(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220518BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/01 401
B41J2/165 101
B41J2/165 303
B41J2/165 505
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2018166711
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051507(JP,A)
【文献】特開2012-245462(JP,A)
【文献】特開2017-213707(JP,A)
【文献】特開2009-137210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記載置台より上方に配置されたインクヘッドと、
前記載置台より上方かつ前記インクヘッドの側方に配置され、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射する光照射装置と、
前記インクヘッドおよび前記光照射装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記記録媒体と前記ノズル面との上下方向の距離であるヘッドギャップ
と前記記録媒体の厚みとに基づいて、前記ノズル面に反射された光の第1積算光量を推定する第1推定部と、
前記第1積算光量が所定の閾値を超えたか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、前記ノズルを洗浄するクリーニング動作を実行するクリーニング部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記載置台より上方に配置されたインクヘッドと、
前記載置台より上方かつ前記インクヘッドの側方に配置され、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射する光照射装置と、
前記インクヘッドおよび前記光照射装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
少なくとも前記記録媒体と前記ノズル面との上下方向の距離であるヘッドギャップに基づいて、前記ノズル面に反射された光の第1積算光量を推定する第1推定部と、
前記第1積算光量が所定の閾値を超えたか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、前記ノズルを洗浄するクリーニング動作を実行するクリーニング部と、
前記クリーニング動作が行われた後から現在までの間に前記ノズル面に反射された光の総光量を記憶する記憶部と、
印刷指示信号および印刷データを受信する受信部と、
少なくとも前記ヘッドギャップに基づいて、前記印刷データに基づいて印刷が行われるときに前記ノズル面に反射される光の第2積算光量を推定する第2推定部と、
前記総光量と前記第2積算光量との合計積算光量が前記所定の閾値を超えるか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記合計積算光量が前記所定の閾値を超えると判定されたときに、前記クリーニング動作を実行する必要があることを通知する通知部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記クリーニング部は、前記第1判定部によって前記第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させることによって前記クリーニング動作を実行する、請求項1
または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ノズル面を覆うように前記インクヘッドに着脱可能に取り付けられ、前記インクヘッドに取り付けられたときに前記ノズル面との間に密閉空間が形成されるキャップと、
前記密閉空間内の流体を吸引する吸引装置と、を備え、
前記制御装置は、前記吸引装置を制御し、
前記クリーニング部は、前記第1判定部によって前記第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、前記吸引装置を用いて前記密閉空間内の流体を吸引することによって前記クリーニング動作を実行する、請求項1
から3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ヘッドギャップと、前記記録媒体の厚みと、前記ノズル面に反射される単位時間当たりの光量との関係を規定したマップを記憶する記憶部と、
印刷時間を計数する計数部と、を備え、
前記第1推定部は、前記ヘッドギャップ、前記マップおよび前記印刷時間に基づいて、前記第1積算光量を推定する、請求項1
、3または4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、印刷時間を計数する計数部を備え、
前記記憶部は、前記ヘッドギャップと、前記記録媒体の厚みと、前記ノズル面に反射される単位時間当たりの光量との関係を規定したマップを記憶し、
前記第1推定部は、前記ヘッドギャップ、前記マップおよび前記印刷時間に基づいて、前記第1積算光量を推定し、
前記第2推定部は、前記ヘッドギャップ、前記マップおよび受信された前記印刷データに基づいて、前記第2積算光量を推定する、請求項
2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記印刷時間は、前記光照射装置から光が照射されている時間である、請求項
5または6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記マップは、前記記録媒体に関する情報である記録媒体情報に関連付けられており、
前記制御装置は、前記記録媒体情報を設定する第1設定部を備えている、請求項
5から7のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記記録媒体情報には、少なくとも前記記録媒体を形成する材料に関する情報が含まれる、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記マップは、前記載置台に載置され、前記記録媒体を保持する治具に関する情報である治具情報に関連付けられており、
前記制御装置は、前記治具情報を設定する第2設定部を備えている、請求項
5から9のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記治具情報には、少なくとも前記治具と前記ノズル面との上下方向の距離である治具ギャップに関する情報が含まれる、請求項10に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記ノズル面をワイピングするワイパーをさらに備え、
前記クリーニング部は、前記クリーニング動作を実行した後に前記ワイパーによって前記ノズル面をワイピングするワイピング動作を実行する、請求項1から11のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを吐出する複数のノズルとノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドを備え、インクジェット方式により記録媒体上に所定の印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。かかるインクジェットプリンタは、インクヘッドに着脱可能に設けられ、印刷を行わないときにノズル面を覆うキャップを有している。インクヘッドにキャップが取り付けられることによって、ノズル面とキャップとの間に密閉空間が形成される。密閉空間が形成された状態で、キャップに接続された吸引装置(例えば吸引ポンプ)を駆動させることによって、ノズルから粘性が高くなったインクが強制的に吸引される。即ち、インクジェットプリンタでは、ノズルからインクを強制的に排出させるクリーニング動作が一定時間印刷する毎に定期的に行われる。これにより、ノズルの目詰まりを抑制することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャリッジに配置された係合体がスライダに取り付けられた係合部に当接することによって、キャップがキャリッジに配置されたインクヘッドに接近し、インクヘッドを封止する構成を備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-141691号公報
【文献】特開2004-174900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットプリンタにおいて用いられるインクとして、光硬化性を有するインク(以下光硬化性インクという)が知られている。光硬化性インクを使用するインクジェットプリンタは、インクヘッドのノズルから記録媒体に吐出された光硬化性インクに光を照射する光照射装置を備えている。光を照射された光硬化性インクは、記録媒体上で素早く硬化し、これにより記録媒体に所望の画像が印刷される。
【0006】
ここで、光照射装置から照射された光は記録媒体等において反射して、ノズル面に到達することがある。このため、反射された光の量が所定の量を超えるとノズル面やノズルにおいて光硬化性インクが硬化してしまい、ノズルに目詰まりが発生する虞がある。かかる問題に対応すべく、クリーニング動作の間隔を短くした場合ノズルの目詰まりは抑制されるが、クリーニング動作に伴うインクの消費量が多くなると共にクリーニング動作の合計時間が長くなってしまう(即ち印刷待機時間が長くなる)。そこで、クリーニング動作に伴うインクの消費量を低減しつつ、ノズルの目詰まりを抑制することが望まれている。なお、特許文献2には、一定時間間隔で紫外線を測定する紫外線測定センサを備えたインクジェットプリンタにおいて、紫外線の積算量が一定の閾値を超える場合にメンテナンス作業を行う技術が開示されている。しかし、紫外線測定センサは比較的高価であるし、紫外線測定センサに不具合が生じたときにノズルの目詰まりを抑制することができなくなってしまう。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニング動作を適切なタイミングで行うことができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記載置台より上方に配置されたインクヘッドと、前記載置台より上方かつ前記インクヘッドの側方に配置され、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射する光照射装置と、前記インクヘッドおよび前記光照射装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、少なくとも前記記録媒体と前記ノズル面との上下方向の距離であるヘッドギャップに基づいて、前記ノズル面に反射された光の第1積算光量を推定する第1推定部と、前記第1積算光量が所定の閾値を超えたか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、前記ノズルを洗浄するクリーニング動作を実行するクリーニング部と、を備えている。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタによると、第1推定部は、少なくともヘッドギャップに基づいて、ノズル面に反射された光の第1積算光量を推定する。そして、クリーニング部は、第1判定部によって第1積算光量が前記所定の閾値を超えたと判定されたときに、ノズルを洗浄するクリーニング動作を実行する。本発明者は、光照射装置から照射された光が記録媒体や載置台において反射されるとき、ノズル面に反射された光量の大小はヘッドギャップの影響によるものが大きいことに着目した。そして、ヘッドギャップに基づいて、第1積算光量を推定しかつ閾値を適宜設定することによって、クリーニング動作を実行するタイミングを適切にすることができることを見出した。このように、本発明のインクジェットプリンタによると、クリーニング動作を適切なタイミングで実行することができるため、ノズルの目詰まりを抑制しつつ過剰なクリーニング動作による光硬化性インクの消費量を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーニング動作を適切なタイミングで行うことができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態に係るフロントカバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
【
図3】一実施形態に係るキャリッジの記録媒体と対向する側の面の構成を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係るキャッピング装置とその周辺の構成を示す正面図である。
【
図5】一実施形態に係るプリンタのブロック図である。
【
図6】一実施形態に係るインクヘッドとその周辺の構成を示す正面図である。
【
図8】他の一実施形態に係るインクヘッドとその周辺の構成を示す正面図である。
【
図9】一実施形態に係るプリンタのクリーニング動作のタイミングを最適化して画像を印刷する手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、記録媒体5(
図2参照)に印刷を行う。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
本実施形態において用いられる記録媒体5は、例えば、記録紙や転写紙などの平面シートであってもよいし、携帯電話ケースなどの各種ケース、電子タバコなどの小型電子機器、キーホルダやフォトフレームやペンなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。記録媒体5を形成する材料は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材などであってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。プリンタ10は、ケース15と、フロントカバー23と、操作パネル25とを備えている。ケース15の前部には、開口28(
図2参照)が形成されている。フロントカバー23は、ケース15の開口28を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー23は、後端を軸に回転可能なように、ケース15に支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、ケース15の内部空間と外部空間とが連通される。内部空間は、インクヘッド30(
図2参照)によって印刷が行われる空間である。このように、印刷が行われる空間がケース15およびフロントカバー23によって囲まれていることによって、印刷中、外部空間の塵および埃がケース15の内部空間に入り込み難い。
【0016】
フロントカバー23の前部および上部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、紫外線が内部空間に到達しないように処理が施されている。ユーザは、窓23Aからケース15の内部を視認することが可能である。
【0017】
操作パネル25は、ケース15に設けられている。操作パネル25は、ケース15の上面右側に設けられている。操作パネル25は、ユーザが画像の印刷に関する操作を行うパネルである。図示は省略するが、操作パネル25には、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報が表示される表示画面、および、印刷や記録媒体5や治具45(
図8参照)に関する情報を設定するための入力ボタンなどが備えられている。
【0018】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド30と、紫外線照射装置41、42と、制御装置70とを備えている。ガイドレール18は、ケース15内に配置されている。ガイドレール18は、ケース15に固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18には、キャリッジ20が摺動自在に設けられている。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21(
図5参照)により、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構21は、制御装置70によって制御される。キャリッジ20が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド30および紫外線照射装置41、42は主走査方向Yに移動する。
【0019】
キャリッジ20には、複数のインクヘッド30が搭載されている。インクヘッド30は、後述するテーブル35より上方に配置されている。インクヘッド30は、テーブル35に載置された記録媒体5に光硬化性を有するインク(光硬化性インク)を吐出する。インクヘッド30は、それぞれ、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、ケース15内に収容されたインクカートリッジ34と連通されている。インクカートリッジ34には、それぞれ、光硬化性インクが貯留されている。
【0020】
図3に示すように、インクヘッド30は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド30は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド30は、副走査方向Xに並ぶ複数の第1ノズル31と、副走査方向Xに並ぶ複数の第2ノズル32と、第1ノズル31および第2ノズル32が形成されたノズル面33を備えている。第1ノズル31内および第2ノズル32内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、第1ノズル31および第2ノズル32は微小であるため、
図3では複数の第1ノズル31および複数の第2ノズル32を直線で表している。インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32は、記録媒体5に光硬化性インクを吐出する。本実施形態では、プリンタ10は3つのインクヘッド30を備えているが、インクヘッド30の数は3つに限定されない。また、インクヘッド30は、第1ノズル31および第2ノズル32の2種類のノズルを備えているが、1種類のノズルまたは3種類以上のノズルを備えていてもよい。
【0021】
光硬化性インクは、光(例えば紫外線や赤外線)が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インク(例えば紫外線硬化型インクや赤外線硬化型インク)は、顔料等の着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤系とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、有色インクである。光硬化性インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインクである。例えば、プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。光硬化性インクとしては、例えば、紫外線硬化型のインクが挙げられる。
【0022】
図2に示すように、プリンタ10は、紫外線照射装置41、42を備えている。紫外線照射装置41、42は、光照射装置の一例である。紫外線照射装置41、42は、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて光(典型的には紫外線)を照射する。これにより、記録媒体5上にインク層が形成される。紫外線照射装置41、42は、キャリッジ20に搭載されている。紫外線照射装置41、42は、後述するテーブル35より上方に配置されている。
図3に示すように、紫外線照射装置41は、インクヘッド30の左方に配置されている。紫外線照射装置42は、インクヘッド30の右方に配置されている。紫外線照射装置41、42と、インクヘッド30とは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。
【0023】
図2に示すように、プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、キャリッジ20より下方に配置されたテーブル35と、第1テーブル移動機構36と、第2テーブル移動機構37とを備えている。テーブル35は、載置台の一例である。テーブル35には、記録媒体5が載置される。テーブル35は、記録媒体5を支持する台である。テーブル35は、第1テーブル移動機構36によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構37によって、上下方向Zに移動可能に構成されている。
【0024】
第1テーブル移動機構36は、スライドレール36a、36bと、搬送部材36cと、第1モータ39A(
図5参照)とを備えている。スライドレール36a、36bは、副走査方向Xに延びている。搬送部材36cは、スライドレール36a、36bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材36cの上方には、他の部材を介してテーブル35が支持されている。第1モータ39Aは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第1モータ39Aが駆動すると、スライドレール36a、36bに沿って搬送部材36cが移動する。これにより、テーブル35が、副走査方向Xに移動する。
【0025】
第2テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第2モータ39B(
図5参照)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第2モータ39Bに接続されている。第2モータ39Bは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第2モータ39Bが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。即ち、テーブル35は、上下方向Zに移動する。
【0026】
図4に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置90を備えている。キャッピング装置90は、キャップ91と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ93とを備えている。キャップ91およびキャップ移動機構92は、ガイドレール18の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ20(即ちインクヘッド30および紫外線照射装置41、42)が待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール18の左端部であってもよい。
【0027】
キャッピング装置90は、インクヘッド30の第1ノズル31(
図3参照)および第2ノズル32(
図3参照)に付着したインクが硬化して第1ノズル31および第2ノズル32が目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ91は、インクヘッド30に着脱可能に設けられている。キャップ91は、印刷待機時において、ノズル面33を覆うように下方からインクヘッド30にそれぞれ取り付けられる。即ち、キャリッジ20がホームポジションHPに位置するときには、キャップ91は、インクヘッド30にそれぞれ装着されている。「ノズル面33を覆う」とは、第1ノズル31および第2ノズル32の全てのノズルとノズル面33の全体を覆う場合と、第1ノズル31および第2ノズル32の全てのノズルとノズル面33の一部を覆う場合とを含む。
【0028】
キャップ移動機構92は、キャップ91を支持している。キャップ移動機構92は、キャップ91をインクヘッド30に対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向Zに移動させるものである。キャップ移動機構92の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ92Aが設けられている。キャップ移動機構92は、駆動モータ92Aを駆動させることによって、キャップ91を上下方向に移動させる。キャップ移動機構92は、キャップ91を上方に移動させることによって、キャップ91をキャップ位置に移動させる。ここで、キャップ位置とは、キャップ91がノズル面33を覆う位置である。これにより、キャップ91は、インクヘッド30にそれぞれ装着される。キャップ91がインクヘッド30にそれぞれ取り付けられたときに、キャップ91とノズル面33との間に密閉空間38がそれぞれ形成される。キャップ移動機構92は、キャップ91を下方に移動させることによって、キャップ91を離隔位置に移動させる。ここで、離隔位置とは、キャップ91がノズル面33から離隔した位置である。これにより、キャップ91は、それぞれ、インクヘッド30から取り外される。
【0029】
吸引ポンプ93は、インクヘッド30にキャップ91が装着されている状態において、密閉空間38内の流体(例えば光硬化性インク)を吸引する。これにより、密閉空間38内は、大気圧より低い圧力となる。この結果、吸引ポンプ93は、インクヘッド30の第1ノズル31(
図3参照)および第2ノズル32(
図3参照)内の光硬化性インクを吸引する。即ち、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクをキャップ91内に強制的に吐出させる。吸引ポンプ93の吸引口は、キャップ91に接続されている。吸引ポンプ93の排出口は、廃液タンク95に接続されている。吸引ポンプ93に吸引された密閉空間38内の流体は、廃液タンク95に貯留される。上記吸引は、第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクを吐出させて、第1ノズル31および第2ノズル32の吐出不良を解消させる作業であり、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32の詰まりを予防するためのクリーニング動作である。吸引ポンプ93は、吸引装置の一例である。
【0030】
図4示すように、プリンタ10は、ワイパー97を備えている。ワイパー97は、キャッピング装置90の左方に配置されている。ワイパー97は、インクヘッド30のノズル面33をワイピングする部材である。ワイパー97は、ガイドレール18より下方に配置されている。ワイパー97は、キャリッジ20がワイパー97の上方を通過するとき、ノズル面33に接するように構成されている。ワイパー97は、板状の部材であって、例えばゴムなどによって形成されている。
【0031】
図5に示すように、制御装置70は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図2に示すように、制御装置70は、ケース15の内部に設けられている。ただし、制御装置70はケース15の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置70は、ケース15の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置70は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0032】
図5に示すように、制御装置70は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21と、インクヘッド30と、紫外線照射装置41、42と、第1テーブル移動機構36(
図2参照)の第1モータ39Aと、第2テーブル移動機構37(
図2参照)の第2モータ39Bと、キャッピング装置90(
図4参照)の駆動モータ92Aと、吸引ポンプ93と通信可能に接続している。制御装置70は、操作パネル25、キャリッジ移動機構21、インクヘッド30、紫外線照射装置41、42、第1モータ39A、第2モータ39B、駆動モータ92A、および、吸引ポンプ93を制御する。
【0033】
制御装置70は、インクヘッド30が光硬化性インクを吐出するタイミングや光硬化性インクの吐出量等を制御する。制御装置70は、駆動モータ92Aの駆動を制御することによって、キャップ91の上下方向Zの移動を制御する。制御装置70は、吸引ポンプ93が密閉空間38内の流体を吸引するタイミングなどを制御する。制御装置70は、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて紫外線照射装置41、42から紫外線を照射するタイミング等を制御する。
【0034】
図5に示すように、制御装置70は、記憶部71と、第1設定部72と、第2設定部73と、受信部75と、計数部76と、第1推定部77と、第1判定部78と、クリーニング部80と、第2推定部81と、第2判定部82と、通知部84とを備えている。これら各部は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、これら各部は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0035】
記憶部71は、ヘッドギャップHG[mm](
図6参照)と、記録媒体5の厚みT[mm](
図6参照)と、ノズル面33に反射される単位時間当たりの光量L[mW/cm
2]との関係を規定したマップMを記憶する。ここで、ヘッドギャップHGとは、記録媒体5とノズル面33との上下方向Zの距離である。ヘッドギャップHGは、例えば、凡そ1mm~凡そ4mmである。ヘッドギャップHGは、テーブル35を上下方向Zに移動させることによって変更することができる。ヘッドギャップHGは、テーブル35の上下方向Zの位置に基づいて決定される。記憶部71には、ヘッドギャップHGが記憶される。
図7は、記憶部71に記憶されるマップMの一例である。
図7に示すように、例えば、マップMには、A[mm]~D[mm]のヘッドギャップHGとE[mm]~H[mm]の厚みTとに対する単位時間当たりの光量L(L1~L16)[mW/cm
2]が含まれる。例えば、ヘッドギャップHGがA[mm]であり、かつ、厚みTがG[mm]である場合には、マップMから単位時間当たりの光量LはL3[mW/cm
2]であることが求められる。ここで、単位時間当たりの光量Lは、紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5およびテーブル35において反射され、ノズル面33に到達する光量である。光量Lは、ヘッドギャップHGが大きいほど大きくなり、ヘッドギャップHGが小さいほど小さくなる傾向にある。
【0036】
また、単位時間当たりの光量Lは、記録媒体5を形成する材料の種類等によって異なる。マップMは、記録媒体5に関する情報である記録媒体情報(例えば記録媒体5を形成する材料、記録媒体5の色や記録媒体5の大きさ等)に関連付けられている。記憶部71は、記録媒体情報に関連付けられた複数のマップMを記憶するとよい。
【0037】
なお、
図8に示すように、記録媒体5に画像を印刷するときに記録媒体5を保持する治具45が用いられる場合には、単位時間当たりの光量Lは、治具45における光の反射が考慮されている。即ち、単位時間当たりの光量Lは、紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5およびテーブル35および治具45において反射され、ノズル面33に到達する光量となる。治具45は、テーブル35に載置される。治具45は、テーブル35に固定される。治具45は、例えば、金属材料や樹脂材料等から形成されている。
【0038】
また、単位時間当たりの光量Lは、治具45を形成する材料の種類等によって異なる。マップMは、治具45に関する情報である治具情報(例えば治具45を形成する材料、治具45とノズル面33との上下方向Zの距離である治具ギャップJG[mm](
図8参照)、治具45の色や治具45の大きさ等)に関連付けられている。記憶部71は、治具情報に関連付けられた複数のマップMを記憶するとよい。
【0039】
図9は、インクヘッド30(
図3参照)の第1ノズル31および第2ノズル32の目詰まりの発生を抑制するクリーニング動作のタイミングを最適化して画像を印刷する手順を示したフローチャートである。
図9に示すように、制御装置70は、ノズル面33に反射された光の量に基づいて、適切なタイミングでクリーニング動作を行う。
【0040】
ステップS10において、第1設定部72は、記録媒体情報を設定する。記録媒体情報の設定は、例えば、操作パネル25を用いてユーザによって行われる。なお、記録媒体情報の設定は、プリンタ10に接続された操作端末(例えばノート型のパソコン)を用いてユーザによって行われてもよい。記録媒体情報の設定は、例えば、記録媒体5に関する情報が一覧表示されたリストから選択することによって行われる。ユーザは、例えば、一覧表示されたリストから記録媒体5を形成する材料を選択したり、記録媒体5の厚みTを入力したりする。
【0041】
ステップS20において、第2設定部73は、治具情報を設定する。治具情報の設定は、例えば、操作パネル25を用いてユーザによって行われる。なお、治具情報の設定は上述の操作端末を用いてユーザによって行われてもよい。治具情報の設定は、例えば、治具45に関する情報が一覧表示されたリストから選択することによって行われる。ユーザは、例えば、一覧表示されたリストから治具45の種類を選択する。治具45の種類には、治具45を形成する材料や治具ギャップJG等が関連付けられている。なお、画像の印刷に際して治具45を用いない場合には、第2設定部73は、治具45を用いないことを設定する。
【0042】
ステップS30において、ユーザは、例えば、プリンタ10に接続された操作端末を操作して所定の画像の印刷を決定する。これにより、操作端末から受信部75に印刷指示信号および印刷データが送信され、受信部75は印刷指示信号および印刷データを受信する。
【0043】
ステップS40において、制御装置70は、インクヘッド30等を制御してテーブル35に載置された記録媒体5に光硬化性インクを吐出させて、記録媒体5上に画像の印刷を行う。即ち、印刷データに基づいて、記録媒体5に画像の印刷が開始される。印刷が開始されると、計数部76は、印刷時間[分]を計数する。ここで、印刷時間とは、画像の印刷が開始されてから画像の印刷が終了するまでの時間である。なお、好ましくは、印刷時間とは、画像の印刷が開始されてから画像の印刷が終了するまでの間における、紫外線照射装置41、42から光が照射されている時間である。
【0044】
ステップS50において、第1推定部77は、ノズル面33に反射された光の第1積算光量[mJ/cm2]を推定する。第1推定部77は、少なくともヘッドギャップHGに基づいて、第1積算光量を推定する。ここでは、第1推定部77は、ヘッドギャップHG、記憶部71に記憶されたマップMおよび計数部76によって計数された印刷時間に基づいて、第1積算光量を推定する。第1積算光量は、マップMから導き出された単位時間当たりの光量Lと印刷時間とを乗ずることによって算出される。なお、ステップS50において用いられるマップMは、ステップS10およびステップS20において設定された記録媒体情報および治具情報に基づいて一義的に決定される。
【0045】
ステップS60において、第1判定部78は、第1積算光量が所定の閾値を超えたか否かを判定する。第1積算光量が所定の閾値を超えた場合にはステップS70に進む。一方、第1積算光量が所定の閾値以下の場合にはステップS80に進む。所定の閾値は、ユーザによって適宜設定される。所定の閾値は、ノズル面33に反射された光によって第1ノズル31、第2ノズル32やノズル面33に付着した光硬化性インクが未だ硬化しないが、さらに光を照射し続けると(例えば5分~10分程度)上記光硬化性インクが硬化してしまう程度に設定される。
【0046】
第1判定部78によって第1積算光量が所定の閾値を超えたと判定されたため、ステップS70において、クリーニング部80は、クリーニング動作を実行する。ここで、クリーニング動作とは、第1ノズル31および第2ノズル32を洗浄する動作であり、ここでは、密閉空間38内の流体を吸引ポンプ93によって吸引してインクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズルから光硬化性インクを吐出させることである。これにより、第1ノズル31および第2ノズル32のノズルの目詰まりを抑制することができる。このとき、ノズル面33に付着していた光硬化性インクも吸引ポンプ93によって吸引される。クリーニング部80は、クリーニング動作を実行した後にワイパー97によってノズル面33をワイピングするワイピング動作を実行する。なおクリーニング部80がクリーニング動作およびワイピング動作を実行するときには、クリーニング部80は、キャリッジ移動機構21を制御してキャリッジ20をホームポジションHPに移動させ、駆動モータ92Aを制御してキャップ91をインクヘッド30に対して着脱する。その後、キャリッジ20をワイパー97の上方に移動させる。
【0047】
ステップS80では、制御装置70は、印刷データに基づいて画像の印刷が終了したかを判断する。画像の印刷が終了していると判断された場合には、ステップS90に進む。一方、画像の印刷が終了していないと判断された場合には、画像の印刷を継続してステップS50に戻る。ステップS50に戻るとき、クリーニング動作が行われた場合には第1積算光量はリセットされてゼロになる。一方、クリーニング動作が行われていない場合には、第1積算光量はリセットされず積算される。
【0048】
ステップS90において、ユーザは、引き続き画像の印刷を行う場合には、例えば、プリンタ10に接続された操作端末を操作して新たな画像の印刷を決定する。これにより、操作端末から受信部75に新たな印刷指示信号および新たな印刷データが送信され、受信部75は新たな印刷指示信号および新たな印刷データを受信する。そして、ステップS100に進む。一方、ユーザが引き続き画像の印刷を行わない場合には、画像の印刷処理を終了する。ここで、記憶部71は、直近のクリーニング動作が行われた後から現在までの間にノズル面に反射された光の総光量を記憶している。即ち、クリーニング動作が終わったタイミングで印刷も終了したときには、総光量はゼロであり、クリーニング動作が行われずに印刷が終了したときには、総光量は上記閾値より小さい値となる。
【0049】
ステップS100において、第2推定部81は、新たな印刷データに基づいて印刷が行われるときにノズル面33に反射される光の第2積算光量[mJ/cm2]を推定する。第2推定部81は、少なくともヘッドギャップHGに基づいて、第2積算光量を推定する。ここでは、第2推定部81は、ヘッドギャップHG、記憶部71に記憶されたマップMおよび受信された印刷データに基づいて、第2積算光量を推定する。第2積算光量は、マップMから導き出された単位時間当たりの光量Lと印刷データから導かれる予想印刷時間とを乗ずることによって算出される。なお、印刷データには、画像を印刷するのに要する予想印刷時間が含まれている。また、ステップS100において用いられるマップMは、ステップS10およびステップS20において設定された記録媒体情報および治具情報に基づいて一義的に決定される。なお、ステップS100では、ステップS10およびステップS20において設定された記録媒体情報および治具情報とは異なる記録媒体情報および/または治具情報を新たに設定してもよい。この場合、新たに設定された記録媒体情報および治具情報に基づいてステップS100において用いられるマップMが一義的に決定される。
【0050】
ステップS110において、第2判定部82は、総光量と第2積算光量との合計積算光量[mJ/cm2]が所定の閾値を超えたか否かを判定する。合計積算光量が所定の閾値を超えた場合にはステップS120に進む。一方、合計積算光量が所定の閾値以下の場合にはステップS40に戻る。即ち、新たな印刷データに基づいて、記録媒体5に画像の印刷が開始される。このとき、第1積算光量は、新たに画像を印刷するときの印刷時間に加えてそれ以前に画像を印刷したときの印刷時間(即ち総光量)も考慮されることになる。所定の閾値は、ステップS60において用いられた閾値と同じである。
【0051】
第2判定部82によって合計積算光量が所定の閾値を超えると判定されたため、ステップS120において、通知部84は、クリーニング動作を実行する必要があることをユーザに通知する。なお、通知方法は特に限定されず、例えば、視覚的な表示、音声等による通知が挙げられる。本実施形態では、例えば、操作パネル25を通じて視覚的に作業者に対する通知を行う。その後、ユーザは制御装置70にクリーニング動作を指示し、クリーニング部80によってクリーニング動作が実行される。これにより、新たな印刷データに基づいて印刷を行っている途中で、クリーニング動作が行われることが抑制される。クリーニング動作が行われた後、ステップS40に戻る。このとき、第1積算光量は、新たに画像を印刷するときの印刷時間のみが考慮されることになる。即ち、記憶部71に記憶された総光量はリセットされてゼロになる。
【0052】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、第1推定部77は、少なくともヘッドギャップHGに基づいて、ノズル面33に反射された光の第1積算光量を推定する。そして、クリーニング部80は、第1判定部78によって第1積算光量が所定の閾値を超えたと判定されたときに、第1ノズル31および第2ノズル32を洗浄するクリーニング動作を実行する。本発明者は、紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5やテーブル35や治具45において反射されるとき、ノズル面33に反射された光量の大小はヘッドギャップHGの影響によるものが大きいことに着目した。そして、ヘッドギャップHGに基づいて、第1積算光量を推定しかつ閾値を適宜設定することによって、クリーニング動作を実行するタイミングを適切にすることができることを見出した。このように、本実施形態のプリンタ10によると、クリーニング動作を適切なタイミングで実行することができるため、第1ノズル31および第2ノズル32の目詰まりを抑制しつつ過剰なクリーニング動作による光硬化性インクの消費量を低減することができる。
【0053】
本実施形態のプリンタ10によれば、クリーニング部80は、第1判定部78によって第1積算光量が所定の閾値を超えたと判定されたときに、第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクを吐出させることによってクリーニング動作を実行する。このように、第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクを吐出させることによって、第1ノズル31および第2ノズル32の吐出不良を解消させることができる。
【0054】
本実施形態のプリンタ10によれば、クリーニング部80は、第1判定部78によって第1積算光量が所定の閾値を超えたと判定されたときに、吸引ポンプ93を用いて密閉空間38内の流体(例えば光硬化性インク)を吸引することによってクリーニング動作を実行する。このように、吸引ポンプ93を用いるため、第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクをより確実に吐出させることができる。この結果、第1ノズル31および第2ノズル32の吐出不良をより確実に解消させることができる。
【0055】
本実施形態のプリンタ10によれば、第1推定部77は、ヘッドギャップHG、マップMおよび印刷時間に基づいて、第1積算光量を推定する。本発明者は、紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5において反射されるとき、ノズル面33に反射された光量は記録媒体5の厚みTによって異なることに着目した。マップMには記録媒体5の厚みTごとに単位時間当たりの光量Lが規定されているため、第1推定部77は、第1積算光量をより正確に推定することができる。
【0056】
本実施形態のプリンタ10によれば、印刷時間は、紫外線照射装置41、42から光が照射されている時間である。ここで、記録媒体5に画像を印刷しているときには、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる場合等において紫外線照射装置41、42から光が照射されないときがあり得る。光硬化性インクは、光が照射されることによって硬化する性質を有するため、紫外線照射装置41、42から光が照射されている時間を基準とすることで、第1積算光量をより正確に推定することができる。
【0057】
本実施形態のプリンタ10によれば、第2推定部81は、少なくともヘッドギャップHGに基づいて、印刷データに基づいて印刷が行われるときにノズル面33に反射される光の第2積算光量を推定する。そして、通知部84は、第2判定部82によって総光量と第2積算光量との合計積算光量が所定の閾値を超えると判定されたときに、クリーニング動作を実行する必要があることを通知する。このように、印刷データに基づいて印刷を行っている途中でクリーニング動作が必要となる場合には、印刷データに基づいて印刷を行う前にユーザにクリーニング動作をするように通知することができる。
【0058】
本実施形態のプリンタ10によれば、第2推定部81は、ヘッドギャップHG、マップMおよび受信された印刷データに基づいて、第2積算光量を推定する。印刷データから画像の印刷に要する予想印刷時間が確定するため、第2推定部81は、第2積算光量をより正確に推定することができる。
【0059】
本実施形態のプリンタ10によれば、マップMは、記録媒体5に関する情報である記録媒体情報に関連付けられており、制御装置70は、記録媒体情報を設定する第1設定部72を備えている。本発明者は、紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5において反射されるとき、ノズル面33に反射された光量は記録媒体5の種類によって異なることに着目した。マップMは記録媒体情報に関連付けられているため、記録媒体情報を設定することによって記録媒体5における第1積算光量や第2積算光量がより正確に推定される。
【0060】
本実施形態のプリンタ10によれば、記録媒体情報には、少なくとも記録媒体5を形成する材料に関する情報が含まれる。紫外線照射装置41、42から照射された光が記録媒体5において反射されるとき、ノズル面33に反射された光量は記録媒体5を形成する材料によって大きく異なるため、記録媒体5を形成する材料ごとに単位時間当たりの光量Lを規定することによって第1積算光量や第2積算光量がより正確に推定される。
【0061】
本実施形態のプリンタ10によれば、マップMは、記録媒体5を保持する治具45に関する情報である治具情報に関連付けられており、制御装置70は、治具情報を設定する第2設定部73を備えている。本発明者は、治具45を用いる場合には、紫外線照射装置41、42から照射された光が治具45において反射されることに着目した。マップMは治具情報に関連付けられているため、治具情報を設定することによって治具45を用いた場合の第1積算光量や第2積算光量がより正確に推定される。
【0062】
本実施形態のプリンタ10によれば、治具情報には、少なくとも治具45とノズル面33との上下方向Zの距離である治具ギャップJGに関する情報が含まれる。紫外線照射装置41、42から照射された光が治具45において反射されるとき、ノズル面33に反射された光量は治具ギャップJGによって大きく異なるため、治具ギャップJGごとに単位時間当たりの光量Lを規定することによって第1積算光量や第2積算光量がより正確に推定される。
【0063】
本実施形態のプリンタ10は、ノズル面33をワイピングするワイパー97をさらに備え、クリーニング部80は、クリーニング動作を実行した後にワイパー97によってノズル面33をワイピングするワイピング動作を実行する。これにより、ノズル面33からより確実に光硬化性インクを除去することができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
上述したマップMは、ヘッドギャップHG[mm]と、記録媒体5の厚みT[mm]と、光量L[mW/cm2]との関係を規定しているが、これに限定されない。例えば、マップMは、ヘッドギャップHG[mm]と、テーブル35とノズル面33との上下方向の距離[mm]と、光量L[mW/cm2]との関係を規定していてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、第1推定部77および第2推定部81は、マップMに基づいて第1積算光量および第2積算光量を推定していたが、これに限定されない。例えば、マップMに代えて、ヘッドギャップHGと厚みTとから光量Lが算出される所定の数式を用いてもよい。
【0067】
上述した実施形態では、第2判定部82によって合計積算光量が所定の閾値を超えると判定されたときに、通知部84は、クリーニング動作を実行する必要があることをユーザに通知するが、これに限定されない。制御装置70は、通知部84を備えていなくてもよい。即ち、クリーニング動作を実行する必要があることをユーザに通知することは任意に設定することができる。
【0068】
上述した実施形態では、クリーニング動作として、吸引ポンプ93を用いる場合が開示されていたが、クリーニング動作はこれに限定されない。クリーニング動作としては、例えば、インクヘッド30とインクカートリッジ34との間に配置された送液ポンプ(例えば加圧ポンプ)を用いることによって、インクヘッド30の第1ノズル31と第2ノズル32から光硬化性インクを強制的に吐出させる動作であってもよい。このとき、光硬化性インクは、例えば、キャップ91内に強制的に吐出される。
【0069】
上述した実施形態では、ヘッドギャップHGは、テーブル35を上下方向Zに移動させることによって変更しているが、その変更はユーザによって、例えば、以下のように行われる。ユーザが、例えば、テーブル35の高さ(所定の基準位置からテーブル35の表面までの相対的な高さ)を+15mmや-5mmのように設定することによって、ヘッドギャップHGを変更する。また、ユーザが、例えば、テーブル35の表面からノズル面33までの距離を設定して、テーブル35を上下方向Zに移動させることによって、ヘッドギャップHGを変更する。また、ユーザが、記録媒体5の表面あるいは治具45の表面からノズル面33までの距離を直接設定して、テーブル35を上下方向Zに移動させることによって、ヘッドギャップHGを変更する。あるいは、ユーザが、例えば、記録媒体5の厚さを設定して、テーブル35を上下方向Zに移動させることによって、ヘッドギャップHGを変更する。なお、記録媒体5の厚さについては、記録媒体5の位置を接触あるいは非接触で検出するセンサを用いることによって、自動的に設定してもよい。
【0070】
ここで開示される技術は様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したフラットベッドタイプのプリンタ10の他、例えば、ロール状の記録媒体5を副走査方向Xに搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【0071】
5 記録媒体
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
30 インクヘッド
31 第1ノズル
32 第2ノズル
33 ノズル面
35 テーブル(載置台)
41、42 紫外線照射装置
70 制御装置
71 記憶部
77 第1推定部
78 第1判定部
80 クリーニング部
91 キャップ
93 吸引ポンプ