変更点は、以下の通りである。
【0125】
第1実施形態のガスタービン102は、第一段シェル内面メタル温度が142℃以上になると起動される。一方、第2実施形態のガスタービン102は、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間(例えば20分)継続した時点で起動される。
【0126】
第2実施形態のプレウォーミングは、この40分後に終了する(60分-20分)。そのため、このタイミングでガスタービン102を起動すれば、プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気許可条件が成立(ガスタービン102の起動から40分後に成立)するタイミングは一致する。
【0127】
また、第1実施形態の排熱回収ボイラ104のサービスインは、第一段シェル内面メタル温度が140℃以上になると開始される。一方、第2実施形態の排熱回収ボイラ104のサービスインは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間(例えば10分)継続した時点で開始される。
【0128】
(4)第2実施形態の起動フローチャート
図3aと
図3bは、第2実施形態の発電プラント100aの動作を示すフローチャートである。このフローチャートを実現するのは、プラント制御装置101aの内部に収納されるソフトウェアである。以下の説明中に使用される具体的な数値は、容易な理解のために記載する一例である。
【0129】
図2aのステップS201、S202、およびS106はそれぞれ、
図3aのステップS301、S302、およびS303に変更されている。
図3aと
図3bは、
図2aと
図2bに対してこの3つステップが異なり、その他のステップは同じである。従って、以下ではステップS301、S302、S303を中心に説明する。
【0130】
復水器113の真空上昇が行われた後(ステップS102)、プレウォーミングが開始される。プレウォーミングでは、ウォーミング弁125を開弁して(ステップS103)、補助ボイラ124が供給する補助蒸気A3を、高圧タービン103aと再熱器112に送気する(ステップS104)。温度センサTS1は、ロータ103cの構成要素である第一段シェル内面メタルの温度を計測する(ステップS105)。
【0131】
プレウォーミング開始から3時間後に、第一段シェル内面メタル温度は150℃に到達する。本実施形態では、第一段シェル内面メタル温度が150℃に到達した後も補助蒸気A3が継続して高圧タービン103aに送気されるので、同メタル温度は0.2℃/分程の昇温レートで昇温してゆき、150℃の到達から1時間を経過した時点では162℃近傍になる。また、補助蒸気A3に直接接触しないロータ103cの内部も表面からの熱伝達により昇温して、次第にロータ103cは内部も含めてより均一な温度になっていく。
【0132】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、プレウォーミング終了を待たずに排熱回収ボイラ104のサービスインを開始する。ただし、本実施形態のガスタービン102の起動は、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になってから20分経過したときに開始する予定となっている。これに排熱回収ボイラ104のサービスインに要する時間である10分を勘案すれば、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になってから10分経過したときに排熱回収ボイラ104のサービスインを開始すればよい。
【0133】
プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上となり、且つ、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になってから10分経過したとき(ステップS301 YES)に、排熱回収ボイラ104のサービスイン(ステップS108)を行う。このサービスインでは、排熱回収ボイラ104に付属する給水ポンプを起動し、ドラム110の水位を所定の値に確立させる。このようにして、排熱回収ボイラ104がガスタービン排ガスA1を受け入れる準備が行われる。排熱回収ボイラ104のサービスインは、10分を要する起動工程である。
【0134】
この10分が経過すると、排熱回収ボイラ104のサービスインは終了する。プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になってから20分が経過したことを確認して(ステップS302 YES)、念のためANDゲート処理(ステップS203)により排熱回収ボイラ104のサービスインも終了していることも確認して、ガスタービン102を起動する(ステップS109)。
【0135】
ステップS109でガスタービン102が起動した後、40分を経過した時点で蒸気タービン103の通気許可条件が成立する(ステップS118 YES)。本実施形態の通気条件の主要な構成要素は、主蒸気A2の圧力条件、流量条件、および温度条件であり、これら全てが所定の値に到達したときに通気条件は成立する。
【0136】
これと同時に、プラント制御装置101aは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になってから60分経過したことを確認して(ステップS303 YES)、ウォーミング弁125を閉弁して(ステップS107)、プレウォーミングを終了する。よって、本実施形態でも、プレウォーミング終了のタイミングと蒸気タービン103の通気条件が成立するタイミングとが一致し、以下の蒸気タービン103の通気(ステップS125)がこの時点で迅速に開始される。
【0137】
プラント制御装置101aは、ANDゲート処理(ステップS207)により、蒸気タービン103の通気許可条件が成立したこと(ステップS118 YES)と、ウォーミング弁125が全閉したこと(ステップS206 YES)の両方が成立したことを判断して、蒸気タービン103の通気を開始する(ステップS125)。これ以後の起動工程は第1実施形態と同一であり、説明は省略する。
【0138】
(5)第2実施形態の効果
図6は、第2実施形態と第4比較例とを比較するためのチャートであり、第2実施形態の効果を直截に可視化するための図である。
【0139】
第4比較例は、第1比較例と同じリジッド結合C/Cの起動処理に関するが、第1比較例のプレウォーミング時間が3時間であるのに対し、第4比較例のプレウォーミング時間は上記の待ち時間の1時間を含めて4時間である。
図5と同様に、第2実施形態と第4比較例のプレウォーミングの開始時刻および終了時刻は同じである。それ故に、蒸気タービン103の通気開始がプレウォーミング終了に対してどれだけ遅れるかという視点で、第2実施形態と第4比較例とを比較することが可能となる。
【0140】
図6によれば、第4比較例ではプレウォーミング終了の50分後に蒸気タービン103の通気が開始されるのに対し、第2実施形態ではプレウォーミング終了と同時に蒸気タービン103の通気が開始される。すなわち、第2実施形態は、第4比較例に対して50分のプラント起動早期化を達成している。
【0141】
また、第4比較例に対する50分のプラント起動早期化とは、第4比較例において240分(4時間)を要していたプレウォーミングを、190分に短縮した場合の効果に等しい。すなわち、本実施形態によれば、事実上プレウォーミングに関連する時間を79%に短縮することができる(79〔%〕=190分÷240分)。
【0142】
短縮時間としては、第1実施形態の72%より目減りしている。しかし、その見返りとして、第1実施形態が有していた第一段シェル内面メタル温度の想定昇温レート(例えば0.2℃/分)の精度に依存する誤差を低減することができ、プレウォーミング終了のタイミングと蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングとを一致させることがより容易になる。
【0143】
このことが成立する要件として、待ち時間(1時間)の長さとプラント起動時間の長さとの関係がある。本実施形態では、ガスタービンの起動から蒸気タービン103の通気許可条件が成立するまでの時間が40分であり、待ち時間の1時間よりも短いため、上記のことが成立可能となる。幸いなことに、実際のプレウォーミングの待ち時間は1時間から3時間の間で選択されることが一般的であるから、通常は待ち時間の方が余裕を持っての長時間になる。この点で、第2実施形態の実用性は担保されていると言ってよい。
【0144】
ただし、例外的にBOP設備等で、前述のEHC制御油ポンプ等より遥かな初期段階の時刻に起動を行う設備に対しては、待ち時間が不足して第2実施形態では対応できない事例もある。このようなBOP設備には第1実施形態を適用して例えば第一段シェル内面メタル温度が130℃に到達したら起動し、一方、その後のガスタービン102と排熱回収ボイラ103のサービスインには第2実施形態を適用してもよい。
【0145】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。本実施形態の説明の中で、第5比較例についても説明する。
【0146】
(1)第3実施形態のプラント構成
図4は、第3実施形態の発電プラント100bの構成を示す模式図である。
図4の発電プラント100bは、一軸型C/C発電プラントである。
【0147】
図4の発電プラント100bは、発電プラント100bの動作を制御するプラント制御装置101bを備え、さらには、
図1に示す構成要素に加えて、中圧タービンバイパス調節弁132と、逆止弁133とを備えている。
【0148】
プラント制御装置101bは、上述のプラント制御装置101aと同様の機能を有しているが、プラント制御装置101aとは異なる機能も有している。例えば、プラント制御装置101bは、中圧タービンバイパス調節弁132や逆止弁133の開閉を制御することが可能である。プラント制御装置101bのその他の機能については、後述する。
【0149】
排熱回収ボイラ104により生成された過熱蒸気は、主蒸気A2として蒸気配管に排出される。蒸気配管は、主配管とバイパス配管とに分岐している。主配管は高圧タービン103aに接続されており、バイパス配管はここでは低温再熱管121に接続されている。MCV弁105は、主配管に設けられている。高圧タービンバイパス調節弁119は、バイパス配管と低温再熱管121との接続部に設けられている。
【0150】
MCV弁105を開弁すると、主配管からの主蒸気A2が高圧タービン103aに供給される。一方、高圧タービンバイパス調節弁119を開弁すると、バイパス配管からの主蒸気A2が高圧タービン103aをバイパスして低温再熱管121に送られる。バイパス配管からの主蒸気A2は、低温再熱管121を介して再熱器112に供給される。
【0151】
逆止弁133は、
図4に示すように低温再熱管121に設けられている。逆止弁133は、開弁状態において、高圧タービン103aから再熱器112への主蒸気A2(排気蒸気)の流れは許容するが、再熱器112や高圧タービンバイパス調節弁119から高圧タービン103aへの主蒸気A2の流れは遮断する。一方、逆止弁133は、閉弁状態においては、いずれの主蒸気A2の流れも遮断する。
【0152】
上述のようにMCV弁105を開弁する場合には、逆止弁133も開弁される。これにより、高圧タービン103aからの主蒸気A2(排気蒸気)は、逆止弁133を通過して再熱器112に供給される。一方、上述のように高圧タービンバイパス調節弁119を開弁する場合には、逆止弁133が開弁していても閉弁していても、バイパス配管からの主蒸気A2は、逆止弁133で遮断され高圧タービン103aに供給されない。この場合、バイパス配管からの主蒸気A2は、再熱器112に供給される。
【0153】
再熱器112の第1端は低温再熱管121に接続され、再熱器112の第2端は高温再熱管122に接続されている。本実施形態の再熱器112は、高圧タービン103aまたは高圧タービンバイパス調節弁119からの主蒸気A2を第1端から取り込み、この主蒸気A2を第2端から排出する。
【0154】
例えば、再熱器112は、高圧タービン103aからの主蒸気A2(排気蒸気)を第1端から取り込み、主蒸気A2をガスタービン排ガスA1により加熱して再熱蒸気A4を生成する。すなわち、主蒸気A2が加熱されて再熱蒸気A4となる。再熱器112は、この再熱蒸気A4を第2端から高温再熱管122へと排出する。
【0155】
高温再熱管122は、第1配管と第2配管とに分岐している。第1配管はICV弁118に接続され、第2配管は中圧タービンバイパス調節弁120に接続されている。ICV弁118を開弁すると、第1配管からの再熱蒸気A4が中圧/低圧タービン103bに供給される。一方、中圧タービンバイパス調節弁120を開弁すると、第2配管からの再熱蒸気A4が中圧/低圧タービン103bをバイパスして復水器113に送られる。
【0156】
第3実施形態は、
図4に示すように、カスケードバイパス系統のコンバインドサイクル発電プラントを対象としている。
図9では、高圧タービンバイパス調節弁119が、再熱器112の上流部に該当する低温再熱管121に接続されており、中圧タービンバイパス調節弁132が、再熱器112の下流部に該当する高温再熱管122に接続されている。このカスケードバイパス系統の発電プラント100bでは、逆止弁133の設置が必要とされる。
【0157】
(2)第5比較例
図7は、第3実施形態と第5比較例とを比較するためのチャートであり、第3実施形態の効果を直截に可視化するための図である。
【0158】
第5比較例は、カスケードバイパス系統のクラッチ結合C/Cのプラント起動法に関する。
図5や
図6では、クラッチ結合C/C(第1および第2実施形態)と、リジッド結合C/C(第1および第4比較例)とを比較していたが、
図7では、クラッチ結合C/C同士を比較している。第5比較例のプラント構成は、
図4に示す通りであり、第3実施形態のプラント構成と同じである。
【0159】
以下、
図7における第5比較例のプラント起動法を簡単に説明する。
図7には、第1プレウォーミングと第2プレウォーミング(符号S1とS5を参照)に加えて、これらと密接に関連する逆止弁133の状態も図示されている。本比較例や第3および第4実施形態にて、第1プレウォーミングは、プラント起動処理において第1回目に開始されるプレウォーミングであり、一方、第2プレウォーミングは、プラント起動処理において第2回目に開始されるプレウォーミングであり、第1プレウォーミングよりも後に開始される。
【0160】
第1プレウォーミングでは、ウォーミング弁125を開弁して補助蒸気A3を高圧タービン103aのみに送気し、高圧タービン103aをウォーミングする。このとき、逆止弁133は強制閉止(無励磁)するので、再熱器112には補助蒸気A3が送気されない。第1プレウォーミング開始に伴い第一段シェル内面メタル温度は昇温し、第1プレウォーミングの開始から3時間後に第一段シェル内面メタル温度は150℃に到達する。この時点でウォーミング弁125を閉弁して、第1プレウォーミングは終了する。
【0161】
その後、排熱回収ボイラ104のサービスインに10分を要し、これが終了するとガスタービン102の起動が開始される。ガスタービン102の起動から10分後に、ガスタービン102は着火する。ガスタービン着火の時点で逆止弁133を励磁して強制閉止を解除し、且つ、ウォーミング弁125を再び開弁する。このようにして、ガスタービン102の起動工程と並行操作で第2プレウォーミングが開始される。クラッチ結合C/Cである故にこれが可能となる。
【0162】
第2プレウォーミングでは、高圧タービン103aに加えて再熱器112にも補助蒸気A3が送気されて、再熱器112のウォーミングと不凝縮性ガスのパージを開始する。このとき再熱器112は、ガスタービン排ガスA1の熱で外表面からもウォーミングされるので、効果的なウォーミングが可能となる。ガスタービン102の着火から30分後に高圧タービンバイパス調節弁119は10%に開弁し、この時点でウォーミング弁125を閉弁して、第2プレウォーミングは終了する。すなわち、第2プレウォーミングは30分間行われる。
【0163】
そして、ガスタービン102の起動開始から50分後に、蒸気タービン103の通気許可条件(具体的には、主蒸気A2の圧力、流量、および温度の全てが所定の値に到達する条件)が成立し、蒸気タービン103は通気を開始する。
【0164】
(3)第3実施形態の概要
第5比較例では、クラッチ結合C/Cの特性を利用して、ガスタービン102の起動と第2プレウォーミングの並行操作が採用されている。これに対し、第3実施形態では、プラント起動の早期化を目的に、ガスタービン102の起動と第1プレウォーミングと第2プレウォーミングとの並行操作を行う。本実施形態の第1および第2プレウォーミングはそれぞれ、第1および第2ウォーミングの例である。
【0165】
しかしこの場合、第2プレウォーミングは、ガスタービン102の着火時(ガスタービン102の起動の10分後)に開始され、高圧タービンバイパス調節弁119の10%開弁時(ガスタービン102の起動の40分後)に終了する。このことは、第2プレウォーミングは、ガスタービン102の起動工程に拘束されて、任意のタイミングで開始および終了できる自由度がないことを意味する。例えば、第一段シェル内面メタル温度に応じて第2プレウォーミングを開始する等のプラント起動法は許容されない。従って、本実施形態では、ガスタービン102の起動、第1プレウォーミング、および第2プレウォーミングが並行操作の対象であるが、実質的には第1実施形態と同様にガスタービン102の起動と第1プレウォーミングが並行操作が対象となる。
【0166】
そして、本実施形態では、第1プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングとを一致させるようにすれば、最適なプラント起動を実現できる。ただし、第1プレウォーミングと第2プレウォーミングは30分間並行的に進行するので、この30分間の取扱いは慎重を要する。
【0167】
例えば、第1プレウォーミングと並行的に進行する起動工程は、排熱回収ボイラ104のサービスインや、低圧クーリングの無いガスタービン102の起動である。これらの起動工程は、それ自体で補助蒸気A3を消費しないので、第1プレウォーミングとの並行操作が可能となる。しかし第2プレウォーミングは補助蒸気A3を消費するので、この面で第1プレウォーミングとは競合関係にあり、以下の起動時間の整理が必要となる。
【0168】
(4)第3実施形態の起動時間
第3実施形態の詳細説明に入る前に、(i)蒸気タービン103の通気条件成立に要する時間と、(ii)第一段シェル内面メタル温度の昇温レートと、(iii)第1プレウォーミングに要する時間とを次のように整理する。
【0169】
先ず(i)に関し、第5比較例と同様に、ガスタービン102の起動から蒸気タービン103の通気許可条件(具体的には、主蒸気A2の圧力、流量、および温度の全てが所定の値に到達する条件)が成立するまでに、50分を要する起動例とする。
【0170】
次に(ii)に関し、第1プレウォーミングにおける第一段シェル内面メタル温度の昇温レートを、説明の便宜上、0.25℃/分と想定する。ただし、第1プレウォーミングと第2プレウォーミングとが並行的に進行する30分間の昇温レートは、以下の理由により0.2℃/分とする。第1プレウォーミングは高圧タービン103aのみに補助蒸気A3を送気してウォーミングするので、再熱器112に補助蒸気A3の熱量が収奪されることなく第一段シェル内面メタル温度は第1実施形態よりも速く昇温する。しかし、第1および第2プレウォーミングが並行的に進行する30分間は、補助蒸気A3の熱量は高圧タービン103aと再熱器112の双方のウォーミングに使用されるので、第一段シェル内面メタル温度の昇温レートは当該30分間以外の期間よりも遅くなる。そのため、当該30分間の昇温レートは、第1実施形態と同様に0.2℃/分と想定する。
【0171】
次に(iii)に関し、第5比較例では第1プレウォーミングに3時間を要する。一方、第3実施形態では第1プレウォーミングにこれより6分長い3時間6分を要する。この理由は、上述の(ii)で述べた第1および第2プレウォーミングが並行的に進行する30分間に、第一段シェル内面メタル温度の昇温が遅れるためである。そして、この6分の遅れは次のように算出される。当該30分間で生じる第一段シェル内面メタル温度の昇温の遅れは、1.5℃である(1.5℃=30分×〔0.25℃/分-0.2℃/分〕)。そして、第2プレウォーミングが終了した後、昇温レートは再び0.25℃/分に戻る。この遅れ分の1.5℃を0.25℃/分の昇温レートで温度上昇させるためには、6分を要することとなる(6分=1.5℃÷0.25℃/分)。
【0172】
以上のように起動時間を整理した上で、第1プレウォーミングとガスタービン102の起動とを並行的に進行させて、第1プレウォーミング終了のタイミングと蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングとを一致させるようにする。そのために、本実施形態では、第1プレウォーミング中において第一段シェル内面メタル温度が139℃に上昇したときにガスタービン102を起動する(139℃=150℃-〔50分-30分〕×0.25℃/分-30分×0.2℃/分)。これにより、第一段シェル内面メタル温度が150℃に昇温して第1プレウォーミングが終了する時点と、蒸気タービン103の通気許可条件が成立する時点とを一致させることが可能となる。そして、これに間に合うように、第一段シェル内面メタル温度が136.5℃になったときに、排熱回収ボイラ104のサービスインを開始する(136.5℃=139℃-10分×0.25℃/分)。
【0173】
【0174】
第1プレウォーミングでは、ウォーミング弁125を開弁して補助蒸気A3を高圧タービン103aのみに送気して、高圧タービン103aをウォーミングする。このとき逆止弁133は強制閉止(無励磁)するので、再熱器112には補助蒸気A3が送気されない。
【0175】
第1プレウォーミングが開始すると、第一段シェル内面メタル温度は昇温する(このとき昇温レートは0.25℃/分)。同メタル温度が136.5℃に到達したときに、排熱回収ボイラ104のサービスインを開始する。その後、10分が経過すると排熱回収ボイラ104のサービスインは終了する。これと同時に第一段シェル内面メタル温度は139℃に到達する。第一段シェル内面メタル温度が139℃になったことを確認して、ガスタービン102の起動を開始する。
【0176】
ガスタービン102の起動から10分後にガスタービン102は着火する。ガスタービン102の着火の時点で、逆止弁133を励磁して強制閉止を解除する。このとき、ウォーミング弁125は既に開弁しているので、補助蒸気A3はそれまでの高圧タービン103aに加えて、再熱器112にも送気されて第2プレウォーミングが開始される。これにより、第1プレウォーミングと第2プレウォーミングが並行的に進行する(このとき昇温レートは0.2℃/分と遅くなる)。第2プレウォーミングにより、再熱器112のウォーミングと不凝縮性ガスのパージが開始される。
【0177】
そして、ガスタービン102の起動から40分後(ガスタービン102の着火から30分後)に、高圧タービンバイパス調節弁119は10%に開弁し、この時点で第2プレウォーミングは終了する。このとき、本実施形態では逆止弁133を強制閉止(無励磁)にして、再熱器112への補助蒸気A3の送気を遮断し、第2プレウォーミングを終了させる。上述のように、第5比較例では、ウォーミング弁125を閉弁することで第2プレウォーミングを終了させる。一方、本実施形態では、第2プレウォーミングの終了後も高圧タービン103aのウォーミングを継続させるためにウォーミング弁125の開弁保持が必要となり、その替わり逆止弁133を強制閉止する。
【0178】
第2プレウォーミングを終了後も、第一段シェル内面メタル温度は昇温を継続する(このとき昇温レートは0.25℃/分に戻る)。そして、ガスタービン102の起動から50分後に、第一段シェル内面メタル温度は150℃に到達し、ウォーミング弁125を閉弁して第1プレウォーミングは終了する。これと同時に蒸気タービンの通気許可条件(具体的には、主蒸気A2の圧力、流量、および温度の全てが所定の値に到達する条件)が成立し、蒸気タービン103は通気を開始する。なお、通気後に高圧タービン103aから排出される排気蒸気を再熱器112に送気するために、逆止弁133は通気開始直前に再度励磁する。
【0179】
(5)第3実施形態の効果
図7の第3実施形態と第5比較例においては、第1プレウォーミングの開始は同一時刻である(ただしその終了時刻は異なる)。そこで、第3実施形態と第5比較例とを比較する際には、第1プレウォーミングの開始時刻を基準に比較を行う。
【0180】
第5比較例では、第1プレウォーミング開始から240分(4時間)後に蒸気タービン103の通気が開始される。これに対し、第3実施形態では、第1プレウォーミング開始から186分(3時間6分)後に蒸気タービン103の通気が開始される。すなわち、第3実施形態は、第5比較例に対して54分のプラント起動早期化を達成している。
【0181】
また、第5比較例に対する54分のプラント起動早期化とは、第5比較例において180分(3時間)を要していた第1プレウォーミングを、126分に短縮した場合の効果に等しい。すなわち、本実施形態によれば、事実上第1プレウォーミングに関連する時間を70%に短縮することができる(70〔%〕=126分÷180分)。
【0182】
(6)第3実施形態と並行ウォーミング
第3実施形態では、第1プレウォーミングと第2プレウォーミングとの並行操作を行うが、このとき高圧タービン103aと再熱器112の双方を並行的にウォーミングする並行ウォーミングが行われる。この並行ウォーミングについて補足する。
【0183】
従来のカスケードバイパスを用いたリジッド結合C/Cのプラント起動では、プレウォーミング前に逆止弁を無励磁にして強制閉止にして、再熱器への補助蒸気の流入を遮断することで並行ウォーミングは回避されていた。その目的は、高圧タービンのプレウォーミングを効率的かつ短時間に終了させるためである。しかし、第3実施形態は、このように敬遠されてきた並行ウォーミングを採用して、プラント起動の早期化を図る起動法である。
【0184】
第3実施形態の効果は、第5比較例に対して54分のプラント起動早期化を実現できることであると既に述べた。この54分の利得は、並行ウォーミングのために第1プレウォーミングに6分を余計に要するが故に、60分の利得から目減りした利得である。よって、この並行ウォーミングが無ければ、期待される効果としては60分のプラント起動早期化を望める。しかし、第3実施形態は、利得の目減り分が6分という短い時間で納まるという点で好適であるといえる。このことに関連し、本実施形態は、並行ウォーミングのデメリットを排除または緩和する次の特性を有する。
【0185】
第1に、第1プレウォーミングに要する3時間6分のうち、並行ウォーミング(第2プレウォーミング)が行われるのは30分の短時間にすぎず、この短時間でも再熱器112の充分なウォーミングが可能である。そして、なぜこの短時間で再熱器112の充分なウォーミングが可能かという理由は、ガスタービン排ガスA1の熱源も利用して再熱器112を効率的にウォーミングするからである。さらに、この排ガス熱源によるウォーミングが可能となるのは、第3実施形態もクラッチ結合を採用しているからである。
【0186】
第2に、並行ウォーミング(第2プレウォーミング)は、第1プレウォーミングが140分間も進行した後に開始され、そのときの第一段シェル内面メタル温度は、既に140℃前後にまでウォーミングされている。もはやこの時点で高圧タービン103aに多量のドレン水が発生する状況にはない。第2プレウォーミングを行うと、第一段シェル内面メタル温度の昇温レートが0.25℃/分から0.2℃/分に遅くなるが、その減少量は0.05℃/分と軽微である。この軽微な減少が30分という短時間しか継続されないので、第3実施形態の第1プレウォーミングの終了にはわずか6分の遅延を生じるのみである。
【0187】
一方、並行ウォーミングを早めに開始し、第一段シェル内面メタル温度がいまだ低い状態でガスタービン排ガスA1の熱源も無い状態で並行ウォーミングを実施した場合を想定する。この場合、送気された補助蒸気A3は低温のメタルに触れて凝縮し、多量のドレン水を発生させてしまう。その結果、第一段シェル内面メタル温度の昇温は大きく遅延して、第1プレウォーミング終了は例えば1時間も2時間もの遅延を生じてしまう。
【0188】
以上のように、本実施形態によれば、第1および第2プレウォーミングを好適に並行実施することが可能となる。
【0189】
(第4実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。本実施形態の説明の中で、第4比較例についても説明する。
【0190】
第3実施形態の第1プレウォーミングは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になったときに終了する。一方、第4実施形態の第1プレウォーミングは、第2実施形態のプレウォーミングと同様に、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間だけ継続した時点で終了する。第4実施形態の起動法は、
図4に示す発電プラント100bにおいて実行可能である。
【0191】
第2実施形態では、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が1時間(60分)だけ継続した時点で、プレウォーミングを終了するケースを想定した。一方、第4実施形態では、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が90分だけ継続した時点で、第1プレウォーミングを終了するケースを想定する。
【0192】
第3実施形態から第4実施形態への変更点は、以下の通りである。
【0193】
第3実施形態のガスタービン102は、第一段シェル内面メタル温度が139℃以上になると起動される。一方、第4実施形態のガスタービン102は、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間(例えば40分)継続した時点で起動される。
【0194】
第4実施形態の第1プレウォーミングは、この50分後に終了する(90分-40分)。そのため、このタイミングでガスタービン102を起動すれば、第1プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングは一致する。
【0195】
また、第3実施形態の排熱回収ボイラ104のサービスインは、第一段シェル内面メタル温度が136.5℃以上になると開始される。一方、第4実施形態の排熱回収ボイラ104のサービスインは、第一段シェル内面メタル温度が150℃以上になり、且つ、同メタル温度が150℃以上の状態が所定時間(例えば30分)継続した時点で開始される。
【0196】
このようにすれば、第4実施形態にて、第1プレウォーミング終了のタイミングと、蒸気タービン103の通気許可条件が成立するタイミングとが一致するプラント起動処理を実現することができる。
【0197】
以上のように、第1から第4実施形態では、クラッチ131が離脱しているときに、ガスタービン102と発電機117の先行起動を許容する。そのとき、蒸気タービン103は停止または極低回転の状態なので、ガスタービン102の起動中のプレウォーミングや第1プレウォーミングが可能となる。第1から第4実施形態では、プレウォーミングや第1プレウォーミングの終了前に第一段シェル内面メタル温度に応じてガスタービン102の起動を開始するので、プレウォーミングや第1プレウォーミングの終了と同時に蒸気タービン103に通気できるようなプラント起動早期化が可能となる。第1から第4実施形態によれば例えば、既存のプレウォーミング方法を採用しつつ、プレウォーミング時間を短縮した場合と同等のプラント起動早期化を実現することが可能となる。
【0198】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、およびプラントは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、およびプラントの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0199】
100、100a、100b:コンバインドサイクル発電プラント、
101、101a、101b:プラント制御装置、
102:ガスタービン、103:蒸気タービン、103a:高圧タービン、
103b:中圧/低圧タービン、103c:高圧ロータ、104:排熱回収ボイラ、
105:MCV弁(高圧加減弁)、106:燃料調節弁、107:圧縮機、
108:燃焼器、109:蒸発器、110:ドラム、111:過熱器、
112:再熱器、113:復水器、114:循環水ポンプ、115:海水、
116:燃料、117:発電機、118:ICV弁(インターセプト弁)、
119:高圧タービンバイパス調節弁、120:LPCV弁(低圧加減弁)、
121:低温再熱管、122:高温再熱管、123:送気配管、
124:補助ボイラ、125:ウォーミング弁、126:高圧タービン排気管、
127:検出用歯車、128:再熱ドレン弁、129:再熱ドレン弁、
130:ケーシングドレン弁、131:クラッチ、
132:中圧タービンバイパス調節弁、133:逆止弁、
A1:ガスタービン排ガス、A2:主蒸気、A3:補助蒸気、A4:再熱蒸気、
TS1:第1段内面メタル温度センサ、SP1:ST回転数検出器、
GS1:ギャップセンサ(クラッチ勘合検出器)、FD1:火炎検出器