(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】バックパッド
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220518BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20220518BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/64
A47C7/18
(21)【出願番号】P 2018203653
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】茂木 学
(72)【発明者】
【氏名】山田 強
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-153647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/64
A47C 7/18
A47C 7/40
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストステーがパッドの裏面に配置されるバックパッドであって、
前記パッドの裏面に貼り付けられた裏打ち材と、
前記裏打ち材に接合される非金属製の網と、を備え、
前記網は、前記ヘッドレストステーと前記パッドとの間に配置され、前記ヘッドレストステーに垂直な方向の網目の長さは、前記ヘッドレストステーの太さよりも短いバックパッド。
【請求項2】
前記網を構成する線は、少なくとも一部が、前記ヘッドレストステーに対し斜めに配置される請求項1記載のバックパッド。
【請求項3】
前記網の上縁部のうち少なくとも前記ヘッドレストステーが交わる部位を前記裏打ち材に接合する第1接合部と、
前記網のうち少なくとも前記第1接合部以外の部位を前記裏打ち材に非接合とする非接合部と、を備える請求項1又は2に記載のバックパッド。
【請求項4】
前記網は、前記裏打ち材に全体を重ねて配置される請求項1から3のいずれかに記載のバックパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドレストが配置されるバックパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレームに支持されたバックパッドにヘッドレストが配置されたシートバックが知られている。特許文献1に開示されるバックパッドは、パッドの裏面に貼り付けられた裏打ち材にフレーム側に突出する凸部を設け、凸部をフレームに接触させることにより、バックパッドがフレームに擦れて生じる異音を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の技術では、後方へ大きく変形したバックパッドがヘッドレストステーに擦れて生じる異音を抑制できないという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、ヘッドレストステーに擦れて生じる異音を抑制できるバックパッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明は、パッドの裏面にヘッドレストステーが配置されるバックパッドであって、パッドの裏面に貼り付けられた裏打ち材と、裏打ち材に接合される非金属製の網と、を備える。網はパッドの裏面とヘッドレストステーとの間に配置され、ヘッドレストステーに垂直な方向の網目の長さは、ヘッドレストステーの太さよりも短い。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のバックパッドによれば、ヘッドレストステーとパッドの裏面との間に配置される非金属製の網が、パッドの裏面に貼り付けられた裏打ち材に接合される。ヘッドレストステーに垂直な方向の網目の長さは、ヘッドレストステーの太さよりも短いので、ヘッドレストステーに向かってパッドが変形すると、パッドや裏打ち材がヘッドレストステーに接触する前に、網がヘッドレストステーに接触する。これによりパッドや裏打ち材とヘッドレストステーとの接触が原因となる異音の発生を抑制できる。
【0008】
請求項2記載のバックパッドによれば、網を構成する線は、少なくとも一部が、ヘッドレストステーに対し斜めに配置される。これによりヘッドレストステーに垂直な方向へ網が伸び易くなるので、ヘッドレストステーに向かってパッドが変形すると、パッドの伸びにつれて網が伸び、ヘッドレストステーに向かうパッドの移動を抑制できる。よって、請求項1の効果に加え、ヘッドレストステーとの接触が原因となる異音の発生をさらに抑制できる。
【0009】
請求項3記載のバックパッドによれば、第1接合部により網の上縁部のうち少なくともヘッドレストステーが交わる部位が裏打ち材に接合される。これによりパッドと網との間にヘッドレストステーが差し込まれるのを防ぎ、パッドとヘッドレストステーとの間に網を配置できる。また、網のうち少なくとも第1接合部以外の部位が裏打ち材に非接合とされるので、網を伸び易くできる。これによりヘッドレストステーに向かってパッドが変形すると、網が伸びてヘッドレストステーに向かうパッドの移動を抑制できる。よって、請求項1又は2の効果に加え、ヘッドレストステーとの接触が原因となる異音の発生をさらに抑制できる。
【0010】
請求項4記載のバックパッドによれば、裏打ち材に網の全体が重ねて配置されるので、ヘッドレストステーに向かってパッドが変形するときに、網にパッドが侵入しないようにできる。これによりパッドがヘッドレストステーに接触する前に、ヘッドレストステーに網を接触させることができるので、請求項1から3のいずれかの効果に加え、パッドとヘッドレストステーとの接触が原因となる異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施の形態におけるバックパッドを備える車両用シートの斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線におけるバックパッドの断面図である。
【
図5】
図3のV-V線におけるバックパッドの断面図である。
【
図6】(a)は
図3のVIaで示す部分を示したバックパッドの背面図であり、(b)は第2実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(c)は第3実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(d)は第4実施の形態におけるバックパッドの背面図である。
【
図7】(a)は第5実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(b)は第6実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(c)は第7実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(d)は第8実施の形態におけるバックパッドの背面図である。
【
図8】(a)は第9実施の形態におけるバックパッドの背面図であり、(b)は第10実施の形態におけるバックパッドの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態におけるバックパッド30(後述する)を備える車両用シート10の斜視図である。車両用シート10は自動車に搭載されるシートであり、乗員の臀部を支持するシートクッション11と、乗員の背凭れとなるシートバック12と、乗員の頭を支えるヘッドレスト13とを備えている。
【0013】
図2は車両用シート10の一部を構成するフレーム14の斜視図である。フレーム14は、シートクッション11の一部であるクッションフレーム15と、ヘッドレスト13及びバックパッド30を支持するバックフレーム16と、を備えている。バックフレーム16は、縦長の鋼板からなる左右一対の横フレーム17と、横フレーム17の上端に架け渡されたU字状の鋼管製の上フレーム18と、横フレーム17の下部間に結合された横長の鋼管からなる下フレーム19と、を備えている。下フレーム19近くの横フレーム17には、鋼板からなる背面板20が架け渡されて結合されている。バックフレーム16は、横フレーム17、上フレーム18、下フレーム19及び背面板20によって四角枠状に一体化されている。
【0014】
バックフレーム16は、受圧部材21,22が横フレーム17間に架け渡されている。本実施形態では、受圧部材21,22はS字形をした3本の鋼製のばねである。受圧部材21はバックフレーム16の高さの半分より低い位置に配置されており、受圧部材22はバックフレーム16の高さの半分より高い位置に配置されている。受圧部材21は乗員の背中の下部を支えるばねである。受圧部材22は乗員の背中の上部を支えるばねである。
【0015】
上フレーム18には、中央の左右2か所にホルダ23が溶接により固定されている。ホルダ23は、ヘッドレスト13から突出するヘッドレストステー24が差し込まれる部材である。ヘッドレストステー24は、金属製や合成樹脂製のパイプ又は棒である。
【0016】
図3はバックパッド30の背面図であり、
図4は
図3のIV-IV線におけるバックパッド30の断面図であり、
図5は
図3のV-V線におけるバックパッド30の断面図である。
図3及び
図4では、バックパッド30の下部の図示が省略されている。
図3から
図5では、ホルダ23及びヘッドレストステー24以外、バックパッド30を支持するフレーム14の図示が省略されている。
【0017】
図3に示すようにバックパッド30は、バックフレーム16(
図2参照)に支持されるパッド31と、パッド31の裏面32(
図4参照)に貼り付けられた裏打ち材35と、裏打ち材35に接合される網36と、を備えている。パッド31は、軟質ポリウレタンフォーム等の軟質フォームからなる部材であり、パッド31の裏面32をバックフレーム16の受圧部材21,22に向けて配置される。受圧部材21,22は、受圧部材21,22の前面に配置されるバックパッド30をそれぞれ弾性支持する。パッド31の表面33は表皮材(図示せず)で覆われている。
【0018】
パッド31は上部にホルダ23が固定されている。ホルダ23は、ヘッドレスト13の下部に突出する2本のヘッドレストステー24が差し込まれる。ホルダ23は、ホルダ23に差し込まれたヘッドレストステー24を任意の位置で固定する。これによりヘッドレスト13がパッド31の上部に固定される。ホルダ23に差し込まれたヘッドレストステー24は、下部がホルダ23から突出する。ホルダ23から突出したヘッドレストステー24は、パッド31の裏面32の近くに配置される。パッド31の裏面32には、ヘッドレストステー24が配置される部位に、裏面32から表面33へ向かって凹む凹部34(
図5参照)が形成されている。
【0019】
裏打ち材35は、パッド31を補強する面状部材である。裏打ち材35は、例えば動物系や植物系の天然繊維、合成樹脂製の繊維などで形成された織布、編布、不織布、またはこれらの積層体が用いられる。繊維を構成する合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、レイヨン等が挙げられる。
【0020】
網36は、パッド31とヘッドレストステー24との間に配置される非金属製の部材である。網36の目付(単位面積当たりの質量)は裏打ち材35の目付よりも小さい。網36は、縫い代やのり代等の止め代36a(
図4参照)を残して、糸、ステープル(針)、タグピン等による縫合、接着、溶着などにより、裏打ち材35に接合されている。本実施形態では、止め代36aだけでなく、網36の全体が、裏打ち材35に重ねて配置されている。
【0021】
網36は、第1線37と第2線38とが交差する部位が、互いに結合している。第1線37及び第2線38は、例えば動物系や植物系の天然繊維、合成樹脂製の線材などで形成される。第1線37及び第2線38を構成する合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、レイヨン等が挙げられる。
【0022】
網36は、第1線37と第2線38で囲われた四角形の網目39をもつ。ヘッドレストステー24に垂直な方向(
図3左右方向)の網目39の長さLは、ヘッドレストステー24の直径(背面視における太さ)よりも短い。バックパッド30の背面視において、網36は、第1線37及び第2線38が、ヘッドレストステー24に対し斜めに配置されている。パッド31や裏打ち材35とヘッドレストステー24との接触を抑制するため、第1線37及び第2線38の直径(網36の厚さ)は0.27mm以上が好ましい。
【0023】
図6(a)は
図3のVIaで示す部分を示したバックパッド30の背面図である。バックパッド30の背面視において、網36は、背面視において、上縁部40と下縁部41とが平行、且つ、両側の側縁部42同士が平行な矩形状に形成されている。網36の下縁部41は、ホルダ23からヘッドレストステー24が最も長く突き出したときのヘッドレストステー24の下端部の位置よりも下方に位置する。網36の側縁部42は、2本のヘッドレストステー24よりも左右の外側に位置する。
【0024】
網36は、接着や縫合などにより形成された第1接合部43及び第2接合部44により、裏打ち材35に接合されている。第1接合部43及び第2接合部44は硬化した接着剤や縫い目を示す。上縁部40、下縁部41及び側縁部42は、網36の各端縁から接合部(硬化した接着剤や縫い目など)までの止め代となる幅をもつ部位である。
【0025】
第1接合部43は、網36の上縁部40のうち少なくともヘッドレストステー24が交わる部位を裏打ち材35に接合する。第1接合部43は側縁部42にそれぞれ交差し、片方の側縁部42からもう片方の側縁部42まで上縁部40に沿って連続している。第2接合部44は、網36の下縁部41及び両側の側縁部42の一部を裏打ち材35に接合する。第2接合部44は側縁部42にそれぞれ交差し、片方の側縁部42からもう片方の側縁部42まで下縁部41に沿って連続している。網36のうち第1接合部43及び第2接合部44以外の部位である非接合部45は、裏打ち材35に非接合とされる。
【0026】
バックパッド30は、例えば表面33が成形される第1型、第1型に重なる第2型、及び、中子を備える成形型(図示せず)を用いて製造される。網36が接合された裏打ち材35を中子に配置した後、軟質フォームの原料となる原液を第1型に注入し、中子が配置された第2型を用いて第1型を密閉する。原液が発泡して成形型に充填されると、軟質フォームからなるパッド31が成形される。
【0027】
網36の全体が裏打ち材35に重ねて配置されているので、成形型(図示せず)の中で軟質フォームからなるパッド31が成形されるときに、裏打ち材35によって、網目39の中にパッド31が侵入しないようにできる。中子が配置された第2型を開いた後、第2型に対して中子を移動させ脱型すると、パッド31の裏面32に裏打ち材35が貼り付けられたバックパッド30が得られる。
【0028】
バックパッド30は、パッド31の裏面32とヘッドレストステー24との間に配置される非金属製の網36が、パッド31の裏面32に貼り付けられた裏打ち材35に接合される。ヘッドレストステー24は、パッド31の裏面32(凹部34)と間隔をあけて配置される。
【0029】
ヘッドレストステー24に垂直な方向の網目39の長さLは、ヘッドレストステー24の太さよりも短いので、バックパッド30に乗員が体重を預けることにより、パッド31がヘッドレストステー24へ向かって大きく変形すると、パッド31や裏打ち材35がヘッドレストステー24に接触する前に、網36がヘッドレストステー24に接触する。パッド31や裏打ち材35がヘッドレストステー24に接触する面積に比べ、網36とヘッドレストステー24とが接触する面積は小さいので、バックパッド30とヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生を抑制できる。
【0030】
網36を構成する第1線37及び第2線38は、ヘッドレストステー24に対し斜めに配置される。これによりヘッドレストステー24に向かってパッド31が変形すると、網36の上縁部40と下縁部41との間の距離や側縁部42間の距離が長くなり易くなる。パッド31の変形に伴い、網36が上下や左右に伸び易くなるので、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動を抑制できる。よって、バックパッド30とヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生をさらに抑制できる。
【0031】
バックパッド30は、第1接合部43により網36の上縁部40のうち少なくともヘッドレストステーが交わる部位が裏打ち材35に接合される。これによりヘッドレストステー24をバックパッド30の背面に配置するときに、パッド31と網36との間にヘッドレストステー24が差し込まれるのを防ぎ、パッド31とヘッドレストステー24との間に網36を確実に配置できる。
【0032】
また、第2接合部44により網36の下縁部41及び側縁部42の一部が裏打ち材35に接合され、非接合部45により網36のうち少なくとも第1接合部43以外の部位が裏打ち材35に非接合とされるので、ヘッドレストステー24に向かってパッド31が変形するときに、網36が拘束されるのを非接合部45により抑制できる。その結果、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動を抑制できる。よって、バックパッド30とヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生をさらに抑制できる。
【0033】
第1接合部43は片方の側縁部42からもう片方の側縁部42まで上縁部40に沿って連続しており、第2接合部44は片方の側縁部42からもう片方の側縁部42まで下縁部41に沿って連続しているので、網36を上下に伸び易くできる。その結果、パッド31の上下の伸びが抑制され難くなるので、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を確保できる。
【0034】
裏打ち材35に網36の全体が重ねて配置されるので、ヘッドレストステー24に向かってパッド31が変形するときに、パッド31と網36との間に裏打ち材35が介在して、網36にパッド31が侵入しないようにできる。これによりパッド31がヘッドレストステー24に接触する前に、ヘッドレストステー24に網36を確実に接触させることができる。よって、パッド31とヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生を抑制できる。
【0035】
図6(b)は第2実施の形態におけるバックパッド60の背面図である。
図6(b)では、ヘッドレストステー24が配置されるバックパッド60の一部が図示されている(
図6(c)から
図7(d)まで同じ)。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0036】
第2接合部46は、網36の下縁部41及び両側の側縁部42の一部を裏打ち材35に接合する。第2接合部46は側縁部42にそれぞれ交差し、片方の側縁部42に交差する部位ともう片方の側縁部42に交差する部位との間があいている。これにより網36の下縁部41をより伸び易くできる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の下縁部41の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0037】
図6(c)は第3実施の形態におけるバックパッド61の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第2接合部47は、網36の下縁部41及び両側の側縁部42の一部を裏打ち材35に接合する。第2接合部47は網36のうち側縁部42間の部位を接合する。これにより網36の下縁部41のうち側縁部42に近い部位をより伸び易くできる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の下縁部41の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0038】
図6(d)は第4実施の形態におけるバックパッド62の背面図である。なお、第1実施形態および第2実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第1接合部48は、網36の上縁部40のうち少なくともヘッドレストステー24が交わる部位を裏打ち材35に接合する。第1接合部48は側縁部42にそれぞれ交差し、片方の側縁部42に交差する部位ともう片方の側縁部42に交差する部位との間があいている。これにより第2実施形態と同様の作用効果に加え、網36の上縁部40の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0039】
図7(a)は第5実施の形態におけるバックパッド63の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第2接合部49は、網36の下縁部41及び両側の側縁部42の一部を裏打ち材35に接合する。第2接合部49は下縁部41に交差し、下縁部41から上縁部40の近傍までそれぞれ側縁部42に沿って連続している。これにより網36の下縁部41をより伸び易くできる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の下縁部41の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0040】
図7(b)は第6実施の形態におけるバックパッド64の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第2接合部50は、網36の下縁部41及び両側の側縁部42の一部を裏打ち材35に接合する。第2接合部50は下縁部41にそれぞれ交差している。これにより網36の下縁部41及び側縁部42をより伸び易くできる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の上下および左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0041】
図7(c)は第7実施の形態におけるバックパッド65の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第1接合部51は、網36の上縁部40のうち少なくともヘッドレストステー24が交わる部位を裏打ち材35に接合する。第1接合部51は上縁部40及び下縁部41に交わり、それぞれヘッドレストステー24の位置に設けられている。第1接合部51は、下縁部41から上縁部40まで側縁部42に沿って連続している。これにより網36の下縁部41をより伸び易くできる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の下縁部41の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0042】
図7(d)は第8実施の形態におけるバックパッド66の背面図である。なお、第1実施形態および第7実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。バックパッド66は、第7実施形態におけるバックパッド65と比較して第1接合部43が省略されている。これによりバックパッド66の製造工程において、第1接合部43を形成する工数を削減できる。さらに、網36の上縁部40及び下縁部41をより伸び易くできる。よって、第1実施形態と同様の作用効果に加え、網36の上縁部40及び下縁部41の左右の伸びにより、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動の抑制効果を向上できる。
【0043】
図8(a)は第9実施の形態におけるバックパッド70の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0044】
図8(a)に示すようにバックパッド70は、裏打ち材35に網71が接合されている。網71は、パッド31とヘッドレストステー24との間に配置される非金属製の部材である。網71は、上縁部72と下縁部73とが平行、且つ、両側の側縁部74の間隔が下方に向かうにつれて広がる台形状に形成されている。
【0045】
網71は、第1線75と第2線76とが交差する部位および並んで配置される部位が、互いに結合している。網71は、第1線75と第2線76で囲われた六角形の網目77をもつ。ヘッドレストステー24に垂直な方向(
図8(a)左右方向)の網目77の長さLは、ヘッドレストステー24の太さよりも短い。バックパッド30の背面視において、網71は、第1線75及び第2線76が、ヘッドレストステー24に対し斜めに配置されている。
【0046】
網71を構成する第1線75及び第2線76は、ヘッドレストステー24に対し斜めに配置されるので、ヘッドレストステー24に向かってパッド31が変形すると、網36の上縁部72と下縁部73との間の距離や側縁部74間の距離が長くなり易くなる。パッド31の変形に伴い、網71が上下や左右に伸び易くなるので、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動を抑制できる。これにより第1実施形態と同様に、ヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生を抑制し易くできる。
【0047】
図8(b)は第10実施の形態におけるバックパッド80の背面図である。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。バックパッド80は、裏打ち材35に網81が接合されている。網81は、パッド31とヘッドレストステー24との間に配置される非金属製の部材である。網81は、縦長の矩形状に形成されており、2本のヘッドレストステー24の各々に配置されている。第10実施の形態におけるバックパッド80も、第1実施形態と同様に、ヘッドレストステー24との接触が原因となる異音の発生を抑制できる。
【0048】
図9はパッド94(試験片)とヘッドレストステー93とが擦れて生じる異音の有無を確認した試験装置90の模式的な側面図である。試験装置90は、略直方体の台91と、平行な2本のヘッドレストステー93が突出する略直方体の支持部92と、を備えている。ヘッドレストステー93は、炭素鋼で形成されたパイプに亜鉛めっきが施されている。ヘッドレストステー93の表面はシリコーン製の皮膜で覆われている。ヘッドレストステー93の太さ(直径)は14mmである。台91の上面に、ヘッドレストステー93の端部が乗せられる。
【0049】
パッド94は、厚さTが50mmの軟質ポリウレタンフォーム製の平板である。パッド94の裏面には、パッド94に一体成形された裏打ち材94aが貼り付けられている。裏打ち材94aは、厚さが100g/m2のスパンボンド不織布である。パッド94は、裏面側がヘッドレストステー93の上に凭れた状態で台91の上に置かれる。
【0050】
加圧板95は直径Dが80mmの円柱であり、パッド94を介して2本のヘッドレストステー93の間に配置した。台91の端から加圧板95の中心までの水平距離Wは100mmとした。加圧板95をパッド94に載せた後、加圧板95を10mm/秒の速度で鉛直方向の下向きに加圧し、パッド94が鉛直方向に50mm変形するまでの間に、パッド94や裏打ち材94aとヘッドレストステー93とが擦れて生じた異音の大きさを測定した。
【0051】
【表1】
網の線径および網目の大きさと異音との関係を表1に示す。表1のNo1-12は、ヘッドレストステー93とパッド94の裏打ち材94aとの間に、線径や網目の大きさが異なる種々の網(図示せず)を介在させた。網目の形状が長方形または正方形のポリプロピレン製の網を用いた。表1に示すa,bは網目の辺の長さであり、Lはヘッドレストステー93に垂直な方向の網目の長さである(
図3参照)。No1は網目を構成する線をヘッドレストステー93と垂直および平行に配置し、No2-12は網目を構成する線をヘッドレストステー93に対し斜めに配置した。
【0052】
No13はヘッドレストステー93にパッド94の裏打ち材94aを直接接触させた。No13の異音の大きさよりも異音が小さいものをA又はBと評価した。その中で特に異音が小さいものをAと評価した。No13の異音の大きさと同程度の大きさの異音が生じたものをCと評価した。
【0053】
No13とNo1-10を対比すると、パッド94とヘッドレストステー93との間に網を介在させることにより、ヘッドレストステー93が擦れて生じる異音を抑制できることが明らかになった。No11,12はパッド94とヘッドレストステー93との間に網が介在しているが、ヘッドレストステー93に垂直な方向の網目の長さLが、ヘッドレストステー93の太さ(直径)よりも長いので、網により異音を抑制できなかった。
【0054】
網目を構成する線をヘッドレストステー93に対し斜めに配置したNo2-10は、網目を構成する線をヘッドレストステー93と垂直および平行に配置したNo1に比べ、異音を小さくすることができた。網目を構成する線をヘッドレストステー93に対し斜めに配置することにより、異音の抑制効果を向上できることが明らかになった。
【0055】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えばヘッドレストステー24やパッド31の形状、大きさ、材質、網目の形状などは適宜設定される。
【0056】
実施形態では、パッド31の裏面32に凹部34が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凹部34を省略して、パッド31の裏面32のうち網36,71,81が配置される部位を平らにすることは当然可能である。
【0057】
実施形態では、軟質ポリウレタンフォーム等の軟質フォーム製のパッド31について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材質のパッド31に適用することは当然可能である。他の材質のパッド31としては、例えば、合成樹脂製等の繊維をウレタン等のバインダで硬化(結合)したもの、合成樹脂製の繊維を熱で溶融して互いに溶着させたもの等が挙げられる。
【0058】
実施形態では、自動車の前部座席のバックパッドについて説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、後部座席のバックパッドに適用することは当然可能である。また、自動車のシートに限られるものではなく、自動車以外の乗り物や家屋に配置されるシートに用いられるバックパッドに適用することは当然可能である。
【0059】
実施形態では、網36,71,81の全体が裏打ち材35に重ねて配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。パッド31の裏面32のうち、背面視において、ヘッドレストステー24と網36,71,81とが重なる部位を少なくとも除いて裏打ち材35を配置することは当然可能である。この場合、裏打ち材35と網36,71,81とは、縫い代やのり代等の止め代の分だけ重なる。これによりヘッドレストステー24に向かってパッド31が変形すると、裏打ち材35によってパッド31の伸びが抑制されないので、ヘッドレストステー24に向かうパッド31の後方への移動を抑制できる。よって、ヘッドレストステー24とバックパッドとの接触が原因となる異音の発生の抑制効果を向上できる。
【0060】
実施形態では、パッド31とヘッドレストステー24との間に網36,71,81を介在させる場合について説明したが、さらにパッド31と上フレーム18との間に網36,71,81を介在させることは当然可能である。この場合も実施形態と同様に、バックパッドが上フレーム18に擦れて生じる異音の発生を抑制できる。
【0061】
なお、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第1実施形態から第8実施形態で説明した網36を、第9実施形態で説明した網71や第10実施形態で説明した網81に替えることは当然可能である。また、第9実施形態で説明した網71や第10実施形態で説明した網81に、第1実施形態から第8実施形態で説明した接合部を設けることは当然可能である。
【符号の説明】
【0062】
24 ヘッドレストステー
30,60,61,62,63,64,65,66,70,80 バックパッド
31 パッド
35 裏打ち材
36,71,81 網
37,75 第1線(線)
38,76 第2線(線)
39,77 網目
40,72 上縁部
41,73 下縁部
42,74 側縁部
43,48,51 第1接合部
45 非接合部
L 網目の長さ